(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ファン軸心(CL1)の周りに配置された複数の羽根(12)と、前記複数の羽根のそれぞれの外周端部と連結され、前記ファン軸心を中心とするリング部(13)とを有する軸流ファン(10)と、
少なくとも前記リング部の径方向外側で前記リング部に対向する筒状の部分(22)を有し、前記軸流ファンに向かって空気が流れる空気流路(20c)を形成するシュラウド(20)とを備え、
前記リング部は、内周面(131a)と外周面(131b)とを有する円筒状の側壁(131)と、前記側壁に設けられ、前記内周面と前記外周面を貫通する貫通部(40)とを有し、
前記貫通部は、前記側壁のうち、少なくとも前記側壁の円周方向における前記羽根と連結する連結部(132)が形成されている範囲(R1)内であって、前記連結部よりも空気流れ下流側に設けられており、
前記側壁の内周面上における前記貫通部の開口中心(B1)の位置を基準位置として、前記基準位置を通って前記ファン軸心に垂直な線を基準線(C1)とするとともに、前記基準位置から前記リング部の外側に向かって、前記貫通部の中心軸(CL2)に沿って延びる仮想直線を引いたとき、
前記仮想直線が前記基準線に対して前記軸流ファンの回転方向側に傾くとともに、前記仮想直線が前記基準線に対してなす角度(α)が鋭角となるように、前記貫通部が形成されていることを特徴とする軸流送風機。
さらに、前記仮想直線が前記基準線に対して前記軸流ファンを通過する空気流れの上流側に傾くとともに、前記仮想直線が前記基準線に対してなす角度(β)が鋭角となるように、前記貫通部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の軸流送風機。
前記基準位置、前記基準線および前記仮想直線を、それぞれ、第1基準位置、第1基準線および第1仮想直線とし、前記側壁の外周面上における前記貫通部の開口中心(B2)の位置を第2基準位置とし、前記第2基準位置を通って前記ファン軸心に垂直な線を第2基準線(C2)としたときであって、
前記第2基準位置から前記リング部の外側に向かって、前記貫通部の中心軸(CL2)に沿って延びる第2仮想直線を引いたとき、
前記第2仮想直線が、前記第2基準線に対して前記軸流ファンを通過する空気流れにおける上流側に傾くとともに、前記第2仮想直線が前記第2基準線に対してなす角度(γ)が鋭角となるように、前記貫通部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の軸流送風機。
ファン軸心(CL1)の周りに配置された複数の羽根(12)と、前記複数の羽根のそれぞれの外周端部と連結され、前記ファン軸心を中心とするリング部(13)とを有する軸流ファン(10)と、
少なくとも前記リング部の径方向外側で前記リング部に対向する筒状の部分(22)を有し、前記軸流ファンに向かって空気が流れる空気流路(20c)を形成するシュラウド(20)とを備え、
前記リング部は、内周面(131a)と外周面(131b)とを有する円筒状の側壁(131)と、前記側壁に設けられ、前記内周面と前記外周面を貫通する貫通部(40)とを有し、
前記貫通部は、前記側壁のうち、少なくとも前記側壁の円周方向における前記羽根と連結する連結部(132)が形成されている範囲(R1)内であって、前記連結部よりも空気流れ下流側に設けられており、
前記側壁の外周面上における前記貫通部の開口中心(B2)の位置を基準位置とし、前記基準位置を通って前記ファン軸心に垂直な線を基準線(C2)とするとともに、前記基準位置から前記リング部の外側に向かって、前記貫通部の中心軸(CL2)に沿って延びる仮想直線を引いたとき、
前記仮想直線が、前記基準線に対して前記軸流ファンを通過する空気流れにおける上流側に傾くとともに、前記仮想直線が前記基準線に対してなす角度(γ)が鋭角となるように、前記貫通部が形成されていることを特徴とする軸流送風機。
