(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記微小レンズの前記副走査方向におけるピッチは、前記レーザー光の前記副走査方向の径よりも大きい、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
前記制御部は、前記第一の走査と、前記第二の走査とを、人の目の時間分解能以内に行わせる、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面に基づいて、本発明のヘッドアップディスプレイ装置(以下、HUD装置と記載)の第一実施形態について説明する。
【0013】
本実施形態に係るHUD装置1は、
図1に示すように、車両2のダッシュボード内に設けられ、後述する透過スクリーン40に生成した表示画像M(
図2参照)を表す画像光600をウインドシールド3で反射させることにより、運転者に車両情報を表す表示画像Mの虚像W(表示像)を視認させる装置である。運転者は、視域であるアイボックス4において、表示画像Mを虚像Wとして視認する。なお、
図1の虚像Wは、感覚的な理解を容易にするため、模式的に示したものである。
図2の表示画像Mも同様である。
【0014】
図1に示すHUD装置1は、
図2に示すように、合成レーザー光発生装置10と、MEMS(Micro Electro Mechanical System)スキャナ20と、フィールドレンズ30と、透過スクリーン40と、リレー光学部50と、ハウジング60と、を備える。
合成レーザー光発生装置10は、後述する各光源11b,11r,11gが出射する各レーザー光B,R,Gの光軸を調整して1本の合成レーザー光500を出射する装置であり、
図3に示すように、光源11と、集光光学部12と、光軸調整部13と、を備える。
【0015】
光源11は、
図3に示すように、青色レーザー光Bを発する青色光源11bと、赤色レーザー光Rを発する赤色光源11r、緑色レーザー光Gを発する緑色光源11g、から構成される。各光源11b,11r,11gは、合成レーザー光500として出射される際に、各レーザー光B,R,Gの偏光方向(電場振動方向)が一致するように配設される。
【0016】
集光光学部12は、光源11から出射された発散光である各レーザー光B,R,Gを収束光に変換し、後述する透過スクリーン40の下面に集光するように収差補正されたレンズであり、各光源11b,11r,11gから出射される各レーザー光B,R,Gの光路上にそれぞれ配置される青色集光レンズ12b,赤色集光レンズ12R,緑色集光レンズ12Gから構成される。光源11から出射される各レーザー光B,R,Gは、略ガウシアンの光強度分布(図示しない)を有しており、集光光学部12により集光されて透過スクリーン40に到達する合成レーザー光500(各レーザー光B,R,G)も同様に略ガウシアンの光強度分布710を有するとみなすことができる。
【0017】
光軸調整部13は、各レーザー光B,R,Gの光軸を概ね揃えて、合成レーザー光500としてMEMSスキャナ20に向けるものであり、赤色レーザー光Rの波長領域のみを反射する第一ダイクロイックミラー13Rと、緑色レーザー光Gの波長領域のみを反射する第二ダイクロイックミラー13Gと、から構成される。
【0018】
図2に戻って、MEMSスキャナ20は、合成レーザー光発生装置10が出射した合成レーザー光500を走査して、透過スクリーン40の表面側に表示画像Mを生成する。MEMSスキャナ20は、
図4に示すように、主走査方向Hに複数回の主走査をしながら、主走査方向Hと概ね直交する副走査方向Vに副走査することで、後述する透過スクリーン40上に表示画像Mを生成する。
【0019】
フィールドレンズ30は、MEMSスキャナ20で走査された合成レーザー光500を、走査位置に応じた入射角で透過スクリーン40へ入射させる。フィールドレンズ30は、合成レーザー光500の透過スクリーン40への入射角を、透過スクリーン40以降の光学系(リレー光学部50、ウインドシールド3)の特性に合わせて最適化するように形成され、配置されている。
【0020】
透過スクリーン40は、
図6に示すように、マイクロレンズアレイ(以下、MLA)41と、MLA41の前面側に配置されるアパーチャアレイ42と、から構成され、表面側に表示画像Mを表示する。透過スクリーン40は、MEMSスキャナ20から入射した合成レーザー光500の射出瞳(Exit Pupil)を拡大し、画像光600としてリレー光学部50に向けて出射する。
