(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明にかかる車両用灯具の実施形態(実施例)の2例について図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
図2〜
図7、
図10において、符号「HL−HR」は、スクリーンの左右の水平線を示す。また、
図5(A)、(B)、(C)は、コンピュータシミュレーションにより作図されたスクリーン上の配光パターンを簡略化して示す等光度曲線の説明図である。この等光度曲線の説明図において、中央の等光度曲線は、高光度を示し、外側の等光度曲線は、低光度を示す。この明細書、別紙の特許請求の範囲において、前、後、上、下、左、右は、この発明にかかる車両用灯具を車両に搭載した際の前、後、上、下、左、右である。
【0021】
(実施形態1の構成の説明)
図1〜
図6は、この発明にかかる車両用灯具の実施形態1を示す。以下、この実施形態1にかかる車両用灯具の構成について説明する。図中、符号1は、この実施形態1にかかる車両用灯具(たとえば、コーナリングランプなど)である。前記車両用灯具1は、車両(図示せず)の前部の左右両端部に搭載されている。以下、車両の前部の右側に搭載される右側の前記車両用灯具1の構成について説明する。なお、車両の前部の左側に搭載される左側の前記車両用灯具の構成は、この実施形態の前記車両用灯具1の構成とほぼ同一であるから説明を省略する。
【0022】
(ランプユニットの説明)
前記車両用灯具1は、ランプハウジング(図示せず)と、ランプレンズ(図示せず)と、半導体型光源2と、レンズ3と、ヒートシンク部材(図示せず)と、取付部材(図示せず)と、を備えるものである。
【0023】
前記半導体型光源2および前記レンズ3および前記ヒートシンク部材および前記取付部材は、ランプユニットを構成する。前記ランプハウジングおよび前記ランプレンズは、灯室(図示せず)を画成する。前記ランプユニットは、前記灯室内に配置されていて、かつ、上下方向用光軸調整機構(図示せず)および左右方向用光軸調整機構(図示せず)を介して前記ランプハウジングに取り付けられている。なお、前記灯室内には、前記ランプユニット以外のランプユニット、たとえば、ロービーム用ヘッドランプ、ハイビーム用ヘッドランプ、フォグランプ、ローハイ用ヘッドランプ、ターンシグナルランプ、クリアランスランプ、デイタイムランニングランプなどが配置されている場合がある。
【0024】
(半導体型光源2の説明)
前記半導体型光源2は、
図1に示すように、この例では、たとえば、LED、OELまたはOLED(有機EL)、LD(半導体レーザー、レーザーダイオード、ダイオードレーザー)などの自発光半導体型光源である。前記半導体型光源2は、発光チップ(LEDチップ)20を封止樹脂部材で封止したパッケージ(LEDパッケージ)から構成されている。前記パッケージは、基板(図示せず)に実装されている。前記基板に取り付けられているコネクタ(図示せず)を介して前記発光チップ20には、電源(バッテリー)からの電流が供給される。前記半導体型光源2は、前記ヒートシンク部材に取り付けられている。
【0025】
前記発光チップ20は、平面矩形形状(平面長方形状)をなす。すなわち、4個の正方形のチップをX軸(
図8参照)の方向(水平方向)に配列してなるものである。なお、2個もしくは3個もしくは5個以上の正方形のチップ、あるいは、1個の長方形のチップ、あるいは、1個の正方形のチップ、を使用しても良い。前記発光チップ20の正面この例では長方形の正面が発光面21をなす。前記発光面21は、基準光軸(前記車両用灯具1の基準光軸、前記レンズ3の基準光軸、基準軸)Zの前側に向いている。前記発光チップ20の前記発光面21の中心Oは、前記レンズ3の基準焦点Fもしくはその近傍に位置し、かつ、前記基準光軸Z上もしくはその近傍に位置する。
【0026】
図1(および
