特許第6409178号(P6409178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6409178
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】容器の検査方法及び検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/90 20060101AFI20181015BHJP
【FI】
   G01N21/90 A
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-83758(P2014-83758)
(22)【出願日】2014年4月15日
(65)【公開番号】特開2014-224807(P2014-224807A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2016年9月14日
(31)【優先権主張番号】特願2013-88784(P2013-88784)
(32)【優先日】2013年4月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390014661
【氏名又は名称】キリンテクノシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099645
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】安藤 英明
【審査官】 小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−68037(JP,A)
【文献】 特開2001−91471(JP,A)
【文献】 特開2007−256076(JP,A)
【文献】 実開昭53−43982(JP,U)
【文献】 特開昭58−744(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0048524(US,A1)
【文献】 特開昭54−44587(JP,A)
【文献】 特開昭63−182556(JP,A)
【文献】 特開昭57−7547(JP,A)
【文献】 特開2002−39953(JP,A)
【文献】 特開2005−91243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 − G01N 21/01
G01N 21/17 − G01N 21/61
G01N 21/84 − G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口元部が絞られた壜型形状に形成され、かつ所定の波長域の照明光に対して透過性を有する容器の検査方法であって、
前記容器の口天面から該容器内に前記照明光を入射させる手順と、
前記照明光が入射した容器を側方から見た画像を撮像手段により撮像する手順と、
前記撮像した画像に基づいて前記容器に付着した汚れの有無を該容器の異常の有無として判別する手順と、
を備え
前記判別する手順では、前記容器内に入射した照明光によって前記汚れが発色した部分が前記画像内に存在するか否かを判別する、容器の検査方法。
【請求項2】
前記照明光として拡散光を前記容器内に入射させる請求項1に記載の容器の検査方法。
【請求項3】
前記入射させる手順では、前記撮像手段に対して前記容器の口天面前部から該容器内に照明光を入射させる請求項1又は2に記載の容器の検査方法。
【請求項4】
前記入射させる手順では、前記撮像手段に対して前記容器の口天面後部から該容器内に照明光を入射させる請求項1又は2に記載の容器の検査方法。
【請求項5】
前記入射させる手順では、前記容器が搬送される所定の搬送経路に沿って配置された照明手段から前記照明光を入射させる請求項1〜4のいずれか一項に記載の容器の検査方法。
【請求項6】
前記容器が、再利用を目的として市場から回収された容器である請求項1〜5のいずれか一項に記載の容器の検査方法。
【請求項7】
前記撮像する手順では、前記撮像手段による前記容器の撮影方向における前記容器の背面側に背景板が配置される請求項1〜6のいずれか一項に記載の容器の検査方法。
【請求項8】
口元部が絞られた壜型形状に形成され、かつ所定の波長域の照明光に対して透過性を有する容器の検査装置であって、
前記容器の口天面から該容器内に照明光が入射するように該容器を照明する照明手段と、