ここで、透過スクリーン40について、
図5,6を用いて説明する。
図5(a)は、MLA41の平面図であり、
図5(b)は、アパーチャアレイ42の平面図である。また、
図6は、透過スクリーン40の断面図であり、
図4におけるA−A断面図である。
【0021】
MLA41は、
図5(a)に示すように、その面内に複数のマイクロレンズ(以下、MLと記載)41aを有し、これらML41a各々が、主走査方向HにdH1、副走査方向VにdV1のピッチで周期的に配列するようにして形成されるものである。本実施形態ではdH1>dV1であり、ML41aは、長方形の格子状に周期的に配列され、隣り合うML41a同士に生じる隙間や段差が最小限となるように形成されている。ここでのピッチとは、互いに隣接するML41aのレンズ中心間の距離である。このような長方形形状のレンズアレイとすることで透過スクリーン40を出射したレーザー光はアイボックス4を長方形形状で効率良く照明することができる。本実施形態では、副走査方向VのピッチdV1を略1画素に相当するサイズとする。
本実施形態では長方形形状のマイクロレンズが格子状に配列されるとしたが、レンズの形状は正方形としてもよい。また、六角形形状のマイクロレンズをハニカム状に配列していてもよい。
【0022】
アパーチャアレイ42は、
図5(b)に示すように、その面内に、主走査方向HにピッチdHA、副走査方向VにピッチdVAで周期的に配列された複数の開口部42aをする。ここでのピッチとは、互いに隣接する開口部42aの中心間の距離である。
本実施形態ではMLA41と同様、dHA>dVAである。また、アパーチャアレイ42のピッチは、MLA41のピッチよりも僅かに大きく、dHA>dH1であるとする。
アパーチャアレイ42の開口部42aは、その大きさがML41aのレンズサイズの1/5〜1/10程度となるように調整して形成されている。アパーチャアレイ42の開口部42a以外の領域は、図示するように、遮光部42bである。遮光部42bは、例えば液晶パネルに用いられるブラックレジストのような可視光を吸収する材料から形成されている。つまり、アパーチャアレイ42において、その両面共に開口部42a以外の領域は、遮光部42bの表面となっている。そのため、アパーチャアレイ42に到達したレーザー光のうち、開口部42aを通過する光以外は、遮光部42bでその大部分が吸収される。
【0023】
MLA41とアパーチャアレイ42とは、
図6に示すように、互いの有する面が平行になるように、且つ、MLA41の中心部に位置するML41aの光軸AX上に、アパーチャアレイ42の中心部に位置する開口部42aの中心が位置するように配置される。また、両者は、ML41aの焦点距離fの間隔だけ隔てて配置されている。なお、MLA41の中心部に位置するML41aとは、MEMSスキャナ20によって走査されたレーザー光の中心の光に照射される位置にあるML41aをいう。また、MLA41とアパーチャアレイ42とは、アパーチャアレイ42の複数の開口部42aの各々とMLA41の複数のマイクロレンズ41aの各々とが互いに対を成すように、且つ、MLA41によるレーザー光R,G,Bの集光点Pに開口部42a中心が位置するように、形成され、配置される。
【0024】
透過スクリーン40は、以上のように構成されるため、MLA41で集光されたレーザー光は、アパーチャアレイ42の開口部42aをちょうど通過する。このため、光源11が出射したレーザー光を効率良く表示画像Mを表す光とすることができる。その一方、
図2に示すHUD装置1におけるレーザー光の光路を逆に伝搬し、透過スクリーン40に到達する外光は、その大部分がアパーチャアレイ42の遮光部42bに吸収される。そのため、外光反射は、大幅に低減される。遮光部42bを有さない場合、透過スクリーン40で拡散反射した外光がHUD装置1の光路をたどり視認者の眼に届くことになる。このとき、透過スクリーン40が表示像に重なって白い枠状に浮かび上がるため、視認性を悪化させることとなる。
また、透過スクリーン40に到達したレーザー光のうち、アパーチャアレイ42の開口部42aを通過する画像光600(つまり、表示画像Mを表す光)以外の光は、その大部分がアパーチャアレイ42の遮光部42bに吸収される。そのため、透過スクリーン40内でのレーザー光の内部反射も低減できる。
本実施形態では透過スクリーン40にアパーチャアレイ42を形成することとしたが、MLA41単独としてもよい。
【0025】
