(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6409269
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】送液装置およびその検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/85 20060101AFI20181015BHJP
G01N 21/892 20060101ALI20181015BHJP
B05C 5/02 20060101ALI20181015BHJP
B05C 11/00 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
G01N21/85 B
G01N21/892 A
B05C5/02
B05C11/00
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-244003(P2013-244003)
(22)【出願日】2013年11月26日
(65)【公開番号】特開2015-102456(P2015-102456A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年10月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】大川 ちひろ
【審査官】
越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−273309(JP,A)
【文献】
特開2004−074028(JP,A)
【文献】
特開2003−247949(JP,A)
【文献】
特開平04−156972(JP,A)
【文献】
特開2010−125422(JP,A)
【文献】
特開2010−264329(JP,A)
【文献】
特開2014−151301(JP,A)
【文献】
特開2014−065011(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第2006−0020513(KR,A)
【文献】
特開2006−073996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84−21/958
B05C 5/00− 5/04
B05C 7/00−21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送装置によって搬送される基材と、前記基材に向かって液状物を間欠的に吐出する吐出口との隙間に、光源から光を照射するステップと、
前記光源から照射されて前記隙間を透過した光を検出し、その光検出結果に基づいて前記隙間内の異物の有無を判定するステップと、
を含み、
前記光を照射するステップは、前記基材の、前記搬送装置による搬送方向に直交する幅方向に沿って光を照射することを含み、
前記異物の有無を判定するステップは、前記基材の前記幅方向における光検出結果が、予め決められた許容範囲以上の区間にわたって不連続であった場合に、異物が存在していると判断することによって、前記基材の前記幅方向における光検出結果の連続性に基づいて異物の有無を判定することを含む、送液装置の検査方法。
【請求項2】
搬送装置によって搬送される基材と、前記基材に向かって液状物を間欠的に吐出する吐出口との隙間に、光源から光を照射するステップと、
前記光源から照射されて前記隙間を透過した光を検出し、その光検出結果に基づいて前記隙間内の異物の有無を判定するステップと、
を含み、
前記光を照射するステップは、前記基材の、前記搬送装置による搬送方向に直交する幅方向の1つまたは複数の特定の位置に連続的に光を照射することを含み、
前記異物の有無を判定するステップは、前記基材の前記特定の位置での光検出結果の経時的な変化に基づいて異物の有無を判定することを含む、送液装置の検査方法。
【請求項3】
前記異物の有無を判定するステップは、前記基材の前記特定の位置での光検出結果が、予め決められた許容範囲以上の経時的な変化を生じた場合に、異物が存在していると判断することを含む、請求項2に記載の送液装置の検査方法。
【請求項4】
