(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記摩擦攪拌工程では、前記熱媒体用管の側端に接する仮想鉛直面から前記回転ツールの先端までの距離を0〜3mmに設定することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
前記被切削ブロックの表面において、前記回転ツールの移動ルート上に予め凸部を設けておくことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の伝熱板の製造方法では、ベース部材に蓋溝を形成するとともに当該蓋溝に蓋板を配置する工程を行わなければならず作業手間が増えるという問題がある。また、ベース部材の他に蓋板を用意しなければならないため、製造コストが増加するという問題がある。また、ベース部材の深い位置に熱媒体用管を設ける場合には、少なくとも二つの蓋溝と二つの蓋板を用意しなければならず作業手間や製造コストが増えるという問題がある。
【0006】
また、ベース部材の裏側にフィンを備えた伝熱板を製造する場合、ベース部材とフィンとをロウ付けにより接合することが考えられるが、ロウ付け作業が煩雑になるとともに、ロウ材が介設されるため熱伝導性が低くなり、そのため放熱性が低下するという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、作業手間を少なくすることができるとともに製造コストを低減することができ、さらには放熱性の高い伝熱板を製造することができる伝熱板の製造方法及び伝熱板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、被切削ブロックの表面側に開口する凹溝に熱媒体用管を挿入する熱媒体用管挿入工程と、前記凹溝の両側壁に対して回転ツールをそれぞれ相対移動させて摩擦攪拌を行う摩擦攪拌工程と、複数枚の円盤カッターが並設されたマルチカッターで前記被切削ブロックの裏側に複数のフィンを形成する切削工程と、を含み、前記摩擦攪拌工程では、
前記熱媒体用管を露出させた状態で、前記熱媒体用管と前記凹溝とで形成される空間部に、摩擦熱によって流動化された塑性流動材を流入させ、前記切削工程では、前記摩擦攪拌工程後の熱収縮に伴う引張応力が前記被切削ブロックの裏面に作用した状態で切削し、前記摩擦攪拌工程では、前記熱媒体用管の上端に接する仮想水平面よりも深い位置に前記回転ツールの先端を挿入することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、基板部と前記基板部の裏面に凸設されたブロック部とを有する被切削ブロックから伝熱板を製造する方法であって、前記基板部の表面側に開口する凹溝に熱媒体用管を挿入する熱媒体用管挿入工程と、前記凹溝の両側壁に対して回転ツールをそれぞれ相対移動させて摩擦攪拌を行う摩擦攪拌工程と、複数枚の円盤カッターが並設されたマルチカッターで前記被切削ブロックの裏側に複数のフィンを形成する切削工程と、を含み、前記摩擦攪拌工程では、
前記熱媒体用管を露出させた状態で、前記熱媒体用管と前記凹溝とで形成される空間部に、摩擦熱によって流動化された塑性流動材を流入させ、前記切削工程では、前記摩擦攪拌工程後の熱収縮に伴う引張応力が前記被切削ブロックの裏面に作用した状態で切削し、前記摩擦攪拌工程では、前記熱媒体用管の上端に接する仮想水平面よりも深い位置に前記回転ツールの先端を挿入することを特徴とする。
【0010】
かかる製造方法によれば、空間部に塑性流動材を流入させることで熱媒体用管の上方を覆うことができる。これにより、従来のようにベース部材に蓋溝を形成する手間や蓋溝に蓋板を配置する手間を省くことができるか、又は減らすことができる。また、蓋板の削減に伴い、材料コストを削減することができる。
また、かかる製造方法によれば、空間部に塑性流動材を確実に流入させることができるとともに、熱媒体用管の上方を確実に覆うことができる。
【0011】
また、マルチカッターで被切削ブロックを切削してフィンを形成するため、フィンを容易に形成することができる。また、切削工程によってベース部材とフィンとが一体形成されるため、放熱性を高めることができる。さらに、被切削ブロックの裏面に引張応力が作用した状態で切削工程を行うため、被切削ブロックと円盤カッターとの摩擦が軽減されて切削作業をスムーズに行うことができる。
【0012】
また、前記被切削ブロックのバリを切除するバリ切除工程を含むことが好ましい。かかる製造方法によれば、伝熱板をきれいに仕上げることができる。
【0013】
また、前記摩擦攪拌工程では、前記熱媒体用管の側端に接する仮想鉛直面から前記回転ツールの先端までの距離を0〜3mmに設定することが好ましい。
【0014】
かかる製造方法によれば、空間部に塑性流動材を確実に流入させることができるとともに、熱媒体用管の上方を確実に覆うことができる。
【0015】
