特許第6409174号(P6409174)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6409174
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】組織回収バッグ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 90/00 20160101AFI20181015BHJP
【FI】
   A61B90/00
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-77191(P2017-77191)
(22)【出願日】2017年4月7日
【審査請求日】2017年9月12日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年12月8日に第29回日本内視鏡外科学会総会付設展示会にて発表 〔刊行物等〕 平成28年12月28日付で発行された琉球新報朝刊の第4面にて発表
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517125476
【氏名又は名称】株式会社沖縄医療機器開発事業
(74)【代理人】
【識別番号】100139815
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 忠克
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼良 ▲尚▼子
(72)【発明者】
【氏名】神山 茂
(72)【発明者】
【氏名】高谷 彰之
【審査官】 中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−061228(JP,A)
【文献】 特開2011−083483(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/026131(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0236110(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0135798(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0320409(US,A1)
【文献】 登録実用新案第3063390(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する袋と、当該袋の開口部に取り付けられた第1紐とを有する、腹腔鏡下手術で用いられる組織回収バッグであって、
前記袋は、前記開口部と、袋内部空間を囲む袋本体部と、当該袋本体部の外側に配置された第1の閉塞部とを備えており、
前記閉塞部は、前記袋内部空間に隣接する閉塞部基端縁を備えており、
前記閉塞部基端縁よりも外側に取り付けられた第2紐をさらに備えており、
当該第2紐は、前記袋に取り付けられた一端部に、環状部を備えており、
当該環状部は、前記袋に形成された少なくとも2つ以上の貫通穴に通されており、
前記環状部の結び目は、前記第2紐にスライド可能に結び付けられている、組織回収バッグ。
【請求項2】
前記第2紐を前記袋に対して引っ張って前記環状部の長さを短くすると、当該環状部に取り囲まれた部分が絞られる、請求項1に記載の組織回収バッグ。
【請求項3】
前記袋は、前記閉塞部の外側に袋を構成するシート部材が二枚重ねの重層部を備えており、
前記第2紐は、前記重層部に取り付けられている、請求項1又は請求項2に記載の組織回収バッグ。
【請求項4】
開口を有する袋と、当該袋の開口部に取り付けられた第1紐とを有する、腹腔鏡下の手術で用いられる組織回収バッグの製造方法であって、
前記袋は、当該袋を構成するシート状部材を重ね合わせて平面状態にすることができるものであり、
平面状態にしたときに相対向する両シート状部のうちの少なくともいずれか一方のシート状部の開口縁上の位置から当該一方のシート状部の内部側に向けて延びる、袋外側に山折りの山折り部を形成すると共に、当該山折りによって当接させた前記一方のシート状部の内面どうしを溶着し、前記一方のシート状部を立体形状にする立体形状工程を有する、組織回収バッグの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腹腔鏡下手術で用いられる組織回収バッグで及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
腹腔鏡下の手術において、腹腔内で切除や摘出などによって分離した組織等の分離物の隔離に用いる組織回収バッグがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2015−503957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、腹腔鏡下の手術において組織回収バッグを用いるとき、組織回収バッグの取扱いに時間がかかると、それだけ手術時間が延びてしまうなど、不具合が生じやすい。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、腹腔鏡下の手術において用いる際の取扱い性に優れた組織回収バッグを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、開口を有する袋と、当該袋の開口部に取り付けられた第1紐とを有する、腹腔鏡下手術で用いられる組織回収バッグであって、前記袋は、前記開口部と、袋内部空間を囲む袋本体部と、当該袋本体部の外側に配置された第1の閉塞部とを備えており、前記閉塞部は、前記袋内部空間に隣接する閉塞部基端縁を備えており、前記閉塞部基端縁よりも外側に取り付けられた第2紐をさらに備えている、組織回収バッグである。