前記照明光が入射した容器を側方から見た画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像した画像に基づいて前記容器に付着した汚れの有無を該容器の異常の有無として判別する判別手段と、
を備え
前記判別手段は、前記容器内に入射した照明光によって前記汚れが発色した部分が前記画像内に存在するか否かを判別する、容器の検査装置。
【請求項9】
前記照明手段は、前記照明光として拡散光が入射するように前記容器を照明する請求項に記載の容器の検査装置。
【請求項10】
前記照明手段は、前記撮像手段に対して前記容器の口天面前部から該容器内に照明光が入射するように該容器を照明する請求項8又は9に記載の容器の検査装置。
【請求項11】
前記照明手段は、前記撮像手段に対して前記容器の口天面後部から該容器内に照明光が入射するように該容器を照明する請求項8又は9に記載の容器の検査装置。
【請求項12】
所定の搬送経路に沿って前記容器を搬送する搬送手段を備え、
前記照明手段は、前記搬送経路に沿って配置されている請求項8〜11のいずれか一項に記載の容器の検査装置。
【請求項13】
前記容器が、再利用を目的として市場から回収された容器である請求項8〜12のいずれか一項に記載の容器の検査装置。
【請求項14】
前記撮像手段による前記容器の撮影方向における前記容器の背面側に背景板が配置される請求項8〜13のいずれか一項に記載の容器の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口元部が絞られた壜型形状の容器の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス壜に付着した金属スパッタやスプレーペンキ等の異物を検出する方法として、ガラス壜を側方から照明し、ガラス壜を挟んで照明の反対側に配置された撮像装置により、ガラス壜の透過光による像を撮像し、得られた像の色と、予め登録されている異物の透過光による像の色との比較に基づいて異物の有無を検査する方法が知られている(特許文献1参照)。また、PETボトル等の容器の予備成型品である多層構造のプリフォームの検査方法として、プリフォームの口部と対向配置されたリング光源からプリフォームの内部に向けて光を照射し、プリフォーム内部における乱反射の状況をカメラで撮像して、プリフォームの内部に中間層としてのバリア層が存在するか否かを検査する方法も知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−68037号公報
【特許文献2】特開2007−256076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の検査方法では、異物の付着状況によっては異物を十分に捉えることができない場合がある。例えば、薄い汚れが付着している場合には、透過光による画像内に異物の像が明瞭に現れず、見逃しが生じるおそれがある。また、壜内部のびり等の欠陥に関しても従来の検査方法では検出が困難である。なお、特許文献2は、直径が概略一定でかつ内部にバリア層が中間層として設けられた多層構造のプリフォームを検査対象とし、バリア層にて乱反射が生じるという知見に基づいてバリア層の有無を検査する方法を開示するに過ぎず、口元部が絞られた壜型形状の容器の異物や内部欠陥の検査に関しては、何ら示唆するものではない。
【0005】
本発明は、壜型形状の容器に付着した異物や容器内部の欠陥といった異常を従来とは異なる手法により検出することが可能な検査方法及び検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者は、口元部が絞られた壜型形状の容器に対して、その口天面から照明光を入射させた場合、容器の内部を光が屈折及び反射しながら進み、容器外面の汚れや容器の内部のびり欠陥といった異常が存在する箇所にて正常箇所とは異なる屈折や反射を起し、その異常箇所が正常箇所とは異なる色に発色し、あるいは正常箇所よりも輝度の高い反射光が生じることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の検査方法は、口元部(1a;5a)が絞られた壜型形状に形成され、かつ所定の波長域の照明光に対して透過性を有する容器(1;5)の検査方法であって、前記容器の口天面(1c;5c)から該容器内に前記照明光(Lin)を入射させる手順と、前記照明光が入射した容器を側方から見た画像を撮像手段(12;22)により撮像する手順と、前記撮像した画像に基づいて前記容器の異常の有無を判別する手順と、を備えたものである。