図8)において、X、Y、Zは、直交座標(X−Y−Z直交座標系)を構成する。X軸は、前記発光チップ20の前記発光面21の中心Oを通る左右方向の水平軸である。また、Y軸は、前記発光チップ20の前記発光面21の中心Oを通る上下方向の鉛直軸である。さらに、Z軸は、前記発光チップ20の前記発光面21の中心Oを通る法線(垂線)、すなわち、前記X軸および前記Y軸と直交する前後方向の軸(前記基準光軸Z)である。
【0027】
(レンズ3の説明)
前記レンズ3は、
図1に示すように、入射面30と、出射面31と、から構成されている。前記レンズ3の前記入射面30および前記出射面31は、半導体型光源2の発光面21からの光L1U、L1C、L1D、L2U、L2D(
図1(A)参照)を配光制御して所定の配光パターン、
図2(C)、
図5(C)に示すコーナリングランプ用配光パターンCPを形成するものである。前記の配光制御は、所定の波長の光、この例では、波長555nmの黄緑色光YGに基づいて設計されている。このために、前記レンズ3からの出射光は、前記レンズ3の色収差により、
図1、
図6に示すように、前記黄緑色光YGに対して、青色光Bや赤色光Rなどの有色光が分光する。ここで、前記レンズ3の前記基準光軸Zから上側の部分からの出射光は、黄緑色光YGに対して赤色光Rが上向きでかつ青色光Bが下向きで出射する。一方、前記レンズ3の前記基準光軸Zから下側の部分からの出射光は、黄緑色光YGに対して赤色光Rが下向きでかつ青色光Bが上向きで出射する。
【0028】
前記分光幅(前記黄緑色光YGに対して、前記青色光Bと前記赤色光Rとの間の幅)は、前記レンズ3の前記基準光軸Zを含む部分および前記基準光軸Zの近傍の部分において最小幅であり、前記基準光軸Zから前記レンズ3の上縁および下縁に行くに従って徐々に大きくなり、前記レンズ3の上縁と下縁とにおいて最大幅となる。
【0029】
前記入射面30は、前記レンズ3の前記基準光軸Zに対して下において2つに区画されている。このために、上の入射面30Uの上下幅は、下の入射面30Dの上下幅より大きい(広い)。前記上の入射面30Uと前記下の入射面30Dとは、交差線32を介して隣り合う。すなわち、前記上の入射面30Uと前記下の入射面30Dとは、調整された面であってトリム面(折れ面)から構成されている。前記上の入射面30Uは、前記入射面30の上縁から前記交差線32まで連続して設けられている。一方、前記下の入射面30Dは、前記入射面30の下縁から前記交差線32まで連続して設けられている。一方、前記出射面31は、ひとつの面からなる。このために、前記出射面31は、前記交差線32を介して前記上の入射面30Uと前記下の入射面30Dとのように、明確に区画されていない。
【0030】
前記上の入射面30Uを有する上のレンズ部3Uは、
図2(A)、
図5(A)に示す第1部分配光パターンP1を形成する。一方、前記下の入射面30Dを有する下のレンズ部3Dは、
図2(B)、
図5(B)に示す第2部分配光パターンP2を形成する。
【0031】
前記下の入射面30Dの上下幅は、前記上の入射面30Uの上下幅より小さい(狭い)ので、前記第2部分配光パターンP2の上下幅は、前記第1部分配光パターンP1の上下幅よりも小さい(狭い)。しかも、前記第2部分配光パターンP2は、前記第1部分配光パターンP1と重なる。すなわち、前記第1部分配光パターンP1と前記第2部分配光パターンP2とは、合成(重畳)して、前記コーナリングランプ用配光パターンCPを形成する。
【0032】
前記上のレンズ部3Uの上部(前記レンズ3の上端近傍部)は、半導体型光源2の発光面21からの光L1U(
図1(A)参照)により、前記第1部分配光パターンP1の上縁の部分(
図2(A)中の破線で囲まれている部分)であってカットオフラインCL1を有する部分P1Uを形成する。前記カットオフラインCL1は、
図6(A)に示すように、スクリーンの左右の水平線HL−HRよりも、下に約1°に位置する。
【0033】
前記上のレンズ部3Uの中部(前記基準光軸Zを含む部分および前記基準光軸Z近傍の部分)は、半導体型光源2の発光面21からの光L1C(