【0006】
前記第2紐のうち前記袋に取付けられた一端部の結び構造は、絞り可能な結び構造である。
そして、前記閉塞部は、前記袋本体部の外側縁に対して傾斜する方向に延在しており、前記第2紐は、前記外側縁と前記閉塞部とが接する位置に形成される角部に取り付けられている。
また、前記袋は、前記閉塞部の外側に袋を構成するシート部材が積層状態で配置された積層部を備えており、前記第2紐は、前記積層部に取り付けられている。
また、前記第1紐は、少なくとも2つ以上の結び目を備えている、。
【0007】
また、第1紐は、2つの結び目を備えており、各結び目は、前記袋本体部の両側に形成されている外側縁に隣接する位置に配置されている。
また、前記袋の袋本体部は、少なくとも一部が、湿った状態で透過性を有するものであり、前記袋の袋本体部は、折り畳み可能な可撓性を有するものである。
【0008】
本出願に係る別の発明は、開口を有する袋と、当該袋の開口部に取り付けられた第1紐とを有する、腹腔鏡下の手術で用いられる組織回収バッグの製造方法であって、前記袋は、当該袋を構成するシート状部材を重ね合わせて平面状態にすることができるものであり、平面状態にしたときに相対向する両シート状部のうちの少なくともいずれか一方のシート状部の開口縁上の位置から当該一方のシート状部の内部側に向けて延びる、袋外側に山折りの山折り部を形成すると共に、当該山折りによって当接させた前記一方のシート状部の内面どうしを溶着し、前記一方のシート状部を立体形状にする立体形状工程を有する、組織回収バッグの製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の組織回収バッグは、取扱い性に優れており、腹腔内においてスムースに取り扱うことができる。また、本発明に係るバッグは、製造しやすいので品質安定性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)(b)は、実施例1のバッグを示す斜視図であり(c)は、(a)のバッグの要部を示す拡大斜視図である。
図2】(a)〜(c)は、実施例1のバッグの製造工程を説明するための説明図である。
図3】腹腔鏡下の手術の際に用いられるトロカーが患者に装着された状態を示す説明図である。
図4】(a)は実施例1のバッグ1の第2紐の一端側の取付位置の状態を説明するための説明図であり、(b)は、第2紐の一端側を絞った状態を示す説明図である。
図5】実施例1のバッグについて、体腔内に挿入する前の状態を示す説明図である。
図6】(a)は、体腔内に挿入されたバッグが展開する状態を示す説明図であり、(b)は、体腔内のバッグを鉗子で取り扱う状態を示す説明図である。
図7】(a)(b)は、バッグの開口を絞って閉じる状態を示す説明図である。
図8】(a)(b)は、腹腔鏡下手術における作業内容を説明するための説明図である。
図9】(a)(b)は、腹腔鏡下手術における作業内容を説明するための説明図である。
図10】(a)〜(c)は、他の実施例のバッグを製造する工程を説明する説明図である。
図11】(a)は実施例2のバッグを示す斜視図であり、(b)は実施例3のバッグを示す斜視図であり、(c)は実施例4のバッグを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0011】
1,2,3…バッグ、袋…10,10x,10y,10z、10a,10b…外側縁、10c…袋外周縁、
10d…絞り部、10e…挿入孔(開口)、10f…角部、
11…開口部、11h…第1貫通穴(いわゆる針穴)、
12…開口、12a…開口縁、15…袋(実施例2)、
21…袋本体部(シート状部材)、21a,21b…シート状部、
22a,22b…溶着部(実施例3、実施例4)
25…先細形状部(台形形状の部分)、
31…第1閉塞部、32…第1閉塞部基端縁、32a…基端縁の中間位置、
32b…開口側端部(外側縁側端部)、32c…四半分位置、
33…第1閉塞部先端縁、
41…第2閉塞部、42…第2閉塞部基端縁、43…第2閉塞部先端縁、
50…第1重層部、50a…外側端部、50h…第2貫通穴(いわゆる針穴)、
51,52…シート状の素材、
60…第2重層部、70…第1紐(第1糸)、70a,70a…結び目、
80…第2紐(第2糸)、80a…一端部、80b…他端部、80c…中間部、80d…結び目、
81…他方の第2紐(実施例2)、
A…筋腫(回収対象物)、B…患者、Ba…体腔内(腹腔内)、Bh…手術用の穴、
C…ハサミ、Ca…切断位置、
E,E1〜E4…トロカー、E2e…トロカーE2の体内側端部、
F,F1,F2…鉗子、G…ガス(気腹ガス)、H…光学視管、
M…溶着機器、R…山折り部分の稜線、S…袋内部空間、
Xa…第1重層部50の中間線、X2点中心線、Ya…二等分線、K…モルセレーター。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明に係る組織回収バッグ(以下、単にバッグと称することがある)の実施形態について説明する。ここでは図1等を参照しつつ説明する。
図1に示されるように、バッグ1は、袋10と、袋10に取り付けられた第1紐(第1糸)70及び第2紐(第2糸)80を備えている。
【0013】
袋10は、可撓性を有する素材で構成されており、折り曲げや折り畳みが可能である。具体的には、例えばポリエチレン製の袋を挙げることができる。
袋10は、透過性を有する素材で構成されており、袋内に収納されたものがあるか否か、袋越しに視認可能である。具体的には、透明のポリエチレン製の袋を挙げることができる。
