【文献】
"Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA) and Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network (E-UTRAN); Overall description; Stage 2 (Release 12)",3GPP TS 36.300 V12.2.0,2014年 6月,pp.80-81
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いながら、開示の無線端末、無線局、無線通信システム、および無線通信方法の実施形態について説明する。尚、便宜上別個の実施形態として説明するが、各実施形態を組み合わせることで、組合せの効果を得て、更に、有用性を高めることもできることはいうまでもない。
【0015】
[問題の所在]
上述したように、従来技術においては、無線端末間通信を適切なタイミングで開始するのが困難であるという問題がある。まず、各実施形態を説明する前に、この問題について説明する。この問題は、発明者が従来技術を仔細に検討した結果として新たに見出したものであり、従来は知られていなかったものであることに注意されたい。
【0016】
一般に、従来のLTEシステム等の無線通信システム(携帯電話システムやセルラーシステムと言い換えてもよい)においては、2台の無線端末20は基地局10を経由して通信を行う(以降は、このような通信形態を便宜上「基地局経由通信」と称する)。これに対し、LTEシステムにおけるD2D等のような端末間通信では、無線端末20同士が基地局10を介さずに直接無線通信を行う。なお、以下ではLTEシステムにおける用語「D2D」を用いずに、より一般的な用語「端末間通信」を用いて説明を進めるが、「端末間通信」を「D2D」と適宜読み替えても構わない。
【0017】
さて、上述したように、端末間通信はPublic Safety(公衆安全)対応への導入が検討されている。これにより、例えば災害時に基地局10が動作停止した場合であっても、端末間通信(D2D)により無線通信を継続できることが期待されている。通常の運用において基地局10が単独で動作停止した場合、いくつかの条件が揃えば、当該基地局10に接続していた無線端末20は周辺基地局(後述の
図2の第1基地局10b)へ接続を試みることにより無線通信を継続できる。しかしながら、大地震等の災害時にはある地域の基地局10が一斉に動作停止する場合が想定されるため、無線端末20は周辺基地局10bへの接続も不可能となりうる。このような、いわば基地局10が不在の状況において、端末間通信は有効な打開策として機能しうると考えられる。
【0018】
なお、本願で取り扱う基地局10の「動作停止」とは、基地局10の一部の機能が不具合等により停止するような場合というよりも、基地局10の全部または大部分が機能不全に陥った場合を想定している。具体的には、例えば基地局10が大地震により大破したような場合である。本願においては「動作停止」をダウンあるいはクラッシュ等と読み替えてもよい。
【0019】
ここで、通信中の無線端末20が大地震等の災害に遭遇し、当該無線端末20が接続する基地局10に加えて周辺基地局10bもが軒並み動作停止した場合に、当該無線端末20がどのように振る舞うかを現状の3GPPの仕様に沿って概観する。
【0020】
図1に、現状の3GPPの仕様に沿った災害時の無線通信システムの処理シーケンスの一例を示す。なお、本願においては
図1に示す技術を参考技術と称する。
【0021】
図1には、2台の無線端末20である第1無線端末20aと第2無線端末20b、および2台の基地局10である第1基地局10aと第2基地局(後述の
図2の第1基地局10b)による処理が記載されている。なお、以下では特に断りがない限り、第1無線端末20aと第2無線端末20bとをまとめて単に無線端末20と称し、第1基地局10aと第2基地局10bとをまとめて単に基地局10と称することにする。
【0022】
まず、
図2のS101に示されるように、前提として、無線端末20はコネクティドモードとなっているものとする。コネクティドモードは3GPPの仕様においてRRC_CONNECTEDと規定されており、基地局10に接続している状態を指す。ここで「接続」とは、無線端末20と基地局10との間で同期した無線リンクが確立されているとともに、基地局10が無線端末20の無線リソースを管理し、無線端末20が基地局10との間で無線通信をいつでも行える状態をいう。
【0023】
今、第1無線端末20aと第2無線端末20bとが第1基地局10aに接続しているものとする。このとき、第1基地局10aは第1無線端末20aと第2無線端末20bにとって自セル10a(自局10a)であり、接続基地局10aに相当する。一方、第2基地局10bは第1無線端末20aと第2無線端末20bにとって他セル10b(他局10b)であり、周辺基地局10bに相当する。
【0024】
ここで、周辺基地局10bとは、無線端末20が少なくとも無線信号の測定を行える程度に無線端末20に近い基地局10のうちで接続基地局10aを除くものを指す。周辺基地局10bは隣接基地局と称されることもあるが、必ずしも接続基地局10aに対応する自セル10aと周辺基地局10bに対応する他セル10bとが物理的に隣接している必要はないことに留意されたい。また、
図2及び以降の図においては紙面の都合により他セル10bを1つしか示していないが、他セル10bは複数存在するのが通常であることにも併せて留意されたい。
【0025】
図2のS102で、一例として、第1無線端末20aと第2無線端末20bとが第1基地局10aを経由して互いに無線通信を行っている。S102の無線通信は、いわゆる端末間通信ではなく、基地局10を備える無線通信システムにおける従来型の無線通信に相当するものである。
【0026】
このような場合に、無線端末20が大地震等の災害に遭遇したものとする。そして、
図2のS103に示されるように、自セル10aである第1基地局10aに加えて他セル10bである第2基地局10bもが軒並み動作停止したものとする。これにより、基地局10は無線信号(下り信号)の送信を行えなくなる。
【0027】
このとき、
図2のS104に示されるように、無線端末20は、自セル10aである第1基地局10aとの間の無線問題(radio problem)を検出する。無線問題は無線通信の不調に相当し、例えば無線リンクの同期外れ等を含む。無線問題は種々の方法で検出することができるが、例えば基地局10が定期的に送信する同期信号の検出の成否により行うことができる。
【0028】
このとき無線端末20は、
図2のS105に示されるように、自セル10aである第1基地局10aへの再接続を試行し、無線問題からの復旧を図る。これは、無線問題が、単なる同期外れや一時的な無線リンクの品質悪化に伴うものであるかもしれないためである。この時点では、無線端末20は無線問題の原因が、例えば単なる同期外れなのか、自分が自セル10aのカバレージから外れたのか、あるいはそれ以外の理由(周辺セルの一斉動作停止を含む)によるものなのか、区別することができない。そのため、無線端末20はまず、自セル10aへの再接続を試み、無線問題からの復旧を図るのである。