図1(A)参照)により、前記第1部分配光パターンP1の中間の部分(
図2(A)中の破線で囲まれている部分)P1Cを形成する。
【0034】
前記上のレンズ部3Uの下端(前記交差線32を含む部分および前記交差線32より上の近傍の部分)は、半導体型光源2の発光面21からの光L1D(
図1(A)参照)により、前記第1部分配光パターンP1の下縁の部分(
図2(A)中の破線で囲まれている部分)P1Dを形成する。
【0035】
前記下のレンズ部3Dの上部(前記交差線32を含む部分および前記交差線32より下の近傍の部分)は、半導体型光源2の発光面21からの光L2U(
図1(A)参照)により、前記第2部分配光パターンP2の上縁の部分(
図2(B)中の破線で囲まれている部分)であってカットオフラインCL2を有する部分P2Uを形成する。前記カットオフラインCL2は、
図6(B)に示すように、スクリーンの左右の水平線HL−HRよりも、下に約1°に位置する。
【0036】
前記下のレンズ部3Dの下端(前記レンズ3の下端もしくは下縁の部分)は、半導体型光源2の発光面21からの光L2D(
図1(A)参照)により、前記第2部分配光パターンP2の下縁の部分(
図2(B)中の破線で囲まれている部分)P2Dを形成する。
【0037】
前記第1部分配光パターンP1と前記第2部分配光パターンP2とは、重なり合って前記コーナリングランプ用配光パターンCPを形成する。このとき、前記第1部分配光パターンP1の上縁の部分と、前記第2部分配光パターンP2の上縁の部分とは、重なり合う。この結果、前記コーナリングランプ用配光パターンCPの上縁の部分には、カットオフラインCLを有する。
【0038】
前記上のレンズ部3Uの上部からは、
図3(A)に示す前記発光面21の像I1Uが前記第1部分配光パターンP1の上縁の部分P1Uに照射される。前記上のレンズ部3Uの中部からは、
図3(B)に示す前記発光面21の像I1Cが前記第1部分配光パターンP1の中間の部分P1Cに照射される。前記上のレンズ部3Uの下端からは、
図3(C)に示す前記発光面21の像I1Dが前記第1部分配光パターンP1の下縁の部分P1Dに照射される。
【0039】
前記上のレンズ部3Uの上部から照射される前記像I1Uの上下幅は、前記上のレンズ部3Uの中部から照射される前記像I1Cの上下幅および前記上のレンズ3Uの下端から照射される前記像I1Dの上下幅よりも小さい(狭い)。前記上のレンズ部3Uの中部から照射される前記像I1Cの上下幅は、前記上のレンズ部3Uの上部から照射される前記像I1Uの上下幅および前記上のレンズ3Uの下端から照射される前記像I1Dの上下幅よりも大きい(広い)。
【0040】
前記上のレンズ部3Uから照射される前記第1部分配光パターンP1は、前記像I1U、I1C、I1Dに基づいて、
図5(A)に示すように、前記カットオフラインCL1を有する上縁の部分P1Uの光度(照度)が高く、中間の部分P1Cから下縁の部分P1Dにかけての光度(照度)が徐々に低くなるように配光制御されている。すなわち、前記第1部分配光パターンP1の光度(照度)は、前記像I1U、I1C、I1Dに基づいて、
図5(A)に示すように、上縁の部分P1Uから中間の部分P1Cを経て下縁の部分P1Dにかけて徐々に低くなるように変化(グラデーション)するように配光制御されている。
【0041】
前記下のレンズ部3Dの上部からは、
図4(A)に示す前記発光面21の像I2Uが前記第2部分配光パターンP2の上縁の部分P2Uに照射される。前記下のレンズ部3Dの下端からは、
図4(B)に示す前記発光面21の像I2Dが前記第2部分配光パターンP2の下縁の部分P2Dに照射される。
【0042】
前記下のレンズ部3Dの上部から照射される前記像I2Uの上下幅は、前記下のレンズ部3Dの下端から照射される前記像I2Dの上下幅よりも大きい(広い)。前記下のレンズ部3Dから照射される前記第2部分配光パターンP2は、前記像I2U、I2Dに基づいて、