前記貫通部は、前記側壁の円周方向における前記連結部が形成されている第1範囲(R1)と前記連結部が形成されていない第2範囲(R2)のうち、前記第1範囲内のみに設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の軸流送風機。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0014】
(第1実施形態)
図1〜3を用いて、本実施形態の軸流送風機1の全体構成について説明する。なお、
図1は、空気流れ上流側から見た軸流送風機1の正面図である。
【0015】
本実施形態の軸流送風機1は、車両用のラジエータ2に装着され、ラジエータ2に空気を供給する車両用の軸流送風機1である。ラジエータ2は、車両の走行用エンジンの冷却水と空気との熱交換により、冷却水を冷却する熱交換器である。
【0016】
図2、3に示すように、軸流送風機1は、ラジエータ2に対して、車両後方側であって、ラジエータ2を通過する空気流れの下流側に配置されている。軸流送風機1は、ラジエータ2を通過した空気を吸引して車両後方に向けて吹き出すものである。
【0017】
軸流送風機1は、軸流ファン10と、シュラウド20と、モータ30とを備えている。モータ30は、軸流ファン10を回転駆動する電動機である。モータ30は、回転軸31を有している。モータ30は、ステー32によってシュラウド20に固定されている。ステー32は、モータ30を支持する支持部材である。
【0018】
軸流ファン10は、モータ30によって軸流ファン10のファン軸心CL1を中心に回転する。
図1中の矢印DR1方向が軸流ファン10の回転方向である。軸流ファン10は、モータ取付部11と、複数の羽根12と、リング部13とを有して構成されている。
【0019】
モータ取付部11は、モータ30の回転軸31に取り付けられている円筒状の部材である。モータ取付部11は、その側壁の外側に複数の羽根12を支持している。なお、モータ取付部11は、ボス部とも呼ばれる。
【0020】
複数の羽根12は、モータ取付部11から放射状に延びている。複数の羽根12は、モータ取付部11の周囲に主に等間隔で配置されている。
【0021】
リング部13は、軸流ファン10の外周部に設けられた円環状の部材である。より具体的には、リング部13は、
図1に示すように、ファン軸心CL1を中心とした円環状であって、
図2、3に示すように、ファン軸心CL1方向に所定長さ延びた円筒状の部材である。
【0022】
リング部13は、円筒状の側壁131を有している。リング部13は、複数の羽根12のそれぞれの外周端部と連結している。換言すると、リング部13の側壁131には、複数の羽根12のそれぞれと連結する連結部132が形成されている。なお、ここでいう連結とは、別体として形成された羽根12とリング部13とが繋がっている状態だけでなく、一体として形成された羽根12とリング部13とが連続している状態も含む意味である。本実施形態では、モータ取付部11、複数の羽根12およびリング部13は、ポリプロピレンなどの樹脂にて一体に成形されている。
【0023】
リング部13は、側壁131の空気流れ上流側端部に、断面円弧状のベルマウス133が形成されている。
【0024】
シュラウド20は、ラジエータ2を通過した空気が軸流ファン10に向かって流れる空気流路20cを形成している。シュラウド20は、ポリプロピレンなどの樹脂で成形されている。シュラウド20は、ラジエータ2側に空気が流入する空気流入口20aが形成されており、その反対側に空気が流出する空気流出口20bが形成されている。シュラウド20の内部のうち空気流出口20b側の部分に、軸流ファン10が配置されている。
【0025】
より具体的には、シュラウド20は、空気流入部21と、空気流出部22と、中間部23とを有している。
【0026】
空気流入部21は、空気流入口20aが形成されている部分である。空気流入部21の空気流入側がラジエータ2に連結されている。空気流入口20aは、ラジエータ2に対向してファン軸心CL1方向に開口している。空気流入口20aの中心位置は、ファン軸心CL1に一致している。
【0027】
空気流入口20aは、ラジエータ2の形状に対応した形状である。すなわち、空気流入口20aは、
