(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の支持部材の外周面に、前記各第1の柱状導体を配置するための複数の溝がそれぞれ前記コイルの中心軸の方向に交差するように形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のコイル装置。
前記第2の支持部材の外周面に、前記各第2の柱状導体を配置するための複数の溝がそれぞれ前記コイルの中心軸の方向に交差するように形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のコイル装置。
前記第1の接続部材および前記第2の接続部材の一方がボンディングワイヤにより形成され、他方が絶縁基板上に形成されたライン状の配線電極パターンにより形成されていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のコイル装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したコイル装置500では、磁性体層503(コイル501)の周方向に直交するように配置された複数の層間接続導体507が磁性体層503の外周および外周それぞれに沿って配列されている。また、互いに対を成す外周側の層間接続導体507および内周側の層間接続導体507の一端どうしがそれぞれコア基板502の上面側の配線電極パターン505により接続されている。
【0006】
そして、外周側の層間接続導体507、および、該層間接続導体507と互いに対を成す内周側の層間接続導体507の一方側(
図20において時計回り方向)に隣接する内周側の層間接続導体507の他端どうしがそれぞれコア基板502の下面側の配線電極パターン506により接続されることで、コイルパターン504が磁性体層503の周囲を螺旋状に巻回するように形成されている。そのため、コイル501のインダクタンスやインピーダンスなどのコイル特性を調整する場合には、コア基板502の厚みを変更することにより各層間接続導体507の長さを調整したり、配線電極パターン505,506のライン形状を変更したりする必要がある。したがって、コイル装置500が備えるコイル501のコイル特性を容易に調整することができない。
【0007】
また、上記した従来の層間接続導体507は、例えば次のようにして形成される。すなわち、層間接続導体507は、例えば、
図20に示すように貫通孔の内側面にめっきが施されることにより形成されるスルーホール導体により形成される。また、層間接続導体507は、例えば、貫通孔内に導電性ペーストが充填されたりビアフィルめっきが施されたりして形成されるビア導体により形成される。したがって、次に示すような種々の問題が生じるおそれがある。
【0008】
まず、スルーホール導体やビア導体を形成するために、コア基板502に形成された小径の貫通孔内にめっきを施したり導電性ペーストを充填したりする必要がある。しかしながら、コア基板502の厚みが厚い場合には、コア基板502の表面側から裏面側に渡って小径の貫通孔内全体にめっきを施したり導電性ペーストを充填したりするのが難しいので、高背の層間接続導体507を形成するのが困難である。したがって、コイルコアを成す磁性体層503の厚みを厚くするのが難しいという問題が生じる。
【0009】
また、層間接続導体507と、コア基板502の表裏面に形成された配線電極パターン505,506との接続性を向上するために、層間接続導体507の両端それぞれをコア基板502の表裏面から若干突出させる場合がある。ところが、従来のめっきや導電性ペーストにより形成された層間接続導体507では、貫通孔内にめっきが施されたり導電性ペーストが充填されたりする際に、コア基板502の表裏面それぞれにおける貫通孔の両開口から突出する部分においてコア基板502の面方向に導電材料の広がり(にじみ)が生じる。したがって、層間接続導体507の両端部が貫通孔の内径よりも大径になるという問題が生じる。
【0010】
また、従来の層間接続導体507は、まず、コア基板502にレーザ加工等により貫通孔が透設され、貫通孔内にめっきが施されたり導電性ペーストが充填されたりすることにより形成される。そのため、複数の層間接続導体507を形成するのに、コア基板502に複数の貫通孔を所定のギャップを設けて形成する必要がある。したがって、層間接続導体507の挟ピッチ化が困難である。
【0011】
また、従来のコイル装置500では、コイル501のコイルパターン504を形成するために、層間接続導体507を形成するための貫通孔が複数形成されたコア基板502や樹脂層を用意する必要がある。したがって、コイル装置500を形成するために、コア基板502や樹脂層が必要であるので、コイル装置500の大型化を招いていた。
【0012】
本発明は、上記した課題に鑑みてなされたものであり、コイルのコイル特性を容易に調整することができるコイル装置を提供すると共に、このコイル装置を安価かつ容易に製造することができる製造方法を提供することを第1の目的とする。
【0013】
また、コイルコアの厚みが厚くインダクタンス特性に優れ、漏れ磁束の少ないコイルを備え、コイル電極の挟ピッチ化を図ることができるコイル装置を提供することを第2の目的とする。
【0014】
また、小型化を図ることができるコイル装置を提供をすることを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記した第1
ないし第3の目的を達成するために、本発明のコイル装置は、コイルコアと、前記コアの周囲に螺旋状に巻回されたコイル電極とを有するコイルを備え、
前記コイルはトロイダル型の前記コアを有し、前記コイル電極は、
金属ピンにより形成され前記コアの
外側に配列された複数の第1の柱状導体と、
金属ピンにより形成され前記コアの
内側に前記複数の第1の柱状導体と前記コアを挟むように配列された複数の第2の柱状導体と、互いに対を成す前記第1の柱状導体および前記第2の柱状導体の一端どうしをそれぞれ接続する複数の第1の接続部材と、前記第1の柱状導体と該第1の柱状導体と互いに対を成す前記第2の柱状導体の一方側に隣接する前記第2の柱状導体との他端どうしをそれぞれ接続する複数の第2の接続部材とを備え、前記第1の接続部材および前記第2の接続部材の一方がボンディングワイヤにより形成され
、非磁性材料により環状または略C字状に形成されてその内側に前記コアがほぼ同心状に配置される第1の支持部材の外周面に前記各第1の柱状導体が配置され、非磁性材料により柱状に形成されて前記コアの内側にほぼ同心状に配置される第2の支持部材の外周面に前記各第2の柱状導体が配置され、前記第1の支持部材は、前記コアの外周面に貼着された粘着性を有するテープ状の樹脂シートにより形成され、その外周面に前記各第1の柱状導体が粘着配置されていることを特徴としている。
【0016】
このように構成された発明では、複数の第1の柱状導体が、
トロイダル型のコイルコアの
外側に配列される。また、複数の第2の柱状導体が
、コイルコアの
内側に複数の第1の柱状導体とコイルコアを挟むように配列される。また、互いに対を成す第1の柱状導体および第2の柱状導体の一端どうしがそれぞれ第1の接続部材により接続される。そして、第1の柱状導体と該第1の柱状導体と互いに対を成す第2の柱状導体の一方側に隣接する第2の柱状導体との他端どうしがそれぞれ第2の接続部材により接続されることにより、コイルコアの周囲を螺旋状に巻回するようにコイル電極が形成される。
【0017】
また、第1の接続部材および第2の接続部材の一方がボンディングワイヤにより形成されている。そのため、ボンディングワイヤの長さや山形の形状などを調整するだけでコイル電極全体の長さを調整することができる。また、コイル電極全体の長さを調整することにより、コイルのインダクタンスやインピーダンスを容易に調整することができる。したがって、コイル特性を容易に調整することができるコイル装置を提供することができる。また、第1の柱状導体と第2の柱状導体間の距離が変わった場合でも、容易に結線することが可能となる。
【0020】
