【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書では、ジカルボン酸またはその酸無水物が0.1重量%〜15重量%結合されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体;エポキシ樹脂;イミダゾール系化合物、イミン系化合物、およびアミン系化合物からなる群より選択された1種以上の化合物を含む硬化触媒;および酸無水物系化合物;を含み、乾燥状態および5GHzで2.8以下の誘電率(Dk)を有する、接着用樹脂組成物が提供される。
【0012】
また、本明細書では、前記接着用樹脂組成物の硬化物を含み、乾燥状態および5GHzで2.8以下の誘電率(Dk)を有する接着用フィルムが提供される。
【0013】
さらに、本明細書では、ポリイミド樹脂フィルム;銅、鉄、ニッケル、チタン、アルミニウム、銀、金、およびこれらの2種以上の合金からなる群より選択された1種以上を含む金属薄膜;および前記ポリイミドフィルムおよび金属薄膜の間に形成された前記接着用フィルム;を含むフレキシブル金属積層体が提供される。
【0014】
以下、発明の具体的な実施形態に係る接着用樹脂組成物および接着用フィルムに関してより詳細に説明する。
【0015】
発明の一実施形態によれば、ジカルボン酸またはその酸無水物が0.1重量%〜15重量%結合されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体;エポキシ樹脂;イミダゾール系化合物、イミン系化合物、およびアミン系化合物からなる群より選択された1種以上の化合物を含む硬化触媒;および酸無水物系化合物;を含み、乾燥状態および5GHzで2.8以下の誘電率(Dk)を有する、接着用樹脂組成物が提供される。
【0016】
本発明者らは、エポキシ樹脂と共に、ジカルボン酸またはその酸無水物が0.1重量%〜15重量%結合されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、上述した酸無水物系化合物、および前記硬化触媒を共に用いて得られる接着用樹脂組成物が、高い耐熱性および機械的物性を有しかつ、フレキシブル印刷回路基板の製造工程に適用されて高い信頼性を確保することができ、低い誘電率および低い誘電損失係数を示し得るという点を、実験を通して確認して、発明を完成した。
【0017】
前記接着用樹脂組成物が、前記ジカルボン酸またはその酸無水物が0.1重量%〜15重量%結合されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体を含むことによって、前記エポキシ樹脂の耐熱性は同等水準以上に維持しながらも、最終的に製造される接着フィルムが高い弾性と共に機械的物性を確保可能にし、同時に、前記接着用樹脂組成物またはこれから製造される接着フィルムが低い誘電率および誘電損失係数を有するようにする。
【0018】
前記ジカルボン酸またはその酸無水物は、前記スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体の末端に0.1重量%〜15重量%、または0.2重量%〜10重量%の含有量で置換されるか、共重合体の主鎖に0.1重量%〜15重量%、または0.2重量%〜10重量%の含有量でグラフトされてもよい。
【0019】
前記ジカルボン酸は、マレイン酸、フタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アルケニルコハク酸、シス−1,2,3,6テトラヒドロフタル酸、および4−メチル−1,2,3,6テトラヒドロフタル酸からなる群より選択された1種以上を含むことができる。
【0020】
前記ジカルボン酸またはその酸無水物が0.1重量%〜15重量%結合されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体は、30,000〜800,000の重量平均分子量、好ましくは20,000〜200,000の重量平均分子量を有してもよい。
【0021】
前記ジカルボン酸またはその酸無水物が0.1重量%〜15重量%結合されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体は、スチレン由来の繰り返し単位5〜50重量%含んでもよい。前記スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体中のスチレン由来の繰り返し単位の含有量が小さすぎると、前記接着用樹脂組成物およびこれから製造される製品の耐熱性が大きく低下することがある。また、前記スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体中のスチレン由来の繰り返し単位の含有量が高すぎると、前記接着用樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂との相溶性が低下することがある。
