【文献】
入交昭彦, V.Raicu,全血の誘電挙動からみた赤血球凝集(連銭形成),生物工学会誌,日本,2000年 5月25日,第78巻, 第5号,p.162-165
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のように、生体試料のインピーダンスを測定することにより、生体試料の様々な情報を得たり、生体試料の様態を解析したりすることが行われている。そして、測定精度を高めるためには、生体試料の種類や解析する目的などに応じて、インピーダンスの測定条件などを細かく設定することが非常に重要である。
【0007】
しかし、これまでの装置では、生体試料の種類や解析する目的などに応じて、その都度、測定条件を設定する必要があり、測定精度を高めるためには、条件設定に多くの時間を有する場合があった。
【0008】
そこで、本技術では、生体試料のインピーダンス測定において、生体試料の種類や解析する目的などに応じて、速やかに測定精度を向上させ得る測定装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本技術では、まず、生体試料を保持する一又は複数の生体試料保持部と、
該生体試料保持部に保持された前記生体試料と接触する一対の電極に、交番電圧を印加する印加部と、
該印加部により前記生体試料に交番電圧が印加されることによって得られる前記生体試料のインピーダンスを測定する測定部と、
前記測定部における測定時間および/または測定周波数を制御する測定条件制御部と、
を備える生体試料用インピーダンス測定装置を提供する。
前記測定条件制御部における測定時間の制御では、前記測定部における測定間隔を制御することができる。
前記測定条件制御部における測定時間の制御では、前記測定部における測定終了のタイミングを制御することもできる。
本技術に係る生体試料用インピーダンス測定装置には、前記生体試料保持部における温度を制御する温度制御部を備えることも可能である。
前記生体試料保持部では、前記生体試料が収容された容器を保持することにより生体試料を保持することができる。
本技術に係る生体試料用インピーダンス測定装置には、前記生体試料保持部に前記生体試料を自動的に供給する生体試料供給部を備えることも可能である。
また、本技術に係る生体試料用インピーダンス測定装置には、前記生体試料保持部に1種または2種以上の薬剤を自動的に供給する薬剤供給部を備えることも可能である。
また、前記容器には、予め1種または2種以上の薬剤が収容しておくことも可能である。
本技術に係る生体試料用インピーダンス測定装置を用いて測定可能な前記生体試料としては、血液成分を含有する生体試料を挙げることができる。
本技術に係る生体試料用インピーダンス測定装置には、前記測定部において測定されたインピーダンスの時間的変化から、血液の状態変化を解析する血液状態解析部を備えることが可能である。
また、本技術に係る生体試料用インピーダンス測定装置には、前記測定部の精度の管理を行う精度管理部を備えることも可能である。
更に、本技術に係る生体試料用インピーダンス測定装置には、前記生体試料保持部を動かすための駆動機構を備えることも可能である。
この場合、前記駆動機構は、前記生体試料保持部に保持された前記生体試料にかかる重力の方向を変化させる方向へ前記生体試料保持部を動かすような構成としてもよい。
加えて、本技術に係る生体試料用インピーダンス測定装置には、前記生体試料保持部の内部の撹拌を行う撹拌機構を備えることも可能である。
【0010】
本技術では、次に、生体試料を保持する一又は複数の生体試料保持部と、
該生体試料保持部に保持された前記生体試料と接触する一対の電極に、交番電圧を印加する印加部と、
該印加部により前記生体試料に交番電圧が印加されることによって得られる前記生体試料のインピーダンスを測定する測定部と、
前記測定部における測定時間および/または測定周波数を制御する測定条件制御部と、
前記測定部において測定されたインピーダンスのデータを表示する表示部と、
ユーザーが操作するためのユーザーインターフェースと、
を備える生体試料用インピーダンス測定システムを提供する。
本技術に係る生体試料用インピーダンス測定システムには、前記測定部において測定されたインピーダンスのデータを記憶する記憶部を備えることも可能である。
【発明の効果】
【0011】
