(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御手段は、前記像担持体にトナーを現像させる現像手段により前記像担持体上の前記滑剤を取り込んだ後、前記現像手段で取り込んだ前記滑剤を排出させるためのトナー像を前記像担持体に現像し、中間転写体に転移させる制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
前記制御手段は、前記像担持体に接離する滑剤除去機構を備え、前記滑剤除去機構により前記像担持体上の前記滑剤を除去する制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
前記制御手段は、滑剤ムラが有ると判断した場合、前記滑剤供給手段を前記像担持体から離間して前記滑剤の供給を停止することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の画像形成装置。
前記制御手段は、前回印刷した前記記録材の幅方向のサイズと今回印刷する前記記録材の幅方向のサイズとを比較する比較手段を備え、前記比較手段により前回印刷した前記記録材の幅方向のサイズが、今回印刷する前記記録材の幅方向のサイズよりも小さい場合に動作させることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上述の特許文献1、特許文献2及び特許文献3では、感光体表面に均一な滑剤膜を形成することができるものの、例えば、同一画像を大量印刷する場合、感光体上にトナーを付着させる部分と付着させない部分とでは感光体上の長手方向の滑剤量に差が生じて滑剤ムラが発生するという問題がある。感光体上の長手方向に滑剤ムラが発生すると、この滑剤ムラの影響により記録材上の画像にスジが入り画像品質が低下する。
【0007】
図16を用いて滑剤ムラが発生するメカニズムについて説明する。
図16(a)は、画像形成時における感光体の周辺構成を示した断面図である。
感光体の周辺には、感光体の回転方向に倣って、帯電部、露光部、現像部、中間転写材、一次転写部、清掃部が配置されている。清掃部には、一次転写部により感光体上に現像させたトナーを中間転写部材に転写させた後、感光体に残留したトナー等を清掃する清掃部材と、該清掃部材の下流には、感光体上に滑剤を供給する滑剤供給機構とを備えている。
【0008】
図16(b)は、
図16(a)で示した領域Aにおいて、滑剤供給機構によって感光体表面に滑剤が供給された状態を示した断面図である。また、
図16(c)は、
図16(a)で示した領域Bにおいて、感光体表面が、現像部と対向する位置まで移動して現像部によって感光体上にトナーを現像された状態を示す断面図である。
【0009】
図16(b)に示す領域Aでは、滑剤供給機構によって感光体表面に均一に滑剤が供給されるが、
図16(b)に示す滑剤が均一に供給された感光体表面が、現像部と対向する位置まで移動すると、トナーが現像される感光体表面(以下、現像領域と記す)とトナーが現像されない感光体表面(以下、非現像領域と記す)とで、感光体表面に供給された滑剤量に差が生じる。具体的には、
図16(c)に示す非現像領域では、対向する現像部に磁性粒子キャリア(以下、キャリアと略す)が、磁気力によって感光体側に向かって連なってブラシ状に穂立ちしており、キャリアの穂の先端が感光体を掃くように接触している。このため、感光体上の滑剤を一部掻き取って現像部内に取り込まれてしまうので感光体上の滑剤が減少してしまう。一方、
図16(c)に示す現像領域では、滑剤が供給された感光体とキャリアの穂の先端との間にトナーが介在して感光体上に現像されるので、感光体上の滑剤は現像部内に取り込まれずに
図16(b)に示す領域Aで供給された滑剤量を保持する。
上述により、現像領域では、感光体上に供給された滑剤量が多く、非現像領域では滑剤量が少なくなるために感光体の長手方向にて滑剤量の異なる滑剤ムラが発生する。
【0010】
特に、記録材の搬送方向に対して垂直方向となる幅方向のサイズが小さい記録材を連続印刷した後に、幅方向のサイズが大きい記録材を印刷すると顕著に発生する。
例えば、
図17に示すように、記録材の搬送方向に対してA5縦サイズの記録材の全域にハーフトーンの画像データを形成し、5000枚連続出力のジョブXを実行させた後、記録材のサイズがA4横サイズで、画像は、ジョブXと同様の画像濃度である全域ハーフトーンの画像データを1枚出力させるジョブYを実行させると、出力されたYジョブのA4横サイズの記録材上の画像には、長手方向の画像濃度が異なる濃度ムラ(画像スジ)が発生する。上述による滑剤ムラのメカニズムから、ジョブX実行後の感光体表面は、長手方向中央部には、A5縦サイズの幅方向の画像領域に相当する位置の滑剤量は多く、感光体の中央部以外の両端部の滑剤量は少なくなったことが原因と推測される。
【0011】
以上のことから、滑剤供給機構によって感光体表面に滑剤を均一に供給しても、感光体回転方向下流側に配置された現像部で現像領域のレイアウトや記録材のサイズに対応する画像の有無によって感光体表面には滑剤ムラが発生する。そして、感光体表面に滑剤ムラが発生している状態で、トナー像を記録材上に画像形成させた場合、感光体表面の滑剤ムラの影響によって記録材上に転写された画像の濃度が異なってしまうために画像スジが発生してしまう。