【0022】
前記ジカルボン酸またはその酸無水物が0.1重量%〜15重量%結合されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体は、前記接着用樹脂組成物の固形分(有機溶媒、水、または水溶性溶媒成分を除く残りの成分)中の30重量%〜80重量%または25重量%〜75重量%であってもよい。
【0023】
一方、前記接着用樹脂組成物は、前記ジカルボン酸またはその酸無水物が0.1重量%〜15重量%結合されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体100重量部に対して、エポキシ樹脂10〜80重量部または20〜60重量部を含んでもよい。
【0024】
前記エポキシ樹脂は、前記接着用樹脂組成物またはこれから製造される接着フィルムが高い耐熱性および機械的物性を有するようにする。
【0025】
そして、前記スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体100重量部に対して、前記エポキシ樹脂10〜80重量部、または20〜60重量部を含むことによって、前記接着用樹脂組成物またはこれから製造される接着フィルムが低い誘電率および誘電損失係数を有することができる。具体的には、前記接着用樹脂組成物は、乾燥状態および5GHzで2.8以下、または2.2〜2.8の誘電率(Dk)、および0.010以下、または0.010〜0.001の誘電損失係数(Df)を有することができる。
【0026】
前記接着用樹脂組成物中、前記スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体に対する前記エポキシ樹脂の含有量が大きすぎると、前記接着用樹脂組成物またはこれから製造される接着フィルムが高い誘電率および誘電損失係数を有し、実際の使用時、樹脂流動(resin flow)が過度に大きくなり得る。また、前記接着用樹脂組成物中、前記スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体に対する前記エポキシ樹脂の含有量が小さすぎると、前記接着用樹脂組成物またはこれから製造される接着フィルムが有する耐熱性や機械的物性が低下し、接着力自体が低下することがある。
【0027】
前記エポキシ樹脂は、ビフェニルノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、およびジシクロペンタジエンフェノール付加反応型エポキシ樹脂からなる群より選択された1種以上を含んでもよいし、前記エポキシ樹脂の好ましい例としては、ビフェニルノボラックエポキシ樹脂またはジシクロペンタジエンフェノール付加反応型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0028】
前記接着用樹脂組成物の耐熱性を高めかつ、誘電率および誘電損失係数を低下させるために、200g/eq〜500g/eqのエポキシ当量を有することが好ましい。
【0029】
一方、前記酸無水物は、スチレン−マレイン酸無水物共重合体、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸(Hexahydrophthalic Anhydride)、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(Methylhexahydrophthalic Anhydride)、メチルハイミック無水物(Methyl Himic Anhydride)、ナディックメチル無水物(NADIC Methyl Anhydride)、ナディック無水物(NADIC Anhydride)、およびドデセニル無水コハク酸からなる群より選択された1種以上の化合物を含むことができる。
【0030】
このような酸無水物系化合物は、前記接着用樹脂組成物およびこれから製造された接着フィルムの誘電率を低下させながらも、高い接着力および耐熱性を確保可能にし、また、前記接着用樹脂組成物がワニス状態で存在したり、半硬化状態の接着フィルム状態で存在する場合に、高い保存安定性を確保するようにする。
【0031】
通常知られた他の硬化剤、硬化促進剤、または硬化触媒などが前記樹脂組成物やこれから製造される接着フィルムの誘電率および誘電損失係数を大きく高めるのに対し、上述した特定の酸無水物系化合物は、上述したスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体およびエポキシ樹脂と共に使用され、前記一実施形態の樹脂組成物やこれから製造される接着フィルムの誘電率を乾燥状態および5GHzで2.8以下となるようにし、誘電損失係数(Df)を乾燥状態および5GHzで0.010以下となるようにする。
