特許第6409186号(P6409186)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6409186
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】笛玩具
(51)【国際特許分類】
   A63H 5/00 20060101AFI20181015BHJP
   A63H 3/31 20060101ALI20181015BHJP
   A63B 43/00 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
   A63H5/00 J
   A63H3/31
   A63B43/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-212077(P2014-212077)
(22)【出願日】2014年9月29日
(65)【公開番号】特開2016-67867(P2016-67867A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年9月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391004609
【氏名又は名称】三共理研株式会社
(72)【発明者】
【氏名】入江 誠
【審査官】 宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0187118(US,A1)
【文献】 特開2013−081781(JP,A)
【文献】 実公昭55−041268(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 1/00 − 37/00
A63B 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
笛部を有する往復動体が往復動し得るように笛用筒部の中に納められており、この笛用筒部が、中空体に設けた開口部の内側に、この開口部を流通する空気流によって前記笛部が奏鳴して前記笛用筒部内で反響し得るように取り付けられていると共に、前記往復動体とは別の、長尺の舌状体を有する往復動体である往復舌が舌用筒部の中に納められており、この舌用筒部が、中空体に設けた開口部の内側に、この開口部を流通する空気流によって往復動し得るように取り付けられている、笛玩具。
【請求項2】
往復動体が往復動し得るように笛用筒部の中に納められており、この笛用筒部が中空体に設けた開口部の内側に取り付けられており、前記笛用筒部の前記中空体への取り付け部とは反対側の筒口部に笛部が、前記開口部と前記筒口部との間を流通する空気流によって奏鳴して前記笛用筒部内で反響し得るように、取り付けられていると共に、前記往復動体とは別の、長尺の舌状体を有する往復動体である往復舌が舌用筒部の中に納められており、この舌用筒部が、中空体に設けた開口部の内側に、この開口部を流通する空気流によって往復動し得るように取り付けられている、笛玩具。
【請求項3】
往復動体が往復動し得るように笛用筒部の中に納められており、この笛用筒部が中空体に設けた開口部の内側に取り付けられており、前記筒部の、前記開口部と前記往復動体との間の、壁面に通気部が設けられており、この通気部の外側に笛部が、前記開口部と前記通気部との間を流通する空気流によって奏鳴して前記笛用筒部内で反響し得るように、取り付けられていると共に、前記往復動体とは別の、長尺の舌状体を有する往復動体である往復舌が舌用筒部の中に納められており、この舌用筒部が、中空体に設けた開口部の内側に、この開口部を流通する空気流によって往復動し得るように取り付けられている、笛玩具。
【請求項4】
前記往復動体が笛用筒部の中に弾性体を介して納められている、および/または前記往復舌が舌用筒部の中に弾性体を介して納められている、請求項1乃至請求項3の何れか一に記載の笛玩具。
【請求項5】
長尺の舌状体を有する往復動体である往復舌に付いて、この往復動体と舌状体とが別体であり、前記往復動体の内部に回動軸が設けられており、前記舌状体の一端部が前記開口部の付近に固定されており、前記舌状体が、その他端部を前記開口部から引き戻す方向に付勢されるように、前記回動軸に掛け渡されている、請求項1乃至請求項3の何れか一に記載の笛玩具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボールなどの中空体に笛が取り付けられており、中空体で遊ぶと笛が鳴ると共に長尺の舌状体を出し入れするように構成した笛玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