また、前記摩擦攪拌工程では、前記回転ツールの回転方向を右回転に設定する場合には、前記回転ツールの進行方向左側の前記側壁に摩擦攪拌を行い、前記回転ツールの回転方向を左回転に設定する場合には、前記回転ツールの進行方向右側の前記側壁に摩擦攪拌を行うことが好ましい。
【0016】
かかる製造方法によれば、空間部に塑性流動材が流れやすくなるため、空間部に塑性流動材をより確実に流入させることができる。
【0017】
また、前記被切削ブロックの表面において、前記回転ツールの移動ルート上に予め凸部を設けておくことが好ましい。かかる製造方法によれば、前記空間部に流入する塑性流動材が不足するのを防ぐことができる。
【0018】
また、本発明は、被切削ブロックの表面側に開口する凹溝に熱媒体用管を挿入する熱媒体用管挿入工程と、前記凹溝の両側壁に対して回転ツールをそれぞれ相対移動させて摩擦攪拌を行う摩擦攪拌工程と、複数枚の円盤カッターが並設されたマルチカッターで前記被切削ブロックの裏側に複数のフィンを形成する切削工程と、前記摩擦攪拌工程後に、前記凹溝よりも前記被切削ブロックの表面側において、前記凹溝よりも幅広に形成された蓋溝に蓋板を配置する蓋板配置工程と、前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合せ部に沿って回転ツールを移動させて摩擦攪拌を行う蓋板接合工程と、を含み、前記摩擦攪拌工程では、
前記熱媒体用管を露出させた状態で、前記熱媒体用管と前記凹溝とで形成される空間部に、摩擦熱によって流動化された塑性流動材を流入させ、前記切削工程では、前記摩擦攪拌工程後の熱収縮に伴う引張応力が前記被切削ブロックの裏面に作用した状態で切削することを特徴とする。
【0019】
かかる製造方法によれば、空間部に塑性流動材を流入させることで熱媒体用管の上方を覆うことができる。これにより、従来のようにベース部材に蓋溝を形成する手間や蓋溝に蓋板を配置する手間を省くことができるか、又は減らすことができる。また、蓋板の削減に伴い、材料コストを削減することができる。
また、マルチカッターで被切削ブロックを切削してフィンを形成するため、フィンを容易に形成することができる。また、切削工程によってベース部材とフィンとが一体形成されるため、放熱性を高めることができる。さらに、被切削ブロックの裏面に引張応力が作用した状態で切削工程を行うため、被切削ブロックと円盤カッターとの摩擦が軽減されて切削作業をスムーズに行うことができる。
また、かかる製造方法によれば、蓋溝及び蓋板を設けることで熱媒体用管をベース部材の深い位置に設けることができる。
【0020】
また、本発明は、表面に凹溝を有するベース部材と、前記ベース部材の裏側に前記ベース部材と一体形成された複数のフィンと、前記凹溝に挿入された熱媒体用管と、を有し、前記凹溝の両側壁に対して
前記熱媒体用管を露出させた状態でそれぞれ摩擦攪拌を行うことにより、前記熱媒体用管と前記凹溝とで形成される空間部に摩擦熱によって流動化された塑性流動材が流入され、前記塑性流動材と前記熱媒体用管とが接触しており、前記ベース部材は、前記凹溝よりも前記ベース部材の表面側において、前記凹溝よりも幅広に形成された蓋溝をさらに備え、前記蓋溝に配置される蓋板を有し、前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合せ部に沿って摩擦攪拌が施されていることを特徴とする。
【0021】
かかる構成によれば、空間部に塑性流動材を流入させることで熱媒体用管の上方を覆うことができる。これにより、従来のようにベース部材に蓋溝を形成する手間や蓋溝に蓋板を配置する手間を省くことができるか、又は減らすことができる。また、蓋板の削減に伴い、材料コストを削減することができる。また、ベース部材とフィンとが一体形成されているため、放熱性を高めることができる。
【0023】
かかる構成によれば、蓋溝及び蓋板を設けることで熱媒体用管をベース部材の深い位置に設けることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る伝熱板の製造方法及び伝熱板によれば、作業手間を少なくすることができるとともに製造コストを低減することができ、放熱性の高い伝熱板を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係る伝熱板及び伝熱板の製造方法について図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、第一実施形態に係る伝熱板1は、ベース部材2と、複数のフィン3と、熱媒体用管4とで構成されている。伝熱板1の表側には、例えば、電子機器等の発熱体が設置される。伝熱板1は、熱媒体用管4に熱媒体を流通させることで発熱体と熱交換を行うことができる。なお、以下の説明における伝熱板1の「上下」、「左右」、「前後」については
図1の矢印に従う。
【0027】
