(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6409235
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】液体放射性廃棄物の処理及びその再利用の方法
(51)【国際特許分類】
G21F 9/06 20060101AFI20181015BHJP
G21F 9/12 20060101ALI20181015BHJP
G21F 9/30 20060101ALI20181015BHJP
G21F 9/08 20060101ALI20181015BHJP
G21F 9/16 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
G21F9/06 Z
G21F9/12 501J
G21F9/06 521B
G21F9/30 515F
G21F9/12 501A
G21F9/08
G21F9/16 521F
G21F9/06 551A
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-552509(P2016-552509)
(86)(22)【出願日】2015年11月12日
(65)【公表番号】特表2017-511467(P2017-511467A)
(43)【公表日】2017年4月20日
(86)【国際出願番号】RU2015000768
(87)【国際公開番号】WO2016108727
(87)【国際公開日】20160707
【審査請求日】2016年9月20日
(31)【優先権主張番号】2014153336
(32)【優先日】2014年12月29日
(33)【優先権主張国】RU
(73)【特許権者】
【識別番号】516243607
【氏名又は名称】エクソルブ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】レメズ,ビクトル パブロビッチ
【審査官】
右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−229998(JP,A)
【文献】
特開平07−260997(JP,A)
【文献】
特開昭58−140696(JP,A)
【文献】
特開昭54−038500(JP,A)
【文献】
特開2013−250158(JP,A)
【文献】
特開平04−219103(JP,A)
【文献】
特開昭63−228099(JP,A)
【文献】
特開2004−340814(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/173532(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物の酸化、液相からのスライム、コロイド及び懸濁粒子の分離ならびに選択収着剤及びフィルターの使用による液相からの放射能除去及びそれに続く再利用の工程を含む液体放射性廃棄物再処理及び再処理に用いた容器の再利用の方法であって、以下のステップ、すなわち
a)第1のフィルター容器、第2のフィルター容器、および収着剤容器を準備するステップであって、前記第1のフィルター容器および第2のフィルター容器はそれぞれコンクリートブロックからなり、前記収着剤容器は前記コンクリートブロックとは別のコンクリートブロックに収められているステップ、
b)液体放射性廃棄物と粉末状選択収着剤とを混合し、撹拌するステップ、
c)ステップb)の混合物を、出口に少なくとも一つのフィルター素子を備える前記第1のフィルター容器を通過させるステップ、
d)前記第1のフィルター容器を通った液体を酸化するステップ、
e)酸化された液体廃棄物を、出口に少なくとも一つのフィルター素子を備える前記第2のフィルター容器を通過させるステップ、
f)前記第2のフィルター容器を通った液体を、顆粒状選択収着剤の入った前記収着剤容器を通過させるステップ、
g)前記収着剤容器を収めたコンクリートブロック、前記第1フィルター容器、および、前記第2のフィルター容器に、使用終了後にセメントモルタルを注入するステップ、
h)セメントモルタルを注入された前記コンクリートブロックを建設材料として再利用するステップ、を含む方法。
【請求項2】
液体放射性廃棄物再処理の過程で、一つ又は複数の選択収着剤を使用することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶液からスライム、コロイド及び懸濁粒子を除去するために使用されるフィルター容器が、二つ又はそれ以上のフィルター素子を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
