(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)アクリルゴムを100質量部と、(B)熱可塑性ポリオレフィンを15〜70質
量部含む混合物を、(A)100質量部に対して0.1〜5質量部の(C)架橋剤の存在
下で動的に架橋して熱可塑性エラストマーを製造する方法であって、
(A)アクリルゴムは、コア−シェル構造を有し、
コア層は、
(a−1)一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される単量体から選ばれる少なく
とも1種を80〜100質量部と、
(a−2)アクリロニトリル単量体を0〜20質量部と、
(a−3)メタクリル酸アリル単量体を、(a−1)と(a−2)の合計100質量部
に対して0.1〜2質量部
のみからなり、
シェル層は、側鎖に炭素−炭素二重結合を有する多官能単量体を含まず、
(a−4)一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される単量体から選ばれる少なく
とも1種を80〜100質量部と、
(a−5)アクリロニトリル単量体を0〜20質量部とを含む、
熱可塑性エラストマーの製造方法。
【化1】
(式中、nは0、1又は3である)
【化2】
(式中、mは0又は1である)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、特許文献1の様に側鎖に炭素−炭素二重結合を有する多官能単量体を使用すると、アクリルゴムの重合中に、当該単量体の側鎖の炭素−炭素二重結合も反応することでアクリルゴムがゲル化する。アクリルゴムがゲル化すると架橋点が失われることになる。一方、この種の熱可塑性エラストマーは、熱可塑性樹脂にゴム粒子が分散した、いわゆる海島構造となっている。特許文献1の熱可塑性エラストマーでは、側鎖に炭素−炭素二重結合を有する多官能単量体がアクリルゴム粒子全体に均一に存在している。この場合、アクリルゴム粒子全体が緻密なゲルを形成するため、熱可塑性ポリオレフィンとアクリルゴム粒子との分子レベルの絡み合いが起きず、相容性が低い。これらの問題から、最終的に得られる熱可塑性エラストマーの引張強度、引張伸び及び成形加工性が低いという課題を有する。
【0006】
そこで、本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、側鎖に炭素−炭素二重結合を有する多官能単量体としてメタクリル酸アリル単量体を使用した場合に、アクリルゴムの重合中のゲル化の抑制が可能であることを見出した。さらに、メタクリル酸アリル単量体を含む内層部のコア層と、側鎖に炭素−炭素二重結合を有する多官能単量体を含まない表層部のシェル層とから構成される、コア−シェル構造のアクリルゴムを使用することで、熱可塑性ポリオレフィンとアクリルゴム粒子との相容性が向上することを見出した。すなわち本発明は、引張強度、引張伸び及び成形加工性に優れる熱可塑性エラストマーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下のものである。
(A)アクリルゴムを100質量部と、(B)熱可塑性ポリオレフィンを15〜70質
量部含む混合物を、(A)100質量部に対して0.1〜5質量部の(C)架橋剤の存在
下で動的に架橋して熱可塑性エラストマーを製造する方法であって、
(A)アクリルゴムは、コア−シェル構造を有し、
コア層は、
(a−1)一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される単量体から選ばれる少なく
とも1種を80〜100質量部と、
(a−2)アクリロニトリル単量体を0〜20質量部と、
(a−3)メタクリル酸アリル単量体を、(a−1)と(a−2)の合計100質量部
に対して0.1〜2質量部
のみからなり、
シェル層は、側鎖に炭素−炭素二重結合を有する多官能単量体を含まず、
(a−4)一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される単量体から選ばれる少なく
とも1種を80〜100質量部と、
(a−5)アクリロニトリル単量体を0〜20質量部とを含む、熱可塑性エラストマー
の製造方法
【化1】
(式中、nは0、1又は3である)
【化2】
(式中、mは0又は1である)
【0008】
(A)アクリルゴムのコア層は、(a−1)+(a−2)=100質量部として、(a−1)を80〜100質量部、(a−2)を0〜20質量部含む。また、(a−1)と(a−2)の合計100質量部に対して、(a−3)を0.1〜2質量部含む。
【0009】
一方、(A)アクリルゴムのシェル層は、(a−4)+(a−5)=100質量部として、(a−4)を80〜100質量部、(a−5)を0〜20質量部含む。
【0010】
