(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したパネル構造では、シート材を貼り付ける前に下地としてシーラーを塗布し目地色の塗装を行なっている。従来では、このシーラー(シーラー層)や塗装(塗装層)とパネルの側面のシーリング材との間に隙間が生じるおそれがあり、これにより止水性が悪化するおそれがあった。
【0006】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたもので、その主な目的は止水性の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために本発明のパネル構造は、複数のパネルを各々の表面が面一になるように配置し、隣り合う前記パネルの側面の間にシーリング材を充填したパネル構造であって、前記パネルは、基材と、前記基材の上に設けられたシーラー層と、前記シーラー層の上に設けられた塗装層と、前記塗装層の上に設けられ、前記表面を形成するシート材と、を備え、前記シーラー層、及び、前記塗装層は、前記側面に存在するように設けられ、前記側面で前記シーリング材と重複して
おり、前記基材は、前記表面側の面と前記側面との角が直角であることを特徴とする。
【0008】
このようなパネル構造によれば、シーラー層及び塗装層と、シーリング材との間に隙間が生じないので、止水性の向上を図ることができる。
また、パネル間の目地の幅を狭くすることができる。
【0009】
かかるパネル構造であって、前記塗装層と前記シーリング材は同色であることが望ましい。
このようなパネル構造によれば、意匠性を向上させることができる。
【0012】
かかるパネル構造であって、前記基材には、前記シート材が所定の間隔で複数設けられていることが望ましい。
このようなパネル構造によれば、シート材間に簡易に目地を形成することができる。
【0013】
かかるパネル構造であって、前記基材の前記表面側の面において、前記シート材が配置されない部位に溝部が形成されており、前記シーラー層及び前記塗装層は前記溝部内にも形成されていることが望ましい。
このようなパネル構造によれば、シート材間の目地を深く形成でき立体感を出すことができる。
【0014】
また、かかる目的を達成するために本発明のパネル構造の製造方法は、複数のパネルを各々の表面が面一になるように配置したパネル構造の製造方法であって、各パネルの基材の上にシーラー層を設けるシーラー層形成工程と、前記シーラー層の上に塗装層を設ける塗装工程と、前記塗装層の上に前記表面を形成するシート材を貼り付けるシート材貼付け工程と、隣り合うパネルの側面
であって、前記表面側の面との成す角が直角である側面の間にシーリング材を充填するシーリング材充填工程と、を有し、前記シーラー層形成工程及び前記塗装工程では、前記シーラー層及び前記塗装層を前記側面に存在するように形成し、前記シーリング材充填工程では、前記側面で前記シーラー層及び前記塗装層と重複するように前記シーリング材を充填することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、止水性の向上を図ることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
===比較例===
図1Aは比較例のパネル構造100の斜視図であり、
図1Bは側面図である。
【0018】
比較例のパネル構造100は、パネル基材10、シーラー層12、塗装層14、シート材16、シーリング材20、発泡プラスチック30を備えている。
【0019】
パネル基材10は、押出成形セメント板やALC板などであり、シート貼付け面10a、側面10b、面取り部10cを有している。図のパネル構造100には、2つのパネル基材10を、表面が面一になるように並べて配置しているが、これには限られず、パネル基材10を3つ以上並べて配置してもよい。
【0020】
シート貼付け面10aは、パネル基材10においてシート材16が貼り付けられる側(表面側)の面である。
【0021】
側面10bは、パネル基材10の両側部の面である。
【0022】
面取り部10cは、シート貼付け面10aと側面10bとの角部(コーナー部)が斜めに面取りされて形成された部位である。なお、面取り部10cを設けているのは、パネル基材10の角が角欠けしやすいからであり、この面取り部10cを設けることで角欠けを防止することができる。面取り部10cは、面取り処理を行うことにより形成されている。
【0023】
シーラー層12は、下塗り塗料(シーラー)の塗布によって形成された層であり、パネル基材10が水分や塗料を吸い込むのを防止する。この例では、シーラー層12は、シート貼付け面10a上のみに形成されている。
【0024】
塗装層14は、目地色の塗料により塗装されて形成された層である。塗装層14は、シーラー層12の上に形成されている。
【0025】
シート材16は、例えば、タイルや石材調の表面を形成するためのシート状の部材である。シート材16は、パネル基材10の上に一定間隔で複数貼り付けられている。また、隣り合うシート材16の間にはシート間目地18が形成されており、当該シート間目地18の色は、塗装層14の色(目地色)となっている。
【0026】
シーリング材20は、水密性や気密性を得るために,パネル基材10間の隙間に充填される材料である。より具体的には、シーリング材20は、隣り合うパネル基材10の側面10bの間に充填されている。
