特許第6409256号(P6409256)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6409256
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】フィルタ付ベント装置
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/02 20060101AFI20181015BHJP
   B01F 5/06 20060101ALI20181015BHJP
   B01F 3/04 20060101ALI20181015BHJP
   B01D 47/02 20060101ALI20181015BHJP
   G21C 9/00 20060101ALI20181015BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
   G21F9/02 521A
   B01F5/06
   B01F3/04 A
   B01D47/02 B
   G21C9/00 100
   F24F7/06 Q
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-175516(P2013-175516)
(22)【出願日】2013年8月27日
(65)【公開番号】特開2015-45518(P2015-45518A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年8月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 史紀
(72)【発明者】
【氏名】大森 修一
(72)【発明者】
【氏名】和田 守弘
(72)【発明者】
【氏名】平尾 和紀
(72)【発明者】
【氏名】木村 剛生
(72)【発明者】
【氏名】村井 荘太郎
(72)【発明者】
【氏名】平沼 巨樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 亮介
(72)【発明者】
【氏名】宮川 雅彦
【審査官】 藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−006500(JP,A)
【文献】 特開平04−344495(JP,A)
【文献】 特表平01−503765(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/076853(WO,A1)
【文献】 特開2002−206420(JP,A)
【文献】 特開昭63−113393(JP,A)
【文献】 特開平06−174879(JP,A)
【文献】 特開平07−209488(JP,A)
【文献】 特開平06−342093(JP,A)
【文献】 国際公開第89/08491(WO,A1)
【文献】 米国特許第4936878(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/02
G21C 9/00−9/004
B01F 1/00−5/26
B01D 47/00−47/18
B01D 39/00−41/04
F24F 7/04−7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液体を貯留するタンクと、
前記タンク内の上部に配置されるフィルタと、
前記タンク内の下部に配置され、上面に多数の噴出孔を有し該噴出孔から前記液体内に気泡を噴出するシャワーヘッド型のノズルと、
前記ノズルの上方に配置され、該ノズルから噴出された気泡を細分化する気泡細分化装置と、
前記タンク内で放射線状に配置される複数の配管と、
前記配管に連通していてタンクの中心から同心円状に配置される複数の配管と、
を備え、
前記ノズルは、前記同心円状に配置される複数の配管に連結され前記タンクの水平断面の全体に複数の同心円状となるように複数配置されることを特徴とするフィルタ付ベント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉格納容器に接続され、かかる原子炉格納容器から外部に放出される蒸気を含むガスに含まれる放射性微粒子を捕捉するフィルタ付ベント装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉(BWR:Boiling Water Reactor)や改良型沸騰水型原子炉(ABWR:Advanced Boiling Water Reactor)では、原子炉格納容器に原子炉圧力容器が格納されていて、かかる原子炉圧力容器内に炉心が収容されている。そして、原子炉圧力容器に冷却水(軽水)を注水し、炉心から生じる熱によって高温高圧の蒸気を生じさせることにより、その蒸気をタービンを回転させる動力として発電を行っている。
【0003】
原子炉では、シビアアクシデントが発生した際、原子炉格納容器内の蒸気を含むガスを外部に放出するベントによって、原子炉格納容器の内圧を低下させる。このベントにおいて原子炉格納容器内から放出される蒸気を含むガス(以下、ベントガスと称する)に含まれる放射性物質(放射性微粒子)を除去するには、原子炉格納容器にベント装置を接続することが有効である。かかるベント装置としては、例えば特許文献1に、放射性物質除去用のフィルタカートリッジが内部に設けられたフィルタベント容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−15488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、容器の内部にフィルタを設けたベント装置(以下、フィルタ付ベント装置)によれば、従来のベント装置よりも効率的に放射性微粒子を捕捉することができるものの、近年、更なる捕捉性能の向上が求められている。