【0008】
また、本発明の検査装置は、口元部(1a;5a)が絞られた壜型形状に形成され、かつ所定の波長域の照明光に対して透過性を有する容器(1;5)の検査装置(10;20)であって、前記容器の口天面(1c;5c)から該容器内に照明光(Lin)が入射するように該容器を照明する照明手段(11;21)と、前記照明光が入射した容器を側方から見た画像を撮像する撮像手段(12;22)と、前記撮像した画像に基づいて前記容器の異常の有無を判別する判別手段(14;24)とを備えたものである。
【0009】
本発明によれば、容器に汚れやびり欠陥のような異常が存在すると、その異常箇所で照明光が正常箇所とは異なる屈折や反射を起し、得られる画像内に異常箇所に固有の色や輝度をもった領域が映り込む。そのような領域の有無を検査することにより、容器の異常を精度よく検出することができる。
【0010】
本発明においては、前記照明光として拡散光を前記容器内に入射させるものとしてもよい。これによれば、容器内を光が次々と屈折及び反射しながら進むようになるので、画像内に異常箇所が発色や輝度の異なる領域としてより明瞭に出現し、それにより異常の検出精度をさらに高めることができる。
【0011】
本発明の一形態においては、前記撮像手段に対して前記容器の口天面前部から該容器内に照明光を入射させてもよい。これによれば、容器の撮像手段に対向する面に照明光が入射するため、欠陥とはみなされない微小な凹凸や傷等の影響を受けずに欠陥を検出できる。また、本発明の一形態において、前記撮像手段に対して前記容器の口天面後部から該容器内に照明光を入射させてもよい。これによれば、容器後部からの照明により欠陥からの光が容器の側面内を伝播して容器の側方端部に現れるので、欠陥を容易に検出できる。本発明の一形態において、前記容器が搬送される所定の搬送経路(P)に沿って配置された照明手段(11、31、41)から前記照明光を入射させてもよい。この形態において、前記照明手段として、複数のLED(41a)が前記搬送経路に沿って配置され、前記複数のLEDからの照明光を集光手段(41b)により集光させて前記容器内に入射させてもよい。これによれば、LEDからの照明光が集光手段により集光され、容器に入射する。したがって、光量のむらを防止して検査精度を向上できる。
【0012】
本発明の一形態においては、前記容器の異常として、前記容器に付着した汚れの有無を判別するものとしてもよい。汚れが付着した容器の口天面から照明光を入射させた場合、容器内を進む光によりその汚れの付着箇所が正常箇所とは異なる色に発色する。その一因は、容器内を進む光が、汚れの付着箇所で正常箇所とは異なる屈折や反射を示すことにある。そのような性質を利用すれば汚れの有無を精度よく検査することができる。上記形態において、容器は、再利用を目的として市場から回収された容器であってもよい。この種の容器は市場において様々な汚れが付着する可能性があるが、そのような汚れを口天面から入射させた光により画像内に明瞭に出現させ、汚れのある容器を確実に検出し、その再利用前に然るべき対策を施すことができる。さらに、撮像手段による前記容器の撮影方向における前記容器の背面側に背景板(13)が配置されてもよい。これによれば、照明光によって発色した汚れを背景板との差によってさらに明瞭に画像内に出現させることができる。
【0013】
本発明の他の形態においては、前記容器の異常として、前記容器の内部におけるびり欠陥の有無を判別するものとしてもよい。容器の内部にびり欠陥が存在すると、容器内を進む光がその欠陥箇所にて高い反射を示し、その反射光を撮像手段で捉えた画像にびり欠陥固有の高い輝度をもった領域が映り込む。このような性質を利用すれば、容器内のびり欠陥の有無を精度よく検査することができる。上記形態においては、前記容器と前記撮像手段との間に、前記容器から出射する反射光を前記撮像手段に導く集光手段(23A、23B)が配置されてもよい。びり欠陥にて生じる反射光の方向は、びり欠陥の向きに応じて異なるが、様々な方向に出射する反射光を集光手段にて撮像手段に導くようにすれば、反射光の捕捉漏れによる検査の見逃しを防ぐことができる。また、前記口元部の外周面及び内周面に対する前記照明光の入射を遮光手段(26)により制限してもよい。これによれば、口元部の外周面や内周面における反射を抑え、びり欠陥からの反射光を容易に特定して検出精度を高めることができる。
【0014】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0015】
