【文献】
大久保 利一,電気化学手法による実用的銅めっきモニタリング,表面技術,2008年12月 1日,第59巻, 12号,p.857-862
【文献】
AKOLKAR, R., LANDAU, U.,Mechanistic Analysis of the "Bottom-Up" Fill in Copper Interconnect Metallization,Journal of The Electrochemical Society,米国,2009年 6月29日,vol.156, No.9,D351-D359
【文献】
OKUBO, T., WATANABE, K., KONDO, K.,Analytical Study of the Characteristics of Cu(I) Species for the Via-Filling Electroplating Using a,Journal of The Electrochemical Society,米国,2007年 2月 1日,Vol.154, No.3,C181-C187
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
定電流電解法を用いて、促進剤及び抑制剤として働く添加剤を含有する電気銅めっき液のコンディションを特定するための分析及び解析を行う電気銅めっき液分析装置であって、
めっき装置で使用された前記電気銅めっき液の一部を分析用サンプルとして収容する分析用容器と、
前記分析用容器に収容された前記電気銅めっき液に浸漬され、電子の授受を行う作用電極と、
前記分析用容器に収容された前記電気銅めっき液に浸漬され、前記作用電極の電位を決定する際の基準となる参照電極と、
前記分析用容器に収容された前記電気銅めっき液に浸漬されたカウンター電極と、前記作用電極を一定の速度で回転させる回転駆動部と、
前記作用電極と前記カウンター電極との間に、電流密度が一定とされた電流を流す電流発生部と、
前記作用電極と前記参照電極との間の電位を測定する電位測定部と、
前記電流を流してからの経過時間と前記電位との関係を解析する解析部と、
を有し、
前記解析部は、前記経過時間と前記電位との関係を解析する際に、銅めっき膜の析出反応の過程で前記作用電極の表面に生じたCu(I)種が、前記銅めっき膜の析出反応の進行に伴って、前記作用電極の表面に位置する前記抑制剤を置換していき、前記Cu(I)種が前記促進剤として働くという反応機構に基づいてパラメータを算出し、該パラメータを用いて前記電気銅めっき液のコンディションを特定することを特徴とする電気銅めっき液分析装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献3に開示された分析方法では、得られた結果より銅めっき析出の電極反応に関わるパラメータを求めるアプローチを行っておらず、定量的な解析ができなかった。
【0012】
また、特許文献4に開示された分析方法では、データをボルツマン関数に近似して定量化している点は実用的ではあるが、理論的裏付けが十分とは言えないため、分析結果を解析することで得られるパラメータは必ずしも銅めっき析出の電極反応を理論に基づいて正確に指し示すものとは言えなかった。
【0013】
このため、特許文献3,4に開示された分析方法では、銅めっき析出の電極反応に関わるパラメータを理論に基づいた定量値として把握することが困難であった。
ここで言う銅めっき析出の電極反応に関わるパラメータとは、銅めっき液中に含有される促進剤及び抑制剤によって変化するものであり、めっき液に添加された分と、めっき液中で分解、変質を受けた分がそれぞれの効果を発揮して現れる特性値を数値化したものであり、これが、実際のめっき反応において作用するものである。
【0014】
つまり、特許文献3,4に開示された分析方法から得られた結果を用いて、電解めっき液に含まれる添加剤(言い換えれば、促進剤及び抑制剤)の調整を行った場合、添加剤の管理を高精度に行うことができない。
【0015】
そこで、本発明は、簡便な定電流電解法を応用して、添加剤を含有する電気銅めっき液の状態を判断する時に、それらの添加剤やその分解物が関与する電極反応についてのパラメータを理論的に求めることによって、定量的な判断を可能とする優れた手法、およびその手法が可能となるような機能を搭載した装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る電気銅めっき液分析装置は、定電流電解法を用いて、促進剤及び抑制剤として働く添加剤を含有する電気銅めっき液のコンディションを特定するための分析及び解析を行う電気銅めっき液分析装置であって、めっき装置で使用された前記電気銅めっき液の一部を分析用サンプルとして収容する分析用容器と、前記分析用容器に収容された前記電気銅めっき液に浸漬され、電子の授受を行う作用電極と、前記分析用容器に収容された前記電気銅めっき液に浸漬され、前記作用電極の電位を決定する際の基準となる参照電極と、前記分析用容器に収容された前記電気銅めっき液に浸漬されたカウンター電極と、前記作用電極を一定の速度で回転させる回転駆動部と、前記作用電極と前記カウンター電極との間に、電流密度が一定とされた電流を流す電流発生部と、前記作用電極と前記参照電極との間の電位を測定する電位測定部と、前記電流を流してからの経過時間と前記電位との関係を解析する解析部と、を有し、前記解析部は、前記経過時間と前記電位との関係を解析する際に、銅めっき膜の析出反応の過程で前記作用電極の表面に生じたCu(I)種が、前記銅めっき膜の析出反応の進行に伴って、前記作用電極の表面に位置する前記抑制剤を置換していき、前記Cu(I)種が前記促進剤として働くという反応機構に基づいてパラメータを算出し、該パラメータを用いて前記電気銅めっき液のコンディションを特定することを特徴とする。
なお、本発明において、「電気銅めっき液のコンディション」とは、その電気銅めっき液を電解したときに、対象物上に析出される銅の物性や析出性に影響する、めっき液に関係する特性を総括して表現した因子のことをいう。
【0017】
本発明によれば、電流を流してからの経過時間と、作用電極と前記参照電極との間の電位と、の関係を解析する際に、測定における銅析出反応の過程で作用電極の表面に生じたCu(I)種が、析出反応の進行に従い電極表面の抑制剤を置換していき、それ自体が促進剤として働くという反応機構に基づいて、めっき液のコンディションに関わるパラメータを得ることができる。
【0018】
また、例えば、このようにして得られたパラメータを用いて、めっき装置で使用中の電気銅めっき液のコンディションを管理し、保持することで、めっき皮膜の物性や析出性を安定的に保つことが可能となる。
【0019】
また、上記本発明の一態様に係る電気銅めっき液分析装置において、前記解析部は、下記(1)式を用いて、前記経過時間と前記電位との関係を解析してもよい。
【0020】
【数1】
【0021】
但し、ηは前記電位、Tは前
記電気銅めっき液のコンディションを特定するための前記分析が行われる一定の温度、Iは前記電流密度、tは前記経過時間、A,Bは定数、i
iは前記抑制剤が存在する際の前記銅めっき膜の析出反応時における交換電流密度、i
aは前記促進剤が存在する際の前記銅めっき膜の析出反応時における交換電流密度、C
a*は前記添加剤の分解及び変質を考慮した上での前記電気銅めっき液中における前記促進剤としての効果の合計を示す促進効果因子、T
