(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両ドアのインナーパネルに取り付けられる樹脂製のベースと、前記ベースの内面側に設けられて少なくともインナーハンドルの操作により動作して動力伝達ケーブルを介して前記車両ドアのロック装置に動力を伝達する伝達機構とを備え、
前記ベースは、前記伝達機構が配置される第1部分と、前記動力伝達ケーブルが配置される第2部分と、前記動力伝達ケーブルのアウターケーシング端部を固定する固定部とを有し、
車幅方向において前記第2部分が前記第1部分よりも内方に位置するように前記第1部分と前記第2部分とが段違いに構成され、前記固定部は、前記第1部分と前記第2部分との間の段差部に設けられている、ドア開閉装置。
前記第1部分と前記第2部分との間には中間部分が介在し、前記第1部分、前記第2部分及び前記中間部分は、前記第1部分、前記中間部分、前記第2部分の順に車幅方向内側に向かうように段違いに構成されている
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のドア開閉装置。
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のドア開閉装置と、窓ガラスを昇降させる窓ガラス昇降装置とを備え、前記ベースには、前記窓ガラス昇降装置と前記ドア開閉装置とが配置される、車両ドアモジュール。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1〜
図7を参照して、車両ドアモジュールについて説明する。以下の説明では、車両ドアモジュールの例として、スライド式の車両ドア(スライドドア)に取り付けられる車両ドアモジュール(以下、「スライドドアモジュール30」という。)を挙げる。
【0019】
図1は、車両1を俯瞰した平面図である。
図1では、ステアリングホイール1aの配置側が車両1の前側を示す。なお、スライドドア10が車両本体2に取り付けられた状態で、車両1の上下方向と一致する方向をスライドドアモジュール30の「上下方向DZ」と規定し、車両1の前後方向と一致する方向をスライドドアモジュール30の「前後方向DY」と規定し、車両1の車幅方向と一致する方向をスライドドアモジュール30の「車幅方向DX」と規定する。
【0020】
スライドドア10は、車両本体2の乗降口3に取り付けられる。
スライドドア10は、乗降口3を閉鎖する全閉位置から、乗降口3を全開する全開位置までの範囲で、車両本体2に敷設されたドアレールに沿って移動する。スライドドア10は、全閉位置から車幅方向DXに移動可能に、かつ全閉位置から外側に移動した状態で前後方向DYに移動可能に、車両本体2に取り付けられている。
【0021】
図2は、スライドドア10の内部構造を示す模式図である。
スライドドア10は、アウターパネル11と、インナーパネル12と、インナーパネル12に取り付けられるスライドドアモジュール30と、窓ガラス4とを備えている。インナーパネル12の内側(車内側)には内装パネルが取り付けられる。
【0022】
インナーパネル12は、アウターパネル11の内側に取り付けられる。インナーパネル12には、スライドドアモジュール30が配置される開口部12aが設けられている。窓ガラス4は、インナーパネル12及びスライドドアモジュール30により構成されるインナー部材と、アウターパネル11との間の空間に収容され得る。
【0023】
スライドドア10には、スライドドア10の前側に配置される第1ロック装置13と、スライドドア10の後側に配置される第2ロック装置14と、スライドドア10の下部に配置される第3ロック装置15とが設けられる。第1〜第3ロック装置13〜15は、アウターパネル11とインナーパネル12との間に配置される。各ロック装置13〜15は、ストライカを挿脱可能な状態(以下、「解放状態」という。)と、ストライカを拘束する状態(以下、「拘束状態」という。)とを有する。
【0024】
第1ロック装置13は、車両本体2の乗降口3の前縁部に設けられたストライカ16a(
図1参照)に係合する。