リレー光学部50は、透過スクリーン40とウインドシールド3との光路間に設けられ、透過スクリーン40の前面に表示された表示画像Mが、所望の位置に所望の大きさで、虚像Wとして結ばれるように光補正する光学系である。リレー光学部50は、平面ミラー51と凹面ミラー52の2枚の鏡から構成される。
平面ミラー51は、平面状の全反射ミラー等であり、透過スクリーン40に表示された表示画像Mを表す画像光600を凹面ミラー52に向かって反射する。
【0026】
凹面ミラー52は、凹面鏡等であり、平面ミラー51で反射された画像光600を凹面で反射させることで、反射光をウインドシールド3に向かって出射する。これにより、結ばれる虚像Wの大きさは、表示画像Mが拡大された大きさのものになる。
【0027】
ハウジング60は、上方に所定の大きさの開口部を有して、箱状に、硬質樹脂等から形成されるものであり、その内部の所定の位置に合成レーザー光発生装置10、MEMSスキャナ20、フィールドレンズ30、透過スクリーン40、リレー光学部50などを収納する。また、ハウジング60の開口部には、窓部61が取り付けられる。
【0028】
次に、
図7を参照して、HUD装置1の制御系統について説明する。
HUD装置1は、上記したものの他、
図7に示すように、LD制御部100と、MEMS制御部200と、LD制御部100とMEMS制御部200とを制御するコントローラユニット300と、を備える。これらの制御部は、例えば、ハウジング60内に配設されたプリント回路板(図示せず)に実装されている。また、これらの制御部は、HUD装置1の外部に配設され、配線によりHUD装置1(光源11r,11g,11b、MEMSスキャナ20等)と電気的に接続されていてもよい。
【0029】
LD制御部100は、光源11b,11r,11gを駆動するドライバIC等からなり、コントローラユニット300の制御のもとで(表示制御部340からのLD駆動信号に基づいて)、各光源11b,11r,11gを、PWM方式、又は、パルス振幅変調(Pulse Amplitude Modulation;PAM)方式により駆動する。
【0030】
MEMS制御部200は、MEMSスキャナ20を駆動するドライバIC等からなり、コントローラユニット300の制御のもとで(表示制御部340からの走査制御信号に基づいて)、MEMSスキャナ20を駆動する。MEMS制御部200は、正弦波状の主走査駆動信号(主走査駆動電圧)により、MEMSスキャナ20を主走査方向Hに共振させる。また、MEMS制御部200は、副走査駆動信号(副走査駆動電圧V)により、MEMSスキャナ20を副走査方向Vに振動させる。
【0031】
MEMS制御部200は、MEMSスキャナ20のミラーを動かすピエゾ素子の時間ごとの振れ位置を取得し、これに基づいてフィードバックデータを算出し、このフィードバックデータを後述する表示制御部340へ出力する。
MEMS制御部200から出力されるフィードバックデータは、
図4に示すような、主走査ライン数nと、走査開始位置Ya,表示開始位置(図示しない),表示終了位置(図示しない),走査終了位置YbなどMEMSスキャナ20による走査位置に関する走査位置検出データと、MEMSスキャナ20を主走査方向Hに実際に共振させた際の共振周波数である実測主共振周波数データと、MEMSスキャナ20を副走査方向Vに実際に共振させた際の共振周波数である実測副共振周波数データと、を含むデータである。
【0032】
コントローラユニット300は、マイクロコントローラ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などからなり、入力処理部310と、メモリ制御部320と、フレームバッファ330と、表示制御部340と、を備え、車両ECU5から入力される画像信号に基づき、LD制御部100及びMEMS制御部200を介して、LD(光源11r、光源11g、光源11b)及びMEMSスキャナ20を制御することで、画像信号に基づく画像Mを透過スクリーン40上に生成させる。なお、本発明の制御部は、LD制御部100とMEMS制御部200とコントローラユニット300とで構成される。
【0033】
入力処理部310は、車両ECU5から画像信号を入力し、そのデータを処理して、コントローラユニット300内の処理に適した形式にする。
【0034】
メモリ制御部320は、入力処理部310にて変換されたフレームデータを、フレームバッファ330にそれぞれ記憶させる。フレームバッファ330は、DRAMやSRAMなどの揮発性メモリやフラッシュメモリなどの書き換え可能な不揮発性メモリなどで構成される。