袋10の透過性を有する部分は、半透明や透明であることが好ましく、透明がより好ましい。また、袋10は、少なくとも一部に透過性を有する部分を有していればよいが、できるだけ広いことが好ましく、全体が透過性を有することがより好ましい。
また、袋10は、少なくとも、袋10を構成するシート状の素材の表面に水などの液体が付着した状態(濡れ状態)のときに透過性を有するものでもよいが、常に透過性を有するものが、より好ましい。
【0014】
袋10は、開口12(図1(b)参照)が形成された開口部11と、開口部11に連なる袋本体部21と、袋本体部21を挟んで開口12の反対側に形成された第1閉塞部31及び第2閉塞部41とを備えている。
なお、閉塞部31,41は、後述の実施例1のバッグ1では、熱溶着により形成された構造であるが、その構造に限定されるものではない。
【0015】
袋本体部21は、袋10の開口12が広げられ袋内部空間S(図1(b)参照)が形成されたとき、袋内部空間Sを取り囲む外周部を構成するものである。
袋10の袋本体部21は、外側縁10a,10bの位置で折り目がつけられた状態で連続しており、しかも重ね合わせることができる2つのシート状部21a,21b(図6(b)参照)で構成されているということができる。
つまり、袋10は、袋本体部21を構成するシート部材の内面を対向させて重ね合わせた状態にすることが可能である(図1(a)参照)。このように重ね合わせた状態(以下、使用前状態と称することがある)は収納容易である。
【0016】
第1閉塞部31及び第2閉塞部41は、袋本体部21の外側に位置している。
第1閉塞部31は、袋内部空間Sとの境界の位置に、袋内部空間Sに隣接する第1閉塞部基端縁32を備えており、第1閉塞部基端縁32とは反対側(外側)に第1閉塞部先端縁33を有する。
第2閉塞部41は、袋内部空間Sとの境界の位置、袋内部空間Sに隣接する第2閉塞部基端縁42を備えており、第2閉塞部基端縁42とは反対側(外側)に第2閉塞部先端縁43を有する。
また、袋10は、第1閉塞部先端縁33の外側に第1重層部50を有し、第2閉塞部先端縁43の外側に第2重層部60を備えている。
第1重層部50は、袋10を構成するシート状の素材51,52が重なった構造(二重構造)であり、第1閉塞部先端縁33とは反対の外側端部50aが開口している(図4(a)参照)。
【0017】
第1紐70は、図1に示されるように、袋10の開口縁12aに隣接する位置(開口部11)に、所謂なみ縫いで構成される縫い付け構造で取り付けられている。
第1紐70は、使用前状態において、袋10の開口縁12aに沿って平行に延びる状態になるように取り付けられていることが好ましい。
また、第1紐70が通された第1貫通穴(いわゆる針穴)11hの間隔(いわゆる針目)D1は等間隔が好ましい(図7(a)参照)。
第1紐70の取付構造は、なみ縫い以外でもよいが、後述の閉じ工程において開口12を絞って閉じることを考慮すると、なみ縫いが好ましい。
【0018】
第1紐70は、輪(環状構造)である。本実施形態では、第1紐70は、2本の紐体を環状に連結して構成されたものである。そして、第1紐70は、図1に示されるように、使用前状態のとき、2本の紐体の連結により生じる2つの結び目70a,70aが、袋10の両外側縁10a,10bの外側に(離間距離D2をあけて)位置するように配置されている。つまり、一方の紐体と他方の紐体は、その両端部に形成された結び目70a,70aを介して連結されており、2本の紐体の結び目間の距離は等しい。
また、結ばれた状態で、第1紐の2本の紐体は、結び目70aから並行に延在する状態になっており、結び目70aを要として2本の紐内のなす角は、使用前状態では鋭角(それも鋭い、30度以下の鋭角)である。
環状の第1紐70は、結び目70aを有していないものでも良いが、1つ以上の結び目を有するものが好ましい。第1紐70(特に、結び目70a)は、袋の状態を認識する際の目印になる。つまり、第1紐70の位置及び状態や結び目70aの位置を基に袋(特に袋の開口12)の状態を把握することができる。開口12を開く作業や開口12から袋内に回収物を回収する作業において、作業性向上に寄与する。
また、2本の紐体を環状に連結した第1紐70の結び目70aに近接する部分は、2本の紐体が結び目70aに向かって延びた状態であり、結び目70aを「かなめ」とする略V字形状になっている(図7(a)参照)。そして、2本の紐体の間に位置する袋10の外側縁10a,10bは、結び目70aに向けられた状態である。このような状態であるので、後述の閉じ工程でバッグ1の開口12を閉じるとき(図7(a)参照)、鉗子F1とは反対側の袋10の外側縁10bは、結び目70aの近傍のV字の部分に嵌まり込むように、結び目70aに押し付けられることとなり、袋10の開口部11を絞って閉じたとき、より均一な絞り状態の閉じ状態が、より確実に確保される。
【0019】
開口部11の紐が、なみ縫いで取り付けられた環状の第1紐70であると、袋10の外面側に現れている第1紐70を把持して引っ張ることで、開口部11を開放させることができる。また、袋10の内面側に第1紐が現れる構造であり、開口部11の袋10の内面同士が密着することが防止される。
本発明に係るバッグ1が用いられる体腔内Ba(腹腔内Ba。図8参照)は高湿度であるところ、袋10は外側のみならず袋内部も水気を帯びやすく濡れやすい。そして、袋10の内部に入った水分が原因で袋10の内面どうしが密着しやすい。この点、第1紐70があれば、袋10の開口部11付近の内面同士の密着が防止される。
本実施形態では、第1紐70はナイロン製の紐(ナイロンモノフィラメント、モノフィラメント状のナイロン縫合糸。単糸、公称号数2-0、ナイロン縫合糸)であり、体腔内Baで視認しやすい青色である。後述しているように、このような構成の第1紐は、開口部11の紐として好適である。
【0020】
第2紐80は、その一端側80aが袋10に結びつけられている。
