(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6409274
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】蓄電装置の製造方法及び蓄電装置の電解液注入装置
(51)【国際特許分類】
H01M 2/36 20060101AFI20181015BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20181015BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20181015BHJP
【FI】
H01M2/36 101J
H01G11/84
H01G13/00 381
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-2517(P2014-2517)
(22)【出願日】2014年1月9日
(65)【公開番号】特開2015-133179(P2015-133179A)
(43)【公開日】2015年7月23日
【審査請求日】2016年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】奥田 真也
【審査官】
小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2013/0312869(US,A1)
【文献】
国際公開第2012/069100(WO,A1)
【文献】
特開平09−035704(JP,A)
【文献】
米国特許第06465121(US,B1)
【文献】
特開2013−152834(JP,A)
【文献】
特開平05−190168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/36−2/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置の製造方法であって、
内部に電極組立体が収容され、かつ蓋体で密封されたケースの上方に電解液タンクを配置し、前記電解液タンク内を大気と連通状態に、かつ前記ケース内を真空ポンプで減圧することなく、前記電解液タンクと前記ケースの注液孔とを、前記電解液タンク内の電解液を前記注液孔に気密状態で導く状態に保持し、前記ケースの容積が増加するように前記ケースの側壁をケース外側へ付勢して前記側壁を変形させる第1の付勢力を加える第1の状態と、前記側壁のケース外側への変形が解消された第2の状態とを繰り返す電解液注入工程を有し、
前記電解液注入工程では、前記ケースの側壁を吸着した吸着部を前記側壁と共に往復直線運動させることを特徴とする蓄電装置の製造方法。
【請求項2】
前記電解液注入工程では、前記第2の状態から再び前記第1の状態にされる間に、前記ケースの容積が減少するように前記側壁をケース内側へ付勢して前記側壁を変形させる第2の付勢力を加える第3の状態と、前記側壁のケース内側への変形が解消された第4の状態とされる請求項1に記載の蓄電装置の製造方法。
【請求項3】
蓄電装置の電解液注入装置であって、
内部に電極組立体が収容され、かつ蓋体で密封された前記蓄電装置のケースの上方に配置される電解液タンクを、前記電解液タンク内を大気と連通状態に保持するとともに、前記ケース内を真空ポンプで減圧することなく、前記電解液タンクと前記ケースの注液孔とを、前記電解液タンク内の電解液を前記注液孔に気密状態で導く状態に保持する保持手段と、
前記ケースの側壁に、前記ケースの容積が増加するように前記側壁をケース外側へ付勢して前記側壁を変形させる第1の付勢力を加える第1の状態と、前記側壁の変形が解消されるように前記第1の付勢力の作用を解除する第2の状態とに変更可能な圧力付与手段とを備え、
前記圧力付与手段は、前記側壁を吸着する吸着部と、前記側壁を吸着した前記吸着部を前記側壁と共に往復直線移動させる駆動部とを備える蓄電装置の電解液注入装置。
【請求項4】
前記圧力付与手段は、前記ケースの側壁を前記第1の状態と前記第2の状態とに加えて、前記ケースの容積が減少するように前記側壁をケース内側へ付勢して前記側壁を変形させる第2の付勢力を加える第3の状態と、前記側壁の変形が解消されるように前記第2の付勢力の作用を解除する第4の状態とに変更可能である請求項3に記載の蓄電装置の電解液注入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置の製造方法及び蓄電装置の電解液注入装置に係り、詳しくはケース内に電極組立体及び電解液が収容された蓄電装置の製造方法及び蓄電装置の電解液注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池やキャパシタのような蓄電装置は再充電が可能であり、繰り返し使用することができるため電源として広く利用されている。一般に、容量の大きな二次電池(蓄電装置)は電極組立体を収容するケースを備え、そのケース内に電極組立体及び電解液が収容されている。二次電池の組立は、ケース本体内に電極組立体を収容した後、ケースの蓋体をケース本体に溶接する。その後、蓋体に形成されている注液孔(注入孔)から電解液をケース内に注入した後、注液孔を密封する。
