特許第6409472号(P6409472)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6409472
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】画像表示装置を備える撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/232 20060101AFI20181015BHJP
   G03B 17/14 20060101ALI20181015BHJP
   G03B 17/18 20060101ALI20181015BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20181015BHJP
   G09G 5/391 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
   H04N5/232 935
   G03B17/14
   G03B17/18 Z
   G09G5/00 520V
   H04N5/232 411
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-203533(P2014-203533)
(22)【出願日】2014年10月2日
(65)【公開番号】特開2016-72931(P2016-72931A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年9月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】311015207
【氏名又は名称】リコーイメージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】三村 祐介
【審査官】 佐藤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−155112(JP,A)
【文献】 特開2013−121005(JP,A)
【文献】 特開2004−104222(JP,A)
【文献】 特開2014−222801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/232
G03B 17/14
G03B 17/18
G09G 5/00
G09G 5/391
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子から出力される画像信号に基づいて、少なくともライブビュー画像を表示する画像表示装置と、着脱可能に装着されたレンズを備える撮像装置であって、前記レンズから得られるレンズ情報による撮像装置の第1の状態と、撮像した被写体画像による第2の状態を判定する状態判定手段と、前記状態判定手段が判定した第1の状態または第2の状態により前記画像を高解像度または低解像度で表示する切り替えを行う解像度切替手段を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記レンズ情報は、前記レンズの解像力であることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記状態判定手段は、前記第1の状態を撮像装置のデジタルフィルタの設定を含み判定することを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記撮像装置は、前記画像表示装置における低解像度での画像の表示は、高解像度での画像の表示に比較して少ない消費電力で表示することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項5】
前記撮像装置は、カメラボディと、このカメラボディに対して着脱可能に装着されたレンズとを備え、前記カメラボディは、前記画像表示装置と、前記レンズで結像される被写体像を撮像する撮像素子を備え、前記撮像素子で撮像した画像を前記画像表示装置に表示することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項6】
前記状態判定手段は、高解像度で表示することが好ましい第2の状態として、表示画像ゲインが一定値以下のとき、被写体の空間周波数一定値以上のとき、のいずれかの状態であることを判定することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項7】