iは前記添加剤の分解及び変質を考慮した上での前記電気銅めっき液中における前記抑制剤としての効果の合計を示す抑制効果因子である。
【0022】
このように、上記(1)式を用いて、経過時間と前記電位との関係を解析することで、電気銅めっき液のコンディションを特定する際に必要なパラメータを精度良く求めることができる。
【0023】
また、上記本発明の一態様に係る電気銅めっき液分析装置において、前記解析部は、前記パラメータとして、前記交換電流密度i
i、前記交換電流密度i
a、及び前記促進効果因子C
a*/前記抑制効果因子T
iを求めてもよい。
【0024】
また、上記本発明の一態様に係る電気銅めっき液分析装置において、前記解析部は、下記(2)式を用いて、前記経過時間と前記電位との関係を解析してもよい。
【0025】
【数2】
【0026】
但し、ηは前記電位、Tは前
記電気銅めっき液のコンディションを特定するための前記分析が行われる一定の温度、Iは前記電流密度、tは前記経過時間、A,Bは定数、i
aは前記促進剤が存在する際の前記銅めっき膜の析出反応時における交換電流密度、C
a*は前記添加剤の分解及び変質を考慮した上での前記電気銅めっき液中における前記促進剤としての効果の合計を示す促進効果因子、T
iは前記添加剤の分解及び変質を考慮した上での前記電気銅めっき液中における前記抑制剤としての効果の合計を示す抑制効果因子である。
【0027】
このように、上記(2)式を用いて、経過時間と電位との関係を解析することで、上記(1)式を用いたときよりも、簡便に解析を行うことができる。
【0028】
また、上記本発明の一態様に係る電気銅めっき液分析装置において、前記解析部は、前記パラメータとして、前記交換電流密度i
a、及び前記促進効果因子C
a*/前記抑制効果因子T
iを求めてもよい。
【0029】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る電気銅めっき液分析方法は、定電流電解法を用いて、促進剤及び抑制剤として働く添加剤を含有する電気銅めっき液のコンディションを特定する電気銅めっき液分析方法であって、めっき装置で使用され、かつ一定の温度に保持された前記電気銅めっき液に対して、作用電極、参照電極、及びカウンター電極を浸漬させ、前記作用電極を一定の速度で回転させる準備工程と、前記作用電極と前記カウンター電極との間に、電流密度が一定とされた電流を流すことで、前記作用電極と前記参照電極との間の電位を測定する電位測定工程と、前記電流を流してからの経過時間と前記電位との関係を解析する解析工程と、を有し、前記解析工程では、前記経過時間と前記電位との関係を解析する際に、銅めっき膜の析出反応の過程で前記作用電極の表面に生じたCu(I)種が、前記銅めっき膜の析出反応の進行に伴って、前記作用電極の表面に位置する前記抑制剤を置換していき、前記Cu(I)種が前記促進剤として働くという反応機構に基づいてパラメータを算出し、該パラメータを用いて前記電気銅めっき液のコンディションを特定することを特徴とする。
【0030】
本発明によれば、電流を流してからの経過時間と、作用電極と前記参照電極との間の電位と、の関係を解析する際に、測定における銅析出反応の過程で作用電極の表面に生じたCu(I)種が、析出反応の進行に従い電極表面の抑制剤を置換していき、それ自体が促進剤として働くという反応機構に基づいて、めっき液のコンディションに関わるパラメータを得ることができる。
【0031】
また、例えば、このようにして得られた促進剤及び抑制剤の効果を示す因子を用いて、めっき装置で使用中の電気銅めっき液のコンディションを管理することで、めっき皮膜の物性や析出性を安定的に保つことができる。
【0032】
また、上記本発明の一態様に係る電気銅めっき液分析方法において、前記解析工程では、下記(3)式を用いて、前記経過時間と前記電位との関係を解析してもよい。
【0033】
【数3】
【0034】
但し、ηは前記電位、Tは前記一定の温度、Iは前記電流密度、tは前記経過時間、A,Bは定数、i
iは前記抑制剤が存在する際の前記銅めっき膜の析出反応時における交換電流密度、i
aは前記促進剤が存在する際の前記銅めっき膜の析出反応時における交換電流密度、C
a*は前記添加剤の分解及び変質を考慮した上での前記電気銅めっき液中における前記促進剤としての効果の合計を示す促進効果因子、T
iは前記添加剤の分解及び変質を考慮した上での前記電気銅めっき液中における前記抑制剤としての効果の合計を示す抑制効果因子である。
【0035】
このように、上記(3)式を用いて、経過時間と前記電位との関係を解析することで、電気銅めっき液のコンディションを特定する際に必要なパラメータを精度良く求めることができる。
【0036】
また、上記本発明の一態様に係る電気銅めっき液分析方法において、前記解析工程では、前記パラメータとして、前記交換電流密度i
i、前記交換電流密度i
a、及び前記促進効果因子C
a*/前記抑制効果因子T
iを求めてもよい。
【0037】
また、上記本発明の一態様に係る電気銅めっき液分析方法において、前記解析工程では、下記(4)式を用いて、前記経過時間と前記電位との関係を解析してもよい。
【0038】
【数4】
【0039】
但し、ηは前記電位、Tは前記一定の温度、Iは前記電流密度、tは前記経過時間、A,Bは定数、i
aは前記促進剤が存在する際の前記銅めっき膜の析出反応時における交換電流密度、C
a*は前記添加剤の分解及び変質を考慮した上での前記電気銅めっき液中における前記促進剤としての効果の合計を示す促進効果因子、T
iは前記添加剤の分解及び変質を考慮した上での前記電気銅めっき液中における前記抑制剤としての効果の合計を示す抑制効果因子である。
【0040】
このように、上記(4)式を用いて、経過時間と電位との関係を解析することで、上記(3)式を用いたときよりも、簡便に解析を行うことができる。
【0041】
また、上記本発明の一態様に係る電気銅めっき液分析方法において、前記解析工程では、前記パラメータとして、前記交換電流密度i
a、及び前記促進効果因子C
a*/前記抑制効果因子T
iを求めてもよい。
【発明の効果】
【0042】
本発明の電気銅めっき液分析装置、及び電気銅めっき液分析方法によれば、簡便な分析方法を用いて取得される分析結果を解析することで得られる電気銅めっき液のコンディションを理論に基づいた定量値として把握することができる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
ここで、本発明者が考えた銅めっき膜の析出の反応機構について説明する。
本発明の分析の対象となる電気銅めっき液には、銅(II)イオンと、抑制剤と促進剤との両方の作用を示す成分が混合された添加剤と、銅(II)イオンの対イオンとなる陰イオン(例えば、硫酸イオン)と、酸(例えば、硫酸)と、塩素イオンと、が含まれている。
【0045】
電解によって陰極(カソード電極)上に銅めっき膜が析出し始めた直後において、該陰極上には添加剤である抑制剤と促進剤が吸着して銅めっき膜の表面を覆う。
銅めっき膜は、電極の表面に吸着した添加剤薄層と該電極の表面との間に析出し、金属としての皮膜として組み込まれていく。なお、銅めっき膜が析出し始めた直後において、添加剤は、抑制剤の吸着効果が強い。
【0046】