続いて、互いに対を成す第1の柱状導体および第2の柱状導体の一端どうしがそれぞれ第1の接続部材により接続される。また、第1の柱状導体と、該第1の柱状導体と互いに対を成す第2の柱状導体の一方側に隣接する第2の柱状導体との他端どうしがそれぞれ第2の接続部材により接続される。そして、第1の接続部材および第2の接続部材の少なくともいずれか一方がボンディングワイヤにより形成されている。
【0021】
そのため、第1、第2の支持部材を所定位置に配置するだけで、各第1の柱状導体および各第2の柱状導体(以下、単に「各柱状導体」と称する場合もある)とコイルコアとを位置決め配置することができる。したがって、従来のように、プリント基板やプリプレグ等のコア基板にスルーホール導体やビア導体を形成するための貫通孔を透設したり、コイルコアを配置するための穴を形成するなどしてコイルコアの配置場所を形成するための特殊な加工を行ったりしなくてもよい。したがって、コイル装置の製造工程の大幅な簡略化を図ることができ、容易にコイル装置を製造することができる。
【0022】
また、第1、第2の支持部材の形状を変更したり、第1、第2の支持部材上での各柱状導体の配置状態を調整するだけで、コイル電極を形成する各柱状導体とコイルコアとの間隔等の配置関係を容易に調整することができる。また、巻数も容易に調整することも可能となる。さらに、各柱状導体とコイルコアとの配置関係を調整する際に、コア基板や樹脂封止用のモールド型などの設計変更も必要ない。したがって、設計変更に伴うコイル装置の製造コストの増大を抑制することができる。
【0023】
また、第1、第2の接続部材のうちの少なくともいずれか一方がボンディングワイヤにより形成されている。したがって、ボンディングワイヤの長さや山形の形状を調整するだけで、コイル装置が備えるコイルのインダクタンスやインピーダンスを容易に調整することができる。また、コア基板が不要な分、非常に安価にコイル装置を製造することができる。また、コア基板が不要な分、コイル装置の低背化を図ることができる。また、ボンディングワイヤにより形成されるため、第1の柱状導体と第2の柱状導体間の距離が変わった場合でも、容易に結線することが可能となる。
【0025】
また、コイルの中心軸の方向に交差する方向(以下「柱状導体方向」と称する場合もある)におけるコイル電極の配線を形成する各柱状導体それぞれが金属ピンにより形成されている。そのため、各金属ピンの長さを長くするだけで、柱状導体方向におけるコイル電極の配線長を容易に長くすることができる。したがって、柱状導体方向におけるコイルコアの厚みを容易に厚くすることができる。
【0026】
また、各柱状導体それぞれが金属ピンにより形成されているので、柱状導体方向におけるコイル電極の配線を形成するために従来のように所定のギャップを設けて複数の貫通孔をプリント基板やプリプレグ等のコア基板に形成したりしなくても、各金属ピンを配列するだけで柱状導体方向におけるコイル電極の配線を形成することができる。また、従来のスルーホール導体やビア導体のように、各金属ピンにより形成された柱状導体方向におけるコイル電極の配線の太さが変化するおそれがない。したがって、コイルコアの厚みが厚くインダクタンス特性の優れたコイルを備え、コイル電極の挟ピッチ化を図ることができるコイル装置を提供することができる。
【0027】
また、コイルはトロイダル型のコイルコアを有し各第1の柱状導体はコイルコアの一側である外側に配列され、各第2の柱状導体はコイルコアの他側である内側に配列されている
ため、コイルで発生する磁力線が主に環状のトロイダル型のコイルコアを通過する閉磁路構造となるので、漏れ磁束の少ないコイル装置を提供することができる。
【0029】
また、非磁性材料により環状または略C字状に形成された第1の支持部材の外周面に各第1の柱状導体が配置され、第1の支持部材の内側にトロイダル型のコイルコアがほぼ同心状に配置されている。また、非磁性材料により柱状に形成された第2の支持部材の外周面に各第2の柱状導体が配置され、コイルコアの内側に第2の柱状導体がほぼ同心状に配置されている。
【0030】
そのため、各柱状導体とコイルコアとを所定位置に配置する際に、従来のように、プリント基板やプリプレグ等のコア基板にスルーホール導体やビア導体を形成するための貫通孔を透設したり、コイルコアを配置するための穴を形成するなどしてコイルコアの配置場所を形成するための特殊な加工を行ったりしなくてもよい。したがって、コア基板が不要な分、非常に安価にコイル装置を製造することができ、しかも、小型化を図ることができるコイル装置を提供することができる。
【0031】
また、第1、第2の支持部材の形状を変更したり、第1、第2の支持部材上での各柱状導体の配置状態を調整するだけで、コイル電極を形成する各柱状導体とコイルコアとの間の間隔等の配置関係を容易に調整することができる。また、各柱状導体とコイルコアとの配置関係を調整する際に、コア基板や樹脂封止用のモールド型などの設計変更も必要ない。したがって、設計変更に伴うコイル装置の製造コストの増大を抑制することができる。
【0033】
さらに、コイルコアの外周面に貼着された粘着性を有するテープ状の樹脂シートにより環状または略C字状を有する第1の支持部材を容易に形成することができる。また、第1の支持部材が粘着性を有するテープ状の樹脂シートにより形成されているので、第1の支持部材の外周面に金属ピンにより形成された複数の第1の柱状導体を容易に粘着配置することができる。また、各第1の柱状導体とコイルコアとの間に樹脂シートが配置されるので、各第1の柱状導体とコイルコアとを絶縁された状態で近接配置することができる。また、コイルコアに対する各第1の柱状導体からの応力を樹脂シートにより緩和することができるので、コイル特性の向上を図ることができる。
【0036】
また、
コイルコアと、前記コアの周囲に螺旋状に巻回されたコイル電極とを有するコイルを備え、前記コイルはトロイダル型の前記コアを有し、前記コイル電極は、金属ピンにより形成され前記コアの外側に配列された複数の第1の柱状導体と、金属ピンにより形成され前記コアの内側に前記複数の第1の柱状導体と前記コアを挟むように配列された複数の第2の柱状導体と、互いに対を成す前記第1の柱状導体および前記第2の柱状導体の一端どうしをそれぞれ接続する複数の第1の接続部材と、前記第1の柱状導体と該第1の柱状導体と互いに対を成す前記第2の柱状導体の一方側に隣接する前記第2の柱状導体との他端どうしをそれぞれ接続する複数の第2の接続部材とを備え、前記第1の接続部材および前記第2の接続部材の一方がボンディングワイヤにより形成され、非磁性材料により環状または略C字状に形成されてその内側に前記コアがほぼ同心状に配置される第1の支持部材の外周面に前記各第1の柱状導体が配置され、非磁性材料により柱状に形成されて前記コアの内側にほぼ同心状に配置される第2の支持部材の外周面に前記各第2の柱状導体が配置され、前記各第2の柱状導体は、前記第2の支持部材の外周面に形成された粘着性を有する樹脂膜を介して当該第2の支持部材の外周面に粘着配置されているとよい。
【0037】
このようにすると、第2の支持部材の外周面に粘着性を有する樹脂膜が形成されているので、第2の支持部材の外周面に金属ピンにより形成された複数の第2の柱状導体を容易に粘着配置するこができる。
【0038】
また、前記樹脂膜は、粘着性を有するテープ状の樹脂シートが前記第2の支持部材の外周面に貼着されて形成されているとよい。
【0039】
このようにすると、粘着性を有するテープ状の樹脂シートが貼り付けられることにより、第2の支持部材の外周面に容易に粘着性を有する樹脂膜を形成することができる。
【0040】
また、