図5(B)に示すように、前記カットオフラインCL2を有する上縁の部分P2Uの光度(照度)が高く、下縁の部分P2Dの光度(照度)が徐々に低くなるように配光制御されている。すなわち、前記第2部分配光パターンP2の光度(照度)は、前記像I2U、I2Dに基づいて、
図5(B)に示すように、上縁の部分P2Uから中間の部分を経て下縁の部分P2Dにかけて徐々に低くなるように変化(グラデーション)するように配光制御されている。
【0043】
この結果、前記第1部分配光パターンP1と前記第2部分配光パターンP2とを合成(重畳)してなる前記コーナリングランプ用配光パターンCPは、
図5(C)に示すように、前記カットオフラインCLを有する上縁の部分の光度(照度)が高く、中間の部分から下縁の部分にかけての光度(照度)が徐々に低くなる。すなわち、前記コーナリングランプ用配光パターンCPの光度(照度)は、
図5(C)に示すように、上縁の部分から中間の部分を経て下縁の部分にかけて徐々に低くなるように変化(グラデーション)する。
【0044】
(実施形態1の作用の説明)
この実施形態1にかかる車両用灯具1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0045】
半導体型光源2を点灯する。すると、半導体型光源2の発光面21からの光L1U、L1C、L1D、L2U、L2Dは、レンズ3の入射面30からレンズ3中に屈折して入射する。このとき、入射光は、入射面30において配光制御される。その入射光は、レンズ3の出射面31から外部に屈折して出射する。このとき、出射光は、出射面31において配光制御される。その出射光は、コーナリングランプ用配光パターンCPとして車両の前方の側方(この例では、右側方)に照射される。
【0046】
ここで、発光面21からの光L1Uは、上のレンズ部3Uの上の入射面30Uの上部から入射してかつ上のレンズ部3Uの出射面31の上部から、
図3(A)に示す像I1Uとして、出射する。このとき、この出射光は、
図1(A)に示すように、レンズ3の色収差による分光色として出射する。すなわち、黄緑色光YGに対して赤色光Rが上向きでかつ青色光Bが下向きで出射する。この出射光の分光幅W1は、大きい(広い)。この出射光は、
図2(A)、
図5(A)に示す第1部分配光パターンP1のカットオフラインCL1を有する上縁の部分P1Uを形成する。
【0047】
また、発光面21からの光L1Cは、上のレンズ部3Uの上の入射面30Uの中部から入射してかつ上のレンズ部3Uの出射面31の中部(基準光軸Z近傍部)から、
図3(B)に示す像I1Cとして、出射する。このとき、この出射光は、
図1(A)に示すように、レンズ3の色収差による分光色として出射する。すなわち、黄緑色光YGに対して赤色光Rが上向きでかつ青色光Bが下向きで出射する。この出射光の分光幅は、小さい(狭い)。この出射光は、
図2(A)、
図5(A)に示す第1部分配光パターンP1の中間の部分P1Cを形成する。
【0048】
さらに、発光面21からの光L1Dは、上のレンズ部3Uの上の入射面30Uの下端から入射してかつ上のレンズ部3Uの出射面31の基準光軸Zより下方の部分から、
図3(C)に示す像I1Dとして、出射する。このとき、この出射光は、
図1(A)に示すように、レンズ3の色収差による分光色として出射する。すなわち、黄緑色光YGに対して赤色光Rが上向きでかつ青色光Bが下向きで出射する。この出射光の分光幅は、上のレンズ部3Uの中部からの出射光の分光幅より大きく(広く)、かつ、上のレンズ部3Uの上部からの出射光の分光幅W1より小さい(狭い)。この出射光は、
図2(A)、
図5(A)に示す第1部分配光パターンP1の下縁の部分P1Dを形成する。
【0049】
一方、発光面21からの光L2Uは、下のレンズ部3Dの下の入射面30Dの上部から入射してかつ下のレンズ部3Dの出射面31の基準光軸Zより下方の部分であって光L1Dの出射部分より上方の部分から、
図4(A)に示す像I2Uとして、出射する。このとき、この出射光は、