【0012】
本発明の目的は、上記課題に鑑みなされたものであり、感光体表面上の滑剤ムラを無くして滑剤ムラ起因による画像スジを防止することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、画像形成装置において、トナーを担持する像担持体と、前記像担持体に滑剤を供給する滑剤供給手段と、前記滑剤供給手段により前記滑剤が供給された前記像担持体において、記録材の搬送方向と直交する方向の滑剤量を検出する滑剤量検出手段と、前記像担持体に供給された前記滑剤を除去する滑剤除去手段と、前記滑剤量検出手段により
得られた最大検出値と最小検出値との差が第1の所定値以上となった場合、前記像担持体における前記記録材の搬送方向と直交する方向に滑剤ムラが有ると判断
して前記像担持体に供給された前記滑剤
の除去
を開始し、最大検出値と最小検出値との差が前記第1の所定値よりも小さい値である第2の所定値以下となった場合、前記滑剤ムラが無いと判断して前記滑剤の除去を終了するように前記滑剤除去手段を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明によれば、画像形成装置の制御方法において、トナーを担持する像担持体に滑剤を供給する滑剤供給ステップと、前記滑剤供給ステップにより前記滑剤が供給された前記像担持体において、記録材の搬送方向と直交する方向の滑剤量を検出する滑剤量検出ステップと、前記像担持体に供給された前記滑剤を除去する滑剤除去ステップと、前記滑剤量検出ステップにより
得られた最大検出値と最小検出値との差が第1の所定値以上となった場合、前記像担持体における前記記録材の搬送方向と直交する方向に滑剤ムラが有ると判断
して、前記滑剤除去ステップにより前記像担持体に供給された前記滑剤
の除去
を開始し、前記滑剤量検出ステップにより得られた最大検出値と最小検出値との差が前記第1の所定値よりも小さい値である第2の所定値以下となった場合、前記滑剤ムラが無いと判断して、前記滑剤除去ステップによる前記滑剤の除去を終了する制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、感光体上に供給された滑剤量を検出する検出部を配置し、感光体上の長手方向の滑剤量を検出して、滑剤ムラが発生する可能性が有ると判断した場合は、感光体への滑剤供給を中断して、感光体上の滑剤を除去する動作をするので、感光体上の滑剤ムラを防止し、滑剤ムラ起因による画像品質の低下を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(画像形成装置の構成)
図1は、本発明に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。
【0018】
画像形成装置10は、自動原稿搬送部1、スキャナー部2、画像形成部20、給紙部3、定着部5、制御部S等を備えて構成される。
【0019】
自動原稿給送部1は、原稿トレイに置かれた原稿Dを一枚ずつ所定の搬送経路に搬送する。
スキャナー部2は、搬送される原稿Dに光源を照射し、原稿Dから反射される反射光を受光する。スキャナー部2は、受光した光信号を電気信号(画像データ)に変換し、変換された画像データを画像形成部20に出力する。
【0020】
画像形成部20は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を形成する4組の画像形成部20Y、20M、20C、20Kが配置されている。画像データに基づいて各色に対応した感光体ドラム11に各色のトナー画像を形成し、一次転写部13によって中間転写ベルト16に各色のトナー画像を転写して重ね合わせることでカラー画像を形成する。一次転写されたカラー画像を記録材Pに二次転写して定着するまでの一連の画像形成動作を行う。
【0021】
感光体ドラム11周辺の構成及び動作について、簡単に説明する。
なお、ここでは、イエロー(Y)色の画像形成部20Yを対象として説明し、他色の構成もイエロー(Y)色と同様なので説明を省略する。
帯電部23Yは、感光体ドラム11Yの表面を均一に帯電する。
露光部22Yは、感光体ドラム11Yの表面にトナーを付着させる領域を露光し、露光した部分の電荷を除電することで静電潜像を形成する。
現像部21Yは、感光体ドラム11Yの静電潜像にトナーを付着させてトナー画像を現像する。
一次転写部13Yは、トナーの極性とは逆極性のバイアス電圧を印加して感光体ドラム11Y上に現像されたトナー画像を中間転写ベルト16に転写する。
クリーニング部25Yは、中間転写ベルト16に転写されずに感光体ドラム11Yに付着している残留トナーをブレード等で除去する。
【0022】
中間転写ベルト16は無端ベルトであり、複数のローラーにより架設され、走行可能に支持される。画像形成部20Y、20M、20C、および20Kに形成された各色のトナー像は、一次転写部13Y、13M、13C、および13Kにより走行する中間転写ベルト16上に逐次転写され、各色(Y、M、C、K)の層が重畳したカラー画像(トナー像)が中間転写ベルト16上に形成される。
【0023】