コイルコアと、前記コアの周囲に螺旋状に巻回されたコイル電極とを有するコイルを備え、前記コイルはトロイダル型の前記コアを有し、前記コイル電極は、金属ピンにより形成され前記コアの外側に配列された複数の第1の柱状導体と、金属ピンにより形成され前記コアの内側に前記複数の第1の柱状導体と前記コアを挟むように配列された複数の第2の柱状導体と、互いに対を成す前記第1の柱状導体および前記第2の柱状導体の一端どうしをそれぞれ接続する複数の第1の接続部材と、前記第1の柱状導体と該第1の柱状導体と互いに対を成す前記第2の柱状導体の一方側に隣接する前記第2の柱状導体との他端どうしをそれぞれ接続する複数の第2の接続部材とを備え、前記第1の接続部材および前記第2の接続部材の一方がボンディングワイヤにより形成され、非磁性材料により環状または略C字状に形成されてその内側に前記コアがほぼ同心状に配置される第1の支持部材の外周面に前記各第1の柱状導体が配置され、非磁性材料により柱状に形成されて前記コアの内側にほぼ同心状に配置される第2の支持部材の外周面に前記各第2の柱状導体が配置され、前記第1の支持部材および前記第2の支持部材は熱硬化性樹脂により形成され、前記第1の支持部材の外周面に前記各第1の柱状導体が直接粘着配置され、前記第2の支持部材の外周面に前記第2の柱状導体が直接粘着配置されていてもよい。
【0041】
このようにすると、粘着性を有する熱硬化性樹脂により形成された第1の支持部材および第2の支持部材それぞれの外周面に、容易に第1の柱状導体および第2の柱状導体をそれぞれ粘着配置することができる。
【0042】
また、前記第
1の支持部材の外周面に、前記各第
1の柱状導体を配置するための複数の溝がそれぞれ前記コイルの中心軸の方向に交差するように形成されていてもよい。
このように構成すると、第1の支持部材の外周面に形成された複数の溝のそれぞれに金属ピンにより形成された第1の柱状導体が配置されることにより、第1の支持部材の外周面に各第1の柱状導体を位置精度よく配置することができる。
【0043】
また、前記第2の支持部材の外周面に、前記各第2の柱状導体を配置するための複数の溝がそれぞれ前記コイルの中心軸の方向に交差するように形成されていてもよい。このように構成すると、第2の支持部材の外周面に形成された複数の溝のそれぞれに金属ピンにより形成された第2の柱状導体が配置されることにより、第2の支持部材の外周面に各第2の柱状導体を位置精度よく配置することができる。
【0044】
また、前記第1の柱状導体が、前記第2の柱状導体よりも大径に形成されているのが望ましい。
【0045】
このようにすると、高インダクタンス化を図るためにコイルの巻き数を増やしたい場合に、環状のコイルコアの内側における各第2の柱状導体の配置スペースが限られているので、各第2の柱状導体を小径化してその横断面積を小さくすることで、コイルの巻き数を増やすことができる。また、小径化することにより各第2の柱状導体の抵抗値が増大してコイル特性が劣化するおそれがあるが、配置スペースに余裕があるコイルコアの外側に配列される各第1の柱状導体を各第2の柱状導体よりも大径化することにより、コイル電極全体の抵抗値が増大するのを抑制することができる。また、大径化されたコイルコア外側の各第1の柱状導体を2次側に設定することにより、ワイヤボンディングプロセスを効率よく実行することができる。
【0046】
また、前記第1の接続部材および前記第2の接続部材の他方が前記ボンディングワイヤにより形成されていてもよい。
【0047】
このようにすると、各接続部材それぞれがボンディングワイヤにより形成されているので、各ボンディングワイヤの長さや山形の形状を調整することにより、コイル電極の各柱状導体どうしを接続する部分における配線を容易に立体(3次元)的に形成することができる。そのため、絶縁基板や樹脂絶縁層の主面上に平面(2次元)的に形成される配線電極パターンと比較すると、各ボンディングワイヤが3次元的に配線されることにより、各ボンディングワイヤどうしが接触するのを防止しつつ各ボンディングワイヤの配線密度の向上を図ることができる。したがって、コイル電極のさらなる挟ピッチ化を図ることができ、コイルの巻回数の増大を図ることにより、コイル特性の向上を図ることができる。
【0048】
また、前記第1の接続部材および/または前記第2の接続部材が複数の前記ボンディングワイヤにより形成されていてもよい。
【0049】
このようにすると、第1の接続部材および/または第2の接続部材が複数のボンディングワイヤにより形成されることにより、互いに対を成す第1の柱状導体および第2の柱状導体の一端どうし、および/または、第1の柱状導体と該第1の柱状導体と互いに対を成す第2の柱状導体の一方側に隣接する第2の柱状導体との他端どうしが複数のボンディングワイヤにより接続される。したがって、コイル電極の各柱状導体どうしを接続する部分における配線の低抵抗化を図ることができる。
【0050】
また、前記第1の接続部材および前記第2の接続部材の一方がボンディングワイヤにより形成され、他方が絶縁基板上に形成されたライン状の配線電極パターンにより形成されていてもよい。
【0051】
このようにすると、絶縁基板に他の部品をさらに搭載することができる汎用性の高い実用的なコイル装置を提供することができる。
【0052】
また、前記コアが埋設されて前記コイル電極が設けられた樹脂絶縁層をさらに備えていてもよい。
【0053】
このように構成すると、コイルコアを埋設することにより保護することができる樹脂絶縁層にコイル電極が設けられた実用的な構成のコイル装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0054】
本発明によれば、コイルの中心軸(磁束)の方向に交差する方向におけるコイル電極の配線が複数の第1の柱状導体および複数の第2の柱状導体により形成されている。また、互いに対を成す第1の柱状導体および第2の柱状導体の一端どうしが第1の接続部材により接続され、第1の柱状導体の他端と該第1の柱状導体と互いに対を成す第2の柱状導体の一方側に隣接する第2の柱状導体の他端とが第2の接続部材により接続されている。そして、第1の接続部材および第2の接続部材の一方がボンディングワイヤにより形成されている。したがって、ボンディングワイヤの長さや山形の形状を調整するだけでコイルのインピーダンスやインダクタンスなどのコイル特性を容易に調整することができるコイル装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0056】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態にかかるコイル装置について説明する。
【0057】
(コイル装置の概略構成)
図1および
図2を参照してコイル装置1の概略構成について説明する。
図1は本発明の第1実施形態にかかるコイル装置を示す平面図、
図2は
図1のコイル装置のA−A線矢視断面図である。
【0058】
図1および
図2に示すように、コイル装置1は、樹脂絶縁層2に埋設されたコイルコア3と、コイルコア3の周囲に螺旋状に巻回されて樹脂絶縁層2に設けられたコイル電極4とを有するコイル5を備えている。なお、この実施形態では、コイル5は、円環状のトロイダル型のコイルコア3を有している。
【0059】
樹脂絶縁層2は、熱硬化性のエポキシ樹脂等の樹脂封止(モールド)用の一般的な樹脂により形成されている。コイルコア3は、フェライトや鉄等の一般的にコイルコアとして採用される磁性材料により形成されている。
【0060】
コイル電極4は、金属ピンにより形成された複数の第1の柱状導体6と、金属ピンにより形成された複数の第2の柱状導体7と、樹脂絶縁層2の一方主面2a側に設けられた複数のボンディングワイヤ8(本発明の「第1の接続部材」に相当)と、樹脂絶縁層2の他方主面2b側に配置された絶縁基板9上に形成されたライン状の配線電極パターン10(本発明の「第2の接続部材」に相当)とを備えている。
【0061】
また、コイルコア3の外周面に非磁性材料である粘着性を有するテープ状の樹脂シートが貼着されることにより第1の支持部材11が環状に形成されている。したがって、第1の支持部材11の内側にコイルコア3がほぼ同心状に配置される。また、各第1の柱状導体6は、第1の支持部材の外周面に粘着配置されることにより、コイル5の中心軸(磁束)の方向にほぼ直交するように配置されてコイルコア3の一側である外側に配列されている。
【0062】
