特許第6409244号(P6409244)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6409244
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】汚泥搬送装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/00 20060101AFI20181015BHJP
【FI】
   C02F11/00 AZAB
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-230574(P2014-230574)
(22)【出願日】2014年11月13日
(65)【公開番号】特開2016-93775(P2016-93775A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2017年11月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】501370370
【氏名又は名称】三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】長 克美
(72)【発明者】
【氏名】貝田 裕彦
(72)【発明者】
【氏名】高波 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】尾田 誠人
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−297703(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0112561(US,A1)
【文献】 特開平01−105100(JP,A)
【文献】 特開2005−058995(JP,A)
【文献】 特開2010−208932(JP,A)
【文献】 特開2005−074269(JP,A)
【文献】 特開昭47−021379(JP,A)
【文献】 特開2003−010880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00−11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥を圧送するポンプと、
前記ポンプの吸込口よりも汚泥の移送方向上流側及び/又は前記ポンプの吐出口より前記移送方向下流側に設けられて汚泥流路を形成する導電性の配管と、
前記配管内に配設された電極と、
前記導電性の配管を陰極、前記配管内の電極を陽極として前記汚泥流路内の汚泥に電圧を印加し、汚泥中の水分を前記配管の内面側に誘導するための電源とを備えて構成されていることを特徴とする汚泥搬送装置。
【請求項2】
請求項1記載の汚泥搬送装置において、
前記汚泥流路の汚泥の圧力が高くなる高圧領域に前記導電性の配管及び前記電極が配設されていることを特徴とする汚泥搬送装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の汚泥搬送装置において、
前記ポンプの駆動に伴い、前記汚泥の吐出圧または吸込圧が所定の圧力以上になるとともに前記汚泥に電圧を印加するように構成されていることを特徴とする汚泥搬送装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の汚泥搬送装置において、
前記ポンプの負荷が所定の値以上になると前記汚泥に電圧を印加するように構成されていることを特徴とする汚泥搬送装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の汚泥搬送装置において、
前記電極が前記導電性の配管の内面に沿う周方向に間隔をあけて複数配設されていることを特徴とする汚泥搬送装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の汚泥搬送装置において、
