特許第6409179号(P6409179)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6409179
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】樹脂成形品及び樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20181015BHJP
   B29C 51/12 20060101ALI20181015BHJP
   B29C 51/02 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
   B32B27/00 J
   B29C51/12
   B29C51/02
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-218414(P2014-218414)
(22)【出願日】2014年10月27日
(65)【公開番号】特開2016-83850(P2016-83850A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】吉田 攻一郎
【審査官】 斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−070923(JP,U)
【文献】 実開昭53−016065(JP,U)
【文献】 特公昭59−027709(JP,B2)
【文献】 特開2011−073364(JP,A)
【文献】 特開2011−235447(JP,A)
【文献】 特開2012−158076(JP,A)
【文献】 特開2013−028031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 51/00 − 51/46
B32B 1/00 − 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形品であって、
介在シートと、
前記介在シートの第1の面に設けられるとともに、クッション性を有するクッション材と、
前記クッション材の、前記第1の面からみて反対側の面に設けられた表面壁と、
前記介在シートの、前記第1の面と反対側の第2の面に接着されるとともに、前記クッション材よりも硬く形成されるコア材と、
前記コア材の、前記第2の面からみて反対側の面に接着された裏面壁と、を備え、
前記表面壁の端部が、前記介在シートの端部又は前記裏面壁の端部と溶着されて一体化されていることを特徴とする樹脂成形品。
【請求項2】
前記介在シートが、その少なくとも端部が前記裏面壁と溶着されて一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形品。
【請求項3】
前記クッション材及び前記表面壁がクッション性を有する樹脂から構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂成形品。
【請求項4】
前記介在シート及び前記裏面壁が前記クッション材及び前記表面壁よりも硬い樹脂から構成されることを特徴とする請求項に記載の樹脂成形品。
【請求項5】
前記表面壁、前記介在シート及び前記裏面壁が、この順で、それぞれの端部が樹脂成形品の外周にて溶着されることを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形品。
【請求項6】
前記介在シートが、前記コア材の周面に沿って折れ曲がる端部を有し、 前記介在シートの前記端部が前記裏面壁に溶着されて一体化され、
前記表面壁及び前記裏面壁が、それぞれの端部が樹脂成形品の外周にて溶着されることを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形品。
【請求項7】
前記介在シートが、前記コア材の周面に沿って折れ曲がるとともに前記裏面壁の裏側に折り返された端部を有し、
前記介在シートの前記端部が前記裏面壁に溶着されて一体化され、
前記表面壁及び前記裏面壁が、それぞれの端部が樹脂成形品の外周にて溶着されることを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形品。
【請求項8】
樹脂成形品の製造方法であって、
介在シートの第1の面にクッション性を有するクッション材を、さらに前記介在シートの、前記第1の面と反対側の第2の面に前記クッション材よりも硬く形成されるコア材をそれぞれ接着した芯材を予め準備する工程(A)と、