中間転写ベルト16には、中間転写ベルト16の表面に摺接されるベルトクリーニングブレード17及びベルトクリーニングブラシ18を有する中間転写クリーニング部19が備えられている。二次転写後に、中間転写ベルト16の表面に残存する転写残トナーを含む残留物は、ベルトクリーニングブレード17及びベルトクリーニングブラシ18によって掻き取られて除去される。
【0024】
ベルトクリーニングブレード17は、厚さ2.0mmのウレタンなどの弾性材料からなり、中間転写ベルト17の回転方向に対してカウンター方向に当接するように設けられている。ベルトクリーニングブラシ18は、中間転写ベルト16の回転方向に対してベルトクリーニングブレード17の下流に設けられている。ベルトクリーニングブラシ18のブラシ毛は、アクリル、ナイロン、ポリエステルなどの樹脂繊維にカーボンなどの導電剤を混ぜた導電繊維を用いている。
【0025】
二次転写ローラー13Aは、中間転写ベルト16を介して二次転写対向ローラー16aに当接して配置され、二次転写ローラー13Aと二次転写対向ローラー16aとの間で形成される転写ニップを記録材Pが通過することにより、中間転写ベルト16上のトナー像が、記録材Pに二次転写される。二次転写ローラー13Aは、画像形成動作のときは、二次転写対向ローラー16aに当接されているが、画像形成動作が終了すると二次転写対向ローラー16aから離間される構成となっている。
【0026】
二次転写ローラー13Aにおける記録材Pの排出側には、定着部5が配置されており、搬送されてきた記録材P上に形成されたトナー像を挟持搬送して記録材Pにトナー像を定着させる。
【0027】
給紙部3は、複数のトレイに記録材Pを収容されており、所定の搬送路を経由して画像形成部20に記録材Pを給紙する。
【0028】
画像形成装置10の上記各部は、制御部Sと接続されており、制御部Sにより適宜制御される。
【0029】
(感光体ドラム周辺構成)
図2は、画像形成部における感光体ドラム、帯電部、露光部、現像部、一次転写部、クリーニング部及び滑剤量検出部を説明するための概略断面図である。
【0030】
帯電部23は、感光体ドラム11の表面全体を一様に均一帯電させる。
【0031】
露光部22は、一様に均一帯電された感光体ドラム11の表面にトナーを付着させる領域を露光し、露光した部分の電荷を除電することで静電潜像を形成する。
【0032】
現像部21は、トナーとキャリアからなる二成分現像剤を用いて、感光体ドラム11上に形成された静電潜像を現像する。これにより、現像部21は、感光体ドラム11上にトナー像を形成する。現像部21は、現像部ケーシング36の中に現像ローラー26と現像剤を撹拌する撹拌スクリュー27を備えている。現像ローラー26は、回転可能な現像スリーブと、現像スリーブの内部に配置された現像マグネットローラーとを備えており、現像マグネットローラー内には、磁界を発生させる複数の磁極が配置されている。現像ローラー26は、感光体ドラム11に対向する場所に位置していて、感光体ドラム11の所定の間隔(以下、現像ギャップと記す)をあけて矢印B方向に回転可能に配置されている。現像ギャップは、例えば0.2〜0.5mm程度に設定される。現像ローラー26の回転動作の制御は、制御部Sによって行われる。
【0033】
現像ローラー26の近傍には、規制ブレード37が配置されており、現像ローラー26に付着する現像剤量を規定する。
【0034】
二成分現像では、キャリアにトナーを一定の割合で静電的に付着させ、このトナーの付着したキャリアを現像マグネットローラーが作る磁界によって現像スリーブ26上に付着させて搬送する。スリーブ上のキャリアは磁気力によって穂立ちしており、穂の先端が感光体ドラム11に接触する。この際、トナーが静電気力によって感光体ドラム11の表面に形成された静電潜像に移動し、付着して現像がなされる。
【0035】
一次転写部13には、離間機構と電源4が備えられている。一次転写部13は、中間転写ベルト16にトナー像を転写させる場合、中間転写ベルト16を介して感光体ドラム11に当接され、転写しない場合は離間される。また、一次転写部13は、電源4により中間転写ベルト16を介して感光体ドラム11上のトナー像にトナーの帯電極性とは逆極性の転写バイアスを印加して感光体ドラム11から中間転写ベルト16上へトナー像を転写させる。
【0036】
クリーニング部25は、クリーニングブレード28と感光体ドラム11の回転方向の下流側に滑剤供給機構29を備えている。
【0037】
クリーニングブレード28は、厚さ1.8mmのウレタンなどの弾性材料からなり、クリーニングブレード28を支持する支持部材31aにブレードの自由長が所定の長さとなるように接着剤等で貼り付けられている。クリーニングブレード28は、転写後の感光体ドラム11の表面に残留する残留物を掻き取るために、感光体ドラム11の回転方向に対してカウンター方向に当接するように設けられている。
【0038】
滑剤供給機構29は、滑剤供給ブラシ32と固形滑剤33と加圧部材34を備えており、感光体ドラム11の回転方向に対してクリーニングブレード28の下流側に設けられている。
滑剤供給ブラシ32は、感光体ドラム11表面と固形滑剤33とに当接するように設けられている。滑剤供給ブラシ32が回転することにより固形滑剤33が掻き取られ、掻き取られた滑剤が滑剤供給ブラシ32に付着する。そして、滑剤供給ブラシ32に付着した滑剤が、感光体ドラム11との当接部で感光体ドラム11表面に移動して付着し、滑剤膜を形成する。