前記電極がスパイラル状に形成され、中心軸方向を前記導電性の配管の中心軸と同方向に向けて配設されていることを特徴とする汚泥搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱水汚泥を搬送供給するための汚泥搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水汚泥などを脱水処理した後の汚泥(脱水汚泥)を搬送して設備等に供給するために汚泥搬送装置が用いられている。また、この種の汚泥搬送装置は、例えば、脱水汚泥を一時的に貯留する汚泥ホッパと、汚泥ホッパに配管で繋がり、汚泥を搬送先まで圧送するための汚泥ポンプとを備えて構成されている。また、汚泥ポンプには、コンクリート移送用などの高圧仕様のピストン型や軸ネジ式、ロータリー式等の一定のポンプ容積を繰り返し吐出する容積型のポンプが用いられている。
【0003】
ここで、例えば下水汚泥などの脱水汚泥は、重量比で70〜85%程度が水分で極めて流動性が小さく、ニュートン流体として流動するのではなく、固形のまま配管内面を摺るように低速で移動する(いわゆる「ずり」)ビンガム流体となり、極めて大きな移送抵抗を示す。また、この移送抵抗は水分が少ないほど増大する。
【0004】
また、ピストン型や軸ネジ式などの容量型ポンプのポンプ効率は、ポンプの実容積に対する汚泥の吸込流入量(充填量)の比率(吸込効率)によって決まる。また、ポンプ自身の吸引圧力でポンプ内に汚泥を吸い込む場合には、流動性が低い汚泥ほど、負圧が生じて空気を吸い込んでしまい、吸込効率が著しく小さくなる。
【0005】
このため、一般に、汚泥ポンプの吸込側、すなわち汚泥ホッパと汚泥ポンプの間にスクリューやアーム型のパドルなどを回転させて汚泥を練りながら加圧し、汚泥を汚泥ポンプに向けて押し込む押込装置を設けるようにしている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。このような押込装置を設けることによって負圧による空気吸込みを軽減することができ、また、汚泥を練る効果によって移送抵抗の低減を図ることができる。
【0006】
一方、近年、脱水汚泥の水分をさらに低減する技術開発が進み、水分が70%以下の汚泥にも対応することが求められている。しかしながら、このような水分が70%以下の汚泥に対しては吸込効率が60%を下回る状況まで汚泥ポンプの圧送能力が低下したり、また、汚泥流路の配管抵抗(移送抵抗)が増大し搬送できなくなる状況が発生してしまう。
【0007】
これに対し、脱水汚泥の吸込効率の向上や移送抵抗の低減を図る手法の研究が多数行われている。例えば、混練装置で脱水汚泥を混練してから移送する手法、脱水汚泥を加温して汚泥中の水分子を動きやすくする手法、脱水汚泥に油を添加(滴下)し、汚泥表面の抵抗を低減する手法、脱水汚泥に水を添加(滴下)し、汚泥表面に水膜を形成して表面抵抗を低減する手法などが提案、実用化されている(例えば、特許文献3、特許文献4、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4328833号公報
【特許文献2】特許第4937216号公報
【特許文献3】特許第4450528号公報
【特許文献4】特許第2729744号公報
【特許文献5】特開平01−105100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、混練装置を用いる手法は、非常に大きな動力が必要になったり、汚泥を混練することによってさらに空気を巻き込むなどの悪循環に陥るおそれがある。
【0010】
汚泥を加温する手法は、汚泥の全量を加温するため、膨大な熱量、熱交換の設備が必要になる。
【0011】
油を添加(滴下)する手法は、ポンプ吐出側の抵抗を低減することが可能であるが、ポンプの吸込効率を改善することはできない。また、燃料を過剰に使用する欠点がある。さらに、油は揮発性があるため、添加部分や移送先での引火等に対する措置も必要になる。また、例えば堆肥化など、処理後の汚泥を焼却以外に利用する場合には油分の混入が問題になってその適用自体が困難になってしまう。
【0012】