成形金型を構成する第1の分割型と第2の分割型の間に、溶融状態の第1の樹脂シート及び溶融状態の第2の樹脂シートを配置する工程(B)と、
前記第1の樹脂シート及び前記第2の樹脂シートのそれぞれを前記第1の分割型及び前記第2の分割型に吸引し、前記第1の分割型及び前記第2の分割型のそれぞれの成形面に沿った形状に表面壁及び裏面壁を形成する工程(C)と、
前記芯材を前記第1の分割型と前記第2の分割型との間に配置した状態で前記成形金型を型締めする工程(D)と、
前記成形金型内において、前記コア材と前記裏面壁を溶着するとともに前記介在シートの少なくとも端部を前記裏面壁と溶着して一体化させた状態で冷却する工程(E)と、
前記表面壁、前記芯材及び前記裏面壁が一体化され、所定の温度以下に冷却された樹脂成形品を、型開きした前記成形金型から取り出す工程(F)と、を備えることを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品及び樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂成形品に関して、床材、タタミ、壁板、座席シート、シートバックボード、クッション、ベンチなどの用途に各種の技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、座面、足載せ面及び脚部を樹脂材料で一体に形成したスタンド用椅子が提案されている。一般に、この種のスタンド用椅子では、樹脂自体の固さで必要な強度を得るようにしている。
【0004】
ところで、スタンド用椅子などの樹脂成形品においては、強度・剛性に加え、クッション性が要望される場合がある。しかしながら、特許文献1のスタンド用椅子は、単に樹脂自体の固さで強度を得るものであるため、クッション性がなく上記要望に応えることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−14697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、強度・剛性を確保しつつ、クッション性を得ることができる樹脂成形品及び樹脂成形品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成によって把握される。
(1)本発明は、樹脂成形品であって、介在シートと、前記介在シートの第1の面に設けられたクッション材と、前記クッション材の、前記第1の面からみて反対側の面に設けられた表面壁と、前記介在シートの、前記第1の面と反対側の第2の面に接着されたコア材と、前記コア材の、前記第2の面からみて反対側の面に接着された裏面壁と、を備え、前記表面壁の端部が、前記介在シートの端部又は前記裏面壁の端部と溶着されて一体化されていることを特徴とする。
【0008】
(2)本発明は、上記(1)の構成において、前記介在シートが、その少なくとも端部が前記裏面壁と溶着されて一体化されていることを特徴とする。
【0009】
(3)本発明は、上記(1)又は(2)の構成において、前記クッション材及び前記表面壁が軟質樹脂から構成されることを特徴とする。
【0010】
(4)本発明は、上記(1)ないし(3)のいずれかの1つの構成において、前記介在シート及び前記裏面壁が硬質樹脂から構成されることを特徴とする。
【0011】
(5)本発明は、上記(1)の構成において、前記表面壁、前記介在シート及び前記裏面壁が、この順で、それぞれの端部が樹脂成形品の外周にて溶着されることを特徴とする。
【0012】
(6)本発明は、上記(1)の構成において、前記介在シートが、前記コア材の周面に沿って折れ曲がる端部を有し、前記介在シートの前記端部が前記裏面壁に溶着されて一体化され、前記表面壁及び前記裏面壁が、それぞれの端部が樹脂成形品の外周にて溶着されることを特徴とする。
【0013】
(7)本発明は、上記(1)の構成において、前記介在シートが、前記コア材の周面に沿って折れ曲がるとともに前記裏面壁の裏側に折り返された端部を有し、前記介在シートの前記端部が前記裏面壁に溶着されて一体化され、前記表面壁及び前記裏面壁が、それぞれの端部が樹脂成形品の外周にて溶着されることを特徴とする。
【0014】
