特許第6409584号(P6409584)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6409584
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】自動車用外部操舵装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 65/02 20060101AFI20181015BHJP
   G01M 17/007 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
   B62D65/02
   G01M17/007 D
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-6154(P2015-6154)
(22)【出願日】2015年1月15日
(65)【公開番号】特開2016-132272(P2016-132272A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年3月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雄二
【審査官】 鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−214050(JP,A)
【文献】 実開昭61−155753(JP,U)
【文献】 特開平07−248279(JP,A)
【文献】 特開昭57−022974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 65/02
G01M 17/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のステアリングホイールを、該自動車の外部から操舵可能な自動車用外部操舵装置であって、
自動車のステアリングホイールに取り付けられるホイール取付部と、
自動車のシートにおける、ヘッドレストの支持部に取り付けられるヘッドレスト取付部と、
該ヘッドレスト取付部に対して上記ホイール取付部を回動可能に連結するとともに、該ホイール取付部に連結される部分の回動中心軸線の位置及び姿勢を変更するよう変形可能な連結部と、
該連結部、上記ヘッドレスト取付部又は上記ホイール取付部に設けられて、該ヘッドレスト取付部に対して該ホイール取付部を回動させる回転駆動源と、
該回転駆動源の回転を制御する制御部と、
該制御部を操作する操作部と、を備え
上記制御部は、上記ホイール取付部が取り付けられた上記自動車のステアリングホイールを右方向に操舵するよう、上記回転駆動源の出力軸を右方向に回転させるための右方向リレーと、上記ホイール取付部が取り付けられた上記自動車のステアリングホイールを左方向に操舵するよう、上記回転駆動源の出力軸を左方向に回転させるための左方向リレーと、上記連結部分の一方に設けられて、上記回転駆動源の出力軸の回転を受けて回転する回転体と、上記連結部分の他方に設けられて、上記回転体の外周に接触する導通端子とを有しており、
上記操作部は、上記右方向リレーを作動させるためのスイッチ入力操作が可能な右方向スイッチと、上記左方向リレーを作動させるためのスイッチ入力操作が可能な左方向スイッチと、上記自動車のステアリングホイールを中央位置に復帰させるための復帰スイッチとを有しており、
該復帰スイッチは、上記回転体及び上記導通端子を経由して、上記右方向リレー及び上記左方向リレーに通電可能な状態で設けられており、
上記回転体の軸方向一方側に位置する第1回転体部分には第1端子が接触しており、上記回転体の軸方向他方側に位置する第2回転体部分には第2端子が接触しており、
上記回転体は、上記第1回転体部分の外周に螺旋状に形成され、上記ホイール取付部が右方向に回転された状態で、上記第1端子と上記導通端子とを導通させる第1螺旋状溝部と、上記第2回転体部分の外周に螺旋状に形成され、上記ホイール取付部が左方向に回転された状態で、上記第2端子と上記導通端子とを導通させる第2螺旋状溝部と、該第2螺旋状溝部と上記第1螺旋状溝部との間において、上記導通端子と導通不能に形成された非導通部とを、外周に有しており、
上記ホイール取付部が取り付けられた上記自動車のステアリングホイールが中央位置にあるときには、上記導通端子が上記非導通部に対向して、上記第1螺旋状溝部又は上記第2螺旋状溝部に対する上記導通端子の導通状態が遮断されるよう設定されており、
上記第1端子と上記導通端子とが上記第1螺旋状溝部を介して導通しているときには、上記復帰スイッチが操作されたときに上記左方向リレーが通電されるよう構成されており、一方、上記第2端子と上記導通端子とが上記第2螺旋状溝部を介して導通しているときには、上記復帰スイッチが操作されたときに上記右方向リレーが通電されるよう構成されていることを特徴とする自動車用外部操舵装置。
【請求項2】
上記連結部は、複数のアーム部と、該複数のアーム部のうちの1つ又は複数に設けられ、該アーム部を伸縮可能にする伸縮部材と、上記アーム部同士の連結部分に設けられた複数の自在継手とを有しており、
上記回転駆動源は、上記ホイール取付部と上記アーム部との連結部分、上記ヘッドレスト取付部と上記アーム部との連結部分、又は上記アーム部が2つに分割された分割アーム部同士の連結部分に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の自動車用外部操舵装置。
【請求項3】