メモリ制御部320は、さらに表示制御部340からの命令があり次第、フレームバッファ330からフレームデータを取り出して表示制御部340に出力して、表示制御部340は、表示制御部340内のバッファメモリ341に記憶させる。
【0035】
表示制御部340は、予め記憶されたプログラムデータを実行することで、LD制御部100に対してLD駆動信号を出力し、さらにMEMS制御部200に対して走査制御信号を出力することで、光源11r,11g,11b及びMEMSスキャナ20を制御して透過スクリーン40上に表示画像Mを生成させる。
【0036】
以上が、本実施形態に係るHUD装置1の構成である。
次に、本実施形態の透過スクリーン40に到達する合成レーザー光500の形状と光強度分布710(720)及び合成レーザー光500が透過スクリーン40を通過した画像光600の配光強度分布810(820)について
図8、
図9を用いて説明する。
図8は、透過スクリーン40と合成レーザー光500との関係及び合成レーザー光500の光強度分布710(720)を説明するための図であり、
図9は、透過スクリーン40から出射される画像光600の配光強度分布810(820)を説明するための図である。
【0037】
集光光学部12で収束光に変換された合成レーザー光500は、MLA41に入射する位置でほぼ最小ビーム径となるように集光される。このビーム径は集光光学部12におけるビーム径と、集光光学部12からMLA41までの距離と、により決定される回折限界である。なお、透過スクリーン40に入射する合成レーザー光500の主走査方向Hのビーム径をDH、副走査方向Vのビーム径をDVと記して、以下の説明を行う。本実施形態の説明におけるビーム径DH(DV)は、合成レーザー光500の主走査方向H(副走査方向V)のピーク強度に対し、1/e
2(13.5%)の強度となる位置までを径と規定している。
【0038】
(主走査について)
主走査方向Hのビーム径DHは、
図8に示すように、MLA41の主走査方向HのピッチdH1よりも小さく、その主走査方向Hにおける光強度分布710は、略ガウシアンと見なせる。MLA41のML41aによって屈折した画像光600は、アパーチャアレイ42の開口部42aを通過して発散し、アイボックス4に向かう。アイボックス4に照射された画像光600の主走査方向Hの配光強度分布810は、
図9に示すように、概ねガウシアンのようにふるまう。主走査方向Hのビーム径DHを、MLA41のピッチdH1よりも小さくすることで、合成レーザー光500が複数のML41aを跨いで入射されにくくなるため、MLA41から出射される画像光600はアイボックス4で干渉縞を生じにくい。
【0039】
本実施形態の主走査では、表示画像Mの1画素を形成する(1つのML41aを走査する)ために、10nsec程度、光源11を駆動する。その間もMEMSスキャナ20は、連続的に主走査方向Hに走査するため、合成レーザー光500が、光源11の駆動期間内で主走査方向HにML41aの略1個分だけ移動する。すると、透過スクリーン40から出射される画像光600の主走査方向Hにおける配光強度分布810のピークが、アイボックス4内でシフトしていく。
【0040】
図10は、ML41aに入射する合成レーザー光500の主走査方向Hにおける位置と、アイボックス4における主走査方向Hにおける配光強度分布810との関係を示す図であり、(a)と(f)、(b)と(g)、(c)と(h)、(d)と(i)、(e)と(j)がそれぞれ対応している。合成レーザー光500が、
図10(a)から(e)に示すように、1つのMLA41を主走査方向Hに走査していくと、
図10(f)から(j)に示すような、それぞれ異なる配光強度分布810(811、812,813,814,815)が得られる。これら異なる配光強度分布810を、ML41aを1個分走査する時間で積分すると、
図11に示すように、アイボックス4の主走査方向Hの全域で略Top−Hatとみなせる、概ね均一な配光強度分布810を形成することができる。
【0041】
(副走査について)
副走査方向Vのビーム径DVは、
図8に示すように、MLA41の副走査方向VのピッチdV1よりも小さく、その副走査方向Vの光強度分布720は、略ガウシアンと見なせる。MLA41のML41aによって屈折した画像光600は、アパーチャアレイ42の開口部42aを通過して発散し、アイボックス4に向かう。アイボックス4に照射された画像光600の副走査方向Vにおける配光強度分布820は、