前記状態判定手段は、前記第1の状態の判定と、前記第2の状態の判定との間に所定の時間だけ判定を待機することを特徴とする請求項6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記撮像装置は前記画像を撮像するための撮像素子を備え、前記解像度切替手段は前記撮像素子で撮像した画素を間引きして低解像度への切り替えを行うことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項9】
前記画像表示装置は多数の表示画素を有する液晶表示装置であることを特徴とする請求項8に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は静止画、動画を撮像する撮像装置に関し、特に撮影時に撮像画面を確認するための画像、いわゆるライブビュー画像(スルー画像とも称される)を表示することが可能な画像表示装置を備える撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタル方式のカメラやビデオカメラ等の撮像装置では、撮影時に撮像する画像を確認するためにライブビュー画像を表示することが可能な画像表示装置が備えられている。このような画像表示装置はモニター装置とも称されるので、以下においてはモニター装置と称する。近年、この種の撮像装置においてモニター装置の大型化が図られており、特にライブビュー画像を利用して被写体像の合焦状態を確認する上で好ましいものとなっている。しかし、モニター装置の大型化に伴って消費電力が増大することは否定できず、バッテリを電源とした撮像装置での撮像枚数や撮像時間に制約を受けることになる。
【0003】
このようなモニター装置における消費電力の増大を抑えるためには、モニター装置での画像表示の開始から一定時間の経過後に低消費電力に移行してバックライトの光度を下げる技術、あるいはモニター装置での画像表示のフレームレート(フレーム数/時間)を低下する技術、さらには、表示画素を間引いて低解像で表示する技術が考えられる。しかし、バックライトの光度を下げると屋外で画像を確認し難くなり、フレームレートを下げると動体への追従性が悪くなる。画素を間引いて低解像にする場合には、このような問題は生じないが、ライブビュー画像の画像品質が低下し、撮影時における被写体の合焦状態を確認することが困難になる。
【0004】
特許文献1には、高解像で表示する第1表示モードと、低解像で表示する第2表示モードとを切り替えて画像表示装置における表示を行うように構成することにより、特に低解像の第2表示モードでの画像表示における消費電力を抑制する技術が提案されている。すなわち、特許文献1の技術は、電源がAC電源であるかバッテリであるかの電源種別、バッテリの残り残量、周囲温度の変化、記録画像や再生画像のビットレートの値に基づいて第1と第2の表示モードを切り替えている。また、ライブ画像表示と再生画像表示との違い、静止画と動画の違い、表示画像の動き成分や周波数特性に基づいて第1と第2の表示モードを切り替えている。さらには、撮影者によるスイッチ操作で第1と第2の表示モードを切り替えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−118159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術は、所定の条件を満たすときに表示モードを低解像の第2表示モードに切り替えることで消費電力を抑制しているので、撮影時においても当該所定の条件を満たす状態となったときにはモニター装置は自動的に低解像の画像に切り替えられることになる。そのため、モニター装置のライブビュー画像を視認しながら撮影を行っているときに低解像の画像に切り替えられてしまうことがあり、被写体の合焦状態が確認できなくなってしまい、好適な撮影の障害になる。
【0007】
本発明の目的は、撮影時においては高解像度の表示画像を確保し、その一方で表示画像の確認の必要性が低いときには消費電力を低減した画像表示装置を備える撮像装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、撮像素子から出力される画像信号に基づいて、少なくともライブビュー画像を表示する画像表示装置と、着脱可能に装着されたレンズを備える撮像装置であって、レンズから得られるレンズ情報による撮像装置の第1の状態と、撮像した被写体画像による第2の状態を判定する状態判定手段と、状態判定手段が判定した第1の状態または第2の状態により前記画像を高解像度または低解像度で表示する切り替えを行う解像度切替手段を備える。
【0009】