銅(II)イオンの金属銅への還元反応では、中間体としてCu(I)イオンを経る。ほとんどのCu(I)イオンは金属銅まで還元されるが、一部は副生成物として塩素または促進剤成分と結びついてCu(I)種を形成して安定化し、その一部が析出している銅表面に留まる。
このため、銅めっき膜の析出反応の進行に伴い、銅めっき膜の表面におけるCu(I)種の表面濃度は増大していく。このCu(I)種としては、電気銅めっき液中の促進剤成分と電極との反応で生じたCu(I)イオンから生成するCu(I)錯体が該当し、これが電極反応の触媒作用を有するため、促進効果が現れる。
【0047】
さらに、銅めっき膜の析出反応の進行に伴い、電極の表面近傍におけるCu(I)種(言い換えれば、Cu(I)錯体)の濃度が増大し、銅めっき膜が析出し始めた直後において、陰極上に吸着した抑制剤を置換する。
銅めっき膜の析出においては、電気銅めっき液から銅(II)イオンと共に、抑制剤成分、及びCu(I)イオンと錯形成していない促進剤成分が電極の表面に供給され、その一方で電極の表面に存在していた抑制剤成分及び促進剤成分の脱着も発生する。これらの生成、吸着、及び脱着によって、電極の表面の添加剤成分のバランスは平衡に向かう。
【0048】
上記説明したように、Cu(I)種は、電極の表面で生成され、かつ電極の表面に付着しているものの他に、電極の表面で生成された後に電極から脱着したもの、電気銅めっき液中(例えば、アノード電極の表面)で生成されたものがある。
このようなCu(I)種は、異なる促進作用を示すことが考えられる。該Cu(I)種が拡散によって、電極の表面に移動すると、電極反応に関与して促進作用を示す。
【0049】
以下、図面を参照して本発明を適用した実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の実施形態の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の電気銅めっき液分析装置の寸法関係とは異なる場合がある。
【0050】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る電気銅めっき液分析装置の概略構成を示す図である。
【0051】
図1を参照するに、本実施の形態の電気銅めっき液分析装置10は、スタンド11と、分析用容器12と、温度保持部15と、電極支持部16と、作用電極18と、参照電極19と、カウンター電極21と、回転駆動部23と、コントローラ25と、電流発生部26と、電位測定部28と、解析部31と、を有する。
【0052】
スタンド11は、分析用容器12及び温度保持部15が載置されるステージ部11Aを有する。
分析用容器12は、めっき装置(図示せず)で使用中の電気銅めっき液13の一部を分析用サンプルとして収容するための容器である。分析用容器12は、スタンド11のステージ部11A上に配置されている。
【0053】
ここで、電気銅めっき液13について説明する。電気銅めっき液13は、銅(II)イオンと、添加剤と、を含んだ構成とされている。該添加剤は、抑制剤と促進剤との両方の作用を示す成分が混合されている。これらの成分は、抑制剤及び促進剤として別々の化合物として添加されることが多いが、1つの化合物内にそれらの効果を有する官能基を結合させたものを用いてもよい。
【0054】
抑制剤としては、例えば、ポリエチレンオキシドやポリプロピレンオキシド等の水溶性ポリマーを用いることができる。また、促進剤としては、例えば、SPS (bis(sodiumsulfopropyl)disulfide)等の含イオウ化合物を用いることができる。
【0055】
電気銅めっき液13は、例えば、レベラーと呼ばれる有機化合物が添加されていてもよい。上記添加剤は、一般的に多くのサプライヤーから各成分を組合せて処方した薬剤として供給されているが、成分である化合物種及び構成は供給者によって異なる。なお、全体としては、抑制剤と促進剤との両方の成分を含むという構成は同じである。
さらに、電気銅めっき液は、例えば、銅(II)イオンの対イオンとなる陰イオン(例えば、硫酸イオン)、酸(例えば、硫酸)、及び塩素イオンを含んでもよい。
【0056】
電気銅めっき液13に含まれる銅(II)イオンの量は、例えば、2〜70g/Lの範囲内で設定することができる。また、上記硫酸は、例えば、10〜200g/Lの範囲内で設定することができる。また、上記塩素としては、例えば、1〜150mg/Lの範囲内が適当な範囲であるが、最適値は目的による電気銅めっき液の性能評価から設定するとよい。なお、添加剤の成分の濃度も同様である。
【0057】
温度保持部15は、分析用容器12の外周側面を囲むように、ステージ部11A上に載置されている。温度保持部15は、分析用容器12内に収容された電気銅めっき液13の温度を一定の温度(例えば、20〜35℃)に保持するためのものである。温度保持部15としては、例えば、恒温水槽を用いることができる。
このような、温度保持部15を有することで、分析の精度を安定させることができる。
なお、
図1では、一例として、分析用容器12の外周側面を囲む温度保持部15を図示したが、分析用容器12の外周側面だけでなく、分析用容器12の底面を覆う温度保持部を用いてもよい。
【0058】
電極支持部16は、スタンド11の上端部に固定されている。電極支持部16は、分析用容器12に収容された電気銅めっき液13の液面と対向するように配置されている。電極支持部16は、作用電極18、参照電極19、及びカウンター電極21の後端を支持するための部材である。
【0059】
本実施の形態において、作用電極18、参照電極19、及びカウンター電極21の位置が、常に固定された状態で電位の測定が行われることが好ましい。
測定する電位は、作用電極18、参照電極19、及びカウンター電極21の位置関係で変化する。このため、電気銅めっき液13(分析用サンプル)を入れ替える度に、作用電極18、参照電極19、及びカウンター電極21の位置関係を調節する必要がある構成は、好ましくない。
よって、再現性の良い電位のデータを測定するためには、作用電極18、参照電極19、及びカウンター電極21の位置関係が固定可能な電極支持部16を用いることが好ましい。
【0060】
作用電極18は、その先端部が電気銅めっき液13に浸漬されるように、回転駆動部23を介して、電極支持部16に支持されている。作用電極18は、実際に物質との電子の授受を行う電極である。
【0061】
図2は、
図1に示す作用電極の先端部の一例の断面図である。
図2において、
図1に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0062】
図2を参照するに、作用電極18は、外装部材35と、作用電極本体37と、導線39と、を有する。作用電極18の表面積は、例えば、0.01〜1cm
2の範囲内で設定することが好ましい。外装部材35は、円柱形状とされた絶縁部材である。外装部材35は、先端部に作用電極本体収容部35Aを有する。外装部材35は、平坦な先端面35aを有する。
【0063】
作用電極本体37は、作用電極本体収容部35Aに収容されている。作用電極本体37は、外装部材35から露出され、電気銅めっき液13と接触する表面37aを有する。
なお、外装部材35、作用電極37、及び作用電極37が電気銅めっき液13と接触する表面37aの形状は、上記形状に限定されない。
【0064】