ベース部材2は、金属製の板状部材である。ベース部材2には上方に開放する凹溝10が形成されている。凹溝10は、断面視U字状を呈するとともに、平面視U字状を呈する。凹溝10の幅は、熱媒体用管4の外径と略同等になっている。また、凹溝10の深さは、熱媒体用管4の外径よりも大きくなっている。なお、凹溝10の平面形状及び断面形状は、前記した形状に限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
【0028】
フィン3は、ベース部材2の裏側において、ベース部材2と一体形成されている。フィン3は、板状を呈し等間隔で複数枚形成されている。フィン3は、ベース部材2の前面2cから後面2dまで連続して形成されている。
【0029】
熱媒体用管4は、金属製の管状部材である。熱媒体用管4の材料は、伝熱性の高い金属であれば特に制限されないが、本実施形態では銅製になっている。熱媒体用管4は本実施形態では円筒状になっているが、角筒状であってもよい。熱媒体用管4は、凹溝10に挿入可能な形状になっている。
【0030】
図2に示すように、熱媒体用管4の上方は、一方側塑性化領域W1と、他方側塑性化領域W2とで覆われている。つまり、熱媒体用管4と一方側塑性化領域W1及び他方側塑性化領域W2とが接触している。
図2では、一方側塑性化領域W1は熱媒体用管4の左上に形成されており、他方側塑性化領域W2は熱媒体用管4の右上に形成されている。一方側塑性化領域W1及び他方側塑性化領域W2は、ベース部材2において熱媒体用管4の延長方向に亘って形成されている。
【0031】
図2において、一方側塑性化領域W1は、凹溝10の左側に形成される基端部W1aと、基端部W1aに連続し基端部W1aの右側(凹溝10の幅方向中央側)に延設される先端部W1bとで構成されている。
【0032】
図2において、他方側塑性化領域W2は、凹溝10の右側に形成される基端部W2aと、基端部W2aに連続し基端部W2aの左側(凹溝10の幅方向中央側)に延設される先端部W2bとで構成されている。
【0033】
次に、伝熱板の製造方法について説明する。本実施形態に係る伝熱板の製造方法では、準備工程と、熱媒体用管挿入工程と、第一摩擦攪拌工程と、第二摩擦攪拌工程と、切削工程と、バリ切除工程とを行う。
【0034】
準備工程は、被切削ブロック20に凹溝10を形成する工程である。被切削ブロック20は、加工後にベース部材2及びフィン3となる部材である。被切削ブロック20は、金属製であり直方体を呈する。被切削ブロック20の材料は、摩擦攪拌可能な金属であれば特に制限されないが、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、 マグネシウム、マグネシウム合金等から適宜選択すればよい。
【0035】
図3の(a)に示すように、準備工程では、例えばエンドミル等を用いて被切削ブロック20の表面20aを切削して凹溝10を形成する。凹溝10は、曲面で構成された底部10aと、底部10aに連続し外側(
図3では左側)の壁を構成する第一側壁10bと、底部10aに連続し内側(
図3では右側)の壁を構成する第二側壁10cとで構成されている。
【0036】
底部10aの曲率半径は、熱媒体用管4の曲率半径と同等になっている。凹溝10の幅は、熱媒体用管4の外径と略同等になっている。なお、被切削ブロック20は、本実施形態では切削加工で形成したが、ダイキャストにより凹溝10が形成された被切削ブロック20を用いてもよい。
【0037】
熱媒体用管挿入工程は、被切削ブロック20の凹溝10に熱媒体用管4を挿入する工程である。
図3の(b)に示すように、凹溝10に熱媒体用管4を挿入すると、底部10aに熱媒体用管4の外周面が面接触する。また、凹溝10に熱媒体用管4を挿入すると、熱媒体用管4の外周面と凹溝10(第一側壁10b及び第二側壁10c)とで空間部Xが形成される。
【0038】
図4に示すように、第一摩擦攪拌工程では、回転ツールG(
図5参照)の挿入位置SP1を被切削ブロック20の前面20c及び左側面20eの近傍に設定する。また、第一摩擦攪拌工程では、回転ツールGの離脱位置EP1を被切削ブロック20の前面20c及び右側面20fの近傍に設定する。
【0039】
第一摩擦攪拌工程(摩擦攪拌工程)は、被切削ブロック20のうち凹溝10の外側を摩擦攪拌する工程である。
図5の(a)及び(b)に示すように、第一摩擦攪拌工程では、回転ツールGを用いる。回転ツールGは、ショルダ部G1と、攪拌ピンG2とで構成されている。ショルダ部G1は、円柱状を呈する。攪拌ピンG2は、ショルダ部G1の下端面から垂下している。攪拌ピンG2は先細りになっており、円錐台形状を呈する。攪拌ピンG2の外周面には、螺旋溝が形成されている。
【0040】
第一摩擦攪拌工程では、
図5の(a)に示すように、右回転させた回転ツールGを挿入位置SP1に挿入し、第一側壁10bに沿って回転ツールGを相対移動させる。
【0041】