本技術に係る生体試料用インピーダンス測定装置は、測定時間および/または測定周波数をオートマチックに制御することができるため、生体試料のインピーダンス測定において、生体試料の種類や解析する目的などに応じて、速やかに測定精度を向上させることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本技術を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。なお、説明は以下の順序で行う。
1.生体試料用インピーダンス測定装置1
(1)生体試料保持部2
(a)容器21
(b)容器保持部22
(2)印加部3
(a)電極31a、31b
(b)接続部32
(3)測定部4
(4)測定条件制御部5
(5)温度制御部6
(6)生体試料供給部7
(7)薬剤供給部8
(8)生体試料S
(9)血液状態解析部9
(10)精度管理部10
(11)駆動機構11
(12)サンプル待機部12
(13)撹拌機構13
2.生体試料用インピーダンス測定システム100
(1)表示部101
(2)ユーザーインターフェース102
(3)記憶部103
【0014】
1.生体試料用インピーダンス測定装置1
図1は、本技術に係る生体試料用インピーダンス測定装置1の概念を模式的に示す模式概念図である。本技術に係る生体試料用インピーダンス測定装置1は、大別して、生体試料保持部2と、印加部3と、測定部4と、測定条件制御部5と、を少なくとも備える。また、必要に応じて、温度制御部6、生体試料供給部7、薬剤供給部8、血液状態解析部9、精度管理部10、駆動機構11、サンプル待機部12、撹拌機構13などを備えることもできる。以下、各部について詳細に説明する。
【0015】
(1)生体試料保持部2
生体試料保持部2は、測定対象の生体試料が保持される部位である。本技術に係る生体試料用インピーダンス測定装置1において、この生体試料保持部2の数は特に限定されず、測定対象の生体試料の量や種類、或いは測定目的などに応じて、一又は複数の生体試料保持部2を自由に配置することができる。
【0016】
本技術に係る生体試料用インピーダンス測定装置1では、生体試料保持部2に生体試料Sを保持した状態で、インピーダンス測定が行われる。そのため、生体試料保持部2は、生体試料Sを保持した状態で密封可能な構成であることが好ましい。ただし、生体試料Sのインピーダンスを測定するのに要する時間停滞可能であって、測定に影響がなければ、気密な構成でなくてもよいものとする。
【0017】
生体試料保持部2への生体試料Sの具体的な導入および密閉方法は特に限定されず、生体試料保持部2の形態に応じて自由な方法で導入することができる。例えば、図示しないが、生体試料保持部2に蓋部を設け、ピペットなどを用いて生体試料Sを導入した後に蓋部を閉じて密閉する方法や、生体試料保持部2の外表面から注射針を穿入し、液体状の生体試料Sを注入した後、注射針の貫通部分を、グリスなどで塞ぐことで、密閉する方法などが挙げられる。
【0018】
生体試料保持部2の形態は、測定対象の生体試料を装置内に保持することができれば特に限定されず、自由な形態に設計することができる。例えば、基板上に設けた一又は複数のセルを生体試料保持部2として機能させたり、一又は複数の容器を生体試料保持部2として機能させたりすることができる。生体試料保持部2の一態様について、
図2を参照しながら説明する。
【0019】
図2は、本技術に係る生体試料用インピーダンス測定装置1における生体試料保持部2の一態様を模式的に示す断面模式図である。
図2で例示する生体試料保持部2は、容器21と容器保持部22から構成されている。
【0020】
なお、本技術に係る生体試料用インピーダンス測定装置1では、容器21として、公知のカートリッジタイプの測定用容器を用いることができるように、容器保持部22を設計すれば、容器保持部22のみで、生体試料保持部2として機能させることも可能である。即ち、本技術に係る生体試料用インピーダンス測定装置1における生体試料保持部2は、容器21のみで構成される場合、容器21および容器保持部22で構成される場合、容器保持部22のみで構成される場合、のいずれも包含する。
【0021】
(a)容器21
本技術に係る生体試料用インピーダンス測定装置1において、生体試料保持部2として容器21を用いる場合、その具体的な形態は特に限定されず、測定対象の生体試料Sを保持可能であれば、円筒体、断面が多角(三角、四角或いはそれ以上)の多角筒体、円錐体、断面が多角(三角、四角或いはそれ以上)の多角錐体、或いはこれらを1種または2種以上組み合わせた形態など、生体試料Sの状態や種類などに応じて自由に設計することができる。
【0022】