(8)本発明は、樹脂成形品の製造方法であって、樹脂成形品の製造方法であって、介在シートの第1の面にクッション材を、さらに前記介在シートの、前記第1の面と反対側の第2の面にコア材をそれぞれ接着した芯材を予め準備する工程(A)と、成形金型を構成する第1の分割型と第2の分割型の間に、溶融状態の第1の樹脂シート及び溶融状態の第2の樹脂シートを配置する工程(B)と、前記第1の樹脂シート及び前記第2の樹脂シートのそれぞれを前記第1の分割型及び前記第2の分割型に吸引し、前記第1の分割型及び前記第2の分割型のそれぞれの成形面に沿った形状に表面壁及び裏面壁を形成する工程(C)と、前記芯材を前記第1の分割型と前記第2の分割型との間に配置した状態で前記成形金型を型締めする工程(D)と、前記成形金型内において、前記コア材と前記裏面壁を溶着するとともに前記介在シートの少なくとも端部を前記裏面壁と溶着して一体化させた状態で冷却する工程(E)と、前記表面壁、前記芯材及び前記裏面壁が一体化され、所定の温度以下に冷却された樹脂成形品を、型開きした前記成形金型から取り出す工程(F)と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、強度・剛性を確保しつつ、クッション性を得ることができる樹脂成形品及び樹脂成形品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係る樹脂成形品の断面図である。
図2】第2実施形態に係る樹脂成形品の断面図である。
図3】第3実施形態に係る樹脂成形品の断面図である。
図4】第1実施形態に係る樹脂成形品の製造方法に用いる成形装置の構成を説明する図である。
図5】第1実施形態に係る樹脂成形品の製造方法の説明図であり、シートを押し出す状態を示す図である。
図6】第1実施形態に係る樹脂成形品の製造方法の説明図であり、押し出したシートを所定の形状に形成する状態を示す図である。
図7】第1実施形態に係る樹脂成形品の製造方法の説明図であり、成形金型に芯材を配置した状態を示す図である。
図8】第1実施形態に係る樹脂成形品の製造方法の説明図であり、成形金型を型締めした状態を示す図である。
図9】第2実施形態に係る樹脂成形品の製造方法の説明図であり、図8に対応して描いた図である。
図10】第3実施形態に係る樹脂成形品の製造方法の説明図であり、図8に対応して描いた図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と称する)について詳細に説明する。実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。また、図面は、符号の向きに見るものとする。
【0018】
(第1実施形態の樹脂成形品)
まず、第1実施形態に係る樹脂成形品の全体構成を図1に基づいて説明する。
【0019】
図1に示すように、樹脂成形品10は、サンドイッチパネル構造を有しており、介在シート21と、介在シート21を挟むように配置されるクッション材22及びコア材23と、クッション材22を覆う表面壁25Aと、コア材23を覆う裏面壁25Bとを備える。樹脂成形品10の平面形状は、四角形状など各種の形状から選択可能である。樹脂成形品10は、例えば、競技場のスタンドに設置される観客用のベンチや、クッション、座席シート、床材、壁材、タタミなど、クッション性が求められる各種のパネルに使用可能である。
【0020】
介在シート21は、厚み方向一側に第1の面21Aを有し、第1の面21Aと反対側に第2の面21Bを有する。第1の面21Aには、クッション材22が設けられ、第2の面21Bには、コア材23が設けられる。介在シート21の端部21aは、クッション材22及びコア材23の周面よりも突出して(はみ出すようにして)形成される。介在シート21は、例えば、硬質樹脂シートが好ましく、特に裏面壁25Bと溶着・固定する観点から裏面壁25Bを構成する樹脂と同材質の樹脂から構成されることが好ましい。
【0021】
コア材23は、介在シート21の第2の面21Bに溶着や接着剤などで接着される。コア材23は、例えば、発泡ポリオレフィンなどの独立気泡構造の発泡体、ハニカム構造体などが好ましく、特に裏面壁25Bと溶着・固定する観点から裏面壁25Bを構成する樹脂と同材質の発泡ビーズから構成されるビーズ発泡体であることが好ましい。
【0022】
クッション材22は、表面壁25Aの外形と略同じ外形に形成される。クッション材22には、例えば、発泡ウレタンなどの連続気泡構造の発泡体、繊維状体などの軟質樹脂又は反発性を有する樹脂製の構造体を用いることが好ましい。
【0023】