搬送装置によって搬送される基材と、前記基材に向かって液状物を間欠的に吐出する吐出口との隙間に、光源から光を照射するステップと、
前記光源から照射されて前記隙間を透過した光を検出し、その光検出結果に基づいて前記隙間内の異物の有無を判定するステップと、
を含み、
前記光検出結果の変動が基準値よりも小さい場合に、前記搬送装置による前記基材の搬送と前記吐出口からの前記基材への前記液状物の吐出を中断して、前記基材と前記吐出口とを相対的に近接させて前記隙間を狭くするステップを含む、送液装置の検査方法。
【請求項5】
前記光を照射するステップは、前記基材の、前記搬送装置による搬送方向に直交する幅方向に沿って光を照射することを含み、
前記異物の有無を判定するステップは、前記基材の前記幅方向における光検出結果の連続性に基づいて異物の有無を判定することを含む、請求項4に記載の送液装置の検査方法。
【請求項6】
前記異物の有無を判定するステップは、前記基材の前記幅方向における光検出結果が、予め決められた許容範囲以上の区間にわたって不連続であった場合に、異物が存在していると判断することを含む、請求項5に記載の送液装置の検査方法。
【請求項7】
基材を搬送する搬送装置と、
前記基材に向かって液状物を間欠的に吐出する吐出部と、
前記搬送装置によって搬送される前記基材と前記吐出部の吐出口との隙間に光を照射する光源と、
前記光源から照射されて前記隙間を透過した光を検出する光検出装置と、
前記光検出装置による光検出結果に基づいて前記隙間内の異物の有無を判定する制御装置と、
を有し、
前記光源および前記光検出装置は、前記基材の、前記搬送装置による搬送方向に直交する幅方向の1つまたは複数の特定の位置で光の照射および検出を連続的に行い、前記制御装置は、前記光検出装置による前記基材の前記特定の位置での光検出結果の経時的な変化に基づいて、異物の有無を判定する、送液装置。
【請求項8】
基材を搬送する搬送装置と、
前記基材に向かって液状物を間欠的に吐出する吐出部と、
前記搬送装置によって搬送される前記基材と前記吐出部の吐出口との隙間に光を照射する光源と、
前記光源から照射されて前記隙間を透過した光を検出する光検出装置と、
前記光検出装置による光検出結果に基づいて前記隙間内の異物の有無を判定する制御装置と、
を有し、
前記光源および前記光検出装置は、前記基材の、前記搬送装置による搬送方向に直交する幅方向に沿って光の照射および検出を行い、前記制御装置は、前記光検出装置による前記基材の前記幅方向における光検出結果が、予め決められた許容範囲以上の区間にわたって不連続であった場合に、異物が存在していると判断することによって、前記光検出装置による前記基材の前記幅方向における光検出結果の連続性に基づいて異物の有無を判定する、送液装置。
【請求項9】
基材を搬送する搬送装置と、
前記基材に向かって液状物を間欠的に吐出する吐出部と、
前記搬送装置によって搬送される前記基材と前記吐出部の吐出口との隙間に光を照射する光源と、
前記光源から照射されて前記隙間を透過した光を検出する光検出装置と、
前記光検出装置による光検出結果に基づいて前記隙間内の異物の有無を判定する制御装置と、
を有し、
前記制御装置は、前記光検出結果の変動が基準値よりも小さい場合に、前記搬送装置による前記基材の搬送と前記吐出口からの前記基材への前記液状物の吐出を中断させて、前記基材と前記吐出口とを相対的に近接させて前記隙間を狭くする、送液装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は送液装置およびその検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
送液装置の吐出口から液状物を吐出して基材上に付着させる工程において、特許文献1には、液状物吐出前の基材上に付着した異物を光学的に検出する技術が開示されている。この技術によると、基材上に付着した異物が送液装置の吐出部に接触することを防止できる。しかし、これによって、吐出開始後の基材上における不良を全て解消できるわけではない。
【0003】
吐出開始後の基材上における不良の1つとして、基材上の液状物が付着すべき部分に液状物が付着しない未付着部が連続的に発生する事象が挙げられる。特許文献2には、吐出直後の基材上の液状物付着部にLD(レーザーダイオード)の走査光を照射し、液状物付着部からの反射光をPSD(ポジション・センシティブ・ディテクター)によって受光することによって、液状物付着部の凹凸を検出して付着むらを検出する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−1195号公報