また、容器21を構成する素材についても特に限定されず、測定対象の生体試料Sの状態や種類、測定目的などに影響のない範囲で、自由に選択することができる。本技術では特に、加工成形のし易さなどの観点から、樹脂を用いて容器21を構成することが好ましい。本技術において、用いることができる樹脂の種類も特に限定されず、生体試料Sの保持に適用可能な樹脂を、1種または2種以上自由に選択して用いることができる。例えば、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、アクリル、ポリサルホン、ポリテトラフルオロエチレンなどの疎水性かつ絶縁性のポリマーやコポリマー、ブレンドポリマーなどが挙げられる。本技術では、この中でも特に、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル、およびポリサルホンから選ばれる一種以上の樹脂で生体試料保持部2を形成することが好ましい。これらの樹脂は、血液に対して低凝固活性であるという性質を有するため、例えば、血液を含有する生体試料の測定にも好適に用いることができる。
【0023】
(b)容器保持部22
本技術に係る生体試料用インピーダンス測定装置1において、生体試料保持部2として容器保持部22を用いる場合、その具体的な形態は特に限定されず、測定対象の生体試料Sが収容された容器21を保持可能であれば、自由に設計することができる。
【0024】
また、容器保持部22を構成する素材についても特に限定されず、保持する容器21の形態などに応じて、自由に選択することができる。
【0025】
(2)印加部3
印加部3は、生体試料保持部2に保持された生体試料Sと接触する一対の電極31a、31bに、交番電圧を印加する部位である。印加部3は、測定を開始すべき命令を受けた時点または生体試料用インピーダンス測定装置1の電源が投入された時点を開始時点として、一対の電極31a、31bに電圧を印加する。より具体的には、印加部3は、設定される測定間隔または後述する測定条件制御部5において制御された測定間隔ごとに、電極31a、31bに対して、設定される周波数または後述する測定条件制御部5において制御された周波数の交流電圧を印加する。
【0026】
印加部3では、複数対の電極に交番電圧を印加することも可能である。複数対の電極に交番電圧を印加する方法としては、例えば、印加部3を複数備えることにより複数対の電極への交番電圧の印加を同時に行う方法、一つの印加部3を走査させることにより複数対の電極への交番電圧の印加を行う方法、電極を備える生体試料保持部2を移動させることにより複数対の電極への交番電圧の印加を行う方法、印加部3を複数備え、スイッチングにより実際に印加を行う印加部3を一または複数選択する方法などを挙げることができる。
【0027】
(a)電極31a、31b
電極31a、31bは、測定時に生体試料Sと接触し、生体試料Sに必要な電圧を印加するために用いられる。本技術に係る生体試料用インピーダンス測定装置1において、電極部31a、31bの数は、生体試料Sのインピーダンスを測定することが可能であれば特に限定されず、一対以上の電極を自由に配置することができる。
【0028】
また、電極31a、31bの配置や形態なども特に限定されず、生体試料Sに必要な電圧を印加することができれば、前記生体試料保持部2の形態などに応じて、自由に設計することができる。例えば、
図2に示す生体試料保持部2のように、生体試料保持部2(容器21)に電極31a、31bを一体成形することもできるし、図示しないが、容器21の蓋部に電極31a、31bを設け、蓋部で密閉することにより、容器21内に収容された生体試料Sに電極31a、31bを接触させ得る構成とすることもできる。また、測定時に、容器21の外部から一対の電極31a、31bを容器21内に挿入することで、生体試料Sに電極31a、31bを接触させ得る構成とすることもできる。
【0029】
電極31a、31bを構成する素材についても特に限定されず、測定対象の生体試料Sの状態や種類、測定目的などに影響がない範囲で、公知の電気伝導性素材を1種または2種以上自由に選択して用いることができる。例えば、チタン、アルミニウム、ステンレス、白金、金、銅、黒鉛などが挙げられる。本技術では、この中でも特に、チタンを含む電気伝導性素材で電極31a、31bを形成することが好ましい。チタンは、血液に対して低凝固活性であるという性質を有するため、例えば、血液を含有する生体試料の測定にも好適に用いることができる。
【0030】
(b)接続部32