第2ロック装置14は、車両本体2の乗降口3の後縁部に設けられたストライカ16b(
図1参照)に係合する。
【0025】
第3ロック装置15は、車両本体2の乗降口3の下縁部に設けられたストライカ(図示省略)に係合する。
スライドドア10は、全閉位置に位置するとき、第1及び第2ロック装置13,14に拘束される。また、スライドドア10は、全開位置に位置するとき、第3ロック装置15に拘束される。スライドドア10は第1及び第2ロック装置13,14または第3ロック装置15により拘束されることによりその移動が制限される。
【0026】
図3を参照して、スライドドアモジュール30について説明する。
スライドドアモジュール30は、樹脂製のベース31と、窓ガラス4を昇降させる窓ガラス昇降装置40と、第1〜第3ロック装置13〜15を操作するドア開閉装置60とを備える。窓ガラス昇降装置40及びドア開閉装置60は、ベース31に取り付けられている。
【0027】
ベース31は樹脂で成形される。例えば、ベース31は、発泡樹脂により形成される。発泡樹脂によれば、発泡しない樹脂に比べて、ベース31の厚みを増すことができ、これによりベース31の強度及び剛性が高まる。
【0028】
窓ガラス昇降装置40は、窓ガラス4を牽引する第1及び第2ケーブル41,42と、第1及び第2ケーブル41,42を巻くドラム43と、ドラム43と協働して第1及び第2ケーブル41,42を張るプーリ44と、ドラム43を回転させる窓ガラス昇降用モータ45と、窓ガラス4の下端に取り付けられるキャリア46とを備える。
【0029】
ドラム43及びプーリ44は、ベース31の外面に配置される。窓ガラス昇降用モータ45は、ベース31の内面(車幅方向DXにおける車内側の面。以下、同じ。)に配置される。窓ガラス昇降用モータ45とドラム43とは減速機47を介して接続される。なお、減速機47の出力軸は、ベース31に設けられた貫通孔を挿通して、ドラム43に接続される。
【0030】
第1ケーブル41はプーリ44で折り返されるように張られる。第1ケーブル41の一端はドラム43に、他端はキャリア46に接続される。
第2ケーブル42は、キャリア46に対して第1ケーブル41とは反対方向に延びるように張られる。第2ケーブル42の一端はキャリア46に、他端はドラム43に接続される。
【0031】
ドラム43の回転により第1ケーブル41または第2ケーブル42がドラム43に巻かれると、第1ケーブル41及び第2ケーブル42の移動に伴ってキャリア46が移動する。これにより、窓ガラス4が所定移動範囲内で昇降する。
【0032】
ドア開閉装置60は、インナーハンドル61と、ロッキングアクチュエータ63と、各種の動作に基づいて第1〜第3ロック装置13〜15を動作させる伝達機構65とを備える。スライドドア10の外側に取り付けられるアウターハンドル62(
図2参照)はドア開閉装置60に接続される。インナーパネル12に取り付けられる後述のリリースアクチュエータ64(
図2参照)は、第4動力伝達ケーブル20を介して伝達機構65に接続される。
【0033】
インナーハンドル61は、回転可能にスライドドアモジュール30のベース31に取り付けられている。インナーハンドル61は、内装パネルから車幅方向DXの内側(座席側)に突出するように設けられている。
【0034】
第1の所定操作(以下、「閉操作」という。)によりインナーハンドル61が第1方向D1に回転するとき、この回転動作が伝達機構65を介して第3ロック装置15に伝達され、伝達された動力により第3ロック装置15が動作し、これにより、第3ロック装置15が解放状態になる。例えば、スライドドア10が全開位置で第3ロック装置15により拘束されているとき、インナーハンドル61の閉操作によりスライドドア10が移動可能になる。
【0035】
第2の所定操作(以下、「開操作」という。)によりインナーハンドル61が第2方向D2に回転するとき、この回転動作が伝達機構65を介して第1及び第2ロック装置13,14に伝達され、伝達された動力により第1及び第2ロック装置13,14それぞれが動作し、これにより、第1及び第2ロック装置13,14が解放状態になる。例えば、スライドドア10が全閉位置で第1及び第2ロック装置13,14により拘束されているとき、インナーハンドル61の開操作によりスライドドア10が移動可能になる。