【特許文献2】特開平11−156269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、連続的な未付着部の幅は極めて微小であり、また、乾燥前の液状物の反射率が高く基材自体の反射率との差が小さいため、吐出直後の液状物付着部を対象として画像処理を行ったり、特許文献2のように反射光強度の検出を行ったりしても、未付着部を検出することは難しい。また、吐出直後の液状物付着部は平滑ではないため、特許文献2のPSDによる光検出結果には、液状物付着部の凹凸に基づくノイズが多く含まれる。その結果、未付着部が生じていないにもかかわらず不良と判断してしまう可能性がある。すなわち、特許文献2によって、液状物付着部の凹凸とは区別して未付着部を検出することは困難である。
【0006】
また、異物の存在等によって基材上の液状物付着部にわずかなへこみを生じたとしても、送液装置の吐出口から吐出される液状物がそのへこみを埋めるように流動するため、液状物付着部の微小な凹凸を検出することが難しい。異物が成長するなどして、液状物の流動では埋められないほどの大きなへこみが生じるまで、へこみを検出することはできない。
【0007】
そのため、液状物の乾燥後に画像処理による外観検査を行うのが一般的である。しかし、その場合、乾燥後の外観検査によって未付着部が検出されるまでは、連続的な未付着部を有する不良品が製造され続ける。すなわち、最初に製造された不良品が乾燥炉の出口に到達するまでの間は未付着部が検出できず、それまでに製造された製品は全て連続的な未付着部を有する不良品である可能性が高いため、ロスが大きく歩留まりが悪い。ロスを小さくするために、連続的な未付着部を有する不良品が最初に製造された時点で直ちにその未付着部を精度良く検出できるようにするには、次々に製造される液状物付着部を作業者が常に監視する必要があり、作業が非常に煩雑になる。
【0008】
そこで本発明の目的は、前述した課題を解決して、連続的な未付着部の発生を未然に予測できるか、または連続的な未付着部の発生を即座に容易かつ高精度に検出できる送液装置およびその検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の送液装置の検査方法は、搬送装置によって搬送される基材と、基材に向かって液状物を間欠的に吐出する吐出口との隙間に、光源から光を照射するステップと、光源から照射されて隙間を透過した光を検出し、その光検出結果に基づいて隙間内の異物の有無を判定するステップと、を含む。
光を照射するステップは、基材の、搬送装置による搬送方向に直交する幅方向に沿って光を照射することを含み、異物の有無を判定するステップは、基材の幅方向における光検出結果が、予め決められた許容範囲以上の区間にわたって不連続であった場合に、異物が存在していると判断することによって、基材の幅方向における光検出結果の連続性に基づいて異物の有無を判定することを含んでいてもよい。
また、光を照射するステップは、基材の、搬送装置による搬送方向に直交する幅方向の1つまたは複数の特定の位置に連続的に光を照射することを含み、異物の有無を判定するステップは、基材の特定の位置での光検出結果の経時的な変化に基づいて異物の有無を判定することを含んでいてもよい。
また、光検出結果の変動が基準値よりも小さい場合に、搬送装置による基材の搬送と吐出口からの基材への液状物の吐出を中断して、基材と吐出口とを相対的に近接させて隙間を狭くするステップを含んでいてもよい。
【0010】
本発明の送液装置は、基材を搬送する搬送装置と、基材に向かって液状物を間欠的に吐出する吐出部と、搬送装置によって搬送される基材と吐出部の吐出口との隙間に光を照射する光源と、光源から照射されて隙間を透過した光を検出する光検出装置と、光検出装置による
光検出結果に基づいて隙間内の異物の有無を判定する制御装置と、を有する。光源および光検出装置は、基材の、搬送装置による搬送方向に直交する幅方向の1つまたは複数の特定の位置で光の照射および検出を連続的に行い、制御装置は、光検出装置による基材の特定の位置での光検出結果の経時的な変化に基づいて、異物の有無を判定してもよい。