上記複数の自在継手は、上記ホイール取付部側に設けられた第1自在継手と、上記ヘッドレスト取付部側に設けられた第2自在継手とによって構成されており、
上記複数のアーム部は、上記ホイール取付部と上記第1自在継手とに取り付けられた第1アーム部と、上記第1自在継手と上記第2自在継手とに取り付けられた第2アーム部と、上記ヘッドレスト取付部と上記第2自在継手とに取り付けられた第3アーム部とによって構成されており、
上記伸縮部材は、上記第1アーム部、上記第2アーム部及び上記第3アーム部のうちのいずれか1つに設けられているとともに、シリンダケースと、該シリンダケース内を移動するシリンダロッドとによって構成されていることを特徴とする請求項2に記載の自動車用外部操舵装置。
【請求項4】
上記連結部は、複数のアーム部と、該複数のアーム部のうちの少なくとも2つに設けられ、該アーム部を伸縮可能にする伸縮部材と、上記アーム部同士の連結部分に設けられた1つ又は複数の自在継手とを有しており、
上記回転駆動源は、上記ホイール取付部と上記アーム部との連結部分、上記ヘッドレスト取付部と上記アーム部との連結部分、又は上記アーム部が2つに分割された分割アーム部同士の連結部分に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の自動車用外部操舵装置。
【請求項5】
上記複数のアーム部は、上記ホイール取付部側に設けられた第1アーム部と、上記ヘッドレスト取付部側に設けられた第2アーム部とによって構成されており、
上記自在継手は、上記第1アーム部と上記第2アーム部とを連結しており、
上記伸縮部材は、上記第1アーム部及び上記第2アーム部に設けられているとともに、シリンダケースと、該シリンダケース内を移動するシリンダロッドとによって構成されていることを特徴とする請求項4に記載の自動車用外部操舵装置。
【請求項6】
上記ホイール取付部は、上記ステアリングホイールの全体を径方向に挟み込む構造を有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の自動車用外部操舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵車輪が浮いた状態の自動車のステアリングホイールを、自動車の外部から操舵可能な自動車用外部操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の品質確認試験等においては、車体と車輪との隙間の大きさを確認するために、自動車をジャッキアップして車輪を宙に浮かせている。また、この状態において、ステアリングホイールによって操舵車輪(操舵可能な車輪)を操舵して、操舵車輪の操舵角度を適宜変化させたときの車体と操舵車輪との隙間の大きさを確認している。
例えば、特許文献1のステアリングホイールの操作装置は、遠隔操作によって正逆回転制御されるモータと、トルククラッチを介してモータに接続された回転体と、回転体の外周に等間隔に設けられてステアリングホールに取り付けられる少なくとも3本のロッドと、モータのケーシングの回り止めをする係止ロッドとを備えている。この操作装置によれば、ステアリングホイールを遠隔操作によって左右いずれの方向にも回転させることができる。また、特許文献2の車両用ステアリングの遠隔操作装置においても、特許文献1と同様の構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭61−46072号公報
【特許文献2】特開昭57−22974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の操作装置においては、ステアリングホイールを回転させるモータ、回転体等の回転構造部分がステアリングホイールの中心位置に配置されている。また、中心位置に配置された回転構造部分から放射状にロッド等の取付部分が設けられている。そして、ステアリングホイールの中心位置に対して、回転構造部分の中心位置が可能な限り偏心しないようにしている。この偏心が生じると、ステアリングホイールを回転させることが困難になるためである。そのため、ステアリングホイールに操作装置を取り付ける際には、操作装置がステアリングホイールに対して偏心しないように注意する必要があり、必ずしも取り扱いが容易ではない。なお、この課題は、特許文献2においても同様に生じる。
【0005】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、ステアリングホイールに対する中心位置合わせが不要であり、自動車への取付を簡単にすることができる自動車用外部操舵装置を提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、自動車のステアリングホイールを、該自動車の外部から操舵可能な自動車用外部操舵装置であって、
自動車のステアリングホイールに取り付けられるホイール取付部と、
自動車のシートにおける、ヘッドレストの支持部に取り付けられるヘッドレスト取付部と、
該ヘッドレスト取付部に対して上記ホイール取付部を回動可能に連結するとともに、該ホイール取付部に連結される部分の回動中心軸線の位置及び姿勢を変更するよう変形可能な連結部と、
該連結部、上記ヘッドレスト取付部又は上記ホイール取付部に設けられて、該ヘッドレスト取付部に対して該ホイール取付部を回動させる回転駆動源と、
該回転駆動源の回転を制御する制御部と、
該制御部を操作する操作部と、を備え