図1(A)に示すように、レンズ3の色収差による分光色として出射する。すなわち、黄緑色光YGに対して赤色光Rが下向きでかつ青色光Bが上向きで出射する。この出射光の分光幅W2は、
図6(A)、(B)に示すように、上のレンズ部3Uの上部からの出射光の分光幅W1より小さい(狭い)。この出射光は、
図2(B)、
図5(B)に示す第2部分配光パターンP2のカットオフラインCL2を有する上縁の部分P2Uを形成する。
【0050】
また、発光面21からの光L2Dは、下のレンズ部3Dの下の入射面30Dの下端から入射してかつ下のレンズ部3Dの出射面31の下部から、
図4(B)に示す像I2Dとして、出射する。このとき、この出射光は、
図1(A)に示すように、レンズ3の色収差による分光色として出射する。すなわち、黄緑色光YGに対して赤色光Rが下向きでかつ青色光Bが上向きで出射する。この出射光の分光幅は、下のレンズ部3Dの上部からの出射光の分光幅W2より大きい。この出射光は、
図2(B)、
図5(B)に示す第2部分配光パターンP2の下縁の部分P2Dを形成する。
【0051】
上のレンズ部3Uから照射された第1部分配光パターンP1と、下のレンズ部3Dから照射された第2部分配光パターンP2とは、合成されて、
図2(C)、
図5(C)に示すコーナリングランプ用配光パターンCPを形成する。コーナリングランプ用配光パターンCPの上縁の部分には、カットオフラインCLを有する。
【0052】
このとき、上のレンズ部3Uの上部から分光されて出射された上向きの赤色光Rおよび下向きの青色光Bと、下のレンズ部3Dの上部から分光されて出射された下向きの赤色光Rおよび上向きの青色光Bとは、混合して目立たなくなる。すなわち、レンズ3の色収差による分光色が目立たなくなる。
【0053】
(実施形態1の効果の説明)
この実施形態1にかかる車両用灯具1は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0054】
この実施形態1にかかる車両用灯具1は、レンズ直射型であるから、半導体型光源2からの光LU、LC、LDを、レンズ3に直接入射させてかつそのレンズ3からコーナリングランプ用配光パターンCPとして出射(照射)させるものである。このために、設計通りに、下のレンズ部3Dの下部が、第1部分配光パターンP1の上縁と重なる第2部分配光パターンP2の上縁を形成することができる。これにより、設計通りに、上のレンズ部3Uの上部により形成される第1部分配光パターンP1の上縁における分光色と、下のレンズ部3Dの下部により形成される第2部分配光パターンP2の上縁における分光色とが、混合して効率良く分光色を目立たなくすることができる。
【0055】
すなわち、
図6(A)に示す第1部分配光パターンP1のカットオフラインCL1(配光制御の設計基準となっている黄緑色光YG)よりも上の赤色光Rと、
図6(B)に示す第2部分配光パターンP2のカットオフラインCL2(配光制御の設計基準となっている黄緑色光YG)よりも上の青色光Bとは、混合して目立たなくなる。
【0056】
また、
図6(A)に示す第1部分配光パターンP1のカットオフラインCL1よりも下の青色光Bは、
図6(B)に示す第2部分配光パターンP2のカットオフラインCL2よりも下の赤色光RおよびカットオフラインCL2よりも下方の出射光と混合して目立たなくなる。一方、
図6(B)に示す第2部分配光パターンP2のカットオフラインCL2よりも下の赤色光Rは、
図6(A)に示す第1部分配光パターンP1のカットオフラインCL1よりも下の青色光BおよびカットオフラインCL1よりも下方の出射光と混合して目立たなくなる。
【0057】
この実施形態1にかかる車両用灯具1は、上の入射面30Uと下の入射面30Dとが交差線32を介して隣り合うものであるから、レンズ3の入射面30において段差がない。この結果、レンズ3の成形金型の構造が簡単となり、成形金型の耐久性が向上する。しかも、レンズ3を簡単に成形することができ、製造コストを安価にすることができる。
【0058】
この実施形態1にかかる車両用灯具1は、