図1に示すように、ファン軸心CL1方向から見たとき、車両上下方向D1に延びる辺よりも、車幅方向D2に延びる辺の方が長い横長の長方形形状である。このため、車両左右方向D2における空気流入部21の内壁と軸流ファン10との距離L2は、車両上下方向D1における空気流入部21の内壁と軸流ファン10との距離L1よりも大きくなっている。
【0028】
空気流出部22は、空気流出口20bが形成されている部分であって、内部に軸流ファン10が配置されている部分である。軸流ファン10が回転するので、空気流出部22は、リング部13との間に隙間、すなわち、クリアランス部24を有するように形成されている。したがって、本実施形態では、空気流出部22が、リング部13の径方向外側でリング部13に対向する筒状の部分を構成している。
【0029】
空気流出口20bは、ファン軸方向CL1方向に開口している。空気流出口20bは、軸流ファン10に対応した形状である。すなわち、空気流出口20bは、ファン軸心CL1方向から見たとき、円形状である。空気流出口20bの中心位置は、ファン軸心CL1に一致している。
【0030】
また、本実施形態では、空気流出口20bの半径がリング部13の下流側端部の内径と同じとなるように、空気流出部22の空気流れ最下流部221は、リング部13と対向する部分222よりも内側に突出した形状となっている。空気流出部22の空気流れ最下流部221とリング部13との間に、クリアランス部24へ空気が流入する空気入口25が形成されている。
【0031】
中間部23は、空気流入部21から空気流出部22まで空気を導く空気流路を形成している。中間部23は、車両左右方向D2における空気流入部21の内壁と軸流ファン10との距離L2が、空気流入部21から空気流出部22に向かって徐々に小さくなっている。したがって、中間部23は、流路断面積(開口面積)が、空気流入部21から空気流出部22に向かって徐々に小さくなっている。
【0032】
このような構成の軸流送風機1では、モータ30の回転軸31が回転することによって、軸流ファン10が回転すると、
図2、3中の矢印F1のように、ラジエータ2を通過した空気が、軸流ファン10に吸い込まれ、軸流ファン10からファン軸心CL1に平行に吹き出される。
【0033】
このとき、軸流ファン10の回転により、空気流路20c内の空気を空気流出口20bに送るため、シュラウド20内における空気流出口20b側の位置A1での圧力は軸流ファン10の空気吸入側の位置A2での圧力よりも高い。このため、
図2、3中の矢印F2のように、軸流ファン10から流出した空気の一部が、空気入口25からクリアランス部24を通って、軸流ファン10の吸入側に逆流する。本実施形態では、軸流ファン10の外周にリング部13を設けているので、リング部13を設けない場合と比較して、この逆流F2が低減されている。さらに、リング部13の先端側にベルマウス133を設けているので、ベルマウス133を設けない場合と比較して、逆流F2が合流する軸流ファン10の空気流入側の乱流が抑制されている。
【0034】
次に、
図4、5、6を用いて、本実施形態の軸流送風機1の主な特徴部分について説明する。なお、
図6は、軸流ファン10を空気流れ上流側から見た軸流ファン10の一部を図示している。
図6では、貫通孔40の説明のために、リング部13のベルマウス133を省略して側壁131のみを示している。
【0035】
図4に示すように、本実施形態の軸流送風機1では、リング部13の側壁131に複数の貫通孔40が設けられている。貫通孔40は、側壁131の内周面131aと外周面131bの両方を貫通する貫通部である。貫通孔40は、クリアランス部24と、リング部13の内側の空間とを連通させている。
【0036】
複数の貫通孔40は、それぞれ、リング部13の側壁131のうち連結部132よりも軸流ファン10を通過する空気流れの下流側に設けられている。1つの貫通孔40は、貫通孔40の中心軸CL2がファン軸心CL1に対して垂直となるように形成されている。なお、貫通孔40の中心軸CL2とは、貫通孔40の開口中心を通る中心線である。
【0037】
図5に示すように、1つの貫通孔40は、その開口形状が円形状である。貫通孔40を構成する内壁41は、貫通孔40の周方向全域で連続している。
【0038】
複数の貫通孔40は、側壁131の円周方向に並んで配置されている。具体的には、