第2紐80の一端部80aの取付け方としては、種々の取り付け方を挙げることができるが、第2紐80は、その一端部80aに環状部(結び目80dを起点として形成されているリング構造)が構成された状態になっており、第2紐80の一端部80aの環状部は、袋10に形成された少なくとも2つ以上の第2貫通穴50hに通されている。
第2紐80が通された複数の第2貫通穴(いわゆる針穴)50hは、図4(a)に示されるように、第1閉塞部先端縁33から等距離D3の位置に形成されていることが好ましい。この場合、袋10に縫い付けられた第2紐80の部分は、使用前状態のとき、第1閉塞部基端縁32に対して平行に延びる状態である。
そして、第2紐80の結び目80dは、第2紐80に沿ってスライド可能に結び付けられている。したがって、第2紐80の袋10に取り付けられた一端側80aとは反対の他端側80bを袋10に対して引っ張ると、一端側80aの環状部を構成する部分の長さを短くすることができる(リング構造のリングを小さいリングにすることができる)。第2紐80の環状部の長さを短くすると、第2紐80の一端部80aの環状部に取り囲まれた袋10の部分が第2紐80によって絞られ、その部分に強固な部分が構成される(図4(b)参照)。
第2紐をこのように、一端側80aの結び目80dをスライド可能な状態に取り付けた結び付けにしておけば、後述の絞り工程における絞り作業を容易に行うことができる。より具体的には、引き解け結び(スリップノット/Slip knot)という結び付け構造、もやい結びと称される結び付け構造などの取付構造を挙げることができる。このような構造であると、第2紐の一端側の先端部の結び目を第2紐80の中間部80cに対してスライドさせることができ、スライドさせることによって絞り作業を行うことができる。
また、第2紐80の一端部80aは、絞りによって構成された袋の強固な部分を全周に亘って保持する状態になり、第2紐80は袋10にしっかりと取り付けられた状態になる。
【0021】
第2紐80が通される複数の第2貫通穴50hのうち、最も近い貫通穴同士の離間距離D4は、5mm以下10mm以上が好ましい。第2貫通孔50hが形成されている幅(最も遠い第2貫通穴同士の離間距離)D5は、30mm以上50mm以下が好ましい(図4(a)参照)。このような構成であると、絞り作業を行ったとき、第2紐80によって袋素材を強固に保持でき、その後、第2紐80を引っ張ったとき、袋10素材が引きちぎられるようなことが防止され、しかも絞り作業によって生じた絞り部分をトロカーEに確実に挿入できる。
また、第2貫通穴50hの数は、3つ以上が好ましく4つ以上がより好ましい。そして、8つ以下が好ましく、6つ以下がより好ましい。
さらに、本実施形態のように、使用前状態の第2紐80が第1閉塞部基端縁32と並行(後述の実施例では平行)であると、絞り作業によって生じる絞り部分の折り畳み構造は、山折り部分の稜線R(図4(b)参照)の向きが第1閉塞部基端縁32と交差する向き(ほとんどは直交する向き)になる。つまり、第2貫通穴50hが形成されている幅D5(範囲)の袋素材全体を確実に絞ることができ、袋素材を強固に保持することができる。
【0022】
第2紐80は、少なくとも、袋10に取付けられた一端部80aと、トロカーEから引き出される他端部80bとを有する。そして、第2紐80は、一端部80aと他端部80bの間の中間部80cを有する。中間部80cは少なくとも一部が一本の紐で構成されている構造が好ましい。絡み防止等の観点である。中間部80cのみならず他端部80bも一本の紐で構成されているものでもよい。
本実施形態では、第2紐80はシルク製の紐(公称号数1-0、ブレードシルク。編糸、撚糸)である。
上述のように、本実施形態のバッグ1は、鋭利な部分を有していないので、体内で用いる際の取扱い性に優れている。
【0023】
次に、本発明に係るバッグの実施例について詳細に説明する。
なお、各実施例のバッグの構成のち、既に説明している構成と共通の構成については、同一の符号を付して説明を省略することがある。
【実施例1】
【0024】
本実施例のバッグ1は、図1に示されるように、袋10と第1紐70と第2紐80とを備えており、使用前状態(図1(a)参照)においては、袋本体部21の内面が対面状態で重ね合った平面状態になる。
また、バッグ1は、使用前状態のとき、袋10の開口12が位置する直線状の開口縁12aと、開口縁12aの一端に連なる直線状の一方の袋外側縁10aと、開口縁12aの他端に連なる直線状の他方の袋外側縁10bと、一方の袋外側縁10aに連なる直線状に延びる一方の閉塞部(以下、第1閉塞部)31と、他方の袋外側縁10bに連なる直線状に延びる他方の閉塞部(以下、第2閉塞部)41と、両閉塞部31,41の間に位置する直線状の袋外周縁10cとに囲まれた六角形の形状である。両閉塞部31,41の他端同士が接する構造の場合や第2閉塞部が形成されておらず、他方の袋外側縁10bと袋外周縁10cとが接する構造の場合、バッグは五角形である。
【0025】
使用前状態のとき、両外側縁10a,10bは、開口縁12aと交差する向きに延びている。具体的には、開口縁12aと両側の外側縁10a,10bとのなす角は直角である。
また、一方の外側縁10aと第1閉塞部31とのなす角(袋側の内角)、他方の外側縁10bと第2閉塞部41とのなす角)、第1閉塞部31と袋外周縁10cとのなす角および第2閉塞部41と袋外周縁10cとのなす角は、いずれも鈍角である。
別言すれば、第1閉塞部31の基端縁32は直線状であり、第1閉塞部31の基端縁32は、開口部11の第1紐70の延在方向に対して傾斜した向きである。