表面壁25Aは、クッション材22の、第1の面21Aからみて反対側の面に設けられ、その大部分が樹脂成形品10の表面25A1を形成する。また、表面壁25Aは、表面25A1の外周からクッション材22の周面に沿って折れ曲がる周壁25A2を有する。
【0024】
表面壁25Aは、軟質樹脂で形成されたシートが好ましい。表面壁25Aの構成材料には、例えば、ポリオレフィン、熱可塑性エラストマー(ポリエチレン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、軟質ウレタン、軟質塩化ビニル樹脂)などを用いることができ、さらに、強度を上げるためタルクやガラス繊維などの無機充填材、耐候性を上げるため耐候剤、酸化防止剤などを添加してもよい。また、表面壁25Aには、意匠性や耐候性を向上させるために加飾シート等を貼着することができる。
【0025】
裏面壁25Bは、コア材23の、第2の面21Bからみて反対側の面に、溶着や接着剤などで接着され、その大部分が樹脂成形品10の裏面25B1を形成する。また、裏面壁25Bは、裏面25B1の外周からコア材23の周面に沿って折れ曲がる周壁25B2を有する。周壁25A2、介在シート21及び周壁25B2は、この順で、それぞれの端部25A3,21a,25B3が溶着される。
【0026】
裏面壁25Bは、周壁25B2の端部25B3が介在シート21の端部21aに直接固定されることにより、裏面壁25Bと介在シート21との間隔、すなわちコア材23の嵩(厚み)を確保する。また、周壁25B2とコア材23の周面との間に隙間26が形成されており、これにより成形後の周壁25B2とコア材23との熱収縮の差によって樹脂成形品10が変形することが防止される。
【0027】
裏面壁25Bは、硬質樹脂で形成されたシートが好ましい。裏面壁25Bの構成材料には、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ABS樹脂等の非晶性樹脂などを用いることができ、さらに、強度を上げるためタルクやガラス繊維などの無機充填材、耐候性を上げるため耐候剤、酸化防止剤などを添加してもよい。
【0028】
樹脂成形品10では、介在シート21、裏面壁25B及びそれぞれに対して面接着されるコア材23からなるサンドイッチ構造体が構成される。さらに、介在シート21と表面壁25Aの間には、軟質のクッション材22が一体に設けられることにより、全体として十分な強度及び剛性を有するとともに表面25A1側ではクッション性を有する樹脂成形品10を得ることができる。
【0029】
(第2実施形態の樹脂成形品)
次に、第2実施形態の樹脂成形品を図2に基づいて説明する。なお、前述した樹脂成形品10(図1参照)と共通する要素には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする(後述する第3実施形態についても同様)。
【0030】
前述した樹脂成形品10(図1参照)においては、表面壁25A、介在シート21及び裏面壁25Bのそれぞれの端部25A3,21a,25B3を揃えて溶着したが、表面壁25A、介在シート21及び裏面壁25Bの端末処理は、格別に限定されるものではない。
【0031】
例えば、図2に示すように、第2実施形態の樹脂成形品30では、介在シート21をコア材23の周面に沿って折り曲げるとともにコア材23の裏側に折り返し、このように折り返した介在シート21の端部21bに裏面壁25Bを接着する。この場合、表面壁25Aの端部25A3と裏面壁25Bの端部25B3を、金型分割位置となる樹脂成形品30のパーティングライン上において直接接着することで、樹脂成形品30の端末処理を行う。この第2実施形態の樹脂成形品30においても、裏面壁25Bと介在シート21との間隔、すなわちコア材23の嵩(厚み)が、断面コの字状に折れ曲がる介在シート21の端部21bによって確保される。
【0032】
(第3実施形態の樹脂成形品)
次に、第3実施形態の樹脂成形品を図3に基づいて説明する。
図3に示すように、第3実施形態の樹脂成形品80では、介在シート21をコア材23の周面に沿って折り曲げ、この折り曲げた端部21cの外面に裏面壁25Bの周壁25B2の内面を接着する。この場合においても、表面壁25Aの端部25A3と裏面壁25Bの端部25B3を、金型分割位置となる樹脂成形品30のパーティングライン上において直接接着することで、樹脂成形品30の端末処理を行う。この第2実施形態の樹脂成形品80においても、裏面壁25Bと介在シート21との間隔、すなわちコア材23の嵩(厚み)が、介在シート21の端部21bと裏面壁25Bの周壁25B2によって確保される。