【0029】
しかしながら、自セル10aである第1基地局10aはS103で動作停止しているため、S105において無線端末20の再接続の試行は失敗する。再接続に失敗した場合には無線端末20は再接続を再試行し、さらに失敗した場合には再試行を繰り返す。そして、所定時間T1(事前に設定されるパラメータ)が経過しても再接続が成功しなかった場合、無線端末20は無線リンク障害(radio rink failure)の発生を認識し、次の段階に移行する。なお、このとき無線端末20においては前述したコネクティドモードが維持される。
【0030】
次に無線端末20は、
図2のS106に示されるように、第2基地局10bを含む他セル10b(周辺基地局10b)への接続を試行する。これは、無線端末20と自セル10a(第1基地局10a)との無線リンク障害の理由が、無線端末20自身が移動したこと等によって自セル10aのカバレージを外れたためであるかもしれないためである。この時点において、無線端末20は無線リンク障害の原因がカバレージによるものなのか、それ以外の理由(周辺セルの一斉動作停止を含む)によるものなのか、区別することができない。そのため無線端末20は、1つ以上の他セル10bから1つを選択して接続を試み、いずれかの他セル10bとの無線リンクの確立を図るのである。このような基地局10の選択処理はセル選択(cell selection)と呼ばれる。より具体的には、無線端末20は、1つ以上の他セル10bのそれぞれから無線信号の受信を試み、受信できた無線信号に基づいて1つの他セル10bを選択し(例えば受信強度最大のものを選択)、選択した他セル10bへの接続を試みる。
【0031】
しかしながら、いずれの他セル10b(周辺基地局10b)も動作停止している前提であるため、無線端末20の他セル10bへの接続の試行はいずれの他セル10bに対しても失敗する。他セル10bへの接続に失敗した場合無線端末20は接続を再試行し、さらに失敗した場合には再試行を繰り返す。そして、所定時間T2(事前に設定されるパラメータ)が経過してもいずれかの他セル10bへの接続が成功しなかった場合、
図2のS107に示されるように、無線端末20はコネクティドモードからアイドルモードへと遷移する。アイドルモードは、3GPPの仕様においてRRC_IDLEと規定されており、いわゆる待受け状態に相当する。
【0032】
その後はアイドルモードが維持されるが、無線端末20に上りデータが発生する等した場合、無線端末20はコネクティドモードに復帰すべくいずれかのセル(基地局10)への接続を試みる。しかしながら、自セル10aに加え他セル10bも軒並み動作停止しているため、コネクティドモードへの復帰は叶わない。よって、無線端末20は基地局10を介した無線通信を行うことはできないまま、時間及び消費電力を浪費しうる。
【0033】
以上が、無線端末20が大地震等の災害に遭遇した場合の、現状の3GPPの仕様に沿った手順となる。
【0034】
ここで、もし基地局10経由の通信が不可能または困難であることをユーザが認識すれば、
図2のS108に示されるようにユーザが無線端末20を明示的に操作することにより、S109に示されるように無線端末20がアイドルモードから端末間通信モードに遷移することが考えられる。これにより、S110に示されるように、無線端末20は端末間通信を開始することができる。
【0035】
しかしながら、
図2に示される参考技術のように端末間通信の開始をユーザの操作に委ねると、端末間通信を適切なタイミングで開始できない可能性が高まると考えられる。例えば、ユーザが無線通信の不調までは認識できたとしても、その理由が基地局10の一斉動作停止によるものであることまでは把握できない。無線通信の不調の原因としては、単なる同期外れ、一時的な無線リンクの品質悪化、カバレージからの逸脱等に加え、特に災害時には通信の輻輳による不調の発生も想起されやすい。そのため、ユーザはしばらくすれば通信不調が解消されると考え、特段の措置を行わないことが容易に想像される。しかしながら、基地局10が動作停止から復旧したり移動基地局10(nomadicな基地局10)を設置するには相当の時間がかかるため、通信不調は長時間解消されないことになる。これにより、無線端末20は長時間にわたって無線通信の機会を逸するとともに、上述した手順のように、消費電力が浪費されることになる。
【0036】
以上をまとめると、大地震などの災害によって自セル10aに加え他セル10bもが一斉に動作停止となった場合、従来の3GPPの仕様にそのまま従うと、端末間通信を適切なタイミングで開始するのが困難となる。これにより、災害時に無線通信の継続性が損なわれるとともに、無線端末20の消費電力が浪費されるという問題が発生する。なお、この問題は、発明者が従来技術を仔細に検討した結果として新たに見出したものであり、従来は知られていなかったものである。また、以上の説明はLTEシステムに即して行ってきたが、この問題はLTEシステムに限られず、これと同様の無線通信システムも備えうることに留意されたい。以降では、この問題を解決するための本願の各実施形態を順に説明する。
【0037】
[第1実施形態]
第1実施形態は、無線端末20であって、該無線端末20が無線局との間に確立している第1無線リンクを維持できないと判断した後に、該無線局以外のいずれかの他無線局を選択して第2無線リンクを確立する処理を開始してからの累積処理時間または該処理の失敗回数が第1閾値に達した場合に、該無線端末20を待受け状態に遷移させる制御部を備え、前記制御部は、前記第1無線リンクまたは前記第2無線リンクの品質に応じて、前記無線端末20を前記待受け状態に遷移させることなく、端末間通信を開始するまたは該端末間通信の開始を促す無線端末20を備える無線通信システムに係る実施形態である。
【0038】
ここで、上記の無線局としては典型的には基地局10が考えられるが、第3の無線端末20等を含むその他の無線通信装置であってもかまわない。一例としては、災害等により基地局10が機能しなくなったときに、無線端末20が基地局10の機能を代理する場合が考えられる。本実施形態および後述する各実施形態においては、無線局が基地局10である場合を説明するが、これに限られないことに留意されたい。
【0039】
以下ではLTEシステムにおいて本願発明を適用した場合を説明する。しかしながら、本願発明はLTEシステムに限定されるものではなく、上記で説明した問題を有する同様の無線通信システムも適用可能なことに留意されたい。
【0040】
また、第1実施形態においては、上述した参考技術(
図2)と共通または類似する処理も多い。そこで、以下では第1実施形態において参考技術と異なる点を中心に詳しく述べる。第1実施形態においては、参考技術と重複する説明は適宜割愛されていることに留意されたい。
【0041】
図3は第1実施形態に係る処理シーケンスの一例を示す図である。
図3に示す第1実施形態の前提は、
図2に示した参考技術と同様であるため、説明は割愛する。
【0042】
まず、
図3のS201に示されるように、無線端末20はコネクティドモードとなっている。S201は、
図2のS101と同様であるため、ここでは説明を割愛する。
【0043】