接続部32は、印加部3および/または測定部4と電極31a、31bとを、電気的に接続する部位である。接続部32の具体的な形態は特に限定されず、印加部3および/または測定部4と電極31a、31bとを電気的に接続することが可能であれば、自由な形態に設計することができる。接続部32の一態様について、
図3を参照しながら説明する。
【0031】
図3は、本技術に係る生体試料用インピーダンス測定装置1における接続部32の一態様を模式的に示す断面模式図である。
図3Aは非測定時の様子を、
図3Bは測定時の様子を、それぞれ示す。
図3で例示する接続部32は、非測定時には、印加部3および/または測定部4と電極31a、31bとを非接続状態とし、測定時には、印加部3および/または測定部4と電極31a、31bとを電気的に接続可能となるように構成している。
【0032】
具体的には、容器21および容器21側の接続部32、または、印加部3および/または測定部4側の接続部32、或いは、これら全てを駆動可能に構成する。そして、非測定時には、容器21側の接続部32と印加部3および/または測定部4側の接続部32とを非接触状態とし、測定時には、容器21側の接続部32と印加部3および/または測定部4側の接続部32とを接触状態となるように動かすことで、測定時にのみ、印加部3および/または測定部4と電極31a、31bとを電気的に接続することができる。
【0033】
(3)測定部4
測定部4は、印加部3により生体試料Sに交番電圧が印加されることによって得られる生体試料Sのインピーダンスを測定する部位である。具体的には、測定を開始すべき命令を受けた時点または生体試料用インピーダンス測定装置1の電源が投入された時点を開始時点として、電極31a、31b間における生体試料Sのインピーダンスを測定する。
【0034】
測定したインピーダンスからは、誘電率などを導出することができる。この誘電率の導出には、インピーダンスと誘電率との関係を示す既知の関数や関係式を用いることができる。
【0035】
測定部4において、インピーダンスを測定する周波数帯域は、測定する生体試料の種類、状態、測定目的などに応じて、適宜選択することができる。例えば、生体試料が血液である場合、血液の状態変化に応じて、下記の表1に示す周波数帯域のインピーダンスに変化がみられる。
【0037】
例えば、血液の凝固(凝血)を予測または検知を目的とする場合、周波数1kHz〜50MHzにおいてインピーダンスを測定することが好ましく、周波数3MHz〜15MHzにおいてインピーダンスを測定することがより好ましい。このように、血液の状態や測定目的に応じて、予め、パラメータを設定しておくことで、前記表1に示すような好ましい周波数帯域を自動的に選択可能とすることができる。
【0038】
測定部4では、複数の測定を行うことも可能である。複数の測定を行う方法としては、例えば、測定部4を複数備えることにより複数の測定を同時に行う方法、一つの測定部4を走査させることにより複数の測定を行う方法、前記生体試料保持部2を移動させることにより複数の測定を行う方法、測定部4を複数備え、スイッチングにより実際に測定を行う測定部4を一または複数選択する方法などを挙げることができる。
【0039】
(4)測定条件制御部5
測定条件制御部5は、測定部4における測定時間および/または測定周波数を制御する部位である。
【0040】
例えば、測定時間の制御の具体的な方法としては、目的の解析に必要なデータ量などに応じて、測定間隔の制御を行ったり、測定値がほぼ横ばいになった場合などに、測定終了のタイミングの制御を行ったりすることができる。
【0041】
また、測定対象の生体試料Sの種類や目的の解析に必要な測定値などに応じて、測定周波数の制御を行うことも可能である。測定周波数の制御としては、電極31a、31b間に印加する交流電圧の周波数を変化させたり、複数の周波数を重畳させて、複数の周波数でのインピーダンス測定を行ったりする方法が挙げられる。その具体的方法としては、複数の単周波数アナライザーを並設する方法、周波数をスイープする方法、周波数を重畳させてフィルターで各周波数の情報を抽出する方法、インパルスに対するレスポンスで測定する方法などが挙げられる。
【0042】
(5)温度制御部6
温度制御部6は、生体試料保持部2における温度を制御する部位である。本技術に係る生体試料用インピーダンス測定装置1において、この温度制御部6は必須の部位ではないが、測定対象の生体試料Sを測定に最適な状態に保つためには、備えることが好ましい。
【0043】