【0033】
(第1実施形態の樹脂成形品の製造方法)
次に、第1実施形態の樹脂成形品10(図1参照)の製造方法を図4図8に基づいて説明する。
【0034】
(成形装置40の構成)
製造方法の具体的な各工程(後述する工程(A)〜工程(F))の説明に先立ち、製造方法で使用する成形装置40を図4に基づいて説明する。
【0035】
図4に示すように、成形装置40は、第1・第2の押出装置42A,42Bと、これら第1・第2の押出装置42A,42Bの下方に配置された型締装置43と、を備える。成形装置40では、第1・第2の押出装置42A,42Bから押し出された熱可塑性樹脂からなる溶融状態の第1・第2の樹脂シート41A,41Bを型締装置43に送り、この型締装置43によって溶融状態の第1・第2の樹脂シート41A,41Bを所定の形状に形成する。
【0036】
なお、第1の押出装置42Aと第2の押出装置42Bは、同様であるので、以下の説明において、第1の樹脂シート41Aに対応する第1の押出装置42Aのみを説明し、第2の樹脂シート41Bに対応する第2の押出装置42Bについては説明を省略する。また、成形装置40において、第1の樹脂シート41Aに対応する要素の符号には「A」を後続させ、第2の樹脂シート41Bに対応する要素の符号には「B」を後続させる。
【0037】
第1の押出装置42Aは、周知の押出装置であり、その詳しい説明は省略するが、ホッパー45Aが付設されたシリンダー46Aと、シリンダー46A内に設けられたスクリュー(図示省略)と、このスクリューに連結された油圧モーター47Aと、シリンダー46Aと内部が連通したアキュムレーター48Aと、アキュムレーター48A内に設けられたプランジャー51Aとを有する。第1の押出装置42Aでは、ホッパー45Aから投入した樹脂ペレットをシリンダー46A内で油圧モーター47Aによるスクリューの回転により溶融、混練し、溶融状態の樹脂をアキュムレーター48Aに移送して一定量貯留する。そして、アキュムレーター48A内の溶融状態の樹脂をプランジャー51Aの駆動により、Tダイ52Aに送り、押出スリット53Aを通じて所定の長さの連続的な第1の樹脂シート41Aとして押し出す。押し出した第1の樹脂シート41Aを、間隔を隔てて配置された一対のローラー55Aによって挟圧しながら下方に送り出して第1・第2の分割型57A,57B(後述)の間に垂下させる。これにより、第1の樹脂シート41Aは、上下方向(押出方向)に一様な厚みを有する状態で、第1・第2の分割型57A,57Bの間に配置される。
【0038】
第1の押出装置42Aの押出の能力は、第1の樹脂シート41Aの大きさや、第1の樹脂シート41Aのドローダウンあるいはネックイン発生防止の観点から適宜定める。より具体的には、実用的な観点から、間欠押出における1ショットの押出量は好ましくは1〜10kgであり、押出スリット53Aからの樹脂の押出速度は、数百kg/時以上、より好ましくは700kg/時以上である。また、第1の樹脂シート41Aのドローダウンあるいはネックイン発生防止の観点から、第1の樹脂シート41Aの押出工程は、なるべく短いことが好ましく、樹脂の種類、MFR値、メルトテンション値に依存するが、一般的に、押出工程は40秒以内、より好ましくは10〜20秒以内に完了するのがよい。このため、熱可塑性樹脂の押出スリット53Aからの単位面積、単位時間当たりの押出量は、50kg/時/cm以上、より好ましくは150kg/時/cm以上である。
【0039】
一対のローラー55Aの間に挟み込まれた第1の樹脂シート41Aを下方に送り出すことで、第1の樹脂シート41Aを延伸薄肉化することが可能である。押し出される第1の樹脂シート41Aの押出速度と、一対のローラー55Aによる第1の樹脂シート41Aの送り出し速度との関係を調整することにより、ドローダウンあるいはネックインの発生を防止することが可能であるため、樹脂の種類、特にMFR値及びメルトテンション値、あるいは単位時間当たりの押出量に対する制約を小さくすることができる。
【0040】
Tダイ52Aに設けられる押出スリット53Aは、鉛直下向きに配置され、この押出スリット53Aから押し出された第1の樹脂シート41Aは、そのまま押出スリット53Aから垂下する形態で、鉛直下向きに送られるようにしている。押出スリット53Aは、その間隔を可変とすることにより、第1の樹脂シート41Aの厚みを変更することが可能である。
【0041】