また、本発明の熱可塑性エラストマーは、(A)を100質量部、(B)を15〜70質量部含む混合物を、(A)100質量部に対して(C)が0.1〜5質量部存在する条件下にて、動的に架橋させてなる。
【0011】
なお、本発明において数値範囲を示す「○○〜××」とは、その下限の数値(○○)及び上限の数値(××)も含む意味である。すなわち、正確に記載すれば「○○以上××以下」となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、(A)アクリルゴムのコア層には、(a−3)メタクリル酸アリル単量体を含むため、架橋点が確保でき、得られる熱可塑性エラストマーの引張強度及び引張伸びを向上することができる。一方、シェル層は側鎖に炭素−炭素二重結合を有する多官能単量体を含まないため、当該シェル層にはゲルが形成されない。これにより、熱可塑性ポリオレフィンとアクリルゴム粒子との相容性が向上し、熱可塑性ポリオレフィンとアクリルゴム粒子との分散性が向上することで、得られる熱可塑性エラストマーの成形加工性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の熱可塑性エラストマーは、(B)熱可塑性ポリオレフィンに(A)アクリルゴム粒子が分散した、いわゆる海島構造となっている。
【0014】
≪(A)アクリルゴム≫
(A)アクリルゴムは、熱可塑性エラストマー中のソフトセグメントとして作用し、主として柔軟性、弾力性、シール性、耐熱性、及び耐油性等を付与する成分である。そのうえで、本発明の(A)アクリルゴムは、内部にメタクリル酸アリル単量体を含むコア層と、該コア層を覆う、ゲル分を含まないシェル層とによって構成されたコア−シェル構造となっている。
【0015】
<コア層>
コア層は、(a−1)一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される単量体から選ばれる少なくとも1種と、(a−2)アクリロニトリル単量体と、(a−3)メタクリル酸アリル単量体とを含む。
【0016】
(a−1)
一般式(1)で表される単量体は、すなわち、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチルである。これらは1種のみを使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。これらの中でも、優れた柔軟性を発揮できるという点で、特に好ましいのはアルキル基の炭素数が2又は4のアクリル酸アルキルエステル単量体である。
【0017】
一般式(2)で表される単量体は、すなわち、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチルである。これらは1種のみを使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。これらの中でも、優れた耐油性を発揮できるという点で、特に好ましいのは、アクリル酸2−メトキシエチルである。
【0018】
コア層中、(a−1)の含有量は、後述の(a−2)との合計100質量部に対して80〜100質量部であることが好ましい。(a−1)の含有量が80質量部未満では、熱可塑性エラストマーの柔軟性等が低下する。一方、(a−1)の含有量が100質量部を超えると、後述の(a−3)の含有量が相対的に少なくなり、アクリルゴムの架橋が十分に進行せず、得られる熱可塑性エラストマーの引張強度等が低下する。
【0019】
(a−2)
コア層中、(a−2)の含有量は、(a−1)との合計100質量部に対して0〜20質量部であることが好ましい。すなわち、(a−2)は必須成分ではなく、必ずしもコア層中に含有されていなくてもよい。(a−2)アクリロニトリル単量体を含有していると、耐油性が向上する。但し、(a−2)の含有量が20質量部を超えると、結果として得られる熱可塑性エラストマーの柔軟性等が低下する。
【0020】
(a−3)
コア層中、(a−3)の含有量は、(a−1)と(a−2)の合計100質量部に対して0.1〜2質量部であることが好ましい。(a−3)の含有量が0.1質量部未満では(A)アクリルゴムの架橋が十分に進行せず、熱可塑性エラストマーにおいて優れた引張強度が得られない。一方、(a−3)の含有量が2質量部を超えると、(A)アクリルゴムが過度に架橋するため、熱可塑性エラストマーの成形加工性が低下する。
【0021】
<シェル層>
シェル層は、(a−4)一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される単量体から選ばれる少なくとも1種と、(a−5)アクリロニトリル単量体とを含む。但し、コア層とは異なり、側鎖に炭素−炭素二重結合を有する多官能単量体を含まない。したがって、アクリルゴムを重合した際、シェル層にはゲルが形成されない。
【0022】
(a−4・a−5)
(a−4)には、コア層の(a−1)と同種の単量体を使用すればよい。