また、後述するように、サンプル待機部12を設ける場合、温度制御部6は、サンプル待機部12における温度を制御することも可能である。更に、測定時または測定前に、生体試料Sに薬剤を入れる場合、薬剤の温度を制御するために、温度制御部6を備えてもよい。この場合、温度制御部6は、生体試料保持部2における温度制御、サンプル待機部12における温度制御、および薬剤の温度制御のためにそれぞれ設けることもできるし、一つの温度制御部6が全ての温度制御を行ってもよい。
【0044】
温度制御の具体的な方法は特に限定されないが、例えば、
図2および
図3に示す容器保持部22に、温度調整機能を持たせることで、容器保持部22を温度制御部6として機能させることができる。
【0045】
(6)生体試料供給部7
生体試料供給部7は、生体試料保持部2に生体試料Sを自動的に供給する部位である。本技術に係る生体試料用インピーダンス測定装置1において、この生体試料供給部7は必須の部位ではないが、各工程をオートマチックに行うためには、備えることが好ましい。
【0046】
生体試料Sの具体的な供給方法は特に限定されないが、例えば、生体試料Sが液体状である場合、ピペッターとその先端に装着するチップを用いて、生体試料保持部2に生体試料Sを自動的に供給することができる。この場合、測定誤差などを防止するためにも、チップは使い捨てにすることが好ましい。また、生体試料Sの貯蔵庫から、ポンプなどを用いて生体試料保持部2に生体試料Sを自動的に供給することもできる。更に、常設のノズルなどを用いて生体試料保持部2に生体試料Sを自動的に供給することも可能である。この場合、ノズルには、測定誤差などを防止するためにも、洗浄機能を付与することが好ましい。
【0047】
(7)薬剤供給部8
薬剤供給部8は、生体試料保持部2に1種または2種以上の薬剤を自動的に供給する部位である。本技術に係る生体試料用インピーダンス測定装置1において、この薬剤供給部8は必須の部位ではないが、各工程をオートマチックに行うためには、備えることが好ましい。
【0048】
薬剤の具体的な供給方法は特に限定されず、前記生体試料供給部7と同様の方法を用いて行うことができる。特に、薬剤の供給は、生体試料保持部2(容器21)への接触なしに、一定量の薬剤を供給できる方法が好ましい。例えば、液体状の薬剤であれば、吐出による供給を行うことができる。
【0049】
より具体的には、例えば、予め薬液を吐出管内へ導入しておき、これに接続される管路を介して、別途接続される加圧空気を短時間管路へ吹き込むことにより、生体試料保持部2(容器21)へ薬液を吐出供給することができる。この際、空気圧とバルブ開閉時間を調整することにより、薬液の吐出量を調整可能とすることもできる。
【0050】
また、空気を吹き込む以外に、加熱により薬液自体あるいはそれに溶存する空気の気化を利用して、生体試料保持部2(容器21)へ薬液を吐出供給することもできる。この際、発熱素子などを設置した気化室への印加電圧と時間を調整することにより、発生気泡容積を調整し、薬液の吐出量を調整することもできる。
【0051】
また、空気を使わず、圧電素子(ピエゾ素子)などを用いて、管路内に設けられた可動部を駆動し、可動部容積で定まる量の薬液を送出することにより、生体試料保持部2(容器21)へ薬液を供給することもできる。
【0052】
更に、例えば、薬液を微滴化し、所定の生体試料保持部2(容器21)へ直接吹き付ける、いわゆるインクジェット方式を用いることにより、薬剤を供給することも可能である。
【0053】
薬剤供給部8には、撹拌機能、温度制御機能、薬剤の種類などを識別するための識別機能(例えば、バーコードリーダーなど)などを備えることも可能である。
【0054】
なお、薬剤を用いる場合、容器21には予め、所定の薬剤を、固体化して、あるいは、液体のまま収容しておくことも可能である。例えば、血液成分を含有する生体試料Sを測定対象とする場合などは、抗凝固剤、凝固開始剤などを予め容器21に入れておくことができる。
【0055】
このように、容器21に予め薬剤を収容しておくことで、薬剤供給部8や薬剤保持部が不要となり、装置の小型化やコストの低減が可能である。また、使用者の薬剤交換などの手間が不要となり、薬剤供給部8や薬剤保持部の装置メンテナンスも不要となるためにユーザビリティを向上させることもできる。
【0056】
(8)生体試料S
本技術で測定対象とすることが可能な生体試料Sは、特に限定されず、自由に選択することができる。本技術に係る生体試料用インピーダンス測定装置1では、特に液体状またはゲル状の生体試料のインピーダンスを好適に測定することができる。液体状の生体試料Sの具体例としては、全血、血漿、またはこれらの希釈液および/または薬剤添加物などの血液成分を含有する生体試料Sなどを挙げることができる。
