特許第6409337号(P6409337)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6409337
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/00 20060101AFI20181015BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20181015BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
   B60K35/00 A
   G02B27/01
   H04N5/74 Z
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-107428(P2014-107428)
(22)【出願日】2014年5月23日
(65)【公開番号】特開2015-221651(P2015-221651A)
(43)【公開日】2015年12月10日
【審査請求日】2017年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】舛屋 勇希
(72)【発明者】
【氏名】秦 誠
(72)【発明者】
【氏名】宇都 佑哉
(72)【発明者】
【氏名】中村 崇
【審査官】 稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−318324(JP,A)
【文献】 特開2011−155390(JP,A)
【文献】 特開2011−121401(JP,A)
【文献】 特開2005−075190(JP,A)
【文献】 特開2013−174667(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0201335(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0251768(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/208081(WO,A1)
【文献】 特開2015−049842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00
G02B 27/01
H04N 5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り物に搭載され、透光部材に映像を表す表示光を投射することで、前記透光部材を透かして視認される風景に重畳させて前記映像の虚像を表示する表示装置であって、
前記表示光を出射する表示手段と
前記表示手段が出射した前記表示光を、前記透光部材に向けて反射させる反射手段と、
前記乗り物の外にある所定の対象物を特定する特定手段と、
前記表示手段を制御することで、前記映像内に、前記特定手段が特定した前記対象物の少なくとも一部と重畳して視認される第1の捕捉画像を表示させる制御手段と、
前記乗り物の振動量を検出する振動検出手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記振動検出手段が検出した振動量が予め定められた閾値を超えた場合、前記第1の捕捉画像に代えて、前記映像内に、前記対象物の少なくとも一部と重畳して視認される第2の捕捉画像を表示させ、
前記第2の捕捉画像は、
前記第1の捕捉画像よりも、画像端を構成する画素と、画像外の領域であって前記画像端に隣接する領域との色の濃淡差が低減された画像であって、前記画像端から中央側に向かって色が濃くなるグラデーション画像である、
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記第1の捕捉画像は、枠を示す枠画像であり、前記枠内に前記対象物の少なくとも一部を位置させて表示される、
ことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第2の捕捉画像を構成する複数の画素における隣り合う画素間の色の濃淡差は、
前記第1の捕捉画像の画像端を構成する画素と、前記第1の捕捉画像外の領域であって前記第1の捕捉画像の画像端に隣接する領域との色の濃淡差よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第2の捕捉画像を構成する複数の画素における隣り合う画素間の色の濃淡差は、