図6に示すように、複数の貫通孔40は、それぞれ、側壁131の内周面131aのうち側壁131の円周方向における連結部132が形成されている第1範囲R1と連結部132が形成されていない第2範囲R2のうち、第1範囲R1内のみに設けられている。本実施形態では、1つの羽根12に対して、1つの貫通孔40が設けられている。
【0039】
また、
図6に示すように、リング部13の側壁131の内周面131a上における貫通孔40の開口中心B1の位置を通り、ファン軸心CL1に垂直な線を基準線C1としたとき、1つの貫通孔40は、貫通孔40の中心軸CL2が基準線C1と重なるように、すなわち、平行となるように形成されている。なお、
図6では、貫通孔40の中心軸CL2と基準線C1とを区別するために、両者をずらして図示している。
【0040】
ここで、本実施形態の軸流送風機1と
図7に示す比較例1の軸流送風機J1とを比較する。比較例1の軸流送風機J1は、リング部13に貫通孔40が形成されていない点のみが、本実施形態の軸流送風機1と異なるものである。
【0041】
発明が解決しようとする課題の欄での説明の通り、本実施形態および比較例1の軸流送風機1、J1では、軸流ファン10に流入する空気流れは、軸流ファン10のファン軸心CL1に垂直な方向の速度成分を有する。また、軸流ファン10を通過する空気流れは、軸流ファン10の最外周よりも内側の方が流速が速い。これらにより、軸流ファン10からの流出直後の空気流れは、縮流となる。
【0042】
さらに、本実施形態および比較例1の軸流送風機1、J1では、上述の通り、シュラウド20内の流路断面積は、空気流入部21から空気流出部22に向かって徐々に小さくなっているため、縮流の傾向が強くなっている。特に、車両左右方向D2における空気流入部21の内壁と軸流ファン10との距離L2が、車両上下方向D1における空気流入部21の内壁と軸流ファン10との距離L1よりも大きくなっているため、空気流出部22を流れる空気は、車両左右方向において、縮流の傾向が強くなっている。
【0043】
このため、比較例1の軸流送風機J1においては、リング部13の内周面近傍における連結部132の空気流れ下流側の領域A3に、空気流れのよどみが発生する。このよどみの発生により、よどみの周囲に渦f1が形成され、軸流ファン10から流出の空気流れに乱れf2が生じる。また、このよどみの発生により、上記した軸流ファン10の外周側と内側の流速差が拡大する。この流速差の拡大により、クリアランス部24に発生する逆流F2が増大し、この逆流する空気流れが軸流ファン10の吸入側の空気流れと衝突することで、軸流ファン10の吸入側の空気流れに乱れf3が生じる。このように、よどみの発生により生じる空気流れの乱れf2、f3が、騒音発生の原因となるため、軸流ファン10の外周部にリング部13を単に設けるだけでは、騒音低減の効果が十分に得られない。
【0044】
これに対して、本実施形態では、リング部13の側壁131のうち、連結部132が形成されている第1範囲R1内であって、連結部132よりも空気流れ下流側の位置に、貫通孔40を設けている。リング部13の内周面131a近傍における連結部132の空気流れ下流側の領域A3の圧力は、軸流ファン10の空気吸入側の位置A2での圧力よりも高い。このため、
図4に示すように、リング部13の内周面131a近傍における連結部132の空気流れ下流側の領域A3から貫通孔40を介してクリアランス部24に流入し、クリアランス部24を軸流ファン10の空気吸入側に向かって流れる空気流れF3が生じる。
【0045】
したがって、本実施形態によれば、リング部13の内周面131a近傍における連結部132の空気流れ下流側の領域A3に発生するよどみを低減できる。これにより、比較例1の軸流送風機J1で発生する軸流ファン10から流出の空気流れの乱れf2を抑制できる。さらに、よどみの低減により、比較例1の軸流送風機J1と比較して、上記した軸流ファン10の外周側と内側の空気流れの流速差を小さくでき、空気入口25からクリアランス部24に流入する空気の流量を低減できる。これにより、クリアランス部24を逆流して、軸流ファン10の吸入側の空気流れと衝突する空気の流量を低減でき、比較例1の軸流送風機J1で発生する軸流ファン10の吸入側の空気流れの乱れf3を抑制できる。
