特許第6409251号(P6409251)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6409251接着用樹脂組成物、接着用フィルムおよびフレキシブル金属積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6409251
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】接着用樹脂組成物、接着用フィルムおよびフレキシブル金属積層体
(51)【国際特許分類】
   C09J 153/02 20060101AFI20181015BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20181015BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20181015BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20181015BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20181015BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20181015BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20181015BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
   C09J153/02
   C09J163/00
   C09J11/06
   C09J7/30
   B32B15/08 U
   B32B27/38
   B32B27/00 A
   H05K1/03 670Z
【請求項の数】19
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-521135(P2017-521135)
(86)(22)【出願日】2015年12月8日
(65)【公表番号】特表2017-538800(P2017-538800A)
(43)【公表日】2017年12月28日
(86)【国際出願番号】KR2015013384
(87)【国際公開番号】WO2016093593
(87)【国際公開日】20160616
【審査請求日】2017年4月20日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0174976
(32)【優先日】2014年12月8日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517221424
【氏名又は名称】▲広▼▲東▼生益科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHENGYI TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】タエ、ヨウン ジ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヨウン セオク
(72)【発明者】
【氏名】アン、ビョン イン
【審査官】 澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/147903(WO,A1)
【文献】 特表2012−530807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
B32B 15/08,27/00−27/42
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸またはその酸無水物が0.1重量%〜15重量%結合されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体100重量部
エポキシ樹脂10〜80重量部
イミダゾール系化合物、イミン系化合物、およびアミン系化合物からなる群より選択された1種以上の化合物を含む硬化触媒0.05〜5重量部;および
酸無水物系化合物10〜80重量部;を含み、
乾燥状態および5GHzで2.8以下の誘電率(Dk)を有する、接着用樹脂組成物。
【請求項2】
前記酸無水物系化合物は、スチレン−マレイン酸無水物共重合体、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸(Hexahydrophthalic Anhydride)、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(Methylhexahydrophthalic Anhydride)、メチルハイミック無水物(Methyl Himic Anhydride)、ナディックメチル無水物(NADIC Methyl Anhydride)、ナディック無水物(NADIC Anhydride)、およびドデセニル無水コハク酸からなる群より選択された1種以上の化合物を含む、請求項1に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項3】