水を添加(滴下)する手法は、脱水汚泥に再度水を加えることになり、移送先の処理(例えば焼却の燃料消費量が増えるなど)に影響してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の汚泥搬送装置は、汚泥を圧送するポンプと、前記ポンプの吸込口よりも汚泥の移送方向上流側及び/又は前記ポンプの吐出口より前記移送方向下流側に設けられて汚泥流路を形成する導電性の配管と、前記配管内に配設された電極と、前記導電性の配管を陰極、前記配管内の電極を陽極として前記汚泥流路内の汚泥に電圧を印加し、汚泥中の水分を前記配管の内面側に誘導するための電源とを備えて構成されていることを特徴とする。
【0014】
この発明においては、導電性の配管を陰極、配管内の電極を陽極として汚泥流路内の汚泥に電圧を印加することにより、汚泥中の水分を配管の内面側に誘導することができ、配管の内面と汚泥の外面との間に水膜を形成することができる。
これにより、配管の内面と汚泥の外面との間に形成された水膜が潤滑層となり、汚泥に対して水を添加(滴下)した場合と同様に、汚泥の移送抵抗を低減させることが可能になる。
【0015】
また、本発明の汚泥搬送装置においては、前記汚泥流路の汚泥の圧力が高くなる高圧領域に前記導電性の配管及び前記電極が配設されていることが望ましい。
【0016】
この発明においては、例えば、ポンプの吐出口近傍や配管のエルボ部(屈曲部)など、汚泥流路で移送される汚泥の圧力が他の部分よりも高くなる高圧領域に導電性の配管及び電極を設けることによって、効果的に移送抵抗を低減することができ、汚泥の搬送効率を効果的に向上させることができる。
【0017】
さらに、本発明の汚泥搬送装置においては、前記ポンプの駆動に伴い、前記汚泥の吐出圧または吸込圧が所定の圧力以上になると前記汚泥に電圧を印加するように構成されていることがより望ましい。
【0018】
この発明においては、ポンプの駆動によって汚泥を移送する際に、汚泥の吐出圧または吸込圧を計測し、この汚泥の吐出圧または吸込圧が予め設定した所定の圧力以上になった段階で汚泥に電圧を印加する。これにより、移送抵抗が減少して汚泥の吐出圧または吸込圧が予め設定した所定の圧力以下になるとともに、配管の内面と汚泥の外面との間に水膜を形成し、汚泥の移送抵抗を低減させることができる。よって、より効果的且つ効率的に汚泥の移送抵抗を低減させることができる。すなわち、移送抵抗を制御して好適な汚泥の搬送状態を維持することができる。
【0019】
また、本発明の汚泥搬送装置においては、前記ポンプの負荷が所定の値以上になるとともに前記汚泥に電圧を印加するように構成されていてもよい。
【0020】
この発明においては、ポンプの駆動によって汚泥を移送する際に、ポンプの負荷を計測し、このポンプの負荷が予め設定した所定の値以上になった段階で汚泥に電圧を印加する。これにより、移送抵抗が減少して汚泥の吐出圧または吸込圧が予め設定した所定の圧力以下になるとともに、配管の内面と汚泥の外面との間に水膜を形成し、汚泥の移送抵抗を低減させることができる。よって、より効果的且つ効率的に汚泥の移送抵抗を低減させることができ、移送抵抗を制御して好適な汚泥の搬送状態を維持することができる。
【0021】
さらに、本発明の汚泥搬送装置においては、前記電極が前記導電性の配管の内面に沿う周方向に間隔をあけて複数配設されていることが望ましい。
【0022】
この発明においては、電極が導電性の配管の内面に沿う周方向に間隔をあけて複数配設されていることにより、配管の内面に沿って連続する水膜を好適に形成することができる。
【0023】
さらに、本発明の汚泥搬送装置においては、前記電極がスパイラル状に形成され、中心軸方向を前記導電性の配管の中心軸と同方向に向けて配設されていてもよい。
【0024】
この発明においても、配管の内面に沿って連続する水膜を好適に形成することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の汚泥搬送装置においては、配管内で汚泥を移送するとともに、汚泥と配管の間に電圧を印加することによって、電気浸透の効果で配管の内面側に水膜を形成することができる。これにより、汚泥に注水する場合と同様、配管内面に形成された水膜が潤滑剤の役目を果たし、移送抵抗(管路抵抗)を低減させることが可能になる。
【0028】