図5の(b)に示すように、第一摩擦攪拌工程では、平面視して熱媒体用管4が露出した状態(蓋板が配置されない状態)で、凹溝10の第一側壁10bに対して摩擦攪拌を行う。第一摩擦攪拌工程では、回転する回転ツールGと被切削ブロック20との摩擦熱によって凹溝10の外側の被切削ブロック20が塑性流動化し、硬化することで基端部W1aが形成される。また、摩擦熱によって流動化した塑性流動材が空間部Xに流入することにより先端部W1bが形成される。より詳しくは、先端部W1bは、第一側壁10bと熱媒体用管4の外周面とで構成される空間に塑性流動材が流入した後、硬化することで形成される。回転ツールGを離脱位置EP1(
図4参照)まで相対移動させたら被切削ブロック20から回転ツールGを離脱させる。
【0042】
第二摩擦攪拌工程(摩擦攪拌工程)は、被切削ブロック20のうち凹溝10の内側を摩擦攪拌する工程である。
図4に示すように、第二摩擦攪拌工程では、回転ツールGの挿入位置SP2を、凹溝10を挟んで離脱位置EP1と反対側に設定する。また、第二摩擦攪拌工程では、回転ツールGの離脱位置EP2を、凹溝10を挟んで挿入位置SP1と反対側に設定する。
【0043】
第二摩擦攪拌工程では、右回転させた回転ツールGを挿入位置SP2に挿入し、第二側壁10cに沿って回転ツールGを相対移動させる。
【0044】
図6の(a)及び(b)に示すように、第二摩擦攪拌工程では、平面視して熱媒体用管4が露出した状態(蓋板が配置されない状態)で、凹溝10の第二側壁10cに対して摩擦攪拌を行う。第二摩擦攪拌工程では、回転する回転ツールGとベース部材2との摩擦熱によって凹溝10の内側のベース部材2が塑性流動化し、硬化することで基端部W2aが形成される。また、摩擦熱によって流動化した塑性流動材が空間部Xに流入することにより先端部W2bが形成される。より詳しくは、先端部W2bは、第二側壁10cと熱媒体用管4の外周面とで構成される空間に塑性流動材が流入した後、硬化することで形成される。回転ツールGを離脱位置EP2まで相対移動させたら被切削ブロック20から回転ツールGを離脱させる。
【0045】
図5の(b)を参照するように、本実施形態では第一摩擦攪拌工程及び第二摩擦攪拌工程とも、ショルダ部G1の下端面を被切削ブロック20の表面20aよりも数ミリ程度押し込んで摩擦攪拌を行う。また、本実施形態の回転ツールG(攪拌ピンG2)の挿入深さは、熱媒体用管4の上端に接する仮想水平面P1よりも深い位置に設定している。
【0046】
また、
図5の(b)を参照するように、本実施形態では第一摩擦攪拌工程及び第二摩擦攪拌工程とも、攪拌ピンG2の先端から熱媒体用管4の側端に接する仮想鉛直面P2までの距離Lを0〜3mmに設定している。
【0047】
本実施形態では、前記したように回転ツールGの挿入深さや挿入位置(回転ツールGから熱媒体用管4までの距離L)を設定したが、これに限定されるものではない。第一摩擦攪拌工程及び第二摩擦攪拌工程における回転ツールGの挿入深さや挿入位置は、少なくとも摩擦熱によって塑性流動化した塑性流動材が空間部Xに流入するように適宜設定すればよい。
【0048】
また、第一摩擦攪拌工程及び第二摩擦攪拌工程では、回転ツールGの挿入深さ及び挿入位置を、一方側塑性化領域W1及び他方側塑性化領域W2で熱媒体用管4の上方がバランスよく覆われるように設定することが好ましい。これにより、熱媒体用管4の両側の熱伝導性を均一にすることができる。また、第一摩擦攪拌工程及び第二摩擦攪拌工程では、回転ツールGの挿入深さ及び挿入位置を、先端部W1b,W2bが互いに接触するように設定することが好ましい。これにより、伝熱板1の表面に隙間が発生するのを防ぐことができる。
【0049】
なお、離脱位置EP1,EP2で回転ツールGを引き抜くことにより被切削ブロック20の表面20aに攪拌ピンG2の抜き穴が形成されるが、例えば肉盛溶接を行うことで当該抜き穴を補修してもよい。
【0050】
図7に示すように、第一摩擦攪拌工程及び第二摩擦攪拌工程を行った後、被切削ブロック20を固定する架台Kのクランプを解除して、被切削ブロック20をそのまま存置すると、一方側塑性化領域W1及び他方側塑性化領域W2において熱収縮が発生し、被切削ブロック20の表面20aが凹状となるように変形する。すなわち、被切削ブロック20が裏面20b側に凸状となるように反り、表面20a側に圧縮応力が発生し、裏面20b側に引張応力が発生する。本実施形態では、被切削ブロック20の稜線20i,20jは凹状となり、稜線20k,20mは直線のままとなるように変形する。
【0051】
図8(a)に示すように、切削工程は、マルチカッターMを用いて被切削ブロック20を切削してフィンを形成する工程である。まず、被切削ブロック20の表裏をひっくり返し、架台Kと表面20aとを対向させてクランプを介して被切削ブロック20を固定する。被切削ブロック20の稜線20k,20mは架台Kの設置面に線接触する。切削工程中は、裏面20bに引張応力が作用し、表面20aに圧縮応力が作用するようにクランプする。
【0052】