作用電極本体37は、導電性を有する材料で構成されている。作用電極本体37の材料としては、例えば、電気的に安定な白金等の貴金属材料を用いるとよい。
作用電極本体37としては、例えば、円盤状の電極が好ましいが、これに限定されない。
導線39は、一端が作用電極本体37と接続されると共に、電流発生部26と電気的に接続されている。
【0065】
図1を参照するに、参照電極19は、その先端部が電気銅めっき液13に浸漬されるように、電極支持部16に支持されている。参照電極19は、作用電極18の電位を決定する際の基準となる電極である。参照電極19の材料としては、例えば、飽和カロメル(Hg/Hg
2Cl
2) や銀/塩化銀 (Ag/AgCl) 等を用いることができる。
【0066】
カウンター電極21は、その先端部が電気銅めっき液13に浸漬されるように、電極支持部16に支持されている。カウンター電極21は、作用電極18との間で、電流をめっき液に流して、電極とめっき液界面で反応を生じさせるための電極である。カウンター電極21としては、例えば、溶性電極である銅電極、または、不溶性電極である白金被覆チタン電極等を用いることができる。
カウンター電極21としては、全電流がこの電極上での反応で律速されることがないように、作用電極18の表面積と同じか、或いはこれよりも大きな表面積(例えば、50倍程度以下)を有する電極を使用することが好ましい。
カウンター電極21は、対極、或いは補助電極とも呼ばれることがある。
【0067】
回転駆動部23は、電極支持部16内に収容されている。回転駆動部23は、作用電極18の後端と接続されている。回転駆動部23は、作用電極18を一定の速度で回転させる。作用電極18の回転数は、例えば、10〜8000rpmの範囲内の回転数で一定となるように設定するとよい。
【0068】
回転数により添加剤の拡散状態が変化するため、添加剤の構成により、濃度差による測定データの差が得られやすい回転数が存在する。
そこで、事前検討を行うことで、添加剤の構成により比較的変化が見やすい回転数を見つけ出し、電位測定部28による作用電極18と参照電極19との間の電位の測定時では、この回転数を維持するとよい。
作用電極18の回転数は、回転の効果が現れる10rpm以上が好ましい。一方、作用電極18の回転数が8000rpmよりも大きいと、機械的に回転数の制御が難しいので好ましくない。
【0069】
コントローラ25は、回転駆動部23、電流発生部26、及び電位測定部28と電気的に接続されている。コントローラ25は、回転駆動部23、電流発生部26、及び電位測定部28を制御するためのものである。
なお、コントローラ25、電流発生部26、及び電位測定部28は、
図1に示すように、別体とされていてもよいし、少なくとも2つを一体として構成してもよい。
また、解析部31とコントローラ25とを一体に構成してもよい。
【0070】
電流発生部26は、作用電極18及びカウンター電極21と電気的に接続されている。電流発生部26は、作用電極18とカウンター電極21との間に、作用電極18の電流密度Iが一定とされた電流を流すための装置である。
電流発生部26としては、例えば、10A以下で、かつ10V以下の直流電流を、所定の電圧に対して±10mV以下の範囲内で制御可能で、かつ所定の電流に対して±10mA以下の範囲内で制御可能なものを用いるとよい。
【0071】
電流発生部26は、例えば、作用電極18に対する電流密度Iが、好ましくは0.1〜20A/dm
2の範囲内、より好ましくは、0.5〜5A/dm
2の範囲内となるように電流を流すとよい。
電流密度Iが0.1A/dm
2よりも小さいと、電位の測定結果に違いが現れにくい。また、電流密度Iが5A/dm
2よりも大きいと、電位が安定しにくくなってしまう。
電流発生部26としては、例えば、直流安定化電源を用いることができる。
【0072】
電位測定部28は、作用電極18、参照電極19、及び解析部31と電気的に接続されている。電位測定部28は、作用電極18とカウンター電極21での間に電流密度Iが一定とされた電流を流した状態で、作用電極18と参照電極19との間の電位ηを測定する。測定された電位ηに関するデータは、解析部31に送信される。
なお、電位ηの測定を開始する前には、一定の回転速度(言い換えれば、単位時間当たりの回転数)で作用電極18を回転させた状態にする。
【0073】
該電位ηを測定する時間(以下、「測定時間t」という)は、電位ηの値が安定後であって、かつ短時間であることが好ましい。電位ηの測定時間tがあまり短すぎる(例えば、10秒以下であると)と、作用電極18の表面に析出する銅めっき膜が安定していないため、信頼できるパラメータを取得することが困難となる。
電位の測定時間は、例えば、1〜40分間の範囲内で適宜設定することができる。
電位測定部28としては、電位測定時における電位の精度が±10mV計測可能な電位差計、電圧計、マルチメータ等を用いることができる。
【0074】
解析部31は、解析部本体42と、解析結果を表示するディスプレイ43と、キーボード44と、マウス(図示せず)と、を有する。解析部31としては、例えば、パーソナルコンピュータを用いることができる。
解析部本体42は、回転駆動部23、コントローラ25、電流発生部26、電位測定部28、ディスプレイ43、キーボード44、及びマウス(図示せず)と電気的に接続されている。
【0075】
解析部本体42には、回転駆動部23、コントローラ25、電流発生部26、電位測定部28、及びディスプレイ43を制御するためのプログラム、本実施の形態の電気銅めっき液分析方法を実施するためのプログラム(下記(5)式や下記(6)式や、電流を流してからの経過時間tと電位ηとの関係を解析するプログラムも含む)等が格納されており、データの解析を行う。
【0077】
但し、上記(5)式において、ηは電位、Tは電気銅めっき液13の一定の温度(K)、Iは電流密度(mA/cm
2)、tは経過時間、A,Bは定数、i
iは抑制剤が存在する際の銅めっき膜の析出反応時における交換電流密度(mA/cm
2)、i
aは促進剤が存在する際の銅めっき膜の析出反応時における交換電流密度(mA/cm
2)、C
a*は添加剤の分解及び変質を考慮した上での電気銅めっき液中における促進剤としての効果の合計を示す促進効果因子、T
iは添加剤の分解及び変質を考慮した上での電気銅めっき液中における抑制剤としての効果の合計を示す抑制効果因子を示している。
【0079】
但し、上記(6)式において、ηは電位、Tは電気銅めっき液13
の一定の温度(K)、Iは電流密度(mA/cm
2)、tは経過時間、A,Bは定数、i
aは促進剤が存在する際の銅めっき膜の析出反応時における交換電流密度(mA/cm
2)、C
a*は添加剤の分解及び変質を考慮した上での電気銅めっき液13中における促進剤としての効果の合計を示す促進効果因子、T
iは添加剤の分解及び変質を考慮した上での前記電気銅めっき液中における抑制剤としての効果の合計を示す抑制効果因子を示している。
【0080】
ここで、解析部本体42が行う解析について説明する。なお、該解析を説明する途中において、本実施の形態の反応機構(本発明者が見出した反応機構)に基づく関係式である上記(5)式及び上記(6)式を得た経緯についても説明する。
【0081】
本発明の特徴は、本発明者が見出した電位ηの測定時における銅析出反応の過程で作用電極18の表面(言い換えれば、