つまり、バッグ1は、袋本体部21側から袋外周縁10c側に向けて先細の先細形状部25(台形形状の部分)を備えている。開口12とは反対側がこのような形状であると、後述の挿入工程(図5参照)でバッグ1を体腔内(腹腔内)Baに挿入した後、体腔内Baで展開する際、展開性に優れる。第2閉塞部は無くても良いが、あった方がバッグ1の左右のバランスが良く、バッグ1の取扱い性に優れる。
なお、第1閉塞部31はその基端縁32の長さが100mm以上150mm以下が好ましく、130mm以上145mm以下がより好ましい。
【0026】
第2紐80の取付位置は、第1重層部50である。そして、第1閉塞部31の延在方向と平行に延びる第1重層部50の中間線Xaの線上又はその中間線Xaよりも第1閉塞部31側の位置である。第1重層部50は、上述したように二重構造であり、第2紐80の取付位置として好適である。
また、第2紐80の袋10への取付位置は、袋10の開口縁12aと、第1閉塞部31の他端側(又は他端側に連なる袋外周縁10c)との間の位置である。
そして、第2紐80の袋10への取付位置は、袋本体部21と、第1閉塞部31の他端側(又は他端側に連なる袋外周縁10c)との間の位置であるということができる。
第2紐80の取付けに用いられている複数の第2貫通穴50hのうち、少なくとも1つの第2貫通穴50hは、第1閉塞部31の基端縁32の中間位置32a(又は中間位置32aで基端縁32と直交する二等分線Ya)よりも、開口12側(及び/又は外側端10a側)に取り付けられている。
つまり、第2紐80は、第1閉塞部31の開口側端部31a寄りの位置に取り付けられている。別言すれば、第2紐80は、袋本体部21及び第1閉塞部31に隣接する位置(の第1重層部50)に取り付けられており、袋本体部21と第1重層部50とが接する部分に形成された鈍角の角部10fに取り付けられている。別言すれば、第2紐80は、第1閉塞部31の開口側とは反対側の端部(閉端側端部)31bと、開口12との間に配置されている。
そして、好ましい構成として、複数の第2貫通穴50hの半数以上が中間位置32a(二等分線Ya)よりも開口12側(及び/又は外側端10a側)に取り付けられている構成、過半数の第2貫通穴50hが二等分線Yaよりも開口12側(及び/又は外側端10a側)である構成、全ての第2貫通穴50hが二等分線Yaよりも開口12側(及び/又は外側端10a側)である構成を挙げることができる。
そして、さらに好ましい構成として、少なくとも一つの第2貫通孔50hが、基端縁32の開口側の端部32bと中間位置32aとの中間の四半分位置32cよりも開口側(及び/又は外側端10a側)に取り付けられている構成を挙げることができ、さらに複数の第2貫通穴50hの半数以上が上述の四半分位置32cよりも開口12側(及び/又は外側端10a側)に取り付けられている構成、過半数の第2貫通穴50hが四半分位置32cよりも開口12側(及び/又は外側端10a側)である構成、全ての第2貫通穴50hが四半分位置32cよりも開口12側(及び/又は外側端10a側)である構成を挙げることができる。
なお、バッグ1を体腔内Baに挿入した状態で、第2紐80が引っ掛かったり、絡まったりすると、挿入したバッグ1を十分に展開できないおそれがある。この点、第2紐80の取付位置が本実施例のバッグ1のような位置であれば、仮に第2紐80がひっかかるなどしたりしても、バッグ1の先細形状部25の展開が引っ掛かった第2紐80によって妨げられることがなく、優れた展開性が確保される。
【0027】
次に、実施例1のバッグの製造方法について説明する。
【0028】
まず、袋10のシート状の素材で構成された筒状物を用意し、一方の開口端を閉じて袋状の素材1aにする(図2(a)参照)。最初から袋状の素材1aを用意しても良い。また、図示されるように、外側縁10a,10bを有する袋状の素材1aが好ましい。
ここでいう外側縁10a,10bとは、シート状の素材を重ね合わせることができるように形成された折り目により構成されており、折り目を境界として一方側が一方のシート状部21aであり、他方側が他方のシート状部21bである。
【0029】
次に、開口12aとは反対側の端部に隣接する位置に第1閉塞部31及び第2閉塞部41を形成する(図2(c)参照)。
本実施例では、高周波ウェルダーと称されることがある周知の溶着機器Mを用いて(図2(b)参照)、二枚重ねになっている袋素材の所定部分を熱融着して、第1閉塞部31及び第2閉塞部41を形成した。
熱溶着によって形成された閉塞部は、熱溶着されていない部分(例えば袋本体部21や重層部50,60)よりも折曲がりなどの変形しにくい素材になる。このように、第2紐80の取付位置と袋本体部21との間(取付位置の内側)に変形しにくい第1閉塞部31があると、後述の絞り工程で第2紐80を絞ったとき、袋本体部21の絞り変形が最小限に抑制される。
【0030】
その後、第1閉塞部31及び第2閉塞部41の外側の二枚重ねの部分を残して素材1aをカットして、第1重層部50及び第2重層部60を形成し、袋10を得た(図2(c)参照)。
さらに、開口部11に第1紐70を取り付けると共に、第1重層部50に第2紐80を取り付けて、実施例1のバッグ1を得た(図1(a)参照)。
【0031】
次に、実施例1のバッグの腹腔鏡下の手術における使用例について説明する。
なお、手術の内容や手順に関して、周知である基本的な事項については説明を省略していることがある。
【0032】
バッグ1は、例えば、筋腫A(図8(a)参照)などの体内組織を除去する腹腔鏡下の手術において用いられる。手術では滅菌されたバッグ1を用いるので、予め滅菌済みのものが取扱い性に優れている。
【0033】
まず、第2紐80の取付位置を絞る(絞り工程、図4(b)参照)。
絞り工程では、第2紐80を引っ張って、第2紐80の一端部80aを絞る。これにより、第2紐80の一端部80aに囲まれた第2紐取付位置の袋の部分が第2紐80によって強固に保持される。第2紐80は上述したような糸であるので、絞った状態がゆるみにくく維持され、強固な保持状態が維持される。