マルチカッターMは、回転軸Maと、回転軸Maに並設された複数の円盤カッターMbとで構成されている。円盤カッターMbは、円板状を呈し、周縁部に刃が形成されている。円盤カッターMbは、回転軸Maに対して垂直に配置されている。円盤カッターMbの厚さは、形成されるフィン3,3同士の隙間と同等になる。円盤カッターMb,Mbの隙間は、形成されるフィン3の厚さと同等になる。
【0053】
切削工程では、回転軸Maの中心軸を法線とする平面と、架台Kの設置面とが垂直となるようにマルチカッターMを配置した後、架台Kに対してマルチカッターMを相対移動させる。被切削ブロック20に対するマルチカッターMの移動方向は、回転軸Maを含む鉛直面で被切削ブロック20を切断した場合の仮想切断面(
図8の(a)の符号20n)が、上方に凸状となるように設定する。つまり、本実施形態では、マルチカッターMを前側から後側に相対移動させる。
【0054】
より詳しくは、
図8の(b)に示すように、切削工程では、回転軸Maの中心軸を、被切削ブロック20の上側の稜線20gを通る鉛直線上に配置した後、マルチカッターMを稜線20gに向けて所定の深さまで下降させる。
【0055】
そして、所定の深さを維持した状態で、稜線20hまで被切削ブロック20とマルチカッターMとを相対移動させる。本実施形態では、上方に凸状となる稜線20gから、同じく上方に凸状となる稜線20hに向けてマルチカッターMを移動させる。マルチカッターMの移動軌跡は、架台Kの設置面と平行となる。
【0056】
被切削ブロック20の上側の稜線20hを通る鉛直線と回転軸Maの中心軸とが重なる位置まで移動させたら、マルチカッターMを上方に移動させて被切削ブロック20から離間させる。
【0057】
なお、第一摩擦攪拌工程及び第二摩擦攪拌工程後に、被切削ブロック20の稜線20k,20mも凹状となるように変形した場合(つまり、架台Kの設置面と被切削ブロック20の裏面20bとが4点で接触する場合)は、被切削ブロック20の裏面20bの曲面に沿うようにマルチカッターMを移動させてもよい。つまり、マルチカッターMの移動軌跡が円弧状となるように移動させてもよい。このように設定することで、フィン3の長さを一定にすることができる。
【0058】
バリ切除工程は、第一摩擦攪拌工程、第二摩擦攪拌工程及び切削工程で発生したバリを切除する工程である。
【0059】
以上説明した本実施形態に係る伝熱板の製造方法によれば、空間部Xに塑性流動材を流入させて一方側塑性化領域W1及び他方側塑性化領域W2を形成することで熱媒体用管4の上方を覆うことができる。言い換えると、熱媒体用管4は、蓋板で覆われることなく、凹溝10及び先端部W1b,W2bで覆われる。つまり、本実施形態に係る伝熱板の製造法方法では、蓋板を設ける必要がないため、従来のようにベース部材2(被切削ブロック20)に蓋溝を形成する手間や蓋溝に蓋板を配置する手間を省くことができる。また、蓋板を設けない分、材料コストを削減することができる。
【0060】
また、マルチカッターMで被切削ブロック20を切削してフィン3を形成するため、フィン3を容易に形成することができる。また、切削工程によって、ベース部材2とフィン3とが一体形成されるため、放熱性を高めることができる。
【0061】
ここで、被切削ブロック20にマルチカッターMを挿入して相対移動させる際に、形成されたフィン3,3に円盤カッターMbが挟まれて作業性が低下するおそれがある。しかし、本実施形態では、被切削ブロック20の裏面20bに引張応力が作用した状態で切削工程を行うため、フィン3,3(被切削ブロック20)と円盤カッターMbとの摩擦が軽減されて切削作業をスムーズに行うことができる。また、切削工程によって、被切削ブロック20の裏側にも摩擦熱が発生し熱収縮する。これにより、被切削ブロック20の表面20a側に凹状となる反りが解消されて、伝熱板1を平坦にすることができる。
【0062】
また、第一摩擦攪拌工程及び第二摩擦攪拌工程では、熱媒体用管4の上端に接する仮想水平面P1よりも深い位置に回転ツールG(攪拌ピンG2)の先端を挿入することで、空間部Xに塑性流動材を確実に流入させることができる。
【0063】
また、第一摩擦攪拌工程及び第二摩擦攪拌工程では、熱媒体用管4の側端に接する仮想鉛直面P2から回転ツールG(攪拌ピンG2)の先端までの距離を0〜3mmに設定することで、空間部Xに塑性流動材を確実に流入させることができる。当該距離が3mmを超えると、空間部Xに塑性流動材が流入しないおそれがある。
【0064】
また、回転ツールGの回転方向及び進行方向は適宜設定すればよいが、本実施形態のように、回転ツールGを右回転させる場合は、回転ツールGの進行方向左側に位置する側壁に摩擦攪拌を行うことが好ましい。これにより、塑性流動材が母材側から空間部Xに流れやすくなるため、空間部Xに塑性流動材をより確実に流入させることができる。なお、回転ツールGを左回転させる場合は、回転ツールGの進行方向右側に位置する側壁に摩擦攪拌を行うことが好ましい。