乾燥状態および5GHzで0.010以下の誘電損失係数(Df)を有する、請求項1に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項4】
前記酸無水物系化合物に対する前記エポキシ樹脂の重量比が2.0〜0.05である、請求項1に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項5】
前記スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体100重量部に対して、有機溶媒50〜1,000重量部をさらに含む、請求項1に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項6】
常温で外部露出時、72時間以内に前記接着用樹脂組成物の粘度が初期粘度対比2倍以下に変化する、請求項に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項7】
前記ジカルボン酸またはその酸無水物が0.1重量%〜15重量%結合されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体は、30,000〜800,000の重量平均分子量を有する、請求項1に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項8】
前記ジカルボン酸またはその酸無水物が0.1重量%〜15重量%結合されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体は、スチレン由来の繰り返し単位5〜50重量%含む、請求項1に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項9】
前記ジカルボン酸は、マレイン酸、フタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アルケニルコハク酸、シス−1,2,3,6テトラヒドロフタル酸、および4−メチル−1,2,3,6テトラヒドロフタル酸からなる群より選択された1種以上を含む、請求項1に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項10】
前記エポキシ樹脂は、ビフェニルノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、およびジシクロペンタジエンフェノール付加反応型エポキシ樹脂からなる群より選択された1種以上を含む、請求項1に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項11】
前記スチレン−マレイン酸無水物共重合体は、1,000〜50,000の重量平均分子量を有する、請求項2に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項12】
前記スチレン−マレイン酸無水物共重合体は、スチレン由来の繰り返し単位50重量%〜95重量%を含む、請求項2に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の接着用樹脂組成物の硬化物を含み、乾燥状態および5GHzで2.8以下の誘電率(Dk)を有する、接着用フィルム。
【請求項14】
乾燥状態および5GHzで0.010以下の誘電損失係数(Df)を有する、請求項13に記載の接着用フィルム。
【請求項15】
前記接着用フィルムは、1μm〜100μmの厚さを有する、請求項13に記載の接着用フィルム。
【請求項16】
ポリイミド樹脂フィルム;
銅、鉄、ニッケル、チタン、アルミニウム、銀、金、およびこれらの2種以上の合金からなる群より選択された1種以上を含む金属薄膜;および
前記ポリイミド樹脂フィルムおよび金属薄膜の間に形成された、請求項13から15のいずれか一項に記載の接着用フィルム;を含むフレキシブル金属積層体。
【請求項17】
前記ポリイミド樹脂フィルムは、1μm〜50μmの厚さを有し、
前記ポリイミド樹脂フィルムは、フッ素系樹脂5〜75重量%を含有する、請求項16に記載のフレキシブル金属積層体。
【請求項18】
前記接着用フィルムは、乾燥状態および5GHzで2.2〜2.8の誘電率(Dk)を有する、請求項16に記載のフレキシブル金属積層体。
【請求項19】
前記接着用フィルムは、乾燥状態および5GHzで0.010以下の誘電損失係数(Df)を有する、請求項16に記載のフレキシブル金属積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2014年12月8日付の韓国特許出願第10−2014−0174976号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、接着用樹脂組成物、接着用フィルムおよびフレキシブル金属積層体に関し、より詳細には、高い耐熱性および機械的物性を有しかつ、フレキシブル印刷回路基板の製造工程に適用されて高い信頼性を確保することができ、低い誘電率および低い誘電損失係数を示す接着用樹脂組成物および接着用フィルムと前記接着用フィルムを含むフレキシブル金属積層体に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、電子機器の小型化と高速化および多様な機能が結合する傾向に合わせて、電子機器の内部における信号伝達速度または電子機器の外部との信号伝達速度が速くなっているのが現状である。これにより、既存の絶縁体より誘電率と誘電損失係数がより低い絶縁体を用いた印刷回路基板が必要になっている。