【0036】
アウターハンドル62(
図2参照)は、回転可能にアウターパネル11の外面に取り付けられている。アウターハンドル62の回転動作は、レバー及びポールを介して伝達機構65に伝達される。
【0037】
引き操作によりアウターハンドル62が所定方向に回転するとき、この回転動力が第1〜第3ロック装置13〜15に伝達され、伝達された動力により第1〜第3ロック装置13〜15が動作し、これにより、第1〜第3ロック装置13〜15が解放状態になる。例えば、スライドドア10が全閉位置または全開位置で拘束されているとき、アウターハンドル62の引き操作によりスライドドア10が移動可能になる。
【0038】
ロッキングアクチュエータ63は、スライドドア10をドアロック状態にする。ドアロック状態とは、インナーハンドル61の開閉操作及びアウターハンドル62の引き操作によっても、スライドドア10を全閉位置から移動させることができない状態を示す。
【0039】
ロッキングアクチュエータ63は、ロッキングスイッチのロックオン操作に基づいて動作し、インナーハンドル61とアウターハンドル62の回転動作を第1〜第3ロック装置13〜15に伝達させない位置に、後述の第2係合ピン88を移動させる。
【0040】
リリースアクチュエータ64は、第1〜第3ロック装置13〜15の解放状態を所定時間だけ維持する。具体的には、リリースアクチュエータ64は、所定条件が成立するときに動作し、この動作により、第4動力伝達ケーブル20を介して後述の第6レバー86を回転させてかつ第5レバー85を介して第1、第3、第4レバー81,83,84を回転させて、第1〜第3ロック装置13〜15を解除状態に維持する。所定条件とは、例えば、インナーハンドル61の開閉操作、またはアウターハンドル62の引き操作が実行されることである。
【0041】
図4を参照して、ドア開閉装置60の伝達機構65を説明する。
伝達機構65は第1〜第6レバー81〜86と、所定のレバー同士を係合し及びレバー同士の係合を解除する第1〜第3係合ピン87〜89とを備える。第1〜第6レバー81〜86は、スライドドアモジュール30のベース31に固定される支軸80に回転可能に取り付けられている。支軸80は、金属製のブラケットを介してベース31に固定される。これら第1〜第6レバー81〜86はばね等により第2回転方向R2(後述の第1回転方向R1と反対回転方向)に付勢されている。
【0042】
第1レバー81は、インナーハンドル61の第1方向D1の回転動作に連動するようにインナーハンドル61に接続され、かつ、第3動力伝達ケーブル19を介して第3ロック装置15に接続されている。すなわち、第1レバー81は、インナーハンドル61の第1方向D1の回転動作に対応して第1回転方向R1に回転して、第3ロック装置15を解除状態にする。なお、第1レバー81の端部81aとベース31に設けられたばね係止部35e(
図5参照)とがコイルばねで接続されることにより、第1レバー81が第2回転方向R2に付勢されている。
【0043】
第2レバー82は、インナーハンドル61の第1方向D1及び第2方向D2の回転動作に連動するようにインナーハンドル61に接続され、かつ、第1係合ピン87を介して第3レバー83に連結される。
【0044】
第3レバー83は、第1係合ピン87を介して第2レバー82に連結され、第2係合ピン88を介して第4レバー84に連結される。
第4レバー84は、第2係合ピン88を介して第3レバー83に連結され、かつ第1及び第2動力伝達ケーブル17,18を介して第1ロック装置13及び第2ロック装置14のそれぞれに接続されている。
【0045】
第5レバー85は、アウターハンドル62の回転動作に連動するようにアウターハンドル62に接続され、かつ第3係合ピン89を介して第6レバー86に連結される。また、第5レバー85は、第1回転方向R1に回転するとき第1レバー81及び第3レバー83に係合する構造を有する。すなわち、アウターハンドル62の回転動作により第5レバー85が第1回転方向R1に回転するときは、これに連動して第1レバー81及び第3レバー83が第1回転方向R1に回転する。
