特許第6409586号(P6409586)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6409586
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】工作機械システム及び規則設定方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/00 20060101AFI20181015BHJP
   G05B 19/4063 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
   B23Q17/00 D
   G05B19/4063 L
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-7566(P2015-7566)
(22)【出願日】2015年1月19日
(65)【公開番号】特開2016-132057(P2016-132057A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100105946
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 富彦
(72)【発明者】
【氏名】脇田 幹仁
(72)【発明者】
【氏名】河合 秀貢
【審査官】 山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−301615(JP,A)
【文献】 特開2006−284417(JP,A)
【文献】 特開2001−69234(JP,A)
【文献】 特開2001−88069(JP,A)
【文献】 特開2014−8589(JP,A)
【文献】 特開昭62−63310(JP,A)
【文献】 実開平3−106016(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/00,
G05B 19/18−19/416,19/42−19/427
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械と周辺装置がネットワークで接続された工作機械システムであって、
前記工作機械は、
複数種類の規則の中からいずれか1つの規則を設定する第1設定部と、
前記第1設定部で設定された規則に従って情報を第1表示部に表示する第1表示制御部と、
前記ネットワークを通じて前記周辺装置と通信を行う第1通信部と、を備え、
前記周辺装置は、
前記複数種類の規則の中からいずれか1つの規則を設定する第2設定部と、
前記第2設定部で設定された規則に従って情報を第2表示部に表示する第2表示制御部と、
前記ネットワークを通じて前記工作機械と通信を行う第2通信部と、を備え、
前記第1設定部と前記第2設定部のいずれか一方が前記規則を設定した場合、他方も同じ規則に設定する工作機械システム。
【請求項2】
前記第1設定部又は前記第2設定部が前記規則を設定した場合、前記第1通信部又は前記第2通信部は、前記第1設定部又は前記第2設定部で設定された前記規則に関する情報を前記周辺装置又は前記工作機械に送信し、
前記第2設定部又は前記第1設定部は、前記第2通信部又は前記第1通信部を介して受け取った前記規則に関する情報に基づいて、前記第1設定部又は前記第2設定部で設定した前記規則と同じ規則に設定する請求項1に記載の工作機械システム。
【請求項3】
前記第1設定部又は前記第2設定部が特定条件下において前記規則を設定した場合、前記第1通信部又は前記第2通信部は、前記第1設定部又は前記第2設定部で設定された前記規則に関する情報を前記周辺装置又は前記工作機械に送信しない請求項2に記載の工作機械システム。
【請求項4】
前記特定条件は、システムが起動された後に前記規則に関する情報が少なくとも1度送信されたことである請求項3に記載の工作機械システム。
【請求項5】
前記第2設定部は、自身の周辺装置についてだけ前記規則の設定を変更する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の工作機械システム。
【請求項6】
前記工作機械は、前記第1設定部で設定された前記規則に関する情報を記憶する第1記憶部を備え、
前記周辺装置は、前記第2設定部で設定された前記規則に関する情報を記憶する第2記憶部を備え、
前記第1設定部及び前記第2設定部は、システムが起動されるときに前記第1記憶部及び前記第2記憶部に記憶された前記規則に関する情報に基づいて前記規則を設定する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の工作機械システム。
【請求項7】
前記第1設定部又は前記第2設定部は、システムが起動されるときに前記第1記憶部又は前記第2記憶部に記憶された前記規則に関する情報に基づいて前記規則を復元するか否かについて設定可能である請求項6に記載の工作機械システム。
【請求項8】
前記規則は、少なくとも言語、単位、文字の大きさのいずれかを含む請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の工作機械システム。
【請求項9】
工作機械と周辺装置がネットワークで接続され、前記工作機械の第1表示部と前記周辺装置の第2表示部とが情報を表示する際の規則を設定する規則設定方法であって、
前記工作機械は、
複数種類の規則の中からいずれか1つの規則を設定することと、
設定された規則に従って情報を前記第1表示部に表示することと、
前記ネットワークを通じて前記周辺装置と通信を行うことと、を実行し、
前記周辺装置は、
前記複数種類の規則の中からいずれか1つの規則を設定することと、
前記第2設定部で設定された規則に従って情報を前記第2表示部に表示することと、
前記ネットワークを通じて前記工作機械と通信を行うことと、を実行し、