また、エポキシ樹脂等の非磁性材料により柱状に形成された第2の支持部材12が、円環状のコイルコア3の内側にほぼ同心状に配置されている。また、粘着性を有するテープ状の樹脂シートが第2の支持部材12の外周面に貼着されることにより、第2の支持部材12の外周面に粘着性を有する樹脂膜12aが形成されている。また、各第2の柱状導体7は、樹脂膜12aを介して第2の支持部材12の外周面に粘着配置されることにより、コイル5の中心軸(磁束)の方向にほぼ直交するように配置されてコイルコア3の他側である内側に各第1の柱状導体6とコイルコア3を挟むように配列されている。なお、各第1の柱状導体6および/または各第2の柱状導体7は、それぞれ、コイル5の中心軸(磁束)の方向に交差して配置されていればよく、例えば、中心軸の方向に直交する方向に対して傾斜して配置されていてもよい。
【0063】
また、この実施形態では、ボンディングワイヤ8はAuワイヤにより形成されている。したがって、各柱状導体6,7は、それぞれの一端が樹脂絶縁層2の一方主面2aから露出するように配置され、ボンディングワイヤ8との接続性の向上を図るために、樹脂絶縁層2の一方主面2aに露出する各柱状導体6,7それぞれの端面には、Ni/Auめっき層6a,7aが形成されている。また、各柱状導体6,7は、Cu、Au、Ag、Al、またはこれらの合金など、配線電極として一般的に採用される金属材料により形成される。また、CuにNiめっきが施されたピン状の部材により各柱状導体6,7が形成されていてもよい。なお、各柱状導体6,7の長さ方向の断面形状は、長方形状でもよいし、台形状でも構わない。また、ボンディングワイヤ8や配線電極パターン10などの第1や第2の接続部材と接続される端部が金属で覆われていれば、その内部は中空構造でも構わない。
【0064】
また、互いに対を成す第1の柱状導体6および第2の柱状導体7の一端どうしがそれぞれ2本のボンディングワイヤ8により接続されている。そして、第1の柱状導体6の他端と、当該第1の柱状導体6と互いに対を成す第2の柱状導体7の一方側(この実施形態では
図1において反時計方向)に隣接する第2の柱状導体7の他端とが、それぞれ配線電極パターン10により接続されている。このように各柱状導体6,7が接続されることにより、コイルコア3の周囲を螺旋状に巻回するコイル電極4が樹脂絶縁層2に形成される。
【0065】
なお、この実施形態では、コイルコア3の外側に配列される各第1の柱状導体6が、コイルコア3の内側に配列される各第2の柱状導体7よりも大径に形成されている。高インダクタンス化を図るためにコイル5の巻き数を増やしたい場合に、環状のコイルコア3の内側における各柱状導体7の配置スペースが限られているので、各柱状導体7を小径化してその横断面積を小さくすることで、コイル5の巻き数を増やすことができる。また、小径化することにより各柱状導体7の抵抗値が増大してコイル特性が劣化するおそれがあるが、配置スペースに余裕があるコイルコア3の外側に配列される各柱状導体6を各柱状導体7よりも大径化することにより、コイル電極4全体の抵抗値が増大するのを抑制することができる。
【0066】
また、大径化されたコイルコア3の外側の各第1の柱状導体6をワイヤボンディングプロセスにおける2次側に設定することにより、ワイヤボンディングプロセスを効率よく実行することができる。また、互いに対を成す第1の柱状導体6および第2の柱状導体7の一端どうしを接続する第1の接続部材が2本(複数)のボンディングワイヤ8により形成されている。したがって、コイル電極4の各柱状導体6,7の一端どうしを接続する部分における配線の低抵抗化を図ることができる。
【0067】
また、
図1に示すように、この実施形態では、配線電極パターン10は、径の異なる第1の柱状導体6と第2の柱状導体7との間のインピーダンスを整合させるように形成されている。すなわち、配線電極パターン10がテーパー状に形成されることにより、各柱状導体6,7間のインピーダンスが整合されている。また、同図に示すように、各柱状導体6,7のうち、配線電極パターン10が接続されていない柱状導体6,7の他端は、絶縁基板9上に形成された引出用配線電極パターン13が接続されることにより、信号引出用の端子として使用される。
【0068】
また、
図2に示すように、この実施形態では、コイルコア3の底面と、絶縁基板9上に形成された配線電極パターン10とが接触するのを防止するために、コイルコア3が配置される部分にソルダーレジスト層14が形成されている。
【0069】
(コイル装置の製造方法)
図3〜
図10を参照してコイル装置1の製造方法の一例について説明する。
【0070】
図3〜
図10は
図1のコイル装置の製造方法の一例を示す図であって、それぞれ異なる工程を示す図である。なお、
図3の(a)はテープ状の樹脂シートを示す図、(b)はコイルコア3を示す斜視図、(c)はコイルコア3に第1の支持部材11が設けられた状態を示す斜視図、
図4の(a)はテープ状の樹脂シートを示す図、(b)は第2の支持部材12を示す斜視図、(c)は第2の支持部材12に樹脂膜12aを介して第2の柱状導体7が設けられた状態を示す斜視図である。また、
図5および
図6それぞれは、絶縁基板9を示す平面図、
図7の(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は正面図、
図8〜
図10それぞれは
図1のコイル装置の製造方法の一例を示す正面図である。
【0071】
まず、
図3(a)に示すように、非磁性材料である粘着性を有するテープ状の樹脂シートにそれぞれ第1の柱状導体6を成す複数の金属ピンが粘着配置された部材が準備されて、
図3(b)に示すように、環状のトロイダル型のコイルコア3が準備される。そして、複数の金属ピン(柱状導体6)が粘着配置されたテープ状の樹脂シートから成る部材がコイルコア3の外周面に貼着されることにより、非磁性部材により形成され、コイル電極4を成す複数の第1の柱状導体6がその外周面に平行に配列されて設けられた環状の第1の支持部材11が準備される(準備工程)。なお、テープ状の樹脂シートの長さがコイルコア3の平面視形状における周長よりも短く形成されることにより、第1の支持部材11が略C字状に形成されていてもよい。
【0072】
続いて、
図4に示すように、非磁性材料である粘着性を有するテープ状の樹脂シートにそれぞれ第2の柱状導体7を成す複数の金属ピンが粘着配置された部材が準備され、非磁性材料であるエポキシ樹脂等で形成された柱状の第2の支持部材12が準備される。また、複数の金属ピン(柱状導体7)が粘着配置されたテープ状の樹脂シートから成る部材が第2の支持部材12に貼着されることにより粘着性を有する樹脂膜12aが形成される。そして、コイル電極4を成す複数の第2の柱状導体7がその外周面に樹脂膜12aを介して平行に配列されて設けられた第2の支持部材12が準備される(準備工程)。
【0073】
なお、各柱状導体6,7を形成するために、約100μm〜約300μm程度の径の金属ピンを採用することができるが、例えば、第1の柱状導体6を約100μm程度の径の金属ピンにより形成し、第2の柱状導体7を約70μm程度の径の金属ピンにより形成するとよい。
【0074】
続いて、Cu箔が積層されたCu張りの絶縁基板9が用意される。そして、フォトリソグラフィを用いたエッチング処理により、
図5に示すように、絶縁基板9上に配線電極パターン10および引出用配線電極パターン13が形成される。次に、
図6に示すように、各柱状導体6,7の他端の接続位置を除く部分と、コイルコア3が配置される部分とにソルダーレジスト層14が形成される。そして、各柱状導体6,7の他端が接続される位置にはんだペースト15が塗布される。
【0075】
なお、この実施形態では、各配線電極パターン10の外側の端部に各柱状導体6の他端が接続される位置が設定されることにより、各柱状導体6の他端との接続位置が略大円周上に配置されている。また、各配線電極パターン10の内側の端部に各柱状導体7の他端が接続される位置が設定されることにより、各柱状導体7の他端との接続位置が略小円周上に配置されている。
【0076】
続いて、
図7(a)〜(b)に示すように、コイルコア3の外側に配置されている第1の支持部材11の外周面に配置された各第1の柱状導体6の他端が、略大円周上に配置された各配線電極パターン10それぞれの外側の端部に接続されることにより、第1の支持部材11およびコイルコア3が絶縁基板9上の所定位置に配置される。また、第2の支持部材12の外周面に配置された各第2の柱状導体7の他端が、略小円周上に配置された各配線電極パターン10それぞれの内側の端部に接続されることにより、第2の支持部材12がコイルコア3の内側の絶縁基板9上の所定位置に配置される。