【0004】
以前に知られたボンディングシート(bonding sheet)およびカバーレイ(coverlay)の場合、接着性エポキシ樹脂組成物で製造されることが一般的であるが、エポキシ樹脂固有の特性により誘電率が高くなって最終製品の誘電率と誘電損失係数を低下させることが容易でない。また、前記接着性エポキシ樹脂組成物に一般に使用されるカルボキシル基末端のブタジエン/アクリロニトリル(CTBN)などのエラストマーも高い誘電率と誘電損失係数を有するため、より微細化され高集積化される半導体素子に適用されるには一定の限界があった。
【0005】
例えば、韓国登録特許第0072808号には、液状エポキシ樹脂;固状樹脂;およびマイクロカプセル型硬化剤を含む接着剤テープに関して開示しているが、前記接着剤テープは、高い耐熱性または基材に対する接着力を確保することができるが、誘電率の高いエポキシ樹脂を高い含有量で使用して低い誘電率を確保しにくく、また、誘電率や誘電損失係数を低下させる方法について全く提示していない。
【0006】
また、日本国特開第2013−170214号には、エポキシ樹脂、無水マレイン酸変性水素添加スチレンブタジエンゴムを主成分とするゴム成分、ポリフェニレンエーテル並びにリン化合物の無機金属塩を含むエポキシ樹脂組成物が開示されているが、このようなエポキシ樹脂組成物は、ポリイミド基材に対して高い接着力を有し、高い耐湿性を確保することができるが、前記特許文献も同じく、誘電率や誘電損失係数を低下させる方法について全く提示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国登録特許第0072808号
【特許文献2】日本国特開第2013−170214号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高い耐熱性および機械的物性を有しかつ、フレキシブル印刷回路基板の製造工程に適用されて高い信頼性を確保することができ、低い誘電率および低い誘電損失係数を示す接着用樹脂組成物を提供する。
【0009】
また、本発明は、高い耐熱性および機械的物性を有しかつ、フレキシブル印刷回路基板の製造工程に適用されて高い信頼性を確保することができ、低い誘電率および低い誘電損失係数を示す接着用フィルムを提供する。
【0010】
さらに、本発明は、高い耐熱性および機械的物性と共に、低い誘電率および低い誘電損失係数を示すフレキシブル金属積層体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書では、ジカルボン酸またはその酸無水物が0.1重量%〜15重量%結合されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体;エポキシ樹脂;イミダゾール系化合物、イミン系化合物、およびアミン系化合物からなる群より選択された1種以上の化合物を含む硬化触媒;および酸無水物系化合物;を含み、乾燥状態および5GHzで2.8以下の誘電率(Dk)を有する、接着用樹脂組成物が提供される。
【0012】
また、本明細書では、前記接着用樹脂組成物の硬化物を含み、乾燥状態および5GHzで2.8以下の誘電率(Dk)を有する接着用フィルムが提供される。
【0013】
さらに、本明細書では、ポリイミド樹脂フィルム;銅、鉄、ニッケル、チタン、アルミニウム、銀、金、およびこれらの2種以上の合金からなる群より選択された1種以上を含む金属薄膜;および前記ポリイミドフィルムおよび金属薄膜の間に形成された前記接着用フィルム;を含むフレキシブル金属積層体が提供される。
【0014】
以下、発明の具体的な実施形態に係る接着用樹脂組成物および接着用フィルムに関してより詳細に説明する。
【0015】
発明の一実施形態によれば、ジカルボン酸またはその酸無水物が0.1重量%〜15重量%結合されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体;エポキシ樹脂;イミダゾール系化合物、イミン系化合物、およびアミン系化合物からなる群より選択された1種以上の化合物を含む硬化触媒;および酸無水物系化合物;を含み、乾燥状態および5GHzで2.8以下の誘電率(Dk)を有する、接着用樹脂組成物が提供される。
【0016】
本発明者らは、エポキシ樹脂と共に、ジカルボン酸またはその酸無水物が0.1重量%〜15重量%結合されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、上述した酸無水物系化合物、および前記硬化触媒を共に用いて得られる接着用樹脂組成物が、高い耐熱性および機械的物性を有しかつ、フレキシブル印刷回路基板の製造工程に適用されて高い信頼性を確保することができ、低い誘電率および低い誘電損失係数を示し得るという点を、実験を通して確認して、発明を完成した。
【0017】
前記接着用樹脂組成物が、前記ジカルボン酸またはその酸無水物が0.1重量%〜15重量%結合されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体を含むことによって、前記エポキシ樹脂の耐熱性は同等水準以上に維持しながらも、最終的に製造される接着フィルムが高い弾性と共に機械的物性を確保可能にし、同時に、前記接着用樹脂組成物またはこれから製造される接着フィルムが低い誘電率および誘電損失係数を有するようにする。
