(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
局部洗浄用水を吐出する長尺状のノズルと、前記局部洗浄用水を貯留および加熱し、前記ノズルに供給する温水タンクと、外部の給水源に接続され、前記給水源から前記温水タンクへ水を流入させる管状の給水パイプと、前記給水パイプから前記タンクへの水の流入および停止を切り替える取水弁と、前記温水タンクを固定するベースプレートと、を有し、
前記ノズルの長手方向と交差する方向を幅方向として、前記給水パイプは、前記取水弁よりも幅方向外側の位置に設けられ、前記温水タンクは、前記給水パイプの基端部として設けられた給水口の位置から前記ノズルが占める位置までの幅方向全領域にわたって設けられており、
前記ノズルは、前記温水タンクの上下方向中央よりも上方から斜め下方に延びた状態で、先端部が前記ベースプレートの前端面に立設されたベース前端面に保持され、基端部が前記温水タンクに取り付けられ、
前記ノズルと前記温水タンクは、上下方向に重なりを有し、前記温水タンクは、その重なりが存在する位置に、外側の面が前記ノズルの下側と対面し、前記ノズルの傾斜に沿った形状を有する壁面を備えていることを特徴とする人体局部洗浄装置。
前記温水タンクは、入水側タンク部材と吐水側タンク部材の2つの部材が幅方向に接合されて形成され、前記給水パイプおよび前記取水弁は前記入水側タンク部材に設けられ、前記ノズルは前記吐水側タンク部材に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の人体局部洗浄装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
人体局部洗浄装置においては、限られたスペースに設置する必要から、温水タンクの形状が、バルブやノズル等の部材の形状の制約を受けやすい。すると、温水タンクの容量が小さくなりがちであり、ノズルからの局部洗浄用水の安定な吐出や、局部洗浄の多様な形態の提供に支障が生じる場合がある。例えば、特許文献1の構成においては、洗浄水タンクの形状が、ノズル装置の位置と、開閉弁および給水接続部の位置とによる制約を受け、洗浄水タンクの幅方向の大きさが、ノズル装置と開閉弁の間に収まるものとなっている。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、温水を貯留するタンクの容量が大きく、かつ省スペース性に優れた人体局部洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる人体局部洗浄装置は、局部洗浄用水を吐出する長尺状のノズルと、前記局部洗浄用水を貯留および加熱し、前記ノズルに供給する温水タンクと、外部の給水源に接続され、前記給水源から前記温水タンクへ水を流入させる管状の給水パイプと、前記給水パイプから前記タンクへの水の流入および停止を切り替える取水弁と、を有し、前記ノズルの長手方向と交差する方向を幅方向として、前記給水パイプは、前記取水弁よりも幅方向外側の位置に設けられ、前記温水タンクは、前記給水パイプの基端部として設けられた給水口の位置から前記ノズルが占める位置までの幅方向全領域にわたって設けられていることを要旨とする。
【0008】
ここで、前記温水タンクは、入水側タンク部材と吐水側タンク部材の2つの部材が幅方向に接合されて形成され、前記給水パイプおよび前記取水弁は前記入水側タンク部材に設けられ、前記ノズルは前記吐水側タンク部材に設けられていることが好ましい。
【0009】
また、前記ノズルは、前記温水タンクの上下方向中央よりも上方から斜め下方に延びた状態で前記温水タンクに取り付けられ、前記ノズルの下側に面する前記温水タンクの壁面は、前記ノズルの傾斜に沿った形状を有するとよい。
【発明の効果】
【0010】
上記発明にかかる人体局部洗浄装置によると、温水タンクの幅が、給水口が設けられた位置とノズルが占める位置との間の全領域に及んでいる。これにより、給水口とノズルの位置の間の距離よりも幅方向に短く温水タンクが形成されている場合と比較して、温水タンクの容量を大きくすることができる。また、ノズルの位置は、便座との関係において規定されているので、給水パイプを配置できる位置も、外部の給水源との接続を行える位置として定められており、温水タンクの容量をこのように大きくすることによって、ノズル、温水タンク、給水パイプおよび取水弁を含んでなるユニットが幅方向に占める空間が大きくなる訳ではなく、温水タンクの大容量化を省スペース性と両立することができる。