本発明の好ましい形態としては、撮像装置は、カメラボディと、このカメラボディに対して着脱可能に装着されたレンズとを備え、カメラボディは、画像表示装置と、レンズで結像される被写体像を撮像する撮像素子を備え、撮像素子で撮像した画像を画像表示装置に表示する。
【0010】
その上で、状態判定手段は、高解像度で表示することが好ましい第1の状態として、マニュアルフォーカス操作が実行されたとき、AF合焦(自動焦点合わせ)が行われたとき、レンズの解像力が一定値以上のとき、デジタルフィルタが無効のとき、のいずれかの状態であることを判定する。また、高解像度で表示することが好ましい第2の状態として、表示画像ゲインが一定値以下のとき、被写体の空間周波数は一定値以上のとき、のいずれかの状態であることを判定する。この場合において、状態判定手段は、第1の状態の判定と、第2の状態の判定との間に所定の時間だけ判定を待機することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、画像表示装置にライブビュー画像等の画像を高解像度で確認することが必要とされる第1の状態または第2の状態を判定した場合には、高解像度で画像の表示を行うので、高品質での画像表示となり、撮影対象としての被写体の合焦状態を高解像度で確認することができ、好適な撮影が可能となる。一方、画像を高解像度で表示する必要性が低いときには、低解像度で画像の表示を行うので、撮像装置における消費電力が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明をデジタル一眼レフカメラに適用した実施形態の外観斜視図。
図2】実施形態のカメラの内部構成を示すブロック構成図。
図3】高解像度表示モードと低解像度表示モードを説明する模式図。
図4】表示モードの切り替えを説明するフロー図。
図5】変形例のフローの一部のみを示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の画像表示装置をレンズ交換式のデジタル一眼レフカメラに適用した実施形態の外観斜視図である。カメラボディBの前面には着脱可能なレンズ(交換レンズ)Lが装着されており、このレンズLで結像した被写体像をカメラボディBに内装されている撮像素子2で撮像する。図1では撮像素子2を破線で示している。また、前記カメラボディBの後面には、多数の表示画素をマトリクス配列した構成のLCD(液晶表示装置)からなるモニター装置1が配設されている。そして、前記撮像素子2で撮像された被写体像は所定の電気的な画像処理が実行され、前記モニター装置1にライブビュー画像として表示される。撮影者はこのモニター装置に表示されたライブビュー画像を視認しながらレリーズ操作を行うことで撮影が行われる。
【0014】
図2は前記カメラの内部構成を示すブロック構成図であり、本発明に関連する構成のみを示している。前記レンズLは内部にレンズ群3と、これを駆動するレンズ機構4を備えており、レンズLの外周に設けたフォーカスリングFRを手操作して前記レンズ機構4を駆動することにより、あるいは図には表れないモータにより前記レンズ機構4を駆動することにより、レンズ群3の光軸方向の位置を設定してフォーカシング(焦点合わせ)が行われる。すなわち、このレンズLでは、撮影者がフォーカスリングFRを手操作してフォーカシングを行うMF(マニュアルフォーカス)と、モータによりフォーカシングを行うAF(オートフォーカス)が可能とされている。
【0015】
また、前記レンズLには前記カメラボディBとの間でレンズ情報を送受するためのレンズ通信部5が設けられている。このレンズ情報は、ここではレンズLがAF制御可能であること、当該レンズLの解像力、の2つの情報であり、これらのレンズ情報は前記レンズ通信部5に内蔵のレンズメモリ(図示せず)に記憶されている。また、レンズ情報として前記フォーカスリングFRの駆動情報、すなわちフォーカシングが手操作により駆動されているか否かの情報もある。前記レンズ通信部5は、前者の2つのレンズ情報については前記レンズメモリから読みだし、後者のレンズ情報については前記レンズ機構5において検出した上で、これらのレンズ情報を前記カメラボディBに向けて送信する。
【0016】
前記カメラボディBは、前記撮像素子2を含んで構成された撮像素子モジュール20を備えており、前記レンズLで結像された被写体像を撮像し、撮像信号をA/D変換して所要の画像信号として出力する。この画像信号は画像処理ブロック10に入力され、ここで所要の画像処理が行われる。この画像処理により得られた画像、すなわちライブビュー画像は前記モニター装置1において画像表示される。