図2に示す作用電極18の表面37aに生じたCu(I)種が、析出反応の進行に従い作用電極18の表面の抑制剤を置換していき、それ自体が促進剤として働くという反応機構に基づいた解析によって、電気銅めっき液13の状態(言い換えれば、促進剤及び抑制剤の状態)に関するパラメータを得ることにある。
【0082】
該パラメータは、上記(1)式の場合、該(1)式中に記載された交換電流密度i
i、交換電流密度i
a、促進効果因子C
a/抑制効果因子T
iである。
なお、交換電流密度i
iは、抑制剤が存在する際の銅めっき膜の析出反応時における交換電流密度を示しており、交換電流密度i
aは、促進剤が存在する際の銅めっき膜の析出反応時における交換電流密度を示している。
また、促進効果因子C
a*は、添加剤の分解及び変質を考慮した上での電気銅めっき液中における促進剤としての効果の合計を示しており、抑制効果因子T
iは、添加剤の分解及び変質を考慮した上での電気銅めっき液中における抑制剤としての効果の合計を示している。
【0083】
例えば、別の測定で求めておいた抑制剤の予想濃度と抑制効果因子T
iとの関係、及び別の測定で求めておいた促進剤の予想濃度と促進効果因子C
a*との関係を用いて、実効的な抑制剤の濃度、及び促進剤の濃度を得ることもできる。
また、測定開始から時間が経過して作用電極18の表面37aに付着した抑制剤が促進剤に十分に置換された場合には、上記式(2)を用いて、パラメータとして、交換電流密度i
a、及び促進効果因子C
a*/前記抑制効果因子T
iを求め、さらに、別の測定で求めておいた抑制剤の濃度と抑制効果因子T
iとの関係、及び別の測定で求めておいた促進剤の濃度と促進効果因子C
a*との関係を用いて、抑制剤の濃度及び促進剤の濃度を得ることも可能である。
【0084】
先に説明した反応機構に基づく解析は、上記(5)式に、経過時間t及び電位ηの関係を当てはめることで行う。
上記(5)式及び(6)式に示す定数Aは、下記(7)式を用いて求めることができる。
【0086】
但し、上記(7)式において、Rはガス定数、αは移動係数、Fはファラディ定数を示している。
【0087】
また、上記(5)式及び(6)式に示す定数Bは、下記(8)式を用いて求めることができる。
【0089】
但し、上記(8)式において、Fはファラディ定数、nは銅の価数、dは銅のモル密度を示している。
【0090】
次に、上記反応機構に基づく関係式である上記(5)式及び(6)式を得た経緯について説明する。
電気銅めっき法を用いた半導体基板への配線形成は、既に広く普及した技術であり、抑制剤と促進剤のめっき表面への作用に関する考察も既に多数報告されている。
例えば、Journal of The Electrochemical Society(2009年)、156(9)のD351−D359に記載された「Mechanistic Analysis of the Bottom−Up Fill in Copper Interconnect Metallization(Rohan Akolkarz and Uziel Landau)」(以下、この文献を「参考文献」という)には、半導体基板に形成されたビアホール及びトレンチに対する銅めっき膜のボトムアップ析出をシミュレーションするために、抑制剤及び促進剤よりなる添加剤の拡散、及びその吸着挙動を解析した結果について記載されている。
【0091】
上記参考文献では、抑制剤については拡散が遅く、吸着が速いと考えられており、促進剤については拡散が速く、吸着が遅いと考えられている。
また、参考文献では、ビアホールの内面及び外面における添加剤成分(言い換えれば、抑制剤成分、及び促進剤成分)の吸着挙動から、局部的な銅めっき膜の析出の速度をシミュレートしている。
【0092】
参考文献では、ビアホールの内面及び外面における銅めっき膜の析出の速度は、全体の電流が電極の表面の添加剤成分の吸着挙動、すなわち抑制剤及び促進剤の被覆率に応じて分布するとして求められている。
さらに、参考文献では、前述の拡散及び吸着の速度が、抑制剤と促進剤とで異なるため、経過時間に伴って、促進剤が前もって吸着していた抑制剤を置換すると考えている。これによって、ビアホールの底面に促進剤が優先的に吸着してボトムアップ析出が生じる機構を解釈している。
【0093】
このような概念は、本発明におけるデータの解析にも適用できる。ただし、本発明は、ビアホールの内面ではなく、回転する作用電極18の表面37aで起こる現象についてのみ注目すればよい。
上記参考文献では、抑制剤及び促進剤のいずれにも覆われていない領域も想定しているが、本発明では、そのような想定を考慮する必要がない。
また、本発明では、回転する作用電極18を使用するため、電気銅めっき液13に含まれる添加剤成分の電極の表面への供給は十分と考えられるため、拡散速度の差異については考慮する必要がない。
【0094】
このような思想を前提として、本発明において取得する経過時間tと電位ηとの関係を定量化するための理論的な考察を行った。以下、これについて説明する。
電気化学の基本式であるTafelの式より、作用電極18の表面37aのうち、抑制剤で占められた領域の電流I
iは、下記(9)式で示され、作用電極18の表面37aのうち、促進剤で占められた領域の電流I
aは、下記(10)式で示される。
【0097】
上記(9)式、及び上記(10)式において、i
iは作用電極18の表面37aのうち、抑制剤で占有された領域の交換電流密度(以下「交換電流密度i
i」という)、i
a作用電極18の表面37aのうち、促進剤で占有された領域の交換電流密度(以下、「交換電流密度i
a」という)、α
iは抑制剤の移動係数(以下、「移動係数α
i」という)、α
aは促進剤の移動係数(以下、「移動係数α
a」という)、θ
iは作用電極18の表面37aにおける抑制剤の被覆率(以下、「被覆率θ
i」という)、θ
aは作用電極18の表面37aにおける促進剤の被覆率(以下、「被覆率θ
a」という)をそれぞれ示している。
【0098】
作用電極18の表面37aにおけるトータルの電流Iは、I
iとI
aとの合計であるので、上記(9)式、及び上記(10)式を用いると、下記(11)式のように示すことができる。
【0100】
ところで、上記(11)式に示す移動係数α
iは、上記(11)式に示す移動係数α
aと略等しいので、上記(11)式において、移動係数α
i,α
aを移動係数αと置き換えることが可能である。
そこで、上記(11)式は、下記(12)式のように示すことができる。
【0102】
上記(12)式から、電位ηは、下記(13)式で示すことができる。
【0104】
被覆率θ
i,θ
aの変化については、作用電極18の表面37aへの銅めっき膜の析出の初期の段階では、作用電極18の表面37aに抑制剤が吸着するが、それが経時的に促進剤によって置き換えられていくと考える。参考文献では、拡散式に基づいて、被覆率θ
iを下記(14)式で示し、被覆率θ
aを下記(15)式で示している。
【0107】
上記(14)式、及び上記(15)式において、kは吸着速度の相違によって抑制剤が促進剤により経時的に置換される速度(以下、「速度k」という)、Caは溶液バルクの促進剤濃度、Tiは銅めっき膜の表面における抑制剤の飽和被覆量(言い換えれば、抑制剤の効果を表わす因子)を示している。
【0108】
上記(13)式に、上記(14)式、及び上記(15)式を代入すると、電位ηは、下記(16)式のように示すことができる。