【0011】
ここで、温水タンクが、入水側タンク部材と吐水側タンク部材の2つの部材が幅方向に接合されて形成され、給水パイプおよび取水弁が入水側タンク部材に設けられ、ノズルが吐水側タンク部材に設けられている場合には、給水パイプや取水弁を備えた入水側タンク部材と、ノズルを備えた吐水側タンク部材とを相互に接合するだけで、上記のような大容量化に適した温水タンクを簡便に製造することができる。
【0012】
また、ノズルが、温水タンクの上下方向中央よりも上方から斜め下方に延びた状態で温水タンクに取り付けられ、ノズルの下側に面する温水タンクの壁面が、ノズルの傾斜に沿った形状を有する場合には、ノズルを温水タンクの壁面に沿ってコンパクトに配置できるとともに、温水タンクの容量を大きくとることができる。よって、温水タンクの容量と省スペース性を一層高度に両立することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態にかかる人体局部洗浄装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態にかかる人体局部洗浄装置1は、
図7に示すように、便器100に設置され、ノズル31,32を介して温水を吐出して使用者の局部を洗浄するものである。
【0015】
人体局部洗浄装置1は、着座部となる便座3と、便座3の後方に設けられた本体部2を有してなる。本体部2は、温水の吐出や温風の発生等を行う機器類や制御部等を、ケーシング4に覆われた状態で有してなる。人体局部洗浄装置1は、本体部2の構成、とりわけ温水を貯留する温水タンク10、および温水タンク10から供給された温水を吐出するノズル31,32近傍の構造に特徴を有する。なお、本明細書において、便座3が設けられた側を前方、本体部2が設けられた側を後方とし、上下方向は重力方向に従うものとする。そして、前後方向および上下方向に直交する方向を幅方向とする。
【0016】
図1〜6に、本体部2の温水タンク10近傍の構成を、ケーシング4除いた状態で示す。
図1および
図2は異なる角度からの斜視図、
図3は入水側から見た側面図、
図4(a)は吐水側から見た側面図、
図4(b),(c)および
図5,6は所定の断面における断面図である。
【0017】
温水タンク10をはじめとする本体部2を構成する各機器や部材は、ベースプレート40に対して固定されている。ベースプレート40の前方には、便座3が回動可能に結合されている。ベースプレート40を便器100の上面後方に固定することで、本体部2と便座3が便器100に取り付けられる。
【0018】
長尺状のノズル31,32よりなるノズル対30は、便座3の幅方向中央に当たる位置に両ノズル31,32の間の中心の位置を揃え、長手方向軸を前後方向に略平行にして、配置されている。ノズル31,32は、それぞれ中空筒状のシリンダ部と、シリンダ部の中空部内に同軸状に保持されたノズル本体部(各図の状態ではシリンダ中に収容されており、不図示)とを有する。温水タンク10から供給された局部洗浄用水が、ノズル本体部の先端近傍より吐出され、人体局部を洗浄する。ノズル本体部は、シリンダ部の中空部内で進退可能となっており、局部洗浄に使用される際には、温水タンク10から供給される局部洗浄用水の水圧によって所定の位置まで前進される。局部洗浄に使用されない際には、ノズル本体部は後退してシリンダ内に収容される。2本のノズル31,32は、洗浄を行う人体部位や目的の違いによって使い分けられる(例えば、肛門洗浄用と、いわゆるビデ洗浄用)。ノズル31,32のシリンダ部の先端部31a,32aは、ベースプレート40の前端部に立設されたベース前端面41において保持されるとともに、基端部31b,32bが、温水タンク10の上下方向中央よりも上側の位置において、温水タンク10に固定されている。これにより、ノズル31,32が温水タンク10とベース前端面41の間で位置決めされ、前方に向かって斜め下に傾斜した状態で保持されている。
【0019】
温水タンク10は、中空の容器として構成され、公共水道等、人体局部洗浄装置1の外部の給水源から水を供給され、その水を貯留するとともに、ヒータ80によって加熱する。ヒータ80は、セラミックヒータのような筒状の加熱部81と、サーミスタのような温度測定手段を有してなり、温水タンク10内に挿入されて、温水タンク10内に貯留された水を所定の温度に制御して加熱するものである。ヒータ80の加熱部81は、温水タンク10の上下方向中央部よりも下方に設けられている。