図3のS202において、第1基地局10a(自セル10a)は、第1無線端末20aと第2無線端末20bとに対し、端末間通信の開始条件に関する情報を送信する。この情報を以下では便宜上、端末間通信開始条件と称する。なお、ここでは「情報」を「信号」「メッセージ」等と読み替えてもよい。
【0044】
本願における端末間通信開始条件は、少なくとも前述した時間T2に関するものを含むものとする。また、端末間通信開始条件に前述したT1をさらに含むものとしてもよい。ここで、T1は無線リンクの不調時に自セル10aへの接続を試みる時間に相当し、T2はT1の後に他セル10bへの接続を試みる時間に相当する。
【0045】
端末間通信開始条件としては、例えば時間T2における他セル10bへの接続の最大失敗回数(便宜上M2とする)とすることができる。また、端末間通信開始条件を、T2以内で周辺基地局10bへの接続を試みる時間(便宜上T’2とする)とすることもできる。T’2は、T2以内で周辺基地局10bへの接続を試みる累積処理時間の上限値に相当する。そのため、0≦T’2≦T2が成り立つ。端末間通信開始条件であるM2やT’2を大きくすると、端末間通信の開始の判断の精度は高まるが、端末間通信の開始が遅くなる。他方、これらを小さくすると、端末間通信の開始は早まるが、端末間通信の開始の判断の精度が低下しうる。そのため、これらのパラメータは、端末間通信開始の判断精度と開始タイミングのバランスを考慮して決定するのが望ましい。
【0046】
他セル10bへの接続試行時間であるT2に対して端末間通信開始条件としてM2やT’2を設定するように、自セル10aへの接続試行時間であるT1に対しても端末間通信開始条件としてM1やT’1を設定することもできる。また、自セル10aへの接続試行については端末間通信開始条件を特に設定せず、無条件に省略(スキップ)することとしてもよい。自セル10aへの接続の試行を行うまでもない場合も多いと考えられるためである。
【0047】
S202の端末間通信開始条件は、例えばRRC信号により基地局10から無線端末20へ送信される。
図2においては、無線端末20がコネクティドモードとなった後に端末間通信開始条件を受信している例を示しているが、端末間通信開始条件は無線端末20がコネクティドモードに遷移するための処理中に送信されるものとしてもよい。
【0048】
図3のS203で、一例として、第1無線端末20aと第2無線端末20bとが第1基地局10aを経由して互いに無線通信を行っている。S203の無線通信は、いわゆる端末間通信ではなく、基地局10を備える無線通信システムにおける従来型の無線通信に相当するものである。
【0049】
このような場合に、無線端末20が大地震等の災害に遭遇したものとする。そして、
図3のS204に示されるように、自セル10aである第1基地局10aに加えて他セル10bである第2基地局10bもが軒並み動作停止したものとする。これにより、基地局10は無線信号(下り信号)の送信を行えなくなる。
【0050】
このとき、
図3のS205で無線端末20は、端末間通信の開始を判定するためのトリガとなる事象を検出したものとする。この事象を以下では便宜上、端末間通信開始判定トリガと称する。本実施形態においては、端末間通信開始判定トリガを検出した場合に、端末間通信の開始の要否を速やかに判定することによって、上述した参考技術に伴う問題の解決を図る。
【0051】
端末間通信開始判定トリガとしては、少なくとも自セル10aとの無線リンクの維持が不可能または困難であることを示唆するとともに、近隣の基地局10(自セル10aと他セル10bとを含む)の一斉動作停止の可能性が示唆されるような事象を採用することができる。端末間通信開始判定トリガは、単独の事象であってもよいし、複数の事象の組合せでも構わない。端末間通信開始トリガの具体例については後述する他の実施形態に説明を譲る。
【0052】
なお、本実施形態における端末間通信の開始の判定は、後述するように、自セル10a・他セル10bへの接続の試行に基づいて行われる。その点からすれば、端末間通信開始判定トリガは、参考技術においてセルへの接続の試行のトリガとなっている「無線問題」に対応する事象であると考えることができる。そのため、端末間通信開始判定トリガの検出は、無線問題を含む複数の事象の検出により実現することができる。ただし、自セル10aの動作停止の可能性が非常に高い等といったように、無線問題を検出するまでもないような場合には、端末間通信開始判定トリガに無線問題を含まないようにすることもできる。いずれにせよ、端末間通信開始判定トリガの詳細については後述する他の実施形態を参照されたい。
【0053】
図3のS205で端末間通信開始判定トリガを検出すると、S206で無線端末20は、端末間通信開始判定を開始する。前述したように、本実施形態における端末間通信の開始の判定は、自セル10a・他セル10bへの接続の試行に基づいて行う。また、無線端末20は、S202で受信した端末間通信開始条件に基づいて、端末間通信開始判定を行う。
【0054】
S206の具体例を説明する。ここでは、S202の端末間通信開始条件として、他セル10bへの接続試行に対してM2(上述)を採用した場合を例に説明する。また、この例においては、自セル10aへの接続試行は無条件に省略するものとする。
【0055】
この場合、S206において無線端末20は、自セル10aへの接続試行は行わずに、他セル10bへの接続の試行を開始する。すなわち、無線端末20は自セル10aへの再接続の試行を省略する。
【0056】
引き続きS206において無線端末20は、他セル10bへの接続試行については、最大でM2回までしか行わないこととする。これにより、他セル10bへの接続が成功しておらず且つ時間T2が経過していなくとも、他セル10bへの接続試行の失敗がM2回に達した時点で、他セル10bへの接続試行を完了する。換言すれば、端末は他セル10bへの接続試行を、他セルとの間の無線リンク品質に応じて、時間T2が経過する前に打ち切ってしまうのである。
【0057】
ここで、S206において他セル10bへの接続試行の失敗がM2回に達する前に成功した場合には、端末間通信を開始しないものとする(すなわち端末間通信を不要と判断する)。他セル10bを経由して無線通信を行えるため、端末間通信を行う必要がないためである。この場合、無線端末20においてはコネクティドモードが維持されることになる。
【0058】
これに対し、S206において他セル10bへの接続試行の失敗がM2回に達した場合には、端末間通信を開始するものとする(すなわち端末間通信を要と判断する)。このとき、
図3に示されるように、S207で無線端末20はコネクティドモードから端末間通信モードに遷移し、S208で端末間通信を開始する。なお、端末間通信の動作モードとしては、(例えば遭難信号等の)送受信を行うモード、中継送信を行うリレーモード、待受けモード等が考えられる。状況に応じてこれらを適宜切り替えることにより、効果的な端末間通信を行うことが可能となる。
【0059】
ここで、本実施形態に係る
図3におけるS206〜S208の処理を、前述した参考技術に係る
図2において対応する処理と比較する。
【0060】