【0003】
電池内に電解液を注入する際、注液速度を速めるため、未封口の電池の開口部を密閉する注入室を設けて、電解液タンクと注入室との間に給液管を接続し、電池内を減圧状態に設定して、タンク内の電解液を給液管を介して電池内に注入する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図5に示すように、特許文献1では、未封口の電池51における電池ケ―ス52の上側開口端部52aにシ―ルパツキン53を介してキヤツプ54を接続し、電池ケ―ス52の開口部を密閉する注入室55が形成されている。注入室55は空気排出口56を介して真空ポンプ(図示せず)に接続されており、減圧状態、つまり所定の真空度に保たれるようになっている。
【0005】
電解液57を収容した電解液タンク58と注入室55とは、給液管59を介して接続されており、電解液タンク58内は空気排出口56を介して図示しない真空ポンプに接続されて、減圧状態、つまり電池51内よりも小さい所定の真空度に保たれるようになっている。給液管59には、注液バルブ60が設けられている。そして、電池ケ―ス52内の真空度が電解液タンク58内の真空度より高い状態で注液バルブ60を開状態にして電解液タンク58内の電解液57を注入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−35074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1の電解液注入方法では、未封口の電池51における電池ケ―ス52の開口部を密閉する注入室55を形成し、電解液タンク58と注入室55とを給液管59を介して接続し、電解液タンク58内及び注入室55内をそれぞれ真空ポンプにより所定の真空度に減圧する必要があるため、構成が複雑になる。
【0008】
また、例えば、電解液として複数の電解液を混合した製品を使用する場合、各電解液の沸点が異なることで、減圧下での揮発量が変わってしまい、電解液の組成が変わってしまう。また、上記問題を考慮して余剰の電解液を入れることは、歩留まりが悪く、プロセス時間を増やすことにつながる。
【0009】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、蓄電装置のケース内や電解液タンク内を真空ポンプで減圧にせずに、電解液の注入時間の短縮を図ることができる蓄電装置の製造方法及び蓄電装置の電解液注入装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する蓄電装置の製造方法は、内部に電極組立体が収容され、かつ蓋体で密封されたケースの上方に電解液タンクを配置し、前記電解液タンク内を大気と連通状態に、かつ前記電解液タンクと前記ケースの注液孔とを、前記電解液タンク内の電解液を前記注液孔に気密状態で導く状態に保持し、前記ケースの側壁に、前記側壁をケース外側へ付勢する第1の付勢力及び前記側壁をケース内側へ付勢する第2の付勢力の少なくとも一方を加えて前記側壁を一時的に変形させる状態と、前記側壁の変形が解消された状態とを繰り返す電解液注入工程を有する。
【0011】
この構成によれば、電解液注入工程において、蓄電装置のケースの上方に電解液タンクが、電解液タンク内が大気と連通状態に、かつ電解液タンクとケースの注液孔とが、電解液タンク内の電解液が注液孔に気密状態で導かれる状態に保持された状態で電解液の注入が行われる。電解液タンク内の電解液が注液孔に気密状態で導かれる状態とは、電解液タンクの排出口が直接ケースの注液孔に気密状態で配置された状態や、電解液タンクの排出口とケースの注液孔とがパイプを介して接続され、そのパイプが電解液タンクの排出口及びケースの注液孔に気密状態で接続された状態を意味する。
【0012】
そして、第1の付勢力がケースの側壁に加えられると、ケースの側壁が外側に向かって変形され、ケース内が変形前に比べて減圧状態になり、電解液タンク内の電解液は自然落下に比べて速い速度でケース内に落下する。また、第2の付勢力がケースの側壁に加えられると、ケースの側壁が内側に向かって変形され、ケース内の気体が電解液タンク内に排出される。また、第2の付勢力が側壁に加えられた状態から第2の付勢力を加えることを解除した場合、側壁が変形前の状態に戻るため、その際にもケース内は減圧状態になり、電解液タンク内の電解液は自然落下に比べて速い速度でケース内に落下する。また、第1の付勢力がケースの側壁に加えられた状態から第1の付勢力を加えることを解除した場合、側壁が変形前の状態に戻るため、その際にもケース内は加圧状態になり、ケース内の気体が電解液タンク内に排出される。したがって、第1の付勢力及び第2の付勢力の少なくとも一方を加えて側壁を一時的に変形させる状態と、側壁の変形が解消された状態とを繰り返すことにより、蓄電装置のケース内や電解液タンク内を真空ポンプで減圧にせずに、電解液の注入時間の短縮を図ることができる。
【0013】
