【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行者名: 日本応用物理学会 URLアドレス http://dx.doi.org/10.7567/JJAP.52.06GL02 掲載年月日: 平成25年 6月20日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、一般に粒子は小径であるほど高価であるため、誘電体層の誘電特性の調節等の要請のために小径の粒子を使用する必要がある場合、コンデンサの製造コストが増大する可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は、コストの低減を図りながら所望の特性を有するコンデンサ等の電子回路要素を製造する装置および方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の装置は、絶縁性の基板に電子回路要素を製造する装置であって、粒子噴射装置と、レーザー装置と、前記粒子噴射装置による指定電気特性を有する粒子群の前記基板に対する噴射箇所および前記レーザー装置による前記基板に対するレーザー光の照射箇所を変位させるように、前記粒子噴射装置および前記レーザー装置のそれぞれと前記基板との相対的な位置および姿勢のうち一方または両方を変化させるように構成されている位置姿勢調節機構と、前記基板に対する前記粒子群の噴射箇所および前記レーザー光の照射箇所のうち一方を他方に追従させるまたは一致させるように前記位置姿勢調節機構の動作を制御しながら、前記基板の指定領域に対する前記粒子群の累積的な質量流束が、前記電子回路要素の目標電気特性を実現するために定められている指定値に一致するように、
前記粒子噴射装置の動作に応じた前記粒子群の質量流束、ならびに前記位置姿勢調節機構の動作による前記粒子群の噴射箇所の変位速度および通過回数のうち少なくとも1つを制御するよう構成されている制御装置と、を備え
、前記基板において、第1指定領域と、前記基板の表面の垂線方向について前記第1指定領域と部分的に重なり合っている第2指定領域と、前記第1指定領域および前記第2指定領域の重なり部分に重なり、かつ、当該重なり部分の両側で前記第1指定領域および前記第2指定領域のそれぞれに重なる中間指定領域とが定義され、前記制御装置が、前記基板の第1指定領域に対して前記レーザー光を照射させるとともに、金属粒子および炭素粒子を含む第1導電体粒子群を衝突させるように、前記レーザー装置、前記粒子噴射装置としての第1導電体粒子装置、および、前記位置姿勢調節機構のそれぞれの動作を制御する第1導電体層形成処理と、前記基板の中間指定領域に対して前記レーザー光を照射させるとともに、誘電体粒子群を衝突させるように、前記レーザー装置、前記粒子噴射装置としての誘電体粒子装置、および、前記位置姿勢調節機構のそれぞれの動作を制御する誘電体層形成処理と、前記基板の第2指定領域に対して前記レーザー光を照射させるとともに、第2導電体粒子群を衝突させるように、前記レーザー装置、前記粒子噴射装置としての第2導電体粒子装置、および、前記位置姿勢調節機構のそれぞれの動作を制御する第2導電体層形成処理と、を実行することにより、前記電子回路要素としてコンデンサを製造するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の方法は、絶縁性の基板に電子回路要素を製造する方法であって、前記基板において、第1指定領域と、前記基板の表面の垂線方向について前記第1指定領域と部分的に重なり合っている第2指定領域と、前記第1指定領域および前記第2指定領域の重なり部分に重なり、かつ、当該重なり部分の両側で前記第1指定領域および前記第2指定領域のそれぞれに重なる中間指定領域とが定義され、前記基板の第1指定領域に対して
レーザー光を照射させるとともに、金属粒子および炭素粒子を含む第1導電体粒子群を衝突させるように、
レーザー装置、
粒子噴射装置としての第1導電体粒子装置、および、