まず、参考技術においては無線端末20が他セル10bにも接続できなかった場合(S106)にアイドルモードに移行して待ち受け状態となっていた(S107)。そのため、その後にユーザの操作により端末間通信が開始されるまでに遅延が生じていた。これに対し、本実施形態においては無線端末20が他セル10bにも接続できなかった場合(S206)に端末間通信モードに移行して端末間通信を開始している(S207〜S208)。そのため、参考技術のような遅延が生じることがない。したがって、無線端末20は、基地局10の一斉動作停止が見込まれる状況において、適切なタイミングで迅速に端末間通信を開始できる。その結果、無線端末20が無線通信を継続的に行うことが可能となるのみならず、待受け状態後の基地局10への接続の試行が回避されるため、無線端末20の消費電力の抑制も期待できると考えられる。
【0061】
次に、本実施形態に係る
図3のS206においては、上述したように、無線端末20は自セル10aへの再接続の試行を省略することとしている。これは、端末間通信開始判定トリガの検出により、少なくとも自セル10aの動作停止については可能性が高いと考えられるため、自セル10aへの再接続は不要または必要性が非常に低いと考えられるためである。こうすることで、端末間通信の開始のタイミングをさらに早めるとともに、無線端末20における電力消費をさらに抑制することができる。
【0062】
さらに、本実施形態に係る
図3のS206においては、無線端末20は他セル10bへの接続の試行を最大でM2回までしか行わないこととしている。換言すれば、S206においては、他セル10bへの接続の試行を、たとえ成功しておらず且つ時間T2が経過していなくとも、M2回までしか行わないのである。これは、端末間通信開始判定トリガの検出により他セル10bの一斉動作停止についても可能性が比較的高いと考えられるため、これらへの接続の試行は通常よりも早めに見切りをつけても問題が少ないと考えられるためである。また、こうすることで、端末間通信の開始のタイミングをさらに早めるとともに、無線端末20における電力消費をさらに抑制することができる。
【0063】
ここで、上記で説明したS206〜S208の処理は、S205における端末間通信開始判定トリガの検出を前提としていることに留意されたい。すなわち、端末間通信開始判定トリガが検出されていない場合(例えば単に無線問題が検出されたに留まる場合)には、無線端末20は従来の3GPP仕様に沿った処理(
図2のS105〜S107に対応)を行う。そのため、例えば単に無線端末20と自セル10aとの間の無線リンクが一時的に悪化した場合には、従来の3GPPの仕様に沿って、自セル10aへの再接続処理が当然に行われる。このように、本実施形態においては、基地局10の一斉動作停止が見込まれるような場合でない限り、必要な処理手順が省略されたり、不要な端末間通信が開始されるようなことにはならないことを付言しておく。
【0064】
なお、端末間通信を開始した後については、例えば基地局10からの同期信号が検出された場合に、無線端末20は端末間通信を終了する。ここで、同期信号を送信した基地局10が自セル10aか、他セル10b(S206で接続を試行したセル)か、あるいはそれ以外のセル(例えばNomadicセル)であるかは問わない。いずれにしても、基地局10からの同期信号が検出された場合には端末間通信を行う必要が無くなるためである。無線端末20は、その後は当該基地局10を経由しての無線通信を行うことになる。
【0065】
以上で説明した第1実施形態によれば、無線端末20は当初は自セル10a(接続基地局10a)を介して無線通信を行っていたが、基地局10の一斉動作停止に伴い端末間通信に一旦移行し、その後の基地局10の復旧等に伴い基地局10を介しての無線通信に復帰している。また、無線端末20は基地局10への接続を通常よりも早期に諦めて、端末間通信を適切なタイミングで速やかに開始することができる。これにより、従来技術と比較して無線通信の中断を大幅に抑制することができるとともに、無線端末20における無駄な電力消費を抑制することが可能となる。したがって、第1実施形態によれば、上述した参考技術が備える問題を解決することが可能となる。
【0066】
[第2実施形態]
第2実施形態は第1実施形態をより具体的に実現するものであり、特に、端末間通信開始判定トリガとしてETWS信号および信号停止を採用するものである。
【0067】
第2実施形態は第1実施形態をより具体的に実現するものであるため、以下では第2実施形態において第1実施形態と異なる点を中心に詳しく述べる。第2実施形態においては、第1実施形態と重複する説明は適宜割愛されていることに留意されたい。
【0068】
図4は第2実施形態に係る処理シーケンスの一例を示す図である。
図4に示す第2実施形態の前提は、上述した参考技術や第1実施形態と同様であるため、説明は割愛する。
【0069】
図4のS301〜S303については、
図3の201〜S203と同様であるため詳細な説明は割愛する。なお、本実施形態においては、第一実施形態における例示と同様に、無線端末20間開始条件として他セル10bへの接続試行に対してM2(上述)を採用するとともに、自セル10aへの接続試行は無条件に省略するものとする。ただし、これらは一例にすぎず、端末間通信はこれらに限られないことに留意されたい。
【0070】
ここで、無線端末20が大地震等の災害に遭遇するものとする。このとき、S304で自セル10aである第1基地局10は、無線端末20に対してETWS(Earthquake and Tsunami Warning System)情報を送信する。
【0071】
ETWS情報は、3GPPにおいて規定されている既存の放置情報の一種である。ETWS情報は無線端末20が地震や津波等の災害の際に警報音を発する機能のトリガとして用いられる放置情報であり、地震や津波の予兆に基づいてこれらに先立って無線端末20に送信される。例えば地震については、地震の初期微動であるP波を観測することで地震の発生を予測できることを利用して、地震による振動が発生する前にETWS情報を無線端末20に送信できるのである。なお、地震の予測は上位装置により行われ、基地局10は上位装置から受信した予測情報に基づいて無線端末20にRTW情報を送信する。
【0072】
その後、
図4のS305に示されるように、自セル10aである第1基地局10aに加えて他セル10bである第2基地局10bもが軒並み動作停止したものとする。これにより、基地局10は無線信号(下り信号)の送信を行えなくなる。
【0073】
このとき、
図4のS306で無線端末20は、自セル10aの信号停止を検出する。例えば無線端末20は、基地局10が定期的に送信する下り信号である同期信号に基づいて、自セル10aの信号停止を検出することができる。LTEシステムにおいては、同期信号としてPSS(Primary Synchronization Signal)とSSS(Secondary Synchronization Signal)の2種類が規定されており、無線端末20はこれらを利用することができる。
【0074】
本実施形態においては、上述したように、