【0077】
したがって、各第1の柱状導体6それぞれがコイル5の中心軸方向にほぼ直交するようにコイルコア3の外側に配置され、各第2の柱状導体7それぞれがコイル5の中心軸方向にほぼ直交するようコイルコア3の内側に配置されるので、各第1の柱状導体6と各第2の柱状導体7とがコイルコア3を挟んで対向するように配置される(配置工程)。また、配置工程において、第1の柱状導体6と、該第1の柱状導体6と互いに対を成す第2の柱状導体7の一方側に隣接する第2の柱状導体7との他端どうしがそれぞれ配線電極パターン10により接続される。なお、
図7(b)に示すように、各配線電極パターン10に接続されていない各柱状導体6,7はそれぞれ引出配線電極パターン13に接続される。
【0078】
また、
図7(a)〜(c)では、図面の簡略化を図るため、一部の構成が図示省略されている。すなわち、同図(a)では、配線電極パターン10,13が図示省略され、同図(b)では、配線電極パターン10,13が点線で記載され、同図(c)では、各柱状導体6,7の一部が図示省略されている。また、後の説明で参照する
図8〜
図10、
図18(a)〜(c)、
図19においても図面の簡略化を図るために一部の構成が図示省略されているが、その説明は省略する。
【0079】
続いて、
図8に示すように、コイルコア3と各柱状導体6,7とが、一般的な熱硬化性のモールド樹脂を用いて樹脂封止されて樹脂絶縁層2が形成される(封止工程)。続いて、
図9に示すように、各柱状導体6,7それぞれの一端が露出するように樹脂絶縁層2の一方主面2aの樹脂が研磨または研削により除去される(除去工程)。そして、樹脂絶縁層2の一方主面2aに露出する各柱状導体6,7それぞれの端面に、Ni/Auめっき層6a,7aが形成される。
【0080】
なお、除去工程において、各柱状導体6,7のそれぞれの一端が樹脂絶縁層2の一方主面2aから若干突出して露出するように、樹脂絶縁層2の一方主面2aの樹脂が除去されてもよい。また、例えば、各柱状導体6,7よりも軟らかく、樹脂絶縁層2よりも硬い材質の研磨剤で樹脂絶縁層
2の一方主面2aを研磨することにより、各柱状導体6,7の一端を樹脂絶縁層2から突出するように露出させることができる。
【0081】
そして、
図10に示すように、互いに対を成す第1の柱状導体6および第2の柱状導体7の一端どうしが、それぞれ、ワイヤボンディングプロセスにおいてボンディングワイヤ8により接続されることによって、コイル装置1が完成する(接続工程)。なお、ボンディングワイヤ8が樹脂絶縁層2に埋設されるように、モールド用の樹脂がさらに充填されてもよい。また、樹脂封止される前にワイヤボンディングプロセスを実行することで、互いに対を成す第1の柱状導体6および第2の柱状導体7の一端どうしをボンディングワイヤ8により接続した後に、コイルコア3およびボンディングワイヤ8が樹脂封止されてもよい。
【0082】
なお、上記したように、
図7(a)〜(c)に示す配置工程において接続工程の一部が同時に実行される。すなわち、配置工程において、第1の柱状導体6と、該第1の柱状導体6と互いに対を成す第2の柱状導体7の一方側に隣接する第2の柱状導体7との他端どうしが、それぞれ、配線電極パターン10により接続される。また、ワイヤボンディングプロセスにおいて、約20μm〜約30μmの径のボンディングワイヤ8が使用されるとよい。
【0083】
以上のように、この実施形態では、複数の第1の柱状導体6が、コイル5の中心軸の方向にほぼ直交するように配置されてコイルコア3の一側である外側に配列され、複数の第2の柱状導体7が、コイル5の中心軸の方向にほぼ直交するように配置されてコイルコア3の他側である内側に複数の第1の柱状導体6とコイルコ
ア3を挟むように配列されている。そして、互いに対を成す第1の柱状導体6および第2の柱状導体7の一端どうしがそれぞれボンディングワイヤ8により接続されている。そのため、ボンディングワイヤ8の長さや山形の形状などを調整するだけでコイル電極4全体の長さを調整することができる。また、コイル電極4全体の長さを調整することにより、コイル5のインダクタンスやインピーダンスを容易に調整することができる。したがって、コイル5のコイル特性を容易に調整することができるコイル装置1を提供することができる。
【0084】
また、柱状導体方向(
図2の紙面に向かって上下方向)におけるコイル電極4の配線を形成する各柱状導体6,7それぞれが金属ピンにより形成されている。そのため、各金属ピンの長さを長くするだけで、柱状導体方向におけるコイル電極4の配線長を容易に長くすることができる。したがって、柱状導体方向におけるコイルコア3の厚みを容易に厚くすることができる。
【0085】
また、各柱状導体6,7それぞれが金属ピンにより形成されているので、柱状導体方向におけるコイル電極4の配線を形成するために従来のように所定のギャップを設けて複数の貫通孔をプリント基板やプリプレグ等のコア基板に形成したりしなくても、各金属ピンを配列するだけで柱状導体方向におけるコイル電極4の配線を形成することができる。また、従来のスルーホール導体やビア導体のように、各金属ピンにより形成された柱状導体方向におけるコイル電極4の配線の太さが変化するおそれがない。したがって、コイルコア3の厚みが厚くインダクタンス特性の優れたコイル5を備え、コイル電極4の挟ピッチ化を図ることができるコイル装置1を提供することができる。また、コイル電極4の挟ピッチ化を図ることにより、コイル5の巻き数を増大させることができるので、優れたコイル特性を有するコイル5を備えるコイル装置1を提供することができる。
【0086】
また、コイル
5はトロイダル型のコイルコア3を有し各第1の柱状導体6はコイルコア3の一側である外側に配列され、各第2の柱状導体7はコイルコア3の他側である内側に配列されている。したがって、コイル5で発生する磁力線が主に環状のトロイダル型のコイルコア3を通過する閉磁路構造となるので、漏れ磁束の少ないコイル装置1を提供することができる。
【0087】
また、非磁性材料により環状または略C字状に形成された第1の支持部材11の外周面に各第1の柱状導体6が配置され、第1の支持部材11の内側にトロイダル型のコイルコア3がほぼ同心状に配置されている。また、非磁性材料により柱状に形成された第2の支持部材12の外周面に各第2の柱状導体7が配置され、コイルコア3の内側に第2の柱状導体7がほぼ同心状に配置されている。
【0088】
そのため、各柱状導体6,7とコイルコア3とを所定位置に配置する際に、従来のように、プリント基板やプリプレグ等のコア基板にスルーホール導体やビア導体を形成するための貫通孔を透設したり、コイルコア3を配置するための穴を形成するなどしてコイルコア3の配置場所を形成するための特殊な加工を行う必要がない。したがって、コア基板が不要な分、非常に安価にコイル装置1を製造することができ、しかも、小型化を図ることができるコイル装置1を提供することができる。
【0089】
また、第1、第2の支持部材11,12の形状を変更したり、第1、第2の支持部材11,12上での各柱状導体6,7の配置状態を調整するだけで、コイル電極4を形成する各柱状導体6,7とコイルコア3との間の間隔等の配置関係を容易に調整することができる。また、各柱状導体6,7とコイルコア3との配置関係を調整する際に、コア基板や樹脂封止用のモールド型などの設計変更も必要ない。したがって、設計変更に伴うコイル装置1の製造コストの増大を抑制することができる。
【0090】
また、コイルコア3の外周面に貼着された粘着性を有するテープ状の樹脂シートにより環状または略C字状を有する第1の支持部材11を容易に形成することができる。また、第1の支持部材11が粘着性を有するテープ状の樹脂シートにより形成されているので、第1の支持部材11の外周面に金属ピンにより形成された複数の第1の柱状導体6を容易に粘着配置することができる。また、各第1の柱状導体6とコイルコア3との間に樹脂シートが配置されるので、各第1の柱状導体6とコイルコア3とを絶縁された状態で近接配置することができる。