【0027】
発泡プラスチック30は、シーリング材20を充填する際のバックアップ材であり、隣り合うパネル基材10の側面10bの間に配置されている。
【0028】
次に比較例のパネル100の仕上げ手順について説明する。
図2A〜
図2Eは、比較例のパネル100の仕上げ手順についての説明図である。図では、パネル基材10が2つ並んで配置されている。ただし、
図2A〜
図2Dまではパネル基材10ごとに個々に作業してもよい(並べなくてもよい)。
【0029】
まず、
図2Bに示すように、各パネル基材10のシート貼付け面10aの上にシーラーを塗布してシーラー層12を形成する。
【0030】
次に、
図2Cに示すように、シーラー層12の上に目地色の塗料を塗布して塗装層14を形成する。
【0031】
そして、
図2Dに示すように、シート貼付け面10aの塗装層14の上にシート材16を一定間隔で貼り付ける。このシート材16の貼り付けは、例えば接着剤を用いて行う。この貼り付けにより、隣り合うシート材16の間にはシート間目地18が形成される(
図1A、
図1B参照)。
【0032】
その後、
図2Eに示すように、シート材16が貼り付けられた2つのパネル基材10をシート材16の表面が面一になるように配置し、隣り合う側面10bの間にシーリング材20を充填する。なお、シーリング材20の色は、塗装層14の塗料(目地色塗装)の色と同色であることが望ましい。こうすることで、シート間目地18とパネル間の目地(シーリング材20の充填部分)とを同じ色に形成できる。
【0033】
この例では、
図2Eに示すように、シーリング材20をシーラー層12の下端まで充填しているが、塗布(塗装)のばらつきなどによって、シーラー層12とシーリング材20との間に隙間ができるおそれがある。これにより止水性が悪化するおそれがある。
【0034】
そこで、以下に示す本実施形態では、止水性の向上を図っている。
【0035】
===第1実施形態===
<<<パネル構構造について>>>
図3Aは第1実施形態のパネル構造1の構成を示す斜視図であり、
図3Bは側面図である。
【0036】
本実施形態のパネル構造1も比較例のパネル構造100と同様に、パネル基材10のシート貼付け面10a(表面側の面に相当)の上にシーラー層12及び塗装層14を形成し、シート材16を貼り付けている。そして、2つのパネル基材10の側面10bの間に発泡プラスチック30を配置し、シーリング材20を充填して構成されている。
【0037】
ただし、本実施形態のパネル構造1では、シーラー層12及び塗装層14がパネル基材10の面取り部10c及び側面10bにも形成されている。そして、後述するように、側面10bにおいてシーラー層12及び塗装層14がシーリング材20と重複している。これにより、シーラー層12及び塗装層14とシーリング材20との間に隙間ができるのを防止することができ、比較例よりも止水性を向上させることができる。また、シーラー層12及び塗装層14が側面10bに存在するので、止水性を保持したまま、比較例よりもシーリング材20の充填高さを低くすることができる。この充填高さを低くすることにより陰影をつけることができ、より立体感を出すことができる。
【0038】
また、シーリング材20の色を塗装層14の塗料の色と同色とすることで、シート間目地18とパネル間の目地(シーリング材20の充填部分)とを同じ色に形成できる。さらに、パネルの間の部分(面取り部10c上を含む)が全て同じ色になるので意匠性が向上する。
【0039】
<<<仕上げ手順について>>>
図4A〜
図4Eは、第1実施形態のパネル構造1の仕上げ手順についての説明図である。
【0040】
図4Aは
図2Aと同じであるので説明を省略する。本実施形態においても
図4A〜
図4Dまではパネル基材10ごとに個々に作業してもよい(並べなくてもよい)。
【0041】
まず、
図4Bに示すように、各パネル基材10の上にシーラーを塗布してシーラー層12を形成する。本実施形態では、シート貼付け面10aのみでなく、面取り部10c及び側面10bの一部にもシーラー層12を形成する。この塗布の方法としては、スプレーによる吹き付けでもよいし、ローラーや刷毛を用いて塗装してもよい。
【0042】
次に、
図4Cに示すように、シーラー層12の上に目地色の塗料を塗布して塗装層14を形成する。ここでも、シート貼付け面10aのみでなく、面取り部10c及び側面10bの一部に塗装層14を形成する。この塗布の方法も、スプレーによる吹き付けでもよいし、ローラーや刷毛を用いて塗装してもよい。
【0043】
そして、
図4Dに示すように、シート貼付け面10aの塗装層14の上にシート材16を一定間隔(所定間隔に相当)で貼り付ける。なお、隣り合うシート材16の間にはシート間目地18が形成される(
図3A、
図3B参照)。このシート間目地18は、シート材16の間に塗装層14が露出したものであり、シート間目地18の色は、塗装層14の塗料の色となる。
【0044】
その後、