図4のS304におけるETWS情報の受信とS306における自セル10aの信号停止の検出とをもって、端末間通信開始判定トリガが検出されたものとする。これにより、S307において無線端末20は、端末間通信の判定を行う。本実施形態においては、上述したように、無線端末20間開始条件として他セル10bへの接続試行に対してM2(上述)を採用するとともに、自セル10aへの接続試行は無条件に省略する。そのためS307において無線端末20は、自セル10aへの接続試行を省略し、他セル10bへの接続試行はM2回を上限として行う。
図4のS307〜S309は、
図3のS206〜S208と同様であるため、詳細な説明は割愛する。
【0075】
ここで、本実施形態における端末間通信開始判定トリガとして、ETWS情報と自セル10aの信号停止の検出との組合せを採用した理由を説明する。ETWS情報は地震の発生時に送信される規定の報知情報であるが、精度や情報量の点で必ずしも十分ではない側面があり、これのみをもって端末間通信開始判定トリガとするのは望ましくないと考えられる。一方、自セル10aの信号停止は、自セル10aが動作停止した場合以外でも検出されうるため(例えば、トンネル内等のように信号が非常に届きにくい場合)、やはりこれのみをもって端末間通信開始判定トリガとするのは望ましくないと考えられる。そこで、本実施形態においては、これらを組合せて端末間通信開始判定トリガとして採用することとしたものである。
【0076】
以上で説明した第2実施形態によれば、無線端末20は当初は自セル10a(接続基地局10a)を介して無線通信を行っていたが、基地局10の一斉動作停止に伴い端末間通信に一旦移行し、その後の基地局10の復旧等に伴い基地局10を介しての無線通信に復帰している。また、無線端末20は基地局10への接続を通常よりも早期に諦めて、端末間通信を適切なタイミングで速やかに開始することができる。これにより、従来技術と比較して無線通信の中断を大幅に抑制することができるとともに、無線端末20における無駄な電力消費を抑制することが可能となる。したがって、第2実施形態によれば、上述した参考技術が備える問題を解決することが可能となる。
【0077】
[第3実施形態]
第3実施形態は第2実施形態と同様に第1実施形態をより具体的に実現するものであり、特に、端末間通信開始判定トリガとして起動停止信号を採用するものである。
【0078】
第3実施形態は第2実施形態と共通する部分が多いため、以下では第3実施形態において第2実施形態と異なる点を中心に詳しく述べる。第3実施形態においては、第2実施形態と重複する説明は適宜割愛されていることに留意されたい。
【0079】
図5は第3実施形態に係る処理シーケンスの一例を示す図である。
図5に示す第3実施形態の前提は、上述した参考技術や各実施形態と同様であるため、説明は割愛する。
【0080】
図5のS401〜S403については、
図4の301〜S303と同様であるため詳細な説明は割愛する。なお、本実施形態においては、第一実施形態における例示と同様に、無線端末20間開始条件として他セル10bへの接続試行に対してM2(上述)を採用するとともに、自セル10aへの接続試行は無条件に省略するものとする。ただし、これらは一例にすぎず、端末間通信はこれらに限られないことに留意されたい。
【0081】
次に災害が発生し、
図5のS404で基地局10は動作停止情報を無線端末20に送信する。ここで、動作停止信号は、基地局10が動作停止することを無線端末20に示す(あるいは予告する)ための信号である。
【0082】
動作停止信号については2種類のバリエーションが考えられる。動作停止信号の第1のバリエーションとしては、基地局10が自分自身のみの動作停止を無線端末20に示すことが考えられる。一例としては、基地局10がETWS情報に基づいて震源の強さや震源からの距離を認識し、これらに基づいて自分が停止する可能性を見積もり、可能性が高い場合に動作停止信号を無線端末20に送信することが考えられる。また、基地局10が現実に地震の振動を検知する等して、正常な運用が不可能と判断した場合に動作停止信号を無線端末20に送信することが考えられる。
【0083】
動作停止信号の第2のバリエーションとしては、基地局10が自分自身のみならず他の周辺基地局10bも含めた一斉動作停止を無線端末20に示すことが考えられる。一例としては、基地局10がETWS情報に基づいて震源の強さや震源の位置を認識し、これらと予め取得した他基地局10の位置等とに基づいて自分および他基地局10が一斉に停止する可能性を見積もり、可能性が高い場合に動作停止信号を無線端末20に送信することが考えられる。また、基地局10は、一定数の他基地局10から動作を停止する旨の信号を受信した場合に、動作停止信号を無線端末20に送信することも考えられる。
【0084】
ここで、動作停止信号の第1のバリエーションについては、ある基地局10自身のみの動作停止を示すものであるため、必ずしも基地局10の一斉動作停止に結び付くものではない。そのため、これを単独で端末間通信開始判定トリガとするのは不十分であり、例えばこれとETWS情報とを組み合わせて端末間通信開始判定トリガとするのが望ましい。これに対し、動作停止信号の第2のバリエーションについては、単独で端末間通信開始判定トリガとすることができる。
図5は、第2のバリエーションの動作停止信号を採用した場合の処理シーケンスであることに留意されたい。第1のバリエーションの動作停止信号を採用した場合には、ETWS信号の送受信を行うのが望ましい。
【0085】
その後、
図5のS405で基地局10は動作を停止するが、無線端末20はS404で端末間通信開始判定トリガを検出できる。これにより、S406で無線端末20は端末間通信の開始の判定、より具体的には例えば他セル10bへの接続の試行を行う。
図5のS406〜S408は、
図4のS307〜S309と同様であるため、詳細な説明は割愛する。
【0086】
なお、
図5は端末間通信開始判定トリガとして起動停止信号を採用した場合に対応するが、これらにさらに無線問題検出を組み合わせることもできる。ここで、無線問題検出とは
図2の104に対応する処理である。3GPPの従来の仕様においては無線問題検出がセル接続試行のトリガとなっているため、無線問題検出を組み合わせることにより当該仕様と本実施形態との整合性がより強まるものと考えられる。
【0087】
以上で説明した第3実施形態によれば、無線端末20は当初は自セル10a(接続基地局10a)を介して無線通信を行っていたが、基地局10の一斉動作停止に伴い端末間通信に一旦移行し、その後の基地局10の復旧等に伴い基地局10を介しての無線通信に復帰している。また、無線端末20は基地局10への接続を通常よりも早期に諦めて、端末間通信を適切なタイミングで速やかに開始することができる。これにより、従来技術と比較して無線通信の中断を大幅に抑制することができるとともに、無線端末20における無駄な電力消費を抑制することが可能となる。したがって、第3実施形態によれば、上述した参考技術が備える問題を解決することが可能となる。
【0088】
[第4実施形態]
第4実施形態は第2〜第3実施形態と同様に第1実施形態をより具体的に実現するものであり、特に、端末間通信開始判定トリガとして無線端末20自身による振動の検出を採用するものである。
【0089】