よって、本発明の汚泥搬送装置によれば、従来の混練装置を用いる手法、汚泥を加温する手法、油を添加(滴下)する手法、水を添加(滴下)する手法の不都合を解消することができ、効率的且つ効果的に移送抵抗の低減を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態に係る汚泥搬送装置を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る汚泥搬送装置の電圧印加手段を示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る汚泥搬送装置の電圧印加手段を示す斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係る汚泥搬送装置の電圧印加手段の変更例を示す断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る汚泥搬送装置の電圧印加手段の変更例を示す斜視図である。
図6】本発明の一実施形態に係る汚泥搬送装置の電圧印加手段の変更例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図1から図3を参照し、本発明の一実施形態に係る汚泥搬送装置及び汚泥搬送方法について説明する。
【0031】
本実施形態は、例えば下水汚泥などを脱水処理した後の脱水汚泥(以下、汚泥という)を焼却炉などの所望の設備に搬送供給するための汚泥搬送装置に関するものである。
【0032】
具体的に、本実施形態の汚泥搬送装置Aは、図1に示すように、汚泥Sを一時的に貯留する汚泥ホッパ1と、汚泥ホッパ1に繋がり、汚泥Sを搬送先まで圧送するための汚泥ポンプ(ポンプ)2とを備えて構成されている。
【0033】
また、本実施形態の汚泥搬送装置Aは、汚泥ホッパ1と汚泥ポンプ2の間に、汚泥ホッパ1から汚泥Sを受けるとともに汚泥ポンプ2側に押し込むための押込装置3が設けられている。さらに、押込装置3と汚泥ポンプ2の吸込口2aとが汚泥供給管(配管)4で接続され、汚泥ポンプ2の吐出口2bと搬送先の設備等が汚泥移送管(配管)5で接続されている。
【0034】
汚泥ホッパ1は、上端側に汚泥投入口1a、下端側に汚泥排出口1bを備えて形成されている。また、レベル検出器1cが設けられ、内部に貯留された汚泥Sを検知し、汚泥ホッパ1内への汚泥Sの投入量等を制御できるように構成されている。
【0035】
押込装置3は、汚泥ホッパ1の汚泥排出口1bの下方に、且つ駆動軸6aを横方向に配して設けられたスクリュー6と、スクリュー6を駆動軸6aの軸線O1周りに回転させるための駆動機7とを備えている。これにより、駆動機7を駆動してスクリュー6を回転させることにより、汚泥排出口1bを通じて汚泥ホッパ1から汚泥Sを受けつつ順次汚泥供給管4を通じて汚泥Sを汚泥ポンプ2に押し込むことができるように構成されている。
【0036】
汚泥供給管4は、一端を汚泥ホッパ1の汚泥排出口1b側に接続し、スクリュー6の先端と対向するように設けられている。
【0037】
汚泥ポンプ2は、汚泥供給管4の他端、汚泥移送管5の一端にそれぞれ接続して配設されている。また、本実施形態の汚泥ポンプ2は、汚泥圧送用シリンダ9a及び汚泥圧送用ピストン9bからなる汚泥圧送機構9を備え、汚泥圧送用ピストン9bの進退駆動によって汚泥供給管4の他端から汚泥Sを吸引、押圧し、汚泥移送管5に圧送できるように構成されている。
【0038】
さらに、本実施形態の汚泥ポンプ2は、吸込バルブシリンダ10a及び吸込ピストンバルブ10bからなる汚泥吸込機構10を備え、吸込ピストンバルブ10bの進退駆動によって汚泥供給管4の他端を開閉し、汚泥供給管4内の汚泥Sを他端から吸引できるように構成されている。
【0039】
さらに、本実施形態の汚泥ポンプ2は、吐出バルブシリンダ11a及び吐出ピストンバルブ11bからなる汚泥吐出機構11を備え、吐出ピストンバルブ11bの進退駆動によって汚泥移送管5の一端を開閉し、10b汚泥圧送用ピストンの進退駆動と連動して汚泥移送管5内に汚泥Sを吐出させるように構成されている。
【0040】
さらに、本実施形態の汚泥搬送装置Aにおいては、汚泥ポンプ2の吸込口2aよりも汚泥Sの移送方向上流側と、汚泥ポンプ2の吐出口2bよりの移送方向下流側とにそれぞれ、移送される汚泥Sに電圧を印加する電圧印加手段15が設けられている。
【0041】