図5(C)に示すように、コーナリングランプ用配光パターンCPのカットオフラインCLを有する上縁の部分の光度(照度)が高いので、遠方の視認性が向上する。これにより、交通安全に貢献することができる。
【0059】
しかも、この実施形態1にかかる車両用灯具1は、
図5(C)に示すように、コーナリングランプ用配光パターンCPのカットオフラインCLを有する上縁の部分の光度(照度)が高く、中間の部分から下縁の部分にかけての光度(照度)が徐々に低くなる。この結果、ドライバーから見て、コーナリングランプ用配光パターンCPの下縁の部分および外側(右側)の部分の明るさが徐々に変化(グラデーション)して暗くなるので、違和感がなく、視認性が向上するので、交通安全に貢献することができる。
【0060】
この実施形態1にかかる車両用灯具1は、第1部分配光パターンP1の光度(照度)を、像I1U、I1C、I1Dに基づいて、
図5(A)に示すように、上縁の部分P1Uから中間の部分P1Cを経て下縁の部分P1Dにかけて徐々に低くなるように変化(グラデーション)するように配光制御しているものである。このために、コーナリングランプ用配光パターンCPの配光設計が容易である。
【0061】
この実施形態1にかかる車両用灯具1は、レンズ3の出射面31がひとつの面からなるので、出射面31には交差線などがなく、見栄えが良い。
【0062】
(実施形態2の構成の説明)
図7〜
図10は、この発明にかかる車両用灯具の実施形態2を示す。以下、この実施形態2にかかる車両用灯具の構成について説明する。図中、
図1〜
図6と同符号は、同一のものを示す。
【0063】
この実施形態2の車両用灯具は、
図8、
図9に示すように、青色の光を放射する発光チップ20に黄色の蛍光体22を覆うものである。このために、上のレンズ部3Uから照射される第1部分配光パターンP1のカットオフラインCL1(配光制御の設計基準となっている黄緑色光YG)よりも上には、
図7(A)に示すように、黄色の蛍光体22による黄色光(
図10(A)中の破線を参照)YEが強い。一方、下のレンズ部3Dから照射される第2部分配光パターンP2のカットオフラインCL2(配光制御の設計基準となっている黄緑色光YG)よりも下には、
図7(B)に示すように、黄色の蛍光体22による黄色光YEが強い。
【0064】
また、第2部分配光パターンP2の下縁には、黄色の蛍光体22による黄色光YE(
図10(B)中の破線を参照)がやや強い。一方、第1部分配光パターンP1の下縁は、拡散されているので、第1部分配光パターンP1の下縁の黄色光は、やや弱く目立たない。
【0065】
この実施形態2の車両用灯具は、
図10に示すように、第2部分配光パターンP2の上縁のカットオフラインCL2が第1部分配光パターンP1の上縁のカットオフラインCL1よりも上に位置する。すなわち、第1部分配光パターンP1のカットオフラインCL1とスクリーンの左右の水平線HL−HRとの間の上下角度(上下幅)θ1°は、この例では
図7(A)に示すように約1°であり、第2部分配光パターンP2のカットオフラインCL2とスクリーンの左右の水平線HL−HRとの間の上下角度(上下幅)θ2°この例では
図7(B)に示すように約0.8°よりも大きい。
【0066】
(実施形態2の作用効果の説明)
この実施形態2の車両用灯具は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用効果について説明する。
【0067】
半導体型光源2を点灯する。すると、上のレンズ部3Uから
図10(A)に示すカットオフラインCL1を有する第1部分配光パターンP1が照射される。また、下のレンズ部3Dから
図10(B)に示すカットオフラインCL2を有する第2部分配光パターンP2が照射される。
【0068】
そして、カットオフラインCL1を有する第1部分配光パターンP1とカットオフラインCL2を有する第2部分配光パターンP2とが合成されて、