第4実施形態は第2実施形態と共通する部分が多いため、以下では第4実施形態において第2実施形態と異なる点を中心に詳しく述べる。第4実施形態においては、第2実施形態と重複する説明は適宜割愛されていることに留意されたい。
【0090】
図6は第4実施形態に係る処理シーケンスの一例を示す図である。
図6に示す第4実施形態の前提は、上述した参考技術や各実施形態と同様であるため、説明は割愛する。
【0091】
図6のS501〜S503については、
図4の301〜S303と同様であるため詳細な説明は割愛する。なお、本実施形態においては、第一実施形態における例示と同様に、無線端末20間開始条件として他セル10bへの接続試行に対してM2(上述)を採用するとともに、自セル10aへの接続試行は無条件に省略するものとする。ただし、これらは一例にすぎず、端末間通信はこれらに限られないことに留意されたい。
【0092】
次に災害が発生すると、
図6のS504で無線端末20自身が地震の振動(揺れ)を検出する。ここで、無線端末20による振動の検出は、例えば無線端末20が備える加速度センサによって実現することができる。ここでの加速度センサによる地震の検出においては、検出精度を高めるための技術も含めて、既存のあらゆる技術を用いることができることは言うまでもない。
【0093】
本実施形態においては、無線端末20自身による振動の検出を端末間通信開始判定トリガとしている。そのため
図6のS505で基地局10は動作を停止するが、無線端末20はS504で端末間通信開始判定トリガを検出できる。これにより、S506で無線端末20は端末間通信の開始の判定、より具体的には例えば他セル10bへの接続の試行を行う。
図6のS506〜S508は、
図4のS307〜S309と同様であるため、詳細な説明は割愛する。
【0094】
なお、
図6は端末間通信開始判定トリガとして無線端末20による振動の検出を採用した場合に対応するが、これらにさらに無線問題検出を組み合わせることもできる。ここで、無線問題検出とは
図2の104に対応する処理である。3GPPの従来の仕様においては無線問題検出がセル接続試行のトリガとなっているため、無線問題検出を組み合わせることにより当該仕様と本実施形態との整合性がより強まるものと考えられる。
【0095】
また、加速度センサ等を用いた地震の振動の検出は、検出精度が十分であるとは限らないため、他の事象と組み合わせた方が望ましいとも考えられる。この考え方に従い、端末間通信開始判定トリガとして、無線端末20による振動の検出とその他の事象の組合せとしてもよい。その場合、その他の事象としては、例えば無線問題検出以外に、前述した信号停止検出(
図4のS306に対応)やETWS情報の受信(
図4のS304に対応)等を採用することができる。
【0096】
以上で説明した第4実施形態によれば、無線端末20は当初は自セル10a(接続基地局10a)を介して無線通信を行っていたが、基地局10の一斉動作停止に伴い端末間通信に一旦移行し、その後の基地局10の復旧等に伴い基地局10を介しての無線通信に復帰している。また、無線端末20は基地局10への接続を通常よりも早期に諦めて、端末間通信を適切なタイミングで速やかに開始することができる。これにより、従来技術と比較して無線通信の中断を大幅に抑制することができるとともに、無線端末20における無駄な電力消費を抑制することが可能となる。したがって、第4実施形態によれば、上述した参考技術が備える問題を解決することが可能となる。
【0097】
[各実施形態の変形例]
ここでは上述した各実施形態の変形例を説明する。これらは上述した各実施形態に任意に組み合わせることができる。
【0098】
第1の変形例として、メジャメントレポート(measurement report)に関する変形例を説明する。上述した各実施形態においては、地震発生後に端末間通信が開始されるまで無線端末20はコネクティドモードが維持される。そのため、この間は、3GPPの仕様によれば、自セル10a及び周辺セルから送信された各無線信号の測定(メジャメント)が行われ、メジャメントレポートが自セル10aに送信される。
【0099】
ここで、メジャメントレポートの送信タイミングはパラメータ化されているが、一般的に比較的高い頻度で繰り返し行われることが多い。メジャメントレポートの頻度が低いと、これを用いて適切なタイミングでハンドオーバーができなくなる恐れがあるためである。しかしながら、地震発生後に端末間通信が開始されるまでの間はハンドオーバーを行うことはないため、測定およびメジャメントレポートを何度も繰り返し行うのは消費電力や無線リソースなどの観点で無駄が大きいと考えられる。
【0100】
そこで、地震発生後、すなわち無線端末20が端末間通信開始判定トリガを検出した後においては、無線端末20はメジャメントレポートの送信を自律的に制限することが考えられる。例えば、メジャメントレポートの回数に上限を設けたり、頻度を減らしたり、あるいはまったく行わないようにすることも考えられる。こうすることで、前述した問題を解消することができると考えられる。
【0101】
なお、これと同様の考え方に基づき、他システム向けの測定を行うための期間であるメジャメントギャップに制限を設けることも考えられる。ここでは詳細は割愛する。
【0102】
第2の変形例として、端末間通信の開始に関する変形例を説明する。上述した各実施形態においては、端末間通信開始判定において端末間通信が要と判断されると、無線端末20がコネクティドモードから端末間通信モードに遷移し、端末間通信が自律的に開始されていた(例えば
図3のS206〜S208等)。しかしながら、このように端末間通信を自律的に開始するのは、端末間通信開始判定トリガの誤検出や端末間通信開始判定の誤判定の可能性も残されていることを踏まえると、一考の余地があるようにも思われる。
【0103】
そこで、端末間通信開始判定において端末間通信が要と判断された場合、ユーザに端末間通信の開始を促すことが考えられる。例えば、警報音や画面表示等によりユーザに端末間通信の開始を提案し、端末間通信の開始許可の確認をユーザに求めることが考えられる。そして、ユーザが端末間通信を許可した場合のみ、無線端末20はコネクティドモードから端末間通信モードに遷移し、端末間通信を開始するのである。こうすることで、前述した問題を解決することができると考えられる。
【0104】
[各実施形態の無線通信システムのネットワーク構成]
次に
図7に基づいて、各実施形態の無線通信システム1のネットワーク構成を説明する。
図7に示すように、無線通信システム1は、基地局10と、無線端末20とを有する。なお、
図7においては2台の無線端末20である無線端末20aと無線端末20bが例示されているが、これは一例にすぎないのは言うまでもない。基地局10は、セルC10を形成している。無線端末20はセルC10に存在している。
【0105】
基地局10は、有線接続を介してネットワーク装置3と接続されており、ネットワーク装置3は、有線接続を介してネットワーク2に接続されている。基地局10は、ネットワーク装置3およびネットワーク2を介して、他の基地局10とデータや制御情報を送受信可能に設けられている。
【0106】