上記課題を解決する蓄電装置の電解液注入装置は、内部に電極組立体が収容され、かつ蓋体で密封された前記蓄電装置のケースの上方に配置される電解液タンクを、前記電解液タンクと前記ケースの注液孔とを、前記電解液タンク内の電解液を前記注液孔に気密状態で導く状態に保持する保持手段と、前記ケースの側壁に、前記側壁をケース外側へ付勢する第1の付勢力及び前記側壁をケース内側へ付勢する第2の付勢力の少なくとも一方を加えて前記側壁を一時的に変形させる状態と、前記側壁の変形が解消されるように前記第1の付勢力及び前記第2の付勢力の作用を解除する状態とに変更可能な圧力付与手段とを備えている。
【0014】
この構成によれば、電解液タンクは、保持手段の作用により、電解液タンクとケースの注液孔とが、電解液タンク内の電解液が注液孔に気密状態で導かれる状態においてケースの上方に配置される。その状態で、圧力付与手段が作動されると、ケースの側壁に対して、側壁をケース外側へ付勢する第1の付勢力及び側壁をケース内側へ付勢する第2の付勢力の少なくとも一方を加えて側壁を一時的に変形させる状態と、側壁の変形が解消されるように第1の付勢力及び第2の付勢力の作用を解除する状態とが繰り返される。したがって、蓄電装置のケース内や電解液タンク内を真空ポンプで減圧にせずに、電解液の注入時間の短縮を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、蓄電装置のケース内や電解液タンク内を真空ポンプで減圧にせずに、電解液の注入時間の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1の実施形態を示し、(a)は二次電池と圧力付与手段の概略斜視図、(b)は概略側面図。
【
図3】第2の実施形態の二次電池と圧力付与手段の概略側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を
図1及び
図2にしたがって説明する。
図1(a)に示すように、製造途中(組立途中)の蓄電装置としての二次電池10は、ケース11に電極組立体12が収容されている。ケース11は、有底四角筒状のケース本体11aと、ケース本体11aに電極組立体12を挿入する開口部を閉塞する蓋体11bとからなる。ケース本体11aと蓋体11bとは溶接によって接合されている。ケース11は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金製であり、二次電池10は、例えば、リチウムイオン電池である。
【0018】
蓋体11bには、ケース本体11a内に電解液13(
図1(b)に図示)を注入するための注液孔14が形成されている。また、蓋体11bには、電極組立体12に電気的に接続された正極端子15及び負極端子16が固定されている。
【0019】
次に蓄電装置の製造方法の電解液注入工程について説明する。
図1(b)に示すように、電解液注入工程を実施するための電解液注入装置は、電解液タンク17を、注液孔14を除き蓋体11bで密封されたケース11の上方に保持する保持手段18と、ケース11の面積が広い方の一対の側壁11cに付勢力を加える圧力付与手段19とを備えている。
【0020】
保持手段18は、所定の位置に配置された二次電池10のケース11の上方に配置される電解液タンク17が下向き状態で載置される支持部20と、電解液タンク17の排出口と注液孔14とに端部が気密状態で接続されたパイプ21とを備えている。即ち、保持手段18は、ケース11の上方に配置される電解液タンク17を、電解液タンク17とケース11の注液孔14とを、電解液タンク17内の電解液13を注液孔14に気密状態で導く状態に保持する。
【0021】
圧力付与手段19は、対向する状態で配置され、かつケース11の側壁11cを吸着可能な吸着部としての真空パッド25と、真空パッド25を、側壁11cをケース外側へ付勢する第1の方向と、ケース内側へ付勢する第2の方向とに往復直線移動させる駆動部26とを備えている。真空パッド25は可撓性のパイプ27を介して図示しない真空源に接続されている。パイプ27の途中には図示しない電磁弁が設けられ、電磁弁により真空パッド25内が減圧(真空)状態と、減圧解除状態とに調整されるようになっている。駆動部26は、例えば、エアシリンダ28で構成され、ピストンロッド28aの先端がブラケット29を介してパイプ27に固定されている。
【0022】
次に前記電解液注入装置を使用した電解液注入方法について説明する。
ケース11に対する電解液13の注入を行う場合は、
図1(b)に示すように、電解液タンク17をケースの上方において支持部20で支持し、電解液タンク17とケース11の注液孔14とを、電解液タンク17内の電解液13を注液孔14に気密状態で導く状態に保持する。また、電解液タンク17が大気と連通状態にセットされる。
【0023】
この状態から圧力付与手段19が作動され、真空パッド25が真空状態に保持される。そして、先ず、