以上に説明したように、本発明によれば、口元部が絞られた容器の口天面から照明光を入射させた場合、汚れやびり欠陥といった異常が存在する箇所にて特有の屈折や反射が生じ、異常箇所に固有の色や輝度をもった領域が画像内に出現するという性質を利用して、容器の異常の有無を精度よく検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の形態に係る検査装置の要部を示す図。
図2図1の検査装置が組み込まれた検査機の平面図。
図3】第1の形態に係る検査装置により取得された画像の一例を示す図。
図4】第1の形態に係る検査装置により取得された画像の他の例を示す図。
図5】本発明の第2の形態に係る検査装置の要部を示す図。
図6図5の検査装置に設けられた照明の平面図。
図7】第2の形態に係る検査装置により取得された画像の一例を示す図。
図8】第2の形態に係る検査装置により取得された画像の他の例を示す図。
図9】第3の形態に係る検査装置の要部を示す図。
図10】第4の形態に係る検査装置における壜の搬送経路と照明装置との関係を示す図。
図11図10の照明装置の要部を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の形態)
図1図4を参照して本発明の第1の形態に係る検査装置を説明する。第1の形態に係る検査装置10の要部を図1に示す。検査装置10は、検査対象の容器としてのガラス壜1の外面に汚れが付着しているか否かを検査する装置として構成されている。ガラス壜(以下、壜と略称することがある。)1は、再利用を目的として市場から回収された空き壜である。壜1は、可視波長域の光に対して透過性を有するガラスにて構成され、かつ口元部1aが胴部1bよりも絞られた形状に形成されている。壜1は壜台2に支持されている。図2に示すように、検査装置10は、複数(図示例では3個)のスターホイール3A〜3Cを備えた容器検査機4の容器搬送経路中に配置される。図2の例では、中間のスターホイール3Bの外周における搬送経路に検査装置10が配置されている。壜台2は、スターホイール3Bに取り付けられることにより、スターホイール3Bと一体に旋回軸線A1の回りを旋回する。スターホイール3Bの旋回動作に連動して、壜台2は不図示の容器自転機構により自身の軸線A2の回りに回転駆動される。
【0018】
検査装置10は、壜台2に支持された壜1の口天面1cの上方に、口天面1cと対向するように配置された照明手段としての照明装置11と、壜1をその側方、より具体的にはスターホイール3Bの中心側から見た画像を撮像する撮像手段としてのカメラ12と、カメラ12による撮影方向において壜1の背面側、つまり壜1を挟んでカメラ12と反対側に配置された背景板13と、カメラ12が撮像した画像を処理して汚れの有無を判別する判別手段としての信号処理ユニット14とを備えている。照明装置11はLEDを光源として備え、その光源の光軸が壜1の軸線A2と平行となるようにして配置されている。図1に矢印Linで示したように、照明装置11は、照明光として、スポット状に絞られた白色の拡散光を口天面1cに向けて照射する。照明装置11から照射された光は口天面1cから壜1の口元部1aに入射する。なお、図1では単一の照明装置11を示すが、実際には、スターホイール3Bの旋回軸線A1を中心とする円弧C(図2参照)に沿って複数の照明装置11が並べて設けられている。
【0019】
カメラ12は、レンズ12aが捉えた光学像をCCDやCMOS等の撮像素子により電気信号に変換して出力する。カメラ12は壜1の口元部1aとほぼ同程度の高さに配置されており、その撮影方向は水平方向から下向きに10°傾けられた範囲に設定されている。また、カメラ12の撮像画角θは、壜1の全体を撮像できるように設定されている。背景板13はアクリル板等にて形成されている。背景板13の壜1と向い合う面は白色である。
【0020】
信号処理ユニット14は、カメラ12から出力される画像信号に所定の処理を施して検査対象の画像を取得し、その画像内に汚れの像が存在するか否かを所定の検出ロジックに従って判別する。検出ロジックは、一例として次の通りである。壜1の口天面1cから入射した光は、屈折と反射とを繰り返して壜1の内部を進みつつ壜1の各所から壜1の外部へ出射するが、壜1に汚れが付着した部分では光の屈折や反射が汚れのない他の部分よりも乱れる。特に、壜1の外面にコーティング層が形成され、そのコーティング層にマーカーペンのような溶剤を含む筆記具で書き込みがなされた場合には、コーティング層が溶剤で侵されて壜1の外面が変質することがある。このような場合にはコーティング層の境界における屈折や反射が顕著に乱れる。そして、そのような乱れが生じることにより、汚れ部分が他の正常な部分とは異なる固有の色で発色する。したがって、汚れの色を予め信号処理ユニット14に登録しておき、カメラ12が撮像した画像に登録された色と同一色の部分が存在するか否かを検査し、同一色の部分があればその部分を汚れとして判定する。なお、同一色か否かの判定に関しては、同一色とみなす適度の許容幅が設定されてよい。