この電圧印加手段15は、図1図2及び図3に示すように、汚泥流路Rを形成する汚泥供給管4と汚泥移送管5の各管の一部として設けられた導電性の配管16と、この配管16の内部に設けられた電極17と、導電性の配管16が陰極、配管16の内部に設けられた電極17が陽極となるように接続した直流電源18とを備えて構成されている。
【0042】
また、本実施形態では、陽極となる電極17として電極棒が用いられ、中心軸が汚泥供給管4や汚泥移送管5(導電性の配管16)の中心軸と同軸上に配されるようにして、各管の内部に設置されている。
【0043】
また、電圧印加手段15は、直流回路の通電/遮断を制御する制御手段を備えている。さらに、本実施形態では、汚泥供給管4と汚泥移送管5の各配管の内部を移送する汚泥Sの圧力を検知する圧力検知手段が設けられており、圧力検知手段によって検知された汚泥Sの吐出圧または吸込圧が所定の圧力以上になるとともに制御手段が直流回路に通電させて汚泥Sに電圧を印加するように構成されている。
【0044】
さらに、汚泥ポンプ2の負荷を検知するポンプ負荷検知手段が設けられており、ポンプ負荷検知手段によって検知されたポンプ2の負荷が所定の値以上になるとともに制御手段が直流回路に通電させて汚泥Sに電圧を印加するように構成されている。
【0045】
そして、上記構成からなる本実施形態の汚泥搬送装置Aにおいては、汚泥ホッパ1に供給した汚泥Sが汚泥排出口1bを通じてスクリュー6に順次供給され、駆動機7の駆動によって軸線O1周りにスクリュー6が回転することにより汚泥供給管4に汚泥Sが押込まれて搬送される。また、汚泥ポンプ2の駆動によって汚泥供給管4から汚泥ポンプ2に汚泥Sが吸い込まれ、さらに汚泥移送管5に汚泥Sが圧送される。
【0046】
ここで、本実施形態の汚泥搬送装置Aにおいては、圧力検知手段によって検知された汚泥Sの吐出圧または吸込圧が所定の圧力以上になるとともに制御手段が電圧印加手段15を制御して汚泥Sに電圧を印加する。また、ポンプ負荷検知手段によって検知されたポンプ2の負荷が所定の値以上になるとともに制御手段が電圧印加手段15を制御して汚泥Sに電圧を印加する。
【0047】
このようにして電圧印加手段15の導電性の配管16と、導電性の配管16の内部に配設された電極17の間(汚泥S)に電圧が印加されると、汚泥S中の水分が配管16の内面側に誘導され、配管16の内面側に水膜が形成される。そして、この水膜が潤滑層を形成し、汚泥Sの移送抵抗(管路抵抗)が低減する。
【0048】
すなわち、スクリュー6によって汚泥供給管4に押し込まれた汚泥Sの外周に水膜が形成されることで、汚泥ポンプ2による吸込効率が向上することになる。
また、従来、汚泥Sの移送抵抗が大きいと、汚泥Sが汚泥ポンプ2に吸入されにくくなって空気を巻き込みながら吸入されてしまうケースがあるが、本実施形態のように水膜が潤滑層となって移送抵抗が低減することにより、空気の吸い込みが抑止される。これにより、汚泥ポンプ2の吸込効率が向上し、汚泥ポンプ2の所要動力を低減することが可能になる。
【0049】
さらに、汚泥ポンプ2の駆動によって汚泥移送管5に移送した汚泥Sに電圧が印加されることで、汚泥移送管5の導電性の配管16の内面と汚泥Sの外周との間に水膜が形成され、この水膜によって移送抵抗が低減することにより、汚泥ポンプ2による吐出効率が向上することになる。
【0050】
したがって、本実施形態の汚泥搬送装置A及び汚泥搬送方法においては、導電性の配管16を陰極、配管16内の電極17を陽極として汚泥流路R内の汚泥Sに電圧を印加することにより、汚泥S中の水分を配管16(汚泥供給管4、汚泥移送管5)の内面側に誘導することができ、配管16の内面と汚泥Sの外面との間に水膜を形成することができる。
これにより、配管16の内面と汚泥Sの外面との間に形成された水膜が潤滑層となり、汚泥Sに対して水を添加した場合と同様に、汚泥Sの移送抵抗を低減させることが可能になる。
【0051】
さらに、汚泥ポンプ2の駆動によって汚泥Sを移送する際に、汚泥Sの吐出圧または吸込圧を計測し、この汚泥Sの吐出圧または吸込圧が予め設定した所定の圧力以上になった段階で汚泥Sに電圧を印加する。これにより、移送抵抗が減少して汚泥Sの吐出圧または吸込圧が予め設定した所定の圧力以下になるとともに、配管16の内面と汚泥Sの外面との間に水膜を形成し、汚泥Sの移送抵抗を低減させることができる。よって、より効果的且つ効率的に汚泥Sの移送抵抗を低減させることができる。すなわち、移送抵抗を制御して好適な汚泥Sの搬送状態を維持することができる。