また、光源および光検出装置は、基材の、搬送装置による搬送方向に直交する幅方向に沿って光の照射および検出を行い、制御装置は、光検出装置による基材の幅方向における光検出結果が、予め決められた許容範囲以上の区間にわたって不連続であった場合に、異物が存在していると判断することによって、光検出装置による基材の幅方向における
光検出結果の連続性に基づいて異物の有無を判定してもよい。
また、制御装置は、光検出結果の変動が基準値よりも小さい場合に、搬送装置による基材の搬送と吐出口からの基材への液状物の吐出を中断させて、基材と吐出口とを相対的に近接させて隙間を狭くしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、液状物吐出直後の液状物付着部の表面状態に関わらず、連続的な未付着部が発生する原因となる微小な異物を検出できる。特に、実際に未付着部が発生するよりも前、または最初に未付着部が発生した直後に、異物の付着を検知することができるため、不良品の発生の予測または早期の検出が可能であり、歩留まりの低下を防げる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の送液装置の一実施形態の要部を示す模式図である。
【
図2】
図1に示す送液装置の吐出口と基材との隙間を示す拡大図である。
【
図3】(a)は連続的な未付着部が発生した液状物付着部の平面図、(b)はその断面図である。
【
図4】(a)は本発明の送液装置の検査方法の一例において正常時の付着領域の検査状態を示す概略図、(a’)はその光検出結果を示すグラフ、(b)は正常時の非付着領域の検査状態を示す概略図、(b’)はその光検出結果を示すグラフ、(c)は異物が存在する時の非付着領域の検査状態を示す概略図、(c’)はその光検出結果を示すグラフ、(d)は小さな異物が存在する時の非付着領域の検査状態を示す概略図、(d’)はその光検出結果を示すグラフである。
【
図5】(a)は本発明の送液装置の検査方法の変形例において正常時の検査状態を示す概略図、(a’)はその光検出結果を示すグラフ、(b)は異物が存在する時の検査状態を示す概略図、(b’)はその光検出結果を示すグラフ、(c)は小さな異物が存在する時の検査状態を示す概略図、(c’)はその光検出結果を示すグラフである。
【
図6】(a)は
図4に示す送液装置の検査方法において異物が存在し隙間が広い時の検査状態を示す概略図、(a’)はその光検出結果を示すグラフ、(b)は異物が存在し隙間を狭くした時の検査状態を示す概略図、(b’)はその光検出結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1に、本発明の送液装置の一実施形態の要部が模式的に示されている。この送液装置は、主に、吐出口1aを有する吐出部1と、光検出装置2と、光源3と、基材5を搬送する搬送装置(ローラー)4と、光検出装置2による検出結果を分析する制御装置6とを有している。
【0015】
吐出部1は、ローラー4によって吐出口1aに対向する位置を通って搬送される基材5に対し、図示しない液状物供給タンクから送液ポンプによって供給された液状物10を吐出口1aから間欠的に吐出する。光源3は、吐出口1aとそれに対向するローラー4および基材5との間の隙間7に向かって光(
図1に破線で図示)を照射できるように配置されている。そして、この隙間7を挟んで光源3と対向する位置に、光検出装置2が配置されている。光検出装置2には制御装置6が接続されており、光検出装置2による光検出結果(検出信号)が制御装置6に送られる。
【0016】
本実施形態の送液装置はこのような構成であるため、ローラー4によって搬送されてきた基材5に対して吐出口1aから液状物を間欠的に吐出する。一方、光源3から隙間7に向かって光を照射する。そして、光検出装置2が、隙間7を透過した光を検出し、光検出結果(例えば光強度)を検出信号として制御装置6に送る。基材5に向かって液状物10を吐出している時には、液状物10に光が遮られて隙間7を透過できないため、光強度は0になる。基材5に向かって液状物10を吐出していない時には、通常は、液状物10に光が遮られることなく隙間7を透過して、均一な光強度が検出される。すなわち、その光強度は変動しない。しかし、仮に隙間7に異物8(