【0021】
汚れが付着した壜1をサンプルとして用意し、検査装置10によりそのサンプルを撮像した画像の一例を図3及び図4に示す。いずれの画像においても、白丸で囲まれた部分に、汚れの発色部分が映り込んでいることが確認できる。これらの例からも明らかなように、口元部1aが絞られた形状の壜1であっても、その口天面1cから拡散光を入射させることにより、外面に付着した汚れ等の異物を発色させ、その像を確実に捉えて検査精度を向上させることができる。
【0022】
(第2の形態)
図5及び図6を参照して、本発明の第2の形態に係る検査装置を説明する。第2の形態に係る検査装置20の要部を図5に示す。検査装置20は、壜5の口元部5aにおけるびり欠陥の有無を検査する装置として構成されている。壜5は第1の形態の壜1と同様に、口元部5aが胴部5bよりも絞られた壜型形状を有し、かつ市場から回収されたガラス製の空き壜である。ただし、未使用の新品の壜5のびり欠陥も本形態の検査装置20の検査対象に含めてよい。また、検査装置20が容器検査機4の容器搬送経路の適宜の位置に配置されることは第1の形態と同様である。
【0023】
図5から明らかなように、検査装置20は、壜5の口天面5cの上方に、口天面5cと対向するように配置された照明手段としての照明装置21と、壜5をその側方から見た画像を撮像するカメラ22と、壜5から様々な方向に出射する反射光Loutを、図中に実線で示すようにカメラ22のレンズ22aに向かうように屈折させる集光手段としての一対のフレネルレンズ23A、23Bと、カメラ22が撮像した画像を処理してびり欠陥の有無を判別する判別手段としての信号処理ユニット24とを備えている。
【0024】
照明装置21は、光源としてのLED25と、そのLED25からの照明光Linが口天面5cに集中的に入射するように光路を形成する遮光筒26とを備えている。LED25は、白色の拡散光を射出するタイプであり、その光軸が壜5の軸線A2と平行となるようにして配置されている。遮光筒26は、直径一定の円柱状のコア部26aと、そのコア部26aと同軸の円筒状に形成された外壁26bとを有し、コア部26aと外壁26bとの間にリング状の光路26cが設けられている。コア部26aの中心は壜5の軸線A2と一致し、光路26cは口天面5cと同形同大である。LED25は光路26cの上端部に配置される。これにより、LED25から一定の広がりをもって射出された拡散光が光路26cで反射して壜5の口元部5aには軸線A2とほぼ平行に拡散光が集中的に入射する。なお、図5では単一のLED25を示すが、実際には、図6に示したように、光路26cには複数(図では5個)のLED25が光路26cに設けられている。ただし、壜5をカメラ22に向けられる一方の側Saと、カメラ22に対して反対側を向く他方の側Sbとに区分した場合、LED25は一方の側Saに限定して配置される。カメラ22による撮像範囲外に関しては壜5を照明する必要がないためである。なお、複数のLED25を並べる構成に代えて、単一のLED25をカメラ22に最も近い位置(カメラ22と壜5の中心とを結ぶ線上)に配置してもよい。
【0025】
カメラ22は、第1の形態のカメラ12と同様に、レンズ22aが捉えた光学像をCCDやCMOS等の撮像素子により電気信号に変換して出力する。カメラ22は壜5の口元部5aとほぼ同程度の高さに配置されており、その撮影方向は概ね水平方向に向けられている。レンズ22aの絞りは、壜5の一方の側Saにピントが合えば十分であるため、その限りにおいて被写界深度がなるべく浅くなるように開放端側に設定される。絞りを絞り込んで被写界深度を深く設定すると、壜5の他方の側Sbが一方の側Saと重なるようにしてピントが合った状態で撮像され、びり欠陥の像が却って捉えにくくなるおそれがある。なお、カメラ22の撮像画角は、検査対象の口元部5aを撮像できる程度でよい。ただし、口元部5a以外の胴部5b等も検査対象に含める場合には、カメラ22による撮像範囲を広げる必要がある。