【0065】
また、バリ切除工程を行うことで伝熱板をきれいに仕上げることができる。
【0066】
以上本発明の第一実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。
図9は、第一実施形態の変形例を示す図であって、(a)は熱媒体用管挿入工程を示し、(b)は第一摩擦攪拌工程を示す。
【0067】
図9の(a)に示すように、変形例では、被切削ブロック20の表面20a上であり、かつ、凹溝10の両脇に凸部30を設ける。凸部30は、凹溝10の延長方向に亘って断面矩形状で形成されている。凸部30は、回転ツールGによって摩擦攪拌される位置、つまり、回転ツールGの移動ルート上に形成されている。凸部30は、回転ツールGの移動ルート上であれば凹溝10から離間していてもよい。また、凸部30の形状については特に限定されるものではない。
【0068】
図9の(b)に示すように、第一摩擦攪拌工程では、凸部30の上から回転ツールGを挿入しつつ、第一実施形態の第一摩擦攪拌工程と同じ要領で摩擦攪拌を行う。具体的な図示は省略するが第二摩擦攪拌工程も、当該変形例の第一摩擦攪拌工程と同じ要領で摩擦攪拌を行う。
【0069】
以上説明した変形例によれば、凸部30を設けることで摩擦熱によって塑性流動化される金属量を増やすことができる。これにより、塑性流動材が不足するのを防ぐことができるとともに、空間部Xにより確実に塑性流動材を流入させることができる。
【0070】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態に係る伝熱板1Aは、第一実施形態よりも深い位置に熱媒体用管4を埋設できる点で第一実施形態と相違する。第二実施形態では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0071】
図10に示すように、伝熱板1Aは、ベース部材2Aと、複数のフィン3と、熱媒体用管4と、蓋板5とで構成されている。ベース部材2Aには、蓋溝40と、蓋溝40の底面40aに形成された凹溝10とが形成されている。凹溝10には熱媒体用管4が配設され、蓋溝40には蓋板5が配設されている。ベース部材2Aの裏側には、複数のフィン3が形成されている。
【0072】
図11に示すように、熱媒体用管4の上方は、一方側塑性化領域W1と他方側塑性化領域W2とで覆われている。つまり、熱媒体用管4と一方側塑性化領域W1及び他方側塑性化領域W2とが接触している。
図11では、一方側塑性化領域W1は熱媒体用管4の左上に形成されており、他方側塑性化領域W2は熱媒体用管4の右上に形成されている。一方側塑性化領域W1及び他方側塑性化領域W2は、ベース部材2Aにおいて熱媒体用管4の延長方向に沿って形成されている。
【0073】
図11において、一方側塑性化領域W1は、凹溝10の左側に形成される基端部W1aと、基端部W1aに連続し基端部W1aの右側(凹溝10の幅方向中央側)に延設される先端部W1bとで構成されている。
【0074】
図11において、他方側塑性化領域W2は、凹溝10の右側に形成される基端部W2aと、基端部W2aに連続し基端部W2aの左側(凹溝10の幅方向中央側)に延設される先端部W2bとで構成されている。
【0075】
蓋板5の側面と蓋溝40の側壁との突合せ部J3,J4は、摩擦攪拌によって接合されている。突合せ部J3,J4には塑性化領域W3,W4がそれぞれ形成されている。
【0076】
次に、第二実施形態に係る伝熱板の製造方法について説明する。本実施形態に係る伝熱板の製造方法では、準備工程と、熱媒体用管挿入工程と、第一摩擦攪拌工程と、第二摩擦攪拌工程と、蓋板配置工程と、蓋板接合工程と、切削工程と、バリ切除工程とを行う。
【0077】
図12の(a)に示すように、準備工程は、被切削ブロック20に蓋溝40と、凹溝10とを形成する工程である。準備工程では、例えばエンドミル等を用いて被切削ブロック20の表面20aを切削して蓋溝40を形成するとともに、蓋溝40に凹溝10を形成する。蓋溝40は、底面40aと、底面40aから立ち上がる側壁40b,40cとで構成されている。蓋溝40は断面矩形状であり、平面視U字状に形成する。蓋溝40の幅は、蓋板5の幅と略同等になっている。また、蓋溝40の深さは、蓋板5の高さと略同等になっている。
【0078】
凹溝10は、蓋溝40の底面40aに形成する。凹溝10の幅は、蓋溝40の幅よりも小さくなっている。凹溝10は、曲面で構成された底部10aと、底部10aに連続し外側(
図12では左側)の壁を構成する第一側壁10bと、底部10aに連続し内側(
図12では右側)の壁を構成する第二側壁10cとで構成されている。
【0079】
蓋板5は、断面矩形状を呈する板状部材である。蓋板5の材料は特に制限されないが、本実施形態では被切削ブロック20と同等の材料を用いている。蓋板5は蓋溝40に隙間なく配置される形状で形成されている。
【0080】