【0034】
第2貫通穴50hに通されただけの状態の第2紐80を引っ張ると、第2貫通穴50hの位置で袋10が引き千切られて第2紐80が袋10から外れやすい。これに対して、絞り作業後の第2紐80は、絞り部分で袋10に強固に連結された状態になるので、後述の第2紐引き出し工程(図8参照)において第2紐80を引っ張ったとき、袋10が引き千切れて第2紐80が袋10から外れるようなことが確実に防止される。
また、第2紐80の取付位置の内側に第1閉塞部31があると、第2紐80を引っ張って絞ったとき、袋本体部21の絞り変形が最小限に抑制されるので、後述の展開工程でバッグ1を展開して手術に用いる際、バッグ1内の空間容積をより確実に確保することができ好ましい。
さらに、本実施例のバッグ1のように第2紐の絞り作業を行うことができる構造の場合、あらかじめ絞り作業を行っておけば、後述の開口形成工程(図8(b)参照)において後述のモルセレーターK(図9(a)参照)を挿入する挿入孔(開口)10eを形成する際、第1閉塞部31の閉塞部基端縁32を体外に引き出し、閉塞部基端縁32の内側の位置(すなわち袋本体部21の部分)Ca(図4(b)参照)をハサミC等で切断することで、必要な大きさの開口を確実に形成でき、引き出し長さが最小限ですむ。引き出し長さが最小限で済めば、患者Bに形成した体腔Baに通ずる手術用の穴Bh(図8(b)参照)に加わる負荷(負担)を最小限に抑制できる。
【0035】
次に、バッグ1を挿入しやすい形状に折り畳む(折り畳み工程、図5参照)。
折り畳み工程では、バッグ1を棒状(筒状)に折り畳む。折り畳み方については、体腔内Baでの展開しやすさを考慮して適宜の折り畳み状態を用いることができる。
なお、絞り工程と折り畳み工程は、同時もよく、順番が逆でも良い。
【0036】
次に、棒状のバッグ1を手術を受ける患者Bの体腔内(腹腔内)Baに挿入する(挿入工程、図5参照)。
この段階では、既に体腔内Baに通ずる複数のトロカーE1〜E4が装着されているので、鉗子F1,F2を用いてバッグ1を把持して、適宜のトロカー(例えばトロカーE2(又はE3。いずれも使用可能。以下、単にE2と称する))を利用してバッグ1を体腔内Baに挿入する。
このとき、第2紐80の他端部80bをトロカーE2の外に出した状態を維持する。第2紐80の長さは、この状態を維持できる長さである。
【0037】
次に、体腔内Baのバッグ1を展開する(展開工程、図6参照)。
バッグ1は、後述のガス充填工程で膨らませられた状態で用いられるものであり、膨らんだバッグ1内でモルセレーターKによる作業を行うので、その点からすれば大容量のものが良いと考えられる。
ところが、大き過ぎるバッグ1は体腔内Baで展開して十分に広げられないおそれがある。バッグ1の展開が不十分であれば、その後、膨らませようとしても十分に膨らませられないおそれがある。膨らまなかった部分がシワになって袋の内側に出た状態になると、手術の作業の邪魔になったり、袋内に挿入した鉗子やモルセレーターKが袋に当たったりするおそれがある。
この点、本実施例のバッグ1は、袋10の開口12の反対側の部分が先細形状になっているので、体腔内Baにおける展開性に優れている。
体腔内Baにおいて、より確実に展開できれば、その後、膨らませた際、確実に膨らむこととなり、手術作業空間が確保される。
【0038】
次に、筋腫A(回収対象物)をバッグ内に回収する(回収工程)。
回収工程では、鉗子Fでバッグ1の開口12を開き、切除済みの筋腫Aを鉗子Fを用いてバッグ1内に回収する。バッグ1は透明であり透過性を有するので、回収作業性に優れる。
【0039】
回収が完了すると、次に、バッグ1の開口12を閉じる(閉じ工程)。
閉じ工程では、図7(a)に示されるように、一方の鉗子F1で第1紐70の一方の端部を把持し、他方の鉗子F2で、バッグ1の開口12の一方の外側縁を、第1紐70の他方の端部側に押し付けて、袋10の開口12を絞る(図7(b)参照)。
鉗子Fによる操作では、必ずしも手や指で直接行う場合のように操作できないが、第1紐70は上述したような糸であるので、バッグの開口を第1紐70に沿ってスムースにスライドさせることができる。
【0040】
次に、閉じられたバッグ1の開口部11を体外に引き出す(開口部引き出し工程)。
この工程では、図8(a)に示されるように、第1紐70の一端部をトロカーE4を経由させて体外に出し、その後、トロカーE4を引き抜くと共にバッグ1の開口部11を体外に引き出す(図8(b)参照)。
このように、本実施例のバッグ1は、筋腫Aなどの回収対象物を回収する際、バッグ1の袋10の全体が体腔内Baに挿入された状態であり、バッグ1の開口12の向きなどを作業内容に合わせて変更することができ、取扱い性に優れている。
【0041】
次に、バッグ1内にガスGを充填する(ガス充填工程)。
この工程では、まず、体外に引き出されたバッグ1の開口12を開けて、先ほど引き抜いたトロカーE4をバッグ1の開口12内に挿入し(不図示)、このトロカーE4を利用してバッグ1内に気腹ガスGを充填する(図8(b)参照)。これによりバッグ1の内部空間Sが膨らませられ、バッグ内における手術の作業空間が確保される。
このように、本実施例のバッグ1では、体外でバッグ1の開口を結紮することで、体腔内Baのバッグ1の内部空間Sを気腹可能であり、取扱い性に優れている。
【0042】
さらに、トロカーE4から光学視管H(装着位置のみ図示)をバッグ内に挿入する(光学視管挿入工程)。
これにより、以後のバッグ1内での手術を内視鏡で視認しつつ行うことができる。
【0043】
なお、ガス充填工程や光学視管挿入工程は、周知の作業手順で行うことができる工程であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0044】