笛の種類は各種あるが、シリンダー様の容器内にピストン様の筒状の笛が往復動可能に設けられており、笛が往復動することで筒状の笛内を通過する空気流によって奏鳴すると言うものがある。筒状の笛の往復動のために、筒状の笛に錘を設けた牛笛や、筒状の笛と容器との間にコイル状のバネを取り付けたいわゆるゲコゲコ笛なるものもある。
【0003】
このような鳴き笛をボールに設けた玩具に、実開平06−034660号の「音出し投的用玩具」と、実開平05−000194号の「擬音発生装置及び玩具」がある。実開平06−034660号は、ぬいぐるみに納めた球体6の中心に鳴き笛(鳴動体2)を内包させたものであるが、特に球体6の中心にある鳴動体2が常時重力下方向に復元するウェイトを有しており、その復元するウェイトの変移により鳴動体の内部の空気が流出して、笛体が鳴るようにしたものである。また実開平05−000194号も同様に、球体中心部に回動自在に設けた枠体15に擬音発生部材20が回動自在に取り付けられて、この擬音発生部材20の錘25が常時重力下方向に復元するように構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平06−034660号公報
【特許文献2】実開平05−000194号公報
【特許文献3】特開2013−81781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実開平06−034660号も実開平05−000194号も、笛が球体の中心にあって、笛の錘が2軸の組み合わせにより常時重力下方向に復元するように構成されているものである。笛が球体の中心に設けられているのは、錘による笛の姿勢の重力復元を重要視した結果と考えられる。
【0006】
しかしながらこの構成では、笛の姿勢を制御するための2軸の組み合わせなどの構成が複雑で容易には作れず製造コストが高くなってしまうと言う問題がある。また笛が球体の中心に内包されているため、笛の音が球体により閉ざされて内に籠もり勝ちとなり、球体の外には小さな音でしか聞こえない。更に両者共に投擲時の鳴きの良さを課題としているために、球体を持っている時の手指の握り加減や身体の揺れによって微妙な鳴きを行うなど、投げる以外の遊びの時の鳴きを重要視していない。なお実開平06−034660号の「音出し投的用玩具」でも実開平05−000194号の「擬音発生装置及び玩具」でも、その外見はともかくとして、笛の音を発する以外に遊戯者の興味を惹くような面白い機能は見られない。
【0007】
そこで上述したような問題を解決して、(A)製造が容易でコストが安く、笛の音が内に籠もることなく大きく聞こえ、投げる時のみならず遊んでいる内はいつでも鳴きを行うと言うようなものにしたい。あるいは(B)笛の音を発する以外に興趣ある機能を発揮するようなものでありたい。従ってこの発明は、上述した(A)のような課題を解決するような、好ましくは(A)(B)の課題を同時に解決するような、これまでにない新しい笛玩具を提供したい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
特開2013−81781号は当出願人の出願になる、笛部を有する往復動体が往復動し得るように筒部の中に納められており、この筒部が、中空体に設けた開口部の内側に、この開口部を流通する空気流により前記笛部が奏鳴して前記筒部内で反響し得るように、取り付けられていると共に、前記往復動体が舌状体を備えており、前記往復動体が往復動するのに連れて前記舌状体が前記開口部の付近で往復動するように、設けられている笛玩具である
【0009】
この笛部の鳴り方には2種類がある。(1)中空体が主として笛部が往復動する方向に振られると、笛部はそれ自体の重量により筒部内を往復動して音を発する。筒部内を笛部が移動すると、筒部内の反響スペースが大きくなったり小さくなったりするために、変化のある奏鳴が生ずる。すなわち筒部内の反響スペースが、往復動体の往復動に従って増減するが、往復動体には笛部が設けてありこの笛部から発生する音が上記反響スペースを通ることになる。この中空体の開口部を流通する空気流は笛部を通過するために笛部を奏鳴させることが出来るのである。なおこの現象は、従来のボールに開口部を設けてこの内側に、特開2013−81781号で用いた往復動する笛ではない、ごく普通の笛を取り付けただけのものでは見ることが出来ない。