特許第6409409号(P6409409)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6409409ガラス物品の製造方法、及び離型粉付着装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6409409
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】ガラス物品の製造方法、及び離型粉付着装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 40/033 20060101AFI20181015BHJP
   B05B 7/14 20060101ALI20181015BHJP
   B05D 1/02 20060101ALI20181015BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20181015BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
   C03B40/033
   B05B7/14
   B05D1/02 Z
   B05D5/00 A
   B05D7/00 E
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-169549(P2014-169549)
(22)【出願日】2014年8月22日
(65)【公開番号】特開2016-44103(P2016-44103A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】奥村 哲也
【審査官】 永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−137942(JP,U)
【文献】 特開昭49−028608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B40/00−40/04
C03C15/00−23/00
C03B23/00−35/26
B05D1/00−7/26
B05B1/00−3/18
B05B7/00−9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板の表面に離型粉を付着させる付着工程と、前記離型粉を付着させた複数の前記ガラス板を重ねる重ね工程と、重ねられた前記ガラス板を加熱する加熱工程とを有するガラス物品の製造方法であって、
前記付着工程において、
前記ガラス板の表面に対して、前記離型粉を含む空気流を斜め方向から吹き付けることを特徴とするガラス物品の製造方法。
【請求項2】
前記付着工程において、
前記ガラス板を垂直又は斜めに立てた状態として、前記ガラス板の上方から前記離型粉を含む空気流を吹き付けることを特徴とする請求項1に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項3】
ガラス板の表面に離型粉を付着させるための離型粉付着装置であって、
内部に密閉空間を形成する処理室と、
前記処理室に設けられ、前記ガラス板が設置される設置部と、
前記設置部に設置された前記ガラス板の表面に対して、前記離型粉を含む空気流を斜め方向から吹き付ける吹付部とを備えることを特徴とする離型粉付着装置。
【請求項4】
前記吹付部は、前記離型粉を含む空気流を吹き出す吹出口を備え、
前記吹出口は、前記設置部に設置された前記ガラス板の上端よりも上側の位置であって、前記設置部に設置された前記ガラス板の直上の領域の外側の位置に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の離型粉付着装置。
【請求項5】
前記吹付部は、前記処理室内の空気を吸引する吸引口を備え、
前記吸引口は、前記設置部に設置された前記ガラス板の下端よりも下側の位置に設けられ、
前記吹出口からの前記離型粉を含む空気流の吹き付けと、前記吸引口からの前記処理室内の空気の吸引とを同時に行うように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の離型粉付着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス物品の製造方法、及び離型粉付着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
耐熱性の板状のガラス物品の製造方法として、ロール成形等により成形されたガラス板を加熱して結晶化させる製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-228180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のガラス物品の製造方法においては、その生産効率を高めるために、加熱工程において、表面に離型粉を付着させたガラス板を重ねた状態として、複数のガラス板を同時に焼成する処理が行われている。離型粉は、加熱工程時におけるガラス板同士の接着を防止するために用いられるものである。ガラス板の表面に離型粉を付着させる方法としては、例えば、大気中に散布した離型粉を自然沈降させて、平置きにしたガラス板の表面上に積層させる方法が挙げられる。