【0052】
また、汚泥ポンプ2の駆動によって汚泥Sを移送する際に、汚泥ポンプ2の負荷を計測し、この汚泥ポンプ2の負荷が予め設定した所定の値以上になった段階で汚泥Sに電圧を印加する。これにより、移送抵抗が減少して汚泥Sの吐出圧または吸込圧が予め設定した所定の圧力以下になるとともに、配管16の内面と汚泥Sの外面との間に水膜を形成し、汚泥Sの移送抵抗を低減させることができる。よって、より効果的且つ効率的に汚泥Sの移送抵抗を低減させることができ、移送抵抗を制御して好適な汚泥Sの搬送状態を維持することができる。
【0053】
よって、本実施形態の汚泥搬送装置A及び汚泥搬送方法においては、配管16内で汚泥Sを移送するとともに、汚泥Sと配管16の間に電圧を印加することによって、電気浸透の効果で配管16の内面側に水膜を形成することができる。これにより、汚泥Sに注水する場合と同様、配管16の内面に形成された水膜が潤滑剤の役目を果たし、移送抵抗を低減させることが可能になる。
【0054】
これにより、従来の混練装置を用いる手法、汚泥を加温する手法、油を添加する手法、水を添加する手法の前述の不都合を解消することができ、効率的且つ効果的に移送抵抗の低減を実現することが可能になる。
【0055】
以上、本発明に係る汚泥搬送装置及び汚泥搬送方法の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0056】
例えば、本実施形態では、汚泥供給管4と汚泥移送管5にそれぞれ電圧印加手段15を設けるようにしたが、汚泥ポンプ2の吸込口2aよりも汚泥Sの移送方向上流側と、汚泥ポンプ2の吐出口2bよりの移送方向下流側のいずれか一方に電圧印加手段15を設けて汚泥Sに電圧を印加するようにしてもよい。
この場合においても、移送抵抗を低減させることができる。
【0057】
さらに、例えば、汚泥ポンプ2の吐出口2b近傍やエルボ部(屈曲部)など、汚泥流路Rで移送される汚泥Sの圧力が他の部分よりも高くなる高圧領域、圧力が最も高くなる高圧領域に、局部的に電圧印加手段15を設けてもよい。この場合には、効果的に移送抵抗を低減することができ、汚泥Sの搬送効率を効果的に向上させることができる。
【0058】
また、本実施形態では、配管16内に設ける陽極の電極17が電極棒であるものとして説明を行ったが、本発明の電極17は、図4に示すように、導電性の配管16の内面に沿う周方向に間隔をあけて複数配設してもよい。そして、この場合には、電極17が導電性の配管16の内面に沿う周方向に間隔をあけて複数配設されていることで、配管16の内面に沿って連続する水膜を好適に形成することができる。
【0059】
また、図5に示すように、電極17がスパイラル状に形成され、中心軸方向を導電性の配管16の中心軸と同方向(略同方向を含む)に向けて配設されていてもよい。この場合においても、配管16の内面に沿って連続する水膜を好適に形成することができる。
【0060】
さらに、図6に示すように、電極17を管状(筒状)に形成し、中心軸方向を導電性の配管16の中心軸と同方向(略同方向を含む)に向けて配設してもよい。この場合においても、配管16の内面に沿って連続する水膜を好適に形成することができる。
【0061】
また、スクリュー6を陽極の電極17として用いてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 汚泥ホッパ
1a 汚泥投入口
1b 汚泥排出口
1c レベル検出器
2 汚泥ポンプ(ポンプ)
2a 吸込口
2b 吐出口
3 押込装置
4 汚泥供給管(配管)
5 汚泥移送管(配管)
6 スクリュー
6a 駆動軸
7 駆動機
9 汚泥圧送機構
9a 汚泥圧送用シリンダ
9b 汚泥圧送用ピストン
10 汚泥吸込機構
10a 吸込バルブシリンダ
10b 吸込ピストンバルブ
11 汚泥吐出機構
11a 吐出バルブシリンダ
11b 吐出ピストンバルブ
15 電圧印加手段
16 導電性を有する配管
17 電極
A 汚泥搬送装置
R 汚泥流路
S 汚泥
図1
図2
図3
図4
図5
図6