(2)中空体は手で持つことで圧縮されて、中空体内部の空気が開口部の内側に設けられた笛部を通り開口部より中空体の外へと流通する。この際の笛部での空気流通によって笛部が鳴る。また投げたボールが床に落ちたりキャッチボールのように相手が受け止めたりする時の中空体の圧縮によっても笛部が鳴る。この場合も(1)と同様に空気流によって奏鳴し筒部内で反響して変化のある奏鳴が生ずる。なお中空体が弾性を備えていれば、上記圧縮から弾性反発する際に、今度は中空体外部の空気が開口部より中空体の中へ流通する時に開口部の内側に設けた笛部を通ることでもこの笛部が鳴る。そして実際の遊びでは(1)と(2)との鳴り方が一緒になって起こることが多く、それだけ目新しく興味深いものとなっているのである。
【0010】
上記中空体は一般的にはボールであり弾性を備えていることが望ましいが、外形は球体に拘るものではなく、動物などの具象体であっても良く、また中空体が布製などのぬいぐるみを被った構成としても良い。また上記筒部の、上記笛部が往復動する方向の上記筒部に対面する部位に、空気流を妨げないようにしてクッションが設けられているものとしても良い。筒部と往復動体(笛部)の材質によっては往復動する往復動体が筒部に当たってカチカチと言うような音を発する場合がある。これを良しとしないのであれば筒部と往復動体の間に何らかのクッションを介在させることが出来る。クッションには紙や布、スポンジ、ゴム板などを任意に用いることが可能である。なお後述する請求項7の発明では、往復動体が弾性体を介して往復動するように構成されているが、仮に往復動体が筒部に当たる問題があるのであればクッションを用いるようにしても良い。なお弾性体がコイルバネの場合もある。このような各種の工夫は、後述する他の発明に於いても必要に応じて適宜採用することができる。
【0011】
ところで特開2013−81781号では、前記往復動体が舌状体を備えており、前記往復動体が往復動するのに連れて前記舌状体が前記開口部の付近で往復動するように設けられている。上述したように中空体は手で圧縮されると、中空体内部の空気が開口部の内側にある筒部内の往復動体を動かして開口部より中空体の外へと流通する。逆に上記圧縮から復帰する際には、中空体外部の空気が開口部より中空体の中へと流通して往復動体を動かす。このことは往復動体の往復動としても現れるから、往復動体に設けた舌状体の往復動となって現れる。従って中空体を手で圧縮すると、舌状体が中空体の上記舌用開口部から外方向に出るように動くし、また中空体に弾力性があれば手の力を緩めることで、舌状体が開口部から内方向に入るように動作する。このような動作の様子を笛部の奏鳴と共に楽しむことが出来るのである。なお上記中空体が人形であると面白い。上記開口部が人形の口の部位に当たるわけで、笛部の奏鳴と共に人形の口を出入りする舌状体の様子が見られるためである。なお後述するように、上記開口部ではない舌状体専用の開口部を設ける、すなわち舌用開口部を別途設ける設計も可能である。
【0012】
また特開2013−81781号は、往復動体が往復動し得るように筒部の中に納められており、この筒部が中空体に設けた開口部の内側に取り付けられており、前記筒部の前記中空体への取り付け部とは反対側の筒口部に笛部が、前記開口部と前記筒口部との間を流通する空気流によって奏鳴して前記筒部内で反響し得るように、取り付けられていると共に、前記往復動体が舌状体を備えており、前記往復動体が往復動するのに連れて前記舌状体が前記開口部の付近で往復動するように設けられている笛玩具である。この笛部の鳴り方は基本的には上述した通りであるが、笛部は往復動体と共には動かず、笛部は筒部側に固定されている点で異なる。しかしながら笛部は筒部内、すなわち上記開口部と筒口部との間を流通して上記筒口部を通過する空気流によって鳴るものであり、また笛部から発生する音は筒部内に於ける往復動体の往復動に従って増減する反響スペースを通過するものである。
【0013】
なお中空体は手で圧縮されると、中空体内部の空気が開口部の内側にある筒部内の往復動体を動かして開口部より中空体の外へと流通し、逆に上記圧縮から復帰する際には中空体外部の空気が開口部より中空体の中へと流通して往復動体を動かす。この時の往復動体の往復動は往復動体に設けた舌状体の往復動となって現れるから、中空体を手で圧縮すると舌状体が中空体の上記舌用開口部から外方向に出るように動くし、また中空体に弾力性があれば手の力を緩めることで、舌状体が開口部から内方向に入るように動作する。このような動作の様子を笛部の奏鳴と共に楽しむことが出来る。なお上記中空体が人形であるとなお興味深いものとなる
【0014】