【0017】
前記画像処理ブロック10は、画像取込部11と、出力画像メモリ12と、画像処理部13と、画像表示制御部14を備えている。前記画像取込部11は、前記撮像素子モジュール20から出力される画像信号を取り込み、これをベイヤーデータとして出力する。前記出力画像メモリ12は、前記画像取込部11から出力されたベイヤーデータを保存する。前記画像処理部13は、前記出力画像メモリ12に保存されたベイヤーデータYUVデータに変換し、かつスケーリング処理等を施して画像信号として出力する。前記画像表示制御部14は、画像処理部13から出力される画像信号を加工し、前記モニター装置1に適合する画像として表示する。
【0018】
前記画像取込部11は、撮像素子モジュール20から出力される画像信号を間引きして取り込むことが可能である。後述するように、この間引きを行わないときには高解像度表示モードでモニター装置1にライブビュー画像の表示が可能であり、間引きを行うときには低解像度表示モードでモニター装置1にライブビュー画像の表示を行うことになる。
【0019】
前記画像処理部13においては、デジタルフィルタ処理を行っている。すなわち、デジタルフィルタ処理では、画像に含まれる雑音等を除去する。このデジタルフィルタが有効であると雑音とともに微細画像の成分も除去されるので画質の劣化が識別し難くなる。
【0020】
また、前記画像表示制御部14においては、表示画像ゲイン調整を行っている。すなわち、入力された画像の輝度値を倍率補正する。例えば、暗い画像の場合にはゲイン値を高くすることにより明るい画像で表示されるので、画質の劣化が識別し難くなる。また、この画像表示制御部14は、いわゆるスケーリング処理も可能であり、モニター装置1に表示するのに適正なサイズの画像に調整する。
【0021】
一方、前記カメラボディBは全体制御部15を備えており、前記レンズLのレンズ通信部5との通信を行って前記レンズ情報を受信する。また、前記撮像素子モジュール20における撮像を制御するとともに、前記画像処理ブロック10の前記画像取込部11、前記画像処理部13、前記画像表示制御部14を制御する。この全体制御部15は、本発明における状態判定手段として、および本発明における解像度切替手段として構成されたものである。
【0022】
すなわち、前記全体制御部15は本発明にかかる状態判定手段として、前記レンズ通信部5からのレンズ情報に基づいて、当該レンズLがAF制御の可能なレンズであるか否かを判定する。当該レンズLがAF制御可能なレンズであると判定したときには、さらに撮像素子モジュール20で撮像される画像からAFが合焦状態であるか否かを判定する。また、当該レンズLのフォーカスリングFRが回転されているか否か、すなわちマニュアルフォーカス操作が実行されているか否かを判定する。
【0023】
さらに、前記全体制御部15は、前記レンズ通信部5からのレンズ情報に基づいて、当該レンズLの解像力を取得し、その解像力が予め設定されている一定値以上であるか、それ未満であるかを判定する。この解像力の一定値はライブビュー画像をモニター装置1において高解像度表示モードで表示するときの解像度にほぼ一致される。さらに、前記画像処理部13に設けられているデジタルフィルタが無効状態であるか有効状態であるかを判定する。これらの判定は撮影時におけるカメラ設定等に基づく判定であり、本発明における第1の状態の判定となる。
【0024】
さらに、前記全体制御部15は、前記画像表示制御部14における表示画像ゲインが予め設定されている一定値以下であるか、それよりも大きいかを判定する。さらに、撮像された画像から被写体の空間周波数、すなわち被写体に存在する明暗パターンの細かさが予め設定されている一定値以上であるか、それ未満であるかを判定する。この空間周波数の一定値はライブビュー画像をモニター装置1において高解像度表示モードで表示するときに解像表示可能な明暗パターンの周波数にほぼ一致される。特に、被写体の空間周波数が一定値以上のときにはモニター装置1に表示したときに画質の劣化が識別できるが、被写体の空間周波数が一定値未満のときは画質の劣化が識別しにくい。これらの判定は撮像した画像に基づく判定であり、本発明における第2の状態の判定となる。
【0025】
さらに、この実施形態では、前記全体制御部15は、モニター装置1の画像表示が、ライブビュー画像表示であるか、あるいはそれ以外の表示、例えば画像再生表示であるかを前記画像表示制御部14の状態から判定する。すなわち、モニター装置1においてライブビュー画像表示が継続されているか否かを判定する。
【0026】