前記第1の捕捉画像における前記枠部分と前記枠内の領域との色の濃淡差よりも小さい、
ことを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の表示装置として、例えば、特許文献1に開示されたものがある。特許文献1に開示された装置は、車両のフロントガラスに映像を表す光を投射することで、その映像を虚像としてユーザに視認させるヘッドアップディスプレイ(HUD:Head-Up Display)装置として構成されている。この種のHUD装置によって、フロントガラス等の透光部材越しに見える風景と重畳させて、車外の対象物に関する情報を表示し、AR(Augmented Reality)を実現することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−121401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ARを実現するHUD装置では、前方に接近した車両や歩行者などの車外の対象物に、重畳させて画像(以下、捕捉画像)を表示することにより、対象物に関する注意喚起を行う場合がある。この場合、車両の振動によって対象物と捕捉画像との位置関係にずれが生じると、視認者に違和感を与えてしまう。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、所定の対象物と、これに重畳して表示される捕捉画像とに位置ずれが生じても、視認者に与える違和感を低減することができる表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る表示装置は、
乗り物に搭載され、透光部材に映像を表す表示光を投射することで、前記透光部材を透かして視認される風景に重畳させて前記映像の虚像を表示する表示装置であって、
前記表示光を出射する表示手段と
前記表示手段が出射した前記表示光を、前記透光部材に向けて反射させる反射手段と、
前記乗り物の外にある所定の対象物を特定する特定手段と、
前記表示手段を制御することで、前記映像内に、前記特定手段が特定した前記対象物の少なくとも一部と重畳して視認される第1の捕捉画像を表示させる制御手段と、
前記乗り物の振動量を検出する振動検出手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記振動検出手段が検出した振動量が予め定められた閾値を超えた場合、前記第1の捕捉画像に代えて、前記映像内に、前記対象物の少なくとも一部と重畳して視認される第2の捕捉画像を表示させ、
前記第2の捕捉画像は、
前記第1の捕捉画像よりも、画像端を構成する画素と、画像外の領域であって前記画像端に隣接する領域との色の濃淡差が低減された画像であって、前記画像端から中央側に向かって色が濃くなるグラデーション画像である、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、所定の対象物と、これに重畳して表示される捕捉画像とに位置ずれが生じても、視認者に与える違和感を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用表示システムのブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る表示装置の車両への搭載態様を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る表示装置の概略構成図である。
図4】虚像として視認される映像内に表示される各種画像を説明するための図である。
図5】本発明の一実施形態に係る捕捉画像を説明するための図であり、(a)は第1捕捉画像を示す図であり、(b)は第2捕捉画像を説明するための図である。
図6】本発明の一実施形態に係る捕捉画像を説明するための図であり、(a)は第1捕捉画像を示す図であり、(b)は第2捕捉画像を説明するための図である。
図7】本発明の一実施形態に係る表示形態変更処理のフローチャートである。
図8】変形例に係る捕捉画像を説明するための図であり、(a)は第1捕捉画像を示す図であり、(b)は第2捕捉画像を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態に係る表示装置を、図面を参照して説明する。
【0010】
本実施形態に係る車両用表示システム1は、図1に示すように、表示装置100と、情報取得部200と、ECU(Electronic Control Unit)300と、を備える。