【0057】
(9)血液状態解析部9
血液状態解析部9は、測定部4において測定されたインピーダンスの時間的変化から、血液の状態変化を解析する部位である。本技術に係る生体試料用インピーダンス測定装置1において、この血液状態解析部9は必須の部位ではないが、生体試料Sとして血液成分を含有する生体試料を用いる場合には、血液状態解析部9を設けることで、血液の状態変化を検出することができる。
【0058】
より具体的には、例えば、解析期間内に受け取った複数のインピーダンスの測定値からそれぞれの特徴を示すパラメータを抽出し、このパラメータと、血液の状態変化の基準を定める基準値との比較に基づき、血液の状態変化を解析することができる。
【0059】
本技術における血液状態解析部9において、解析可能な血液の状態変化の具体例としては、状態変化によりインピーダンスの時間的変化が見られる現象であれば、特に限定されず、様々な状態変化を検出および解析することができる。例えば、血液の凝固(凝血)、フィブリン形成、フィブリン塊形成、血餅形成、血小板凝集、赤血球の連銭形成、血液の凝集、赤血球の沈降(赤沈)、血餅収縮、線溶などの溶血、フィブリノリジスなどを挙げることができる。
【0060】
(10)精度管理部10
精度管理部10は、測定部4の精度管理を行う部位である。本技術に係る生体試料用インピーダンス測定装置1において、この精度管理部10は必須の部位ではないが、精度管理部10を設けることで、測定部4での測定精度を向上させることができる。
【0061】
精度管理部10において行う、測定部4の具体的な精度管理方法は特に限定されず、公知の精度管理方法を自由に選択して用いることができる。例えば、装置1内に、ショート用の金属板などを設置しておき、測定開始前に電極と金属板とをショートさせることで測定部4のキャリブレーションを行う方法、キャリブレーション用のジグなどと電極とを接触させる方法、生体試料を入れる容器21と同一の形態の容器に金属板などを設置しておき、測定開始前に電極と金属板とをショートさせることで測定部4のキャリブレーションを行う方法などの測定部4のキャリブレーションを行うことにより測定部4の精度管理を行う方法などに限らず、実際の測定前に測定部4の状態をチェックし、異常があった時のみ前記のようなキャリブレーションなどを行って測定部4を校正することで測定部4の精度管理を行う方法など、自由な方法を用いて行うことができる。
【0062】
(11)駆動機構11
駆動機構11は、様々な目的に応じて、生体試料保持部2を動かすために用いる。例えば、測定対象として、沈降成分を含有する生体試料Sを用いる場合、生体試料保持部2に保持された生体試料Sにかかる重力の方向を変化させる方向へ生体試料保持部2を動かすことで、沈降成分の沈降により、測定値に影響が生じるのを防ぐことができる。
【0063】
また、例えば、前記
図3に示す生体試料保持部2のように、非測定時には、印加部3と電極31a、31bとを非接続状態とし、測定時には、印加部3と電極31a、31bとを電気的に接続可能となるように、生体試料保持部2を駆動させることもできる。
【0064】
更に、例えば、複数の生体試料保持部2を備える場合に、
図4に示す例のように、生体試料保持部2を動かすことができるように構成しておけば、生体試料保持部2を必要な部位に移動させることで、測定、生体試料供給、薬剤供給などを行うことができる。即ち、測定部4、生体試料供給部7、薬剤供給部8などを、目的の生体試料保持部2に移動させる必要がないため、各部を動かすための駆動部などを設ける必要がなく、装置の小型化やコストの低減が可能である。
【0065】
(12)サンプル待機部12
サンプル待機部12は、分取した生体試料Sを測定前に待機させる部位である。本技術に係る生体試料用インピーダンス測定装置1において、このサンプル待機部12は必須の部位ではないが、測定を円滑に行うために備えることが可能である。
【0066】
サンプル待機部12には、撹拌機能、温度制御機能、前記生体試料保持部2への移動機構、生体試料Sの種類などを識別するための識別機能(例えば、バーコードリーダーなど)、自動開栓機能などを備えることも可能である。
【0067】
(13)撹拌機構13