【0110】
しかしながら、このような吸着速度の相違によって抑制剤が促進剤により経時的に置換されるというモデル(参考文献の考え方)では、該モデルに基づいて得られる電位と実際の測定で得られた電位との一致が不十分(言い換えれば、差が大きい)であることが判った。
【0111】
そこで、本発明者は、種々の検討を行った結果、促進剤が電気銅めっき液13から拡散によってもたらされるのではなく、銅めっき膜の析出反応の過程において、作用電極18の表面37aに生じたCu(I)種が、銅めっき膜の析出反応の進行に伴って、作用電極18の表面37aの抑制剤を置換していき、Cu(I)種自体が促進剤として働くという反応機構を考えた。
そして、該反応機構に基づき得られた電位と実際に測定した電位とが一致することを確認した。
【0112】
そこで、本発明では、銅めっき膜の析出反応により、作用電極18の表面37aに生じたCu(I)種が、銅めっき膜の析出反応の進行に伴って、作用電極18の表面37aの抑制剤を置換していき、Cu(I)種自体が促進剤として働くという反応機構を考慮し、上記(14)式、及び上記(15)式に示す速度kを、電流密度を含む因子で置き換える。
【0113】
上記電流密度において、銅の還元反応の過程で生成するCu(I)種が、電気銅めっき液に含まれ、濃度Caとされた促進剤と作用して新たに生じたCu(I)種が作用電極18の表面37aに存在していた抑制剤層を置換する。
【0114】
ところが、上記Cu(I)種は単一のものではなく、それぞれで発揮される促進効果が異なる。しかし、それぞれのCu(I)種の濃度を求めることは実質的に不可能なので、本発明では、溶液バルクの促進剤濃度Caも含めて全体としてのCu(I)種の促進効果を表す因子を促進効果因子C
a*(添加剤の分解及び変質を考慮した上での電気銅めっき液13中における促進剤としての効果の合計を示す値)を定義し、測定から得られるパラメータとして用いる。
【0115】
促進効果因子C
a*は、溶液バルクの促進剤濃度Caに促進度を表す係数を乗じたものである。さらに次元を合わせるため、ファラディ定数F、銅のモル密度d、銅の価数n等を用いると、先に説明した上記(7)式、及び上記(8)式が得られ、上記(16)式に、上記(7)式、及び上記(8)式を代入すると、電位ηは、下記(17)式のように示すことができる。
【0117】
このように、本発明では、測定により得られる経過時間tと電位ηとの関係は、上記(17)式に対応するため、経過時間tと電位ηとの関係を示す曲線と、上記(17)式とを比較して、カーブフィッティングすることで、系(具体的には、電気銅めっき液13と作用電極18の表面37aとの界面)に関係するパラメータ(具体的には、交換電流密度i
i(mA/cm
2)、交換電流密度i
a(mA/cm
2)、及び促進効果因子C
a*/抑制効果因子T
i(1/cm))を求めることが可能となり、これにより、電気銅めっき液13の状態(言い換えれば、促進剤及び抑制剤の状態)を知ることができる。
【0118】
上記パラメータである交換電流密度i
i、交換電流密度i
a、及び促進効果因子C
a*/抑制効果因子T
iは、重要である。
促進効果と抑制効果との比である促進効果因子C
a*/抑制効果因子T
iが大きくなると、促進効果が抑制効果に対して相対的に増大する。また、促進効果因子C
a*/抑制効果因子T
iが小さくなると、抑制効果が促進効果に対して相対的に増大する。
そして、ある範囲を逸脱するとそれぞれの効果が過剰となり、不具合が発生する。例えば、ビアフィリングめっきではビアホール内の銅めっき膜の充填度の低下といった現象が現れる。
【0119】
このように、上記(17)式を用いて、経過時間tと電位ηとの関係を解析することで、促進剤及び抑制剤の状態を特定する際に必要なパラメータとして、交換電流密度i
i、交換電流密度i
a、及び促進効果因子C
a*/抑制効果因子T
iを精度良く求めることができる。
【0120】
解析部31では、経過時間tと電位とに関するデータに対して、上記説明したような解析を行い、パラメータである交換電流密度i
i、交換電流密度i
a、及び促進効果因子C
a*/抑制効果因子T
iを演算処理により求める。
また、解析部31では、電位ηの測定から解析に関わる各機能を統括して、一連の測定及び解析をコントロールする機能を有することが好ましい。
【0121】
ところで、先に説明した上記(17)式は、やや複雑である。そこで、本発明者は、解析部31での演算による解析をより行いやすくするための簡略化された数式を検討した。
上記(13)式では、促進剤で占有された領域の交換電流密度i
aは、抑制剤で占有された領域の交換電流密度i
iよりも大きいと考えているが、さらに、時間が経過して(言い換えれば、経過時間tが長くなって)、抑制剤で覆われた作用電極18の表面37aが促進剤で十分に置換された状態では、(交換電流密度i
i×被覆率θ
i)の値は、(交換電流密度i
a×被覆率θ
a)の値よりも非常に小さくなる。
したがって、この場合、上記(13)式は、下記(18)式のように変形することができる。
【0123】
そして、上記(18)式に、上記(15)式を代入すると、経過時間tと電位ηとの関係を示す式である下記(19)式を得ることができる。
【0125】
さらに、上記(17)式と同様に、上記(19)式に示すkを、電流密度Iを含む因子で置き換えると、下記(20)式を得ることができる。
【0127】
このように、パラメータとして、交換電流密度i
a、及び促進効果因子C
a*/抑制効果因子T
iを精度良く求めることができる。
【0128】
上記(17)式に替えて、上記(20)式を用いる場合には、測定により得られる経過時間tと電位ηとの関係の曲線と、上記(20)式と、を比較してカーブフィッティングすることで、系(具体的には、電気銅めっき液13と作用電極18の表面37aとの界面)に関係するパラメータである交換電流密度i
a(mA/cm
2)、及び促進効果因子C
a*/抑制効果因子T
i(1/cm)を求め、該パラメータから電気銅めっき液の状態(言い換えれば、促進剤及び抑制剤の状態)を知ることができる。
【0129】
例えば、上記(17)式を用いて、解析する場合、解析部本体42では、電位測定部28により測定された電位ηに関する電位データが送信されると、送信された電位データを時間(経過時間t)の関数として記録する。
そして、解析部本体42は、記録された電位データと、上記(17)式とを比較することで、パラメータである交換電流密度i
i(mA/cm
2)、交換電流密度i
a(mA/cm
2)、及び促進効果因子C
a*/抑制効果因子T
i(1/cm)を算出する。
このとき、設定値である電流密度I(mA/cm
2)、温度T(K)、上記(7)式に示す定数A、上記(8)式に示す定数Bを設定しておく。
【0130】
上記定数A,Bを設定する際、上記(7)式、及び上記(8)式において、ガス定数R、移動係数α、ファラディ定数、銅のモル密度d、銅の価数nは、例えば、下記数値を用いることができる。
具体的には、例えば、ガス定数Rを8.314 J/(mol・K)、移動係数αを0.5(eq/mol)、ファラディ定数Fを96480 (C/eq)、銅のモル密度dを0.141(mol/cm
3)、銅の価数nを2(eq/mol)とすることができる。
【0131】