車両用表示システム1は、各部が通信することにより、図2に示すように、車両2に搭乗したユーザ4(主に運転者)に、車両2に関する各種情報(以下、車両情報)を表示する。なお、車両情報は、車両2自体の情報のみならず、車両2の外部情報も含む。
【0011】
(表示装置100)
表示装置100は、図2に示すように、車両2に搭載される。表示装置100は、車両2のフロントガラス3に表示光Nを投射することで、表示光Nが表す映像を虚像Vとしてフロントガラス3の前方に表示するヘッドアップディスプレイ(HUD)として構成されている。表示光Nが表す映像は、車両情報を報知するためのものである。
これにより、ユーザ4は、フロントガラス3越しに見える風景と重なって表示される車両情報を視認することができる。表示装置100は、例えば、車両2のインスツルメントパネル内に配置されている。
【0012】
表示装置100は、図1図3に示すように、表示手段10と、反射手段20と、筐体30と、表示コントローラ40と、を備える。
【0013】
表示手段10は、表示コントローラ40の制御の下で、車両情報を報知するための映像を表示する。表示手段10は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、LCDを背後から照明するバックライト等から構成されている。表示手段10は、映像を後述の平面鏡21に向かって表示する。これにより、映像を表す表示光Nが平面鏡21に向かって出射される。
なお、表示手段10は、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイや、DMD(Digital Micromirror Device)、反射型及び透過型のLCOS(登録商標:Liquid Crystal On Silicon)等で構成されてもよい。
【0014】
反射手段20は、平面鏡21と、凹面鏡22とから構成されている。平面鏡21は、例えばコールドミラーからなり、表示手段10からの表示光Nを凹面鏡22へと反射させる。凹面鏡22は、表示手段10から出射されて平面鏡21で反射した表示光Nを拡大しつつ、フロントガラス3へと反射させる。これにより、ユーザ4に視認される虚像Vは、表示手段10に表示されている映像が拡大されたものとなる。
なお、本実施形態では、反射手段20が2枚の鏡で構成される例を示しているが、反射手段20は、1枚、又は3枚以上の鏡から構成されてもよい。
【0015】
筐体30は、表示手段10及び反射手段20を、各々が上述の機能を実現可能な適宜の位置に収容する。筐体30は、合成樹脂や金属により遮光性を有して箱状に形成されている。筐体30には、表示光Nの光路を確保する開口部30aが設けられている。筐体30には、開口部30aを塞ぐように、透光性カバー31が取り付けられている。透光性カバー31は、アクリル等の透光性樹脂から形成されている。
【0016】
凹面鏡22で反射した表示光Nは、透光性カバー31を透過して、フロントガラス3へと向かう。このようにして、表示装置100からは、フロントガラス3に向けて表示光Nが出射される。この表示光Nがフロントガラス3でユーザ4に向かって反射することで、ユーザ4から見てフロントガラス3の前方に虚像Vが表示される。
なお、凹面鏡22は、図示しないアクチュエータにより、回転移動または平行移動可能に設けられていてもよい。例えば、凹面鏡22が、図3における時計回り・反時計回りに回転可能に設けられ、凹面鏡22が回転して表示光Nの反射角が変更されることで、虚像Vの表示位置が調整可能となっていてもよい。
【0017】
表示コントローラ40は、表示手段10の表示動作を制御するものであり、制御部41と、記憶部42と、画像メモリ43と、入出力部44と、を備える。
【0018】
制御部41は、CPU(Central Processing Unit)、GDC(Graphics Display Controller)、表示手段10を駆動するドライバなどから構成されている。CPUは、記憶部42内に予め記憶されたプログラムを読み出し、実行することで、表示装置100の各部の動作を制御する。CPUとGDCとはインターフェイス回路により接続され、双方向通信を行う。GDCは、CPUと協働して表示手段10の動作を制御し、画像メモリ43に記憶されている画像データに基づく映像を表示手段10に表示させる。また、制御部41は、内蔵されたタイマで適宜、計時を行う。
【0019】