不溶性粒子が除去される溶液を、フィルター素子を備え、直列に連結された二つ以上のフィルター容器の中を通過させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
放射性核種の除染が行われる溶液を、前記顆粒状選択収着剤を含む、直列に連結された二つ以上の収着剤容器を通過させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記顆粒状選択収着剤を含んだ使用済み収着剤容器を収めたコンクリートブロックに、高浸透性セメントモルタルが注入されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
液相から除去された不溶物質を含んだ使用済みフィルター容器に、高浸透性セメントモルタルが注入されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
セメント固化に先立ち、容器に真空化処理及び/又は、熱風もしくは不活性ガスによる加熱処理が施されることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記顆粒状選択収着剤の顆粒径が、1mmから3mmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記粉末状選択収着剤の粒径が、0.1mmから0.7mmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明は、核燃料・エネルギーサイクルの液体放射性廃棄物の取り扱い技術に関連しており、液体放射性廃棄物の体積を最大限に縮小し、液体放射性廃棄物を固相に濃縮して放射性核種を除去する目的で、液体放射性廃棄物再処理過程において利用することができる。
【0002】
この方法は、原子力発電所などの原子力産業の様々な施設における低放射性及び中放射性の液体放射性廃棄物の再処理のために、建物、建造物、機器、輸送機関等々の除染の際に生ずる溶液の再処理のために、放射性核種によって汚染された天然水の再処理のために利用することができる。
【0003】
液体放射性廃棄物の再処理においては、廃棄物基質の放射性核種除染及び廃棄物の最小限体積への濃縮という二つの主要課題の解決が志向された。
【背景技術】
【0004】
ロシア特許第2066493号、IPC G 21 F 9/08、1995年11月13日出願「原子力発電所の液体放射性廃棄物の処理方法」による解決方法が知られている。
・ この方法には、蒸発濃縮による凝縮水及び蒸留残渣の生成、一酸化炭素及び/又は二酸化炭素による蒸留残渣処理、形成された結晶相の分離、液相から放射性核種を抽出するための触媒及び/又は収着剤の存在下における蒸留残渣液相のオゾン処理、形成された放射性スライムの分離、及び液相の追加蒸発濃縮工程への引き渡しが含まれる。
【0005】
この方法の欠点は、炭素酸化物による蒸留残渣処理段階において析出した塩類の浄化効率が低い点にある。というのも、弱溶性の炭酸塩、重炭酸ナトリウム及び重炭酸カリウムの生成とならんで、コバルト、ニッケル、マンガン及び鉄の放射性同位体の難溶性炭酸塩が生成されことがあるので、析出した塩類を非放射性とみなすことができないからである。
【0006】
そのほか、この既知の方法の実施には、著しい量の化学試薬(一酸化炭素、二酸化炭素、酸化触媒、捕収剤)の添加が前提とされており、保管もしくは埋設処理を行わなければならない廃棄物が増加する。
【0007】
ロシア特許第226726号、IPC G 21 F 9/08、G21F 9/12、2002年4月27日出願「原子力発電所の液体放射性廃棄物の再処理方法」による技術的解決方法も知られている。
・ この方法には、事前の蒸発濃縮による凝縮水及び蒸留残渣の生成、形成される放射性スライムの分離及び高度の蒸発濃縮による濾液濃縮が含まれる。この際、蒸留残渣のオゾン処理は、溶液の事前蒸発濃縮の直後に行われる。放射性スライム分離後、濾液は、セシウム選択性無機収着剤の入った濾過・収容器に通され、こののち、使用済みとなった濾過・収容器は、保管もしくは埋設処置に回される。
【0008】