しかしながら、特許文献1の構成であると、放射性微粒子の捕捉性能はフィルタに依存するため、捕捉性能の向上には限界がある。故に、特許文献1の技術にはいまだ改良の余地があった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、放射性微粒子の捕捉性能の更なる向上を図り、ベントガスに含まれる放射性微粒子を大幅に低減することが可能なフィルタ付ベント装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかるフィルタ付ベント装置の代表的な構成は、内部に液体を貯留するタンクと、タンク内の上部に配置されるフィルタと、タンク内の下部に配置され、上面に多数の噴出孔を有し噴出孔から液体内に気泡を噴出するシャワーヘッド型のノズルと、ノズルの上方に配置され、ノズルから噴出された気泡を細分化する気泡細分化装置と、タンク内で放射線状に配置される複数の配管と、配管に連通していてタンクの中心から同心円状に配置される複数の配管と、を備え、ノズルは、同心円状に配置される複数の配管に連結されタンクの水平断面の全体に複数の同心円状となるように複数配置されることを特徴とする。
【0008】
上記構成では、ベントガスはノズルから気泡となって噴出され、噴出された気泡(ベントガス)はタンク内に貯留された液体を通過し、かかる液体内において気泡に含まれる放射性微粒子が捕捉される。このとき、ノズルがシャワーヘッド型であることから、従来のノズルよりも細かい気泡を噴出することができる。したがって、気泡と液体との接触面積を増大させることができ、気泡に含まれる放射性微粒子をより高効率で捕捉することが可能となる。更に上記構成では、ノズルから噴出された細かい気泡は、ノズルの上方に配置された気泡細分化装置において細分化される。これにより、気泡と液体との接触面積が更に増大するため、捕捉性能を一層高めることができ、ベントガスに含まれる放射性微粒子を大幅に低減することが可能となる。特に、上記ノズルがタンクの水平断面において同心円状となるように複数配置されていることにより、タンク内において気泡を均一に噴出することが可能となる。
【0009】
上記フィルタは、円筒形状の金属フィルタであり、当該フィルタ付ベント装置は、フィルタの下方に配置される多孔板を更に備えるとよい。かかる構成によれば、タンク内に貯留される液体が振動によって揺動した際(スロッシング)の金属フィルタへの液面の接触を抑制することができ、金属フィルタの損傷を防ぐことが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、放射性微粒子の捕捉性能の更なる向上を図り、ベントガスに含まれる放射性微粒子を大幅に低減することが可能なフィルタ付ベント装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態にかかるフィルタ付ベント装置を備える原子力発電プラントの概略図である。
図2】本実施形態にかかるフィルタ付ベント装置の構成を説明する図である。
図3図2に示すノズルの斜視図である。
図4図2のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
図1は、本実施形態にかかるフィルタ付ベント装置100を備える原子力発電プラント102の概略図である。図1に示すように、原子力発電プラント102では、原子炉建屋104内に原子炉格納容器106が収容されている。かかる原子炉格納容器106内には原子炉圧力容器108が格納されていて、原子炉圧力容器108内に炉心110が収容されている。原子炉格納容器106には、接続経路112aによって本実施形態のフィルタ付ベント装置100が接続されている。接続経路112aを通過することによって原子炉格納容器106からフィルタ付ベント装置100に至ったベントガスは、フィルタ付ベント装置100によって放射性微粒子を除去された後に、解放経路112bから外部に放出される。
【0015】
図2は、本実施形態にかかるフィルタ付ベント装置100の構成を説明する図である。図2に示すように、本実施形態のフィルタ付ベント装置100では、接続経路112a(図1参照)に接続されている導入管120aによってベントガスがタンク122に導入される。タンク122に導入されたベントガスは、タンク122内の下部に配置されて導入管120aの端部に接続されているノズル124によって気泡100aとなってタンク122内に噴出される。
【0016】
タンク122の内部には液体122aが貯留されている。このため、ノズル124によって噴出された気泡100aは、液体122a内を通過しながら上昇することとなる。これにより、気泡100a(ベントガス)に含まれる放射性微粒子が液体122aに捕捉される。かかる液体122aは水であってもよいし、水酸化ナトリウムやチオ硫酸ナトリウム等を添加したアルカリ性の薬液としてもよい。液体122aを上記のような薬液とすることにより、放射性ヨウ素やヨウ素含有化合物を効果的に捕捉することが可能となる。
【0017】
図3は、図2に示すノズル124の斜視図である。図3に示すように、本実施形態のノズル124はシャワーヘッド型である。ノズル124(シャワーヘッド型のノズル)の上面124aには、多数の噴出孔124bが形成されていて、この噴出孔124bから液体122a内に気泡100aが噴出される(図2参照)。本実施形態のようにシャワーヘッド型のノズルを採用することにより、噴出時の圧力損失を増大させることなく、細かい気泡100aを噴射することができる。このようにベントガスが細かい気泡100aとなって噴射されることで、気泡100aと液体122aとの接触面積を増大させることができ、気泡100aに含まれる放射性微粒子をより高効率で捕捉することが可能となる。
【0018】