【0023】
シェル層において、(a−4)・(a−5)の含有量も、それぞれコア層の(a−1)・(a−2)と同様の範囲でよい。具体的には、(a−4)と(a−5)の合計100質量部に対して、(a−4)を80〜100質量部、(a−5)を0〜20質量部含有していることが好ましい。
【0024】
〔アクリルゴムの重合〕
コア−シェル構造のアクリルゴムは、コア層を先に重合し、重合転化率が一定以上になった時点で、シェル層の単量体を続いて添加する方法で得ることができる。具体的には、先ず、(a−1)、(a−3)及び必要に応じて(a−2)を含む混合物を、ラジカル重合開始剤の存在下で共重合させることでコア層を形成する。続いて、当該コア層が分散された状態において、そのまま(a−4)、及び必要に応じて(a−5)を添加し、再度ラジカル重合開始剤の存在下で共重合させることで、コア層を覆うようにシェル層が形成される。重合方法としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の方法が可能であるが、乳化重合が特に好ましい。
【0025】
乳化重合に使用する乳化剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤及び両性界面活性剤等が挙げられる。通常、アニオン系界面活性剤が多用され、例えば、炭素数10以上の長鎖脂肪酸塩、ロジン酸塩等が使用される。具体的には、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸のカリウム塩及びナトリウム塩等が挙げられる。これらの乳化剤は1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0026】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、ハイドロパーオキサイド、無機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。ハイドロパーオキサイドとしては、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。無機過酸化物としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。また、これら過酸化物と硫酸第一鉄とを組み合わせたレドックス系触媒を使用することもできる。アゾ化合物としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)ジハイドロクロライド等が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。(A)アクリルゴムの分子量を調節するために連鎖移動剤を使用することもできる。連鎖移動剤としては、例えば、アルキルメルカプタン、四塩化炭素、チオグリコール類、ジテルペン、ターピノーレン及びγ−テルピネン類等が挙げられる。これらの連鎖移動剤は1種のみを使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。
【0027】
(A)アクリルゴムを共重合する際は、各単量体、乳化剤、及びラジカル重合開始剤等を反応容器に一括投入して重合を開始してもよいし、反応継続時に連続的あるいは間欠的に添加してもよい。重合は、窒素置換等酸素を除去した反応器を用いて0〜100℃、好ましくは0〜80℃で行うことができる。重合方式は連続式でもよいし、回分式であってもよい。重合時間は0.01〜30時間程度、好ましくは1〜10時間程度である。(A)アクリルゴムの重合終了後(コア−シェル構造の重合終了後)、反応生成物(ラテックス)を塩化ナトリウム、塩化カルシウム等の無機塩の水溶液に投入して凝固させ、水洗、乾燥することによりコア−シェル構造のアクリルゴムが得られる。
【0028】
≪(B)熱可塑性ポリオレフィン≫
(B)熱可塑性ポリオレフィンは、熱可塑性エラストマー中のハードセグメントとして作用し、主として熱可塑性エラストマーの成形加工性や耐熱性等を向上させる成分である。当該(B)熱可塑性ポリオレフィンとしては、α−オレフィンの重合体又は共重合体が挙げられる。α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が挙げられる。熱可塑性ポリオレフィンは、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0029】
(B)熱可塑性ポリオレフィンは非結晶性であってもよいが、引張強度及び耐熱性の観点からは結晶性である方が好ましい。また、融点は100℃以上が好ましく、より好ましくは150〜250℃である。熱可塑性ポリオレフィンとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体、ポリエチレン等が挙げられる。この中でもポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンが好ましく、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンがより好ましい。