この既知の方法の欠点は、オゾン処理の段階における蒸留残渣の浄化度が低く、その結果、選択収着剤入りの濾過・収容器に高放射能溶液が供給される点にある。このような溶液の浄化に際しては、大量の収着剤が必要とされるほか、使用後の濾過・収容器は、高度の背景放射線を発生し、それゆえ、濾過・収容器の取り扱いには、高価で技術的に複雑な放射線安全対策を必要とする。
【0009】
本発明の液体放射性廃棄物再処理及び再利用方法に最も近い方法は、「米国特許第8753518号、B01 D 35/00、2014年公開」に記載されている方法である。
【0010】
この液体放射性廃棄物の再処理及び再利用法には、廃棄物の酸化、液相からのスライム、コロイド及び懸濁粒子の分離、ならびに選択性収着剤及びフィルターの使用による液相からの放射性核種の除去及びそれに続く再利用が含まれている。
【0011】
この方法の主要な欠点は以下の通りである:
・ 液体成分と固体成分の分離システムが極めて複雑で高価。機器は微妙な調整を必要とし、また、操作員を被爆から保護する装置がないので、遠隔操作を行わざるを得ない。
・ 再処理による高放射性廃棄物(濾過器からのスライム、使用済み収着剤又は使用済み収着剤入り容器、フィルター素子)が形成される。これらの廃棄物の取り扱いには、高価な特殊安全対策及び保護を要し、それゆえ、それらの廃棄物の輸送、再利用及び保管(埋設処理)に、多額の経費を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】ロシア特許第2066493号、IPC G 21 F 9/08、1995年11月13日出願「原子力発電所の液体放射性廃棄物の処理方法」
【特許文献2】ロシア特許第226726号、IPC G 21 F 9/08、G21F 9/12、2002年4月27日出願「原子力発電所の液体放射性廃棄物の再処理方法」
【特許文献3】「米国特許第8753518号、B01 D 35/00、2014年公開」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、生産過程における作業員に対する放射線防護を高めるという課題を解決し、液体放射性廃棄物再処理時の作業員に対する照射量の低減、技術工程の簡素化(高価で、操作が複雑な放射性廃棄物セメント固化装置の除外、特種なメンテナンスを要するその他の機器の数量削減、二次廃棄物量の削減)を実現し、移動、保管、利用の面で安全な、特別な放射線安全対策を必要としない最終生成物(ブロック)の液体放射性廃棄物再処理過程における生成を可能ならしめる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題は、液体放射性廃棄物再処理及び再利用のための本方法が、以下の特徴を有することによって解決される。すなわち、廃棄物の酸化、液相からのスライム、コロイド及び懸濁粒子の分離、選択収着剤を用いた、液相からの放射性核種の除去及びそれに続く再利用という諸過程を含む本法においては、放射性廃棄物液相からのスライム、コロイド、懸濁粒子の分離段階に先立ち、液体廃棄物撹拌時に、粉末状の選択収着剤の混合物を添加し、こののち、装置の出口に設けられ、液相から不溶性物質を分離する少なくとも一つのフィルター素子を備えた、廃棄物を再利用するための少なくとも一つの容器を通過させながら、生成された懸濁液を濾過したのち、濾液を、顆粒状収着剤の入った、廃棄物再利用用の少なくとも一つの容器(上記のこれらの容器は、コンクリートブロック内に収められている)を通過させる。液体放射性廃棄物再処理過程において、一つの又はいく種類かの選択収着剤を用いることができる。溶液からスライム、コロイド及び懸濁粒子を分離するために用いられる諸容器には、二つ又はそれ以上のフィルター素子を備えることができる。不溶性粒子を除去される溶液は、フィルター素子を備え、直列に連結された二つ以上の容器を通される。また、放射性核種を除去される溶液は、顆粒状選択収着剤を含む、直列に連結された二つ以上の容器を通すことができる。顆粒状選択収着剤を含む使用済み容器及び液相から除去した不溶性物質を含む使用済み容器には、高浸透性のセメントモルタルが注入される。 セメント固化に先立ち、諸容器には、真空化処理及び/又は熱風又は不活性ガスによる加熱処理が施される。選択収着剤の顆粒径は1mmから3mmの範囲とする。粉末状で添加される選択収着剤の粒径は、0.1mmから0.7mmの範囲とする。
【0015】