【0018】
前記ジカルボン酸またはその酸無水物は、前記スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体の末端に0.1重量%〜15重量%、または0.2重量%〜10重量%の含有量で置換されるか、共重合体の主鎖に0.1重量%〜15重量%、または0.2重量%〜10重量%の含有量でグラフトされてもよい。
【0019】
前記ジカルボン酸は、マレイン酸、フタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アルケニルコハク酸、シス−1,2,3,6テトラヒドロフタル酸、および4−メチル−1,2,3,6テトラヒドロフタル酸からなる群より選択された1種以上を含むことができる。
【0020】
前記ジカルボン酸またはその酸無水物が0.1重量%〜15重量%結合されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体は、30,000〜800,000の重量平均分子量、好ましくは20,000〜200,000の重量平均分子量を有してもよい。
【0021】
前記ジカルボン酸またはその酸無水物が0.1重量%〜15重量%結合されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体は、スチレン由来の繰り返し単位5〜50重量%含んでもよい。前記スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体中のスチレン由来の繰り返し単位の含有量が小さすぎると、前記接着用樹脂組成物およびこれから製造される製品の耐熱性が大きく低下することがある。また、前記スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体中のスチレン由来の繰り返し単位の含有量が高すぎると、前記接着用樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂との相溶性が低下することがある。
【0022】
前記ジカルボン酸またはその酸無水物が0.1重量%〜15重量%結合されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体は、前記接着用樹脂組成物の固形分(有機溶媒、水、または水溶性溶媒成分を除く残りの成分)中の30重量%〜80重量%または25重量%〜75重量%であってもよい。
【0023】
一方、前記接着用樹脂組成物は、前記ジカルボン酸またはその酸無水物が0.1重量%〜15重量%結合されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体100重量部に対して、エポキシ樹脂10〜80重量部または20〜60重量部を含んでもよい。
【0024】
前記エポキシ樹脂は、前記接着用樹脂組成物またはこれから製造される接着フィルムが高い耐熱性および機械的物性を有するようにする。
【0025】
そして、前記スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体100重量部に対して、前記エポキシ樹脂10〜80重量部、または20〜60重量部を含むことによって、前記接着用樹脂組成物またはこれから製造される接着フィルムが低い誘電率および誘電損失係数を有することができる。具体的には、前記接着用樹脂組成物は、乾燥状態および5GHzで2.8以下、または2.2〜2.8の誘電率(Dk)、および0.010以下、または0.010〜0.001の誘電損失係数(Df)を有することができる。
【0026】
前記接着用樹脂組成物中、前記スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体に対する前記エポキシ樹脂の含有量が大きすぎると、前記接着用樹脂組成物またはこれから製造される接着フィルムが高い誘電率および誘電損失係数を有し、実際の使用時、樹脂流動(resin flow)が過度に大きくなり得る。また、前記接着用樹脂組成物中、前記スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体に対する前記エポキシ樹脂の含有量が小さすぎると、前記接着用樹脂組成物またはこれから製造される接着フィルムが有する耐熱性や機械的物性が低下し、接着力自体が低下することがある。
【0027】
前記エポキシ樹脂は、ビフェニルノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、およびジシクロペンタジエンフェノール付加反応型エポキシ樹脂からなる群より選択された1種以上を含んでもよいし、前記エポキシ樹脂の好ましい例としては、ビフェニルノボラックエポキシ樹脂またはジシクロペンタジエンフェノール付加反応型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0028】
前記接着用樹脂組成物の耐熱性を高めかつ、誘電率および誘電損失係数を低下させるために、200g/eq〜500g/eqのエポキシ当量を有することが好ましい。
【0029】
