(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6409546
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20181015BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20181015BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20181015BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20181015BHJP
H01M 4/70 20060101ALI20181015BHJP
H01M 2/26 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/052
H01M4/13
H01M4/66 A
H01M4/70 A
H01M2/26 A
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-250123(P2014-250123)
(22)【出願日】2014年12月10日
(65)【公開番号】特開2016-110947(P2016-110947A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】水谷 英二
(72)【発明者】
【氏名】奥田 元章
(72)【発明者】
【氏名】秋山 泰有
【審査官】
宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−116080(JP,A)
【文献】
特開2014−220196(JP,A)
【文献】
特開2014−107218(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/192285(WO,A1)
【文献】
国際公開第2012/137917(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05−10/0587
H01M 10/04
H01M 2/20− 2/34
H01M 4/64− 4/84
H01M 4/13− 4/1399
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延された金属箔から形成された長方形状の集電体と、前記集電体の長辺から突出するタブ部と、を有し、前記金属箔の圧延方向が前記集電体の短辺方向に沿っている複数の電極を用意する工程と、
前記複数の電極を、前記集電体の短辺方向が鉛直方向に沿った状態で積層する工程と、を備えるリチウムイオン二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載されたリチウムイオン二次電池は、圧延された金属箔から形成された長方形状の集電体と、集電体の短辺から突出するタブ部と、を有する複数の電極を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−54339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のリチウムイオン二次電池において、集電体の短辺方向が鉛直方向に沿うように電極を配置した場合、集電体が自重により短辺方向にたわんでしまうことがある。この場合、電極の配置位置が目標位置からずれてしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、集電体のたわみを抑制できるリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係るリチウムイオン二次電池は、少なくとも一対の電極を備えるリチウムイオン二次電池であって、電極は、圧延された金属箔から形成された長方形状の集電体と、集電体の長辺から突出するタブ部と、を有し、電極は、集電体の短辺方向が鉛直方向に沿うように配置されており、金属箔の圧延方向は、集電体の短辺方向に沿っている。
【0007】
このリチウムイオン二次電池では、金属箔の圧延方向が集電体の短辺方向に沿っている。圧延された金属箔は、圧延方向と直交する方向と比較して、圧延方向に沿う方向に曲がり難い。したがって、このリチウムイオン二次電池では、集電体が短辺方向に曲がり難くなっている。このため、集電体の短辺方向が鉛直方向に沿うように電極を配置したとしても、集電体が自重により短辺方向にたわむことが抑制される。
【0008】
また、本発明の一側面に係るリチウムイオン二次電池では、集電体とタブ部とは、一体に形成されていることが好ましい。この場合、部品点数を削減できると共に、集電体とタブ部とを接続する工程を省略できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、金属箔のたわみを抑制できるリチウムイオン二次電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の模式的断面図である。