【0005】
ここで、離型粉が部分的に凝集あるいは過剰堆積して塊の状態でガラス板に付着していたり、付着した離型粉の粒径が大きくばらついていたりする場合には、ガラス板の表面に離型粉の転写痕(ピット)等の欠陥が生じるおそれがあった。この問題は、例えば、次のようにして発生すると考えられる。ガラス板の運搬する際の振動や焼成時におけるガラス板の収縮に伴って、凝集等で大きな塊になった離型粉や、相対的に大きな粒径の離型粉がガラス板の表面上を移動しながら軟化したガラス板の表面に押し付けられる結果、ガラス板の表面に離型粉の転写痕(ピット)が生じる。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ピット等の欠陥の発生を抑制することのできるガラス物品の製造方法、及び離型粉付着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するためのガラス物品の製造方法は、ガラス板の表面に離型粉を付着させる付着工程と、前記離型粉を付着させた複数の前記ガラス板を重ねる重ね工程と、重ねられた前記ガラス板を加熱する加熱工程とを有するガラス物品の製造方法であって、前記付着工程において、前記ガラス板の表面に対して、前記離型粉を含む空気流を斜め方向から吹き付けることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、ガラス板の表面に対して、離型粉が空気流に乗って勢いよく衝突することにより、ガラス板の表面に適度な粒径の離型粉を強く付着させることができる。また、斜め方向からガラス板の表面に衝突した空気流が、ガラス板の表面に沿って流れることにより、ガラス板の表面に過剰に堆積した離型粉や、ガラス板の表面に十分に付着していない離型粉や、粒径が大きすぎる離型粉を吹き払うことができる。これにより、ガラス板の表面には、強く付着した適度な粒径の離型粉が選択的に残されることになる。その結果、ガラス板の表面に付着した離型粉が移動し難くなって、離型粉の凝集が抑制される。そして、加熱工程後のガラス板について、凝集した離型粉に起因するピット等の発生が抑制される。
【0009】
また、前記付着工程において、前記ガラス板を垂直又は斜めに立てた状態として、前記ガラス板の上方から前記離型粉を含む空気流を吹き付けることが好ましい。
この場合には、ガラス板の表面に過剰に堆積した離型粉等が自重によりガラス板の表面から脱落する、又は空気流により吹き払われやすくなる。その結果、更に好適に、離型粉に起因するピット等の発生を抑制することができる。
【0010】
上記の目的を達成するためのガラス物品の離型粉付着装置は、ガラス板の表面に離型粉を付着させるための離型粉付着装置であって、内部に密閉空間を形成する処理室と、前記処理室に設けられ、前記ガラス板が設置される設置部と、前記設置部に設置された前記ガラス板の表面に対して、前記離型粉を含む空気流を斜め方向から吹き付ける吹付部とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、前記吹付部は、前記離型粉を含む空気流を吹き出す吹出口を備え、前記吹出口は、前記設置部に設置された前記ガラス板の上端よりも上側の位置であって、前記設置部に設置された前記ガラス板の直上の領域の外側の位置に設けられていることが好ましい。
【0012】
この場合には、吹出口の周囲や内部等に付着した離型粉の塊がガラス板の表面に落下することが抑制される。
また、前記吹付部は、前記処理室内の空気を吸引する吸引口を備え、前記吸引口は、前記設置部に設置された前記ガラス板の下端よりも下側の位置に設けられ、前記吹出口からの前記離型粉を含む空気流の吹き付けと、前記吸引口からの前記処理室内の空気の吸引とを同時に行うように構成されていることが好ましい。
【0013】
この場合には、ガラス板の表面に衝突した後の空気流が処理室外へとスムーズに排出されて、後続する空気流に干渉することが抑制される。
【発明の効果】
【0014】
本発明のガラス物品の製造方法、及び離型粉付着装置によれば、ピット等の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】離型粉付着装置の概略図。
図2図1における2−2線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、離型粉付着装置、及びガラス物品の製造方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