一方、前記酸無水物は、スチレン−マレイン酸無水物共重合体、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸(Hexahydrophthalic Anhydride)、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(Methylhexahydrophthalic Anhydride)、メチルハイミック無水物(Methyl Himic Anhydride)、ナディックメチル無水物(NADIC Methyl Anhydride)、ナディック無水物(NADIC Anhydride)、およびドデセニル無水コハク酸からなる群より選択された1種以上の化合物を含むことができる。
【0030】
このような酸無水物系化合物は、前記接着用樹脂組成物およびこれから製造された接着フィルムの誘電率を低下させながらも、高い接着力および耐熱性を確保可能にし、また、前記接着用樹脂組成物がワニス状態で存在したり、半硬化状態の接着フィルム状態で存在する場合に、高い保存安定性を確保するようにする。
【0031】
通常知られた他の硬化剤、硬化促進剤、または硬化触媒などが前記樹脂組成物やこれから製造される接着フィルムの誘電率および誘電損失係数を大きく高めるのに対し、上述した特定の酸無水物系化合物は、上述したスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体およびエポキシ樹脂と共に使用され、前記一実施形態の樹脂組成物やこれから製造される接着フィルムの誘電率を乾燥状態および5GHzで2.8以下となるようにし、誘電損失係数(Df)を乾燥状態および5GHzで0.010以下となるようにする。
【0032】
前記酸無水物系化合物中のスチレン−マレイン酸無水物共重合体としては、1,000〜50,000、または5,000〜25,000の重量平均分子量を有するスチレン−マレイン酸無水物共重合体を使用することができる。
【0033】
また、前記スチレン−マレイン酸無水物共重合体は、スチレン由来の繰り返し単位50重量%〜95重量%、または60重量%〜90重量%を含んでもよい。
【0034】
前記接着用樹脂組成物は、前記ジカルボン酸またはその酸無水物が0.1重量%〜15重量%結合されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体100重量部に対して、前記酸無水物系化合物10〜80重量部、または20〜60重量部を含んでもよい。
【0035】
前記接着用樹脂組成物中の前記酸無水物系化合物の含有量が小さすぎると、前記接着用樹脂組成物から製造される接着フィルムの塗膜特性や耐熱性および機械的物性が十分でなく、前記接着フィルムの誘電率および誘電損失係数を十分に低下させにくいことがある。また、前記接着用樹脂組成物中の前記酸無水物系化合物の含有量が高すぎると、吸湿性が高まり、耐熱性が低下し、前記接着用樹脂組成物から製造される製品の誘電率および誘電損失係数が高くなり得る。
【0036】
具体的には、前記酸無水物系化合物に対する前記エポキシ樹脂の重量比は、2.0〜0.05、または1.5〜0.10、1.0〜0.12、または0.75〜0.15であってもよい。前記酸無水物系化合物に対する前記エポキシ樹脂の重量比は、前記酸無水物系化合物の固形分および前記エポキシ樹脂の固形分の重量比である。前記酸無水物系化合物に対する前記エポキシ樹脂の重量が高すぎると、前記接着用樹脂組成物から製造される接着フィルムの誘電率および誘電損失係数を十分に低下させにくく、樹脂流動(resin flow)が過度に高くなり得る。また、前記酸無水物系化合物に対する前記エポキシ樹脂の重量が低すぎると、前記接着用樹脂組成物の接着力が低下したり、その耐熱性および耐薬品性が低下することがある。
【0037】
前記接着用樹脂組成物は、有機溶媒をさらに含んでもよい。具体的には、前記接着用樹脂組成物は、前記スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体100重量部に対して、有機溶媒50〜1,000重量部をさらに含んでもよい。
【0038】
前記有機溶媒は、前記接着用樹脂組成物の粘度を調節して接着フィルムの製造を容易にする。前記有機溶媒は、前記接着用樹脂組成物の具体的な成分および粘度などを考慮して使用することができ、例えば、トルエン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ベンゼン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアルデヒド、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、メタノール、エタノールなどを使用することができる。
【0039】
前記接着用樹脂組成物は、上述した構成成分間の相溶性が高く、分酸性に優れ、前記有機溶媒をさらに含む場合も、安定した組成を長時間維持することができる。具体的には、常温で外部露出時、72時間以内に前記接着用樹脂組成物の粘度が初期粘度対比2倍、または1.5倍以下、または1.1倍以下の範囲内で変化できる。エポキシ、アミン系硬化剤、および有機溶媒を含む接着用樹脂の場合、常温で外部に露出時、粘度が初期粘度対比3倍以上と大きく変化するのに対し、前記一実施形態の接着用樹脂組成物は常温での保管安定性が相対的に高い。
【0040】