【0032】
前記酸無水物系化合物中のスチレン−マレイン酸無水物共重合体としては、1,000〜50,000、または5,000〜25,000の重量平均分子量を有するスチレン−マレイン酸無水物共重合体を使用することができる。
【0033】
また、前記スチレン−マレイン酸無水物共重合体は、スチレン由来の繰り返し単位50重量%〜95重量%、または60重量%〜90重量%を含んでもよい。
【0034】
前記接着用樹脂組成物は、前記ジカルボン酸またはその酸無水物が0.1重量%〜15重量%結合されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体100重量部に対して、前記酸無水物系化合物10〜80重量部、または20〜60重量部を含んでもよい。
【0035】
前記接着用樹脂組成物中の前記酸無水物系化合物の含有量が小さすぎると、前記接着用樹脂組成物から製造される接着フィルムの塗膜特性や耐熱性および機械的物性が十分でなく、前記接着フィルムの誘電率および誘電損失係数を十分に低下させにくいことがある。また、前記接着用樹脂組成物中の前記酸無水物系化合物の含有量が高すぎると、吸湿性が高まり、耐熱性が低下し、前記接着用樹脂組成物から製造される製品の誘電率および誘電損失係数が高くなり得る。
【0036】
具体的には、前記酸無水物系化合物に対する前記エポキシ樹脂の重量比は、2.0〜0.05、または1.5〜0.10、1.0〜0.12、または0.75〜0.15であってもよい。前記酸無水物系化合物に対する前記エポキシ樹脂の重量比は、前記酸無水物系化合物の固形分および前記エポキシ樹脂の固形分の重量比である。前記酸無水物系化合物に対する前記エポキシ樹脂の重量が高すぎると、前記接着用樹脂組成物から製造される接着フィルムの誘電率および誘電損失係数を十分に低下させにくく、樹脂流動(resin flow)が過度に高くなり得る。また、前記酸無水物系化合物に対する前記エポキシ樹脂の重量が低すぎると、前記接着用樹脂組成物の接着力が低下したり、その耐熱性および耐薬品性が低下することがある。
【0037】
前記接着用樹脂組成物は、有機溶媒をさらに含んでもよい。具体的には、前記接着用樹脂組成物は、前記スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体100重量部に対して、有機溶媒50〜1,000重量部をさらに含んでもよい。
【0038】
前記有機溶媒は、前記接着用樹脂組成物の粘度を調節して接着フィルムの製造を容易にする。前記有機溶媒は、前記接着用樹脂組成物の具体的な成分および粘度などを考慮して使用することができ、例えば、トルエン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ベンゼン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアルデヒド、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、メタノール、エタノールなどを使用することができる。
【0039】
前記接着用樹脂組成物は、上述した構成成分間の相溶性が高く、分酸性に優れ、前記有機溶媒をさらに含む場合も、安定した組成を長時間維持することができる。具体的には、常温で外部露出時、72時間以内に前記接着用樹脂組成物の粘度が初期粘度対比2倍、または1.5倍以下、または1.1倍以下の範囲内で変化できる。エポキシ、アミン系硬化剤、および有機溶媒を含む接着用樹脂の場合、常温で外部に露出時、粘度が初期粘度対比3倍以上と大きく変化するのに対し、前記一実施形態の接着用樹脂組成物は常温での保管安定性が相対的に高い。
【0040】
前記接着用樹脂組成物は、通常知られた硬化触媒、例えば、イミダゾール系化合物、イミン系化合物、およびアミン系化合物からなる群より選択された1種以上の化合物を含む硬化触媒を含むことができる。
【0041】
具体的には、前記接着用樹脂組成物は、前記ジカルボン酸またはその酸無水物が0.1重量%〜15重量%結合されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体100重量部に対して、前記硬化触媒0.05〜5重量部、0.1〜2重量部を含んでもよい。
【0042】