記憶部42は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等から構成され、CPUの処理手順を示す動作プログラム(特に、後述する表示形態変更処理の動作プログラム)を記憶する。
【0020】
画像メモリ43は、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等から構成され、表示手段10に表示させる映像(つまり、虚像Vとして視認される映像)のデータであって、後述する捕捉画像などの各種画像を含む画像データを記憶する。
【0021】
入出力部44は、情報取得部200及びECU300の各々と通信可能に接続されている。制御部41は、入出力部44を介して、情報取得部200及びECU300とCAN(Controller Area Network)などにより通信を行う。
【0022】
入出力部44を介して、情報取得部200からは車外情報や車両状態情報(これら情報は後述する)が制御部41に入力される。制御部41は、入力された情報に応じた各種画像の表示形態や、映像内における表示位置を決定する。そして、制御部41は、各種画像が後述の対象物に対応する位置に表示されるように制御する。
【0023】
また、制御部41は、表示手段10を構成するLCD、及び、バックライトが含む光源を制御することにより、各種画像の輝度や明度(つまり、虚像Vの輝度や明度)を調整する。また、制御部41は、後述の車速センサ240からの車速情報に基づいて加速度を算出し、加速度から車両2の振動量を算定する。そして、振動量が所定量を超えた場合に、制御部41は、後述の捕捉画像の表示形態を変更させる。詳しくは、後述する。
【0024】
(情報取得部200)
情報取得部200は、前方情報取得部210と、ナビゲーションシステム220と、GPS(Global Positioning System)コントローラ230と、車速センサ240と、を備える。
【0025】
前方情報取得部210は、車両2の前方の情報を取得するものであり、ステレオカメラ211と、撮像画像解析部212と、を有する。ステレオカメラ211は、車両2が走行する道路を含む前方風景を撮像する。撮像画像解析部212は、ステレオカメラ211が撮像した画像のデータ(撮像データ)を取得し、取得した撮像データをパターンマッチング法により画像解析することで、車両2の前方における各種情報を取得する。
撮像画像解析部212は、前方車両、障害物、歩行者などの物体(対象物の一例)に関する情報(対象物の位置、車両2から対象物までの距離など)を取得する。また、対象物は、道路自体であってもよい。この場合、撮像画像解析部212は、車線、白線、停止線、横断歩道、道路の幅員、車線数、交差点、カーブ、分岐路等に関する情報を取得する。撮像画像解析部212は、撮像画像を解析して得た対象物の情報を表示コントローラ40に出力する。
【0026】
ナビゲーションシステム220は、地図データを記憶する記憶部を有し、GPSコントローラ230からの位置情報に基づいて、現在位置近傍の地図データを記憶部から読み出し、案内経路を決定する。そして、ナビゲーションシステム220は、決定した案内経路に関する情報を表示コントローラ40に出力する。また、ナビゲーションシステム220は、地図データを参照することにより、車両2の前方の施設(対象物の一例)の名称・種類や、施設と車両2との距離などを示す情報を表示コントローラ40に出力する。地図データでは、道路に関する情報(道路の幅員、車線数、交差点、カーブ、分岐路等)、制限速度などの道路標識に関する規制情報、車線が複数存在する場合の各車線についての情報(どの車線がどこに向かう車線か)などの各種情報が位置データと対応付けられている。ナビゲーションシステム220は、GPSコントローラ230からの位置データに基づいて、現在位置近傍の地図データを読み出し、表示コントローラ40に出力する。
【0027】
GPSコントローラ230は、人工衛星などからGPS信号を受信し、受信したGPS信号に基づいて車両2の位置の計算を行う。GPSコントローラ230は、車両2の位置を計算すると、その位置データをナビゲーションシステム220に出力する。
【0028】
車速センサ240は、車両2の速度を検出し、検出した車速を示す車速情報を表示コントローラ40に出力する。
【0029】
このように構成される情報取得部200は、入出力部44を介して、制御部41に、車両2の外部の対象物の有無や、対象物の種類・位置、車両2と対象物との距離などを示す「車外情報」や、車両2の速度などを示す「車両状態情報」を送出する。
【0030】