位置姿勢調節機構のそれぞれの動作を制御する第1導電体層形成工程と、前記基板の中間指定領域に対して前記レーザー光を照射させるとともに、誘電体粒子群を衝突させるように、前記レーザー装置、前記粒子噴射装置としての誘電体粒子装置、および、前記位置姿勢調節機構のそれぞれの動作を制御する誘電体層形成工程と、前記基板の第2指定領域に対して前記レーザー光を照射させるとともに、第2導電体粒子群を衝突させるように、前記レーザー装置、前記粒子噴射装置としての第2導電体粒子装置、および、前記位置姿勢調節機構のそれぞれの動作を制御する第2導電体層形成工程と、を含み、
前記電子回路要素としてコンデンサを製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の装置および方法によれば、基板の指定領域に対する粒子群の累積的な質量流束が指定値に制御されることにより、基板に到達した粒子群を構成する粒子同士の衝突による当該粒子の粉砕程度が調節される。すなわち、基板に到達した粒子群のうち少なくとも一部の粒子径が、当初よりも小さい値に調節されながら固く締まる。レーザー光の照射による局所的な加熱により、粒子群同士のネッキング等の変化が促進されることにより、当該粒子群が全体的にバルクとしての電気特性が実現される。
【0011】
このため、当該値と同程度の粒子径を有する粒子群の不使用によりコスト低減を図りながら、当該粒子群を用いた場合と同等の特性を有する電子回路要素が製造されうる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(構成)
本発明の一実施形態としての
図1に示されている電子回路要素製造装置は、レーザー装置1と、導電体粒子噴射装置21と、誘電体粒子噴射装置22と、位置姿勢調節機構3と、制御装置4とを備えている。
【0014】
レーザー装置1は、レーザー光を発生するレーザー発振器11と、レーザー発振器11により発生されたレーザー光を基板5に対して照射するための光ファイバーおよび集光レンズ等により構成されている光学系12とを備えている。
【0015】
導電体粒子噴射装置21は、そのノズルから導電体粒子群を略直線状に噴出するように構成されている。導電体粒子としては、黒鉛粒子(カーボンナノチューブまたはカーボンナノシートなどの構造体も含む。)または黒鉛粒子とPt,Au,Ag,Cu等の金属粒子との混合粒子などの炭素系の導電体粒子が挙げられる。
【0016】
誘電体粒子噴射装置22は、そのノズルから誘電体粒子群を略直線状に噴出するように構成されている。誘電体粒子としては、BaTiO
3、SrTiO
3、PbTiO
3またはAl
2O
3などのセラミックス系の誘電体粒子が挙げられる。
【0017】
位置姿勢調節機構3は、電子回路が製造される絶縁性の基板5と、レーザー装置1、導電体粒子噴射装置21および誘電体粒子噴射装置22のそれぞれとの相対的な位置および姿勢を調節するように構成されている。これにより、レーザー装置1による基板5に対するレーザー光の照射箇所と、導電体粒子噴射装置21による基板5に対する導電体粒子群の噴射箇所と、誘電体粒子噴射装置22による基板5に対する誘電体粒子群の噴射箇所とのそれぞれを変位させることができる。
【0018】
本実施形態では、位置姿勢調節機構3は、基板5が載置または固定される基台30を駆動させることにより、基台30は、水平方向の直交する2軸方向(X方向およびY方向)またはこれに鉛直方向(Z方向)が加わった3軸方向のそれぞれに対して駆動されうる。基台30がピッチ軸(Y軸)、ロール軸(X軸)およびヨー軸(Z軸)のいずれかの軸回りに回動されることにより、世界座標系における基板5の姿勢が調節されてもよい。
【0019】
なお、位置姿勢調節機構3がレーザー装置1(または光学系12もしくはその構成部材)を駆動することにより、レーザー装置1の基台30に対する位置および姿勢を変更するように構成され、これによりレーザー光の基板5に対する照射位置および方向が制御されてもよい。位置姿勢調節機構3が、導電体粒子噴射装置21および誘電体粒子噴射装置22のそれぞれを駆動することにより、導電体粒子噴射装置21および誘電体粒子噴射装置22の基台30に対する位置および姿勢を変更するように構成され、これにより導電体粒子噴流(粒子群)および誘電体粒子噴流のそれぞれの基板5に対する噴射箇所および方向が制御されてもよい。
【0020】