図12の(b)に示すように、熱媒体用管挿入工程、第一摩擦攪拌工程及び第二摩擦攪拌工程は、第一実施形態と同等であるため説明を省略する。第二摩擦攪拌工程を行ったら、底面40aと一方側塑性化領域W1の表面及び他方側塑性化領域W2の表面とが面一になるように表面切削工程を行う。
【0081】
蓋板配置工程は、蓋溝40に蓋板5を配置する工程である。
図12の(b)及び
図13に示すように、蓋溝40に蓋板5を配置すると蓋板5の側面5cと蓋溝40の側壁40bとが突き合わされて突合せ部J3が形成される。また、蓋板5の側面5dと蓋溝40の側壁40cとが突き合わされて突合せ部J4が形成される。表面切削工程を行っているため、蓋板5の下面5bは、表面切削工程後の底面40a、一方側塑性化領域W1の表面及び他方側塑性化領域W2の表面と面接触する。
【0082】
蓋板接合工程は、被切削ブロック20と蓋板5とを摩擦攪拌で接合する工程である。
図13に示すように、蓋板接合工程では、突合せ部J3,J4に沿って回転する回転ツールGを相対移動させて摩擦攪拌接合を行う。回転ツールGの移動軌跡にはそれぞれ塑性化領域W3,W4が形成される。回転ツールGの挿入深さは適宜設定すればよいが、本実施形態のように突合せ部J3,J4の深さ方向の全体が摩擦攪拌されるように設定することが好ましい。
【0083】
第一摩擦攪拌工程、第二摩擦攪拌工程及び蓋板接合工程を行った後、被切削ブロック20を固定する架台のクランプを解除して、被切削ブロック20をそのまま存置すると、一方側塑性化領域W1、他方側塑性化領域W2、塑性化領域W3,W4において熱収縮が発生し、被切削ブロック20の表面20aが凹状となるように変形する。すなわち、被切削ブロック20が裏面20b側に凸状となるように反り、表面20a側に圧縮応力が発生し、裏面20b側に引張応力が発生する。本実施形態では、第一実施形態と略同じ形状にベース部材2Aが変形する。
【0084】
切削工程は、第一実施形態と同等であるため、説明を省略する。バリ切除工程は、蓋板接合工程及びバリ切除工程で発生したバリを切除する工程である。以上により、
図10に示す伝熱板1Aが形成される。
【0085】
以上説明した第二実施形態に係る伝熱板1Aであっても、第一実施形態と略同等の効果を奏することができる。また、蓋板5及び蓋溝40を設けることで熱媒体用管4を第一実施形態よりも深い位置に設けることができる。熱媒体用管4をベース部材2Aの深い位置に設ける場合、従来では2つ以上の蓋溝及び蓋板を用意する必要があったが、本実施形態によれば、蓋溝及び蓋板の数を減らすことができる。
【0086】
また、第二摩擦攪拌工程後に表面切削工程を行うことで蓋板5の下面5bと、蓋溝40の底面40a、一方側塑性化領域W1の表面及び他方側塑性化領域W2の表面とを面接触させることができる。これにより、水密性及び気密性を高めることができる。
【0087】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態について説明する。第三実施形態に係る伝熱板1Bは、ベース部材2の裏面2bにおいてフィン3,3の周囲に露出部が形成されている点で第一実施形態と相違する。第三実施形態では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0088】
図14に示すように、伝熱板1Bは、ベース部材2と、複数のフィン3と、熱媒体用管4とで構成されている。ベース部材2の裏面2bには、フィン3が形成されていない部位、つまり、露出部Rが形成されている。
【0089】
次に、第三実施形態の伝熱板の製造方法について説明する。第三実施形態の伝熱板の製造方法では、準備工程と、熱媒体用管挿入工程と、第一摩擦攪拌工程と、第二摩擦攪拌工程と、切削工程と、バリ切除工程とを行う。
【0090】
準備工程は、
図15の(a)に示すように、被切削ブロック50を用意するとともに、凹溝10を形成する工程である。被切削ブロック50は、基板部51と、ブロック部52とで構成されている。被切削ブロック50は、摩擦攪拌可能な金属で形成されている。基板部51及びブロック部52は、直方体を呈する。ブロック部52は、基板部51の裏面51bに凸設されるとともに基板部51と一体形成されている。ブロック部52は、基板部51よりも一回り小さくなっているため、基板部51の裏面51bには露出部Rが形成されている。露出部Rは、平面視矩形枠状を呈する。凹溝10は、基板部51の表面51aに形成する。凹溝10は、第一実施形態と同等の形状になっている。
【0091】
熱媒体用管挿入工程、第一摩擦攪拌工程及び第二摩擦攪拌工程は、第一実施形態と同等であるため説明を省略する。
図15の(b)に示すように、第一摩擦攪拌工程及び第二摩擦攪拌工程を行った後、被切削ブロック50を固定する架台のクランプを解除して、被切削ブロック50をそのまま存置すると、一方側塑性化領域W1、他方側塑性化領域W2において熱収縮が発生し、基板部51の表面51aが凹状となるように変形する。すなわち、ブロック部52が裏面52b側に凸状となるように反り、基板部51の表面51a側に圧縮応力が発生し、裏面52b(つまり、被切削ブロック50の裏面)側に引張応力が発生する。