【0046】
第6レバー86は、リリースアクチュエータ64に第4動力伝達ケーブル20を介して接続され、かつ第3係合ピン89を介して第5レバー85に連結される。
すなわち、リリースアクチュエータ64により第6レバー86が回転するときは、これに連動して第5レバー85が回転する。
【0047】
第1係合ピン87は、チャイルドロックスイッチの所定の操作(チャイルドロック操作)に基づいて移動して、第2レバー82と第3レバー83とを互いに連結状態または非連結状態にする。なお、連結状態とは、第2レバー82と第3レバー83とが連動する状態を示し、非連結状態とは、第2レバー82と第3レバー83とが互いに独立して回転する状態を示す。以下の説明においても同様である。
【0048】
第2係合ピン88は、ロッキングスイッチのロックオン操作またはロックオフ操作に基づくロッキングアクチュエータ63の動作により移動して、第3レバー83と第4レバー84とを連結状態または非連結状態にする。
【0049】
第3係合ピン89は、第5レバー85と第6レバー86とを互いに連結する位置に配置される。そして、所定操作に基づいて、第3係合ピン89は、第5レバー85と第6レバー86とを連結しない位置(以下、「非係合位置」という。)に移動する。なお、第3係合ピン89を非係合位置に移動させるために所定操作が行われるのは、例えば、リリースアクチュエータ64が動作しなくなるとき等、第5レバー85と第6レバー86とを独立させて回転動作させる必要が生じた場合である。
【0050】
伝達機構65は、次のように動作する。
インナーハンドル61が第1方向D1に回転するとき、第1レバー81が第1回転方向R1に回転する。第1レバー81の回転により、第1レバー81の動力が第3動力伝達ケーブル19を介して第3ロック装置15に伝達されて、第3ロック装置15が動作し、第3ロック装置15が解除状態になる。すなわち、インナーハンドル61を第1方向D1に回転させることにより、全開位置で第3ロック装置15により拘束されているスライドドア10が移動可能になる。
【0051】
インナーハンドル61が第2方向D2に回転するとき、第2レバー82が第1回転方向R1に回転する。第1係合ピン87及び第2係合ピン88を介して第2レバー82と第3レバー83と第4レバー84とが連結されている場合は、第2レバー82の回転に連動して第4レバー84が回転する。第4レバー84の動力は第1及び第2動力伝達ケーブル17,18を介して第1及び第2ロック装置13,14に伝達されて、第1及び第2ロック装置13,14が解除状態になる。すなわち、インナーハンドル61を第2方向D2に回転させることにより、全閉位置で第1及び第2ロック装置13,14により拘束されているスライドドア10が移動可能になる。
【0052】
第2レバー82と第3レバー83とが非連結であること、及び第3レバー83と第4レバー84とが非連結であることのうちの少なくとも一方が成立する場合は、第2レバー82の回転動作が第4レバー84に伝達されないため、インナーハンドル61が第2方向D2に回転するときでも、第1及び第2ロック装置13,14が動作しない。このため、この場合は、スライドドア10が全閉位置にあるときにインナーハンドル61を第2方向D2に回転させたとしても、第1及び第2ロック装置13,14によるスライドドア10の拘束状態が維持される。
【0053】
アウターハンドル62が回転するとき、第5レバー85が第1回転方向R1に回転する。第5レバー85が第1回転方向R1に回転するときは第5レバー85が第1レバー81及び第3レバー83に係合するため、第5レバー85に連動して第1レバー81及び第3レバー83が回転する。第3レバー83と第4レバー84とが連結されているときは、第5レバー85に連動して第1レバー81及び第4レバー84が動作する。第1レバー81の動作は、第3動力伝達ケーブル19を介して第3ロック装置15に伝達されて、第3ロック装置15が解放状態になる。第4レバー84の動作は、第1及び第2動力伝達ケーブル17,18を介して第1及び第2ロック装置13,14に伝達されるため、第1及び第2ロック装置13,14が解放状態になる。すなわち、第1〜第3ロック装置13〜15が解放状態になり、全閉位置または全開位置で拘束されているスライドドア10が移動可能になる。第3レバー83と第4レバー84とが連結されていないときは第4レバー84が回転動作しないため、スライドドア10が全閉位置にあるときにアウターハンドル62を回転させたとしても第1及び第2ロック装置13,14によるスライドドア10の拘束状態が維持される。