撹拌機構13は、生体試料保持部2の内部の撹拌を行う機構である。より詳しくは、生体試料保持部2の内部に保持された生体試料S自体の撹拌、生体試料Sと試薬などの薬剤との撹拌を行うための機構である。本技術に係る生体試料用インピーダンス測定装置1において、この撹拌機構13は必須の部位ではないが、例えば、生体試料Sに沈降性成分が含まれる場合や、測定時に試薬などの薬剤を添加する場合などには、備えることが好ましい。より具体的には、例えば、生体試料Sとして血液を用いる場合、撹拌機構13によって血液を撹拌することで、赤血球の沈降(血沈)を防止することができる。
【0068】
撹拌機構13における具体的な撹拌方法は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、公知の撹拌方法を自由に選択して用いることができる。例えば、ピペッティングによる撹拌、撹拌棒または撹拌子などを用いた撹拌、生体試料Sや薬剤の入った容器を上下逆転させることによる撹拌などを挙げることができる。
【0069】
以下、撹拌方法の具体的な一例を、図面を参照しながら説明する。
図5は、撹拌機構13を用いて、ピペッティングによって生体試料Sと試薬Rとの撹拌を行う場合の撹拌方法の一例を示す概念図である。
【0070】
<ステップ1>
ステップ1では、予め、試薬Rが保持された生体試料保持部2へ、測定目的の生体試料Sを注入する。生体試料保持部2への試薬Rは、前述した薬剤供給部8によって予め自動的に生体試料保持部2へ注入しておくこともできるし、予め試薬Rが保持されたカートリッジを生体試料保持部2として用いることも可能である。
【0071】
また、生体試料保持部2への生体試料Sの注入は、例えば、前述した生体試料供給部7によって、自動的に行うことが可能である。なお、
図5に示す例では、生体試料保持部2の底部において生体試料Sを吐出しているが、吐出位置はこれに限定されず、生体試料Sの種類、状態などに応じて、予めパラメータを設定しておき、吐出位置の自動制御を行うことも可能である。
【0072】
<ステップ2>
ステップ2では、生体試料保持部2の所定の位置から生体試料Sおよび/または試薬Rを吸引する。
図5に示す例では、吸引を、生体試料保持部2の底部において行っているが、吸引位置はこれに限定されず、生体試料Sの種類、状態などに応じて、予めパラメータを設定しておき、吸引位置の自動制御を行うことも可能である。
【0073】
なお、ステップ2および後述するステップ3のピペッティングで用いるピペットは、ステップ1において生体試料Sの注入に用いたピペットをそのまま用いてもよいし、別のピペットを用いてもよい。
【0074】
<ステップ3>
ステップ3では、ステップ2で吸引した生体試料Sおよび/または試薬Rを、生体試料保持部2の所定の位置から吐出する。
図5に示す例では、吐出を生体試料保持部2の中央部分で行っているが、吐出位置はこれに限定されず、生体試料Sの種類、状態などに応じて、予めパラメータを設定しておき、吐出位置の自動制御を行うことも可能である。
【0075】
ステップ2およびステップ3を1セットとして、必要回数、ピペッティングを繰り返すことにより、生体試料Sと試薬Rとの撹拌を行うことができる。
図5に示す例では、ステップ2およびステップ3を3セット繰り返すことにより、生体試料Sと試薬Rとの撹拌を行っているが、ピペッティング回数はこれに限定されず、生体試料Sや試薬Rの種類、状態、量などに応じて、予めパラメータを設定しておき、撹拌可能な回数を自動制御することも可能である。
【0076】
2.生体試料用インピーダンス測定システム100
図6は、本技術に係る生体試料用インピーダンス測定システム100の概念を模式的に示す模式概念図である。本技術に係る生体試料用インピーダンス測定システム100は、大別して、生体試料保持部2と、印加部3と、測定部4と、測定条件制御部5と、表示部101と、ユーザーインターフェース102と、を少なくとも備える。また、必要に応じて、温度制御部6、生体試料供給部7、薬剤供給部8、血液状態解析部9、精度管理部10、駆動機構11、記憶部103などを備えることもできる。以下、各部について詳細に説明する。なお、生体試料保持部2、印加部3、測定部4、測定条件制御部5、温度制御部6、生体試料供給部7、薬剤供給部8、血液状態解析部9、精度管理部10、駆動機構11については、前述した生体試料用インピーダンス測定装置1と同一であるため、ここでは説明を割愛する。
【0077】
(1)表示部101
表示部101は、測定部4において測定されたインピーダンスのデータを表示する部位である。表示部101では、測定部4において測定されたインピーダンスの数値データをそのまま表示することもできるが、例えば、グラフ化して表示することも可能である。
図7に、表示部101に表示されるデータの一例を示す。