一方、前記全体制御部は本発明にかかる解像度切替手段として、前記画像取込部11に対しては前記撮像素子モジュール20における画像間引き率の設定および変更を実行する。この画像の間引きについては後述する。また、前記画像処理部13に対してはスケーリング処理の設定および変更を実行する。さらに、前記画像表示制御部14に対しては画像表示サイズの設定および変更を実行する。
【0027】
以上の構成のカメラにおける表示画像の解像度について、図3を参照して説明する。ここでは一例として、撮像素子2で撮像する撮像画像A1の画素数は縦横4000×3000であり、これを表示画素数720×480でモニター装置1に表示するものとする。静止画を撮影する際には、全体制御部15はレリーズ操作を受けて画像取込部11および撮像素子モジュール20を全画素モードに設定する。そのため、画素数4000×3000の画像が画像取込部11で取り込まれ、保存用画像A2として出力画像メモリ12に記憶される。
【0028】
一方、レリーズ操作が行われておらず、モニター装置1にライブビュー画像を表示する際には、画像処理ブロック10においては表示用画像を1秒間に30〜60フレームとなるように画像処理することが要求される。そのため、撮像素子2で撮像される画像の画素を間引き、かつこれをスケーリングしてモニター装置1に表示することが行われる。
【0029】
画像を間引くことにより、撮像素子モジュール20の内部でのA/D変換の処理数が低減して省電力になるとともに、間引きされた画像を画像処理ブロック10においてスケーリングする際の画素処理数が低減して消費電力が低減されることになる。しかし、間引きにより撮影した画像情報数が少なくなるため、モニター装置1に表示する画像の画質が劣化し、解像度が低くなる。すなわち、間引き率に伴う消費電力と画質(解像度)はトレードオフの関係となる。
【0030】
したがって、間引き率を高くして消費電力を低減するとモニター装置1の表示画像の画質が劣化し、低解像度表示モードでの画像表示となる。この低解像度表示モードは「低消費電力表示モード」と言うことができる。反対に、間引き率を低くしてモニター装置1の表示画像の画質の劣化を回避し、高解像度表示モードでの画像表示を行うと消費電力が増大することになる。この高解像度表示モードは「高消費電力表示モード」と言うこともできる。
【0031】
ここでは、図3に示したように、高解像度表示モードでは、間引いた画像A3の画素数を1332×1000とし、これを画像処理部13において720×480の表示画像A4にスケーリングしている。これにより、モニター装置1に表示されるライブビュー画像は高解像度での表示となる。一方、低解像度表示モードでは、間引いた画像A5の画素数を1332×332とし、これを画像処理部13において720×480の表示画像A6にスケーリングしている。これにより、モニター装置1に表示されるライブビュー画像は低解像度での表示となる。したがって、低解像度表示モードでは、高解像度表示モードに比較して表示画像の解像度は低下するが、消費電力の低減効果が高いものとなる。
【0032】
以上の構成に基づくモニター装置1でのライブビュー表示のフローを図4を参照して説明する。カメラの電源をオンしたとき、あるいはレンズを交換したときに(S11)、全体制御部15は撮像素子モジュール20と画像処理ブロック10を制御し、モニター装置1でのライブビュー表示を高解像表示モードに設定する(S12)。このときには、撮像素子モジュール20での間引き率は小さく、モニター装置1に表示されるライブビュー画像は高解像度で表示されるので、撮影者は被写体を高解像で視認できる。
【0033】
次いで、全体制御部15はレンズ通信部5から現在使用しているレンズLのレンズ情報を読み出し、当該レンズLがAF制御の可能なレンズであるか否かを判定する(S13)。AF制御が可能なレンズではないと判定したときには、撮影者はライブビュー画像を確認しながらマニュアルフォーカス操作を行う可能性が高いので、全体制御部15は高解像度表示モードを保持する。
【0034】
一方、AF制御が可能なレンズと判定したときには、続いて、撮影者によるマニュアルフォーカス操作が行われたか、およびAF合焦の状態であるか否かを判定する(S14)。マニュアルフォーカス操作が行われていないとき、あるいはAF合焦になっていないときには、撮影者がライブビュー画像を確認しながらレリーズ操作する可能性が低いので、全体制御部15は低解像度表示モードに切り替える(S15)。これにより、消費電力の低減が図られる。そして、この低解像度表示モードの状態で、その後にマニュアルフォーカス操作が行われたとき、あるいはAF合焦の状態になったときには、撮影者がライブビュー画像を確認してレリーズ操作を行う可能性があるので、全体制御部は高解像度表示モードに切り替える(S16)。