図10(C)に示すコーナリングランプ用配光パターンCPが形成される。このとき、第2部分配光パターンP2のカットオフラインCL2が第1部分配光パターンP1のカットオフラインCL1よりも上に位置する。このために、第1部分配光パターンP1の黄色光YEは、第2部分配光パターンP2のカットオフラインCL2よりも上の青色光Bと混合して、目立たなくなる。一方、第2部分配光パターンP2の黄色光YEは、第1部分配光パターンP1のカットオフラインCL1よりも下の青色光BおよびカットオフラインCL1よりも下方の出射光と混合して、目立たなくなる。また、第2部分配光パターンP2の下縁の黄色光YEは、第1部分配光パターンP1の中間の部分の光と混合して、目立たなくなる。なお、第1部分配光パターンP1の下縁は、拡散されているので、第1部分配光パターンP1の下縁の黄色光は、目立たない。
【0069】
(実施形態1、2以外の例の説明)
この実施形態1、2においては、コーナリングランプについて説明するものである。ところが、この発明においては、コーナリングランプ以外の車両用灯具、たとえば、ロービーム用ヘッドランプ、ハイビーム用ヘッドランプ、フォグランプなどの車両用灯具に使用することができる。
【0070】
ロービーム用ヘッドランプは、上縁にカットオフラインCLを有するコーナリングランプ用配光パターンCPを照射するコーナリングランプと同様に、上縁にカットオフラインを有するロービーム配光パターンを照射するものである。このために、ロービーム用ヘッドランプの場合は、コーナリングランプの場合と同様に、ロービーム配光パターンのカットオフラインの上縁の分光色を目立たなくするものである。
【0071】
一方、ハイビーム用ヘッドランプは、上縁にカットオフラインCLを有するコーナリングランプ用配光パターンCPを照射するコーナリングランプ、また、上縁にカットオフラインを有するロービーム配光パターンを照射するロービーム用ヘッドランプと異なり、上縁にカットオフラインを有しないハイビーム配光パターンを照射するものである。このハイビーム配光パターンは、ほぼ中央部に最大光度帯(最大照度帯、ホットゾーン)を有し、この最大光度帯から周辺に行くに従って光度(照度)が徐々に低下していく配光パターンである。このハイビーム配光パターンの下縁は、車両用灯具の取付位置の高さが路面から約80cmの場合において、車両から前方約15mの路面に位置する。このために、ハイビーム配光パターンを照射時において、車両から前方約15mの路面には、ハイビーム配光パターンの下縁の分光色が目立つ場合がある。そこで、ハイビーム用ヘッドランプの場合は、コーナリングランプの場合やロービーム用ヘッドランプの場合と異なり、ハイビーム配光パターンの下縁の分光色を目立たなくするものである。
【0072】
また、この実施形態1、2においては、レンズ3の入射面30を上下に2つに区画するものである。ところが、この発明においては、レンズ3の入射面30を上下に3つ以上に区画しても良い。この場合においては、上のレンズ部から照射される第1部分配光パターンと、下のレンズ部から照射される第2部分配光パターンと、中間の1個のレンズ部もしくは複数個のレンズ部から照射される1個の中間配光パターンもしくは複数個の配光パターンと、を合成して所定の配光パターンが形成される。
【0073】
さらに、この実施形態1、2においては、レンズ3の入射面30を上下に少なくとも2つに区画するものである。ところが、この発明においては、レンズ3の出射面31を上下に少なくとも2つに区画しても良い。
【0074】
さらにまた、この実施形態1、2においては、レンズ3の入射面30をレンズ3の基準光軸Zに対して下において上下に2つに区画するものである。ところが、この発明においては、レンズ3の入射面30あるいは出射面31をレンズ3の基準光軸Zに対して上において上下に2つに区画するものであっても良い。
【0075】
さらにまた、この発明においては、上のレンズ部3Uの上部よりも上の部分(すなわち、レンズ3の上端部分)に、オーバーヘッドサイン配光パターンを形成するレンズ部を形成しても良い。