また特開2013−81781号は、往復動体が往復動し得るように筒部の中に納められており、この筒部が中空体に設けた開口部の内側に取り付けられており、前記筒部の、前記開口部と前記往復動体との間の、壁面に通気部が設けられており、この通気部の外側に笛部が、前記開口部と前記通気部との間を流通する空気流によって奏鳴して前記筒部内で反響し得るように取り付けられていると共に、前記往復動体が舌状体を備えており、前記往復動体が往復動するのに連れて前記舌状体が前記開口部の付近で往復動するように設けられている笛玩具である。この笛部の鳴り方は次のようである。すなわち(1)中空体が主として往復動体が往復動する方向に振られると、往復動体はそれ自体の重量によって筒部内を往復動して筒部内の反響スペースが大きくなったり小さくなったりする。また中空体の開口部を流通する空気流は、筒部の壁面に設けた通気部やこの通気部の外側に設けた笛部を通って笛部を奏鳴させる。この笛部で生じた音が上記反響スペースを通ることになるため変化のある音が発せられることになる。なおこの現象は、従来のボールに開口部を設けてこの内側に、特開2013−81781号で用いた往復動する笛ではない、ごく普通の笛を取り付けただけのものでは見ることが出来ない。(2)中空体は手で持つことで圧縮されて、中空体内部の空気が開口部の内側に設けられた筒部や、筒部の壁面にある通気部の外側に設けた笛部を通り、開口部より中空体の外へと流通する。この際の笛部での空気流通によって笛部が鳴る。また投げたボールが床に落ちたりキャッチボールのように相手が受け止めたりする時の中空体の圧縮によっても笛部が鳴る。なお中空体が弾性を備えていれば、上記圧縮から弾性反発する際に、今度は中空体外部の空気が開口部より中空体の中へ流通する時に、筒部の外側の笛部を通ることでも笛部が鳴る。そして実際の遊びでは(1)と(2)の鳴り方が一緒になって起こることが多く、それだけ目新しく興味深いものとなっているのである。
【0015】
ところで特開2013−81781号では、前記往復動体が舌状体を備えており、前記往復動体が往復動するのに連れて前記舌状体が前記開口部の付近で往復動するように設けられている。上述したように中空体内部の空気の流通は往復動体に往復動を起こすため、往復動体に設けられている舌状体にも往復動が起き、舌状体が中空体の上記開口部から外方向に出たり内方向に入るように動作する。このようして笛部の奏鳴と共に舌状体の動作の様子を楽しむことができるのである。なお上記中空体が人形であると、その口を出入りする舌状体の様子が見られるため面白い。なお後述するように、上記開口部ではない舌状体専用の開口部を設ける、すなわち舌用開口部を別途設ける設計も可能である。
【0016】
さて、上述した特開2013−81781号の説明を踏まえて、本願発明の課題は、笛部を有する往復動体が往復動し得るように笛用筒部の中に納められており、この笛用筒部が、中空体に設けた開口部の内側に、この開口部を流通する空気流によって前記笛部が奏鳴して前記笛用筒部内で反響し得るように取り付けられていると共に、前記往復動体とは別の、長尺の舌状体を有する往復動体である往復舌が舌用筒部の中に納められており、この舌用筒部が、中空体に設けた開口部の内側に、この開口部を流通する空気流によって往復動し得るように取り付けられている、笛玩具とすることによって達成される。
【0017】
特開2013−81781号では、筒部の中に納められた往復動体が舌状体を備えており、往復動体が往復動するのに連れて舌状体が開口部の付近で往復動するように設けられている。これに対して本願請求項1の発明では、舌状体を往復動体に設けていない。すなわち笛用筒部とは別に舌用筒部を設けて、この舌用筒部の中に、長尺の舌状体を有する往復動体である所の往復舌を納めるようにしたのである。従って開口部に発生する空気流通で、笛部を有する往復動体と往復舌とが別々の上記筒部(笛用筒部、舌用筒部)の中で往復動することになる。なおこの発明に於ける笛部の鳴り方に(1)(2)の2種類があることは、特開2013−81781号の説明の通りである。
【0018】
なお後述する発明では、上記往復動体が笛用筒部の中に弾性体を介して納められている、および/または上記往復舌が舌用筒部の中に弾性体を介して納められているが、仮に往復動体や往復舌が上記筒部に当たる問題があるのであればクッションを用いるようにしても良い。なお弾性体がコイルバネの場合もある。
【0019】