【0030】
(B)熱可塑性ポリオレフィンの含有量は、(A)アクリルゴム100質量部に対して15〜70質量部とする。(B)熱可塑性ポリオレフィンの含有量が15質量部未満では、熱可塑性エラストマーの成形加工性が低下する傾向にある。一方、70質量部を超えると、熱可塑性エラストマーの柔軟性が低下する傾向にある。
【0031】
≪(C)架橋剤≫
(C)架橋剤は、(A)アクリルゴムを架橋するために添加されるものであって、(A)アクリルゴム中の(a−3)の側鎖のアリル基に作用しアクリルゴムを架橋する機能を有する。このような架橋剤としては有機過酸化物が挙げられる。有機過酸化物としては、例えば、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル等が挙げられる。ジアルキルパーオキサイドとしては、例えば、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ジ(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシン)ヘキシン−3、3,3,7,7−テトラメチル−1,2,4−トリオキセパン、3,3,5,7,7−ペンタメチル−1,2,4−トリオキセパン等が挙げられる。パーオキシケタールとしては、例えば、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート等が挙げられる。ジアシルパーオキサイドとしては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド等が挙げられる。パーオキシエステルとしては、例えば、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ヘキシルパーオキシ−3−メチルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。この中でも、ジアルキルパーオキサイドが好ましい。これらの架橋剤は1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0032】
(C)架橋剤の使用量は、できるだけ少ないことが好ましい。架橋剤の使用量が多いと、得られる熱可塑性エラストマーの成形加工性、柔軟性等が低下する。具体的には、(A)アクリルゴム100質量部に対して、0.1〜5質量部とする。
【0033】
(C)架橋剤の使用に際しては、架橋促進剤や架橋助剤を使用することもできる。架橋促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系化合物、チアゾ−ル系化合物、グアニジン化合物、アルデヒドアミン又はアルデヒド−アンモニア系化合物、イミダゾリン系化合物、チオユリア系化合物、チウラム系化合物、ジチオ酸塩系化合物、ザンテ−ト系化合物等が挙げられる。スルフェンアミド系化合物としては、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等が挙げられる。チアゾ−ル系化合物としては、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾ−ル、2−(2’,4’−ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾ−ル、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾ−ル、ジベンゾチアジルジスルフィド等が挙げられる。グアニジン化合物としては、例えば、ジフェニルグアニジン、ジオルソトリルグアニジン、ジオルソニトリルグアニジン、オルソニトリルバイグアナイド、ジフェニルグアニジンフタレ−ト等が挙げられる。アルデヒドアミン又はアルデヒド−アンモニア系化合物としては、例えば、アセトアルデヒド−アニリン反応物、ブチルアルデヒド−アニリン縮合物、ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒドアンモニア等が挙げられる。イミダゾリン化合物としては、例えば、2−メルカプトイミダゾリン等が挙げられる。チオユリア系化合物としては、例えば、チオカルバニリド、ジエチルチオユリア、ジブチルチオユリア、トリメチルチオユリア、ジオルソトリルチオユリア等が挙げられる。チウラム系化合物としては、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラオクチルチウラムジスルフィド、ペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。ジチオ酸塩系化合物としては、例えば、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ブチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジメチルジチオカルバミン酸テルル等が挙げられる。ザンテ−ト系化合物としては、例えば、ジブチルキサントゲン酸亜鉛等が挙げられる。これらの架橋促進剤は1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0034】