基地局10は、無線端末20との無線通信機能とデジタル信号処理及び制御機能とを分離して別装置としてもよい。この場合、無線通信機能を備える装置をRRH(Remote Radio Head)、デジタル信号処理及び制御機能を備える装置をBBU(Base Band Unit)と呼ぶ。RRHはBBUから張り出されて設置され、それらの間は光ファイバなどで有線接続されてもよい。また、基地局10は、マクロ基地局10、ピコ基地局10等の小型基地局10(マイクロ基地局10、フェムト基地局10等を含む)の他、様々な規模の基地局10であってよい。また、基地局10と無線端末20との無線通信を中継する中継局が使用される場合、当該中継局(無線端末20との送受信及びその制御)も本願の基地局10に含まれることとしてもよい。
【0107】
一方、無線端末20は、
図7に示されるように、無線通信で基地局10と通信を行う。また、
図7においては、一例として、無線端末20aと無線端末20bとが無線端末間通信を行っている。このように、無線端末20は他無線端末20と無線端末間通信を行う。
【0108】
無線端末20は、携帯電話機、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant)、パーソナルコンピュータ(Personal Computer)、無線通信機能を有する各種装置や機器(センサー装置等)などの無線端末20であってよい。また、基地局10と無線端末20との無線通信を中継する中継局が使用される場合、当該中継局(基地局10との送受信及びその制御)も本稿の無線端末20に含まれることとしてもよい。
【0109】
ネットワーク装置3は、例えば通信部と制御部とを備え、これら各構成部分が、一方向または双方向に、信号やデータの入出力が可能なように接続されている。ネットワーク装置3は、例えばゲートウェイにより実現される。ネットワーク装置3のハードウェア構成としては、例えば通信部はインタフェース回路、制御部はプロセッサとメモリとで実現される。
【0110】
なお、基地局10、無線端末20の各構成要素の分散・統合の具体的態様は、各実施形態の態様に限定されず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することもできる。例えば、メモリを、基地局10、無線端末20の外部装置としてネットワークやケーブル経由で接続するようにしてもよい。
【0111】
[各実施形態の無線通信システムにおける各装置の機能構成]
次に、
図8〜
図9に基づいて、各実施形態の無線通信システムにおける各装置の機能構成を説明する。なお、上述したように、無線端末20と述べた場合には、上述した各実施形態における第1無線端末20aと第2無線端末20bとを含むことに留意されたい。
【0112】
図8は、基地局10の構成の一例を示す機能ブロック図である。
図8に示すように、基地局10は、例えば、無線送信部11と、無線受信部12と、制御部13と、記憶部14と、通信部15とを備える。これら各構成部分は、一方向または双方向に、信号やデータの入出力が可能なように接続されている。なお、無線送信部11と無線受信部12とをまとめて無線通信部16と称する。
【0113】
無線送信部11は、データ信号や制御信号を、アンテナを介して無線通信で送信する。なお、アンテナは送信と受信で共通でもよい。無線送信部11は、無線端末20に対して無線信号(下りの無線信号)を送信する。無線送信部11が送信する無線信号には、無線端末20向けの任意のユーザデータや制御情報(符号化や変調等がなされる)、基準信号等を含むことができる。
【0114】
無線送信部11が送信する無線信号の具体例としては、
図3〜
図6において基地局10が無線端末20に対して送信している各無線信号(図中の矢印)が挙げられる。無線送信部11が送信する無線信号は、これらに限らず、上記の各実施形態および変形例で基地局10が無線端末20に対し送信するあらゆる無線信号を含む。
【0115】
無線受信部12は、データ信号や制御信号を、アンテナを介して無線通信で受信する。無線受信部12は、無線端末20から無線信号(上りの無線信号)を受信する。無線受信部12が受信する無線信号には、無線端末20により送信される任意のユーザデータや制御情報(符号化や変調等がなされる)、基準信号等を含むことができる。
【0116】
無線受信部12が受信する無線信号の具体例としては、
図3〜
図6において基地局10が無線端末20から受信している無線信号(図中の矢印)が挙げられる。無線受信部12が受信する信号は、これらに限らず、上記の各実施形態および変形例で基地局10が無線端末20から受信するあらゆる無線信号を含む。
【0117】
制御部13は、無線端末20に送信するデータや制御情報を無線送信部11に出力する。制御部13は、無線端末20から受信されるデータや制御情報を無線受信部12から入力する。制御部13は、後述する記憶部14との間でデータ、制御情報、プログラム等の入出力を行う。制御部13は、後述する通信部15との間で、他の基地局10等を相手に送受信するデータや制御情報の入出力を行う。制御部13はこれら以外にも基地局10における種々の制御を行う。
【0118】
制御部13が制御する処理の具体例としては、
図3〜
図6において基地局10が送受信している各信号(図中の矢印)に対する制御、および基地局10が行っている各処理(図中の矩形)に対する制御が挙げられる。制御部13が制御する処理は、これらに限らず、上記の各実施形態および変形例で基地局10が実行するあらゆる処理に関する制御を含む。
【0119】
記憶部14は、データ、制御情報、プログラム等の各種情報の記憶を行う。記憶部14が記憶する各種情報は、上記の各実施形態および変形例で基地局10において記憶されうるあらゆる情報を含む。
【0120】
通信部15は、有線信号等(無線信号でも構わない)を介して、他の基地局10等を相手にデータや制御情報を送受信する。通信部15が送受信する有線信号等の具体例としては、各実施形態において基地局10が他の基地局10を相手に送受信している各有線信号等が挙げられる。通信部15が送受信する有線信号等は、これらに限らず、上記の各実施形態および変形例で基地局10が他の基地局10等を相手に送受信するあらゆる有線信号等を含む。
【0121】
なお、基地局10は、無線送信部11や無線受信部12を介して無線端末20以外の無線通信装置(例えば他の基地局10や中継局)と無線信号を送受信してもかまわない。
【0122】
図9は、無線端末20の構成の一例を示す機能ブロック図である。
図9に示すように、無線端末20は、例えば、無線送信部21と、無線受信部22と、制御部23と、記憶部24とを備える。これら各構成部分は、一方向または双方向に、信号やデータの入出力が可能なように接続されている。なお、無線送信部21と無線受信部22とをまとめて無線通信部25と称する。
【0123】
無線送信部21は、データ信号や制御信号を、アンテナを介して無線通信で送信する。なお、アンテナは送信と受信で共通でもよい。無線送信部21は、基地局10に対して無線信号(上りの無線信号)を送信する。無線送信部21が送信する無線信号には、基地局10向けの任意のユーザデータや制御情報(符号化や変調等がなされる)、基準信号等を含むことができる。
【0124】