次に、トロカーE2を経由して体外に出ている第2紐80を引っ張って、第2紐80の取付部分を体腔外に引き出す(第2紐引き出し工程)。
この工程では、まず、体外に出ている第2紐80を引っ張って、第2紐80の一端部80aによって絞られた絞り部10dをトロカーE2の体内側端部E2eに当接する位置まで引っ張る。この状態で、そのトロカーE2を引き抜くと共にバッグ1の絞り部10dを体外に引き出す(図8(b)参照)。
【0045】
次に、袋10の引き出した部分を切断して開口(挿入口)を形成する(開口形成工程)。
この工程では、体外に引き出された絞り部10dに隣接する第1閉塞部31の下側の位置(つまり袋本体部21)Ca(図4(b)参照)をハサミなどの切断具で切断する。
このように、第1閉塞部31の部分を引き出せば、その内側を切断することで、開口を形成できるので、バッグ1の引き出し量(患者Bに腹部の手術用穴Bhを通過させる長さ)を最小限にすることができ、患者負担を最小限にすることができる。
また、第1閉塞部31を視認して、その内側を切断すればよいので、好適な切断位置を容易、迅速、確実に視認して、容易、迅速、確実に開口を形成することができる。また、第1閉塞部31の内側の閉塞部基端縁32に沿って切断することになるので、切断長さを、基端縁32の長さに近い長さに容易に安定させることができる。つまり、必要十分な大きさの開口を容易、迅速、かつ確実に形成することができる。
この挿入口(開口)10dは、モルセレーターKの挿入口として用いられるものであるところ、小さ過ぎるとモルセレーターKの挿入性が低下したり、大き過ぎるとシワの間の隙間が生じやすくなったりするおそれがあるが、本実施例のバッグ1であれば、上述したように、第1閉塞部31の内側の閉塞部基端縁32に沿って切断することで、当初想定している必要十分な大きさの開口を容易、迅速、かつ確実に形成することができる。
また、ハサミCで切断する前まで、袋10は、第1紐70より内側の領域に開口部はなく、しかも上述したように、体外に出した分部を切断するので、腹腔内に位置するバッグ1の密閉状態を容易、確実に維持することができる。
【0046】
なお、本実施例のバッグ1は、筋腫Aなどの回収対象物を回収する回収工程前の段階では、モルセレーターKを挿入するための開口はない。つまり、バッグの開口部分は、ひとつの開口12だけである。本実施例のバッグ1は、回収工程後、所定位置をカットすることで、モルセレーターKの挿入に用いる挿入口を備える状態にすることができるものである。したがって、バッグ1は、手術開始前や手術開始から回収工程まで、モルセレーター挿入用の穴のことを気にする必要がなく、取扱い性に優れる。また、挿入口の形成を体外で行うことができるので、道具を用いた体内作業を最小限にすることができ好ましい。
【0047】
挿入口を開口すると、次に、その挿入口からモルセレーターKを挿入する(モルセレーター挿入工程)。
この工程では、形成されたバッグ1の挿入口から体内に向けてモルセレーターKを挿入し、体外に位置するバッグの挿入口の端部を糸90で結ぶ。これにより、挿入口からのガス漏れが防止される。挿入口の端部を結ぶ糸としては、例えばブレードシルクを用いることができる。
【0048】
次に、挿入したモルセレーターKを用いて、筋腫Aを細切しながら摘出する(摘出工程)。
このように、本実施例のバッグ1を用いれば、体腔内Baに挿入されたモルセレーターKは、常にバッグ1の内側すなわちバッグ1によって体腔Baとは遮断された空間に位置しており、患者の体腔内Baに内周部(例えば腹膜など)に直接触れることが防止される。そして、バッグ1は透明であるので、良好な視野を確保しつつ、モルセレーターKによってスムースに筋腫等の回収対象物を解消することができる。モルセレーターKを使用した筋腫回収作業をすべて、バッグ1内で行うことができるので、回収時の組織片の体腔内への飛散や散乱を最小限にすることができる。
【0049】
摘出が終了すると、モルセレーターKをバッグ1の挿入口から引き抜く。そして、モルセレーターKが引き抜かれたバッグ1の挿入口の端部を糸(例えばブレードシルク)で結び、閉じる(挿入口閉じ工程)。
【0050】
なお、モルセレーター挿入工程、摘出工程および挿入閉じ工程は、周知の作業手順で行うことができる工程であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0051】
その後、トロカーE4を抜きつつ、このトロカーE4と共に慎重にバッグ1を体外に取り出す(バッグ取り出し工程)。
なお、ここでは、図9において左側の穴Bhからバッグ1を取り出すが、本実施例のバッグ1の場合、例えば図9における右の穴Bhなど、その他の穴からの取り出しも可能であり、手術作業の選択肢の幅が広い。
取り出されたバッグ1は、感染防止等に配慮しつつ医療廃棄物として処分する(処分工程)。
【0052】
次に、本発明の実施形態に係るバッグの別の実施例について説明する。
なお、実施例1のバッグ1と共通の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
また、使用方法については、基本的には、実施例1のバッグ1と同様であるので、ここでは説明を省略することがある。
【実施例2】
【0053】
本実施例のバッグ2は、図11(a)に示されるように、2本の第2紐80,81を備えている点で、実施例1のバッグとは構成が異なる。
そして、使用前状態のバッグ2は、バッグ2の袋15の開口縁12aの中間位置で当該開口縁12aと直交する中心線X2を境界として左右対称形状である。
つまり、本実施例のバッグ2は、第2重層部60の形状が第1重層部50と同じであり、他方の第2紐81の一端側の取付状態が一方の第2紐80の取付状態と同じであり、他方の第2紐81の一端側の取付位置が一方の第2紐80の取付位置と左右対称の位置である。