図2(a)に示すように、側壁11cに対して、側壁11cをケース外側へ付勢する第1の付勢力を加える方向に真空パッド25が移動され、側壁11cが外側に向かって撓むように変形される。側壁11cのこの変形に伴ってケース11の容積が変形前より増加し、ケース11内が変形前に比べて減圧状態になる。その結果、電解液タンク17内の電解液13に対してケース11側から吸引力が作用する状態となり、電解液タンク17内の電解液13は自然落下に比べて速い速度でケース11内に落下する。
【0024】
次に、
図2(b)に示すように、側壁11cに対して、側壁11cをケース内側へ付勢する第2の付勢力を加える方向に真空パッド25が移動されると、側壁11cが内側に向かって撓むように変形される。そして、ケース11内の気体が電解液タンク17内に排出される。なお、
図2(a),(b)においては、駆動部26の図示を省略するとともに、変形状態を分かり易くするため、側壁11cの変形状態を誇張して図示している。
【0025】
次に、再び側壁11cに対して、側壁11cをケース外側へ付勢する第1の付勢力を加える方向に真空パッド25が移動され、側壁11cが外側に向かって撓むように変形される。このときは、最初に側壁11cが外側に向かって変形された時に比べて、ケース11内の減圧状態が大きくなり、電解液タンク17内の電解液13は自然落下に比べて速い速度でケース11内に落下する。
【0026】
以下、側壁11cに対して、第2の付勢力を加える方向と、第1の付勢力を加える方向とに真空パッド25が繰り返し移動される。なお、真空パッド25が第1の付勢力を加える状態あるいは第2の付勢力を加える状態に保持される時間や真空パッド25の移動速度は、予め試験を行って設定される。
【0027】
そして、所定量の電解液13がケース11内に注入された後、圧力付与手段19の駆動が停止されるとともに真空パッド25は真空状態が解除される。また、電解液タンク17は大気と連通不能な状態にセットされて電解液13の注入作業が終了する。その後、注液孔14は図示しない封止部材により閉塞される。
【0028】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)二次電池10の製造方法における電解液注入工程は、内部に電極組立体12が収容され、かつ蓋体11bで密封されたケース11の上方に電解液タンク17を配置し、電解液タンク17内を大気と連通状態に、かつ電解液タンク17とケース11の注液孔14とを、電解液タンク17内の電解液13を注液孔14に気密状態で導く状態に保持した状態で行われる。そして、ケース11の側壁11cに、側壁11cをケース外側へ付勢する第1の付勢力を加えて側壁11cを一時的に変形させる状態と、ケース11の側壁11cに、側壁11cをケース内側へ付勢する第2の付勢力を加えて側壁11cを一時的に変形させる状態とを繰り返す。したがって、蓄電装置(二次電池10)のケース11内や電解液タンク17内を真空ポンプで減圧にせずに、電解液の注入時間の短縮を図ることができる。
【0029】
(2)二次電池10の電解液注入装置は、内部に電極組立体12が収容され、かつ蓋体11bで密封されたケース11の上方に配置される電解液タンク17を、電解液タンク17とケース11の注液孔14とを、電解液タンク17内の電解液13を注液孔14に気密状態で導く状態に保持する保持手段18を備えている。また、電解液注入装置は、ケース11の側壁11cに、側壁11cをケース外側へ付勢する第1の付勢力及び側壁11cをケース内側へ付勢する第2の付勢力を加えて側壁11cを一時的に変形させる状態と、側壁11cの変形が解消されるように第1の付勢力及び第2の付勢力の作用を解除する状態とに保持可能な圧力付与手段19とを備えている。この構成によれば、前記の電解液注入工程を実施することができる。したがって、蓄電装置のケース内や電解液タンク内を真空ポンプで減圧にせずに、電解液の注入時間の短縮を図ることができる。
【0030】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態を
図3及び
図4にしたがって説明する。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態の圧力付与手段19の構成を変更した構成であるため、第1の実施形態と同一部分は同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0031】
図3に示すように、圧力付与手段30は、ケース11の側壁11cの外面全体を気密状態で覆う位置に配置可能、かつ、側壁11cの外面全体を気密状態で覆う位置に配置された状態で側壁11cと共に圧力調整室31を構成する圧力調整部32と、圧力調整部32に一端が接続され、他端が図示しない圧力源とに接続された配管33とを備えている。そして、圧力調整室31は、図示しない制御手段により、圧力源から負圧が供給される(減圧される)状態と、大気圧に調整される状態と、加圧気体が供給される状態とに調整されるようになっている。
【0032】
図3に示す状態から、圧力源から圧力調整部32に負圧が供給されて圧力調整室31内が減圧されると、ケース11の側壁11cに側壁11cをケース外側へ付勢する第1の付勢力が加えられて、