次に上記課題は、往復動体が往復動し得るように笛用筒部の中に納められており、この笛用筒部が中空体に設けた開口部の内側に取り付けられており、前記笛用筒部の前記中空体への取り付け部とは反対側の筒口部に笛部が、前記開口部と前記筒口部との間を流通する空気流によって奏鳴して前記笛用筒部内で反響し得るように、取り付けられていると共に、前記往復動体とは別の、長尺の舌状体を有する往復動体である往復舌が舌用筒部の中に納められており、この舌用筒部が、中空体に設けた開口部の内側に、この開口部を流通する空気流によって往復動し得るように取り付けられている、笛玩具とすることによって達成される。
【0020】
特開2013−81781号では、上記往復動体が舌状体を備えており、往復動体が往復動するのに連れて上記舌状体が上記開口部の付近で往復動するように設けられている。これに対して本願請求項2の発明では、舌状体を往復動体に設けていない。すなわち笛用筒部とは別に舌用筒部を設けて、この舌用筒部の中に、舌状体を有する往復動体である所の往復舌を納めるようにしたのである。
【0021】
次に上記課題は、往復動体が往復動し得るように笛用筒部の中に納められており、この笛用筒部が中空体に設けた開口部の内側に取り付けられており、前記筒部の、前記開口部と前記往復動体との間の、壁面に通気部が設けられており、この通気部の外側に笛部が、前記開口部と前記通気部との間を流通する空気流によって奏鳴して前記笛用筒部内で反響し得るように、取り付けられていると共に、前記往復動体とは別の、長尺の舌状体を有する往復動体である往復舌が舌用筒部の中に納められており、この舌用筒部が、中空体に設けた開口部の内側に、この開口部を流通する空気流によって往復動し得るように取り付けられている、笛玩具とすることによって達成される。
【0022】
この発明は特開2013−81781号に対比されるが、特開2013−81781号では筒部の中に納められた往復動体が舌状体を備えており、往復動体が往復動するのに連れて舌状体が開口部の付近で往復動するように設けられている。これに対して本願請求項3の発明では、舌状体を往復動体に設けるのではなく、笛用筒部とは別に舌用筒部を設けて、この舌用筒部の中に、舌状体を有する往復動体である所の往復舌を納めるようにしたのである。
【0023】
さて本願発明では、前記舌状体を長尺物としている。舌状体には、猫の舌のようにチロチロと口を出入りする短い舌の他にも、アリクイの舌のように比較的に長い舌があるし、更には蛇をデフォルメしたような舌も考えられる。本願発明では、舌状体を往復動体に設けずに、笛用筒部とは別の舌用筒を設けて、そこに舌状体を有する往復動体である所の往復舌を納めるようにしている。すなわち舌用筒は笛用筒部とほぼ同じような長さのものにすることが可能であり、この長さの中に往復舌を納めるのであるから、本願発明は長尺な舌を用いるのにより好適な構成であると言うことができる。
【0024】
なお往復舌を納めると言う場合、往復舌の全てが舌用筒の中に納まる場合と、全ては納まり切らずに一部は開口部から出たままとなる場合とがある。また更に長い往復舌を用いたいのであれば、舌用筒に往復舌を納める構成ではなく、例えば長い往復舌を折り畳んだり回動軸に巻き取ったりする機構を備えるようにすれば良い。すなわち長尺の舌状体を有する往復動体である往復舌に付いて、この往復動体と舌状体とが別体であり、前記往復動体の内部に回動軸が設けられており、前記舌状体の一端部が前記開口部の付近に固定されており、前記舌状体が、その他端部を前記開口部から引き戻す方向に付勢されるように、前記回動軸に掛け渡されている、構成を上げる。中空体が圧縮されると、中空体内部の空気が上記往復舌を開口部の方向に動かして開口部より中空体の外へと流通するが、この際に上記舌状体の他端部が開口部から外に繰り出されるように動作する。逆に上記圧縮から復帰する際には、中空体外部の空気が開口部より中空体の中へと流通して往復動体を動かし、中方向に引かれた上記回動軸に掛け渡された上記舌状体は上記付勢の力もあって引き戻される方向に動作する。それと言うのも上記舌状体の一端部が固定されているためである。このように舌状体の動作の様子を笛部の奏鳴と共に楽しむことが出来るのである。なお上記中空体が人形であると面白い。上記開口部が人形の口の部位に当たるわけで、笛部の奏鳴と共に人形の口を出入りする上記舌状体の様子が見られるためである。
【0025】
さてこの発明では、上記開口部と上記笛部、または上記開口部と上記笛部と上記往復舌との組、が上記中空体の複数個所に設けられているものとすることが出来る。中空体内部の空気が流通する開口部はただ1箇所にのみ限定されるものではない。従って例えば2つの開口部に異なる音色の鳴き笛を設ける構成なども可能である。
【0026】