図2参照)が存在する場合には、光検出装置2による光強度が均一にならない。すなわち、隙間7に異物8が存在する場合には、光の一部が異物8に遮られるため、部分的に光強度が低下する。従って、制御装置6は、光検出装置2の光強度の変動(不連続性)に基づいて、隙間7における異物8(通常は吐出部1に付着した異物)の有無を判定することができる。
【0017】
このような構成は、本出願人が、吐出後の液状物付着部に連続的な未付着部9(
図3参照)が生じる主な原因が、液状物を吐出する吐出部1と基材5との間の隙間7内における異物8(
図2参照)の存在であると見出したことに基づく。すなわち、
図2に模式的に示すように、隙間7に異物8が存在していると、その部分だけ基材5に液状物10が付着せず、
図3に示すように連続的な未付着部9が発生する。前記したように、本実施形態では隙間7における異物8の有無を判定できるため、連続的な未付着部9の発生を未然に予測すること、または即座に検出することができる。その結果、連続的な未付着部9の発生による不良を最小限に抑えることができる。しかも、さほど繁雑な作業や複雑な構造を必要としない。
【0018】
次に、
図4を参照して、本発明の送液装置の検査方法のより具体的な例を説明する。検査を行う際には、ローラー4によって搬送されてきた基材5に対して吐出口1aから液状物10を吐出する。このとき、液状物10の吐出を間欠的に行い、基材5の全幅にわたって液状物10が付着している領域(付着領域5a)と、基材5の全幅にわたって液状物10が付着していない領域(非付着領域5b)とが、交互に生じるようにする。なお、連続的に液状物10を吐出する時間と液状物10を吐出しない時間とを等しくする必要はなく、基材5の搬送方向における長さが、付着領域5aと非付着領域5bとで異なっていて構わない。
【0019】
光源3は隙間7に向かって光を照射し、光検出装置2が、隙間7を透過した光を検出する。一例としては、光源3は基材5の全幅(搬送方向に直交する方向の全幅)にわたって光を走査し、それを光検出装置2が検出する。通常、
図4(a),(a’)に示すように、付着領域5aの検査時には全幅にわたって光強度が0になる。一方、
図4(b),(b’)に示すように、非付着領域5bの検査時には全幅にわたって均一の光強度(仮に光強度Aとする)を示す。ところが、隙間7内に異物8が存在することによって連続的な未付着部9が生じる場合には、
図4(c),(c’)に示すように、非付着領域5bにおいて、部分的に光強度が0になる。従って、制御装置6は、光検出装置2の光検出結果が局所的に光強度0になっている場合には、連続的な未付着部9が生じたと判断する。そしてその場合には、吐出を一旦中断したり、使用者に対する警告表示を行って異物8の除去を促したりする。
【0020】
また、隙間7内に小さな異物8が存在する場合には、
図4(d),(d’)に示すように、連続的な未付着部9は必ずしも生じない可能性がある。その場合には、非付着領域5bにおいて、部分的に光強度は0になってはいなくても、小さな異物8によって光の一部が遮られて、他の部分よりも光強度が小さくなる。すなわち、制御装置6は、光検出装置2の光検出結果が、光強度が局所的に小さくなっている(仮に光強度Bとする)場合に、小さな異物8が存在し、将来、異物8が成長して連続的な未付着部9の発生に至る可能性があると判断し、吐出の中断や使用者への警告表示などを行う。
図4(d)には、異物8が成長して連続的な未付着部9の発生に至る可能性がある部分9’を模式的に示している。
【0021】
以上説明したように、本例では、基材5の全幅にわたって光を走査して、その光検出結果(例えば光強度の連続性)に基づいて異物8の有無を判定している。
【0022】
本例では、液状物10の吐出を間欠的に行い、付着領域5aと非付着領域5bとを交互に形成している。異物8の付着による部分的な遮光を実際に確認できるのは非付着領域5bであるが、付着領域5aと非付着領域5bを検知した上で、さらに遮光の有無を判断するためには、2段階の判定と大掛かりな構成が必要である。そこで本例では、基材5の幅方向(搬送方向に直交する方向)の全幅にわたって光を走査し、その間の光強度(検出信号)の連続性を異物8の有無の判定に利用している。すなわち、