架橋助剤としては、例えば、キノンジオキシム系化合物、メタクリレ−ト系化合物、アリル系化合物、マレイミド系化合物等が挙げられる。キノンジオキシム系化合物としては、例えば、p−キノンジオキシム等が挙げられる。メタクリレ−ト系化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールジメタクリレ−ト等が挙げられる。アリル系化合物としては、例えば、ジアリルフタレ−ト、トリアリルシアヌレ−ト等が挙げられる。マレイミド系化合物としては、例えば、m−フェニレンビスマレイミド等が挙げられる。これらの架橋助剤は1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0035】
≪その他の添加剤≫
なお、(A)アクリルゴムには、本発明の効果を阻害しない範囲で、可塑剤、軟化剤、充填剤、補強剤、金属酸化物、老化防止剤、加工助剤、難燃剤、又は紫外線吸収剤等のその他の添加剤を添加することもできる。その他の各添加剤は、下記に示す具体的材料のうち1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0036】
可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル類、脂肪酸エステル類、トリメリット酸エステル類、アジピン酸系ポリエステル類、ポリエーテルエステル類、エポキシ化大豆油等が挙げられる。フタル酸エステル類としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ブチルオクチルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート等が挙げられる。脂肪酸エステル類としては、例えば、ジメチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、オクチルデシルアジペート、ジ(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジイソオクチルアゼレート、ジイソブチルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ(2−エチルヘキシル)セバケート、ジイソオクチルセバケート等が挙げられる。トリメリット酸エステル類としては、例えば、トリメリット酸イソデシルエステル、トリメリット酸オクチルエステル、トリメリット酸n−オクチルエステル、トリメリット酸系イソノニルエステル等が挙げられる。
【0037】
軟化剤としては、例えば、石油系軟化剤、植物油系軟化剤、サブ等が挙げられる。石油系軟化剤としては、例えば、アロマティック系、ナフテン系、パラフィン系軟化剤等が挙げられる。植物系軟化剤としては、例えば、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、木ろう等が挙げられる。サブとしては、例えば、黒サブ、白サブ、飴サブ等が挙げられる。
【0038】
充填剤としては、例えば、シリカ、重質炭酸カルシウム、胡粉、軽微性炭酸カルシウム、極微細活性化炭酸カルシウム、特殊炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、カオリンクレー、焼成クレー、パイロフライトクレー、シラン処理クレー、合成ケイ酸カルシウム、合成ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、カオリン、セリサイト、タルク、微粉タルク、ウォラスナイト、ゼオライト、ゾーノトナイト、アスベスト、PMF(Processed Mineral Fiber)、セピオライト、チタン酸カリウム、エレスタダイト、石膏繊維、ガラスバルン、シリカバルン、ハイドロタルサイト、フライアシュバルン、シラスバルン、カーボン系バルン、アルミナ、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、二硫化モリブデン等が挙げられる。
【0039】
補強剤としては、例えば、SAFカーボンブラック、ISAFカーボンブラック、HAFカーボンブラック、FEFカーボンブラック、GPFカーボンブラック、SRFカーボンブラック、FTカーボンブラック、MTカーボンブラック、アセチレンカーボンブラック、ケッチェンブラック等が挙げられる。