上記制御部は、上記ホイール取付部が取り付けられた上記自動車のステアリングホイールを右方向に操舵するよう、上記回転駆動源の出力軸を右方向に回転させるための右方向リレーと、上記ホイール取付部が取り付けられた上記自動車のステアリングホイールを左方向に操舵するよう、上記回転駆動源の出力軸を左方向に回転させるための左方向リレーと、上記連結部分の一方に設けられて、上記回転駆動源の出力軸の回転を受けて回転する回転体と、上記連結部分の他方に設けられて、上記回転体の外周に接触する導通端子とを有しており、
上記操作部は、上記右方向リレーを作動させるためのスイッチ入力操作が可能な右方向スイッチと、上記左方向リレーを作動させるためのスイッチ入力操作が可能な左方向スイッチと、上記自動車のステアリングホイールを中央位置に復帰させるための復帰スイッチとを有しており、
該復帰スイッチは、上記回転体及び上記導通端子を経由して、上記右方向リレー及び上記左方向リレーに通電可能な状態で設けられており、
上記回転体の軸方向一方側に位置する第1回転体部分には第1端子が接触しており、上記回転体の軸方向他方側に位置する第2回転体部分には第2端子が接触しており、
上記回転体は、上記第1回転体部分の外周に螺旋状に形成され、上記ホイール取付部が右方向に回転された状態で、上記第1端子と上記導通端子とを導通させる第1螺旋状溝部と、上記第2回転体部分の外周に螺旋状に形成され、上記ホイール取付部が左方向に回転された状態で、上記第2端子と上記導通端子とを導通させる第2螺旋状溝部と、該第2螺旋状溝部と上記第1螺旋状溝部との間において、上記導通端子と導通不能に形成された非導通部とを、外周に有しており、
上記ホイール取付部が取り付けられた上記自動車のステアリングホイールが中央位置にあるときには、上記導通端子が上記非導通部に対向して、上記第1螺旋状溝部又は上記第2螺旋状溝部に対する上記導通端子の導通状態が遮断されるよう設定されており、
上記第1端子と上記導通端子とが上記第1螺旋状溝部を介して導通しているときには、上記復帰スイッチが操作されたときに上記左方向リレーが通電されるよう構成されており、一方、上記第2端子と上記導通端子とが上記第2螺旋状溝部を介して導通しているときには、上記復帰スイッチが操作されたときに上記右方向リレーが通電されるよう構成されていることを特徴とする自動車用外部操舵装置にある。
【発明の効果】
【0007】
上記自動車用外部操舵装置(単に、外部操舵装置ということがある。)は、ヘッドレスト取付部をシートにおけるヘッドレストの支持部に取り付けることにより、自動車に対する位置が固定される。また、ホイール取付部の構造は、ステアリングホイールに取り付けられる構造であれば、どのような構造とすることもできる。そして、ホイール取付部をステアリングホイールに取り付ける際には、連結部における、ホイール取付部に連結される部分の回動中心軸線を、ステアリングホイールの中心位置に合わせる必要がない。言い換えれば、連結部における、ホイール取付部に連結される部分の回動中心軸線が、ステアリングホイールの中心位置から偏心していてもよい。
【0008】
外部操舵装置を動作させるときには、作業者等が操作部を操作し、操作部による指令を受けて制御部が回転駆動源の回転を制御して、ヘッドレスト取付部に対してホイール取付部が右方向又は左方向に回動する。このとき、連結部における、ホイール取付部に連結される部分の回動中心軸線がステアリングホイールの中心位置から偏心している場合には、ステアリングホイールの回動に伴って、連結部における、ホイール取付部に連結される部分の位置及び姿勢が変化する。そして、連結部における、ホイール取付部に連結される部分の位置及び姿勢の変化に対しては、連結部が変形することによって対応することができる。
そのため、ステアリングホイールに対する外部操舵装置の中心位置合わせを不要にすることができ、自動車への外部操舵装置の取付を簡単にすることができる。また、ステアリングホイールへのホイール取付部の取付を簡単にすることができる。
【0009】
それ故、上記外部操舵装置によれば、ステアリングホイールに対する中心位置合わせが不要であり、自動車への取付を簡単にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例にかかる、外部操舵装置を示す説明図。
図2】実施例にかかる、外部操舵装置の構造をモデル化した状態で示す説明図。
図3】実施例にかかる、ステアリングホイールが図2の状態から180°回動されたときの外部操舵装置の構造をモデル化した状態で示す説明図。
図4】実施例にかかる、操舵車輪が浮いた状態の自動車を示す説明図。
図5】実施例にかかる、外部操舵装置の初期状態を示す回路図。
図6】実施例にかかる、外部操舵装置におけるモータの出力軸が右方向に回転した状態を示す回路図。
図7】実施例にかかる、ステアリングホイールが、右方向に回転した状態から中央位置に復帰する状態を示す回路図。
図8】実施例にかかる、外部操舵装置におけるモータの出力軸が左方向に回転した状態を示す回路図。
図9】実施例にかかる、ステアリングホイールが、左方向に回転した状態から中央位置に復帰する状態を示す回路図。
図10】実施例にかかる、他の外部操舵装置の一部の構造をモデル化した状態で示す説明図。
図11】実施例にかかる、他の外部操舵装置の一部の構造をモデル化した状態で示す説明図。
図12】実施例にかかる、他の外部操舵装置の構造をモデル化した状態で示す説明図。
図13】実施例にかかる、他の外部操舵装置の構造をモデル化した状態で示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述した外部操舵装置における好ましい実施の形態について説明する。