分離された放射性スライム又は使用済み収着剤が入った諸容器を内包したコンクリートブロックは、液体放射性廃棄物再処理及び再利用の最終生成物である。このコンクリートブロックは、それ以降の処置を必要とせず、埋設処理に向け直ちに発送することができ、もしくは保管所建設の建設材料として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】図面は以下の事項を示す:1.粉末状の無機選択収着剤の入った液体放射性廃棄物混合タンク2.二つのフィルター素子(50μ及び5μ)を備えたフィルターケース3.オゾン処理ユニット4.二つのフィルター素子(5μ及び0.5μ)を備えたフィルターケース5.選択収着剤の入った収着剤ケース6.選択収着剤の入った収着剤ケース
【発明を実施するための形態】
【0017】
フィルターケースとは、寸法1500×1500×1500mmのコンクリートブロックで、その内部に容積200リットルの空洞があり、空洞の出口には二つのフィルター素子が直列に設置されている。
【0018】
収着剤ケースとは、寸法1500×1500×1500mmのコンクリートブロックで、その内部に容積40リットルの、選択収着剤の入った円筒形の容器がある。
【0019】
本方法では、収着剤の微粉末(又はいくつかの収着剤粉末の混合物)が用いられるため、以下のようないくつかの課題を解決することができる:
・ 浄化される溶液から放射性核種の一部を除去し、濾過ブロック及び収着ブロックごとに放射能を均等に配分できる。
・ 浮遊物及びコロイドから、分離が容易な固相を形成でき、そのことによって液体放射性廃棄物の固体成分と液体成分との分離工程の簡素化及び低価格化を実現できる。
【0020】
本方法実施に際しては、簡単なフィルター素子(ネット、セラミックフィルター等々)が収められた容器が用いられるが、それらの容器は、実質的には、コンクリートブロックであるため、操作員の被爆が防止される。
【0021】
濾過された高放射性残渣は、コンクリート内に残され、プロトタイプ及び全ての既知の方法のように、フィルター素子を洗浄する際に、スライムの形で外部に出てくることはない。コンクリートブロックは、輸送及び保管に対して安全であり、特殊な用途(たとえば、放射性廃棄物の倉庫、保管場所等々)の建設構造要素として利用することができる。
【0022】
濾過液は、顆粒状収着剤入り容器を通される。というのも、効果的な収着には、(溶液と収着剤との理想的な接触時間を設けるために)収着剤の層に一定の高さを要するからである。粉末状収着剤を使用した場合には、粉末層中で流体力学的抵抗が高まり、濾過速度が下がり、ゼロにまで近づく。
【0023】
粉末状収着剤の粒径範囲を、0.1mmから0.7mmまでとする根拠は、粒子がもっと大きく、0.7mmを上回る場合には、収着剤の表面積が小さくなり、従って、収着効率も低くなるが、収着剤の粒子がもっと小さくなると(0.1mm未満)、溶液からの分離が困難になるためである。
【0024】
顆粒状収着剤の粒径範囲を、1mmから3mmまでとする根拠は、粒子がもっと大きく、3mmを上回る場合には、収着表面積が小さくなり、収着効率も低くなるが、顆粒の粒子がもっと小さくなると(1mm未満)、大きな水力学的抵抗が発生し、液体放射性廃棄物再処理工程の生産性が低下するためである。
【実施例1】
【0025】
本方法によって、以下のものを含む液体放射性廃棄物(pH12.1)の再処理が実施された:
・ 乾燥残留物(105℃で乾燥後): 285g/L
・ 懸濁物質(ブルーリボン・フィルターで分離されたもの): 5.1g/L
・ バーゼン液〔訳注: エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム水和物(CAS番号:6381-92-6)〕: 3.1g/L
・ セシウム137の比放射能: 1.1−10
−3Ci/L
・ コバルト60の比放射能: 1.4−10
−6Ci/L
【0026】
タンク(
図1の1)に上記組成の液体放射性廃棄物5m
3を注入し、粒径0.2mmから0.5mmのスホイ・ログ金鉱床産の非結晶シリカ粉末でコーティングされたフェロシアン化ニッケルの選択収着剤5kg及び沈殿剤としての硫酸ニッケル0.5kgより構成された混合物を撹拌時に投入。非結晶シリカを、ニッケルベース沈殿剤と液体放射性廃棄物懸濁粒子との相互作用によって形成された凝集粒子と組み合わせることによって、フィルターケース内の液相から固相を簡単に分離できる。
【0027】
2時間撹拌したのち、収着剤、液体放射性廃棄物中の懸濁粒子及び沈殿剤より成る懸濁液を、二つのフィルター素子を備えたフィルターケース(