【0046】
この結果、本実施形態によれば、貫通孔40を設けていない比較例1と比較して、騒音を低減させることが可能となる。
【0047】
図8は、リング部13に設けた複数の貫通孔40の総開口面積と騒音レベルとの関係を調査した実験結果である。
図8の横軸において、0(貫通孔無し)が、比較例1の軸流送風機J1に相当し、S、2S、3S、4Sのそれぞれが、本実施形態の軸流送風機1に相当する。2S、3S、4Sは、それぞれ、Sのときの総開口面積に対して、総開口面積を2倍、3倍、4倍としたときの結果である。具体的には、総開口面積がSのときでは、一枚の羽根12に対して、1つの貫通孔40を形成した。総開口面積が2Sのときでは、総開口面積がSのときに対して、1つの貫通孔40の開口面積を2倍に変更した。総開口面積が3Sのときでは、総開口面積がSのときに対して、1つの貫通孔40の開口面積を3倍に変更した。総開口面積が4Sのときでは、総開口面積が2Sのときの同じ開口面積の貫通孔40を、一枚の羽根12に対して2つ形成した。
【0048】
図8からわかるように、ファン回転数が低回転数のとき、貫通孔40を形成することで、貫通孔40を形成しない場合と比較して、騒音レベルが低下する。そして、総開口面積が所定の大きさ(
図8では3S)のときまでは、総開口面積が増大するにつれて騒音レベルが低下する傾向がある。このため、1つの貫通孔40の開口面積を大きくしたり、リング部13に設ける貫通孔40の数を増大させたりして、総開口面積を大きくすることが好ましい。ただし、総開口面積が所定の大きさを超えると、騒音レベルが上がる傾向がある。これは、総開口面積が大きくなりすぎると、貫通孔40からクリアランス部24を通って軸流ファン10の吸入側へ逆流する空気の量(逆流量)が増大し、騒音が増大してしまうためである。そこで、騒音低減の効果が大きくなるように、総開口面積を設定することが好ましい。
【0049】
また、ファン回転数が低回転数の場合では、総開口面積がS以上のときに、貫通孔無しのときと比較して、騒音レベルが低下するが、ファン回転数が高回転数の場合では、総開口面積が2S以上のときに、貫通孔無しのときと比較して、騒音レベルが低下する。このように、ファン回転数が低い場合に騒音低減の効果が得られても、ファン回転数が高い場合に騒音低減の効果が得られない場合がある。このため、騒音レベルが特に問題視される、ファン回転数が高い場合でも、騒音低減の効果を得られるように、貫通孔40の総開口面積を大きく設定することが好ましい。
【0050】
(第2実施形態)
図9に示すように、本実施形態の軸流送風機1は、貫通孔40が、リング部13の側壁131の円周方向における第1範囲R1と第2範囲R2の両方に設けられたものであり、その他の構成は第1実施形態の軸流送風機1と同じである。
【0051】
本実施形態においても、第1範囲R1内に貫通孔40を設けているので、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0052】
ただし、本実施形態のように、第2範囲R2に貫通孔40を設けることによって、複数の貫通孔40の総開口面積が大きくなりすぎると、リング部13が持つ機能の一つである軸流ファン10の補強機能が低下し、軸流ファン10の強度が低下してしまう。
【0053】
このため、第1実施形態のように、貫通孔40を、側壁131の円周方向における第1範囲R1と第2範囲R2のうち、第1範囲R1内のみに設けることが好ましい。これにより、軸流ファン10の強度を保ちつつ、リング部13の内周面近傍に発生するよどみの低減が可能となる。
【0054】
(第3実施形態)
図10に示すように、本実施形態の軸流送風機1は、第1実施形態の軸流送風機1に対して、貫通孔40の向きを変更したものであり、その他の構成は、第1実施形態の軸流送風機1と同じである。
【0055】