【0020】
温水タンク10は、ポリプロピレン等の樹脂よりなっている。温水タンク10は、入水側タンク部材11と吐水側タンク部材12という、幅方向に分割された2つの部材よりなっている。入水側タンク部材11と吐水側タンク部材12のそれぞれの開口部の端縁には、外側に張り出した縁部11a,12aが設けられている。そして、縁部11a,12aが相互に溶着されることで、入水側タンク部材11と吐水側タンク部材12が開口部において接合され、中空の温水タンク10とされている。溶着部のなす面は、上下方向と略平行になっている。
【0021】
入水側タンク部材11には、外部の給水源から水を取り込むために、給水パイプ52、電磁弁(取水弁)51、リリーフ弁53、流入水路54が、形成されている。これらの部材が設けられた部位の構造は、
図4にとりわけ詳しく示されている。給水パイプ52は、入水側タンク部材11の側壁である入水側タンク側壁11bから幅方向外側に突出した管状の部材であり、その中空部と入水側タンク部材11の内側の空間が連通されている。給水パイプ52は、外部の給水源に接続される。そして、給水源から供給された水が、給水パイプ52の基端部(給水パイプ52と入水側タンク側壁11bとの接合部)として設けられた給水口52aを通って、温水タンク10の中に流入する。
【0022】
流入水路54は、入水側タンク部材11の内部に、入水側タンク部材11内の空間を仕切るように入水側タンク部材11と一体に形成された水路隔壁54aと、入水側タンク部材11の壁面とに挟まれた空間として設けられている。そして、水路隔壁54aは、給水パイプ52の壁面と連続しており、流入水路54内の空間は、給水パイプ52の中空部と連通している。これにより、給水パイプ52を通って給水源から供給された水は、全て流入水路54を通って温水タンク10内に流入する。ここで、入水側タンク側壁11bは、ベースプレート40の幅方向の外縁であるベース側面42よりも内側に位置しているが、給水パイプ52の先端は、継手等を使用した給水源への接続作業が行いやすいように、ベース側面42に設けられた貫通孔を通って、ベース側面42の外側に突出している。
【0023】
給水パイプ52よりも幅方向内側に位置する流入水路54の中途部位には、電磁弁51が設けられている。電磁弁51は電気信号を受けて開閉制御され、電磁弁51が開状態にある時には、給水源から流入水路54を介して温水タンク10へと水が流入する。電磁弁51が閉状態にある時には、流入水路54の途中で水の流れが遮断され、給水源から温水タンク10への水の流入が停止される。電磁弁51において、弁座が形成された樹脂よりなる弁箱51aは、入水側タンク部材11と一体に形成されている。
【0024】
流入水路54の中途部位にはさらに、リリーフ弁53が設けられている。リリーフ弁53は、開放量を調節可能なバルブであり、水の流入によって温水タンク10内の水圧が高まった際に、流入水路54内の水を便器100に捨てることで、温水タンク10内の水圧を一定に保つ役割を果たす。リリーフ弁53においても、電磁弁51と同様に、弁箱53aは、入水側タンク部材11と一体に形成されている。流入水路54には加熱されない冷水が流れ、流入水路54の外側の温水タンク10内の領域にはヒータ80で加熱された温水が満たされるが、リリーフ弁53が電磁弁51と並んで流入水路54上に設けられていることで、流入水路54を通って温水タンク10内に流入した直後の冷水を選択的に放出することができる。これにより、既に加熱された温水を放出することによる加熱効率の低下が抑制されている。リリーフ弁53から放出された水が飛散しないように、リリーフ弁53は水平方向かそれよりも下方に突出して設けられている。
【0025】
図5に示すように、吐水側タンク部材12の上下方向中央部より上方の部位には、中空筒状の吐水パイプ14,15が一体に設けられている。吐水パイプ14,15は、斜め下方に向かって突出している。そして、吐水パイプ14,15は、ノズル31,32のシリンダ部の中空部内に挿入されている。そして、シリンダ部がOリング等のシール部材(不図示)を介して吐水パイプ14,15に結合されることで、ノズル31,32が吐水側タンク部材12の前方に固定される。
【0026】