図4Eに示すように、シート材16が貼り付けられた2つのパネル基材10をシート材16の表面が面一になるように配置し、隣り合う側面10bの間に、シーリング材20を充填する。この例では、面取り部10cの下端(側面10bと面取り部10cとの境界)までシーリング材20を充填している。この充填により、側面10bのシーラー層12及び塗装層14と、シーリング材20とが重複する。なお、シーリング材20の充填高さはこの例には限られず、例えば、面取り部10cの上端(比較例と同等の位置)まで充填してもよい。ただし、本実施形態のように、充填高さを低くすれば、より立体感をだすことができる。
【0045】
このように、本実施形態では、側面10b及び面取り部10cにもシーラー層12及び塗装層14を形成しており、シーラー層12及び塗装層14は、側面10bにおいてシーリング材20と重複している。これにより、比較例よりも止水性の向上を図ることができる。また、比較例よりもシーリング材20の充填高さを低くすることができ、立体感を出すことができる。
【0046】
===第2実施形態===
<<<パネル構構造について>>>
図5Aは第2実施形態のパネル構造1´の構成を示す斜視図であり、
図5Bは側面図である。
【0047】
第2実施形態ではパネル基材10´を用いている。
【0048】
パネル基材10´は、前述のパネル基材10と同様の部材であるが、面取りされていない(面取り部10cが設けられていない)点が異なっている。このため、パネル基材10´では、シート貼付け面10aと側面10bとの角部は直角になっている。第2実施形態では、この直角の角部の直上にもシート材16が位置するようにシート材16を貼り付けている。これは、シート材16が厚い場合、角部の直上にシート材16を貼り付けることで、面取りしてなくても角かけを防止することができるからである。すなわち、第2実施形態では、面取り部10cを形成するための面取り処理が不要になる。
【0049】
第2実施形態のパネル構造1´では、シーラー層12及び塗装層14がパネル基材10の側面10bの一部にも形成されている。そして、後述するように、側面10bにおいてシーラー層12及び塗装層14がシーリング材20と重複している。これにより、比較例よりも止水性を向上させることができる。
【0050】
<<<仕上げ手順について>>>
図6A〜
図6Eは、第2実施形態のパネル構造1´の仕上げ手順についての説明図である。
【0051】
パネル基材10´に面取り部10cが設けられていない点を除いて第1実施形態の
図4A〜
図4Eと同様であるので説明を省略する。第2実施形態ではパネル基材10´のシート貼付け面10aと側面10bとの角部が直角なので、側面10bの直上の位置までシート材16を設けている。これにより、第1実施形態(
図4)の場合と比べて、パネル間目地(シーリング材20が充填される部分)の幅を狭くすることができる。また、この例ではシーリング材20をシート材16の下端まで充填しているが、側面10bにおいて少なくともシーラー層12及び塗装層14と重複する部分が存在していればよい。シーリング材20の充填高さを低くすることでより立体感を出すことができる。
【0052】
===その他の実施の形態===
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0053】
<パネル基材について>
パネル基材10(及びパネル基材10´)の材質や形状は、前述の実施形態には限られない。例えば、内部が中空になっていてもよい。
【0054】
<塗装について>
塗装層14は、少なくともシート材16と重複するように塗装すればよい。
【0055】
図7は、塗装層14の塗装方法の一例を示す説明図である。図では面取り部10cを有するパネル基材10を用いており、また、シート材16を一部省略して示している。この例では図に示すように、下地全面(シート貼付け面10a、面取り部10c、側面10bの一部)に塗装層14を形成(塗装)している。このように塗装層14を下地全面に形成すると、塗装の作業が簡易になる。
【0056】
図8は、塗装層14の塗装方法の別の例を示す説明図である。この例では図に示すように、シート貼付け面10aにおいてシート間目地18の形成部分のみに目地幅よりも広めに塗装層14を形成している。また、面取り部10c、側面10bの一部にも塗装層14を形成している。この例の場合、
図7の場合と比べて塗装層14を形成する塗料(目地色の塗料)の使用量を削減することができる。
【0057】
<目地の形成について>
前述の実施形態では、シート間目地18はシート材16をパネル基材10に貼り付けることで形成されていたがこれには限らない。例えば、パネル基材10のシート貼付け面10a全体を覆うシート材をシート貼付け面10aの上に貼り付けてもよい(この場合シート間目地18は形成されない)。また、その後、当該シート材を、所定数に分割すべく塗装層14が露出するまで切削してシート間目地18を形成してもよい。
【0058】
あるいは、シート貼付け面10aにおけるシート間目地18の形成位置(すなわちシート材16が配置されない部位)に、予め、切削により溝部を形成しておき、その溝部内を含むシート貼付け面10aにシーラー層12と塗装層14を形成してからシート材16を貼り付けてもよい。この場合、シート間目地18を深く形成できるので、より立体感をだすことができる。
【0059】
<シート材について>
前述の実施形態ではシート材16は矩形であったが、これには限られず他の形状であってもよい。例えば、シート材16の形状が、三角形や五角形などの多角形、あるいは、楕円や正円等の円形であってもよい。また、シート材16の表面の色や模様は特に限定されない。