上記外部操舵装置においては、上記連結部は、複数のアーム部と、該複数のアーム部のうちの1つ又は複数に設けられ、該アーム部を伸縮可能にする伸縮部材と、上記アーム部同士の連結部分に設けられた複数の自在継手とを有しており、上記回転駆動源は、上記ホイール取付部と上記アーム部との連結部分、上記ヘッドレスト取付部と上記アーム部との連結部分、又は上記アーム部が2つに分割された分割アーム部同士の連結部分に設けられていてもよい。
【0012】
この場合には、ステアリングホイールの回動に伴って、連結部における、ホイール取付部に連結される部分の回動中心軸線の位置及び姿勢が変化する際には、伸縮部材によって1つ又は複数のアーム部の長さが変化し、自在継手によって複数のアーム部の姿勢(傾斜角度)が変化することができる。そのため、伸縮部材及び自在継手を用いることにより、連結部が変形する構造を容易に形成することができる。
なお、アーム部は、自在継手の取付部分によって構成されていてもよく、自在継手の取付部分に連結された部材によって構成されていてもよい(以下同様)。
【0013】
また、上記複数の自在継手は、上記ホイール取付部側に設けられた第1自在継手と、上記ヘッドレスト取付部側に設けられた第2自在継手とによって構成されており、上記複数のアーム部は、上記ホイール取付部と上記第1自在継手とに取り付けられた第1アーム部と、上記第1自在継手と上記第2自在継手とに取り付けられた第2アーム部と、上記ヘッドレスト取付部と上記第2自在継手とに取り付けられた第3アーム部とによって構成されており、上記伸縮部材は、上記第1アーム部、上記第2アーム部及び上記第3アーム部のうちのいずれか1つに設けられているとともに、シリンダケースと、該シリンダケース内を移動するシリンダロッドとによって構成されていてもよい。
この場合には、3つのアーム部と1つの伸縮部材と2つの自在継手とを用いることにより、連結部が変形する構造をさらに容易に形成することができる。
【0014】
また、上記連結部は、複数のアーム部と、該複数のアーム部のうちの少なくとも2つに設けられ、該アーム部を伸縮可能にする伸縮部材と、上記アーム部同士の連結部分に設けられた1つ又は複数の自在継手とを有しており、上記回転駆動源は、上記ホイール取付部と上記アーム部との連結部分、上記ヘッドレスト取付部と上記アーム部との連結部分、又は上記アーム部が2つに分割された分割アーム部同士の連結部分に設けられていてもよい。
この場合には、ステアリングホイールの回動に伴って、連結部における、ホイール取付部に連結される部分の回動中心軸線の位置及び姿勢が変化する際には、伸縮部材によって2つ以上のアーム部の長さが変化し、自在継手によってアーム部の姿勢(傾斜角度)が変化することができる。そのため、伸縮部材及び自在継手を用いることにより、連結部が変形する構造を容易に形成することができる。
【0015】
また、上記複数のアーム部は、上記ホイール取付部側に設けられた第1アーム部と、上記ヘッドレスト取付部側に設けられた第2アーム部とによって構成されており、上記自在継手は、上記第1アーム部と上記第2アーム部とを連結しており、上記伸縮部材は、上記第1アーム部及び上記第2アーム部に設けられているとともに、シリンダケースと、該シリンダケース内を移動するシリンダロッドとによって構成されていてもよい。
この場合には、2つのアーム部と2つの伸縮部材と1つの自在継手とを用いることにより、連結部が変形する構造をさらに容易に形成することができる。
【0016】
また、上記ホイール取付部は、上記ステアリングホイールの全体を径方向に挟み込む構造を有していてもよい。
この場合には、ホイール取付部の構造を極めて簡単にすることができる。
【0017】
また、上記制御部は、上記ホイール取付部が取り付けられた上記自動車のステアリングホイールを右方向に操舵するよう、上記回転駆動源の出力軸を右方向に回転させるための右方向リレーと、上記ホイール取付部が取り付けられた上記自動車のステアリングホイールを左方向に操舵するよう、上記回転駆動源の出力軸を左方向に回転させるための左方向リレーとを有しており、上記操作部は、上記右方向リレーを作動させるためのスイッチ入力操作が可能な右方向スイッチと、上記左方向リレーを作動させるためのスイッチ入力操作が可能な左方向スイッチとを有してい
これにより、作業者が、操作部における右方向スイッチ及び左方向スイッチを操作することにより、外部操舵装置を自動車の外部から簡単に操作することができる。
【0018】
また、上記制御部は、上記連結部分の一方に設けられて、上記回転駆動源の出力軸の回転を受けて回転する回転体と、上記連結部分の他方に設けられて、上記回転体の外周に接触する導通端子とを有しており、上記操作部は、上記自動車のステアリングホイールを中央位置に復帰させるための復帰スイッチを有しており、該復帰スイッチは、上記回転体及び上記導通端子を経由して、上記右方向リレー及び上記左方向リレーに通電可能な状態で設けられており、上記回転体の軸方向一方側に位置する第1回転体部分には第1端子が接触しており、上記回転体の軸方向他方側に位置する第2回転体部分には第2端子が接触しており、上記回転体は、上記第1回転体部分の外周に螺旋状に形成され、上記ホイール取付部が右方向に回転された状態で、上記第1端子と上記導通端子とを導通させる第1螺旋状溝部と、上記第2回転体部分の外周に螺旋状に形成され、上記ホイール取付部が左方向に回転された状態で、上記第2端子と上記導通端子とを導通させる第2螺旋状溝部と、該第2螺旋状溝部と上記第1螺旋状溝部との間において、上記導通端子と導通不能に形成された非導通部とを、外周に有しており、上記ホイール取付部が取り付けられた上記自動車のステアリングホイールが中央位置にあるときには、上記導通端子が上記非導通部に対向して、上記第1螺旋状溝部又は上記第2螺旋状溝部に対する上記導通端子の導通状態が遮断されるよう設定されており、上記第1端子と上記導通端子とが上記第1螺旋状溝部を介して導通しているときには、上記復帰スイッチが操作されたときに上記左方向リレーが通電されるよう構成されており、一方、上記第2端子と上記導通端子とが上記第2螺旋状溝部を介して導通しているときには、上記復帰スイッチが操作されたときに上記右方向リレーが通電されるよう構成されてい