またこの発明では、上記中空体が遊戯用やペット用のボールであるものとすることが出来る。人の遊技用であれば人が手で掴んだり脚で蹴ったりすることで笛が鳴る。ペット用であればペットが鼻先で突いて転がしたり口で噛んだりすることで笛が鳴る。従ってこの発明は飼い主とペットが遊ぶのに好適な笛玩具でもある。
【0027】
またこの発明では、上記中空体がぬいぐるみ様体であるものとすることが出来る。外見上はぬいぐるみであり、これを持ったり抱いたり相手に受け渡したりすることで笛が鳴るのである。なおペット用に構成することも可能である。
【0028】
またこの発明では、上記中空体が人形であり、人形の口に当たる部位に舌用開口部を備えると共に上記往復動体が上記舌状体を備えており、上記往復動体が往復動するのに連れて上記舌状体が上記舌用開口部の付近で往復動するように設けられているものとすることが出来る。
【0029】
この他上記往復動体が上記中空体のほぼ直径分を往復動し得るように、上記筒部が上記中空体のほぼ直径分の長さで設けられているものとすることが出来る。これにより反響スペースを出来るだけ大きく取ることが可能になる。従ってこの反響スペースを利用する笛部の音色や鳴き方も大きく変化することになる。これは一般的な感覚では「面白い鳴き声である」とされるであろう。
【発明の効果】
【0030】
この発明によれば、(A)従来例のような笛の錘を常時重力下方向に復元させる手段、を設ける必要が無く、従来例のように笛の取り付け場所も中空体の中心部に限定されず、開口部の内側に設ければ良いから、製造が容易でコストが安い。また中空体の開口部の内側に設けた笛部を空気の流通路としているため、笛の音が内に籠もることなく大きく聞こえるようになっている。また投げる時のみならず遊んでいる内はいつでも鳴きを行うようになっている。また(B)従来例とは異なり、長尺の舌状体を備えることで笛の音を発する以外にも遊戯者の興味を惹くような面白い機能を発揮するようになっている。このようにこの発明は、これまでにない新しい笛玩具を提供することに成功している。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】 実施例の人形12と筒部5との取り付け構造の説明図である。
図2】 実施例の筒部5の説明図である。
図3】 実施例の説明図である。
図4】 実施例の往復舌76付近の説明図である。
図5】 実施例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0032】
図1の全体を模式図で筒部5の部分を断面図的に表したこの実施例は、弾力性と形状復元性とを有する合成樹脂製の中空人形12に、この開口部13から筒部5を挿着して成る舌出しおもちゃに関するものである。筒部5は笛用筒部50と舌用筒部56とを組み合わせたものであり、開口部13の内側に取り付けられる笛用筒部50は、上記開口部13側に開口部55が他側に通気口51が開口されている。笛用筒部50内にはコイルバネ52と往復動体54とが納められている。往復動体54の内部は通気可能に構成されており、この中に鎖線で表した笛部53が納められている。
【0033】
一方、上記舌用筒部56は、上記開口部13側に舌用開口部501が開口されており、他側に通気口57が開口されており、舌用筒部56の内部は通気可能に構成されている。この舌用筒部56にはピストン58が収められておりこのピストン58に長い往復舌59が取り付けられている。またこの長い往復舌59の先端部には、上記舌用開口部501から中に入れないようなストッパとしての突起500が設けられている。従って長い往復舌59は上記ピストン58から突起500の部位までの間で上記舌用開口部501を出入りすることが出来るように構成されている。
【0034】
この実施例の中空人形12の舌出しおもちゃは、投げられて壁や床に衝突したり相手にキャッチされたりした時に圧縮され(図1の矢線P)、中空人形12内部の空気が、通気口51から、笛部53のある往復動体54の通気部を抜け、コイルバネ52の空間を抜けて、開口部55、中空人形12の開口部13を通過して中空人形12の外に出る際に、笛部53内の図示しないリードから笛音を発生するが、往復動体53が笛用筒部50の内部でコイルバネ52の弾性力を借りて振動して、笛用筒部50内の反響スペースが大きくなったり小さくなったりすることによって、笛部53から生ずる音色に変化が与えられる。中空人形12には弾力性があって自動的に形状復元を行うので、この際には開口部13から中空人形12の内部に向けて空気流が発生する。
【0035】