また、無線送信部21は、他の無線端末20に対して無線信号を送信することができる(無線端末間通信)。無線送信部21が送信する無線信号には、他の無線端末20向けの任意のユーザデータや制御情報(符号化や変調等がなされる)、基準信号等を含むことができる。
【0125】
無線送信部21が送信する無線信号の具体例としては、
図3〜
図6において無線端末20が基地局10に対して送信している各無線信号(図中の矢印)、および無線端末20が他の無線端末20に対して送信している各無線信号が挙げられる。無線送信部21が送信する無線信号は、これらに限らず、上記の各実施形態および変形例で無線端末20が基地局10に対し送信するあらゆる無線信号、および無線端末20が他の無線端末20に対して送信しているあらゆる無線信号を含む。
【0126】
無線受信部22は、データ信号や制御信号を、アンテナを介して無線通信で受信する。無線受信部22は、基地局10から無線信号(下りの無線信号)を受信する。無線受信部22が受信する無線信号には、基地局10により送信される任意のユーザデータや制御情報(符号化や変調等がなされる)、基準信号等を含むことができる。
【0127】
また、無線受信部22は、他の無線端末20から無線信号を受信することができる(無線端末間通信)。無線受信部22が送信する無線信号には、他の無線端末20からの任意のユーザデータや制御情報(符号化や変調等がなされる)、基準信号等を含むことができる。
【0128】
無線受信部22が受信する無線信号の具体例としては、
図3〜
図6において無線端末20が基地局10から受信している各無線信号(図中の矢印)、および無線端末20が他の無線端末20から受信している各無線信号が挙げられる。無線受信部22が受信する信号は、これらに限らず、上記の各実施形態および変形例で無線端末20が基地局10から受信するあらゆる無線信号、および無線端末20が他の無線端末20から受信しているあらゆる無線信号を含む。
【0129】
制御部23は、基地局10に送信するデータや制御情報を無線送信部21に出力する。制御部23は、基地局10から受信されるデータや制御情報を無線受信部22から入力する。制御部23は、後述する記憶部24との間でデータ、制御情報、プログラム等の入出力を行う。制御部23はこれら以外にも無線端末20における種々の制御を行う。
【0130】
制御部23が制御する処理の具体例としては、
図3〜
図6において無線端末20が送受信している各信号(図中の矢印)に対する制御、および無線端末20が行っている各処理(図中の矩形)に対する制御が挙げられる。制御部23が制御する処理は、これらに限らず、上記の各実施形態および変形例で無線端末20が実行するあらゆる処理に関する制御を含む。
【0131】
記憶部24は、データ、制御情報、プログラム等の各種情報の記憶を行う。記憶部24が記憶する各種情報は、上記の各実施形態および変形例で無線端末20において記憶されうるあらゆる情報を含む。
【0132】
なお、無線端末20は、無線送信部21や無線受信部22を介して基地局10以外の無線通信装置と無線信号を送受信してもかまわない。
【0133】
[各実施形態の無線通信システムにおける各装置のハードウェア構成]
図10〜
図11に基づいて、各実施形態および各変形例の無線通信システムにおける各装置のハードウェア構成を説明する。なお、上述したように、無線端末20と述べた場合には、上述した各実施形態における第1無線端末20aと第2無線端末20bとを含むことに留意されたい。
【0134】
図10は、基地局10のハードウェア構成の一例を示す図である。
図10に示すように、基地局10は、ハードウェアの構成要素として、例えばアンテナ111を備えるRF(Radio Frequency)回路112と、プロセッサ113と、メモリ114と、ネットワークIF(Interface)115とを有する。これら各構成要素は、バスを介して各種信号やデータの入出力が可能なように接続されている。
【0135】
プロセッサ113は、例えばCPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)である。本願においては、プロセッサ113をデジタル電子回路で実現することとしてもかまわない。デジタル電子回路としては例えば、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programming Gate Array)、LSI(Large Scale Integration)等が挙げられる。
【0136】
メモリ114は、例えばSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等のRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、およびフラッシュメモリの少なくともいずれかを含み、プログラムや制御情報やデータを格納する。この他に、基地局は不図示の補助記憶装置(ハードディスク等)等を備えていても良い。
【0137】
図8に示す基地局10の機能構成と
図10に示す基地局10のハードウェア構成との対応を説明する。無線送信部11および無線受信部12(あるいは無線通信部16)は、例えばRF回路112、あるいはアンテナ111およびRF回路112により実現される。制御部13は、例えばプロセッサ113、メモリ114、不図示のデジタル電子回路等により実現される。記憶部14は、例えばメモリ114により実現される。通信部15は、例えばネットワークIF115により実現される。
【0138】
図11は、無線端末20のハードウェア構成の一例を示す図である。
図11に示すように、無線端末20は、ハードウェアの構成要素として、例えばアンテナ121を備えるRF(Radio Frequency)回路122と、プロセッサ123と、メモリ124とを有する。これら各構成要素は、バスを介して各種信号やデータの入出力が可能なように接続されている。
【0139】
プロセッサ123は、例えばCPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)である。本願においては、プロセッサ123をデジタル電子回路で実現することとしてもかまわない。デジタル電子回路としては例えば、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programming Gate Array)、LSI(Large Scale Integration)等が挙げられる。
【0140】
メモリ124は、例えばSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等のRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、およびフラッシュメモリの少なくともいずれかを含み、プログラムや制御情報やデータを格納する。
【0141】
図9に示す無線端末20の機能構成と
図11に示す無線端末20のハードウェア構成との対応を説明する。無線送信部21および無線受信部22(あるいは無線通信部25)は、例えばRF回路122、あるいはアンテナ121およびRF回路122により実現される。制御部23は、例えばプロセッサ123、メモリ124、不図示のデジタル電子回路等により実現される。記憶部24は、例えばメモリ124により実現される。