図4は、図2のA−A断面図である。本実施形態では、図4に示すように、上述したノズル124は、タンク122の水平断面において同心円状となるように複数配置される。これにより、タンク122内において気泡を均一に噴出することができる。なお、図4に示すノズル124の数および配置は例示に過ぎず、適宜変更することが可能である。また本実施形態では、タンク122の水平断面に対して同心円状にノズル124を配置したが、放射状、マトリクス状、千鳥状に配置してもよい。すなわち、タンク122の水平断面においてノズル124が均一に(等間隔に)配置されていれば、上記と同様の効果を得ることが可能である。
【0019】
また本実施形態では、図2に示すように、ノズル124の上方に気泡細分化装置126が配置されている。ノズル124から噴出された気泡100aは、かかる気泡細分化装置126を通過することで液体との気液混合が行われ、細分化される。これにより、気泡100aと液体122aとの接触面積が更に増大するため、放射性微粒子を捕捉する性能をより高めることができる。
【0020】
気泡細分化装置126としては、円筒形の金属製カゴの内部に、金属メッシュからなる小さな円筒形のブロック(気泡細分化メッシュ)を充填した構成を例示することができる(ともに不図示)。なお、気泡細分化メッシュ(充填物)は、様々な形状または材質のものに変更することが可能である。
【0021】
ノズル124は、上記したように圧力損失を抑えるために、噴出孔124bの合計の開口面積が大きくなっている。このため、噴出孔124bから噴出される気泡の流速は速くしにくい。一方、気泡細分化装置126においては、流れる気泡の速度が速いほど気泡が細分化される。そこで、上記の気泡細分化装置126とノズル124との間には、高さ方向において所定の間隔、例えば30cm以上の間隔が設けられていることが好ましい。これにより、気泡細分化装置126を通過する気泡100aの速度を好適に維持することができ、液体122aを通過する際の放射性微粒子の捕捉性能を良好に確保することが可能となる。
【0022】
気泡細分化装置126において細分化された気泡100aは、液体122aを通過しながら上昇し、タンク122内の上部に配置されるフィルタ128を通過する。これにより、気体となった気泡100aに含まれる主にセシウム系の放射性微粒子がフィルタ128において更に捕捉される。かかるフィルタ128としては、外壁を構成する円筒部材、および円筒部材の内部に収容されるコアカートリッジ(ともに不図示)とを含む円筒形状の金属フィルタを好適に用いることができる。
【0023】
フィルタ128の下端の位置は、ノズル124の上面から液体122aの液面までの高さの2倍となる位置より上方であることが好ましい。換言すれば、タンク122に貯留される液体122aの液面は、かかるノズル124の上面からフィルタ128の下端までの高さの半分以下となる位置とすることが好ましい。気泡細分化装置126により気泡100aと液体122aとの気液混合を行うと、ノズル124の上面から液体122aの液面までの高さは、気液混合前の2倍程度まで上昇する。したがって、フィルタ128の下端の位置または液体122aの液面を上記のように設定することにより、液体122aとフィルタ128との接触を防ぎ、フィルタ128の性能を十分に発揮させることが可能となる。
【0024】
更に本実施形態のフィルタ付ベント装置100の特徴として、図2に示すように、フィルタ128(円筒形状の金属フィルタ)の下方には多孔板130が配置される。地震等の災害時にタンク122が振動すると、タンク122内に貯留される液体122aの液面が揺動するスロッシングが生じる。このとき、液面がフィルタ128(円筒形状の金属フィルタ)を直撃すると、かかるフィルタ128の損傷を招くおそれがある。そこで、本実施形態のようにフィルタ128の下方に多孔板130を配置することにより、ベントガスを好適に通過させつつ、揺動時の液面のフィルタ128への接触を抑制することができる。したがって、スロッシングによるフィルタ128の損傷を防止することが可能となる。
【0025】
上記の多孔板130における開口率は50%程度が好ましい。これにより、気体(ベントガス)の流路を十分に確保しつつ、上述した効果を好適に得ることができる。なお、多孔板130としては、パンチングメタルを例示することができるが、これに限定するものではなく、孔を有する板材であれば如何なるものでもよい。
【0026】
上記説明したように、本実施形態にかかるフィルタ付ベント装置100によれば、シャワーヘッド型のノズル124を用いることにより、従来のノズルよりも細かい気泡を噴出できるため、気泡100aと液体122aとの接触面積を増大させることができ、液体中における放射性微粒子の捕捉効率を高めることができる。そして、その細かい気泡をノズル124の上方に配置された気泡細分化装置126によって細分化することにより気泡は更に微細になるため、気泡100aと液体122aとの接触面積はより増大し、放射性微粒子の捕捉性能の一層の向上が図られる。したがって、フィルタの性能に依存することなく放射性微粒子の捕捉効率を高め、ベントガスに含まれる放射性微粒子を大幅に低減することが可能となる。
【0027】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、原子炉格納容器に接続され、かかる原子炉格納容器から外部に放出されるベントガスに含まれる放射性微粒子を捕捉するフィルタ付ベント装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
100…フィルタ付ベント装置、100a…気泡、102…原子力発電プラント、104…原子炉建屋、106…原子炉格納容器、108…原子炉圧力容器、110…炉心、112a…接続経路、112b…解放経路、120a…導入管、122…タンク、122a…液体、124…ノズル、124a…上面、124b…噴出孔、126…気泡細分化装置、128…フィルタ、130…多孔板
図1
図2
図3
図4