【0054】
また、インナーハンドル61またはアウターハンドル62が回転動作するときは、リリースアクチュエータ64が動作して、第6レバー86が回転する。第6レバー86の回転に伴って第5レバー85が第1回転方向R1に回転するため、これに連動して、第1〜第3ロック装置13〜15の解除状態が所定時間だけ維持される。これにより、第1〜第3ロック装置13〜15が所定時間にわたって解放状態になるため、全閉位置または全開位置で拘束されている状態からのスライドドア10の移動が円滑になる。
【0055】
図3を参照して、各装置の配置について説明する。
ベース31には、上縁を切欠いたような構造の切欠き部32が設けられている。切欠き部32には窓ガラス昇降装置40のプーリ44を支持する支持部33が突出するように設けられている。
【0056】
ベース31の上方部であって切欠き部32付近には、各装置から延びる配線及び動力伝達ケーブル17〜20を案内する案内溝34が設けられている。案内溝34は、ベース31の外面から車幅方向DXの内側に窪むように構成される。
【0057】
ベース31の中央下部における内面側には、窓ガラス昇降用モータ45及び減速機47が配置され、その外面側には、窓ガラス昇降装置40のドラム43が配置される。
ベース31の上方前部の内面側には、インナーハンドル61、ドア開閉装置60、及び動力伝達ケーブル17〜20の一部分が配置される。
【0058】
図5〜
図7を参照して、ベース31の上方前部の構造について説明する。
ベース31の上方前部は、ドア開閉装置60の伝達機構65が配置される第1部分31aと、第1部分31aの周囲に配置される中間部分31cx,31cy,31czと、中間部分31cx,31cyの後方(中間部分31cx,31cyにおける第1部分31a側とは反対側)に配置される第2部分31bx,31byとを有する。第2部分31bx,31byは、2つの部分に区画されている。
【0059】
一方の第2部分31bxには、第1及び第2動力伝達ケーブル17,18が配置される。他方の第2部分31byには、第3及び第4動力伝達ケーブル19,20が配置される。なお、一方の第2部分31bxは、他方の第2部分31byの上方に位置する。
【0060】
中間部分31cxには、第2回転方向R2への第4レバー84の回転を所定位置で規制するストッパ31sが設けられている。
中間部分31cyには、伝達機構65のレバーの回転位置を検出するための位置検出スイッチ66(
図3参照)が配置される。中間部分31cyには、位置検出スイッチ66をねじで固定するための固定ボス31d、及び位置検出スイッチ66を位置決めする位置決め用ボス31eが設けられている。位置決め用ボス31eは、ベース31から突出する。位置決め用ボス31eの端面には、位置検出スイッチ66から突出する突起を収容する孔が設けられる。なお、この構成に代えて、位置決め用ボス31eは、孔を有しない突起として設けられ得る。この場合は、位置決め用ボス31eは、2個の固定ボス31dを結ぶ連結線上に配置されて、位置検出スイッチ66の突起と係合するように構成される。このような位置決め用ボス31eは、ねじ締結時における位置検出スイッチ66の回転を止め、位置検出スイッチ66を適切な角度で位置決めする。
【0061】
中間部分31czは、伝達機構65の各レバー81〜86のうちで最も外側に配置されるレバー、すなわち第3レバー83の外側面(ベース31側の面)を支持する。例えば、中間部分31czは、第3レバー83が回転するとき、第3レバー83の外側面が中間部分31czに摺れるように構成される。あるいは、中間部分31czは、支軸80が傾いたときに第3レバー83の外側面が中間部分31czに接触するように、構成される。