【0039】
滑剤供給ブラシ32は、例えばアクリル系材料などの樹脂製のブラシからなる。ブラシの毛は、固形滑剤33を掻き取るために、ある程度の硬さを有しているが、一方で感光体ドラム11表面を傷付けることのない硬さとなっている。滑剤供給ブラシ32は、モーターに接続されており、矢印Aに示すように感光体ドラム11の回転方向に対してカウンター方向に回転する。滑剤供給ブラシ32の回転方向は、矢印Aとは逆回転方向でも構わないが、滑剤の掻き取りおよび感光体ドラム11への滑剤付着の効率が良い矢印A(カウンター方向)が好ましい。
【0040】
固形滑剤33は、ステアリン酸亜鉛(ZnSt)などの脂肪酸金属塩類からなり、感光体ドラム11の回転軸方向に延在した直方体形状に形成されたものである。固形潤滑剤33は、保持部材33aによって保持され、クリーニング装置25のケーシング35内に配置されたスプリング等の加圧部材34によって保持部材33aを介して滑剤供給ブラシ32に押し当てられている。
【0041】
また、クリーニング部25には、滑剤供給機構29の下流側に塗布された滑剤を延展して感光体ドラム11の表面に均一に薄膜化する部材を備えてもよい。
【0042】
(感光体ドラム上の滑剤量検出の原理)
本実施の形態における感光体ドラム11上の滑剤量を検出する原理について説明する。
【0043】
図3に示す滑剤量検出部30は、感光体ドラム11の表面に塗布された滑剤量を検出するために、例えば光学式センサー等を用いる。光学式センサーは、光源部31と受光部32からなり、光源部31から感光体ドラム11に向けて光を照射し、感光体ドラム11で反射した反射光を受光部32によって受光する。受光部32で受光した反射光は、制御部Sによって光電変換されて電圧に換算される。
【0044】
固形滑剤33から滑剤供給ブラシ32によって掻き取られた粉体滑剤は、感光体ドラム11の表面に被膜される。感光体ドラム11の表面に被膜された滑剤膜は、感光体ドラム11の表面を鏡面化させる。また、滑剤膜は無色透明であるため、光源部31から光を照射させると滑剤膜表面上で反射された反射光と感光体ドラム11の表面上で反射された反射光が干渉を起こす。つまり、受光部32には、滑剤表面で反射された反射光と感光体ドラム11の表面で反射された反射光とが干渉した光が受光される。
【0045】
波長と反射率の関係からなる光路差によって光の反射光が強め合ったり弱め合ったりするので、受光部32に入射される反射光により滑剤膜の膜厚が算出でき、滑剤の量を検出することができる。
図4に示すように、光源部31の発光波長ポイントにおいて、反射率が低い場合は滑剤膜の膜厚が薄いので滑剤量が少なく、また、反射率が高い場合は滑剤膜の膜厚が厚いので滑剤量が多いことが認識される。
【0046】
本実施の形態では、滑剤量検出部30として光学式センサーを用いたが、滑剤は帯電する性質を有するので、他の検出手段として、例えば、現像部内のトナー有無検出で実施されているような磁気センサーを用いてもよい。
【0047】
(第1の実施形態)
本発明の実施形態について説明する。本発明の一連の動作を、以後、滑剤検出モードを呼ぶ。
【0048】
感光体ドラムに対向する滑剤量検出機構の構成及び検出方法について説明する。
図5は、本発明の実施形態に係る第1の滑剤量検出機構を示した簡易図である。
【0049】
第1の滑剤量検出機構33は、複数の滑剤量検出部30を感光体ドラム11に対向させ、感光体ドラム11の長手方向に対して横並びに配置させた構成としている。滑剤検出モードが開始すると、滑剤量検出部30である各滑剤量検出センサーが感光体ドラム11に向けて発光し、各滑剤量検出センサーでの反射率をそれぞれ検出する。
図5に示す第1の滑剤量検出機構33では、滑剤量検出センサー30a、30b、30c、30d及び30eの計5個の光学式センサーを配置したが、感光体ドラム11の長手方向全域を検出できれば滑剤量検出部30の数量は限定しない。
【0050】
第1の滑剤量検出機構で感光体ドラム11上に供給された滑剤の滑剤ムラの有無を判断するための滑剤量検出方法について説明する前に、本実施形態に係る滑剤検出モードにおいて、上述の「滑剤ムラの有無の判断」について説明する。
【0051】
図18は、滑剤ムラの発生レベルと滑剤検出モードで定義する「滑剤ムラの有無の判断」の判断基準(ボーダーライン)を示した図である。
垂直軸Dは、滑剤ムラの発生レベルを示しており、上昇は滑剤ムラが大きいことを示し、下降は滑剤ムラが小さいことを示している。また、垂直軸Dの矢印方向に対して直交している水平線は、滑剤ムラの発生レベルを区分した所定の各範囲との境界線を示している。
【0052】
滑剤ムラの発生レベルは、3つの範囲に定義されている。記録材上の画像に、スジとなって顕在化する程度の大きな滑剤ムラが発生する発生範囲と、画像に影響を及ぼさない程度の小さな滑剤ムラが存在する安全範囲が存在する。発生範囲と安全範囲との間には、現状程度の滑剤ムラであれば画像に影響を及ぼさないものの、滑剤ムラがこれ以上大きくなると画像スジとして顕在化するおそれがある危険範囲が介在している。
【0053】