前記接着用樹脂組成物は、通常知られた硬化触媒、例えば、イミダゾール系化合物、イミン系化合物、およびアミン系化合物からなる群より選択された1種以上の化合物を含む硬化触媒を含むことができる。
【0041】
具体的には、前記接着用樹脂組成物は、前記ジカルボン酸またはその酸無水物が0.1重量%〜15重量%結合されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体100重量部に対して、前記硬化触媒0.05〜5重量部、0.1〜2重量部を含んでもよい。
【0042】
前記接着用樹脂組成物は、上述した成分のほか、通常知られた添加剤、例えば、難燃剤やフィラーなどを含むことができる。前記難燃剤としては、通常使用される難燃剤を格別の制限なく使用することができ、例えば、イオン性リン系難燃剤のOP−935(Clarian社)または非イオン性リン系難燃剤のFPシリーズ(Fushimi社)などを使用することができる。前記フィラーとしては、シリカなどの無機粒子を格別の制限なく使用することができ、例えば、SFP−30MHE(DENKA社)などを使用することができ、ポリプロピレンオキシドなどの有機フィラーを使用してもよいし、有機−無機複合のフィラーを使用してもよい。
【0043】
一方、発明の他の実施形態によれば、前記接着用樹脂組成物の硬化物を含み、乾燥状態および5GHzで2.8以下の誘電率(Dk)を有する接着用フィルムが提供される。
【0044】
上述のように、エポキシ樹脂と共に、ジカルボン酸またはその酸無水物が0.1重量%〜15重量%結合されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、上述した酸無水物系化合物、および前記硬化触媒を含む接着用樹脂組成物を用いると、高い耐熱性および機械的物性を有しかつ、フレキシブル印刷回路基板の製造工程に適用されて高い信頼性を確保することができ、低い誘電率および低い誘電損失係数を示す接着フィルムが提供される。
【0045】
具体的には、前記接着用フィルムは、乾燥状態および5GHzで2.2〜2.8以下の誘電率(Dk)を有することができる。
【0046】
また、前記接着用フィルムは、乾燥状態および5GHzで0.010以下、または0.010〜0.001の誘電損失係数(Df)を有することができる。
【0047】
前記接着用フィルムの形状や厚さなどは大きく限定されるものではなく、適用される回路基板などの大きさ、用途または特性などを考慮して調整可能であり、例えば、前記接着用フィルムは、1μm〜100μmの厚さを有してもよい。
【0048】
前記実施形態の接着用フィルムは、高分子フィルムや接着フィルムの製造に使用されることが知られた多様な方法および装置を大きな制限なく使用することができ、例えば、前記一実施形態の接着用樹脂組成物の所定の基材上に塗布し、40℃以上の温度で乾燥して製造される。
【0049】
一方、発明のさらに他の実施形態によれば、ポリイミド樹脂フィルム;銅、鉄、ニッケル、チタン、アルミニウム、銀、金、およびこれらの2種以上の合金からなる群より選択された1種以上を含む金属薄膜;および前記ポリイミドフィルムおよび金属薄膜の間に形成された前記接着用フィルム;を含むフレキシブル金属積層体が提供される。
【0050】
上述した接着用フィルムを含むことによって、前記フレキシブル金属積層体は、高い耐熱性および機械的物性を有しかつ、低い誘電率および低い誘電損失係数を示すことができる。また、前記接着用フィルムは、前記金属薄膜だけでなく、前記ポリイミド樹脂フィルムに対しても高い接着力を実現することができる。
【0051】
具体的には、前記フレキシブル金属積層体は、乾燥状態および5GHzで2.2〜2.8の誘電率(Dk)を有することができる。
【0052】
また、前記フレキシブル金属積層体は、乾燥状態および5GHzで0.010以下の誘電損失係数(Df)を有することができる。
【0053】
一方、前記ポリイミド樹脂フィルムに含まれるポリイミド樹脂は、3,000〜600,000、または50,000〜300,000の重量平均分子量を有することができる。前記ポリイミド樹脂の重量平均分子量が小さすぎると、フレキシブル金属積層体などに適用時、要求される機械的物性などを十分に確保することができない。また、前記ポリイミド樹脂の重量平均分子量が大きすぎると、前記ポリイミド樹脂フィルムの弾性度が低下することがある。
【0054】
前記ポリイミド樹脂フィルムは、1μm〜50μmの厚さを有してもよい。
【0055】
前記ポリイミド樹脂フィルムは、ポリイミド樹脂と共に、フッ素系樹脂5〜75重量%を追加的にさらに含有してもよい。
【0056】
前記フッ素系樹脂の例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー樹脂(ETFE)、テトラフルオロエチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(TFE/CTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン樹脂(ECTFE)、これらの2種以上の混合物、またはこれらの2種以上の共重合体が挙げられる。前記フッ素系樹脂は、0.05μm〜20μm、または0.1μm〜10μmの最長直径を有する粒子を含んでもよい。
【0057】
前記金属薄膜は、0.1μm〜50μmの厚さを有してもよい。
【0058】