まず、本実施形態の離型粉付着装置10について説明する。
【0017】
図1及び図2に示すように、離型粉付着装置10は、それぞれ対向して位置する一対の第1側壁11a、一対の第2側壁11b、及び上壁11cから構成されて、内部に密閉空間を形成する処理室11を備えている。処理室11の中央下部には、ガラス板を設置する設置部としての設置台13が配置されている。また、一方の第1側壁11aの下部には、開閉部12が設けられている。この開閉部12を通じて、設置台13は、処理室11内における設置位置と処理室11の外部との間で移動可能とされている。
【0018】
図2に示すように、設置台13の上部には、所定数(本実施形態では6枚)のガラス板Gが設置されている。各ガラス板Gは、離型粉を付着させる側の表面が上側となるように、水平面に対して傾斜した姿勢として、それぞれ向きを揃えて設置台13に設置されている。なお、各ガラス板Gの傾斜方向は、一方の第2側壁11bから他方の第2側壁11bに向かう方向とされている。
【0019】
図1及び図2に示すように、処理室11の各第1側壁11aには、処理室11内に向かって開口する2つの吹出口14がそれぞれ並設されている。したがって、処理室11には合計4つの吹出口14が設けられている。各吹出口14は、設置台13に設置されたガラス板Gの上端よりも上側の位置(高い位置)に設けられるとともに、設置位置にある設置台13に向かって斜め下方に指向するように設けられている。また、吹出口14は、設置位置にある設置台13に設置されたガラス板Gの直上の領域の外側(図1における一点鎖線よりも外側)の位置に設けられている。
【0020】
処理室11の各第2側壁11bには、処理室11内の空気を吸引する複数の第1吸引口15が設けられている。第1吸引口15は、設置台13に設置されたガラス板Gの下端よりも下側の位置(低い位置)に設けられている。また、処理室11の各第1側壁11aには、処理室11内の空気を吸引する複数の第2吸引口16が設けられている。第2吸引口16は、上壁11cの近傍に設けられている。
【0021】
図1に示すように、離型粉付着装置10は、流体を吸引して吐出するブロワ20を備えている。ブロワ20の吸引側には、吸引管21の一端が接続されており、吸引管21の他端は、分岐してそれぞれ第1吸引口15に接続されている。一方、ブロワ20の吐出側には、吐出管22の一端が接続されており、吐出管22の他端は、分岐してそれぞれ吹出口14に接続されている。
【0022】
吐出管22における分岐部分よりも上流側には、吐出管22内に離型粉を供給する供給部23が接続されている。本実施形態においては、吹出口14、第1吸引口15、ブロワ20、吸引管21、吐出管22、及び供給部23によって、設置台13に接地されたガラス板Gに離型粉を吹き付ける吹付部が構成されている。また、第2吸引口16は集塵機24にそれぞれ接続されている。
【0023】
次に、本実施形態のガラス物品の製造方法を耐熱性ガラスの製造方法に具体化して説明する。
本実施形態のガラス物品の製造方法は、ロール成形等の公知の手法により成形されたガラス板の表面に離型粉を付着させる付着工程と、離型粉を付着させた複数のガラス板を重ねる重ね工程と、重ねられたガラス板を焼成する加熱工程とを有している。
【0024】
[付着工程]
付着工程は、続く加熱工程の焼成時におけるガラス板同士の接着を抑制するための離型粉を、ガラス板の表面に付着させる工程である。離型粉としては、へき開性及び裂開性の少なくとも一方の性質を有する粉状の物質が好ましく用いられる。離型粉の具体例としては、タルク、アルミナ等が挙げられる。また、離型粉の粒子径は、1〜50μmの範囲であることが好ましく、5〜15μmの範囲であることがより好ましい。
【0025】
付着工程は、図1及び図2に示す離型粉付着装置10を用いて実施される。まず、処理室11の外部にて、設置台13にガラス板Gを設置する。そして、ガラス板Gを設置した設置台13を処理室11内の設置位置に移動させた後、開閉部12を閉じた状態として処理室11内を密閉する。
【0026】
次に、ブロワ20を稼働させる。これにより、吸引管21を通じて第1吸引口15から処理室11内の空気がブロワ20に吸引され、その空気が吐出管22を通じて吹出口14から処理室11内に、所定の流速をもって吹き出される。つまり、ブロワ20は処理室11の空気を循環させている。そして、ブロワ20を稼働させてから所定時間が経過したタイミングで、供給部23から吐出管22内に離型粉が一定量ずつ間欠的に供給される。これにより、吹出口14から吹き出される空気流に離型粉が混合される。
【0027】
図1に示すように、各第1側壁11aの吹出口14から吹き出される離型粉を含む空気流は、設置位置にある設置台13に向かって流れ、設置台13に設置されたガラス板Gの表面(上側の面)に対して、斜め方向から勢いよく衝突する(吹き付けられる)。これにより、ガラス板Gの表面に離型粉が付着する。
【0028】