上述の「滑剤ムラの有無を判断する」とは、
図18に示した画像スジの危険範囲と画像スジの安全範囲との境界線Lを判断基準とし、「滑剤ムラが有る」と判断した場合は、滑剤ムラが大きくなって画像スジの危険範囲に入ったことを意味する。「滑剤ムラが無い」と判断した場合は、画像スジの安全範囲に入ったことを意味する。
滑剤ムラの有無の判断基準を示す境界線Lの閾値は、例えば、システムの変化、装置周辺の環境状況、感光体ドラム11及び滑剤供給機構29等の部材の使用履歴等に応じて適正な閾値に変化する。
【0054】
図6は、感光体ドラム11の長手方向に配置された複数の滑剤量検出部30のそれぞれの位置で検出された反射率の結果を示した図である。
【0055】
滑剤量検出センサー30a、30b、30c、30d及び30eが配置された配置位置での反射率を確認し、検出した反射率の中から、最大反射率及び最小反射率の差分が所定値以上の場合は、滑剤ムラが有ると判断する。一方、最大反射率及び最小反射率の差分が所定値よりも小さい場合は、滑剤ムラが無いと判断する。
【0056】
滑剤量検出センサー30a、30b、30c、30d及び30eで検出する反射率のサンプリング回数は、例えば、感光体ドラム11の回転周期において1回でもよく、また、複数回サンプリングしても良い。サンプリング回数が多い方が、滑剤ムラの検出精度が高まるのでより好ましい。サンプリングを複数回行う場合は、感光体ドラム11の周方向のサンプリング回数の平均値を算出して、長手位置における最大反射率及び最小反射率の差分によって滑剤ムラの有無を判断してもよい。また、まずは、それぞれの滑剤量検出部30が配置される5箇所の位置において、周方向のサンプリングの中から、それぞれ最大反射率及び最小反射率を確認し、さらに、長手方向の5箇所で確認された周方向での最大反射率及び最小反射率を比較して、長手方向での最大反射率及び最小反射率を選出して滑剤ムラの有無を判断してもよい。
【0057】
図7は、本発明の実施形態に係る第2の滑剤量検出機構を示した図である。
第2の滑剤量検出機構34は、感光体ドラム11に対して1個の滑剤量検出センサー30fを対向させ、滑剤量検出センサー30fが、感光体ドラム11の長手方向に移動可能とする機構を備えた構成である。
【0058】
例えば、滑剤量検出センサー30fは、感光体ドラム11の長手方向と対向して平行移動可能なスライド軸35に接続されている。そして、滑剤量検出センサー30fは、滑剤検出モードの開始位置として、感光体ドラム11の長手方向における一方の端部位置付近に留まっており、滑剤検出モードが開始されると、開始位置から長手方向の対象に位置するもう一方の端部位置付近に向かって移動しながら連続的に反射率を検出する。
【0059】
第2の滑剤量検出機構34での滑剤量検出方法について説明する。
図8は、第2の滑剤量検出機構34によって得られた反射率を示した図である。滑剤量検出センサー30fは、感光体ドラム11の長手方向に移動しながら連続的に反射率を検出することから、得られた反射率は推移曲線となる。得られた反射率の曲線から最大反射率及び最小反射率を確認して、最大反射率及び最小反射率の差分が所定値以上の場合は、滑剤ムラが有ると判断する。一方、最大反射率及び最小反射率の差分が所定値よりも小さい場合は、滑剤ムラが無いと判断する。
【0060】
第2の滑剤量検出機構34の滑剤検出モードを開始する際の滑剤量検出センサー30fの移動は、感光体ドラム11の一方の端部付近に対向した位置から、対称に位置するもう一方の端部付近への移動としたが、滑剤量検出部30の滑剤量検出の開始位置から、もう一方の端部付近で折り返して、再び開始位置まで戻るような周期移動で連続的に滑剤量を検出する方法としてもよい。
【0061】
図9は、本発明の実施形態に係る第3の滑剤量検出機構を示した図である。
図9に示す第3の滑剤量検出機構36は、感光体ドラム11の長手方向に対向して感光体ドラム11の中央部及び両端部のうちのどちらか片側端部の計2箇所に滑剤量検出部30を備えた構成である。
【0062】
第3の滑剤量検出機構36での滑剤量検出方法について説明する。
図10は、感光体ドラム11の長手方向に配置された2箇所の滑剤量検出部30のそれぞれの位置で検出された反射率の結果を示した図である。
【0063】
2箇所の滑剤量検出センサー30g及び30hが配置された配置位置で反射率を確認し、滑剤量検出センサー30g及び30hで検出した反射率の中から、最大反射率及び最小反射率の差分が所定値以上の場合は、滑剤ムラが有ると判断する。一方、最大反射率及び最小反射率の差分が所定値よりも小さい場合は、滑剤ムラが無いと判断する。また、第3の滑剤量検出機構36は、第1の滑剤量検出機構33との違いとしては、滑剤量検出センサーの数量の違いのみであるため第1の滑剤量検出機構33の検出方法を踏襲することができる。
【0064】
(第1の実施形態のフローチャート)
滑剤検出モードについて、
図11、
図12及び
図18を用いて説明する。
図11は、第1の実施形態に係る滑剤検出モードに関するフローチャートである。また、
図12は、第1の実施形態のフローチャートに対応した感光体ドラム11の周辺構成を示した断面図である。
【0065】
滑剤検出モードの開始タイミングは、例えば、記録材が所定の通紙枚数毎に到達したタイミングで開始される。