前記フレキシブル金属積層体は、前記金属薄膜を1つ含んでもよいし、前記フレキシブル金属積層体は、互いに対向する前記金属薄膜2つを含んでもよく、この場合、前記ポリイミド樹脂フィルムは、前記互いに対向する金属薄膜2つの間に位置してもよい。
【発明の効果】
【0059】
本発明によれば、高い耐熱性および機械的物性を有しかつ、フレキシブル印刷回路基板の製造工程に適用されて高い信頼性を確保することができ、低い誘電率および低い誘電損失係数を示す接着用樹脂組成物および接着用フィルムが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0060】
発明の具体的な実施形態を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は発明の具体的な実施形態を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0061】
[実施例および比較例:接着用樹脂組成物および接着フィルムの製造]
実施例1
(1)接着用樹脂溶液の製造
マレイン酸無水物が1.81wt%グラフトされたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体の20wt%xylene溶液(M1913、Asahi Kasei(株)製品)20g、ビフェニルノボラック系エポキシ樹脂の70wt%xylene溶液(NC−3000H、日本化薬(株)製品、エポキシ当量288g/eq)0.814g、スチレン−マレイン酸無水物共重合体の40wt%xylene溶液(EF−40、Sartomer製品、Styrene:Maleic anhydrideの重量比4:1)5.0g、2−メチルイミダゾールの25%メタノール溶液0.13gを常温で混合して、接着用樹脂組成物(溶液)を製造した。
【0062】
(2)接着フィルムの製造
前記接着用樹脂溶液を離型処理済みPETフィルムに塗布し、100℃で10分間乾燥して、約25μmの厚さを有する接着フィルムを製造した。
【0063】
実施例2
(1)接着用樹脂溶液の製造
マレイン酸無水物が0.36wt%グラフトされたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体の20wt%xylene溶液(M1911、Asahi Kasei(株)製品)20g、エポキシ樹脂の70wt%xylene溶液(XD−1000)0.814g、ナディックメチル酸無水物(NADIC methyl anhydride)の40wt%xylene溶液5.0g、2−メチルイミダゾールの25%メタノール溶液0.13gを常温で混合して、接着用樹脂組成物(溶液)を製造した。
【0064】
(2)接着フィルムの製造
前記接着用樹脂溶液を離型処理済みPETフィルムに塗布し、100℃で10分間乾燥して、約25μmの厚さを有する接着フィルムを製造した。
【0065】
比較例1〜3
(1)接着用樹脂溶液の製造
下記表1の成分を常温で混合して、比較例1〜3の接着用樹脂組成物(溶液)を製造した。
【0066】
【表1】
【0067】
(2)接着フィルムの製造
前記比較例1〜3で得られた接着用樹脂溶液をそれぞれ離型処理済みPETフィルムに塗布し、100℃で10分間乾燥して、約25μmの厚さを有する接着フィルムを製造した。
【0068】
[実験例:接着用樹脂組成物および接着用フィルムの物性評価]
実験例1:接着用樹脂組成物(溶液)の保存安定性評価
前記実施例および比較例で得られた接着用樹脂溶液それぞれを、常温(25℃)で3日間密封状態に維持し、粘度増減の有無を確認した。前記露出後、最終粘度が初期粘度の100%以内であれば良好と評価し、初期粘度の100%超過であれば不良と表示した。
【0069】
実験例2:接着フィルムの吸湿耐熱性評価
前記実施例および比較例で得られた接着フィルムにおいて、PET Filmから剥離し、ポリイミドフィルムと銅箔との間に入れて、160℃で1時間30MPaの圧力を加えて圧着をした。そして、得られたポリイミドフィルム−接着フィルム−銅箔複合体を85℃の温度および85%相対湿度の条件で24時間エージングした後、260℃の鉛槽に浮かべて耐熱性を評価した。
【0070】
前記接着フィルムの表面に気泡(Blister)が発生したものは不良と評価し、気泡(Blister)が発生しなかったものは良好と評価した。
【0071】
実験例3:誘電率および誘電損失係数の測定
前記実施例および比較例で得られた接着フィルムをglove boxに入れて、窒素をパージしながら24時間乾燥を行った後、Agiletn E5071B ENA装置を用いて、5GHzの条件で誘電率および誘電損失係数を測定した。
【0072】
前記実験例1〜3の結果を下記表2に示した。
【0073】
【表2】
【0074】
前記表1に示されているように、実施例で得られた接着フィルムは、高い保存安定性および耐熱性を有し、乾燥状態および5GHzで2.5の誘電率(Dk)および0.007の誘電損失係数(Df)を有する点が確認された。
【0075】
これに対し、比較例で得られた接着フィルムは、保存安定性または耐熱性が実施例に比べて劣り、特に、比較例3の場合、フレキシブル印刷回路基板の接着材料として用いるのに十分でない耐熱性を有し、保存安定性も非常に低くて商用製品として製造しにくい点が確認された。また、比較例1および2の接着フィルムは、誘電率および誘電損失係数が相対的に大きくなっている点が確認された。