このような構成のバッグ2は、左右対称の構成であるので、袋15の向きを気にすることなく使用することができ、その点で、取扱い性が向上する。
【0054】
なお、本実施例のバッグ2を使用する場合、他方の第2紐81については、いったん体内に挿入した後、所定のトロカーEから引き出して用いることができる。また、2本の第2紐80,81のうちの一方を取外した後、実施例1のバッグ1と同様の手順で用いることができる。
【実施例3】
【0055】
本実施例のバッグ3は、図11(b)に示されるように、使用前状態で重ね合わされた状態になっている袋本体部21のシート状部21a,21bの一方のシート状部21aが立体形状になっている点で、実施例1のバッグ1とは構成が異なる。
このように、袋本体部21の一方のシート状部21aが立体形状であると、バッグ3を体腔内Baに挿入する工程において、体腔内Baに挿入したバッグ3を展開する際、バッグ3の開口が自然と開いた状態になりやすく、バッグ3の袋本体部21が自然と広がりやすいので、バッグ3の展開作業性に優れている。
また、袋本体部21のシート状部21aを立体形状にしたことで、対向配置されている袋10の開口縁12aにズレが生じる。
このズレがあると、鉗子F1,F2で袋10の開口12を把持する際の作業性が向上する。つまり、開口縁12aのズレ構造はバッグ3の開口作業性に優れた構成である。
なお、本実施例では、溶着部22a,22bに穴をあけてその穴に第1紐70を通す状態で袋10に取り付けているが、溶着部22a,22bを跨ぐ状態で、第1紐70を取り付けても良い。
【0056】
本実施例のバッグ3では、第1閉塞部31等を形成する際、同時に、溶着部22aを形成して、袋本体部21のシート状部の一方のシート状部21aを立体形状にしている(立体形状形成工程)。
立体形状にする方法を具体的に説明すると、図10に示されるように、袋10を構成するシート状部材を重ね合わせて平面状態とし、平面状態にしたときに相対向する両シート状部21a,21bのうちの少なくともいずれか一方のシート状部(ここでは21a)の開口縁上の位置から当該一方のシート状部21aの内部側に向けて延びる折り目を形成する。この折り目は、袋外側に山折りの山折り部である。そして、山折り部を形成したときに、山折りによって一方のシート状部21aの内面どうしを当接させる。そして、その当接させた部分を溶着機器Mを用いて溶着する。すると、シート状部21aの外側に、溶着部22aが形成され、一方のシート状部21aが立体形状になる。
なお、溶着部22a,22bは、開口側に向けて末広がりに形状であり、開口側からシート状部の内部側に向けて先細形状である。
なお、立体形状にする方法としては、種々の方法を挙げることができるが、閉塞部31,41を形成する際に用いた周知の溶着機器Mを用いれば容易、迅速に立体形状を形成することができる。また、後述の実施例4では、さらに、他方のシート状部21bにも溶着部22bを形成しているが、形成時の工程は同じであるので、説明を省略する。
また、上述の立体形状形成工程によって一方のシート状部を立体形状にすると、袋10を平面状態にしたとき、一方のシート状部21aの開口縁12aと、他方のシート状部21bの開口縁12aとにズレが生じる。したがって、上述の溶着器Mを用いた立体形状形成工程はズレを形成する工程であるということができる。
【実施例4】
【0057】
本実施例のバッグ4は、図11(c)に示されるように、袋10の袋本体部21の両側のシート状部21,21b部が立体形状になっている点で、実施例3のバッグ3とは構成が異なる。袋本体部21のシート状部21a,21bが立体形状である構成は、上述したように、バッグ4の展開作業性に優れている。
なお、本実施例のバッグ4の一対の溶着部22a,22bは、上下対称であるが、溶着部22a,22bの位置にズレを生じさせた構成でもよい。これにより、対向する開口縁12aの位置にズレを生じさせることができる。
【0058】
なお、上述した実施例3のバッグ3の袋10yや実施例4のバッグの袋10zは、実施例1のバッグ1で用いられている袋10に立体形状を形成したものであるが、実施例2のバッグ2で用いられている左右対称構造の袋10xに立体形状を形成したものでもよい。
【0059】
上述したバッグ1,2,3の実施例は、本発明に係るバッグの一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変されたバッグは、本発明に技術的範囲に属する。
例えば、結び目の位置としては、袋の両外側縁の外側でない位置にすることが考えられる。外側縁の外側に結び目が配置されていない場合、第1紐の外側縁に隣接する部分は円弧形状に湾曲する状態になり、袋の外側縁や当該外側縁に隣接する開口縁も円弧形状に湾曲した状態になる。この状態は、、円弧形状に湾曲した開口縁の内側空間に鉗子などの道具の挿入が容易な構造であり、開口に対する操作が容易な構造であるということができる。
【要約】
【課題】腹腔鏡下の手術において用いる際の取扱い性に優れた組織回収バッグを提供すること。
【解決手段】開口を有する袋と、当該袋の開口部に取り付けられた第1紐とを有する、腹腔鏡下手術で用いられる組織回収バッグであって、前記袋は、前記開口部と、袋内部空間を囲む袋本体部と、当該袋本体部の外側に配置された第1の閉塞部とを備えており、前記閉塞部は、前記袋内部空間に隣接する閉塞部基端縁を備えており、前記閉塞部基端縁よりも外側に取り付けられた第2紐をさらに備えている組織回収バッグ1である。
【選択図】図1
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図2
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図11