図9に示すように、概ねガウシアンのようにふるまう。副走査方向Vのビーム径DVを、MLA41のピッチdV1よりも小さくすることで、合成レーザー光500が複数のML41aを跨いで入射されにくくなるため、MLA41から出射される画像光600はアイボックス4で干渉縞を生じにくい。
【0042】
MEMSスキャナ20は、副走査しながら主走査しているため、透過スクリーン40上の走査線は、主走査方向Hと平行にならずに、透過スクリーン40に対して斜めの走査線として形成される(
図4参照)。具体的には、主走査方向Hに1ライン走査する間に、ML41aの概ね1個分だけ副走査方向Vに移動する。そのため、主走査方向Hに1ライン走査する間に、
図12(a),(b),(c)に示すように、ML41aに走査される合成レーザー光500の副走査方向Vの位置が異なり、
図12(f),(g),(h)に示すように、副走査方向Vにおける配光強度分布820のピーク位置がシフトしてしまう。すると、アイボックス4内の所定の位置から虚像Wを視認すると、主走査方向Hに並ぶ画素で、明瞭に視認できる画素と、視認できない画素とが混在し、虚像Wの視認性が低下してしまう。本発明のHUD装置1によれば、以下に説明する走査方法を用いることで、副走査によって生じるアイボックス4における副走査方向Vの配光強度分布820のばらつきを抑制することができる。
【0043】
これより、本発明のMEMSスキャナ20の走査方法について、
図13乃至
図15を用いて説明する。
図13は、副走査位置Yの時間推移を示す。
図14は、透過スクリーン40上に合成レーザー光500が走査される様子を図示した透過スクリーン40の平面図である。また、
図15は、本発明を適用した場合のアイボックス4における副走査方向Vの配光強度分布820を示す図である。
【0044】
本実施形態において、表示画像Mを描画するフレームFは、
図13に示すように、第1サブフレームSF1,第2サブフレームSF2,第3サブフレームSF3の3つのサブフレームSFで構成される。また、それぞれのサブフレームSFは、表示エリア40aを走査し、表示画像Mを生成する実走査期間(第1実走査期間SF1a,第1実走査期間SF2a,第3実走査期間SF3a)と、表示画像Mを生成しない帰線期間(第1帰線走査期間SF1b,第2帰線走査期間SF2b,第3帰線走査期間SF3b)とで構成される。
なお、フレームFは、ヒトがちらつきを視認できる臨界融合周波数(60Hz)以上の1/60秒(人の目の時間分解能)未満に設定される。すなわち、フレームFを構成する第1サブフレームSF1、第2サブフレームSF2、第3サブフレームSF3は、1/180秒未満(180Hz以上)に設定される。
【0045】
まず、第1サブフレームSF1において、表示制御部340は、第1走査開始位置Y1aからMEMSスキャナ20の主走査及び副走査を開始させ、走査位置が表示エリア40aに差し掛かるタイミングで、光源11r,11g,11bを、バッファメモリ341に記憶された第1サブフレームSF1の描画データに基づき点灯制御させ、表示画像Mを描画する。次に、表示制御部340は、MEMSスキャナ20の走査位置が非表示エリア40bに移動した場合、第1帰線走査期間SF1bにおいて、MEMSスキャナ20の走査位置を、第1走査終了位置Y1bから第2走査開始位置Y2aに移動させる(第一の走査の一例)。
続いて、第2サブフレームSF2において、表示制御部340は、第2走査開始位置Y2aからMEMSスキャナ20の主走査及び副走査を開始させ、走査位置が表示エリア40aに差し掛かるタイミングで、光源11r,11g,11bを、バッファメモリ341に記憶された第2サブフレームSF2の描画データに基づき点灯制御させ、表示画像Mを描画する。次に、表示制御部340は、MEMSスキャナ20の走査位置が非表示エリア40bに移動した場合、第2帰線走査期間SF2bにおいて、MEMSスキャナ20の走査位置を、第2走査終了位置Y2bから第3走査開始位置Y3aに移動させる(第二の走査の一例)。
さらに、第3サブフレームSF3において、表示制御部340は、第3走査開始位置Y3aからMEMSスキャナ20の主走査及び副走査を開始させ、走査位置が表示エリア40aに差し掛かるタイミングで、光源11r,11g,11bを、バッファメモリ341に記憶された第3サブフレームSF3の描画データに基づき点灯制御させ、表示画像Mを描画する。次に、表示制御部340は、MEMSスキャナ20の走査位置が非表示エリア40bに移動した場合、第3帰線走査期間SF3bにおいて、MEMSスキャナ20の走査位置を、第3走査終了位置Y3bから第1走査開始位置Y1aに移動させる(第三の走査の一例)。
