特許第6409402号(P6409402)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6409402-透析装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6409402
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】透析装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20181015BHJP
   A61M 1/16 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
   A61M1/36 145
   A61M1/16 111
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-165792(P2014-165792)
(22)【出願日】2014年8月18日
(65)【公開番号】特開2016-41157(P2016-41157A)
(43)【公開日】2016年3月31日
【審査請求日】2017年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 満隆
(72)【発明者】
【氏名】斎尾 英俊
【審査官】 寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0080757(US,A1)
【文献】 中村元,赤外線放射温度計の基礎,日本機械学会 熱工学部門講習会資料,日本,日本機械学会,2009年 7月29日,19ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/14 − 1/32
A61M 1/36
A61M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析装置本体と、
前記透析装置本体に電気的に接続され、透析患者の穿刺部側の腕の周囲の放射温度分布を検出する赤外線カメラとを備え、
前記透析装置本体は、前記赤外線カメラに電気的に接続されて前記赤外線カメラから入力された前記放射温度分布に基づいて漏血の有無を判断する制御部を有し、
前記赤外線カメラを回転可能に支持して前記赤外線カメラの計測エリアを変更可能とする回転駆動部をさらに備え、
前記回転駆動部は、前記制御部に電気的に接続されて前記制御部からの入力信号に基づいて作動し、
前記透析患者の前記穿刺部側の腕の近傍において前記赤外線カメラから放射温度を直接計測可能な外部露出部に遮熱材が取り付けられており、
前記遮熱材は、前記透析患者側に位置する面に遮熱層を有し、
前記遮熱層は、低放射フィルムで構成されており、
前記制御部は、前記計測エリア内に前記遮熱材の前記透析患者側に位置する前記面とは反対側の面が位置するように前記回転駆動部を作動させる、透析装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記放射温度分布において、局所的な放射温度の増加が認められた場合に漏血が有ると判断する、請求項1に記載の透析装置。
【請求項3】
前記透析装置本体は、前記制御部からの出力信号を外部に表示するために前記制御部に電気的に接続された出力部を含み、
前記制御部は、漏血が有ると判断した後、前記出力部に異常警告信号を送信する、請求項1または2に記載の透析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
留置針の抜針検出センサを開示した先行文献として、特開2008−218号公報(特許文献1)がある。特許文献1に記載された留置針の抜針検出センサにおいては、皮膚に光を照射する送光部と、皮膚からの反射光を受光する受光部と、受光部の受光強度による脈動検出機能を有する検出装置とを構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
抜針を検出するために使い捨てのセンサを用いることは、透析のランニングコストが増加するため経済的に好ましくない。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、透析のランニングコストの低減を図りつつ漏血を検出可能な透析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に基づく透析装置は、透析装置本体と、透析装置本体に電気的に接続され、透析患者の穿刺部側の腕の周囲の放射温度分布を検出する赤外線カメラとを備える。透析装置本体は、赤外線カメラに電気的に接続されて赤外線カメラから入力された放射温度分布に基づいて漏血の有無を判断する制御部を有する。
【0007】
本発明の一形態においては、制御部は、上記放射温度分布において、局所的な放射温度の増加が認められた場合に漏血が有ると判断する。
【0008】
本発明の一形態においては、透析装置は、赤外線カメラを回転可能に支持して赤外線カメラの計測エリアを変更可能とする回転駆動部をさらに備える。回転駆動部は、制御部に電気的に接続されて制御部からの入力信号に基づいて作動する。
【0009】
本発明の一形態においては、透析患者の穿刺部側の腕の近傍において赤外線カメラから放射温度を直接計測可能な外部露出部に遮熱材が取り付けられている。遮熱材は、透析患者側に位置する面に遮熱層を有する。制御部は、上記計測エリア内に遮熱材が位置するように回転駆動部を作動させる。
【0010】
本発明の一形態においては、透析装置本体は、制御部からの出力信号を外部に表示するために制御部に電気的に接続された出力部を含む。制御部は、漏血が有ると判断した後、出力部に異常警告信号を送信する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、透析のランニングコストの低減を図りつつ漏血を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る透析装置の外観を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る透析装置の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る透析装置の制御部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る透析装置について図面を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る透析装置の外観を示す斜視図である。図2は、本発明の一実施形態に係る透析装置の構成を示すブロック図である。図3は、本発明の一実施形態に係る透析装置の制御部の動作を示すフローチャートである。