【0066】
滑剤検出モードが開始すると、画像形成装置10が、画像安定化制御の直前であるか否かの判断がなされる(ステップS1)。
【0067】
画像安定化制御とは、例えば、感光体ドラムや現像剤等の経時的や劣化や、装置周辺の環境(温度や湿度など)の変動等によって、入力画像の階調が出力画像に忠実に再現されないという現象を防止する制御であり、入力画像の階調等を出力画像に安定して再現させるための制御である。
【0068】
画像安定化制御としては、例えば、中間転写ベルトに形成されたY、M、C、Kの各色のトナーパターンの濃度を光学式センサーで検出し、この検出結果(階調特性)に基づいて階調補正データを生成し、帯電電位、現像電位、露光量等の画像形成条件にフィードバックさせる階調補正(ガンマ補正)等がある。
【0069】
具体的には、所定の階調値を有する画像データに基づき階調補正用の各色トナーパターンの濃度を反射型の濃度検出センサーを用いて測定し、測定結果に基づいてガンマ補正曲線を作成し、ガンマ補正曲線を定期的に更新する制御である。
【0070】
ステップS1で、画像安定化制御の直前ではないと判断された場合(ステップS1:NO)、滑剤検出モードを終了する。一方、画像安定化制御の直前と判断された場合(ステップS1:YES)、一次転写部13が離間済みか否かを判断する(ステップS2)。ステップS2で、一次転写部13が離間されていない場合(ステップS2:NO)、一次転写部13を離間させる(ステップS3)。一方、一次転写部13が離間済みである場合(ステップS2:YES)、感光体ドラム11を駆動させ、前述した検出方法によって滑剤量検出部30が、感光体ドラム11上の長手方向の滑剤量を検出する(ステップS4)。
【0071】
ステップS4での検出結果に基づいて感光体ドラム11上に滑剤ムラが有るか否かを判断する。具体的には、滑剤量検出部30が検出した反射率の中から最大反射率及び最小反射率を抽出し、最大反射率から最小反射率を差し引いた差分が第1の所定値以上か否かを判断する(ステップS5)。第1の所定値は、
図18に示した境界線Lを示す値に相当する。
【0072】
ステップS5で、最大反射率から最小反射率を差し引いた差分が第1の所定値よりも小さい場合(ステップS5:NO)、感光体ドラム11上に滑剤ムラが無いと判断して滑剤検出モードを終了する。一方、最大反射率から最小反射率を差し引いた差分が第1の所定値以上である場合(ステップS5:YES)、滑剤ムラが有ると判断して、
図12に示すように滑剤供給機構29を感光体ドラム11から離間させて、感光体ドラム11への滑剤供給を中断する(ステップS6)。
【0073】
ステップS6で、滑剤供給機構29を感光体ドラム11から離間させた後、帯電部23は、感光体ドラム11の表面を一様に帯電させる。帯電後は、露光は行わずに現像ギャップの位置まで感光体ドラム11を駆動させる。感光体ドラム11の表面を帯電させることについては、帯電させなくてもよいが、感光体ドラム11上をトナーと同極性の電位を有していたほうが現像ローラー26から意図しない不要なトナーが現像される可能性が低くなるので帯電させた方が望ましい。
【0074】
滑剤ムラが発生したと判断された感光体ドラム11の表面が、現像ギャップ位置まで移動すると、
図13に示すように回転する現像ローラー26に付着しているキャリアの穂の物理的な接触によって感光体ドラム11上に供給された滑剤が掻き取られて現像ローラー26周辺の現像部21内に取り込まれ、最大反射率と最小反射率との差分が徐々に小さくなって滑剤ムラが徐々に解消される(ステップS7)。
【0075】
下記に、最大反射率と最小反射率との差分が徐々に小さくなって感光体ドラム11の長手方向の滑剤ムラが解消されるメカニズムについて説明する。
感光体ドラム11上に被覆された滑剤膜の膜厚が厚いと、キャリアの穂による当接圧が強いために滑剤の掻き取り量は多くなるが、キャリアの穂により滑剤が掻き取られて滑剤膜が徐々に薄くなるに従って、キャリアの穂と滑剤膜の表面との当接圧が弱くなり、滑剤の掻き取り量は減少するので滑剤膜の膜厚差(ムラ)が小さくなるからである。
【0076】
ステップS7にて、キャリアの穂による滑剤の掻き取りを実行している間は、滑剤量検出部30で常時、感光体ドラム11上の滑剤の反射率を確認し、最大反射率及び最小反射率の差分が第1の所定値よりも小さい値である第2の所定値以下となったか否かを判断する(ステップS8)。
【0077】
ステップS8で、最大反射率及び最小反射率の差分が、第2の所定値よりも大きい場合(ステップS8:NO)、
図18に示す安全範囲に到達したものの安全範囲と危険範囲との境界線Lを示す第1の所定値に近似していると判断し、現像部21での滑剤の取り込みを継続する。一方、最大反射率及び最小反射率の差分が第2の所定値以下となった場合(ステップS8:YES)、滑剤ムラが無いと判断して現像部21での滑剤の取り込みを終了する(ステップS9)。
【0078】
第2の所定値は、上述したように第1の所定値よりも小さい値となっており、感光体ドラム11上に発生した滑剤ムラを解消する動作を継続するか否かを判断するための判断基準値であることを示している。つまり、第2の所定値に達したということは、最大反射率及び最小反射率の差分が第1の所定値を下回り、