【0062】
図6(a)〜
図6(c)に示されるように、第1部分31a、中間部分31cx,31cy、31cz及び第2部分31bx,31byは、互いに段違いに構成され、この順で、車幅方向DX内側に向かうように配列されている。すなわち、中間部分31cx,31cyは第1部分31aよりも車幅方向DX内側に配置され、第2部分31bx,31byは中間部分31cx,31cy,31czよりも車幅方向DX内側に配置される。
【0063】
第2部分31bx,31byと中間部分31cx,31cyとの間の段差部36a,36bには、車幅方向DX内側に突出するように、アウターケーシングの端部(以下、「アウターケーシング端部」という。)を固定するための第1〜第4固定部35a〜35d、及び上述のばね係止部35eが設けられている。第1〜第4固定部35a〜35d及びばね係止部35eは、ベース31と一体に樹脂成形される。なお、第1〜第4固定部35a〜35d及びばね係止部35eは、伝達機構65の後方側に配置されている。
【0064】
第1〜第4固定部35a〜35dには第1〜第4動力伝達ケーブル17〜20がそれぞれ固定される。第1〜第4固定部35a〜35dと第1〜第4動力伝達ケーブル17〜20とは対応付けられているが、取付ミスが発生し得る。このため、第1〜第4固定部35a〜35dそれぞれの付近(第2部分31bx,31by)には、固定対象のケーブルを示す表示が刻印されている。例えば、第1〜第4動力伝達ケーブル17〜20が色分けされている場合には、固定対象のケーブルの色を示す文字が刻印される。
【0065】
ところで、アウターケーシング端部の固定構造として、次のような参考例が考えられる。
図6(a)の2点鎖線に示されるように、固定部35xは、第1部分31aの延長部分から突出するように設けられ得る(例えば、リブとして構成され得る。)。しかし、この場合の固定部35xは、本実施形態に示した第1〜第4固定部35a〜35dに比べて車幅方向DXに長くなる。このため、インナーケーブルがアウターケーシングから引き出されるときに固定部35xの基部に加わる力が大きくなるとき、固定部35xが折れたり曲がったりするおそれがある。この点、上記の第1〜第4固定部35a〜35dは、段差部36a,36bに設けられることにより参考例の固定部35xに比べて短くなっていることから、このような折れや曲がりの発生が抑制される。
【0066】
図7に示されるように、第1〜第4固定部35a〜35dは、アウターケーシング端部が係合する係合部351と、係合部351を補強する補強部352とを有する。係合部351には、アウターケーシング端部が嵌る係合凹部353が設けられている。補強部352は、動力伝達ケーブル17〜20の延長方向に沿って延びる。この補強部352は、第1〜第4固定部35a〜35dが倒れたり屈曲したりすることを抑制する。
【0067】
図5に示されるように、第1及び第2動力伝達ケーブル17,18が配置される第2部分31bxの段差部(以下、「第1段差部36a」という。)には、第1固定部35aと第2固定部35bとが隣接して配置される。また、この第2部分31bxには、第1及び第2動力伝達ケーブル17,18が配置される部分の両側に側壁37a,37bが設けられている(
図7参照)。これら側壁37a,37bは、車幅方向DX内側に突出しかつこれら動力伝達ケーブル17,18の延長方向に沿うように設けられている。そして、一対の側壁37a,37bの伝達機構65側の端部は第1及び第2固定部35a,35bにより互いに繋がれている(
図5参照)。
【0068】
また、第3及び第4動力伝達ケーブル19,20が配置される第2部分31byの段差部(以下、「第2段差部36b」という。)には、第3固定部35cと第4固定部35dとが離れて配置される。また、この第2部分31byには、第3及び第4動力伝達ケーブル19,20が配置される部分の両側に側壁37b,37cが設けられている(