【0078】
また、測定部4において測定されたインピーダンスのデータを用いて、生体試料Sの物性などを解析し、解析したデータを表示することも可能である。
【0079】
(2)ユーザーインターフェース102
ユーザーインターフェース102は、ユーザーが操作するための部位である。ユーザーは、ユーザーインターフェース102を通じて、前記本技術に係る生体試料用インピーダンス測定装置1の各部位にアクセスすることができる。
【0080】
(3)記憶部103
記憶部103は、測定部4において測定されたインピーダンスのデータを記憶する部位である。記憶部103では、測定部4において測定されたインピーダンスのデータをそのまま記憶することもできるが、測定部4において測定されたインピーダンスのデータを用いて、生体試料Sの物性などを解析し、解析したデータを記憶することも可能である。
【0081】
以上説明した本技術に係る生体試料用インピーダンス測定システム100では、前記生体試料用インピーダンス測定装置1と、前記表示部101と、前記ユーザーインターフェース102と、前記記憶部103と、がそれぞれネットワークを介して接続されていてもよい。
【0082】
なお、本技術は、以下のような構成も取ることができる。
(1)生体試料を保持する一又は複数の生体試料保持部と、
該生体試料保持部に保持された前記生体試料と接触する一対の電極に、交番電圧を印加する印加部と、
該印加部により前記生体試料に交番電圧が印加されることによって得られる前記生体試料のインピーダンスを測定する測定部と、
前記測定部における測定時間および/または測定周波数を制御する測定条件制御部と、
を備える生体試料用インピーダンス測定装置。
(2)前記測定条件制御部における測定時間の制御では、前記測定部における測定間隔を制御する(1)記載の生体試料用インピーダンス測定装置。
(3)前記測定条件制御部における測定時間の制御では、前記測定部における測定終了のタイミングを制御する(1)または(2)に記載の生体試料用インピーダンス測定装置。
(4)前記生体試料保持部における温度を制御する温度制御部を備える(1)から(3)のいずれか一に記載の生体試料用インピーダンス測定装置。
(5)前記生体試料保持部では、前記生体試料が収容された容器を保持することにより生体試料を保持する(1)から(4)のいずれか一に記載の生体試料用インピーダンス測定装置。
(6)前記生体試料保持部に前記生体試料を自動的に供給する生体試料供給部を備える(5)記載の生体試料用インピーダンス測定装置。
(7)前記生体試料保持部に1種または2種以上の薬剤を自動的に供給する薬剤供給部を備える(5)または(6)に記載の生体試料用インピーダンス測定装置。
(8)前記容器には、予め1種または2種以上の薬剤が収容されている(5)または(6)に記載の生体試料用インピーダンス測定装置。
(9)前記生体試料は、血液成分を含有する(1)から(8)のいずれか一に記載の生体試料用インピーダンス測定装置。
(10)前記測定部において測定されたインピーダンスの時間的変化から、血液の状態変化を解析する血液状態解析部を備える(9)記載の生体試料用インピーダンス測定装置。
(11)前記測定部の精度の管理を行う精度管理部を備える(1)から(10)のいずれか一に記載の生体試料用インピーダンス測定装置。
(12)前記生体試料保持部を動かすための駆動機構を備える(1)から(11)のいずれか一に記載の生体試料用インピーダンス測定装置。
(13)前記駆動機構は、前記生体試料保持部に保持された前記生体試料にかかる重力の方向を変化させる方向へ前記生体試料保持部を動かす(12)記載の生体試料用インピーダンス測定装置。
(14)前記生体試料保持部の内部の撹拌を行う撹拌機構を備える(1)から(12)のいずれか一に記載の生体試料用インピーダンス測定装置。
(15)生体試料を保持する一又は複数の生体試料保持部と、
該生体試料保持部に保持された前記生体試料と接触する一対の電極に、交番電圧を印加する印加部と、
該印加部により前記生体試料に交番電圧が印加されることによって得られる前記生体試料のインピーダンスを測定する測定部と、
前記測定部における測定時間および/または測定周波数を制御する測定条件制御部と、
前記測定部において測定されたインピーダンスのデータを表示する表示部と、
ユーザーが操作するためのユーザーインターフェースと、
を備える生体試料用インピーダンス測定システム。
(16)前記測定部において測定されたインピーダンスのデータを記憶する記憶部を備える(15)記載の生体試料用インピーダンス測定システム。