【0035】
続いて、全体制御部15は高解像度表示モードを保持しながら、レンズ通信部5からのレンズ情報から、当該レンズLの解像力が一定値以上であるか否かを判定する(S17)。レンズLの解像力が一定値以上のときには低解像度表示モードにするとライブビュー画像の劣化が目立つので高解像度表示モードを保持する。レンズの解像力が一定値未満のときには、高解像度表示モードにしても、高解像度でのライブビュー画像の表示ができず、電力消費が無駄になるので低解像度表示モードに切り替える(S18)。
【0036】
次いで、全体制御部15は 画像処理ブロック10の画像処理部13において、デジタルフィルタ処理を行っているか否か、すなわち、デジタルフィルタが有効であるか無効であるかを判定する(S19)。デジタルフィルタが無効なときには低解像度表示モードにするとライブビュー画像の劣化が目立つので高解像度表示モードを保持する。デジタルフィルタが有効なときには、画像の雑音とともに微細画像の成分も除去されるので画質の劣化が識別し難くなる。したがって、ライブビュー画像を高解像度で表示しても高解像度でのライブビュー画像表示ができないため、低解像度表示モードに切り替える(S18)。
【0037】
このようにレンズLの解像力の判定と、デジタルフィルタの有効・無効の判定の結果により低解像度表示モードに切り替えたときには、カメラのライブビュー画像表示が解除されたか否かを判定する(S20)。ライブビュー画像表示が解除されたときにはフローを終了する。ライブビュー表示が継続されているときには、低解像度表示モードを保持した上で、ステップS17に戻る。
【0038】
次いで、全体制御部15は、画像処理ブロック10の画像表示制御部14における表示画像ゲインが一定値以下であるか否かを判定する(S21)。表示画像ゲインが一定値よりも高いときには、ライブビュー画像を低解像度で表示しても画質の劣化が識別し難いので低解像度表示モードに切り替える(S22)。表示画像ゲインが一定値以下のときには、次のステップS23に移行する。
【0039】
このステップS23では、全体制御部15は、撮像素子モジュール20で検出される被写体の空間周波数が一定値以上であるか否かを判定する。空間周波数が一定値未満のときには、ライブビュー画像を低解像度で表示しても明暗パターンの潰れが識別し難いので低解像度表示モードに切り替える(S24)。そして、空間周波数が一定値以上のときには、低解像度表示モードにするとライブビュー画像における被写体の明暗パターンが潰れるおそれがあるので高解像度表示モードに切り替える(S25)。
【0040】
そして、以上のフローが完了して高解像度表示モードが維持されているときには、カメラのライブビュー画像表示が解除されたか否かを判定する(S26)。ライブビュー画像表示が解除されたときにはフローを終了する。ライブビュー画像表示が継続されているときには、ステップS21に戻る。
【0041】
以上により、撮影者がライブビュー画像を高解像度で確認することが必要とされる場合には、モニター装置1において高解像度表示モードによりライブビュー画像の表示を行うので、撮影対象としての被写体の合焦状態を高解像度で確認することができ、好適な撮影が可能となる。一方、ライブビュー画像を高解像度で表示する必要性が低いときには、モニター装置1においてライブビュー画像を低解像度で表示する低解像度表示モードに切り替える。この低解像度表示モードでは、前記したように撮像素子における間引き率を大きくすることで、撮像素子モジュール20の内部でのA/D変換の処理数が低減して省電力になるとともに、間引きされた画像を画像処理ブロック10においてスケーリング等の画像処理する際の画素処理数が低減して消費電力が低減されることになる。
【0042】
ここで、図5にフローの変形例の一部を示す。図5において図4のステップと同じステップには同一符号を付してある。この変形例では、図4で示したように、ステップS13,S14,S17,S19からなる第1の状態の判定と、ステップS21,S23からなる第2の状態の判定の間において、モニター装置1に表示されるライブビュー画像の解像度を適切に制御してさらなる消費電力の低減効果を高めている。
【0043】
すなわち、図5に示すように、ステップS19とステップS21との間に待機を行うためのステップS30を介挿している。このステップS30では、高解像度表示モードに切り替えられているときに、所定の待機時間、例えば10秒程度、その高解像度表示モードを保持する処理を行う。すなわち、この待機時間は、通常では撮影者がレリーズ操作を行って撮影を行う時間である。このステップS30での待機中にレリーズ操作が行われたときには、規定のレリーズフローを実行することになるが、ここではその説明は省略する。