前記接着用樹脂組成物は、上述した成分のほか、通常知られた添加剤、例えば、難燃剤やフィラーなどを含むことができる。前記難燃剤としては、通常使用される難燃剤を格別の制限なく使用することができ、例えば、イオン性リン系難燃剤のOP−935(Clarian社)または非イオン性リン系難燃剤のFPシリーズ(Fushimi社)などを使用することができる。前記フィラーとしては、シリカなどの無機粒子を格別の制限なく使用することができ、例えば、SFP−30MHE(DENKA社)などを使用することができ、ポリプロピレンオキシドなどの有機フィラーを使用してもよいし、有機−無機複合のフィラーを使用してもよい。
【0043】
一方、発明の他の実施形態によれば、前記接着用樹脂組成物の硬化物を含み、乾燥状態および5GHzで2.8以下の誘電率(Dk)を有する接着用フィルムが提供される。
【0044】
上述のように、エポキシ樹脂と共に、ジカルボン酸またはその酸無水物が0.1重量%〜15重量%結合されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、上述した酸無水物系化合物、および前記硬化触媒を含む接着用樹脂組成物を用いると、高い耐熱性および機械的物性を有しかつ、フレキシブル印刷回路基板の製造工程に適用されて高い信頼性を確保することができ、低い誘電率および低い誘電損失係数を示す接着フィルムが提供される。
【0045】
具体的には、前記接着用フィルムは、乾燥状態および5GHzで2.2〜2.8以下の誘電率(Dk)を有することができる。
【0046】
また、前記接着用フィルムは、乾燥状態および5GHzで0.010以下、または0.010〜0.001の誘電損失係数(Df)を有することができる。
【0047】
前記接着用フィルムの形状や厚さなどは大きく限定されるものではなく、適用される回路基板などの大きさ、用途または特性などを考慮して調整可能であり、例えば、前記接着用フィルムは、1μm〜100μmの厚さを有してもよい。
【0048】
前記実施形態の接着用フィルムは、高分子フィルムや接着フィルムの製造に使用されることが知られた多様な方法および装置を大きな制限なく使用することができ、例えば、前記一実施形態の接着用樹脂組成物の所定の基材上に塗布し、40℃以上の温度で乾燥して製造される。
【0049】
一方、発明のさらに他の実施形態によれば、ポリイミド樹脂フィルム;銅、鉄、ニッケル、チタン、アルミニウム、銀、金、およびこれらの2種以上の合金からなる群より選択された1種以上を含む金属薄膜;および前記ポリイミドフィルムおよび金属薄膜の間に形成された前記接着用フィルム;を含むフレキシブル金属積層体が提供される。
【0050】
上述した接着用フィルムを含むことによって、前記フレキシブル金属積層体は、高い耐熱性および機械的物性を有しかつ、低い誘電率および低い誘電損失係数を示すことができる。また、前記接着用フィルムは、前記金属薄膜だけでなく、前記ポリイミド樹脂フィルムに対しても高い接着力を実現することができる。
【0051】
具体的には、前記フレキシブル金属積層体は、乾燥状態および5GHzで2.2〜2.8の誘電率(Dk)を有することができる。
【0052】
また、前記フレキシブル金属積層体は、乾燥状態および5GHzで0.010以下の誘電損失係数(Df)を有することができる。
【0053】
一方、前記ポリイミド樹脂フィルムに含まれるポリイミド樹脂は、3,000〜600,000、または50,000〜300,000の重量平均分子量を有することができる。前記ポリイミド樹脂の重量平均分子量が小さすぎると、フレキシブル金属積層体などに適用時、要求される機械的物性などを十分に確保することができない。また、前記ポリイミド樹脂の重量平均分子量が大きすぎると、前記ポリイミド樹脂フィルムの弾性度が低下することがある。
【0054】
前記ポリイミド樹脂フィルムは、1μm〜50μmの厚さを有してもよい。
【0055】
前記ポリイミド樹脂フィルムは、ポリイミド樹脂と共に、フッ素系樹脂5〜75重量%を追加的にさらに含有してもよい。
【0056】
前記フッ素系樹脂の例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー樹脂(ETFE)、テトラフルオロエチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(TFE/CTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン樹脂(ECTFE)、これらの2種以上の混合物、またはこれらの2種以上の共重合体が挙げられる。前記フッ素系樹脂は、0.05μm〜20μm、または0.1μm〜10μmの最長直径を有する粒子を含んでもよい。
【0057】
前記金属薄膜は、0.1μm〜50μmの厚さを有してもよい。
【0058】
前記フレキシブル金属積層体は、前記金属薄膜を1つ含んでもよいし、前記フレキシブル金属積層体は、互いに対向する前記金属薄膜2つを含んでもよく、この場合、前記ポリイミド樹脂フィルムは、前記互いに対向する金属薄膜2つの間に位置してもよい。