制御装置4は、コンピュータにより構成され、基板5に対するレーザー光の照射箇所に、導電体粒子群および誘電体粒子群のそれぞれの噴射箇所を一致または追従させるように位置姿勢調節機構3の動作を制御する。位置姿勢調節機構3の動作に応じた基板5に対する導電体および誘電体粒子群の噴射箇所の変位速度および通過回数、ならびに、粒子噴射装置21、22の動作に応じた粒子群の質量流束のうち少なくとも1つを制御する。これにより、基板5の指定箇所に対する粒子群の累積的な質量流束が、電子回路要素の目標電気特性を実現するために定められる指定値に一致するように制御される。
【0021】
粒子群の質量流束は、単位時間および単位面積当たりに基板5に対して噴射される粒子群の質量を意味し、噴射粒子群の密度Np(kg/m
3)および噴射速度Vp(m/s)の積Np×Vpにより表わされる。粒子群の質量流束Np×Vp、基板5に対する粒子群の噴射箇所の変位速度Vs(または通過速度)(m/s)および通過回数Nsに基づき、関係式M=Np×Vp÷Vs×Nsにしたがって粒子群の累積的な質量流束Mが定義される。
【0022】
導電体粒子噴射装置21および誘電体粒子噴射装置22のそれぞれに対して物質を供給するための複数の供給ラインが設けられ、当該複数の供給ラインのそれぞれに流量調節弁などの供給量調節機構が設けられ、制御装置4により当該供給量調節機構の動作が制御される。導電体粒子噴射装置21における導電体粒子のキャリアガスの速度または圧力および誘電体粒子噴射装置22における誘電体粒子のキャリアガスの速度または圧力等が制御装置4により調節されることにより、各粒子群の質量流束が制御される。
【0023】
(機能)
電子回路要素としてコンデンサが基板5に形成される実施形態について説明する。基板5において第1指定領域S1、第2指定領域S2および中間指定領域S0が、基板座標系(x,y)における各範囲の輪郭線を表わす座標値群によって定義される。例えば
図3(a)において一点鎖線で囲まれている矩形状の第1指定領域S1、二点鎖線で囲まれている矩形状の第2指定領域S2および実線で囲まれている矩形状の中間指定領域S0が定義される。なお、第1指定領域S1、第2指定領域S2および中間指定領域S0の形状、サイズ、相対位置および相対姿勢は任意に変更されてもよい。
【0024】
第1指定領域S1および第2指定領域S2は、基板5の表面の垂線方向(紙面に垂直な方向)について部分的に重なり合っている。中間指定領域S0は、第1指定領域S1および第2指定領域S2の重なり部分と、当該重なり部分の左側に連続する部分において第1指定領域S1に対して部分的に重なり合っている。中間指定領域S0は、第1指定領域S1および第2指定領域S2の重なり部分と、当該重なり部分の右側に連続する部分において第2指定領域S2に対して部分的に重なり合っている。
【0025】
第1指定領域S1、第2指定領域S2および中間指定領域S0を定義する前記座標値群は、制御装置4を構成する記憶装置に格納される。なお、製造対象となるコンデンサを識別するための識別子と、当該各範囲を定義する座標値群とが関連付けられて記憶装置に保存され、マウスポインティング装置、タッチパネル式スイッチまたはキーボードなどの入力装置(図示略)を通じてユーザにより入力された識別子に基づき、対応する座標値群が記憶装置から読み出されてもよい。
【0026】
以下、制御装置4により実行される演算処理の内容について説明する。まず、誘電体粒子群の中間指定領域S0(本発明の「指定領域」に相当する。)に対する噴射回数を示す指数iが「0」にリセットされる(
図2/STEP02)。また、基板5において第1指定領域S1、第2指定領域S2および中間指定領域S0をすべて包含する領域に対してレーザー光が照射されることにより軟化点以上の温度に加熱される、または融点以上の温度に加熱されて窪みが予め形成される。基板5に機械加工が施されることにより溝が形成されてもよい。
【0027】
続いて「第1導電体層形成処理」が実行される(
図2/STEP04)。具体的には、制御装置4を構成するCPUにより第1指定領域S1を定義する座標値群が記憶装置から読み出され、
図3(b)において斜線が付されている基板5における第1指定領域S1の位置、形状およびサイズが認識される。その上で、第1指定領域S1に対してレーザー光を照射させるとともに導電体粒子を衝突させるように、制御装置4により、レーザー装置1、導電体粒子噴射装置21および位置姿勢調節機構3のそれぞれの動作が制御される。この際、誘電体粒子噴射装置22の動作は停止されている。