上述したように中空人形12内部の空気が笛用筒部50内を移動する際には、また中空人形12内部の空気は舌用筒部56内をも移動する。空気が舌用筒部56を通って舌用開口部501から中空人形12の外に出る時には、ピストン58は舌用開口部501の方に移動させられるため、長い往復舌59はその殆どが中空人形12の開口部13の外に出てしまう。逆に空気が舌用開口部501から中空人形12の中に入る時には、ピストン58は上記通気口57の方に移動させられるため、長い往復舌59はその殆どが中空人形12の中に収められてしまう。
【0036】
このように笛用筒部50と舌用筒部56とを別々に構成すると、舌用筒部56に於いて長い往復舌59を動かすための空気量が少なくて済むようになり、この結果中空人形12を少し押しただけでも長い往復舌59を開口部13から勢いよく出させることが出来ると言う効果を奏する。なお笛用筒部50と舌用筒部56とを別々にする構成は、長い舌にだけでなく短い舌に適用しても良い。
【0037】
なお笛部53は笛用筒部50の内部に設けられているが、図1に鎖線で表したように、笛部53’を笛用筒部50の側部に設けるようにする設計が可能である。この場合には笛用筒部50の側部に側気口を開口しておき(図示せず)、ここに位置合わせするようにして上記笛部53’を固定することになる。または図1に鎖線で表したように、笛部53”を上記舌用筒部56の通気口51の外部に設けるようにする設計が可能である。このような笛部の設け方は特開2013−81781号の実施例に類似している
【実施例2】
【0038】
図2で表したこの実施例の筒部5は、その殆どの構成を上述した実施例1のそれに倣うものであるが、舌用筒部56のピストン58に比較的力の弱いコイルバネ502を備えている点で異なる。
【0039】
中空人形12に図1の矢線Pのような圧力が加わっていない時には、コイルバネ502の復元力によって、長い往復舌59の殆どが中空人形12の中に収められてしまうようになっている。
【実施例3】
【0040】
図3で表したこの実施例の筒部6は、その殆どの構成を上述した実施例1のそれに倣うものであるが、舌用筒部56ではなく舌用円形筒部66を用いてその中に長い往復舌69を納めるようにしている点で異なる。
【0041】
この舌用円形筒部66のように形状を丸く取ることにより、全体のサイズをコンパクトなものとすることが出来る。また例えばドラゴンのような形状のものを球体として表すようなデザインが可能である。
【実施例4】
【0042】
図4で表したこの実施例の筒部7は、図示しない中空体の内部の空気が、通気口70から、図示しない笛部のある往復動体71を抜けて、開口部78、中空体の図示しない開口部を通過して中空体の外に出たり、この逆に中空体の外から上記各部を通って中空体の内部に入るように構成されている。
【0043】
この筒部7内を往復動する往復動体71には回動軸72が設けられており、この回動軸72にスプロケット73が回動自在に取り付けられている。スプロケット73の回りには等間隔に突起74が設けられている。一方、長い舌75となるリボンには上記突起74の間隔で孔76が開口されている。こうして長い舌75は上記孔76が上記突起74に掛け止めされるようにしてスプロケット73に掛けられ、一方の端部は開口部78近くの筒部7の内壁に固定部77を以て固定され、他方の端部は上記開口部78から筒部7の外部に引き出される。このような構成により長い舌75となるリボンの全長は、言わば筒部7の全長の倍近い長さとなる。すなわち非常に長い舌状体を用いることが出来るのである。
【0044】
このようにして、上記通気口70から往復動体71を押すように空気が筒部7内を移動する際には、空気に押された往復動体71の内部では上記スプロケット73が回動して、上記突起74と孔76との掛合による作用にて、長い舌75が、スプロケット73から外れることなく、開口部78から外に繰り出される。逆に空気が中空体内に戻る際には、このスプロケット73は回動軸72に設けられた図示しない巻き戻しバネの作用によって、都合よく長い舌75を筒部7内に納めるように動作する。
【実施例5】
【0045】