【
図2】
図2は、
図1のII−II線における模式的断面図である。
【
図3】
図3中の(a)(
図3(a))は、負極の模式的斜視図であり、
図3中の(b)(
図3(b))は、集電体及びタブ部の模式的正面図であり、
図3中の(c)(
図3(c))は、
図3(b)のC部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池1の模式的断面図である。
図2は、
図1のII−II線における模式的断面図である。
図3(a)は、負極30の模式的斜視図であり、
図3(b)は、集電体32及びタブ部34の模式的正面図であり、
図3(c)は、
図3(b)のC部の拡大図である。
図1及び
図3(b)において、矢印Dは鉛直方向を示している。
【0013】
図1及び
図2に示すように、リチウムイオン二次電池1は、ケース10と電極組立体20とを備えている。ケース10は、例えば略直方体状の筐体である。ケース10は、例えばアルミニウム等の金属から形成されている。ケース10は、鉛直上方に開口した本体部12と、本体部12の開口を塞ぐ蓋部14と、を有している。
【0014】
電極組立体20は、ケース10内に収容されている。電極組立体20は、負極30及び正極40(一対の電極)と、負極30と正極40との間に配置されたセパレータ50と、を有している。負極30及び正極40は、互いの間にセパレータ50を介しつつ、水平方向に沿って交互に積層されている。セパレータ50は、例えば微多孔膜であり、電解液を保持している。電解液は、例えば有機溶媒系又は非水系の電解液である。また、ケース10の内部の空間は、電解液で満たされていてよい。
【0015】
図3(a)及び
図3(b)に示すように、負極30は、長方形状の集電体32と、タブ部34と、を有している。集電体32及びタブ部34は、金属箔(例えば銅箔)から形成されている。タブ部34は、例えば長方形状(矩形状)である。タブ部34は、集電体32の長辺32Aから突出している。より具体的には、タブ部34は、集電体32の長辺方向(長辺32Aが延びる方向)における一方側から突出している。また、タブ部34は、集電体32の短辺方向(短辺32Bが延びる方向)に沿って鉛直上方へ突出している。タブ部34は、タブ部34の長辺方向が集電体32の短辺方向に沿うように設けられている。この例では、集電体32とタブ部34とは、一体に形成されている。具体的には、集電体32及びタブ部34は、例えば、圧延された金属箔から一括して切り出されることにより形成されている。
【0016】
図1に示すように、負極30は、集電体32の短辺方向が鉛直方向Dに沿うように配置されている。負極30は、タブ部34において導電部材60に電気的に接続されている。この導電部材60は、ケース10の蓋部14を貫通するように配置された負極端子62に電気的に接続されている。すなわち、負極30は、導電部材60を介して負極端子62に電気的に接続されている。蓋部14と負極端子62との間は、絶縁部材64A及び絶縁部材64Bによって絶縁されている。
【0017】
また、負極30は、集電体32を覆う負極活物質層36を有している。負極活物質層36は、集電体32の片面又は両面を覆ってよく、この例では両面を覆っている。負極活物質層36は、例えば、グラファイト若しくはハードカーボン等の炭素系材料、リチウムと合金化する元素(Sn若しくはSi)、リチウムと合金化する元素を有する元素化合物、又は、ポリアセチレン若しくはポリピロール等の高分子材料から形成される。負極活物質層36は、集電体32に活物質ペーストを塗工し、乾燥させることにより形成される。
【0018】
集電体32及びタブ部34は、上述したように、圧延された金属箔から形成されている。ここで、
図3(b)及び
図3(c)に示すように、集電体32及びタブ部34を構成する金属箔の圧延方向Rは、集電体32の短辺方向に、すなわち鉛直方向Dに沿っている。金属箔の圧延方向とは、圧延工程において、一対のロール間に金属箔を通過させて加圧する際に金属箔が延びる方向を意味する。金属箔の圧延方向Rと鉛直方向Dとは、例えば平行であってもよい。つまり、金属箔の圧延方向Rと鉛直方向Dとは、一致していてもよい。なお、負極30は、例えば、圧延された金属箔から切り出された集電体32上に活物質ペーストを塗工し、乾燥させることにより形成されてもよい。或いは、負極30は、活物質ペーストが塗工された金属箔を一対のロール間に通過させて圧延した後、金属箔を集電体32及びタブ部34の形状に切り出すことにより形成されてもよい。
【0019】
図3(c)に示すように、圧延された金属箔においては、金属箔を構成する結晶粒70が圧延方向Rに沿って延ばされている。これにより、例えば、圧延方向Rの結晶粒径(圧延方向における結晶粒70の最大長さ)が、圧延方向Rと直交する方向の結晶粒径(圧延方向と直交する方向における結晶粒70の最大長さ)よりも長くなっている。金属箔の圧延方向Rは、結晶粒70の配向方向と言い換えてもよい。