【0019】
これにより、作業者が復帰スイッチを操作することによって、ステアリングホイールの回動位置を、操舵車輪が自動車の正面を向く中央位置に極めて簡単に復帰させることができる。そのため、外部操舵装置を用いたステアリングホイールの操作性を格段に向上させることができる。
【実施例】
【0020】
以下に、自動車用外部操舵装置にかかる実施例について、図面を参照して説明する。
本例の自動車用外部操舵装置1(以下、単に外部操舵装置1という。)は、図1図2図4に示すように、操舵車輪85が浮いた状態の自動車8のステアリングホイール81を、自動車8の外部から操舵するものである。外部操舵装置1は、ホイール取付部21、ヘッドレスト取付部22、連結部3、回転駆動源としてのモータ5、制御部6A及び操作部6Bを備えている。なお、図2は、外部操舵装置1の構造をモデル化した状態で示す。
【0021】
ホイール取付部21は、自動車8のステアリングホイール81に取り付けられる。ヘッドレスト取付部22は、自動車8のシート82における、ヘッドレスト84の支持部83に取り付けられる。連結部3は、ヘッドレスト取付部22に対してホイール取付部21を回動可能に連結するとともに、ホイール取付部21に連結される部分311の回動中心軸線C2の位置及び姿勢を変更するよう変形可能である。
モータ5は、連結部3に設けられており、ヘッドレスト取付部22に対してホイール取付部21を回動させるよう構成されている。制御部6Aは、モータ5の回転を制御するよう構成されており、操作部6Bは、作業者による入力を受けて制御部6Aを操作するよう構成されている。
【0022】
以下に、本例の外部操舵装置1について、図1図13を参照して詳説する。
図4に示すように、外部操舵装置1は、自動車8の品質確認試験において、ジャッキ装置86によって自動車8の車体80が持ち上げられ、操舵車輪85が浮いた状態において、操舵車輪85と車体80との隙間Kの大きさを検査する際に用いられる。また、外部操舵装置1によってステアリングホイール81を回動させて操舵車輪85を左右に操舵し、操舵車輪85の操舵角度を適宜変化させたときの隙間Kの大きさを検査している。
【0023】
図1図2に示すように、本例の連結部3は、ヘッドレスト取付部22とホイール取付部21とに取り付けられた3つのアーム部31,32,33と、第2アーム部32に設けられて第2アーム部32を伸縮可能にする伸縮部材320と、3つのアーム部31,32,33同士の連結部分に設けられた2つの自在継手41,42とを有している。本例のモータ5は、ホイール取付部21と第1アーム部31との連結部分に設けられている。モータ5は、ホイール取付部21を右方向R及び左方向Lの両方向に回転させることが可能である。
【0024】
図2に示すように、本例の複数の自在継手41,42は、ホイール取付部21側に設けられた第1自在継手41と、ヘッドレスト取付部22側に設けられた第2自在継手42とによって構成されている。各自在継手41,42は、ユニバーサルジョイントとも呼ばれ、交差する2つの軸の角度を任意の角度に変更可能な状態で、一方の軸から他方の軸へ回転力を伝達できる継手部材である。
【0025】
本例の複数のアーム部31,32,33は、ホイール取付部21と第1自在継手41とに取り付けられた第1アーム部31と、第1自在継手41と第2自在継手42とに取り付けられた第2アーム部32と、ヘッドレスト取付部22と第2自在継手42とに取り付けられた第3アーム部33とによって構成されている。本例の伸縮部材320は、シリンダケース321と、シリンダケース321内を移動するシリンダロッド322とによって構成されている。第2アーム部32は、伸縮部材320によって構成されている。
【0026】
なお、伸縮部材320は、第2アーム部32に設ける代わりに、第1アーム部31に設けることもできる。また、第2アーム部32は、伸縮部材320、第1自在継手41の取付部分及び第2自在継手42の取付部分によって構成されていてもよい。また、第1アーム部31は、第1自在継手41の取付部分によって構成されていてもよく、第3アーム部33は、第2自在継手42の取付部分によって構成されていてもよい。
【0027】
図5は、外部操舵装置1の電気的構成を示す。同図に示すように、制御部6Aは、モータ5の回転制御をするための機器が搭載された装置本体として構成されており、操作部6Bは、モータ5の回転を制御するために、作業者によって操作可能な操作ボックスとして構成されている。制御部6Aは、モータ本体部51が取り付けられた第1アーム部31の連結端部311に取り付けられている。操作部6Bは、自動車8のドア窓部等から自動車8の外部に取り出されて使用される。作業者は、自動車8の外部において操作部6Bを操作することによってモータ5の回転を制御することができる。
【0028】