本実施形態では、貫通孔40は真直ぐに延びる円筒形状であり、貫通孔40の中心軸CL2は直線状である。また、リング部13の側壁131の内周面131a上における貫通孔40の開口中心B1の位置を第1基準位置として、この第1基準位置B1を通ってファン軸心CL1に垂直な線を第1基準線C1とする。このとき、貫通孔40の中心軸CL2が、この第1基準線C1に対して軸流ファン10の回転方向DR1側に傾くとともに、第1基準線C1に対してなす角度(傾斜角)αが鋭角(0°<α<90°)となるように、貫通孔40が形成されている。
【0056】
ここで、第1基準位置B1からリング部13の外側に向かって、貫通孔40の中心軸CL2に沿って延びる第1仮想直線を引いたとき、この直線の延びる方向が、リング部13の内側から貫通孔40内へ空気が流入する際の空気流入方向となる。本実施形態では、貫通孔40の中心軸CL2自体が、貫通孔40の中心軸CL2に沿って延びる直線に相当する。このため、貫通孔40への空気流入方向F3aは、軸流ファン10の回転方向DR1側に向かう方向である。
【0057】
また、軸流ファン10を通過する空気流れ(主流)F1は、上述の通り、縮流しており、リング部13の内部を通過する際では、
図10中の矢印F1aのように、軸流ファン10の反回転方向側に向かう流れとなっている。
【0058】
したがって、本実施形態によれば、貫通孔40の向きをこのように設定することで、主流F1aの一部が貫通孔40内へ流入するためには、鋭角にターンすることが必要となるので、貫通孔40を介してクリアランス部24へ流入して、軸流ファン10の吸入側へ逆流する空気の流量(逆流量)が不必要に増加してしまうことを防止できる。
【0059】
(第4実施形態)
図11に示すように、本実施形態の軸流送風機1は、第3実施形態の軸流送風機1に対して、さらに、貫通孔40の向きを変更したものであり、その他の構成は、第3実施形態の軸流送風機1と同じである。
【0060】
リング部13の側壁131の外周面131b上における貫通孔40の開口中心B2の位置を第2基準位置として、この第2基準位置B2を通ってファン軸心CL1に垂直な線を第2基準線C2とする。
【0061】
本実施形態では、貫通孔40の中心軸CL2が、第1基準線C1と第2基準線C2のそれぞれに対して、軸流ファン10を通過する空気流れF1の上流側に傾くとともに、第1基準線C1と第2基準線C2のそれぞれとなす角度(傾斜角)β、γが鋭角(0°<β<90°、0°<γ<90°)となるように、貫通孔40が形成されている。本実施形態では、貫通孔40の中心軸CL2は直線なので、角度β、γは同じ大きさである。
【0062】
本実施形態では、貫通孔40への空気流入方向F3bは、貫通孔40の中心軸CL2の延伸方向であり、軸流ファン10を通過する空気流れF1の上流側に向かう方向である。したがって、本実施形態においても、主流F1の一部が貫通孔40内へ流入するためには、鋭角にターンすることが必要となるので、第3実施形態と同様の効果を奏する。
【0063】
また、第2基準位置B2からリング部13の外側に向かって、貫通孔40の中心軸CL2に沿って延びる第2仮想直線を引いたとき、この直線の延びる方向が、貫通孔40からクリアランス部24に空気が流出する際の空気流出方向となる。本実施形態では、貫通孔40の中心軸CL2自体が、貫通孔40の中心軸CL2に沿って延びる直線に相当する。このため、空気流出方向F3cは、第2基準位置B2からリング部13の外側に向かって、貫通孔40の中心軸CL2を直線状に延長させた方向、すなわち、軸流ファン10を通過する空気流れF1の上流側に向かう方向である。
【0064】
本実施形態によれば、貫通孔40の中心軸CL2が第2基準線C2に重なる場合よりも、貫通孔40からの空気流出方向F3cが、クリアランス部24を軸流ファン10の吸入側に逆流する空気流れ方向に近づくので、貫通孔40から流出した空気流れがクリアランス部24に流入する際に、空気流れが乱れることを防止できる。
【0065】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、下記のように、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0066】
(1)上記した各実施形態では、貫通孔40の開口形状が円形状であったが、他の形状であってもよい。また、上記した各実施形態では、貫通孔40の幅が貫通孔40の延伸方向で均一であったが、均一でなくてもよい。例えば、