なお、一方の第1側壁11aに設けられる吹出口14から吹き付けられる空気流と、他方の第1側壁11aに設けられる吹出口14から吹き付けられる空気流とは、互いに交差する方向に流れる。そして、その交差する位置よりも手前でガラス板Gの表面に衝突する。また、吹出口14から吹き付けられる離型粉を含む空気流の流速(風速)は、例えば、1〜3m/秒に設定される。また、ガラス板Gの表面に付着することなく処理室11を漂う離型粉は、処理室11の下部に設けられた第1吸引口15から、処理室11内の空気と共にブロワ20に吸引されることにより再利用される。
【0029】
供給部23からの離型粉の供給を開始してから所定時間(例えば、1〜2分程度)が経過したタイミングで、ブロワ20を停止するとともに、供給部23からの離型粉の供給を停止する。その後、集塵機24を稼働させて、処理室11内の空気を第2吸引口16から集塵機24に吸引し、処理室11内の離型粉を回収する。このとき、開閉部12を僅かに開けた状態とすることにより、開閉部12から処理室11内に外気を流入させて、処理室11内が陰圧になることを抑制する。その後、開閉部12を完全に開けた状態として、設置台13を処理室11内の設置位置から処理室11の外部に移動させる。そして、離型粉が付着されたガラス板Gを回収する。
【0030】
[重ね工程]
重ね工程は、付着工程において離型粉が付着された複数のガラス板を重ねる工程である。具体的には、熱処理用セッタの上に、離型粉が付着された面を下側に向けてガラス板を載置し、そのガラス板の上に、同じく離型粉が付着された面を下側に向けてガラス板を順次、積み重ねる。
【0031】
[加熱工程]
加熱工程は、重ね工程において重ねられた複数のガラス板を同時に焼成して結晶化させる工程であり、この焼成によりガラス板は耐熱性の結晶化ガラスとなる。ガラス板の焼成は、公知の加熱装置(例えば、ローラーハースキルン)を用いて行われる。焼成により得られた耐熱性の結晶化ガラスは、冷却処理を施された後、一枚ずつに分離されてガラス物品として利用される。なお、耐熱性の結晶化ガラスを分離する際には、重ねられたガラス板間に離型粉が介在されていることによって、ガラス同士を容易に分離することができる。
【0032】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図1及び図2に示すように、付着工程において、設置台13に設置されたガラス板Gの表面に対して、離型粉を含む空気流を斜め方向から吹き付けることによって、ガラス板Gの表面に離型粉を付着させている。
【0033】
上記構成を採用した場合には、ガラス板Gの表面に対して、離型粉が空気流に乗って勢いよく衝突することにより、ガラス板Gの表面に適度な粒径の離型粉が強く付着する。また、斜め方向からガラス板Gの表面に衝突した空気流が、ガラス板Gの表面に沿って流れることにより、ガラス板Gの表面に過剰に堆積した離型粉や、ガラス板Gの表面に十分に付着していない離型粉が吹き払われる。同時に、粒子径の大きい離型粉についても、空気流の圧力を強く受けるために、ガラス板Gの表面から吹き払われる。
【0034】
これにより、ガラス板Gの表面には、空気流に抗する程度に強固に付着した適度な粒径の離型粉が選択的に残されることになる。その結果、ガラス板Gが振動した際や、焼成時にガラス板Gが収縮した際に、ガラス板の表面を離型粉が移動し難くなって、離型粉の凝集が抑制される。また、ガラス板の表面に付着した離型粉に、粒子径の大きい離型粉が含まれ難くなる。このように、離型粉の凝集物の発生や、粒子径の大きい離型粉の混在が抑制される結果、加熱工程において、離型粉に起因するピット等の発生が抑制される。
【0035】
次に、本実施形態の効果について記載する。
(1)ガラス物品の製造方法は、ガラス板の表面に離型粉を付着させる付着工程と、離型粉を付着させた複数のガラス板を重ねる重ね工程と、重ねられたガラス板を加熱する加熱工程とを有する。付着工程において、ガラス板の表面に対して、離型粉を含む空気流を斜め方向から吹き付けている。
【0036】
上記構成によれば、離型粉に起因するピット等の発生を抑制することができる。なお、上記斜め方向は、ガラス板の表面に対して平行な方向及び直交する方向を除いた全ての方向を含む。
【0037】
(2)付着工程において、ガラス板を斜めに立てた状態として、ガラス板の上方から離型粉を含む空気流を吹き付けている。
上記のとおり、本実施形態においては、斜め方向からガラス板Gの表面に衝突した空気流が、ガラス板Gの表面に沿って流れることにより、ガラス板Gの表面から浮いた離型粉等のピット発生の原因となりやすい離型粉がガラス板Gの表面から吹き払われる。ここで、ガラス板を斜めに立てた状態とすることにより、ガラス板Gの表面から浮いた離型粉等が自重によりガラス板Gの表面から脱落する、又は空気流により吹き払われやすくなる。その結果、更に好適に、離型粉に起因するピット等の発生を抑制することができる。
【0038】