一対のローラー55Aは、押出スリット53Aの下方において、各々の回転軸を略水平に向け、かつ、互いに平行に並んだ状態で配置される。一対のローラー55Aは、一方が回転駆動ローラーであり、他方が被回転駆動ローラーである。より詳細には、一対のローラー55Aは、押出スリット53Aから下方に垂下する形態で押し出される第1の樹脂シート41Aに対して、線対称になるように配置される。
【0042】
ローラー55Aの直径及びローラー55Aの軸方向長さは、形成すべき第1の樹脂シート41Aの押出速度、第1の樹脂シート41Aの押出方向長さ、第1の樹脂シート41Aの幅、樹脂の種類等に応じて適宜設定される。ただし、一対のローラー55Aの間に第1の樹脂シート41Aを挟み込んだ状態で、ローラー55Aの回転により第1の樹脂シート41Aを円滑に下方に送り出す観点から、回転駆動ローラーの直径を被回転駆動ローラーの直径よりも若干大きく設定することが好ましい。また、ローラー55Aの曲率が大きすぎる、あるいは、小さすぎると、第1の樹脂シート41Aがローラー55Aに巻き付く不具合が生じるため、ローラー55Aの直径は、50〜300mmの範囲であることが好ましい。
【0043】
一方、型締装置43は、周知の型締装置であり、その詳しい説明は省略するが、金型駆動装置(図示省略)及び成形金型56を有する。成形金型56は、分割形式であり、第1の分割型57Aと、この第1の分割型57Aに合わさる第2の分割型57Bとを備える。これら第1・第2の分割型57A,57Bは、それぞれの成形面58A,58Bを対向させた状態で配置され、成形面58A,58Bが略鉛直方向に沿うように配置される。
【0044】
金型駆動装置は、溶融状態の第1・第2の樹脂シート41A,41Bの供給方向に対して略直交する方向に第1・第2の分割型57A,57Bを移動させる装置であり、第1・第2の分割型57A,57Bを開位置と閉位置との間で移動させる。
【0045】
第1・第2の分割型57A,57Bのそれぞれの成形面58A,58Bの周りには、第1の環状ピンチオフ部61A,第2の環状ピンチオフ部61Bが形成される。これら第1・第2の環状ピンチオフ部61A,61Bは、成形面58A,58Bを囲うように環状に形成され、対向する第1・第2の分割型57A,57Bに向けて突出する。これにより、第1・第2の分割型57A,57Bを型締めする際、それぞれの第1・第2の環状ピンチオフ部61A,61Bの先端部が当接する。
【0046】
第1・第2の分割型57A,57Bの外周部には、型枠62A,62Bが密接状態で摺動可能に嵌合される。型枠62A,62Bは、型枠移動装置(図示省略)により、第1・第2の分割型57A,57Bに対して相対的に移動可能である。より詳細には、型枠62A,62Bは、第1・第2の分割型57A,57Bから内向きに突出することにより、第1・第2の分割型57A,57Bの間に配置された第1・第2の樹脂シート41A,41Bの外表面63A,63Bに当接可能である。
【0047】
第1・第2の分割型57A,57Bは、それぞれ金型駆動装置により駆動され、開位置において、第1・第2の分割型57A,57Bの間に第1・第2の樹脂シート41A,41Bを配置させる一方、閉位置において、第1・第2の分割型57A,57Bの第1・第2の環状ピンチオフ部61A,61Bが互いに当接することにより、第1・第2の分割型57A,57B内に密閉空間67A,67B(図4参照)を形成する。閉位置は、第1・第2の樹脂シート41A,41Bの間の略中間位置(第1・第2の樹脂シート41A,41Bから略等距離の位置)に設定される。なお、この閉位置に対して、第1の押出装置42A及び一対のローラー55Aと、第2の押出装置42B及び一対のローラー55Bとは、左右対称に配置される。
【0048】
また、第1・第2の分割型57A,57Bのそれぞれには、真空吸引室65A,65Bが設けられる。真空吸引室65A,65Bは、吸引穴66A,66Bを介して成形面58A,58Bに連通しており、真空吸引室65A,65Bから吸引穴66A,66Bを介して吸引することにより、第1・第2の樹脂シート41A,41Bを成形面58A,58Bに吸着する。これにより、第1・第2の樹脂シート41A,41Bを成形面58A,58Bの表面に沿った形状に賦形する。
【0049】
(工程(A))
工程(A)では、硬質の介在シート21の第1の面21Aに軟質のクッション材22を接着剤又は粘着テープ等で接着し、介在シート21の第2の面21Bに硬質のコア材23を接着剤又は熱圧着等で接着した芯材11(図1参照)を予め準備する。