【0092】
切削工程は、
図16に示すように、被切削ブロック50の裏側、つまり、ブロック部52を切削してフィンを形成する工程である。切削工程は、ブロック部52を切削することを除いては第一実施形態と同等である。切削工程では、回転軸Maの中心軸を、ブロック部52の上側の稜線52gを通る鉛直線上に配置した後、マルチカッターMを稜線52gに向けて所定の深さまで下降させる。本実施形態では、ブロック部52のみを切削するようにマルチカッターMの深さを調節したが、基板部51及びブロック部52の両方を切削するように深さを調節してもよい。
【0093】
そして、所定の深さを維持した状態で、稜線52hまで被切削ブロック50とマルチカッターMとを相対移動させる。本実施形態では、上方に凸状となる稜線52gから、同じく上方に凸状となる稜線52hに向けてマルチカッターMを移動させる。マルチカッターMの移動軌跡は、架台Kの設置面と平行となる。
【0094】
被切削ブロック50の上側の稜線52hを通る鉛直線と回転軸Maの中心軸とが重なる位置まで移動させたら、マルチカッターMを上方に移動させて被切削ブロック50から離間させる。
【0095】
バリ切除工程は、第一摩擦攪拌工程、第二摩擦攪拌工程及び切削工程で発生したバリを切除する工程である。
【0096】
以上説明した伝熱板の製造方法によっても、第一実施形態と略同等の効果を奏することができる。また、
図16の(b)に示すように、ブロック部52を切削する際に、ブロック部52に摩擦熱が発生するため、基板部51の表面51aに凹状となっていた反りが解消されて、伝熱板1Bを平坦にすることができる。
【0097】
また、フィン3の周りに露出部Rが形成されるため、露出部Rを他の部品との接合スペース等として利用することができる。
【0098】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態について説明する。第四実施形態に係る伝熱板1Cは、第三実施形態よりも深い位置に熱媒体用管4を埋設できる点で第三実施形態と相違する。第四実施形態では、第三実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0099】
伝熱板1Cは、ベース部材2Aと、複数のフィン3と、熱媒体用管4と、蓋板5とで構成されている。ベース部材2Aには、蓋溝40と、蓋溝40の底面40aに形成された凹溝10とが形成されている。凹溝10には熱媒体用管4が配設され、蓋溝40には蓋板5が配設されている。ベース部材2Aの裏側には、複数のフィン3が形成されている。
【0100】
図17に示すように、熱媒体用管4の上方は、一方側塑性化領域W1と他方側塑性化領域W2とで覆われている。一方側塑性化領域W1及び他方側塑性化領域W2は、ベース部材2Aにおいて熱媒体用管4の延長方向に沿って形成されている。一方側塑性化領域W1及び他方側塑性化領域W2は、第三実施形態と同等である。
【0101】
蓋板5の側面と蓋溝40の側壁との突合せ部J3,J4は、摩擦攪拌によって接合されている。突合せ部J3,J4には塑性化領域W3,W4がそれぞれ形成されている。
【0102】
次に、第四実施形態に係る伝熱板の製造方法について説明する。本実施形態に係る伝熱板の製造方法では、準備工程と、熱媒体用管挿入工程と、第一摩擦攪拌工程と、第二摩擦攪拌工程と、蓋板配置工程と、蓋板接合工程と、切削工程と、バリ切除工程とを行う。
【0103】
準備工程では、第三実施形態の被切削ブロック50の表面に蓋溝40及び凹溝10を形成する。熱媒体用管挿入工程、第一摩擦攪拌工程及び第二摩擦攪拌工程については、第三実施形態と略同等である。また、蓋板配置工程及び蓋板接合工程は、第二実施形態と略同等である。切削工程及びバリ切除工程は、第三実施形態と略同等である。
【0104】
図17に示す第四実施形態に係る伝熱板1Cであっても、第三実施形態と略同等の効果を奏することができる。また、蓋板5及び蓋溝40を設けることで熱媒体用管4を第三実施形態よりも深い位置に設けることができる。熱媒体用管4をベース部材2Aの深い位置に設ける場合、従来では2つ以上の蓋溝及び蓋板を用意する必要があったが、本実施形態によれば、蓋溝及び蓋板の数を減らすことができる。
【0105】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。例えば、第一摩擦攪拌工程、第二摩擦攪拌工程及び蓋板接合工程では、タブ材を用いて行ってもよい。タブ材を用いることで摩擦攪拌の挿入位置(開始位置)及び離脱位置(終了位置)を容易に設定することができる。また、摩擦攪拌後にタブ材を切除することで伝熱板の側面をきれいに仕上げることができる。また、第三実施形態及び第四実施形態において、
図9に示すようにベース部材に凸部30を設けてもよい。