【0026】
信号処理ユニット24は、カメラ22から出力される画像信号に所定の処理を施して検査対象の画像を取得し、その画像内にびり欠陥の像が存在するか否かを所定の検出ロジックに従って判別する。検出ロジックは、一例として次の通りである。壜5の口天面5cから入射した光は、図5に太い破線Lrで示したように、屈折と反射とを繰り返しながら口元部5aの内部を進む。口元部5aにびり欠陥が存在する場合、そのびり欠陥にて光が反射し、その反射光Loutが口元部5aから出射する。反射光Loutの方向は、びり欠陥の向きに応じて変化するが、レンズ22aから逸れる方向に進む反射光Loutであっても、フレネルレンズ23A、23Bの作用によってレンズ22aに向かうように屈折する。そのため、カメラ22で撮像される画像にはびり欠陥の反射光Loutに基づいて、相対的に輝度の高い像が映り込む。したがって、びり欠陥に相当する輝度が高い領域が画像内に存在するか否かを検査し、そのような領域があればびり欠陥と判定する。
【0027】
検査装置20においては、照明装置21から壜5に拡散光を入射させているため、壜5に入射した光が次々と屈折及び反射を繰り返しながら壜5内を進む。したがって、びり欠陥にて光が反射し易く、びり欠陥の検出精度を向上させることができる。ちなみに、平行な光を壜5に入射させた場合には、その光が壜5内を真っ直ぐ進む傾向が強くなり、びり欠陥を光が透過して、十分な反射光Loutが得られないおそれがある。また、遮光筒26により、口元部5aの外周面や内周面に対する照明光の直接的な入射を制限し、口天面5cに照明光を集中的に入射させているので、口元部5aの外周面や内周面における反射を抑えることができる。それにより、びり欠陥における反射光を容易に特定し、びり欠陥の検出精度を高めることができる。
【0028】
口元部5a内にびり欠陥が存在する壜5をサンプルとして用意し、検査装置20によりそのサンプルの口元部5aを撮像した画像の一例を図7及び図8に示す。いずれの画像においても、白丸で囲まれた部分にびり欠陥に対応した反射光の像が確認できる。なお、図中の白抜きの矩形部分にも反射光の像が存在するが、これらの像は口元部5aの形状に由来して固有的に生じる反射光に基づく像である。これらの像は、正常な壜5の口元部5aを撮像した際にも同様に出現するので、正常な壜5の画像をテンプレートとする比較、あるいは差分取得といった画像処理を行うことにより、びり欠陥か否かを判別する対象から容易に除外することができる。
【0029】
なお、第2の形態に係る検査装置20においては、フレネルレンズ23A、23Bに代わる集光手段としてミラーを光路内に設置し、様々な方向の反射光Loutをミラーで屈折させてレンズ22aに導いてもよい。集光手段を廃止し、反射光Loutが観察される範囲に複数台のカメラ22を並べてもよい。
【0030】
(第3の形態)
図9を参照して、本発明の第3の形態に係る検査装置を説明する。第3の形態に係る検査装置30の要部を図9に示す。検査装置30は、検査装置10と同様、壜1の外面に汚れが付着しているか否かを検査する装置として構成されている。検査装置30は、照明装置31の位置が、カメラ12に対して壜1の口天面1cの前部に配置されている点で検査装置10と異なっているが、その他の構成は検査装置10と同様であり同一の参照符号を付して説明を省略する。検査装置30は、壜台2に支持された壜1の口天面1cの上方、かつカメラ12に対して口天面1cの前部から壜1内に照明光が入射するように壜1を照明する照明手段としての照明装置31と、カメラ12と、背景板13と、信号処理ユニット14とを備えている。照明装置31は、LEDを光源として備え、その光源の光軸が壜1の軸線A2と平行となるようにして配置されている。照明装置31の構成は、照明装置11と同様である。
【0031】
照明装置31が壜1の前部を上方から照明することで、壜1の前部(壜1の中心よりも前側)に生じた欠陥を検出することができる。カメラ12に対向する面に照明光が入射するため、後述する良品範囲の微小な凹凸や傷等が生じている場合でも、欠陥を検出することができる。なお、壜台2は軸線A2の回りに回転駆動するため、壜1全体を検査することが可能である。
【0032】