吐水側タンク部材12内の空間と吐水パイプ14,15の間には、流路切替えバルブ60が設けられている。流路切替えバルブ60は、ロータリー式と称される方式のものであり、吐水パイプ14,15のうち一方を選択して温水タンク10内の局部洗浄用水を流出させるとともに、その流出量を調整する役割を果たす。これにより、ノズル31,32のいずれか一方から選択的に、所定の流量の局部洗浄用水を吐出することができる。流路切替えバルブ60は、吐水側タンク部材12の側壁である吐水側タンク側壁12bから内側に向かって吐水側タンク側壁12bと一体に形成された中空の軸ケース65を有し、軸ケース65内には、軸部材62が軸回転可能に挿入されている。軸部材62は、吐水側タンク側壁12bから突出した操作部61に結合されたモータ(不図示)によって回転される。軸部材62には、温水タンク10内の空間と連通し、局部洗浄用水が流入する軸内空間66が形成されている。そして軸部材62には、第一の吐水パイプ14と軸内空間66を連通させる第一の連通孔63と、第二の吐水パイプ15と軸内空間66を連通させる第二の連通孔64が形成されている。第一の連通孔63と第二の連通孔64は、軸部材62の異なる回転位置に形成されており、軸部材62が所定の回転角度に回転され、第一の連通孔63と第一の吐水パイプ14の基端部の位置、または第二の連通孔64と第二の吐水パイプ15の基端部の位置が重なった際に、温水タンク10内の局部洗浄用水が軸内空間66を介して、第一のノズル31または第二のノズル32に選択的に供給される。さらに、2つの連通孔63,64の壁面には、テーパ面(第二の連通孔64については符号64aにて図示)が形成されており、軸部材62の回転角度を微調整することで、ノズル31,32へ供給される局部洗浄用水の流量を調節することができる。
【0027】
吐水側タンク部材12においては、2つの吐水パイプ14,15が設けられている位置の下方に、吐水パイプ14,15の突出方向と略平行に、斜め下方に傾斜した傾斜壁面13が形成されている。そして、基端部31b,32bを吐水パイプ14,15と同軸状に吐水側タンク部材12に固定された2本のノズル31,32は、下側部(第二のノズル32については符号32cにて図示)を傾斜壁面13に略平行に沿わせるようにして斜め下方に延びた状態で、温水タンク10とベース前端面41との間に保持されている。
【0028】
さらに、入水側タンク部材11と吐水側タンク部材12の内側の空間には、
図6に示されるように、第一の仕切板71と第二の仕切板72よりなる仕切部材70が設けられている。これらの仕切板71,72は、後方に向かって斜め下に傾斜した平板状の形状を有しており、入水側タンク部材11および吐水側タンク部材12の前方の壁面に一体に形成されている。2つの仕切板71,72の下端縁71a,72aは、温水タンク10の底面に接触しておらず、温水タンク10の底面との間に、水が通過できる空隙Gが形成されている。そして、仕切板71,72の下端縁71a,72aは、ヒータ80の加熱部81の上端部81aよりも、下方に配置されている。
【0029】
仕切部材70は、電磁弁51を介して給水パイプ52から温水タンク10に流入した冷水と、ヒータ80の加熱部81によって加熱された温水とが直接混合されないようにすることで、温水タンク10内での加熱の均一性を高めるものである。仕切板71,72の下端縁71a,72aが、加熱部81の上端部81aよりも下方に位置することで、流入水路54を通って仕切部材70よりも下方に流入した冷水が、仕切部材70によって水勢を弱められたうえで、空隙Gを通って徐々に上昇して、既に加熱された温水と徐々に混合されながら、加熱部81によって加熱を受ける。加熱された温水は、さらに上昇して、温水タンク10の上下方向中央よりも上方に設けられた吐水パイプ14,15を介して、ノズル31,32に供給される。これにより、安定した十分に高い温度に加熱された局部洗浄用水がノズル31,32から吐出される。なお、このような仕切部材70の役割に鑑みると、2枚の仕切板71,72の間の隔たりは、ない方が好ましいが、入水側タンク部材11と吐水側タンク部材12から温水タンク10を構成しているために、不可避的に生じているものである。
【0030】
以上のように、温水タンク10は、入水側タンク部材11と吐水側タンク部材12が幅方向に接合されて形成されており、電磁弁51の位置よりも幅方向外側に位置する入水側タンク側壁11bに、給水口52aを有する給水パイプ52が設けられている。また、吐水側タンク部材12の前方側にノズル31,32が固定され、かつ、吐水側タンク側壁12bから内側に向かって形成された流路切替えバルブ80と吐水パイプ14,15を介して、吐水側タンク部材12とノズル31,32が接続されていることから、吐水側タンク側壁12bは、ノズル31,32が存在する位置よりも、入水側タンク側壁11bから幅方向に離れた位置に存在することになる。つまり、温水タンク10が占める空間は、給水口52aの位置からノズル31,32が占める位置までの幅方向の全領域にわたっている。このことは、温水タンク10の容量を大きくするのに、効果を有する。