【0091】
また、コイルコア3に対する各第1の柱状導体6からの応力を樹脂シートにより緩和することができるので、コイル特性の向上を図ることができる。また、対を成す
第1の柱状導体6および
第2の柱状導体7の一端どうしがコイルコア3と接触しない状態でボンディングワイヤ8により接続されているので、コイル電極4によるコイルコア3に対する応力をさらに緩和することができ、コイル特性の向上を図ることができる。
【0092】
また、第2の支持部材12の外周面に粘着性を有する樹脂膜12aが形成されているので、第2の支持部材12の外周面に金属ピンにより形成された複数の第2の柱状導体7を容易に粘着配置することができる。また、粘着性を有するテープ状の樹脂シートが貼り付けられることにより、第2の支持部材12の外周面に容易に粘着性を有する樹脂膜12aを形成することができる。
【0093】
なお、柱状の第2の支持部材12の外周面にタック性を付与することにより、複数の金属ピンを第2の支持部材12の外周面に粘着配置してもよい。また、接着性を付与した複数の金属ピンを平行に等間隔で配列し、配列された各金属ピン上を第2の支持部材12を転がすことにより、第2の支持部材12の外周面に金属ピンを接着配置してもよい。
【0094】
また、互いに対を成す第1の柱状導体6および第2の柱状導体7の一端どうしがそれぞれボンディングワイヤ8により接続され、第1の柱状導体6と該第1の柱状導体6と互いに対を成す第2の柱状導体7の一方側に隣接する第2の柱状導体7との他端どうしがそれぞれ絶縁基板9上に形成されたライン状の配線電極パターン10により接続されて、コイル装置1が形成されている。したがって、例えば、絶縁基板9に他の部品をさらに搭載することができる汎用性の高い実用的なコイル装置1を提供することができる。
【0095】
また、コイルコア3が埋設された樹脂絶縁層2が設けられているので、樹脂絶縁層2によりコイルコア3を保護することができる。
【0096】
また、上記したコイル装置1の製造方法では、第1、第2の支持部材11,12およびコイルコア3を所定位置に配置するだけで、各柱状導体6,7およびコイルコア3を位置決め配置することができる。したがって、各柱状導体6,7とコイルコア3とを所定位置に配置する際に、従来のように、プリント基板やプリプレグ等のコア基板にスルーホール導体やビア導体を形成するための貫通孔を透設したり、コイルコア3を配置するための穴を形成するなどしてコイルコア3の配置場所を形成するための特殊な加工を行ったりしなくてもよい。そのため、コイル装置1の製造工程の大幅な簡略化を図ることができ、容易にコイル装置1を製造することができる。
【0097】
また、第1、第2の支持部材11,12の形状を変更したり、第1、第2の支持部材11,12の外周面上での各柱状導体6,7の配置状態を調整するだけで、コイル電極4を形成する各柱状導体6,7とコイルコア3との間の間隔等の配置関係を容易に調整することができる。また、各柱状導体6,7とコイルコア3との配置関係を調整する際に、コア基板や樹脂封止用のモールド型などの設計変更も必要ない。したがって、設計変更に伴うコイル装置1の製造コストの増大を抑制することができる。
【0098】
また、コア基板が不要な分、非常に安価にコイル装置1を製造することができる。また、コア基
板が不要な分、コイル装置1の低背化を図ることができる。
【0099】
また、
図20に示す従来の層間接続導体507は、まず、
コア基板502にレーザ加工等により貫通孔が透設され、貫通孔内にめっきが施されたり導電性ペーストが充填されることにより形成される。そのため、層間接続導体507の外径は貫通孔の内径の大きさによって決定されるので、層間接続導体507の外径を変更するには貫通孔の内径を変更する必要がある。ところが、貫通孔の内径の大きさを変更するには、レーザ加工等の条件を変更しなければならない。したがって、層間接続導体507の外径を変更する作業は非常に手間がかかるので、層間接続導体507の外径を変更すると製造コストが増大するという問題が生じる。また、貫通孔をレーザ加工により形成する場合には、レーザの特性上、すり鉢状の貫通孔が形成されるので、層間接続導体507の外径を一定にするのは困難である。
【0100】
しかしながら、この実施形態では、コイル5の中心軸の方向にほぼ直交する方向(柱状導体方向)におけるコイル電極4の配線が金属ピンから成る各柱状導体6,7により形成されている。したがって、各柱状導体6,7の外径を変更するだけで、簡単に柱状導体方向におけるコイル電極4の配線の太さを変更することができると共にその外形を一定にすることができる。
【0101】
また、複数の第1の柱状導体6と複数の第2の柱状導体7との間にコイルコア3が配置されて、対を成す柱状導体6および柱状導体7の一端どうしがボンディングワイヤ8により接続されている。したがって、例えば、各柱状導体6,7が設けられておらず、配線電極パターン10の一端部と、当該配線電極パターン10の一方側に隣接する配線電極パターン10の他端部とが、ボンディングワイヤ8によりコイルコア3を跨ぐように接続された構成と比較すると、各柱状導体6,7の長さの分だけ、ボンディングワイヤ8の山形の形状を小さくすることができる。そのため、ワイヤボンディングプロセスにおいて、対を成す柱状導体6および柱状導体7の一端どうしをボンディングワイヤ8により容易に接続することができる。なお、各柱状導体6,7の長さをコイルコア3の厚みより長くすることにより、ワイヤボンディングプロセスをさらに容易に実行することができる。
【0102】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態にかかるコイル装置について
図11〜
図17を参照して説明する。
【0103】
図11は本発明の第2実施形態にかかるコイル装置を示す断面図である。また、
図12は第1の支持部材および第2の支持部材とコイルコアとの配置状態を示す図であって、(a)は斜視部、(b)は平面図である。また、
図13〜
図15それぞれは
図11のコイル装置が備える第1の支持部材の製造方法の一例を示す図であって、それぞれ異なる工程を示す図である。なお、
図13および
図15それぞれの(a)は斜視図、(b)は平面図、
図14は平面図である。
図16および
図17それぞれは
図11のコイル装置が備える第2の支持部材の製造方法の一例を示す図であって、それぞれ異なる工程を示す図である。なお、
図16および
図17それぞれの(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【0104】
この実施形態のコイル装置1aが、
図1および
図2を参照して説明したコイル装置1と異なるのは、
図11および
図12(a),(b)に示すように、第1の支持部材111が熱硬化性のエポキシ樹脂等の非磁性材料により環状に形成されて、その内側にコイルコア3が同心状に配置されている点である。また、第1の支持部材111の外周面に、各第1の柱状導体6(金属ピン)を配置するための複数の溝111aがコイル5の中心軸(第1の支持部材111の周方向)の方向にほぼ直交するように形成され、各溝111aのそれぞれに第1の柱状導体6が配置されている。また、各第1の柱状導体6は、例えば振り込まれることにより各溝111a内に配置される。また、例えば各溝111a内にタック性を付与することにより、第1の柱状導体6が溝111a内に粘着固定される。
【0105】
また、第2の支持部材112の外周面に、各第2の柱状導体7(金属ピン)を配置するための複数の溝112aがコイル5の中心軸(第2の支持部材112の周方向)の方向にほぼ直交するように形成され、各112aのそれぞれに第2の柱状導体7が配置されている。また、各第2の柱状導体7は、例えば振り込まれることにより各溝112a内に配置される。また、例えば各溝112a内にタック性を付与することにより、第2の柱状導体7が溝112a内に粘着固定される。以下の説明においては、上記した第1実施形態と異なる点について説明し、その他の構成については上記した第1実施形態と同様であるため、同一符号を付すことによりその構成の説明は省略する。