(ECU300)
ECU300は、車両2の各部を制御するものであり、車両2に搭載される種々のセンサから出力される信号に基づき、表示装置100に表示させる画像を決定する。そして、決定した画像についてのデータを表示コントローラ40に出力する。なお、このような画像の決定は、制御部41が行ってもよい。
【0031】
以上の構成からなる車両用表示システム1では、図4に示すように、表示領域Eに虚像Vが表示される。表示領域Eは、ユーザ4が虚像Vを視認可能な範囲(所謂アイボックス)として規定される。なお、車両用表示システム1では、実景に重畳させて情報を表示するため、虚像Vの結像距離は大きめ(例えば、15m以上)に設定されている。
【0032】
表示装置100が表示する虚像V(表示手段10に表示される映像)は、図4に示すように、案内経路画像V1、白線認識画像V2、運航状態画像V3、及び規制画像V4を含む。
案内経路画像V1は、車両2の経路誘導をするための画像であり、ナビゲーションシステム220からの案内経路に関する情報に基づいて表示される。白線認識画像V2は、車線の存在を認識させるための画像であり、前方情報取得部210からの情報に基づいて表示される。運航状態画像V3は、車速、エンジン回転数など(図示例では車速)の車両2の運航状態を示す画像であり、車速センサ240やECU300からの情報に基づいて表示される。規制画像V4は、制限速度などの規制情報を示す画像であり、ナビゲーションシステム220からの規制情報に基づいて表示される。なお、表示コントローラ40では、表示コンテンツ毎にレイヤーが割り当てられており、個別の表示制御が可能となっている。
【0033】
また、虚像Vとしてユーザ4に視認される画像は、上記の各種画像V1〜V4の他に、前方車両、歩行者などの所定の対象物(実景内に現れる車外の対象物)に重畳して表示され、対象物の存在をユーザに注意喚起する捕捉画像を含む。捕捉画像は、前方情報取得部210の撮像画像解析部212によって特定された対象物の位置に基づいて表示される。
捕捉画像は、例えば、前方車両に追従するように車両2の速度を制御するアダプティブクルーズコントロール(ACC:Adaptive Cruise Control)を使用する際に、特定された前方車両と重畳して表示され、ユーザ4に、追従する前方車両を認識させる。捕捉画像が捉える対象物は、前方車両に限られるものではないが、説明の理解を容易にするため、以下では、図5(a)、(b)に示すように、対象物Wが前方車両であるものとする。なお、捕捉画像は、前記の各種画像V1〜V4と同時に、表示領域E内に表示されることが可能であるが、図5(a)、(b)では、見易さを考慮して、虚像Vの一部として視認される捕捉画像のみを示した。
【0034】
本実施形態では、制御部41は、表示手段10を制御し、前方情報取得部210によって特定された対象物Wに重畳させて、図5(a)に示す第1の捕捉画像Va、または図5(b)に示す第2の捕捉画像Vbを表示させる。
【0035】
第1の捕捉画像Vaは、特定された対象物Wの少なくとも一部と重畳して視認される画像である。具体的には、第1の捕捉画像Vaは、枠を示す枠画像であり、枠内に対象物Wの少なくとも一部を位置させて表示される。なお、第1の捕捉画像Vaが対象物Wの少なくとも一部と重畳するとは、枠の外形内に対象物Wの少なくとも一部が位置することを言う。したがって、図5(a)に示すように、第1の捕捉画像Vaが示す枠内領域に対象物Wが収まっている状態も、対象物Wが第1の捕捉画像Vaと重畳している状態である。
【0036】
制御部41は、表示手段10を制御して、このような第1の捕捉画像Va(虚像Vとして視認される第1の捕捉画像Vaと同義)を表示させることにより、ユーザ4に前方車両の存在を認識させる。
しかしながら、第1の捕捉画像Vaのような表示態様であると、車両2の振動によって対象物Wと第1の捕捉画像Vaとの位置関係にずれが生じると、ユーザ4に違和感を与えてしまう場合がある。例えば、ユーザ4が第1の捕捉画像Vaの枠部分における任意の位置P1(図6(a)参照)を注視していた場合、振動により枠部分が位置P1から外れたり復帰したりを繰り返すと、ちらつきや点滅が発生したようになり、違和感が生じる。
そこで、制御部41は、後述の表示形態変更処理を実行することにより、車両2の振動量が捕捉画像の位置ずれを許容できないほどに大きくなったと判定した場合は、第1の捕捉画像Vaを第2の捕捉画像Vbへと変更させる。
【0037】
第2の捕捉画像Vbは、第1の捕捉画像Vaの枠内を塗り潰したような態様の画像である。