図2に示すように、モータ5のステータを含むモータ本体部51は、ホイール取付部21と第1アーム部31との連結部分における、第1アーム部31の連結端部311に取り付けられている。モータ5のロータと一体化された出力軸52は、ホイール取付部21と第1アーム部31との連結部分における、ホイール取付部21の被連結部213に取り付けられている。
【0029】
ホイール取付部21は、モータ5の出力軸52が取り付けられて、ステアリングホイール81に対向して配置されるベース部211と、ベース部211に移動可能に設けられて、ステアリングホイール81の全体を径方向に挟み込む一対の挟持部212とを有している。ベース部211は、ステアリングホイール81の径方向に伸びるフレームとして形成されている。一対の挟持部212は、ベース部211の長手方向の両側に分かれて設けられている。一対の挟持部212は、ステアリングホイール81の外周に係合する、V形状断面等の簡単な形状を有している。
【0030】
図1に示すように、ヘッドレスト取付部22は、自動車8の運転席側シート82の背もたれ部820の上部に設けられた支持部としての一対の支持穴83に差し込まれる一対の支持ロッド221を有している。一対の支持穴83は、背もたれ部820にヘッドレスト84の一対の支持ロッドを差し込むために設けられた穴である。ヘッドレスト取付部22は、背もたれ部820の上部からヘッドレスト84が取り外された状態において、一対の支持ロッド221を一対の支持部83に差し込むことによって背もたれ部82に取り付けられる。
【0031】
図5に示すように、制御部6Aには、ホイール取付部21が取り付けられた自動車8のステアリングホイール81を右方向Rに操舵するよう、モータ5に右方向Rの動力を伝達する右方向リレー61Rと、ホイール取付部21が取り付けられた自動車8のステアリングホイール81を左方向Lに操舵するよう、モータ5に左方向Lの動力を伝達する左方向リレー61Lとが搭載されている。
操作部6Bには、右方向リレー61Rを作動させるためのスイッチ入力操作が可能な右方向スイッチ62Rと、左方向リレー61Lを作動させるためのスイッチ入力操作が可能な左方向スイッチ62Lと、自動車8のステアリングホイール81を中央位置に復帰させるための復帰スイッチ62Sとが設けられている。
ここで、図5は、右方向スイッチ62R、左方向スイッチ62L及び復帰スイッチ62Sのいずれも操作されていない、外部操舵装置1の初期状態を示す。
【0032】
制御部6Aを構成する各リレー61R,61L及び操作部6Bを構成する各スイッチ62R,62L,62Sは、直流電流によって動作するものである。制御部6A及び操作部6Bを動作させる電源には、自動車8に搭載されているバッテリーを用いることができる。
図5図9において、符号Pはプラス電源を示し、符号Nはマイナス電源を示す。各リレーは、電磁リレーであり、入力側のソレノイド611が通電されることによって、出力側の接点612がOFF状態からON状態に動作する構造を有している。各リレー61R,61Lの接点612がOFF状態であるときには、モータ5の電源線の一つがマイナス電源Nに接続され、各リレー61R,61Lの接点612がON状態にあるときには、モータ5の電源線の一つがプラス電源Pに接続される。
【0033】
図2に示すように、制御部6Aは、ステアリングホイール81の回転位置を検出するための回転体7と、回転体7の外周に接触する導通端子63とを有している。回転体7は、モータ5の出力軸52と、ホイール取付部21の被連結部213との間に設けられており、出力軸52の回転を受けて回転するよう構成されている。導通端子63は、モータ5のモータ本体部51が設けられた第1アーム部31の連結端部311に設けられている。
モータ5の出力軸52の回転によって、第1アーム部31の連結端部311に対してホイール取付部21の被連結部213が回転すると、回転体7が導通端子63に対して相対的に回転して、導通端子63が、回転体7の外周に接触する軸方向位置が変化する。
【0034】
なお、図10に示すように、モータ5の出力軸52をホイール取付部21の被連結部213に直接取り付け、回転体7は、出力軸52に対してギヤ53等を介して連結し、回動継手54等を介して第1アーム部31に回動可能に設けることもできる。また、図11に示すように、第1アーム部31の連結端部311とホイール取付部21の被連結部213との間に回転体7を回動継手54等によって回動可能に設け、回転体7にギヤ53等を介して出力軸52を連結することもできる。いずれの場合においても、モータ5の出力軸52の回転を受けて回転体7を回転させることができる。
【0035】
図5に示すように、復帰スイッチ62Sは、回転体7及び導通端子63を経由して、右方向リレー61R及び左方向リレー61Lに通電可能な状態で設けられている。回転体7の軸方向一方側に位置する第1回転体部分701の端部には第1端子641が接触しており、回転体7の軸方向他方側に位置する第2回転体部分702の端部には第2端子642が接触している。導通端子63、第1端子641及び第2端子642は、回転体7に対向して配置された端子台630に設けられている。導通端子63、第1端子641及び第2端子642は、端子台630から突出して回転体7に接触している。
導通端子63は、回転体7が回転したとき、回転体7の外周に接触する軸方向の位置が変化するよう構成されている。回転体7の外周には、導通端子63が接触して、導通端子63の軸方向への移動を案内する螺旋状溝部70が形成されている。
【0036】