図4(a),(a’),(b),(b’)に示すように、付着領域5aにおいても非付着領域5bにおいても、正常な状態では、基材5の幅方向において光強度は一定である。しかし、
図4(c),(c’),(d),(d’)に示すように、隙間7内に異物8が存在する場合には、基材5の幅方向において部分的に光強度が0になる、または部分的に光強度が低下する箇所がある。すなわち、光強度(検出信号)が不連続になる箇所が存在する。そこで本例では、このような光強度の連続性(不連続性)を検知することによって、付着領域5aと非付着領域5bの区別を必要とすることなく、隙間7内の異物8の存在を検出することが可能である。
【0023】
ただし、実際の吐出時においては、特に付着領域5aと非付着領域5bの境目において光検出を行う際に、異物8の有無に関わりなく短時間だけ光強度(検出信号)が不連続になる可能性がある。従って、基材搬送速度や付着状態に応じて、光強度が不連続になる時間の許容範囲を設定しておき、光強度が不連続な状態がその許容範囲以上の長時間にわたって継続した場合に不良と判定するようにしてもよい。なお、本例では、光強度が不連続になる時間が、予め決められた許容範囲内に入るか否かを判定しているが、これは、光源3による光の走査の速度を考慮したものであり、実質的には、基材5の幅方向において光強度が不連続になる区間の長さが、予め決められた許容範囲内に入るか否かを判定することと同義である。
【0024】
本例の光検出装置2としては、ラインセンサカメラを用いることができるが、それに限定されない。例えば、複数のフォトディテクタを、基材5の幅方向の全幅にわたって一列に並べたものなど、基材5の幅方向の全幅にわたる各位置の光の透過状況を検出可能なものであれば様々な光検出装置2が使用可能である。ラインセンサカメラを用いる場合であっても、1台のラインセンサカメラの使用に限られず、複数のラインセンサカメラを使用してもよい。また、光源3は、非吐出時に隙間7を透過して光検出装置2によって検出可能な光を照射できるものであればいかなる種類の光源であってもよく、一例としてはレーザー光源等が利用できる。
【0025】
次に、本発明の送液装置の検査方法の変形例を説明する。本例では、基材5の幅方向の特定の位置に、光源3および光検出装置2を固定する。そして、ローラー4によって基材5を搬送しながら、光源3から隙間7への光の照射および光検出装置2による光強度の検出を連続的に行う。これは、基材5の幅方向の特定の位置における、隙間7を透過する光の強度(検出信号)の経時的な変化(時間変化)を検出することであり、言い換えると、基材5の幅方向ではなく搬送方向(長手方向)に光を走査してそれを検出することである。
【0026】
本例においても、液状物10の吐出を間欠的に行い、付着領域5aと非付着領域5bとを交互に形成する。通常、
図5(a),(a’)に示すように、付着領域5aにおいて光強度が0になる部分(光が遮断された部分)と、非付着領域5bにおいて特定の光強度Aを示す部分(光が透過された部分)とが交互に存在する光検出結果が得られる。ところが、検査途中で隙間7内に異物8が付着して連続的な未付着部9が生じる状態になると、
図5(b),(b’)に示すように、非付着領域5bにおいても光強度が0になるため、常に光強度が0となる。このような光検出結果の場合には、制御装置6は連続的な未付着部9が生じたと判断する。具体的には、光強度が0の状態が、基材5への1回の液状物の吐出(付着領域5aの形成)の時間よりも長く続いた場合に、制御装置6は連続的な未付着部8が生じたと判断する。そして、吐出の中断や使用者に対する警告表示を行う。
【0027】
また、隙間7内に小さな異物8が付着した場合、
図5(c),(c’)に示すように、連続的な未付着部9は必ずしも生じなくても、非付着領域5bにおける光強度が、異物8が存在しない場合に比べて小さくなることがある。特に、経時的に異物8が徐々に成長すると、それに応じて非付着領域5bにおける光強度がだんだん小さくなっていく(例えば光強度C
1,C
2,C
3)。制御装置6は、光検出装置2の光検出結果が、非付着領域5bの光強度が、異物8が存在しない場合に比べて小さい場合や、経時的に徐々に低下している場合には、連続的な未付着部9の発生につながる可能性があると判断し、吐出の中断や使用者への警告表示などを行う。