【0040】
金属酸化物としては、例えば、亜鉛華、活性亜鉛華、表面処理亜鉛華、炭酸亜鉛、複合亜鉛華、複合活性亜鉛華、表面処理酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、極微細水酸化カルシウム、一酸化鉛、鉛丹、鉛白等が挙げられる。
【0041】
老化防止剤としては、例えば、ナフチルアミン系、ジフェニルアミン系、p−フェニレンジアミン系、キノリン系、ヒドロキノン誘導体系、モノ、ビス、トリス、ポリフェノール系、チオビスフェノール系、ヒンダートフェノール系、亜リン酸エステル系、イミダゾール系、ジチオカルバミン酸ニッケル塩系、リン酸系等が挙げられる。
【0042】
加工助剤としては、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリル酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリルアミン等が挙げられる。
【0043】
また、本発明の熱可塑性エラストマーには、ゴム成分として(A)アクリルゴム以外のゴムを配合することもできる。例えば、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエン−イソプレン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン−イソプレン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、ブチルゴム、天然ゴム、クロロプレンゴム等が挙げられる。
【0044】
〔熱可塑性エラストマーの合成〕
熱可塑性エラストマーは、(A)アクリルゴム100質量部と、(B)熱可塑性ポリオレフィン15〜70質量部とを含む溶融混合物を、(C)架橋剤の存在下において動的架橋させて得られる。動的架橋とは、(A)アクリルゴムと、(B)熱可塑性ポリオレフィンとを含む混合物を混練しながら架橋を進行させることをいう。
【0045】
(A)アクリルゴムと、(B)熱可塑性ポリオレフィンとの溶融混練は、(B)熱可塑性ポリオレフィンの融点より高く、(A)アクリルゴムの分解開始温度程度、具体的には100〜300℃、好ましくは130〜270℃、より好ましくは150〜250℃で行えばよい。
【0046】
(A)アクリルゴムと(B)熱可塑性ポリオレフィンとを含む混合物の混練には、一軸押出機、二軸押出機、二軸ローター型押出機等の連続式押出機や、加圧型ニーダー、バンバリーミキサー、ブラベンダーミキサー等の密閉式混練機を使用することができる。通常、こうして動的に架橋された(A)アクリルゴムは、熱可塑性ポリオレフィンのマトリックス相に微分散される。このような相構造を形成することにより、(A)アクリルゴムが架橋されているにも関わらず、エラストマーは熱可塑性(流動性)を有する。従って、熱可塑性エラストマーは、押出成形法、射出成形法、ブロー成形法、圧縮成形法等、公知の熱可塑性樹脂の成形方法により所定形状に成形加工することができる。
【0047】
本発明の熱可塑性エラストマーは、良好な耐油性や耐熱性を有し、強度、伸び、及びシール性などに優れる。そのため、当該熱可塑性エラストマーは、オイルクーラーホース、エアーダクトホース、パワーステアリングホース、コントロールホース、インタークーラーホース、トルコンホース、オイルリターンホース、耐熱ホース等の各種ホース材、燃料ホース材、ベアリングシール、バルクステムシール、各種オイルシール、O−リング、パッキン、ガスケット等のシール材、各種ダイヤフラム、ゴム板、ベルト、オイルレベルゲージ、ホースマスキング、配管断熱材等の被覆材、ロール等に好適に利用することができる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれに限られることはない。
【0049】
<(A)アクリルゴムの重合>
水200質量部、ラウリル硫酸ナトリウム1質量部、硫酸第一鉄0.01質量部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.03質量部、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物0.05質量部を、窒素置換したステンレス製反応器に仕込み、コア用単量体として表1又は表2に示す材料を表1又は表2に示す割合で、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド0.1質量部と共に2時間かけて滴下し、反応温度30℃で乳化重合させた。重合転化率が100%に達したところで、シェル単量体として表1又は表2に示す材料を表1又は表2に示す割合で、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド0.1質量部と共に30分かけて滴下し、反応温度30℃で乳化重合させた。