螺旋状溝部70は、回転体7の第1回転体部分701の外周に螺旋状に形成された第1螺旋状溝部71と、回転体7の第2回転体部分702の外周に螺旋状に形成された第2螺旋状溝部72とからなる。第1螺旋状溝部71と第2螺旋状溝部72とは、同一の回転方向に向けて螺旋状に形成されている。第1螺旋状溝部71は、ホイール取付部21及びステアリングホイール81が右方向Rに回転された状態で、第1端子641と導通端子63とを導通させるよう構成されている。第2螺旋状溝部72は、ホイール取付部21及びステアリングホイール81が左方向Lに回転された状態で、第2端子642と導通端子63とを導通させるよう構成されている。
また、第1回転体部分701の端部(第1螺旋状溝部71の形成箇所よりも軸方向の一方側の外側部分)には、第1端子641が接触する第1平坦外周面741が形成されている。第2回転体部分702の端部(第2螺旋状溝部72の形成箇所よりも軸方向の他方側の外側部分)には、第2端子642が接触する第2平坦外周面742が形成されている。
【0037】
また、図5に示すように、回転体7の外周における、第1螺旋状溝部71と第2螺旋状溝部72との中間位置には、導通端子63と導通不能である非導通部73が形成されている。非導通部73は、回転体7と導通端子63との導通状態を遮断するために設けられた部分である。そして、回転体7と導通端子63との位置関係は、ホイール取付部21が取り付けられた自動車8のステアリングホイール81が中央位置にあるときには、導通端子63が非導通部73に対向し、回転体7に対する導通端子63の導通状態が遮断されるよう設定されている。
【0038】
第1螺旋状溝部71、第2螺旋状溝部72、各平坦外周面741,742は、銅、アルミニウム、鉄等の導通部材によって形成されている。非導通部73は、樹脂等の非導通部材によって形成されている。図示は省略するが、回転体7は、非導通性のベース部材に対して導通部材を設けることによって形成することができ、導通性のベース部材に対して非導通部材を設けることによって形成することもできる。
【0039】
図6に示すように、第1端子641と導通端子63とが第1螺旋状溝部71を介して導通しているときには、図7に示すように、復帰スイッチ62Sが操作されたときに左方向リレー61Lが通電されるよう構成されている。一方、図8に示すように、第2端子642と導通端子63とが第2螺旋状溝部72を介して導通しているときには、図9に示すように、復帰スイッチ62Sが操作されたときに右方向リレー61Rが通電されるよう構成されている。
ここで、図6は、右方向スイッチ62Rが操作されて、右方向リレー61Rが動作するとともにモータ5の出力軸52が右方向Rに回転し、導通端子63が第1螺旋状溝部71に接触する状態を示す。また、図8は、左方向スイッチ62Lが操作されて、左方向リレー61Lが動作するとともにモータ5の出力軸52が左方向Lに回転し、導通端子63が第2螺旋状溝部72に接触する状態を示す。
【0040】
制御装置6は、復帰スイッチ62Sが操作されたときに、自動車8のステアリングホイール81及びホイール取付部21が右方向Rに回転している場合には、図7に示すように、第1端子641と導通端子63とが第1螺旋状溝部71を介して導通されて、左方向リレー61Lが動作し、その後、導通端子63が非導通部73と対向するまでの間、モータ5の出力軸52が左方向Lに回転するよう構成されている。
一方、制御装置6は、復帰スイッチ62Sが操作されたときに、自動車8のステアリングホイール81及びホイール取付部21が左方向Lに回転している場合には、図9に示すように、第2端子642と導通端子63とが第2螺旋状溝部72を介して導通されて、右方向リレー61Rが動作し、その後、導通端子63が非導通部73と対向するまでの間、モータ5の出力軸52が右方向Rに回転するよう構成されている。
【0041】
図6に示すように、右方向スイッチ62RのONの操作を受けて、右方向リレー61RがONになったときには、モータ5の出力軸52が右方向Rに回転し、ステアリングホイール81が右方向Rに操舵される。このとき、回転体7は、モータ5の出力軸52とともに右方向Rへ回転し、導通端子63が第1螺旋状溝部71に沿って、回転体7の第1回転体部分701の端部に向かって移動する。そして、導通端子63と第1端子641とが第1螺旋状溝部71によって導通された状態が形成される。
【0042】
そして、この状態において、図7に示すように、復帰スイッチ62SのONの操作がされると、導通端子63と第1端子641との導通によって左方向リレー61LがONになる。これにより、導通端子63が非導通部73と対向するまでの間、モータ5の出力軸52が左方向Lに回転する。そして、導通端子63が非導通部73と対向したときには、左方向リレー61Lのソレノイド611がOFFになり、ホイール取付部21及びステアリングホイール81が中央位置に復帰する。
【0043】
図8に示すように、左方向スイッチ62LのONの操作を受けて、左方向リレー61LがONになったときには、モータ5の出力軸52が左方向Lに回転し、ステアリングホイール81が左方向Lに操舵される。このとき、回転体7は、モータ5の出力軸52とともに左方向Lへ回転し、導通端子63が第2螺旋状溝部72に沿って、回転体7の第2回転体部分702の端部に向かって移動する。そして、導通端子63と第2端子642とが第2螺旋状溝部72によって導通された状態が形成される。
【0044】
そして、この状態において、図9に示すように、復帰スイッチ62SのONの操作がされると、導通端子63と第2端子642との導通によって右方向リレー61RがONになる。これにより、導通端子63が非導通部73と対向するまでの間、モータ5の出力軸52が右方向Rに回転する。そして、導通端子63が非導通部73と対向したときには、右方向リレー61Rのソレノイド611がOFFになり、ホイール取付部21及びステアリングホイール81が中央位置に復帰する。