【0031】
特許文献1に示されるような従来一般の人体局部洗浄装置の温水タンクにおいては、温水タンクと別体に形成された電磁弁(特許文献1では開閉弁18)が温水タンクに接続されるが、この場合、入水側タンク側壁11bに対応する温水タンクの入水側の壁面の位置は、電磁弁の上流に設けられた給水パイプ(特許文献1では給水接続部17)および給水口の位置よりも幅方向内側となる。また、従来一般の人体局部洗浄装置の温水タンクにおいては、温水タンクとノズルが幅方向に並べて配置され、それらの間がホースやパイプ等で接続されており、吐水側タンク側壁12bに対応する温水タンクの吐水側の壁面は、ノズルが設置されている位置よりも、入水側の壁面に近い位置にある。つまり、特許文献1に示されているような従来一般の人体局部洗浄装置においては、温水タンクは、給水パイプとノズルの間の間隔よりも狭い領域しか幅方向に占めていない。これに対し、本実施形態にかかる人体局部洗浄装置1においては、温水タンク10が幅方向に占める領域が、給水口52aとノズル31,32の間の間隔と同じかそれよりも大きくなっており、温水タンク10が大きな容量を備えることができる。温水タンク10の容量が大きいと、水勢および水温が安定した局部洗浄用水をノズル31,32から吐出することができ、また、一度に多量の局部洗浄用水をノズル31,32から吐出するなど、多様な使用形態に対応することも可能となる。
【0032】
給水パイプ52の位置は、公共水道等の給水源に接続可能な位置として定まっており、ノズル31,32の位置も、便座3に対して幅方向中央の位置と決まっている。よって、温水タンク10を上記のように幅方向に大きく形成しても、温水タンク10(および各種バルブなど温水タンク10と一体に形成された各部材)とノズル31,32からなるユニットが、幅方向に占める空間が大きくなる訳ではない。これにより、温水タンク10の大容量化と省スペース化を両立することができ、便座3の後方の限られた空間を有効に利用しながら、温水タンク10の容量を大きくすることができる。なお、本実施形態においては、給水パイプ52を給水源に接続しやすいように、給水パイプ52の先端部がベース側面42よりも外側に突出しているが、必ずしもその必要はなく、給水源側の接続部の位置および形状によっては、給水パイプ52全体がベース側面42よりも内側に収容されていてもよい。また、給水パイプ52は、図示したようなまっすぐな筒状のものに限られず、エルボー形等、任意の管形状を有していてもよい。
【0033】
また、本実施形態にかかる人体局部洗浄装置1においては、ヒータ80の加熱部81が温水タンク10の上下方向中央部よりも下方に設けられ、ノズル31,32が接続された吐水パイプ14,15が温水タンク10の上下方向中央部よりも上方に設けられている。この構成と、仕切部材70の構成により、加熱部81で加熱されて吐水パイプ14,15の位置まで上昇した温水を、ムラがなく安定で、十分に高い温度でノズル31,32から吐出することができる。このような利点を得るための要請から、ノズル31,32は、基端部31b,32bを温水タンク10の幅方向中央よりも上方に固定され、斜め下方に延出するように保持されている。この状況で、ノズル31,32の傾斜に沿った温水タンク10の傾斜壁面13が、ノズル31,32の下側部に面して形成されていることによって、ノズル31,32が、温水タンク10との位置関係において、コンパクトに配置されている。同時に、傾斜壁面13を形成しておくことで、ノズル31,32の下側の空間を、局部洗浄用水を貯留できる空間として有効に利用することができている。このように、温水タンク10が傾斜壁面13を有することで、一層の温水タンク10の大容量化と省スペース化が達成されている。
【0034】