図18に示した安全範囲に到達したことを意味している。第2の所定値は、第1の所定値と同じ値としても構わないが、その場合、滑剤ムラの解消動作を継続するか否かの判断が、滑剤ムラが顕在化して画像スジとなるおそれがある危険範囲と画像スジが発生しない安全範囲との境界線でなされるため、画像スジが発生するリスクと隣合わせとなることから、第2の所定値は、第1の所定値よりも小さくすることが望ましい。
【0079】
しかしながら、第2の所定値を、第1の所定値よりも小さくして第1の所定値と第2の所定値の差を大きくしてしまうと、感光体ドラム11上の滑剤ムラを解消する動作に時間を要してしまい、画像形成動作の開始が遅くなって印刷物の生産性が低下してしまうので、第1の所定値よりも小さく、且つ画像スジ発生のリスク低減と生産性とを両立可能な値に設定することがより望ましい。
【0080】
次に、現像部21に取り込んだ感光体ドラム11上の滑剤を排出する動作について説明する。
ステップS9にて、現像部21での滑剤の取り込みを終了させた後、一次転写部13は、中間転写ベルト16を介して感光体ドラム11に当接する(ステップS10)。そして、帯電部23によって一様に帯電された感光体ドラム11の表面は、露光部22により露光されて現像可能な長手方向の全域にトナーパターンが付着されるような静電潜像を形成する。その後、現像部21に取り込まれた滑剤が付着するトナーを感光体ドラム11上に現像させて、滑剤を排出するためのトナーパターン(以下、滑剤排出用トナーパターンと記す)を形成する(ステップS11)。
【0081】
現像部21に取り込まれた滑剤は、滑剤供給機構29によって感光体ドラム11表面に供給される過程において、例えば、滑剤供給ブラシ32による滑剤の掻き取り時や感光体ドラム11表面への移動時、または、現像ローラー26で形成されるキャリアの穂による掻き取り時の摺擦によって摩擦帯電が発生し、滑剤の性質上、プラス極性を有する。プラス極性を有する滑剤は、現像部21のマイナス極性を有するトナーとの静電気力の関係やトナーの付着力(凝集力)に依存し、トナーに付着した状態で感光体に現像される。
【0082】
滑剤排出用トナーパターンは、感光体ドラム11の回転方向にA3サイズの画像領域1〜2枚相当の長さのトナーパターンを現像する。滑剤排出用トナーパターンの長さは、例えば、ステップS5での判断において、最大反射率から最小反射率を差し引いた差分値と第1の所定値との差の大きさによってパターン長さを決定する調整テーブルを制御部Sに備えて、状況に応じて適切なパターン長さとすることでトナー消費量を最適化してもよい。
また、上述の調整テーブルのパラメーターは、現像部21での感光体ドラム11上の滑剤の取り込み時の経過時間でもよく、滑剤取り込み時の感光体ドラム11の回転距離や回転数に対応させてもよい。
【0083】
ステップS11で、感光体ドラム11上に現像された滑剤排出用トナーパターンは、一次転写部13にトナーとは逆極性の転写バイアスが印加されて中間転写ベルト16に転写される(ステップS12)。滑剤検出モードの際は、二次転写ローラー13Aが二次転写対向ローラー16aから離間されており、一次転写部13によって中間転写ベルト16に転写された滑剤排出用トナーパターンは、中間転写ベルト16の回転方向の上流に配置された中間転写ベルトクリーニング部19によって中間転写ベルト16から除去される(ステップS13)。
【0084】
ステップS13で、滑剤排出用トナーパターンが除去された後、滑剤供給機構29は、感光体ドラム11に当接する(ステップS14)。その後、感光体ドラム11上に滑剤供給を再開(ステップS15)して滑剤検出モードを終了する。
【0085】
上述したように、第1の実施形態では、滑剤量検出部30を配置して、感光体ドラム11の長手方向に供給された滑剤量に差異が生じて滑剤ムラが発生する可能性があると判断した場合、感光体ドラム11への滑剤供給を中断し、感光体ドラム11上の滑剤を感光体ドラム上から取り除く制御を行う。この制御を行うことで、感光体ドラム11上での滑剤ムラを未然に防止することができ、滑剤ムラ起因による画像品質の低下を防止することができる。また、滑剤検出モードは、画像安定化制御を実行する直前に行うので画像安定化制御の精度を向上させることができ、より安定した出力画像を再現することができる。
【0086】
第1の実施形態では、滑剤検出モードの動作を画像安定化制御の直前に動作させるようにしたが、例えば、画像データの累積印字率が所定値に到達したタイミングで動作させてもよい。また、印刷動作を行う際、前回の印刷履歴と今回印刷する用紙の幅方向サイズを比較して、前回の印刷で選択された用紙幅が今回印刷する用紙幅よりも小さい場合、今回の印刷を実行する前に滑剤検出モードを動作させてもよい。
上述のように、画像安定化制御の直前以外の動作タイミングについても、第1の実施形態に係るフローチャートのステップS1の処理に入れ替えて滑剤検出モードを動作させることができる。
【0087】
また、第1の実施形態に係る画像形成部の現像部21では、二成分現像剤を用いた二成分現像方式として説明したが、本発明は、トナーのみを用いる一成分現像剤に対応した現像部でも滑剤の取り込みが行われて感光体上の長手方向に滑剤ムラが発生するため、一成分現像方式にも適応が可能である。