【0044】
一方、この待機中にレリーズ操作が行われないときには、通常ではカメラの向きが変化され、あるいはズーミング等によって被写体が変化され、これに伴ってライブビュー画像も変化される可能性が高くなる。したがって、待機時間が経過することを待って、ステップS21とステップS23を実行する。すなわち、表示画像ゲインの変化を判定し、続いて被写体の空間周波数の変化を判定する。これにより高解像度表示モードを保持し、あるいは低解像度表示モードに切り替えることになる。このステップS30においては前記した待機時間を経過する毎に周期的に行うことが好ましい。
【0045】
この変形例によれば、ステップS22,S24において低解像度表示モードに切り替えられたときには、ステップS30における待機時間の間は低解像度表示モードの状態を保持されることになるので、この待機時間における消費電力を低減することができる。特に、この待機時間は前記したように10秒程度であり、フロー全体に占める時間割合が大きいので、消費電力の低減効果は顕著なものとなる。
【0046】
本実施形態においては、本発明における撮像装置の画像表示装置が画像を高解像度で表示することが好ましい状態にあることを判定する状態として第1の状態と第2の状態を判定しており、前記したように、第1の状態は撮影時におけるカメラ設定等に基づく判定であり、第2の状態は撮像した画像に対する画像処理に基づく判定である。したがって、カメラにおいて撮影者がモニター装置を確認する蓋然性の高い状態と密接のある状態であれば本発明における第1の状態として適用できる。また、撮像した画像における解像度に影響を与える画像処理であれば本発明における第2の状態として適用できる。例えば、第1の状態としては、マニュアルフォーカスに限られるものではなく、撮影者が撮影時に行うズーミング操作、露出補正操作等を判定するようにしてもよく、この判定に基づいて表示モードを切り替えるようにしてもよい。
【0047】
以上の実施形態では、モニター装置1での画像表示を、低解像度表示と高解像度表示の二者択一の例を示したが、本発明では低解像度表示を2以上のレベルの解像度表示に分けるとともに、全体制御部15での状態判定をさらに細かく判定し、その判定結果に応じて2以上のレベルの低解像度表示のいずれかに切り替えるようにしてもよい。例えば、解像度の高い側から第1低解像度表示、第2低解像度表示、第3低解像度表示に分割し、これらを選択して画像表示する。これにより、モニター装置1で必要とされる画像の解像度を確保しながら第1から第3の低解像度表示に切り替えることにより、第1低解像度表示よりも第3解像度表示の消費電力を低減することが可能になる。
【0048】
以上の実施形態では本発明をレンズ交換式のデジタル一眼レフカメラに適用したが、レンズとカメラボディが一体のモニター装置を備えるカメラ、いわゆるコンパクトデジタルカメラにおいても適用できる。あるいは、ビデオカメラについても適用できる。これらのカメラの場合には、レンズ情報はカメラボディ内のメモリに記憶しておき、全体制御部はこのメモリから必要に応じて読み出すようにすればよい。また、このようなカメラにおいては、図4に示したフローにおけるAF可能レンズの判定ステップS13と、レンズ解像力の判定ステップS17は省略してもよい。
【0049】
本発明の画像表示装置は、カメラやビデオカメラのボディの背面に配設されたモニター装置として構成されたものに限られるものではなく、接眼レンズ系を通して視認されるEVF(電子ビューファインダ)として適用することも可能である。さらには、カメラボディと有線あるいは無線で接続される独立した画像表示装置として適用することも可能である。さらには、スマートフォン等の携帯端末機のカメラ機能として適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は画像を画素表示するデジタル方式の画像表示装置を備える撮像装置に採用して有効である。
【符号の説明】
【0051】
B カメラボディ
L レンズ
1 モニター装置(画像表示装置)
2 撮像素子
3 レンズ群
4 レンズ機構
5 レンズ通信部
10 画像処理ブロック
11 画像取込部
12 出力画像メモリ
13 画像処理部
14 画像表示制御部
15 全体制御部(状態判定手段,解像度切替手段)
20 撮像素子モジュール

図1
図2
図3
図4
図5