図7参照)。これら側壁37b,37cは、第2部分31byに対して車幅方向DX外側に突出しかつこれら動力伝達ケーブル19,20の延長方向に沿うように設けられている。そして、一対の側壁37b,37cの伝達機構65側の端部は壁(第2段差部36b)で繋がれている(
図5参照)。
【0069】
なお、本実施形態では、第1及び第2動力伝達ケーブル17,18が配置される第2部分31bxと、第3及び第4動力伝達ケーブル19,20が配置される第2部分31byとの間に設けられた側壁37bは、前者の第2部分31bxの側壁であり、かつ後者の第2部分31byの側壁でもある。
【0070】
また、
図5に示されるように、第1段差部36aと第2段差部36bとは互いに接続されて、屈曲する壁(屈曲壁)を構成する。例えば、第1段差部36aと第2段差部36bとにより構成される壁は、第3固定部35cの近傍で屈曲する。
【0071】
次に、本実施形態に係るスライドドアモジュール30の効果を説明する。
(1)上記実施形態では、ベース31が樹脂により形成されている。
ベース31は、伝達機構65が配置される第1部分31aと、第1及び第2動力伝達ケーブル17,18が配置される第2部分31bxと、第1及び第2動力伝達ケーブル17,18のアウターケーシング端部を固定する第1及び第2固定部35a,35bとを有する。第1部分31aと第2部分31bxとが段違いに構成され、車幅方向DXにおいて第2部分31bxが第1部分31aよりも内方に位置する。そして、第1及び第2固定部35a,35bが第1段差部36aに設けられている。
【0072】
また、ベース31は、更に、第3及び第4動力伝達ケーブル19,20が配置される第2部分31byと、第3及び第4動力伝達ケーブル19,20のアウターケーシング端部を固定する第3及び第4固定部35c,35dとを有する。第1部分31aと第2部分31byとが段違いに構成され、車幅方向DXにおいて第2部分31byが第1部分31aよりも内方に位置する。そして、第3及び第4固定部35c,35dは、第2段差部36bに設けられている。
【0073】
この構成によれば、ベース31が樹脂製であるため、従来構造のスライドドアモジュール30に比べてスライドドアモジュール30(車両ドアモジュール)が軽量である。
また、アウターケーシング端部を固定する第1〜第4固定部35a〜35dが第1及び第2段差部36a,36bに設けられているため、第1〜第4固定部35a〜35dが第1部分31aと同じ位置に設けられる構造(
図6(a)の2点鎖線参照)に比べて、第1〜第4固定部35a〜35dの長さ(車幅方向DXの長さ)が短くなる。
【0074】
動力伝達ケーブル17〜20のインナーケーブルがアウターケーシングから引き出されるとき固定部35a〜35dに力が加わるが、上記構成のように固定部35a〜35dが短いときは固定部35a〜35dの基部に加わる力が小さくなるため、固定部35a〜35dの折れや屈曲が抑制される。これにより、インナーハンドル61の操作の累積回数の増大に伴って生じる可能性がある固定部35a〜35dの劣化が抑制されるようになる。
【0075】
(2)上記実施形態では、第2部分31bxには、動力伝達ケーブル17,18の延長方向に沿う一対の側壁37a,37bが設けられ、一対の側壁37a,37bの伝達機構65側の端部は、第1及び第2固定部35a,35bで繋がれている。同様に、第2部分31byには、動力伝達ケーブル19,20の延長方向に沿う一対の側壁37b,37cが設けられ、一対の側壁37b,37cの伝達機構65側の端部は、第2段差部36b(壁)で繋がれている。
【0076】
この構成によれば、第2部分31bxと一対の側壁37a,37bと第1及び第2固定部35a,35bとにより、一方の面が開放された箱構造が構成される。同様に、第2部分31byと一対の側壁37b,37cと第2段差部36bとにより、一方の面が開放された箱構造が構成される。このような箱構造により、第2部分31bx,31byの全体が補強されるため、インナーケーブルの引き出し等により生じ得るベース31の変形が抑制される。
【0077】
(3)上記実施形態では、一対の側壁37a,37b(37b,37c)が動力伝達ケーブル17,18(19,20)に沿うように延びる。