【0106】
第1の支持部材111の製造方法の一例について説明する。
【0107】
まず、
図13(a),(b)に示すように、エポキシ樹脂等の熱硬化性の樹脂材料により形成された大径の円柱状の部材の外周面に、各第1の柱状導体6を配置するための複数の溝111aが円柱状の部材の周方向にほぼ直交するように形成される。次に、
図14に示すように、円柱状の部材の外周面に形成された複数の溝111aのそれぞれに第1の柱状導体6が配置される。そして、
図15(a),(b)に示すように、コイルコア3を配置することができるように、円柱状の部材の中央部分にパンチング加工等により孔が形成されることによって、その外周面に複数の第1の柱状
導体6が配置された第1の支持部材111が完成する。
【0108】
なお、円柱状の部材が割れるのを防止するために、半硬化(Bステージ)状態で孔を形成するためのパンチング加工が行われるとよい。また、パンチング加工によって孔が形成されることにより環状の第1の支持部材111が形成された後に、第1の支持部材111の外周面に各第1の柱状導体6が配置されてもよい。
【0109】
第2の支持部材112の製造方向の一例について説明する。
【0110】
まず、
図16(a),(b)に示すように、エポキシ樹脂等の熱硬化性の樹脂材料によりコイルコア3の内側に配置可能な形状に形成された円柱状の部材が用意される。そして、円柱状の部材の外周面に、各第2の柱状導体7を配置するための複数の溝112aが周方向にほぼ直交するように形成されることにより、第2の支持部材112が形成される。次に、
図17(a),(b)に示すように、柱状の第2の支持部材112の外周面に形成された複数の溝112aのそれぞれに第2の柱状導体7が配置されることにより、その外周面に複数の第2の柱状部材7が配置された第2の支持部材112が完成する。
【0111】
続いて、第1の支持部材111および第2の支持部材112とコイルコア3とが
図12(a),(b)に示すように一体化される。そして、上記した第1実施形態で説明した製造方法と同様に、一体化された第1の支持部材111および第2の支持部材112とコイルコア3とが絶縁基板9上に配置され(配置工程)、樹脂絶縁層2が形成された後に(封止工程、除去工程)、ボンディングワイヤ8を用いた接続工程が実行されることにより、コイル装置1aが製造される。
【0112】
なお、上記した第1実施形態と同様に、ボンディングワイヤ8が樹脂絶縁層2に埋設されるように、モールド用の樹脂がさらに充填されてもよい。また、樹脂封止される前にワイヤボンディングプロセスを実行することで、互いに対を成す第1の柱状導体6および第2の柱状導体7の一端どうしをボンディングワイヤ8により接続した後に、コイルコア3およびボンディングワイヤ8が樹脂封止されてもよい。
【0113】
以上のように、この実施形態では、一体化された第1の支持部材111および第2の支持部材112とコイルコア3とが絶縁基板9上に配置されることにより、コイル電極4の柱状導体方向における配線を上記した第1実施形態と同様に容易に形成することができる。
【0114】
また、第1の支持部材111の外周面に形成された複数の溝111aのそれぞれに金属ピンにより形成された第1の柱状導体6が配置されることにより、第1の支持部材111の外周面に各第1の柱状導体6を位置精度よく配置することができる。また、第2の支持部材112の外周面に形成された複数の溝112aのそれぞれに金属ピンにより形成された第2の柱状導体7が配置されることにより、第2の支持部材112の外周面に各第2の柱状導体7を位置精度よく配置することができる。
【0115】
なお、柱状の第1の支持部材111の外周面に複数の溝111aを形成せずに、複数の溝111aが形成されていない外周面にタック性を付与することにより、複数の金属ピンを第1の支持部材111の外周面に粘着配置してもよい。また、接着性を付与した複数の金属ピンを平行に等間隔で配列し、配列された各金属ピン上を第1の支持部材111を転がすことにより、第1の支持部材111の外周面に金属ピンを接着配置してもよい。
【0116】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態にかかるコイル装置の製造方法について
図18を参照して説明する。
図18は本発明の第3実施形態にかかるコイル装置の製造方法の一例を示す図であって、(a)〜(c)はそれぞれ異なる工程を示す図である。
【0117】
この実施形態のコイル装置が、上記した第1および第2実施形態において説明したコイル装置1,1aと異なる点は、
図18(a)〜(c)に示すように、コイル装置に第1の支持部材11,111および第2の支持部材12,112が設けられていない点である。以下の説明においては、
図18(a)〜(c)を参照しつつ
図5および
図6も参照して上記した第1および第2実施形態と異なる点について説明し、その他の構成については上記した第1実施形態と同様であるため、同一符号を付すことによりその構成の説明は省略する。
【0118】
この実施形態のコイル装置の製造方法の一例について説明する。
【0119】
まず、Cu箔が積層されたCu張りの絶縁基板9が用意される。そして、フォトリソグラフィを用いたエッチング処理により、
図5に示すように、絶縁基板9上に配線電極パターン10および引出用配線電極パターン13が形成される。次に、
図6に示すように、各柱状導体6,7の他端の接続位置を除く部分と、コイルコア3が配置される部分とにソルダーレジスト層14が形成される。そして、各柱状導体6,7の他端が接続される位置にはんだペースト15が塗布される。
【0120】
なお、上記した第1および第2実施形態と同様に、各配線電極パターン10の外側の端部に各柱状導体6の他端が接続される位置が設定されることにより、各柱状導体6の他端との接続位置が略大円周上に配置されている。また、各配線電極パターン10の内側の端部に各柱状導体7の他端が接続される位置が設定されることにより、各柱状導体7の他端との接続位置が略小円周上に配置されている。
【0121】
続いて、
図18(a)に示すように、金属ピンにより形成された各第1の柱状導体6の他端が、略大円周上に配置された各配線電極パターン10それぞれの外側の端部に接続されることにより、各第1の柱状導体6が絶縁基板9上の所定位置に配置される。また、金属ピンにより形成された各第2の柱状導体7の他端が、略小円周上に配置された各配線電極パターン10それぞれの内側の端部に接続されることにより、各第2の柱状導体7が絶縁基板9上の所定位置に配置される。
【0122】
そして、
図18(b)に示すように、各第1の柱状導体6と各第2の柱状導体7との間の絶縁基板9上のドーナツ状の領域に円環状のコイルコア3が配置される。したがって、各第1の柱状導体6それぞれがコイル5の中心軸方向にほぼ直交するようにコイルコア3の外側に配置され、各第2の柱状導体7それぞれがコイル5の中心軸方向にほぼ直交するようコイルコア3の内側に配置されるので、各第1の柱状導体6と各第2の柱状導体7とがコイルコア3を挟んで対向するように配置される。
【0123】
また、このときに、第1の柱状導体6と、該第1の柱状導体6と互いに対を成す第2の柱状導体7の一方側に隣接する第2の柱状導体7との他端どうしがそれぞれ配線電極パターン10により接続される。続いて、コイルコア3と各柱状導体6,7とが、一般的な熱硬化性のモールド樹脂を用いて樹脂封止されて樹脂絶縁層2が形成される。次に、
図18(c)に示すように、各柱状導体6,7それぞれの一端が露出するように樹脂絶縁層2の一方主面2aの樹脂が研磨または研削により除去される。そして、樹脂絶縁層2の一方主面2aに露出する各柱状導体6,7それぞれの端面に、Ni/Auめっき層6a,7aが形成される。
【0124】
続いて、互いに対を成す第1の柱状導体6および第2の柱状導体7の一端どうしが、それぞれ、ワイヤボンディングプロセスにおいてボンディングワイヤ8により接続されることによって、コイル装置1が完成する。なお、上記した第1実施形態と同様に、ボンディングワイヤ8が樹脂絶縁層2に埋設されるように、モールド用の樹脂がさらに充填されてもよい。また、樹脂封止される前にワイヤボンディングプロセスを実行することで、互いに対を成す第1の柱状導体6および第2の柱状導体7の一端どうしをボンディングワイヤ8により接続した後に、コイルコア3およびボンディングワイヤ8が樹脂封止されてもよい。