【0020】
続いて、正極40について説明する。正極40は、負極30と左右対称な形状を有している。以下、正極40について、負極30と異なる点について説明し、同一である点については説明を省略する。
【0021】
正極40は、長方形状の集電体と、タブ部44と、を有している。正極40の集電体及びタブ部44は、金属箔(例えばアルミニウム箔)から形成されている。正極40では、タブ部44は、集電体の長辺方向における他方側(負極30のタブ部34が突出する側と反対側)から突出している。正極40は、導電部材60を介して正極端子66に電気的に接続されている。蓋部14と正極端子66との間は、絶縁部材64A及び絶縁部材64Bによって絶縁されている。また、正極40は、集電体を覆う正極活物質層46を有している。正極活物質層46は、集電体の片面又は両面を覆ってよく、この例では両面を覆っている。正極活物質層46は、例えば、リチウム及び遷移金属を含む複合酸化物(Li、Ni、Co及びMnを含む酸化物等)から形成される。
【0022】
以上説明したリチウムイオン二次電池1の作用効果を説明する。以下、負極30を参照して説明するが、正極40についても同様の作用効果を奏する。
【0023】
リチウムイオン二次電池1では、集電体32を構成する金属箔の圧延方向Rが集電体32の短辺方向に沿っている。圧延された金属箔は、圧延方向Rと直交する方向と比較して、圧延方向Rに沿う方向に曲がり難い。したがって、リチウムイオン二次電池1では、集電体32が短辺方向に曲がり難くなっている。このため、集電体32の短辺方向が鉛直方向Dに沿うように負極30(電極)を配置したとしても、集電体32が自重により短辺方向にたわむことが抑制される。
【0024】
特に、リチウムイオン二次電池1では、製造時において負極30及び正極40を積層する際に、並べられた集電体32が自重によって短辺方向にたわんでしまうことが考えられる。この点、リチウムイオン二次電池1によれば、積層時に集電体32がたわんでしまうことを抑制できる。
【0025】
また、リチウムイオン二次電池1では、集電体32とタブ部34とが一体に形成されている。このため、例えば、集電体32とタブ部34とを別部材として用意し、接合等の後工程によって接続する場合と比較して、部品点数を削減できる。また、集電体32とタブ部34とを接続する工程を省略できる。
【0026】
また、リチウムイオン二次電池1では、タブ部34は、集電体32の長辺32Aから鉛直上方へ突出している。したがって、例えば、タブ部34が集電体32の短辺32Bから水平方向へ突出する場合と比較して、ケース10内において電極組立体20の水平方向外側に形成されるデッドスペースを小さくすることができる。
【0027】
また、リチウムイオン二次電池1では、集電体32の短辺方向が鉛直方向Dに沿っており、タブ部34が集電体32の長辺32Aから鉛直上方へ突出している。仮に、集電体32の長辺方向が鉛直方向Dに沿うと共に、タブ部34が集電体32の短辺32Bから鉛直上方へ突出する場合、集電体32の下部とタブ部34との距離が離れるので、集電体32の下部においてはリチウムイオンが流れ難くなる。このため、集電体32の下部が充放電に寄与し難くなる。一方、本実施形態では、集電体32の短辺方向が鉛直方向Dに沿っており、タブ部34が集電体32の長辺32Aから鉛直上方へ突出していることから、集電体32の鉛直方向Dにおける長さを小さくすることができる。つまり、集電体32の下部とタブ部34との距離を近くすることができる。これにより、リチウムイオンを集電体32の下部にまで流れ易くすることができる。
【0028】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではない。
【0029】
例えば、上記実施形態では、負極30及び正極40の双方において、集電体を構成する金属箔の圧延方向が集電体の短辺方向に沿っている例を説明したが、負極30及び正極40(一対の電極)の少なくとも一方において、金属箔の圧延方向が集電体の短辺方向に沿っていればよい。また、集電体32とタブ部34とが一体に形成されておらず、別部材として形成され、後工程において接続されてもよい。この場合、タブ部34は、圧延された金属箔から形成されてもよいし、例えば電解金属箔から形成されてもよい。また、負極30及び正極40の一方のみの集電体が、圧延された金属箔から形成されてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1…リチウムイオン二次電池、10…ケース、20…電極組立体、30…負極(電極)、32…集電体、32A…長辺、32B…短辺、34…タブ部、36…負極活物質層、40…正極(電極)、44…タブ部、46…正極活物質層、50…セパレータ、60…導電部材、62…負極端子、64A,64B…絶縁部材、66…正極端子、70…結晶粒、D…鉛直方向、R…圧延方向。