第2の捕捉画像Vbは、第1の捕捉画像Vaよりも、画像端を構成する画素と、画像外の領域であって画像端に隣接する領域との色の濃淡差が低減された画像である。これについて、以下説明する。
【0038】
図6(a)、(b)に、虚像Vとして視認される映像の一部を画素単位で表した図を示す。なお、実際の画素は同図に示すものよりも細密であるが、見やすさを考慮して同図のように模式的に示している。
【0039】
図6(a)に示す例では、第1の捕捉画像Vaの画像端を構成する画素は、枠を表現する画素群であり、位置P1に表示される画素を含むものである。また、第1の捕捉画像Va外の領域であって画像端に隣接する領域は、位置P2に表示される画素を含み、枠を表現する画素群を取り囲む領域である。
第1の捕捉画像Vaの画像端を構成する画素と、枠を表現する画像群を取り囲む領域との色の濃淡差を以下、第1の濃淡差という。なお、色の濃淡差とは、色の輝度差、または明度差を言う。
【0040】
図6(b)に示す例では、第2の捕捉画像Vbの画像端(見やすさのため点線Aで囲った)を構成する画素は、点線Aに沿う画素群であり、位置P3に表示される画素を含むものである。また、第2の捕捉画像Vb外の領域であって画像端に隣接する領域は、位置P4に表示される画素を含み、点線Aの外側を取り囲む領域である。
第2の捕捉画像Vbの画像端を構成する画素と、点線Aの外側を取り囲む領域との色の濃淡差を以下、第2の濃淡差という。
【0041】
第2の捕捉画像Vb表示時における第2の濃淡差は、第1の濃淡差よりも小さくなるように制御される。つまりは、画像端と、画像の外側であって画像端に隣接する領域との間の表示コントラストが、第1の捕捉画像Vaに比べて、第2の捕捉画像Vbでは小さく、画像内外の境界をあえて不明瞭にしている。
これにより、例えば、ユーザ4が第2の捕捉画像Vbにおける任意の位置P3を注視していた場合に、振動により第2の捕捉画像Vbの画像端が位置P3から外れたり復帰したりを繰り返しても、ユーザ4にちらつき等として認識されにくい。
【0042】
また、第2の捕捉画像Vbは、画像端から中央部に向かって色が濃くなる(輝度または明度が低くなる)グラデーション画像として表示される。これにより、第2の捕捉画像Vbを構成する複数における画素間の色の濃淡差が小さくなるため、第2の捕捉画像Vbが振動しても、前述のように発生するちらつき等が目立たない。また、第2の捕捉画像Vbを、このようなグラデーション画像にすることにより、画像端部の色を薄くしたことによる違和感も生じず、見栄えの良い表示となる。
【0043】
このようにグラデーション画像として表示される第2の捕捉画像Vbは、下記(1)、(2)の少なくともいずれかを満たす。
(1)第2の捕捉画像Vbを構成する複数の画素における隣り合う画素間の色の濃淡差は、前述した第1の濃淡差よりも小さい。
(2)第2の捕捉画像Vbを構成する複数の画素における隣り合う画素間の色の濃淡差は、第1の捕捉画像Vaにおける枠部分と枠内の領域との色の濃淡差よりも小さい。
【0044】
第1の捕捉画像Vaの枠部分の色は、注意喚起に適した色であり、例えば赤である。そして、第2の捕捉画像Vbの色は、例えば赤の濃淡によるグラデーションである。なお、第1の捕捉画像Vaの枠部分の色と、第2の捕捉画像Vbの色とは、同系色が好ましいが、同系色でなくともよい。また、色の濃度の比較において、画像端との比較対象となる領域(画像外領域、または枠内領域)としては、適宜の画素群を選択すればよい。
【0045】
表示装置100は、虚像Vとして視認される映像内に、前記の各種画像V1〜V4などを表示することが可能であるが、以下では、所定の場合に、第1の捕捉画像Vaを第2の捕捉画像Vbへと変更する、本実施形態に特有の表示形態変更処理について説明する。
【0046】
(表示形態変更処理)
制御部41は、例えば車両2のイグニッション・オンにより表示装置100が起動すると、図7に示す表示形態変更処理を開始する。制御部41は、処理を開始すると、所定時間毎に車速センサ240から車速情報を取得し(ステップS1)、車速の時間変化から車両2の加速度を算出する(ステップS2)。
【0047】
続いて、制御部41は、算出した加速度に基づいて車両2の振幅Lを取得する(ステップS3)。例えば、制御部41は、記憶部42に予め記憶されたデータであって、加速度と、ある加速度において想定される鉛直方向(ユーザ4から見て上下方向)の振幅とを対応させたテーブルデータを参照して、算出した加速度に対応する振幅Lを取得する。なお、振幅Lは所定の数式により求められるものであってもよい。また、振幅Lは、ユーザ4から見ての上下方向、前後方向、左右方向のうち少なくとも一方向における振幅であればよい。