【0045】
次に、本例の外部操舵装置1の作用効果について説明する。
本例の外部操舵装置1は、ヘッドレスト取付部22をヘッドレスト84を支持する支持部83に取り付けることにより、自動車8に対する取付位置が固定される。また、ホイール取付部21の構造は、ステアリングホイール81に取り付けられる構造であれば、どのような構造とすることもできる。本例のホイール取付部21は、ステアリングホイール81の全体を径方向に挟み込む一対の挟持部212による簡単な構造を有している。
【0046】
そして、ホイール取付部21をステアリングホイール81に取り付ける際には、図2に示すように、第1アーム部31の連結端部311の回動中心軸線C2を、ステアリングホイール81の中心位置C1に合わせる必要がない。言い換えれば、第1アーム部31の連結端部311の回動中心軸線C2が、ステアリングホイール81の中心位置C1から偏心していてもよい。図3には、ステアリングホイール81が図2の状態から180°回動されたときの外部操舵装置1を示す。
【0047】
外部操舵装置1を動作させるときには、作業者が操作部6Bを操作し、操作部6Bによる指令を受けて制御部6Aがモータ5の回転を制御して、ヘッドレスト取付部22及び第1アーム部31に対してホイール取付部21が右方向R又は左方向Lに回動する。このとき、第1アーム部31の連結端部311の回動中心軸線C2がステアリングホイール81の中心位置C1から偏心している場合には、図3に示すように、ステアリングホイール81の回動に伴って、第1アーム部31の連結端部311の位置及び姿勢が変化する(ヘッドレスト取付部22から第1アーム部31の連結端部311までの距離が変化する)。このとき、伸縮部材320によって第2アーム部32の長さが変化するとともに、各自在継手41,42によって第1アーム部31及び第2アーム部32の姿勢(傾斜角度)が変化することができる。
【0048】
そして、伸縮部材320及び自在継手41,42を利用して連結部3が変形することによって、第1アーム部31の連結端部311の位置及び姿勢の変化に対応することができる。
そのため、ステアリングホイール81に対する外部操舵装置1の中心位置合わせを不要にすることができ、自動車への外部操舵装置1の取付を簡単にすることができる。また、ステアリングホイール81へのホイール取付部21の取付を簡単にすることができる。
【0049】
それ故、本例の自動車用外部操舵装置1によれば、ステアリングホイール81に対する中心位置合わせが不要であり、自動車への取付を簡単にすることができる。
【0050】
また、外部操舵装置1は、シート82におけるヘッドレスト84の支持部83を利用して、自動車8に対する取付位置を固定することができ、ステアリングホイール81の回転位置を狙いの回転位置にすることが容易である。
また、回転体7及び導通端子63を利用した制御装置6の構造により、作業者が復帰スイッチ62Sを操作したときには、ステアリングホイール81の回転位置を、操舵車輪85が自動車8の正面を向く中央位置に極めて簡単に復帰させることができる。そのため、外部操舵装置1を用いたステアリングホイール81の操作性を格段に向上させることができる。
【0051】
また、外部操舵装置1の構造は、次のように種々の構造とすることもできる。
具体的には、第2アーム部32を伸縮可能にする代わりに、第1アーム部31又は第3アーム部33を伸縮可能にすることができる。また、モータ5、回転体7、導通端子63等は、上記実施例に示した部位とは異なる部位に取り付けることもできる。
【0052】
例えば、図12に示すように、第2アーム部32の代わりに、第1アーム部31に伸縮部材310(シリンダ311及びシリンダロッド312)を設け、モータ5、回転体7、導通端子63等を、ヘッドレスト取付部22と第3アーム部33との連結部分に設けることができる。また、モータ5、回転体7及び導通端子63は、第2アーム部32に設けることも可能である。
【0053】
また、図13に示すように、第2自在継手42を廃止し、第1アーム部31に伸縮部材310(シリンダ311及びシリンダロッド312)を設けるとともに第2アーム部32に伸縮部材320(シリンダ321及びシリンダロッド322)を設ける。さらに、第1アーム部31と第2アーム部32とを第1自在継手41によって連結し、第2アーム部32をヘッドレスト取付部22に連結することもできる。
また、アーム部31,32,33のいずれかを2の分割アーム部に分割し、この分割アーム部同士の間にモータ5、回転体7及び導通端子63を配置することもできる。
【符号の説明】
【0054】
1 外部操舵装置
21 ホイール取付部
211 ベース部
212 挟持部
22 ヘッドレスト取付部
3 連結部
31 第1アーム部
32 第2アーム部
33 第3アーム部
41 第1自在継手
42 第2自在継手
5 モータ
6A 制御部
6BA 操作部
61R 右方向リレー
61L 左方向リレー
62R 右方向スイッチ
62L 左方向スイッチ
62S 復帰スイッチ
63 導通端子
641 第1端子
642 第2端子
7 回転体
71 第1螺旋状溝部
72 第2螺旋状溝部
73 非導通部
8 自動車
81 ステアリングホイール
82 シート
83 支持部
84 ヘッドレスト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13