【0015】
図1,2に示すように、本発明の一実施形態に係る透析装置10は、透析装置本体11と、透析装置本体11に電気的に接続され、透析患者1の穿刺部側の腕2の周囲の放射温度分布を検出する赤外線カメラ14とを備える。
【0016】
図1に示すように、透析室内において、透析患者1が位置するベッド8に隣接して透析装置10が配置されている。ベッド8上の透析患者1には、布団9が掛けられている。透析患者1の一方の腕には、シャントが形成されている。一般的には、透析患者1の利き腕とは反対側の腕にシャントが形成される。なお、必ずしも透析患者1にシャントが形成されていなくてもよい。
【0017】
透析患者1のシャントに透析針が穿刺される。図1においては、透析患者1の左腕が、穿刺部側の腕2であり、透析患者1の右腕が、穿刺部側とは反対側の腕である場合を示している。透析患者1の穿刺部と透析装置本体11とは、動脈側血液回路12および静脈側血液回路13によって接続されている。
【0018】
本実施形態においては、透析患者1の穿刺部側の腕2の近傍において赤外線カメラ14から放射温度を直接計測可能な外部露出部に遮熱材7が取り付けられている。具体的には、透析患者1の衣服の左袖において布団9によって覆われない位置である外部露出部に、遮熱材7が取り付けられている。
【0019】
遮熱材7は、透析患者1側に位置する面に遮熱層を有する。具体的には、透析患者1側に位置する面に、低放射アルミニウム箔フィルムが貼り付けられている。これにより、遮熱材7の透析患者1側とは反対側の面から放射される、透析患者1の体温に基づく赤外線エネルギー量を大幅に低減することができる。
【0020】
また、遮熱材7は、平面視にて、二等辺三角形の外形を有している。遮熱材7は、外形における二等辺三角形の頂角の二等分線上に穿刺部が位置するように、外部露出部に取り付けられている。なお、透析患者1に、必ずしも遮熱材7が取り付けられていなくてもよい。
【0021】
本実施形態に係る透析装置10は、図1,2に示すように、赤外線カメラ14を矢印16で示す方向に回転可能に支持して赤外線カメラ14の計測エリアを変更可能とする回転駆動部15をさらに備えている。
【0022】
回転駆動部15は、本実施形態においてはサーボモータで構成されているが、これに限られず、他のアクチュエータで構成されていてもよい。回転駆動部15は、透析装置本体11に搭載されている。回転駆動部15は、後述する制御部110に電気的に接続されて制御部110からの入力信号に基づいて作動する。
【0023】
図1〜3に示すように、本実施形態に係る透析装置10の透析装置本体11は、赤外線カメラ14に電気的に接続されて赤外線カメラ14から入力された放射温度分布に基づいて漏血の有無を判断する制御部110を有する。
【0024】
また、透析装置本体11は、操作信号を制御部110に入力するために制御部110に電気的に接続された入力部111と、制御部110からの出力信号を外部に表示するために制御部110に電気的に接続された出力部112とを含む。
【0025】
以下、制御部110が漏血の有無を判断するフローについて説明する。
入力部111から、透析患者1の身体的条件および透析条件などの情報を含む操作信号が入力された制御部110は、図1,3に示すように、赤外線カメラ14を稼働させて透析患者1の周囲の放射温度分布の検出を開始する(S100)。
【0026】
赤外線カメラ14の計測エリアは、透析患者1の穿刺部側の腕の周囲に設定されている。具体的には、赤外線カメラ14の計測エリアは、透析患者1の穿刺部側の上腕、前腕および手を含む領域に設定されている。
【0027】
本実施形態においては、上記のように、透析患者1の衣服の左袖において布団9によって覆われない位置である外部露出部に、遮熱材7が取り付けられている。制御部110は、赤外線カメラ14の計測エリア内に遮熱材7が位置するように回転駆動部15を作動させる。
【0028】
遮熱材7の透析患者1側とは反対側の面から放射される、透析患者1の体温に基づく赤外線エネルギー量は大幅に低減されているため、赤外線カメラ14によって検出された放射温度分布において、遮熱材7が位置する部分の放射温度は、局所的に低温になっている。
【0029】
そのため、制御部110は、赤外線カメラ14から入力された放射温度分布における局所的な低温部の位置が移動した場合に、この局所的な低温部の位置が赤外線カメラ14の計測エリア内に位置するように回転駆動部15を作動させる。これにより、透析患者1が姿勢を変えたことによって穿刺部側の腕の位置が変動した場合においても、透析患者1の穿刺部側の腕の周囲の放射温度分布の検出を維持することができる。
【0030】
次に、制御部110は、赤外線カメラ14から入力された放射温度分布に基づいて、透析患者1の穿刺部側の腕の周囲の放射温度分布において、局所的な放射温度の増加が認められた場合に漏血が有ると判断する(S110)。
【0031】
たとえば、穿刺部から静脈側血液回路13の透析針が抜けて、血液が布団9の下側においてベッド8上に漏れ広がった場合、漏れた血液から放射された赤外線によって、布団9の表面上における放射温度分布が変化する。具体的には、布団9の表面において、漏れた血液の上方に位置する部分の放射温度が局所的に増加する。
【0032】
本実施形態においては、上記のように、遮熱材7の外形における二等辺三角形の頂角の二等分線上に、穿刺部が位置している。よって、制御部110は、この二等分線上の近傍における放射温度の局所的な増加を重点的に判断する。
【0033】
制御部110は、局所的な放射温度の増加を認めた場合に漏血が有ると判断して、出力部112に異常警告信号を送信する(S120)。異常警告信号を受信した出力部112は、漏血が検出されたことを表示する。
【0034】
本実施形態に係る透析装置10においては、赤外線カメラを用いて漏血の有無を判断するため、漏血を検出するための使い捨てのセンサを用いない。そのため、透析装置10は、透析のランニングコストの低減を図りつつ漏血を検出することができる。
【0035】
また、透析装置10は、透析患者1に対して非接触で漏血を検出できるため、透析患者1に対する負担を軽減することができる。さらに、透析装置10は、漏血を検出するためのセンサを透析患者1に取り付ける必要がないため、医療スタッフの負担を軽減することができる。
【0036】
なお、今回開示した上記実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0037】
1 透析患者、2 腕、7 遮熱材、8 ベッド、9 布団、10 透析装置、11 透析装置本体、12 動脈側血液回路、13 静脈側血液回路、14 赤外線カメラ、15 回転駆動部、110 制御部、111 入力部、112 出力部。
図1
図2
図3