図12に示すように、貫通孔40は、リング部13の側壁131の外周面131b側から内周面131a側に進むにつれて、貫通孔40の開口幅が徐々に小さくなる形状であってもよい。
【0067】
(2)上記した各実施形態では、貫通孔40の中心軸CL2の全部が直線状であったが、貫通孔40の中心軸CL2の一部もしくは全部が曲線状であってもよい。
【0068】
この場合、第3実施形態に記載の第1基準位置B1からリング部13の外側に向かって、貫通孔40の中心軸CL2に沿って延びる第1仮想直線とは、貫通孔40の中心軸CL2の第1基準位置B1の近傍部分が直線状であれば、その直線状の部分に平行に、第1基準位置B1からリング部13の外側に向かって引いた直線である。一方、貫通孔40の中心軸CL2の第1基準位置B1の近傍部分が曲線状であれば、第1基準位置B1における曲線状の部分の接線に平行に、第1基準位置B1からリング部13の外側に向かって引いた直線である。第4実施形態に記載の第2基準位置B2からリング部13の外側に向かって、貫通孔40の中心軸CL2に沿って延びる第2仮想直線についても同様である。
【0069】
例えば、
図13に示すように、貫通孔40の中心軸CL2の全部が曲線となっている場合、第3、第4実施形態に記載の第1基準位置B1からリング部13の外側に向かって、貫通孔40の中心軸CL2に沿って延びる直線とは、第1基準位置B1からリング部13の外側に向かって、第1基準位置B1での貫通孔40の中心軸CL2の接線に平行に引いた直線CL2aである。
【0070】
同様に、第4実施形態に記載の第2基準位置B2からリング部13の外側に向かって、貫通孔40の中心軸CL2に沿って延びる直線とは、第2基準位置B2からリング部13の外側に向かって、第2基準位置B2での貫通孔40の中心軸CL2の接線に平行に引いた直線CL2bである。
【0071】
(3)上記した各実施形態では、貫通孔40を構成する内壁41は、貫通孔40の周方向全域で連続しており、側壁131の内周面131aの開口部と外周面131bの開口部以外は開放されていなかったが、
図14に示すように、貫通孔40の周方向での一部が開放されていてもよい。すなわち、貫通孔40の内壁41の一部に、貫通孔40の内部空間と貫通孔40の内部空間とは別の空間と連通する連通部42が形成されていてもよい。ただし、この場合、連通部42の幅を、クリアランス部24から貫通孔40を介してリング部13の内側に向かう空気流れの発生を阻害しない程度の大きさとすることが必要である。
【0072】
(4)上記した各実施形態では、
図1に示すように、軸流送風機1のD1方向を車両上下方向とし、軸流送風機1のD2方向を車両左右方向として配置したが、軸流送風機1のD1方向を車両左右方向とし、軸流送風機1のD2方向を車両上下方向として配置してもよい。
【0073】
(5)上記した各実施形態では、本発明の軸流送風機を、車両用のラジエータ2に空気を供給する軸流送風機に適用したが、ラジエータ2以外の熱交換器に空気を供給する軸流送風機に適用してもよい。また、本発明の軸流送風機を、熱交換器以外のものに空気を供給する軸流送風機に適用してもよい。
【0074】
(6)上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。なお、第4実施形態は、第3実施形態に記載の技術内容に対して、第4実施形態に記載の技術内容を組み合わせたものであったが、第4実施形態に記載の技術内容のみを実施するようにしてもよい。また、第4実施形態は、貫通孔40の中心軸CL2が直線状であったため、第1仮想直線が第1基準線C1に対して軸流ファン10を通過する空気流れF1の上流側に傾く点と、第2仮想直線が第2基準線C2に対して軸流ファン10を通過する空気流れF1の上流側に傾く点の両方を満たすように、貫通孔40が形成されていたが、貫通孔40の中心軸CL2の一部もしくは全部が曲線状である場合は、上記2点のどちらか一方を満たすように、貫通孔40が形成されていてもよい。
【0075】
また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。