【0088】
下記に、一成分現像剤を用いた現像部にて滑剤ムラが発生するメカニズムについて説明する。
【0089】
滑剤供給機構29によって感光体ドラム11上に供給された滑剤は、トナーが有する極性とは逆極性に帯電する傾向があり、例えば、滑剤供給ブラシ32から感光体ドラム11に供給される際に摺擦帯電を起こしたり、一次転写部13から中間転写ベルト16を介して印加される転写バイアスの影響を受けて帯電したりすることがある。トナーの極性とは逆極性に帯電した感光体ドラム上の滑剤が、現像ギャップまで移動すると現像領域の滑剤は、現像ローラー26から感光体ドラム11へ飛翔するトナーにより遮られて感光体ドラム11上に留められる。一方、非現像領域に存在する滑剤は、対向する現像ローラー26に印加される現像バイアスの影響により静電的に現像ローラー26側に引き寄せられるため、感光体11上の滑剤が現像部に取り込まれる。
【0090】
以上により、二成分現像剤を用いた現像部では、感光体ドラム11上の滑剤は、キャリアの穂によって物理的に掻き取られて現像部に取り込まれて滑剤ムラが発生する。一方、一成分現像剤を用いた現像部では、静電的に現像部側に引き寄せられてしまうため滑剤ムラが発生する。
【0091】
(第2の実施形態)
図14は、第2の実施形態に係る感光体ドラム周辺構成の概略断面図である。
第1の実施形態との構成上の違いとしては、第2の実施形態には、感光体ドラム11に当接する滑剤除去機構39が備えられている。
【0092】
滑剤除去機構39は、ブラシ状の回転部材である滑剤除去ブラシ40、フリッカー41、図示されていない離間機構などによって構成されている。
滑剤除去機構39は、感光体ドラム11の回転方向に対して滑剤量検出センサー30の下流で帯電部23の上流に配置されている。第2の実施形態では、滑剤除去機構39を、滑剤量検出センサー30と帯電部23の間に配置しているが、感光体ドラム11上から滑剤を除去可能な位置に配置されていれば、特に限定されるものではない。
【0093】
滑剤除去ブラシ40は、アクリル系やナイロン系材料などの樹脂繊維のブラシ毛が芯金上に巻かれたブラシローラーであり、感光体ドラム11に当接している場合は、矢印Cの方向に回転している。また、滑剤を感光体ドラム11から除去して回収する機能を有するのであれば磁気ブラシでも構わない。滑剤除去ブラシ40の回転方向は、矢印Cの回転方向とは逆方向に回転させても構わないが、矢印Cの回転方向の方が滑剤の回収効率が高いのでより好ましい。
【0094】
フリッカー41は、ステンレス等からなる板状部材であって、滑剤除去ブラシ40の回転中心部に向けてブラシ毛に食い込むように配置されている。滑剤除去ブラシ40のブラシ毛は、回転することでフリッカー41と積極的に接触し、感光体ドラム11上から掻きとった滑剤を滑剤除去ブラシ40から分離させる。
【0095】
(第2の実施形態のフローチャート)
第2の実施形態に係る滑剤検出モードについて、
図14、
図15及び
図18を用いて説明する。
図15は、第2の実施形態に係る滑剤検出モードに関するフローチャートである。
【0096】
滑剤検出モードの開始から滑剤供給機構29を感光体ドラム11から離間させるまでに対応するステップS21からステップ26の処理までは、第1の実施形態に係るフローチャートでのステップS1からステップS6までの処理と同様であるため、説明を割愛する。
【0097】
ステップ26で、滑剤供給機構29を感光体ドラム11から離間させた後、感光体ドラム11上の滑剤を除去するために、滑剤除去機構39を感光体ドラム11に当接(ステップS27)させて滑剤を除去する(ステップS28)。
【0098】
当接された滑剤除去機構39の滑剤除去ブラシ40によって感光体ドラム11上から滑剤が取り除かれる。滑剤を除去している間は、滑剤量検出部30で常時、感光体ドラム11上の滑剤の反射率を確認し、最大反射率及び最小反射率の差分が第2の所定値以下か否かを判断する(ステップS29)。
【0099】
ステップS29で、最大反射率及び最小反射率の差分が、第2の所定値よりも大きい場合(ステップS29:NO)、
図18に示す安全範囲に到達したものの安全範囲と危険範囲との境界線Lを示す第1の所定値に近似していると判断し、滑剤除去ブラシ40での滑剤除去を継続する。一方、最大反射率及び最小反射率の差分が第2の所定値以下となった場合(ステップS29:YES)、滑剤ムラが解消されたと判断して滑剤除去機構39を感光体ドラム11から離間して滑剤の除去を終了する(ステップS30)。
【0100】
ステップS30で、滑剤除去機構39を感光体ドラム11から離間させた後、滑剤供給機構29を感光体ドラム11に当接する(ステップS31)。その後、感光体ドラム11上に滑剤供給を再開(ステップS32)して滑剤検出モードを終了する。
【0101】
以上により、第2の実施形態では、滑剤量検出部30を配置して、感光体ドラム11の長手方向に供給された滑剤量に差異が生じて滑剤ムラが発生する可能性があると判断した場合、感光体ドラム11への滑剤供給を中断し、感光体ドラム11上の滑剤を感光体ドラム11上から取り除く制御を行う。この制御を行うことにより、感光体ドラム11上の滑剤ムラを未然に防止することができるので、滑剤ムラ起因による画像品質の低下を防止することができる。