図5で表したこの実施例は、弾力性と形状復元性とを有する合成樹脂製のボール人形1(単なるボールとする構成もある)に1個の開口部10が設けられており、ボール人形1の内側の上記開口部10に、筒部4の通気口46が位置するようにして筒部4が取り付けられている。この筒部4は図5から明らかとなるように、全体は天部と底部とを有する円筒形状を呈しており、天部から底部までの長さはこのボール人形1の内部直径にほぼ等しく、天部には上記通気口46が開口されており、この反対側の底部はボール人形1の内壁に固定されるも、ボール人形1の内部に通気する通気口40が開口されている。またこの筒部4の内部には、仮に筒部4をシリンダーとすればそのピストンとなる円筒形状の往復動体45が、筒部4の底部に設けたコイルバネ41により往復動自在に設けられている。一方、筒部4の上記通気口46と上記往復動体45との間の壁面には側気口42が開口されており、ここに笛部43が、筒部4の外側に位置するように設けられている。この笛部43にはリード44が笛部43の中心部にその長手方向に向けて片持ち状態で振動するように取り付けられている。リード44の他側は自由端であってここが振動して音を発するのである。
【0046】
上記往復動体45で特筆すべきは、往復動体45の上端部に長尺物の舌状体、すなわち長い舌47が設けられていることである。
【0047】
ボール人形1が投げられて壁や床に衝突したり、相手にキャッチされたりした時には、ボール人形1は圧縮される。すると笛部43の内部のリード44を振動させて笛音を発生させ、側気口42から、通気口46、ボール人形1の開口部10を通過してボール人形1の外に出る空気の流れと、筒部4の底部の通気口40から入り往復動体45を押し上げて通気口46、ボール人形1の開口部10からボール人形1の外に出る空気の流れとの二つの別々の流れを生ずるが、これ等は筒部4内の反響スペースで合流して通気口46から一緒に外に出る。またボール人形1には弾力性があって自動的に形状復元を行うので、この際には開口部10からボール人形1の内部に向けて空気流が発生する。そして筒部4内の反響スペースまでは一緒の空気流は、笛部43のリード44を振動させる流れと、往復動体45を押し下げる流れとの二つの別々の流れに分かれるが、この何れも最終的にはボール人形1の内部に流れ込む。従って往復動体45が筒部4の内部で振動して筒部4内の反響スペースが大きくなったり小さくなったりすることにより、笛部43から生ずる音色に変化が与えられることになる。なおコイルバネ41は往復動体45を往復動自在に支持して、その弾性力は往復動体45の振動を助ける。この往復動体45の図示した上端部に長い舌47が設けられていることによって、この長い舌47が往復動体45の振動に合わせて通気口10,46を往復動する動作が見られる。この実施例で特徴的な点は、筒部4の内部で往復動体45が振動することにより大きくなったり小さくなったりする筒部4内の反響スペース(長い舌47の回りの空間)に向けて、筒部4の外側に設けた笛部43を作用させている点である。大きくなったり小さくなったりする筒部4内の反響スペースが、実施例1のものに比して著しく長くなっており、高い音から低い音への音色の変化の幅が大きく、非常に面白い音として聞こえる点で興味深い。
【0048】
なおボール人形1の内部直径にほぼ等しい筒部4の底部をボール人形1の内壁に固定しない設計も可能である。また通気口40を筒部4の底部にではなく側面部に開口するようにしても良い。なおそもそもこの通気口40を設けないようにする構成も可能であって、投げる遊び以外でも、ボール人形1を持っている時の手指の握り加減や身体の揺れにより生ずる笛部43での空気流やコイルバネ41で支持された往復動体45の振動によって、微妙な鳴きを行わせることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0049】
この発明はボールや人形に限定されず、上記中空体をおもちゃのハンマーの打撃部として構成したり、上記中空体をおもちゃのバットとして構成したりすることを自由に行って良い。バットと実施例のボールとを組み合わせた玩具として提供することも可能である。或いはスポーツトレーニング用のバランスボールを構成することも可能であり、この発明の用途は多岐に亘る。
【符号の説明】
【0050】
1 ボール人形
10 開口部
12 中空人形
13 開口部
4 筒部
40,46通気口
41 コイルバネ
42 側気口
43 笛部
44 リード
45 往復動体
47 長い舌
5 筒部
50 笛用筒部
51 通気口
52 コイルバネ
53 笛部
54 往復動体
55 開口部
56 舌用筒部
57 通気口
58 ピストン
59 長い往復舌
500突起
501舌用開口部
502コイルバネ
6 筒部
60 笛用筒部
61 通気口
62 コイルバネ
63 笛部
64 往復動体
65 開口部
66 舌用円形筒部
67 通気口
68 ピストン
69 長い往復舌
600突起
601舌用開口部
7 筒部
70,78通気口
71 往復動体
72 回動軸
73 スプロケット
74 突起
75 長い舌
76 孔
77 固定部
78 開口部
図1
図2
図3
図4
図5