図4(a)に示すように、側壁11cが外側に向かって撓むように変形される。側壁11cのこの変形に伴ってケース11の容積が変形前より増加し、電解液タンク17内の電解液13に対してケース11側から吸引力が作用する状態となり、電解液タンク17内の電解液13は自然落下に比べて速い速度でケース11内に落下する。
【0033】
所定時間経過後、圧力源から圧力調整部32に加圧気体が供給されて圧力調整室31内が加圧されると、側壁11cに、側壁11cをケース内側へ付勢する第2の付勢力が加えられて、
図4(b)に示すように、側壁11cが内側に向かって撓むように変形される。そして、ケース11内の気体が電解液タンク17内に排出される。
【0034】
以下、圧力調整室31内が減圧状態と、加圧状態とを交互に繰り返すように、圧力調整室31内の圧力が調整されて注液作業が行われる。そして、所定量の電解液13がケース11内に注入された後、圧力源からの圧力供給が停止され、圧力調整室31内が大気圧に復帰して電解液13の注入作業が終了する。
【0035】
この第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様な効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(3)圧力付与手段30は、ケース11の側壁11cの外面全体を気密状態で覆う位置に配置可能、かつ、側壁11cの外面全体を気密状態で覆う位置に配置された状態で側壁11cと共に圧力調整室31を構成する圧力調整部32と、圧力調整部32に一端が接続され、他端が図示しない圧力源とに接続された配管33とを備えている。したがって、第1の実施形態と異なり、圧力調整室31内の圧力を減圧状態にするか、加圧状態にするかのみで、圧力調整部32を移動させることを行わずに、側壁11cに対して、第1の付勢力を加える状態と、第2の付勢力を加える状態とに切り換えることができる。
【0036】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 電解液注入工程は、側壁11cに対して、側壁11cをケース外側へ付勢する第1の付勢力及び側壁11cをケース内側へ付勢する第2の付勢力の少なくとも一方を加えて側壁11cを一時的に変形させる状態と、側壁11cの変形が解消された状態とを繰り返せばよく、第1の付勢力及び第2の付勢力の両者を積極的に加える必要はない。例えば、側壁11cをケース外側へ付勢する第1の付勢力のみを積極的に加え、側壁11cをケース内側へ付勢する力は、第1の付勢力を解除した際に、側壁11cが元の状態に戻る復元力とする。また、側壁11cをケース内側へ付勢する第2の付勢力のみを積極的に加え、側壁11cをケース外側へ付勢する力は、第2の付勢力を解除した際に、側壁11cが元の状態に戻る復元力としてもよい。
【0037】
○ 圧力付与手段がケース11の側壁11cに、側壁11cをケース内側へ付勢する第2の付勢力のみを加える構成の場合、圧力付与手段は、側壁11cを吸着せずに単に側壁11cを押圧した状態で往動駆動され、復動は側壁11cの復帰力により行われる構成であってもよい。
【0038】
○ 圧力付与手段は必ずしもケース11の両側壁11cに対して第1の付勢力及び第2の付勢力の少なくとも一方を加える構成に限らず、ケース11の一方の側壁11cに対してのみ、第1の付勢力及び第2の付勢力の少なくとも一方を加える構成であってもよい。
【0039】
○ ケース11は、アルミニウム又はアルミニウム合金製に限らず、例えば、ステンレス製であってもよい。フェライト系ステンレス製の場合、側壁11cを吸着可能な吸着部として真空パッド25に代えて電磁石を用いてもよい。
【0040】
○ 電極組立体12は積層型及び巻回型のいずれであってもよい。
○ 二次電池10は、リチウムイオン電池に限らず、例えば、ニッケル水素二次電池やニッケルカドミウム二次電池等の他の二次電池であってもよい。
【0041】
○ 蓄電装置は、二次電池10に限らず、例えば、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタ等のようなキャパシタであってもよい。
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
【0042】
(1)請求項2に記載の発明において、前記圧力付与手段は、対向する状態で配置され、かつケースの側壁を吸着可能な吸着部と、前記吸着部を、前記側壁をケース外側へ付勢する第1の方向と、ケース内側へ付勢する第2の方向とに往復直線移動させる駆動部とを備えている。
【0043】
(2)請求項2に記載の発明において、前記圧力付与手段は、ケースの側壁の外面全体を気密状態で覆う位置に配置可能、かつ、前記側壁の外面全体を気密状態で覆う位置に配置された状態で前記側壁と共に圧力調整室を構成する圧力調整部と、圧力調整部に一端が接続され、他端が図示しない圧力源とに接続された配管とを備えている。
【符号の説明】
【0044】
11…ケース、11b…蓋体、11c…側壁、12…電極組立体、13…電解液、14…注液孔、17…電解液タンク、18…保持手段、19,30…圧力付与手段。