【0028】
以上説明したように、本例では、基材5の幅方向の特定の位置において連続して隙間7への光の照射および検出を行い、その光検出結果に基づいて異物8の有無を判定している。
【0029】
本例でも、液状物の吐出を間欠的に行い、付着領域5aと非付着領域5bとを交互に形成している。そして、基材5の幅方向(搬送方向に直交する方向)の特定の位置において、光強度(検出信号)の経時的な変化を異物8の有無の判定に利用している。すなわち、
図5(a),(a’)に示すように、正常な状態では付着領域5aと非付着領域5bが規則的に交互に出現するが、
図5(b),(b’),(c),(c’)に示すように、隙間7に異物8が付着した場合には、非付着領域5bにおける特定の光強度を示す箇所がなくなる(光強度が0になる)か、または、非付着領域5bにおける光強度が小さくなる。
【0030】
従って、正常時には光検出装置2によって検出される光強度の変化が一定のパターンで繰り返される。しかし、光強度の経時的な変化の繰り返しパターンが変化すると、隙間7内に異物8が存在すると判断される。このように本例では、付着領域5aと非付着領域5bの区別を必要とすることなく、光強度の経時的な変化に基づいて不良の発生を検知する。
【0031】
本例では、基材5の幅方向の1箇所にのみ光検出装置2を配置しても、複数箇所にそれぞれ光検出装置2を配置してもよい。光検出装置2は例えばフォトディテクタ等であってよく、光源3は例えばレーザー光源等であってよい。
【0032】
前記した2つの例では、吐出口1aの上方に光検出装置2が、下方に光源3がそれぞれ配置されているが、隙間7に光を照射可能であり、かつ隙間7を透過した光を検出可能であれば、光検出装置2および光源3の位置は特に限定されない。
【0033】
前記した2つの例のいずれにおいても、
図6(a),(a’)に示すように、隙間7内に、その隙間7を完全には塞がない微小な異物8が存在している場合には、非付着領域5bにおける光の透過量に対して、異物8による光強度の低下の割合が小さく(例えば光強度Dであり)、検知が難しいことがある。そこで、判別が困難なほど微小な光強度の不連続性あるいは光強度の低下が見られた場合には、
図6(b),(b’)に示すように、非吐出時に隙間7を狭める、すなわち吐出口1aと基材5との間の間隔を狭くすることにより、非付着領域5bにおける異物8が存在しない部分と異物8が存在する部分とのコントラストを強め(例えば光強度Eにして)、検出精度を向上させることができる。光強度の変動が、予め決められた基準値よりも小さい場合に、隙間7を狭くするように設定していてもよい。
図6に示す例では、
図4に示す例と同様に、基材5の全幅にわたって光を走査して異物8の有無を判定する上で、非吐出時に隙間7を狭めて検出精度を向上させている。また、
図5に示す変形例と同様に、基材5の幅方向の特定の位置において連続して隙間7への光の照射および検出を行って異物8の有無を判定する上で、非吐出時に隙間7を狭めて検出精度を向上させることもできる。
【0034】
以上説明したように、本発明によると、吐出口1aと基材5との間の隙間7に光を照射し、その隙間7を透過した光を光検出装置2によって検出する。そして、光検出装置2の光検出結果に基づいて、隙間7内の異物8の存在を検出する。隙間7内の異物8の存在を検出したら、吐出を中断したり、使用者に対して警告表示して異物8の除去を促したりすることができる。これによると、吐出直後の液状物付着部の表面状態に関わらず、連続的な未付着部9の発生の原因となる微小な異物8を検出できる。特に、実際に連続的な未付着部9が発生するよりも前、または最初に連続的な未付着部9が発生した直後に、異物8の付着を検知することができる。従って、乾燥炉の出口付近で外観検査を行うよりもはるかに早く不良品の予測または検出が可能であり、即座に対処することができるため、ロスを小さくし歩留まりの低下を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0035】
1 吐出部
1a 吐出口
2 光検出装置
3 光源
4 ローラー(搬送装置)
5 基材
5a 付着領域
5b 非付着領域
6 制御装置
7 隙間
8 異物
9 連続的な未付着部
10 液状物