従来一般の人体局部洗浄装置においては、温水タンクと別体に、電磁弁、リリーフ弁、流路切替えバルブ、ノズルが設けられ、それら相互の間をホースやパイプ等の管状接続部材で接続している。これに対し、本実施形態にかかる人体局部洗浄装置1においては、温水タンク10に、給水パイプ52、水路隔壁54a、電磁弁51、リリーフ弁53、流路切替えバルブ60、吐水パイプ14,15が全て一体に形成されている。そして、ノズル31,32が、吐水パイプ14,15を介して温水タンク10に直接固定され、接続されている。この構成により、入口である給水パイプ52から出口であるノズル31,32に至る水流路を、ホースやパイプ等、別体の接続部材を全く用いることなく構築することが可能となっている。これにより、温水タンク10およびノズル31,32周辺の構造が簡素になり、省スペース化と接続に要する部品コストの削減が達成されるとともに、タンク、ノズルおよび周辺部材の組み上げが容易に行えるようになっている。さらに、従来は温水タンク、ノズル、そして各バルブで別々に行っていた気密検査を、給水パイプ52から温水タンク10を通ってノズル31,32に至る水流路全体で一括して行うことができるので、検査工程に要する時間とコストが大幅に削減されている。
【0035】
上記のように、本実施形態にかかる人体局部洗浄装置1においては、温水タンク10が入水側タンク部材11と吐水側タンク部材12の2つの部材に分割されて構成されている。温水タンク10全体を1つの部材より形成しても、温水タンク10を、給水口52aの位置からノズル31,32の位置に及ぶ空間を幅方向に占める大容量のものとすることや、傾斜壁面13を有したものとすることは可能である。しかし、給水パイプ52、水路隔壁54a、電磁弁51、リリーフ弁53、流路切替えバルブ60、吐水パイプ14,15、そして仕切板71,72を、温水タンク10の壁面と一体に形成することを考えると、温水タンク10は2つに分割された部材よりなることが好適である。それら各部材を一体に設けた入水側タンク部材11と吐水側タンク部材12を、金型成形によって別々に形成したうえで、両者を幅方向に接合することで、簡便に温水タンク10を形成することができるからである。
【0036】
また、傾斜壁面13や吐水パイプ14,15、仕切板71,72が、傾斜を有して形成されていることに鑑みると、温水タンク10は、上下に2つに分割されて構成されているよりも、上記のように幅方向に2つに分割されて構成されている方が好ましい。その方が、これら傾斜を有する部材を一体に備えたタンク部材を、割型を用いて成形しやすいからである。この意味で、電磁弁51とリリーフ弁53は、相互に平行に設けられていることが好ましい。また、給水パイプ52および水路隔壁54aは、仕切板71,72と平行になっていることが好ましい。
【0037】
(その他の実施形態)
上記実施形態にかかる人体局部洗浄装置1には、以下のような変形形態が考えられる。
(1)上記実施形態においては、シリンダ部とノズル本体部よりなり、局部洗浄用水の水圧によってノズル本体部がシリンダの中で進退運動する水圧式ノズル31,32が設けられた。そして、ノズル31,32(シリンダ部)の基端部31b,32bが吐水パイプ14,15に接続され、温水タンク10に固定された。しかし、水圧式ノズル31,32の代わりに、シリンダを有さず、露出したノズルがモータに駆動されて進退運動を行う電動式ノズルを採用することもできる。この場合には、ノズルに取り付けられたピニオンと噛み合うラックを備えノズルを保持するガイド部材を、温水タンク10に固定するとともに、ガイド部材に固定されノズルに洗浄用水を供給するための水の入口となる給水アダプタを吐水パイプ14,15に接続するとよい。
【0038】
(2)上記実施形態においては、流路切替えバルブとして、軸部材62の軸回転によって流路の選択と流量の調整を行うロータリー式の流路切替えバルブ60が使用された。しかし、2つの吐水パイプ14,15と連通可能な2つの貫通孔を有するディスク状部材を面内回転させることで流路の選択と流量の調整が可能な、ディスク式の流路切替えバルブを用いることもできる。この場合も、ディスク状部材を受容するケース部材を、温水タンク10の壁面と一体に形成することが好ましい。
【0039】
(3)上記実施形態においては、加熱効率の向上を図るために、流入水路54や仕切部材70が設けられたが、これらは必ずしも設けられなくてもよい。また、設けられる場合にも、温水タンク10と一体に形成されている必要はない。同様に、各種バルブやパイプも、温水タンク10と一体に形成されていなくてもよい。また、リリーフ弁53を備える代わりに、電磁弁51よりも上流に、水を捨てることなく通過する水の流量を調整できるレギュレータを設けてもよい。
【0040】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。