【0050】
(工程(B))
工程(B)では、図4に示すように、まず、溶融混練した熱可塑性樹脂をアキュムレーター48A,48B内に所定量貯留し、Tダイ52A,52Bに設けられた所定間隔の押出スリット53A,53Bから、貯留された熱可塑性樹脂を単位時間当たり所定押出量で間欠的に押し出す。これにより、熱可塑性樹脂は、スウェルして溶融状態のシート状に下方に垂下し、所定の厚みにて所定押出速度で押し出される。次いで、ローラー55A,55Bを開位置に移動し、一対のローラー55Aの間隔、一対のローラー55Bの間隔を第1・第2の樹脂シート41A,41Bの厚みより広げることにより、下方に押し出された溶融状態の第1・第2の樹脂シート41A,41Bの最下部を一対のローラー55Aの間と一対のローラー55Bの間に、円滑に供給させる。なお、一対のローラー55Aの間隔,一対のローラー55Bの間隔を第1・第2の樹脂シート41A,41Bの厚みより広げるタイミングは、押し出し開始後でなく、ワンショット毎に二次成形が終了した時点で行ってもよい。次いで、一対のローラー55A同士、一対のローラー55B同士を互いに近接させて閉位置に移動し、第1・第2の樹脂シート41A,41Bを挟み込み、ローラー55A,55Bの回転により第1・第2の樹脂シート41A,41Bを下方に送り出す。
【0051】
さらに、押出方向に一様な厚みに形成された第1・第2の樹脂シート41A,41Bを第1・第2の分割型57A,57Bの間に配置する。このとき、第1・第2の環状ピンチオフ部61A,61Bの周りからはみ出す形態で、第1・第2の樹脂シート41A,41Bを位置決めする。以上のようにして、表面壁25A及び裏面壁25B(図1参照)のそれぞれの材料である第1・第2の樹脂シート41A,41Bを互いに間隔を隔てた状態で、第1・第2の分割型57A,57Bの間に配置する。なお、押出スリット53A,53Bの間隔、あるいはローラー55A,55Bの回転速度を、第1・第2の樹脂シート41A,41Bそれぞれに対して個別に調整することにより、第1・第2の分割型57A,57Bの間に配置される第1・第2の樹脂シート41A,41Bの厚みを個別に調整することができる。
【0052】
次に、図5に示すように、第1・第2の樹脂シート41A,41Bの外表面63A,63Bに当たるまで第1・第2の分割型57A,57Bから型枠62A,62Bを移動させる。すると、成形面58A,58B、型枠62A,62Bの内周面及び第1・第2の樹脂シート41A,41Bの外表面63A,63Bにより囲われた密閉空間67A,67Bが形成される。
【0053】
(工程(C))
工程(C)では、図6に示すように、真空吸引室65A,65Bに通じる吸引穴66A,66Bを介して、密閉空間67A,67B(図5参照)を吸引することにより、第1・第2の樹脂シート41A,41Bを成形面58A,58Bに対して押し付けて、成形面58A,58Bの表面に沿った形状に第1・第2の樹脂シート41A,41Bを形成する。これにより、表面壁25A及び裏面壁25Bが形成される。
【0054】
(工程(D))
工程(D)では、図7に示すように、予め所定の形状に形成された芯材11を表面壁25A及び裏面壁25Bの間(第1・第2の樹脂シート41A,41Bの間)に配置する。ここで、芯材11を表面壁25A及び裏面壁25Bの間に配置するための手段には、例えば、周知の吸着式マニュピレータを用いることができる。すなわち、吸着式マニュピレータで芯材11を吸着保持しながら表面壁25A及び裏面壁25Bの一方に押し付けた後、吸着式マニュピレータを芯材11から取り外して第1・第2の分割型57A,57Bの間から抜くようにする。
【0055】
そして、第1・第2の樹脂シート41A,41Bを吸引保持しつつ、それぞれの第1・第2の環状ピンチオフ部61A,61B同士が当接するまで第1・第2の分割型57A,57Bを互いに近づく向きに移動させ、第1・第2の分割型57A,57Bを型締めする。すなわち、第1の樹脂シート41Aの外側に配置される第1の分割型57A及び第2の樹脂シート41Bの外側に配置される第2の分割型57Bによって、第1の樹脂シート41A、芯材11及び第2の樹脂シート41Bを挟む。
【0056】
(工程(E))
工程(E)では、図8に示すように、型締めした成形金型56内において、コア材23と裏面壁25Bを溶着するとともに、第1・第2の環状ピンチオフ部61A,61Bが突き合わさることにより、介在シート21の少なくとも端部21aと、裏面壁25Bの端部25B3及び表面壁25Aの端部25A3とを溶着して一体化させた状態で冷却する。その結果、芯材11の全体が表面壁25A及び裏面壁25Bによって覆われた成形体71が形成される。