【0048】
続いて、制御部41は、取得した振幅Lが、予め記憶部42に記憶された閾値Lthよりも大きいか否かを判別する(ステップS4)。
【0049】
振幅Lが閾値Lthよりも大きい場合(ステップS4;Yes)、制御部41は、振動検出フラグをオンにし(フラグを立て)(ステップS5)、ステップS6の処理を実行する。ステップS6において制御部41は、現在時刻を、振動検出時刻Tstとして記憶部42に記憶させ、ステップS9の処理を実行する。
【0050】
振幅Lが閾値Lth以下の場合(ステップS4;No)、制御部41は、振動検出時刻Tstから、予め記憶部42に記憶された期間Tthが経過しているか否か(現在時刻をTとした場合に、|T−Tst|≧Tthが成立するか否か)を判別する(ステップS7)。
【0051】
期間Tthが経過している場合(ステップS7;Yes)、制御部41は、振動検出フラグをオフにし(フラグを下げて)(ステップS8)、ステップS9の処理を実行する。なお、振幅Lが閾値Lth以下であり(ステップS4;No)、且つ、振動検出フラグがオフであった場合は、制御部41は、ステップS4の直後にステップS9の処理を実行する。
期間Tthが経過していない場合(ステップS7;No)、制御部41は、振動検出フラグをオフにせずにステップS9の処理を実行する。
ステップS7及びステップS8は、捕捉画像が瞬間的に何度も切り替わり、表示が煩雑になってしまうことを防ぐための処理である。
【0052】
ステップS9で、制御部41は、振動検出フラグがオンであるか否かを判別する。
振動検出フラグがオフの状態である場合(ステップS9;No)、捕捉画像のずれがユーザ4にとって気にならない程の車両2の振動量であると想定できるため、制御部41は、第1の捕捉画像Vaを表示手段10に表示させる(ステップS10)。
一方、振動検出フラグがオンの状態である場合(ステップS9;Yes)、捕捉画像のずれを許容できない程に車両2の振動量が大きいと想定できるため、制御部41は、表示手段10を制御して、第1の捕捉画像Vaを消去させ(ステップS11)、第2の捕捉画像Vbを表示させる(ステップS12)。つまり、ステップS11及びステップS12の処理で、制御部41は、第1の捕捉画像Vaを第2の捕捉画像Vbへと変更させる。
【0053】
第1の捕捉画像Vaから第2の捕捉画像Vbへの変更は、次第に表示態様が変化することでなされてもよい。例えば、第1の捕捉画像Vaの枠部分が消去された後に、枠画像が示す枠内がグラデーション表現で塗り潰されることによって、第2の捕捉画像Vbが現れるようにしてもよい。
【0054】
制御部41は、例えばイグニッション・オフにより表示装置100がオフになるまで、上記の各処理を繰り返し実行する。以上が表示形態変更処理である。
【0055】
なお、以上の捕捉画像は、あくまで一例である。捕捉画像として、様々な形状・表示態様のものを適用可能である。以下に変形の一例を説明する。
【0056】
(捕捉画像の変形例)
第1の捕捉画像は、図8(a)に示すように、枠画像でないものであってもよい。同図に示す第1の捕捉画像Vcは、楕円形状をなし、前方車両である対象物Wの一部と重畳して視認されるようにして、制御部41の制御の下で表示される画像である。第1の捕捉画像Vcは、例えば、略均一の輝度、または明度で、ベタ塗り状の図形として表現される。
そして、振動検出時に(振動検出フラグがオンの状態である場合(ステップS9;Yes))、表示される第2の捕捉画像Vdは、第1の捕捉画像Vcと同様の形状であり、対象物Wの一部と重畳して視認される画像である。また、第2の捕捉画像Vdは、画像端から中央部に向かって色が濃くなる(輝度または明度が低くなる)グラデーション画像として表示される。
このような捕捉画像においても、第2の捕捉画像Vdは、第1の捕捉画像Vcよりも、画像端を構成する画素と、画像外の領域であって画像端に隣接する領域との色の濃淡差が低減された画像である。また、第2の捕捉画像Vdを構成する複数の画素における隣り合う画素間の色の濃淡差は、第1の捕捉画像Vcの画像端を構成する画素と画像端を外から取り囲む領域との色の濃淡差よりも小さい。
【0057】
また、図示しないが、第1の捕捉画像は、矩形の枠でなく、リング状・多角形状の枠を示す枠画像であってもよい。また、第2の捕捉画像は、モザイク状の画像であってもよい。