また、測定開始から時間が経過して、作用電極18の表面37aの抑制剤で覆われた部分が十分に促進剤により置換された状態では、上記(20)式を用いることができる。
この場合、解析部本体42は、記録された電位データと、上記(17)式とを比較することで、パラメータである交換電流密度i
a(mA/cm
2)、及び促進効果因子C
a*/抑制効果因子T
i(1/cm)を算出する。
この場合も、先に説明した上記(17)式を用いる場合と同様に、設定値である電流密度I(mA/cm
2)、温度T(K)、上記(7)式に示す定数A、上記(8)式に示す定数Bを設定しておく。
上記説明したような解析により、パラメータである促進効果因子C
a*/抑制効果因子T
i(1/cm)を求めることが可能となる。
【0132】
ところで、別途、促進効果因子C
a*と、抑制効果因子T
iと、を求める場合、単一のカーブフィッティングで分離して求めることは困難である。
そこで、事前に、促進効果因子C
a*と、抑制効果因子Tiの初期値を決定するために、自ら定義した系での実験を行ってパラメータの初期値を決定しておき、それを用いて未知試料である電気銅めっき液(めっき装置で使用された電気銅めっき液)のデータを解析することを行う。
【0133】
促進効果因子C
a*、及び抑制効果因子Tiの初期値を決める実験は、決まった添加剤濃度の未使用の電気銅めっき液を用いて行う。
決まった添加剤濃度の未使用の電気銅めっき液を用いることで、添加された抑制剤成分が抑制効果因子T
iに,促進剤成分が交換電流密度i
a及び促進効果因子C
a*にそれぞれ影響を与え、さらに、新液の状態では、抑制剤及び促進剤の分解物がないため、標準値として定義することができる。
【0134】
そこで、数種の添加剤濃度で調製した電気銅めっき液を用いて測定を行った後、促進効果因子C
a*、及び抑制効果因子Tiを求めてその濃度に対する検量線を得る。
このとき、参考文献に記載されているような標準値を(17)式に代入して計算することで、未知の促進効果因子C
a*、及び抑制効果因子Tiを設定することもできる。
【0135】
例えば、抑制効果因子T
iが6×10
−11(mol/cm
2)、交換電流密度i
iが0.039(mA/cm
2)、交換電流密度i
aが2.5(mA/cm
2)が得られていた場合、まず、これらの数値を(17)式に代入して計算し、未知のパラメータを求め、
さらに、実際の電位データとの偏差が最小となるような操作(具体的には、例えば、最小二乗法)を行うことによってパラメータの値を最適化することができる。
【0136】
これは、促進剤成分によって影響される促進効果因子C
a*に対して有効である。また、別途、従来のCVS法を用いて、抑制剤及び促進剤の濃度を求めておき、それらを別の測定で求めておいた抑制剤の濃度と抑制効果因子T
iとの関係、及び促進剤の濃度と促進効果因子C
a*との関係に代入して、抑制剤の濃度、及び促進剤の濃度を得ることも可能である。
抑制効果因子T
i、及び促進効果因子C
a*のうち、一方を求めることができれば、他方を求めることができる。
【0137】
上記説明したように、既存値として設定された各パラメータ(具体的には、例えば、抑制効果因子T
i、交換電流密度i
i、及び交換電流密度i
a)を予め入力しておき、これらに基づき得られた理論的曲線と測定された曲線とを比較することで、交換電流密度i
a(mA/cm
2)、交換電流密度i
i(mA/cm
2)、及び促進効果因子C
a*/抑制効果因子T
i(1/cm)を求める。特に、促進効果因子C
a*/抑制効果因子T
i(1/cm)を求めることが重要である。
このような一連の演算は、このような一連の演算により得られ、解析部本体42内に保存された各パラメータに対して、即座に適用できるように、パーソナルコンピュータ内で1つのソフトウェアとしてインストールされたもので行われることが望ましい。
【0138】
本実施の形態の電気銅めっき液分析装置によれば、電流を流してからの経過時間tと、作用電極18と参照電極19との間の電位ηと、の関係を解析する際に、銅めっき膜の析出反応の過程で作用電極18の表面37aに生じたCu(I)種が、銅めっき膜の析出反応の進行に伴って、作用電極18の表面に位置する抑制剤を置換していき、Cu(I)種が促進剤として働くという反応機構に基づいて、めっき液のコンディションに関わるパラメータを得ることができる。
【0139】
また、例えば、このようにして得られたパラメータを用いて、めっき装置で使用中の電気銅めっき液のコンディションを管理し、保持することで、めっき皮膜の物性や析出性を安定的に保つことが可能となる。
【0140】
また、本実施の形態の電気銅めっき液分析方法では、めっき装置(図示せず)で使用され、かつ一定の温度に保持された電気銅めっき液13に対して、作用電極18、参照電極19、及びカウンター電極21の先端部を浸漬させ、作用電極18を一定の速度で回転させる準備工程と、作用電極18とカウンター電極21との間に、電流密度Iが一定とされた電流を流すことで、作用電極18と参照電極19との間の電位を測定する電位測定工程と、電流を流してからの経過時間tと電位ηとの関係を解析する解析工程と、を有し、解析工程では、経過時間tと電位ηとの関係を解析する際に、銅めっき膜の析出反応の過程で作用電極18の表面37aに生じたCu(I)種が、銅めっき膜の析出反応の進行に伴って、作用電極18の表面に位置する抑制剤を置換していき、Cu(I)種が促進剤として働くという反応機構に基づき得られるパラメータを求め、該パラメータを用いて電気銅めっき液のコンディションを特定する。
【0141】
このようにして得られたパラメータを用いて、めっき装置(図示せず)で使用中の電気銅めっき液13のコンディションを管理し、保持することで、めっき皮膜の物性や析出性を安定的に保つことができる。
【0142】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0143】
例えば、本実施の形態では、めっき装置(図示せず)とは別体とされた電気銅めっき液分析装置10を用いる場合を例に挙げて説明したが、例えば、該めっき装置のめっき槽(図示せず)と
図1に示す分析用容器12とをライン(図示せず)で接続し、該ラインを介して、めっき槽内の電気銅めっき液を分析用容器12内に導くような構成としてもよい。
【0144】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、下記実施例により何ら限定されるものではない。
【0145】
<電気銅めっき液の作製>
ベースとなる電気銅めっき液として、硫酸銅を200g/L、硫酸を50g/L、塩化物イオンを50mg/Lを含むものを準備した。該電気銅めっき液に含まれる添加剤としては、奥野製薬株式会社製のビアフィリング用銅めっき添加剤であるトップルチナNSVを用いた。
トップルチナNSV中には、抑制剤となる成分,促進剤となる成分が含まれている。
【0146】
次に、めっき装置に、上記トップルチナNSVを含む電気銅めっき液に、追加で添加剤を添加しない電気銅めっき液(以下、「電気銅めっき液P
1」という)を用いて、直径が8インチとされた半導体基板に形成されたビアホール(開口径が70μm、深さが40μm)の埋め込みを行ったところ、ビアホールの上部に5〜10μmの窪みが形成され、ビアホールを完全に埋め込むことができなかった。
【0147】