一方で、照明装置が、カメラ12に対して壜1の口天面1cの上方、かつ後部から壜1内に照明光が入射するように壜1を照明する場合(図1の照明装置11の位置)、壜1全体に薄く生じた着色汚れを検出できる。このように壜1の後部上方から照明すると、壜1の後部(壜1の中心よりも後側)の欠陥を検出することができる。この欠陥からの光は、壜1の前部の側面を通過する際に、欠陥の位置、種類、濃さ、面積等によってはカメラ12に撮像されにくくなるおそれがある。この理由の1つとして、壜1の側面に生じている欠陥とはみなされない良品範囲の微小な凹凸や傷等により、後部の欠陥からの特徴的な光が減少すると考えられている。壜1の後部での照明により、欠陥からの光が壜1の側面内を伝播し、壜1の側方端部に現れるため、欠陥を容易に検出することができる(図4参照)。
【0033】
(第4の形態)
第1及び第3の形態では、照明装置11、31がスターホイール3Bの旋回軸線A1を中心とする円弧C(図2参照)、つまり、壜1の搬送経路Pに沿って複数の照明装置が並べて設けられるとして説明した。これらの形態では、照明装置11、31の照明光として、スポット状に絞られた白色の拡散光を口天面1cに向けて照射している。第4の形態では、照明手段としての照明装置41が、複数のチップ状のLED41aで構成されている。第4の形態は、第1及び第3の形態とこの点で異なる構成を有している。第4の形態において、第1及び第3の形態と同じ構成のものは同様の参照符号を付して説明を省略する。
【0034】
図10は、第4の形態に係る検査装置40における壜1の搬送経路Pと照明装置41との関係を示す図である。搬送手段としてのスターホイール3Bが旋回軸線A1の回りに回転し、搬送経路Pに沿って壜1を搬送する。壜1は搬送経路Pに沿って移動しつつ、自身の軸線A2の回りに回転駆動される。LED41aはチップ状の高輝度LEDであり、各LED41aは、搬送経路Pに沿って配置されている。なお、LED41aを配置する位置は、壜1の上方前部でもよいし、上方後部でもよい。
【0035】
図11は、照明装置41の要部を示す概略図である。照明装置41には、複数のLED41aが多数密着されて基板に配置されている。これにより、検査に必要な光量を確保できる。また、照明装置41には、複数のLED41aからの照明光を集光する集光手段としてのロッドレンズ41bが設けられている。ロッドレンズ41bは、円柱形状のレンズで、複数のLED41aからの光を集光するように搬送経路Pに沿って湾曲している。なお、図11において、LED41aとロッドレンズ41bとの関係を明瞭に示すため、紙面向かって左側のロッドレンズ41bを破線で示している。照明装置41を点灯させると、LED41aからの照明光はロッドレンズ41bにより集光され、壜1の口天面1cを照射する。これにより、光量のむらを防止して検査精度を向上できる。なお、集光手段はロッドレンズ41bに限られない。例えば、集光手段として、適宜の位置にミラーを配置して照明光を集光してもよい。
【0036】
本発明は、上述した形態に限定されることなく、種々の変形や変更が施された形態にて実施することができる。例えば、検査対象の異常は、容器外面の汚れや容器内部のびり欠陥に限られない。ピンホール状の成形不良箇所等も本発明により検出することが可能である。本発明の検査装置は、スターホイール式の容器検査機にその一部として組み込まれる例に限らず、独立した単一の検査装置として構成されてもよい。本発明における容器は、口元部が絞られた壜型形状を有し、かつ所定の波長域の照明光に対して透過性を有しているものであれば足りる。例えば、ガラス壜に限らず、合成樹脂製の壜型容器であっても、本発明を適用することができる。照明光は白色光に限らず、容器の口天面から入射して容器の内部を屈折や反射を起こしつつ進むことができる性質をもった光であればよい。例えば、可視域の照明光として、白色光以外にも赤色光等を照明光として利用することもできる。可視域以外にも赤外波長域の光を照明光として利用することもできる。
【0037】
上述した形態にて説明した検出ロジックはあくまで一例である。検出ロジックは、汚れ部分が発色し、あるいはびり欠陥にて強い反射光が生じるといった容器の異常箇所に生じる色、輝度といった光学的現象に応じて適宜に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0038】
1、5 ガラス壜(容器)
1a、5a 口元部
1b、5b 胴部
1c、5c 口天面
10、20 検査装置
11、21、31、41 照明装置(照明手段)
12、22 カメラ(撮像手段)
13 背景板
14、24 信号処理ユニット(判別手段)
23A、23B フレネルレンズ(集光手段)
26 遮光筒(遮光手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11