図1の2)に投入し、こののち、懸濁液が除去された溶液を、有機結合物及び錯体を分解するためのオゾン処理(
図1の3)に送る。酸化によって形成された浮遊物にタンク(
図1の1)中のものと同一の収着剤5kgを添加し、生成された浮遊物が除去された溶液を、直列に連結された、フェロシアン化ニッケルをベースとした顆粒状選択収着剤の入った収着剤ケース(
図1の5及び6)を通過させる。10Bq/L未満のCs
137及びCo
60を含む浄化された溶液を蒸発濃縮及び結晶化工程へ送る。生成された材料は、非放射性廃棄物の保管場に置くことができる。
【0028】
スライムを含むフィルターケース(複数)に高浸透性セメントモルタルを、内部空間を一枚岩化するために投入。選択収着剤入りの収着剤ケース(複数)に熱風を通し、これらの収着剤ケースも高浸透性セメントモルタルで一枚岩化する。
【0029】
フィルターケース(複数)中で保持された放射能は、それぞれ5Ciであり、収着剤ケース(複数)中では、1番目の収着剤ケースで9.8Ci、2番目においては0.2Ciであった。
【実施例2】
【0030】
タンクに、以下の特性の海水より成る液体放射性廃棄物25m
3を注入:
総塩濃度: 30g/L
pH: 7.9
セシウム137の比放射能: 2.4*10
−5Bq/L
【0031】
液体放射性廃棄物撹拌時に紺青(ヘキサシアノ鉄酸鉄―カリウム)をベースとした、粒径0.2mmから0.5mmの乾燥粉末状選択収着剤50kgを投入。8時間撹拌したのち、収着剤入りの液体放射性廃棄物を孔径0.1mmのフィルター素子を一つ備えたフィルターケースに供給。収着剤から分離された溶液を、顆粒径1mm〜2mmの、フェロシアン化鉄をベースとした顆粒状選択収着剤100kgが入っている収着剤ケースを通過させる。セシウムの放射能を除去された海水は、セシウム137の含有量が5Bq/L未満であり、海に放出することもできる。収着剤ケース及びフィルターケース中の使用済み収着剤は、高浸透性セメントモルタルで一枚岩化する。
【実施例3】
【0032】
本方法によって、以下の特性の液体放射性廃棄物の再処理が実施された:
総塩濃度: 228g/L
pH: 10.9
ストロンチウム90の比放射能: 4.2*10
4Bq/L
コバルト60の比放射能: 1.5*10
4Bq/L
【0033】
タンクに上記特性の液体放射性廃棄物12m
3を注入し、そこへ、撹拌の際に、最初に二酸化マンガンをベースとする乾燥粉末状選択収着剤30kgを、その後、硫化銅をベースとした乾燥粉末状収着剤30kgを投入。粉末状収着剤の粒径は、0.5mm未満。3時間撹拌したのち、液体放射性廃棄物を、孔径0.4mm及び0.1mmの二つのフィルター素子を備えたフィルターケースに供給し、その後、粉末状収着剤が除去された溶液を、二酸化マンガンをベースとする顆粒状選択収着剤50kg入りの収着剤ケースに通して濾過。液体放射性廃棄物中に残された、諸同位体の比放射能の合計は10Bq/L以下であった。
【実施例4】
【0034】
本方法によって、以下の特性の液体放射性廃棄物の再処理が行われた:
ホウ酸: Ю*g/L〔訳注: *印のロシア文字は意味不明。〕
pH: 4
Cs
137: 5.2*10
6Bq/L
Co
60: 3.1*10
4Bq/L
Ag
110: 8.1*10
3Bq/L
Sr
90: 1.9*10
5Bq/L
【0035】
液体放射性廃棄物10m
3が入っているタンクに、それぞれフェロシアン化銅、燐酸マグネシウム、水酸化ジルコニウムを成分とする乾燥粉末状選択収着剤(粒径0.3mm未満)を、撹拌時に、順に20kgずつ添加。5時間の撹拌後、孔径がそれぞれ順に、0.2mm及び0.1mmであるフィルター素子を備えた二つのフィルターケースに液体放射性廃棄物を通し、こののち、顆粒径3mmの選択収着剤の物理的混合物がそれぞれ60リットルずつ入っていて、直列に連結した三つの収着剤ケースに溶液を通して濾過。
【0036】
物理的混合物は、以下の成分の、均一に撹拌された諸収着剤より構成される:
フェロシアン化銅20L、リン酸マグネシウム20L、水酸化ジルコニウム20L
【0037】
浄化された液体放射性廃棄物中の諸同位体比放射能の合計は10Bq/L以下であった。
【0038】
本方法を用いることによって、液体放射性廃棄物再処理時の作業員の照射量を低減し、液体放射性廃棄物再処理の技術工程を簡素化し、ならびに移動及び使用の際に安全で、特別な放射線安全対策を必要としない最終生成物(ブロック)の生産工程を簡素化することができる。