【0057】
(工程(F))
工程(F)では、表面壁25A、芯材11及び裏面壁25Bが一体化され、所定の温度以下に冷却された成形体71を、型開きした第1・第2の分割型57A,57Bから取り出し、第1・第2の環状ピンチオフ部61A,61Bの外側のバリ部分73を切断する。これにより、樹脂成形品10(図1参照)が得られる。
【0058】
以上の工程(A)〜工程(F)を繰り返すことにより、樹脂成形品10を次々に製造することが可能である。
【0059】
(第2実施形態の樹脂成形品の製造方法)
次に、第2実施形態の樹脂成形品30の製造方法を図9に基づいて説明する。
前述した第1実施形態の樹脂成形品10(図1参照)の製造方法では、介在シート21の端部21aがクッション材22及びコア材23の周面より突出した芯材11を用いたが、表面壁25A及び裏面壁25Bの間に配置する芯材の構成は任意である。
【0060】
第2実施形態の樹脂成形品30の製造方法では、介在シート21の端部21bをコア材23の裏側に折り返した芯材31(図2参照)を準備し、このような芯材31を用いて、前述した工程(B)〜工程(F)と同様な要領で、樹脂成形品30(図2参照)を得ることができる。
【0061】
この場合、図9に示すように、第1・第2の環状ピンチオフ部61A,61Bを突き合わせて、周壁25A2の端部25A3と周壁25B2の端部25B3とを直接溶着する。また、折り返した介在シート21の端部21bと裏面壁25Bとを溶着して一体化する。
【0062】
(第3実施形態の樹脂成形品の製造方法)
次に、第3実施形態の樹脂成形品80の製造方法を図10に基づいて説明する。
第3実施形態の樹脂成形品80の製造方法では、介在シート21の端部21cをコア材23の周面に沿って折り曲げた芯材81(図3参照)を準備し、このような芯材81を用いて、前述した工程(B)〜工程(F)と同様な要領で、樹脂成形品80(図3参照)を得ることができる。
【0063】
この場合においても、図10に示すように、第1・第2の環状ピンチオフ部61A,61Bを突き合わせて、周壁25A2の端部25A3と周壁25B2の端部25B3とを直接溶着する。また、折り曲げた介在シート21の端部21cと裏面壁25Bの周壁25B2とを溶着して一体化する。
【0064】
(第1〜第3実施形態の効果)
以上、説明した第1〜第3実施形態及びその製造方法の効果について述べる。
第1〜第3実施形態及びその製造方法によれば、軟質のクッション材22及び軟質の表面壁25Aによってクッション性が得られると同時に、裏面壁25Bと介在シート21との間隔、すなわち嵩(厚み)が確保された硬質のコア材23と、硬質の裏面壁25Bとによって、必要な強度も得られる。その結果、強度・剛性を確保しつつ、クッション性を得ることができる樹脂成形品10,30,80及びその製造方法を提供することができる。
【0065】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またそのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0066】
本実施形態では、Tダイよりシートを押し出して分割金型により樹脂成形品を製造する例を説明したが、本発明の樹脂成形品を製造する方法はこれに格別に限定されるものでなく、円筒状のパリソンを押し出して、押し出し前又は押し出し直後に2枚のシートに分割し、このように分割した2枚のシートを用いて樹脂成形品を製造してもよい。あるいは、Tダイより押し出した溶融状態の2枚のシートを直接成形に用いることに代えて、予め用意した2枚のシートの原反を成形前に予備加熱し、溶融状態としたうえで、上下方向に配置した複数の分割金型により、樹脂成形品を製造してもよい。
【符号の説明】
【0067】
10 樹脂成形品
11 芯材
21 介在シート
21a 端部
21A 第1の面
21B 第2の面
22 クッション材
23 コア材
25A 表面壁
25A3 端部
25B 裏面壁
25B3 端部
30 樹脂成形品
31 芯材
41A 第1の樹脂シート
41B 第2の樹脂シート
56 成形金型
57A 第1の分割型
57B 第2の分割型
80 樹脂成形品
81 芯材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10