【0028】
これにより、例えば
図4(a)に示されているように当該衝突箇所に第1導電体層L
1が形成される。導電体粒子同士の衝突エネルギーにより、導電体粒子群が硬く締まり、全体として導電体層を形成する。レーザー光の照射により、導電体粒子群にCu粒子等の金属粒子が含まれている場合、同じく導電体粒子群に含まれている炭素粒子群または基板5を構成する樹脂から切り離された炭素が還元剤となり、当該金属粒子の表面が還元される。これにより、第1導電体層L
1の電気伝導率の向上が図られる。レーザー光の照射は任意で省略されてもよい。各回の第1導電体層形成処理により形成される第1導電体層の厚みは、導電体粒子の噴射量および位置姿勢調節機構3の駆動速度などが制御されることにより調節される。
【0029】
続いて「誘電体層形成処理」が実行される(
図2/STEP06)。具体的には、制御装置4を構成するCPUにより中間指定領域S0を定義する座標値群が記憶装置から読み出され、
図3(c)において斜線が付されている基板5の中間指定領域S0が認識される。その上で、中間指定領域S0に対してレーザー光を照射するとともに誘電体粒子を衝突させるように、制御装置4により、レーザー装置1、誘電体粒子噴射装置22および位置姿勢調節機構3のそれぞれの動作が制御される。この際、導電体粒子噴射装置21の動作は停止されている。
【0030】
これにより、例えば
図4(b)に示されているように当該衝突箇所に誘電体層L
0i(i=1)形成される。誘電体粒子群に対してレーザー光が照射されることにより、誘電体粒子群が加熱されてその焼結が進行し、セラミックス焼結体により構成されている誘電体層L
0iが形成される。この際、先に形成されている第1導電体層L
1を構成する炭素の一部が燃焼することにより、一酸化炭素雰囲気が局所的に形成され、それ以上の炭素燃焼の進行が抑制されるため、当該導電体層L
0iが消失することが回避される。各回の誘電体層形成処理により形成される誘電体層L
0iの厚みは、誘電体粒子の噴射量および位置姿勢調節機構3の駆動速度などが制御されることにより調節される。
【0031】
ここで、指数iが「1」だけ増加され(
図2/STEP08)、指数iが目標値Nに達しているか否かが判定される(
図2/STEP10)。目標値Nは、電子回路要素の目標電気特性を実現するために定められている。コンデンサ(電子回路要素)の静電容量Cは、一般的に誘電体粒子群の累積的な質量流束M=Np×Vp÷Vs×Nsを変数(主変数)とする関数(従変数)f(M)として定義される。目標静電容量Ctgが定まると、これを実現するための質量流束の指定値Mtg=f
-1(Ctg)が定められる。質量流束Mが指定値Mtgに制御されるように、Np(噴射粒子群の密度)、Vp(噴射速度)、Ns(基板5に対する粒子群の噴射箇所の通過回数)およびVs(基板5に対する粒子群の噴射箇所の変位速度)のそれぞれが制御される。たとえば、Mを定める(Np、Vp、Ns、Vs)のうち一部の因子が一定値に固定された状態で、他の因子が可変に制御される。
【0032】
当該判定結果が否定的である場合(
図2/STEP10‥NO)、「誘電体層形成処理」が再び実行される(
図2/STEP06)。これにより、
図4(c)に示されているように最後に形成された誘電体層L
0i-1(i≧2)の上に重なるように新たな誘電体層L
0iが形成される。
【0033】
その一方、当該判定結果が肯定的である場合(
図2/STEP10‥YES)、「第2導電体層形成処理」が実行される(
図2/STEP12)。具体的には、制御装置4を構成するCPUにより第2指定領域S2を定義する座標値群が記憶装置から読み出され、
図3(d)において斜線が付されている基板5における第2指定領域S2の位置、形状およびサイズが認識される。その上で、第2指定領域S2に対してレーザー光を照射させるとともに導電体粒子を衝突させるように、制御装置4により、レーザー装置1、導電体粒子噴射装置21および位置姿勢調節機構3のそれぞれの動作が制御される。この際、導電体粒子噴射装置21の動作は停止されている。