【0058】
また、図5(b)、図8(b)では、第2の捕捉画像を、図中、左右上下方向における中央部に向かって色が濃くなるグラデーション画像として表現したがこれに限られない。第2の捕捉画像は、画像端から、少なくとも左右方向における中心に向かって色が濃くなることが好ましいが、上下方向においては、画像の中心位置から偏った位置に向かって色が濃くなるようにしてもよい。例えば、グラデーション画像として表された第2の捕捉画像のうち、最も色が濃くなる部分が、下方に偏っていてもよい。このようにすれば、通常、空よりも道路のほうが色が濃いという風景の実状に合わせた、見栄えの良い表示が可能である。
【0059】
また、第1の捕捉画像と第2の捕捉画像との外形の大きさを異ならせても良い。また、グラデーション表現で第2の捕捉画像を表示する場合、車両2から対象物Wへの距離に応じて、濃淡を変化させてもよい。例えば、対象物Wが車両2に近づくに従って、第2の捕捉画像内において他の領域よりも色の濃い領域が広範になっていくようにしてもよい。
【0060】
以上に説明した表示装置100は、車両2(乗り物の一例)に搭載され、フロントガラス3(透光部材の一例)に映像を表す表示光Nを投射することで、フロントガラス3を透かして視認される風景に重畳させて映像の虚像Vを表示する。
表示装置100は、表示光Nを出射する表示手段10と、表示手段10が出射した表示光Nを、フロントガラス3に向けて反射させる反射手段20と、表示手段10を制御する制御部41と、を備える。制御部41は、情報取得部200(主に、前方情報取得部210)と協働して、車両2の外にある所定の対象物Wを特定する特定手段として機能する。また、制御部41は、映像内に、特定手段が特定した対象物Wの少なくとも一部と重畳して視認される第1の捕捉画像を表示させる制御手段として機能する。また、制御部41は、車速センサ240からの車速情報に基づき、車両2の振幅L(振動量の一例)を検出する振動検出手段として機能する。
制御部41は、制御手段としての機能により、振動検出手段が検出した振動量が予め定められた閾値を超えた場合、第1の捕捉画像に代えて、映像内に、対象物Wの少なくとも一部と重畳して視認される第2の捕捉画像を表示させる。そして、第2の捕捉画像は、第1の捕捉画像よりも、画像端を構成する画素と、画像外の領域であって前記画像端に隣接する領域との色の濃淡差が低減された画像である。
このようにしたから、前述したように、対象物Wと、これに重畳して表示される捕捉画像とに位置ずれが生じても、視認者に与える違和感を低減することができる。
【0061】
なお、本発明は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。
【0062】
表示光Nの投射対象は、フロントガラス3に限定されず、板状のハーフミラー、ホログラム素子等により構成されるコンバイナであってもよい。
【0063】
以上の説明では、制御部41が車速センサ240からの車速情報に基づき、振動量を定める例を示したが、これに限られない。制御部41が、加速度センサ、ジャイロセンサ、振動センサ等からの情報に基づいて振動量を定めてもよい。
【0064】
以上の説明では、主に前方情報取得部210が対象物Wを特定する情報を取得する例を示したが、これに限られない。情報取得部200を構成する他の各部からの情報や、ミリ波レーダーやソナー、または道路交通情報通信システムなどの外部通信装置からの情報に基づいて、対象物Wを特定してもよい。
【0065】
また、以上の実施形態では、表示装置100が搭載される乗り物の一例を車両としたが、これに限られない。表示装置100は、オートバイ等の他の車両、建設機械、農耕機械、船舶、航空機等に搭載されるものであってもよい。
【0066】
以上の説明では、本発明の理解を容易にするために、重要でない公知の技術的事項の説明を適宜省略した。
【符号の説明】
【0067】
1 車両用表示システム
2 車両
3 フロントガラス
4 ユーザ
100 表示装置
10 表示手段
20 反射手段
40 表示コントローラ
41 制御部
42 記憶部
43 画像メモリ
44 入出力部
200 情報取得部
210 前方情報取得部
220 ナビゲーションシステム
230 GPSコントローラ
240 車速センサ
300 ECU
N 表示光
E 表示領域
V 虚像
Va,Vc 第1の捕捉画像
Vb,Vd 第2の捕捉画像
W 対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8