そこで、上記電気銅めっき液に、添加剤であるトップルチナNSVを補充添加しながら電解を継続することで、上記めっき装置を用いて、上記ビアホールを完全に埋め込むことが可能な電気銅めっき液(以下、「電気銅めっき液P
2」という)を作製した。
【0148】
<分析及び解析に使用した電気銅めっき液分析装置の構成>
次に、分析及び解析に使用した電気銅めっき液分析装置の構成について説明する。
分析及び解析には、
図1に示す電気銅めっき液分析装置10を用いた。作用電極18としては、白金円盤電極(作用電極18の表面37aの面積が4πmm
2)を用いた。
参照電極19としては、銀/塩化銀 (Ag/AgCl)よりなる電極を用いた。カウンター電極21としては、円柱形状の銅よりなる電極(直径が8mm)を用いた。
解析部31には、予め、経過時間tと電位ηとの関係を示す曲線を解析するためのソフトウェアをインストールした。
【0149】
<電位ηの測定条件>
電位ηの測定条件としては、カソードにおける電流密度Iが1A/dm
2、作用電極18の回転数が2500rpm、電位ηの測定時における電気銅めっき液P
1、及び電気銅めっき液P
2の温度を30度とした。
【0150】
<試験例1>
試験例1では、実施例1(solutionI)として、電気銅めっき液P
1を用いて、上記説明した電位ηの測定条件を用いて、電位ηの測定を開始し、解析部31のディスプレイ43に、電位データをリアルタイムで表示させた。
このとき、予め設定した範囲(この場合、電位ηの測定の開始から50秒〜1200秒の時間の範囲)内の電位データを用いた。この場合の経過時間tと測定した電位ηとの関係を示す曲線を
図3に示す。
また、
図3では、標準水素電極基準に換算した電位ηを示す。
【0151】
次いで、実施例2(solutionII)として、電気銅めっき液P
2を用いて、上記説明した電位ηの測定条件を用いて、電位ηの測定を開始し、解析部31のディスプレイ43に、電位データをリアルタイムで表示させた。このとき、予め設定した範囲(この場合、電位ηの測定の開始から50秒〜1200秒の時間の範囲)内の電位データを用いた。この場合の経過時間tと測定した電位ηとの関係を示す曲線を
図3に示す。
【0152】
次いで、
図1に示す電気銅めっき液分析装置10を用いて、solutionIとして得られる経過時間tと測定した電位ηとの関係を、上記(17)式を用いて解析した結果を示す曲線をsimIとして、
図3に示す。
次いで、
図1に示す電気銅めっき液分析装置10を用いて、solutionIIとして得られる経過時間tと測定した電位ηとの関係を、上記(17)式を用いて解析した結果を示す曲線をsimIIとして、
図3に示す。
【0153】
実施例1(simI)及び実施例2(simII)では、パラメータである抑制剤存在時における銅めっき膜の析出反応の交換電流密度i
i(mA/cm
2)、促進剤存在時の銅めっき膜の析出反応の交換電流密度i
a(mA/cm
2)、C
a*/Ti(1/cm)の適当な値を初期値として設定し、実データとの偏差が最小2乗法において最小となるよう、収束するまで連続的に計算を行って、交換電流密度i
i(mA/cm
2)、交換電流密度i
a(mA/cm
2)、及びC
a*/Ti(1/cm)を求めた。
参考文献に記載されたように、上記初期値として、交換電流密度i
iを0.039(mA/cm
2)、交換電流密度i
aを2.5(mA/cm
2)とした。また、C
a*/T
iは、実験的に得られる値に近い値として、10(1/cm)を用いた。
【0154】
このようにして得られた実施例1及び実施例2の交換電流密度i
i(mA/cm
2)、交換電流密度i
a(mA/cm
2)、及びC
a*/Ti(1/cm)を表1に示す。
表1は、実施例1及び実施例2の交換電流密度i
i(mA/cm
2)、交換電流密度i
a(mA/cm
2)、及びC
a*/Ti(1/cm)と、実施例3及び実施例4の交換電流密度i
a(mA/cm
2)、及びC
a*/Ti(1/cm)の値を示す表である。
【0156】
<試験例1の結果について>
表1を参照するに、実施例1の交換電流密度i
a(mA/cm
2)、及びC
a*/Ti(1/cm)は、実施例2の交換電流密度i
a(mA/cm
2)、及びC
a*/Ti(1/cm)よりも大きい値となった。
これは、抑制剤に対して添加剤に含まれる促進剤成分の働きが高まったためと考えられる。このことから、電気銅めっき液P
1を用いると、ビアホールの埋め込み特性が悪くなることが判る。
【0157】
<試験例2>
試験例2では、実施例3(solutionI)として、電気銅めっき液P
1を用いて、上記説明した電位ηの測定条件を用いて、電位ηの測定を開始し、解析部31のディスプレイ43に、電位データをリアルタイムで表示させた。
このとき、予め設定した範囲(この場合、電位ηの測定の開始から200秒(作用電極18の表面37aに付着した抑制剤が十分に促進剤に置換された時間)〜1200秒の時間の範囲)内の電位データを用いた。この場合の経過時間tと測定した電位ηとの関係を示す曲線を
図4に示す。
【0158】
次いで、実施例4(solutionII)として、電気銅めっき液P
2を用いて、上記説明した電位ηの測定条件を用いて、電位ηの測定を開始し、解析部31のディスプレイ43に、電位データをリアルタイムで表示させた。このとき、予め設定した範囲(この場合、電位ηの測定の開始から200秒(作用電極18の表面37aに付着した抑制剤が十分に促進剤に置換された時間)〜1200秒の時間の範囲)内の電位データを用いた。この場合の経過時間tと測定した電位ηとの関係を示す曲線を
図4に示す。
【0159】
次いで、
図1に示す電気銅めっき液分析装置10を用いて、solutionIとして得られる経過時間tと測定した電位ηとの関係を、上記(20)式を用いて解析した結果を示す曲線をsimIとして、
図4に示す。
次いで、
図1に示す電気銅めっき液分析装置10を用いて、solutionIIとして得られる経過時間tと測定した電位ηとの関係を、上記(20)式を用いて解析した結果を示す曲線をsimIIとして、
図4に示す。
【0160】
実施例3(simI)及び実施例4(simII)では、パラメータである促進剤存在時の銅めっき膜の析出反応の交換電流密度i
a(mA/cm
2)、C
a*/Ti(1/cm)の適当な値を初期値として設定し、実データとの偏差が最小2乗法において最小となるよう、収束するまで連続的に計算を行って、交換電流密度i
a(mA/cm
2)、及びC
a*/Ti(1/cm)を求めた。
参考文献に記載されたように、上記初期値として、交換電流密度i
aを2.5(mA/cm
2)とした。また、C
a*/T
iは、実験的に得られる値に近い値として、10(1/cm)を用いた。
このようにして得られた実施例3及び実施例4の交換電流密度i
a(mA/cm
2)、及びC
a*/Ti(1/cm)を表1に示す。
【0161】
<試験例2の結果について>
表1を参照するに、実施例3の交換電流密度i
a(mA/cm
2)、及びC
a*/Ti(1/cm)は、実施例4の交換電流密度i
a(mA/cm
2)、及びC
a*/Ti(1/cm)よりも大きい値となった。
これは、抑制剤に対して添加剤に含まれる促進剤成分の働きが高まったためと考えられる。このことから、電気銅めっき液P
1を用いると、ビアホールの埋め込み特性が悪くなることが判る。