【0046】
なお、第2走査開始位置Y2aは、第1走査開始位置Y1aから副走査方向V方向に所定の値だけシフトした位置であり、第3走査開始位置Y3aは、第2走査開始位置Y2aから副走査方向V方向に所定の値だけシフトした位置である。第1走査開始位置Y1aから第3走査開始位置Y3aまでの副走査方向V方向へのシフト幅Pは、MLA41の副走査方向VのピッチdVAより小さく設定することが望ましい。
【0047】
また、第1サブフレームSF1の描画データと、第2サブフレームSF2の描画データと、第3サブフレームSF3の描画データとは、同じ描画データであり、第1サブフレームSF1と、第2サブフレームSF2と、第3サブフレームSF3とで同じ表示画像Mを透過スクリーン40上に生成する。
【0048】
斯かる走査方法により、ML41aは、1フレーム中に、複数のサブフレーム(第1サブフレームSF1,第2サブフレームSF2,第3サブフレームSF3)による副走査方向Vに位置の異なる合成レーザー光500を入射することができる。したがって、アイボックス4における副走査方向Vの配光強度分布820は、
図12(a),(b),(c)に示すような異なる位置にピークを持つ配光強度分布820を時間平均した、
図15に示すような副走査方向V方向で概ね均一な配光強度分布820aとすることができる。この走査方法においては、主走査方向Hのビーム径DHを、MLA41のピッチdH1よりも小さくすることで、合成レーザー光500が複数のML41aを跨いで入射されにくくなるため、スペックルと干渉縞を低減し、視認者が視認する虚像Wの画素毎の輝度ムラを抑制することができる。
【0049】
なお、本発明は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。
【0050】
上記実施形態では、1フレーム中に3つのサブフレームSFを用いて、アイボックス4における副走査方向Vの配光強度分布820を実質的に均一化することとしたが、均一化に用いるサブフレーム数は任意である。2つのサブフレームSFまたは4つ以上のサブフレームSFで副走査方向Vにおける配光強度分布820の均一化を行ってもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、フレームFをサブフレームSFに分割し、これらサブフレームSF間で走査位置を副走査方向Vにずらしていたが、連続するフレームF間で操作位置を副走査方向Vにずらしてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、走査位置を副走査方向Vにずらした複数の走査(第一の走査と第二の走査と第三の走査)における描画データを、同じ描画データとしたが、これに限られず、異なる描画データを用いてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、副走査しながら主走査をしていたが、透過スクリーン40上の走査線が主走査方向Hと概ね平行になるように、副走査駆動信号を調整してもよい。例えば、副走査駆動信号を、時間に対して段階的に変化させる信号としてもよい。
【0054】
また、主走査方向Hの1つの走査線は必ずしもMLA41の1つのレンズ行を走査している必要はなく、主走査方向Hに隣り合う2つのレンズ行にまたがって走査してよい。また、サブフレームSF間で主走査方向Hに隣り合うレンズ行にまたがって走査してもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、表示画像Mを拡散するものを透過型のスクリーン(透過スクリーン40)としたが、反射型のスクリーンを適用してもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、透過スクリーン40を、1つのMLA41と、1つのアパーチャアレイ42との組み合わせで構成したものを説明したが、透過スクリーン40を、2つのマイクロレンズアレイからなるDual Micro Lens Arrayで構成してもよい。斯かる構成により、アイボックス4における主走査方向Hの配光強度分布810,副走査方向Vの配光強度分布820をより均一にすることができる。なお、Dual Micro Lens Arrayの構成としては、2つのマイクロレンズアレイの凸面をそれぞれ外側に向けるものや、2つのマイクロレンズアレイの凸面を向かい合わせにするものなどが考えられ、公知の様々なDual Micro Lens Arrayを適用することができる。