【0125】
<第4実施形態>
本発明の第4実施形態にかかるコイル装置の製造方法について
図19を参照して説明する。
図19は本発明の第4実施形態にかかるコイル装置を示す断面図である。
【0126】
この実施形態のコイル装置1bが、上記した第1実施形態において説明したコイル装置1と異なる点は、
図19に示すように、第1の柱状導体6と、該第1の柱状導体6と互いに対を成す第2の柱状導体7の一方側に隣接する第2の柱状導体7との他端どうしをそれぞれ接続する第2の接続部材も2本のボンディングワイヤ8により形成されている点である。以下の説明においては、上記した第1実施形態と異なる点について説明し、その他の構成については上記した第1実施形態と同様であるため、同一符号を付すことによりその構成の説明は省略する。
【0127】
この実施形態のコイル装置の製造方法の一例について説明する。
【0128】
まず、配線電極パターン10が形成された絶縁基板9の代わりに、粘着性を有する熱硬化性の樹脂により形成された支持層が設けられた離型シートが準備される。そして、上記した第1実施形態と同様に、離型シートに設けられた支持層上の所定位置に第1の支持部材11(コイルコア3)および第2の支持部材12が配置される。なお、離型シートは、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート、ポリイミド等の樹脂シートに離型層が形成されたシートや、フッ素樹脂などの樹脂シート自体が離型機能を有するシートなど、どのような離型シートを使用してもよい。
【0129】
続いて、コイルコア3と第1の支持部材11および第2の支持部材12とが、離型シート上の支持層と同じ樹脂を用いて樹脂封止されて支持層を含む樹脂絶縁層2が形成される。なお、支持層と異なる樹脂を用いて樹脂封止してもよい。次に、離型シートが剥離された後に、各柱状導体6,7それぞれの両端が露出するように樹脂絶縁層2の両主面2a,2bの樹脂が研磨または研削により除去される。そして、樹脂絶縁層2の両主面2a,2bに露出する各柱状導体6,7それぞれの端面に、Ni/Auめっき層6a,7aが形成される。
【0130】
続いて、
図19に示すように、樹脂絶縁層2の一方主面2aにおいて、互いに対を成す第1の柱状導体6および第2の柱状導体7の一端どうしがそれぞれボンディングワイヤ8(第1の接続部材)により接続される。また、樹脂絶縁層2の他方主面2bにおいて、第1の柱状導体6の他端と、当該第1の柱状導体6と互いに対を成す第2の柱状導体7の一方側に隣接する第2の柱状導体7の他端とがそれぞれボンディングワイヤ8(第2の接続部材)により接続されて、コイル装置1bが完成する。
【0131】
なお、上記した第2および第3実施形態においても、第1の柱状導体6と、該第1の柱状導体6と互いに対を成す第2の柱状導体7の一方側に隣接する第2の柱状導体7との他端どうしがそれぞれボンディングワイヤ8(第2の接続部材)により接続されていてもよい。この場合においても、絶縁基板9の代わりに、離型シートに設けられた支持層上の所定位置に、第1の支持部材111および第2の支持部材112を配置した後に樹脂絶縁層2を形成したり、各柱状導体6,7を配置した後に樹脂絶縁層2を形成すればよい。
【0132】
以上のように、この実施形態では、各接続部材それぞれがボンディングワイヤ8により形成されているので、各ボンディングワイヤ8の長さや山形の形状を調整することにより、コイル電極4の各柱状導体6,7どうしを接続する部分における配線を容易に立体(3次元)的に形成することができる。そのため、絶縁基板9や樹脂絶縁層2の主面上に平面(2次元)的に形成される配線電極パターン10と比較すると、各ボンディングワイヤ8が3次元的に配線されることにより、各ボンディングワイヤ8どうしが接触するのを防止しつつ各ボンディングワイヤ8の配線密度の向上を図ることができる。したがって、コイル電極4のさらなる挟ピッチ化を図ることができ、コイル5の巻回数の増大を図ることにより、コイル特性の向上を図ることができる。
【0133】
また、絶縁基板9の配線電極パターン10上に第1の支持部材11,111に支持された各柱状導体6および第2の支持部材12,112に支持された各柱状導体7が接続される構成では、配線電極パターン10と各柱状導体6,7とが位置合わせされて接続される。一方、この実施形態では、対応する各柱状導体6,7の端部どうしがワイヤボンディングプロセスにおいてボンディングワイヤ8により接続される。そのため、絶縁基板9の配線電極パターン10に各柱状導体6,7が接続される構成と比較すると、各柱状導体6,7間の距離が変わった場合などでも、挟ピッチで配置された各柱状導体6,7の端部どうしをボンディングワイヤ8により非常に高い位置精度で接続することができる。その結果、コイル電極4の更なる挟ピッチ化を図ることができる。
【0134】
また、コイル電極4の挟ピッチ化を図ることにより、コイル5の巻回数の増大を図ることができる。また、コイル電極4の挟ピッチ化を図ることにより、コイル5の小型化を図り、コイル装置1bの小型化を図ることができる。
【0135】
なお、本発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、上記したもの以外に種々の変更を行なうことが可能である。例えば、上記した実施形態では、トロイダル型のコイルコア3を例に挙げて説明を行ったが、コイルコアの形状としてはトロイダル型に限定されるものではなく、直線上のものや、略C字状のものなど、種々の形状のコイルコアを採用することができる。また、コイル装置が備えるコイルにより、コモンモードノイズフィルタやチョークコイルなどの種々の機能を備えるコイルを構成することができる。
【0136】
また、第1の接続部材および/または第2の接続部材が、1本もしくは3本以上のボンディングワイヤにより形成されていてもよい。また、各柱状導体6,7の径が同一であってもよい。また、各柱状導体6,7が、例えば、樹脂絶縁層2に透設された貫通孔内にめっきが施されたり導電性ペーストが充填されることにより形成されたビア導体により形成されていてもよい。また、このようなビア導体が、第1の支持部材および/または第2の支持部材に形成されていてもよい。また、コイル装置1が他の樹脂層や他の基板に埋設されていてもよい。
【0137】
また、各柱状導体6,7の両端それぞれが樹脂絶縁層2から突出して露出するように構成されていてもよいし、露出していない構成であってもよい。また、各柱状導体6,7の太さや長さなどは、要求されるコイル装置の構成に応じて適宜変更すればよい。また、上記した各実施形態において、樹脂絶縁層2は必ずしも必要ない。
【0138】
また、各柱状導体6,7の対応する一端どうしを接続する方法、および、各柱状導体6,7の対応する他端どうしを接続する方法は上記した例に限られるものではなく、例えば、フォトリソグラフィ技術やスクリーン印刷を用いて樹脂絶縁層2の主面2a,2b上に形成された配線電極パターンにより接続してもよいし、どのような部材により各柱状導体6,7どうしを接続してもよい。また、第1の接続部材および第2の接続部材の両方が、絶縁基板や樹脂絶縁層に形成された配線電極パターンにより形成されていてもよい。
【0139】
また、第1の支持部材および第2の支持部材は熱硬化性樹脂により形成されていてもよい。また、タック性が付与された第1の支持部材の外周面に各第1の柱状導体が直接粘着配置され、タック性が付与された第2の支持部材の外周面に前記第2の柱状導体が直接粘着配置されていてもよい。このようにすれば、粘着性を有する熱硬化性樹脂により形成された第1の支持部材および第2の支持部材それぞれの外周面に、容易に第1の柱状導体および第2の柱状導体をそれぞれ粘着配置することができる。
【0140】
そして、コイルコアの周囲にコイル電極が螺旋状に巻回されて形成されたコイルを備えるコイル装置とその製造方法に本発明を広く適用することができる。