【0034】
これにより、例えば
図4(d)に示されているように当該衝突箇所に第2導電体層L
2が形成される。第2導電体層L
2の厚みは、導電体粒子の噴射量および位置姿勢調節機構3の駆動速度などが制御されることにより調節される。
【0035】
この結果、第1導電体層L
1および第2導電体層L
2を一対の電極とし、N個の誘電体層L
01〜L
0N(
図4の例ではN=2)を当該一対の電極に挟まれた誘電体とするコンデンサが電子回路要素として製造される。
【0036】
なお、中央指定領域S
0と第2指定領域S
2とが重なっているため(
図3参照)、誘電体層L
0Nの上に重ねられる第2導電体層L
2(
図4参照)を構成する導電体粒子の質量流束が、誘電体を構成する誘電体粒子の累積的な質量流束に包含されるように評価されてもよい。導電体粒子および誘電体粒子の質量流束および基板5に対する噴射箇所の変位速度のそれぞれが同一である場合、STEP10において、指数iがN−1に達しているか否かが判定されればよい。
【0037】
(実施例)
導電体粒子として平均粒子径約5[μm]の純度99.7%のカーボン粒子が用いられ、誘電体粒子として平均粒子径約1[μm]の純度99%のBaTiO
3粒子が用いられた。0.4〜0.6MPaのArガスを用いて、内径0.70[mm]のノズルから導電体粒子を噴射するように構成されている粒子噴射装置が導電体粒子噴射装置21および誘電体粒子噴射装置22として用いられた。
【0038】
基板5として、熱可塑性樹脂であるPOM(ポリオキシメチレン)樹脂製の基板5が用いられ、レーザー光の照射(照射強度0.20〜0.25[W])により直線状の溝(幅0.4〜0.5[mm]、長さ1.5[mm]、深さ0.2[mm])が形成された。当該溝の底部から前記のように導電体層および誘電体層が所定の順で形成されることによりコンデンサが形成された。
【0039】
誘電体粒子群の噴射箇所の通過回数Nsが1、2、3および4のそれぞれに制御された場合のキャパシタの静電容量の測定結果が示されている。静電容量はLCRメータを用いて周波数1[kHz]で測定された。この際、誘電体粒子群の質量流束Np×Vpおよび基板5に対する粒子群の噴射箇所の変位速度Vsが適当に制御された。
【0040】
図5から、Ns=1の場合と比較してNs=2の場合はコンデンサの静電容量が25%程度にまで低下している。Nsが2倍になれば誘電体の厚みdが2倍になるので静電容量が50%程度になると予測されるところ、このような結果が得られたのは、誘電体粒子群の累積的な質量流束の相違により、誘電体粒子同士の衝突に起因した少なくとも一部の誘電体粒子の粒子径の低減度合が相違し、これがキャパシタの電気特性(誘電率または静電容量)に影響したためであると推察される。
【0041】
誘電体粒子群の質量流束Np×Vpおよび基板5に対する粒子群の噴射箇所の変位速度Vsが適当に制御されたうえで(ノズル径および噴射圧力に応じて定まる。)、
図5に示されている曲線にしたがって誘電体粒子群の噴射箇所の通過回数Nsが制御されることにより、目標静電容量(目標電気特性)を有するコンデンサが製造されうる。
【0042】
なお、粒子群の累積的な質量流束Mを定める因子(Np,Vp,Ns,Vs)のうち、一部の因子が一定値に固定された状態で、他の因子と電子回路要素の電気特性との関係が求められた上で、当該関係にしたがって当該他の因子が制御されることにより目的電気特性を有する電子回路要素が製造されてもよい。たとえば、基板5に対する誘電体粒子群の噴射箇所の変位速度Vsおよび通過回数Nsが一定値に制御された状態で、当該粒子群の質量流束Np×Vpおよびコンデンサの静電容量の関係が求められた上で、以後のコンデンサ製造に際して当該関係にしたがってNp×Vpが制御されてもよい。
【0043】
(本発明の他の実施形態)
前記実施形態では電子回路要素としてコンデンサが製造されたが、他の実施形態として電子回路要素として電気抵抗、導線またはコイルが製造されてもよい。当該他の実施形態においても、目標電気抵抗値を実現するために導電体粒子群および誘電体粒子群のうち少なくとも一方の累積的な質量流束が指定値に一致するように制御されることにより、目標電気特性(抵抗値またはインダクタンスなど)を有する電子回路要素が製造されうる。