また、ガラス板を斜めに立てた状態とすることにより、ガラス板を平置きした場合と比較して、規定の設置スペース(設置台13)に対して多数のガラス板を設置することができる。そのため、一回の付着工程において、多数のガラス板に対して同時に離型粉を付着させることが可能となり、付着工程の効率化を図ることができる。
【0039】
(3)離型粉を含む空気流は、吹き付け方向の異なる2つの空気流を含み、それらの空気流の吹き付け方向は互いに交差する方向、且つ交差する位置よりも手前でガラス板Gの表面に衝突する方向である。
【0040】
上記構成によれば、2つの空気流を発生させた場合においても、2つの空気流が互いに衝突することが抑制されて、ガラス板の表面に対して、各空気流をより確実に斜め方向から吹き付けることができる。
【0041】
(4)離型粉付着装置10は、内部に密閉空間を形成する処理室11と、処理室11に設けられ、ガラス板Gが設置される設置台13と、設置台13に設置されたガラス板Gの表面に対して、離型粉を含む空気流を斜め方向から吹き付ける吹付部(吹出口14、第1吸引口15、ブロワ20、吸引管21、吐出管22、供給部23)とを備える。
【0042】
上記構成の離型粉付着装置10を用いて、付着工程を行うことにより、離型粉に起因するピット等の発生を抑制することができる。
(5)吹付部は、離型粉を含む空気流を吹き出す吹出口14を備え、吹出口14は、設置台13に設置されたガラス板Gの上端よりも上側の位置であって、設置台13に設置されたガラス板Gの直上の領域の外側の位置に設けられている。
【0043】
上記構成によれば、吹出口14の周囲や内部等に付着した離型粉の塊が、ガラス板Gの表面に落下することを抑制できる。こうした離型粉の塊もガラス板Gの表面に付着することで、ピット等の発生の原因となる。そのため、上記構成を採用することにより、更に好適に、離型粉に起因するピット等の発生を抑制することができる。
【0044】
(6)吹付部は、処理室11内の空気を吸引する第1吸引口15を備えている。第1吸引口15は、設置台13に設置されたガラス板Gの下端よりも下側の位置に設けられている。吹出口14からの離型粉を含む空気流の吹き付けと、第1吸引口15からの処理室11内の空気の吸引とを同時に行うように構成されている。
【0045】
上記構成によれば、ガラス板Gの表面に衝突した後の空気流が、第1吸引口15から処理室11外へスムーズに排出されて、後続する空気流に干渉することを抑制できる。
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0046】
・ 上記実施形態では、付着工程において、ガラス板を斜めに立てた状態としていたが、ガラス板を垂直に立てた状態としてもよい。この場合にも、上記(2)の効果を得ることができる。また、ガラス板を平置きの状態としてもよい。
【0047】
・ 上記実施形態では、付着工程において、設置台13に設置されたガラス板Gに対して、斜め上方から離形粉を含む空気流を吹き付けていたが、ガラス板Gの表面に対して斜め方向となる方向であれば、ガラス板Gの側方や下方から離形粉を含む空気流を吹き付けてもよい。
【0048】
・ 上記実施形態では、付着工程において、離型粉を含む空気流として、吹き付け方向の異なる2つの空気流を発生させていたが、吹き付け方向の異なる3以上の空気流を発生させてもよい。この場合にも各空気流の吹き付け方向を、互いに交差する方向、且つ交差する位置よりも手前でガラス板Gの表面に衝突する方向とすることが好ましい。また、離型粉を含む空気流として、吹き付け方向が同じ空気流のみを発生させてもよい。
【0049】
・ 離型粉付着装置10について、吹出口14を、設置台13に設置されたガラス板Gの上端よりも上側の位置であって、設置台13に設置されたガラス板Gの直上の位置に設けてもよい。
【0050】
・ 上記実施形態では、離型粉付着装置10について、処理室11内の空気を循環させる構成を採用していたが、処理室11内の空気を循環させない構成としてもよい。例えば、ブロワ20の空気の供給源を外気とするとともに、第1吸引口15を集塵機24に接続して、ブロワ20による吹出口14からの離型粉を含む空気流の吹き付けと、集塵機24による第1吸引口15からの処理室11内の空気の吸引とを同時に行う構成としてもよい。この場合にも、上記(6)の効果を得ることができる。
【0051】
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について以下に記載する。
(イ)前記付着工程において、前記離型粉を含む空気流は、吹き付け方向の異なる第1空気流及び第2空気流を含み、前記第1空気流の吹き付け方向と前記第2空気流の吹き付け方向とは、互いに交差する方向、且つ交差する位置よりも手前でガラス板の表面に衝突する方向である前記ガラス物品の製造方法。
【符号の説明】
【0052】
G…ガラス板、10…離型粉付着装置、11…処理室、13…設置台(設置部)、14…吹出口、15…第1吸引口、20…ブロワ、21…吸引管、22…吐出管、23…供給部。
図1
図2