【0050】
得られた、反応生成物(ラテックス)を1%塩化カルシウム水溶液に滴下し、アクリルゴムを凝固させた。この凝固物を十分に水洗した後、80℃で24時間乾燥させることにより、(A)アクリルゴムA−1〜A−5(実施例用)及びA’−1〜A’−11(比較例用)を得た。
【0051】
なお、表1又は表2に示す数値は質量部であり、表1又は表2に示す材料の具体名は、次の通りである
EA:アクリル酸エチル
BA:アクリル酸ブチル
MEA:アクリル酸2−メトキシエチル
AN:アクリロニトリル
AMA:メタクリル酸アリル
DCPEA:アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル
VA:アクリル酸ビニル
PEGDA:ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレングリコール単位=4)
DVB:ジビニルベンゼン
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
<熱可塑性エラストマーの合成>
(A)アクリルゴム及び(B)熱可塑性ポリオレフィンとして表3又は表4に示す材料を表3又は表4に示す量で使用し、温度200℃、ブレード回転数100rpmに設定したバンバリーミキサーに投入し、トルクが一定になるまで混練を行った。次に(C)架橋剤として表3又は表4に示す材料を表3又は表4に示す量追加投入し、トルクが一定になるまで混練を行い、熱可塑性エラストマー(実施例1〜9、比較例1〜11)を合成した。なお、表3又は表4に示す数値は質量部であり、表3又は表4に示す材料表示の具体名は次の通りである。
PP:ポリプロピレン
PMP:ポリメチルペンテン
PE:ポリエチレン
H25B:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサン
DCP:ジクミルパーオキサイド
PMTOP:3,3,5,7,7−ペンタメチル−1,2,4−トリオキセパン
【0055】
得られた各実施例及び比較例の熱可塑性エラストマーをバンバリーミキサーから取り出し、フィーダールーダーに投入し、ペレット化した。このペレットをシリンダ温度230℃に設定した射出成形機によって長さ150mm、幅30mm、厚さ2mmのシート状に成形し、その成形加工性及び機械的物性(引張強度、引張伸び、硬度)を評価した。その結果も表3又は表4に示す。なお、各性能の評価方法は次の通りである。
【0056】
<成形加工性>
射出成形したシートを目視により観察し、フローマーク又はブツが確認されない場合を○、フローマーク又はブツが確認される場合を×とした。
<引張強度・伸び>
JIS K 6251に準拠し、試験速度500mm/minにて引張強度(MPa)、引張伸び(%)を測定した。
<硬度>
JIS K 6253に準拠し、スプリング硬さ試験機A形によって硬度を測定した。
<耐熱性>
JIS K 6257に準拠し、試験片を120℃に設定したギヤーオーブン中に70時間放置した後の引張強度(MPa)及び引張伸び(%)を測定し、引張強度の変化率(%)及び引張伸びの変化率(%)を算出した。
<耐油性>
JIS K 6258に準拠し、試験片をIRM903試験油に浸漬した状態で120℃に設定したギヤーオーブン中に70時間放置した後の質量(g)を測定し、質量変化率を(%)算出した。
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
表3の結果から、実施例1〜9は、メタクリル酸アリル単量体を含むコア層と、多官能単量体を含んでいないシェル層から構成されるコア−シェル構造のアクリルゴムを使用したので、成形加工性、引張強度、及び引張伸びが優れていた。実施例1〜5、及び実施例8〜9は、アクリロニトリル単量体を含むアクリルゴムを使用したので、特に耐油性に優れていた。
【0060】
表4の結果から、比較例1は、コア層にメタクリル酸アリル単量体を含まないアクリルゴムを使用したので、成形加工性、引張強度、及び引張伸びが劣っていた。比較例2は、コア層にメタクリル酸アリル単量体を過剰に含むアクリルゴムを使用したので、成形加工性、引張伸び、及び硬度が劣っていた。比較例3〜7は、コア層に多官能単量体を含むアクリルゴムを使用したので、成形加工性、引張強度、及び引張伸びが劣っていた。比較例8〜9は、シェル層に多官能単量体を含むアクリルゴムを使用したので、成形加工性が劣っていた。比較例10は、シェル層を有さず、全体にメタクリル酸アリルを含むアクリルゴムを使用したので、成形加工性が劣っていた。比較例11は、コア層にメタクリル酸アリル単量体を含まず、シェル層にメタクリル酸アリル単量体を含むアクリルゴムを使用したので、成形加工性、引張強度、及び引張伸びが劣っていた。