伝達機構65により動力伝達ケーブル17,18(19,20)のインナーケーブルがアウターケーシングから引き出されるとき、第1及び第2固定部35a,35bには、動力伝達ケーブル17,18(19,20)の延長方向に沿う方向の応力が加わる。
【0078】
上記構成では、側壁37a,37b(37b,37c)が動力伝達ケーブル17,18(19,20)に延びるため、応力が側壁37a,37b(37b,37c)の延長方向に作用する。すなわち、第2部分31bx(31by)において剛性が高い方向(側壁37a,37b,37cの延長方向)に力が作用するようになるため、第2部分31bx(31by)の変形が抑制される。
【0079】
(4)上記実施形態では、ベース31の第1部分31aと第2部分31bx,31byとの間には中間部分31cx、31cyが介在する。これらの部分は、第1部分31a、中間部分31cx,31cy、第2部分31bx,31byの順に車幅方向DX内側に向かうように段違いに構成されている。
【0080】
段差部36a,36bが長い場合、段差部36a,36bでの変形または捩れが大きくなって固定部35a〜35dの向きが変化し、インナーケーブルの摺動性(円滑な移動)が低下するおそれがある。この点、上記構成では、第1部分31aと第2部分31bx,31byとの間に中間部分31cx,31cyが介在することにより、個々の段差部36a,36bの長さ(車幅方向DXの長さ)が短くなるため、段差部36a,36bの変形が抑制されるようになり、インナーケーブルの摺動性の低下が抑制されるようになる。
【0081】
(5)上記実施形態では、ベース31には複数個の固定部35a〜35dが設けられ、第1段差部36aと第2段差部36bとは互いに接続されて屈曲壁が構成される。
伝達機構65によりインナーケーブルがアウターケーシングから引き出されるとき固定部35a〜35dに力が加わる。この力が段差部36a,36bに伝達することにより段差部36a,36bが変形すると、固定部35a〜35dの位置がずれて、インナーケーブルの摺動性が低下するおそれがある。
【0082】
この点、上記構成によれば、第1段差部36aと第2段差部36bとにより直線状に延びる壁が構成されるのではなく、第1段差部36aと第2段差部36bとにより途中で屈曲した壁が構成される。このため、インナーケーブルがアウターケーシングから引き出されるときに作用する力が第1及び第2段差部36a,36bの一方に伝達されるとき、その力が屈曲部分で分散されるようになるため、他方の段差部36a,36bの変形や曲がりが抑制され、固定部35a〜35dの位置がずれることが抑制される。これにより、インナーケーブルの摺動性が低下することが抑制されるようになる。
【0083】
(6)上記実施形態では、スライドドアモジュール30(車両ドアモジュール)は、ドア開閉装置60と窓ガラス昇降装置40とを備え、ベース31に、窓ガラス昇降装置40とドア開閉装置60とが配置される。
【0084】
この構成では、ベース31に窓ガラス昇降装置40とドア開閉装置60とが配置されているため、これらの装置を個別にインナーパネル12に取り付ける場合に比べて、インナーパネル12にこれら装置を取り付ける作業が簡単になる。
【0085】
なお、その他の実施形態を説明する。
・上記実施形態において、スライドドアモジュール30のベース31には、上記に示した装置とは別の装置が取り付けられ得る。例えば、音響用のスピーカユニットが取り付けられ得る。
【0086】
・上記実施形態では、ドア開閉装置60は複数本のレバー81〜86を備えるが、ドア開閉装置60の構造はこれに限定されない。また、インナーハンドル61の構造も実施形態に限定されない。
【0087】
・上記実施形態では、スライドドアモジュール30を例に挙げて説明したが、本技術は、モジュール化されていないドア開閉装置にも適用される。例えば、ドア開閉装置は、樹脂製のベース31と、ドア開閉装置60と、動力伝達ケーブル17〜20を固定するための固定部とを備える。固定部は実施形態に準じた構造にされる。このようなドア開閉装置によれば、上記(1)〜(5)に準じた効果が得られる。