前記第1設定部と前記第2設定部のいずれか一方が前記規則を設定した場合、他方も同じ規則に設定する規則設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械及び周辺装置の表示部において情報が表示される際の規則を設定する工作機械システム及び規則設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械は、工作機械本体と、その工作機械本体を制御する制御部とを有する。また、工作機械は、各種情報を表示する表示部と、オペレータ(作業者)によって操作される操作部とを有する。オペレータは、表示部に表示されている情報を確認しつつ操作部を操作することによって工作機械の各種設定などを行う。また、工作機械が表示部と操作部とを有する周辺装置にネットワークを介して接続され、オペレータが周辺装置の表示部に表示されている情報を確認しつつ周辺装置の操作部を操作することによって工作機械の各種設定などを行うことがある。
【0003】
工作機械及び周辺装置の表示部に表示される情報は所定の規則に従って表示される。例えば、情報が所定の言語で表示される。オペレータが日本人であれば、工作機械及び周辺装置の表示部に表示される情報の言語は日本語でよい。しかし、オペレータが外国人の場合は、その外国人が理解できる言語の情報が表示部に表示されることが好ましい。例えば、特許文献1には、親機が所定の言語で表示されるように設定されている場合は、子機においても親機に設定されている言語と同じ言語で表示されるように設定する電話機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−69234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1に記載されている装置は電話機であるが、工作機械と周辺装置とを備えた工作機械システムにおいて情報の規則を設定する技術を開示した文献は存在しない。また、そのような技術を工作機械システムに適用するためには改善の余地がある。
【0006】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、工作機械及び周辺装置の表示部において情報が表示される際の規則をオペレータに負担をかけずに設定することができる工作機械システム及び規則設定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、工作機械と周辺装置がネットワークで接続された工作機械システムであって、工作機械は、複数種類の規則の中からいずれか1つの規則を設定する第1設定部と、第1設定部で設定された規則に従って情報を第1表示部に表示する第1表示制御部と、ネットワークを通じて周辺装置と通信を行う第1通信部と、を備え、周辺装置は、複数種類の規則の中からいずれか1つの規則を設定する第2設定部と、第2設定部で設定された規則に従って情報を第2表示部に表示する第2表示制御部と、ネットワークを通じて工作機械と通信を行う第2通信部と、を備え、第1設定部と第2設定部のいずれか一方が規則を設定した場合、他方も同じ規則に設定することを特徴とする。
【0008】
また、第1設定部又は第2設定部が規則を設定した場合、第1通信部又は第2通信部は、第1設定部又は第2設定部で設定された規則に関する情報を周辺装置又は工作機械に送信し、第2設定部又は第1設定部は、第2通信部又は第1通信部を介して受け取った規則に関する情報に基づいて、第1設定部又は第2設定部で設定した規則と同じ規則に設定する構成でもよい。
【0009】
また、第1設定部又は第2設定部が特定条件下において規則を設定した場合、第1通信部又は第2通信部は、第1設定部又は第2設定部で設定された規則に関する情報を周辺装置又は工作機械に送信しない構成でもよい。また、特定条件は、システムが起動された後に規則に関する情報が少なくとも1度送信されたことであってもよい。
【0010】
また、第2設定部は、自身の周辺装置についてだけ規則の設定を変更する構成でもよい。また、工作機械は、第1設定部で設定された規則に関する情報を記憶する第1記憶部を備え、周辺装置は、第2設定部で設定された規則に関する情報を記憶する第2記憶部を備え、第1設定部及び第2設定部は、システムが起動されるときに第1記憶部及び第2記憶部に記憶された規則に関する情報に基づいて規則を設定する構成でもよい。
【0011】
また、第1設定部又は第2設定部は、システムが起動されるときに第1記憶部又は第2記憶部に記憶された規則に関する情報に基づいて規則を復元するか否かについて設定可能であってもよい。また、規則は、少なくとも言語、単位、文字の大きさのいずれかを含んでいてもよい。
【0012】
また、本発明では、工作機械と周辺装置がネットワークで接続され、工作機械の第1表示部と周辺装置の第2表示部とが情報を表示する際の規則を設定する規則設定方法であって、工作機械は、複数種類の規則の中からいずれか1つの規則を設定することと、設定された規則に従って情報を第1表示部に表示することと、ネットワークを通じて周辺装置と通信を行うことと、を実行し、周辺装置は、複数種類の規則の中からいずれか1つの規則を設定することと、第2設定部で設定された規則に従って情報を第2表示部に表示することと、ネットワークを通じて工作機械と通信を行うことと、を実行し、第1設定部と第2設定部のいずれか一方が規則を設定した場合、他方も同じ規則に設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1設定部と第2設定部のいずれか一方が規則を設定した場合、他方も同じ規則に設定するので、工作機械の表示部及び周辺装置の表示部において情報が表示される際の規則をオペレータに負担をかけずに設定することができる。
【0014】
また、第1設定部又は第2設定部が規則を設定した場合、第1通信部又は第2通信部は、第1設定部又は第2設定部で設定された規則に関する情報を周辺装置又は工作機械に送信し、第2設定部又は第1設定部は、第2通信部又は第1通信部を介して受け取った規則に関する情報に基づいて、第1設定部又は第2設定部で設定した規則と同じ規則に設定する。このような構成によれば、オペレータは工作機械又は周辺装置の規則を設定するだけで工作機械と周辺装置の規則も自動的に設定されるため、システムにおける複数の装置の規則をそれぞれ設定する手間が省け、作業効率が向上する。
【0015】
また、第1設定部又は第2設定部が特定条件下において規則を設定した場合、第1通信部又は第2通信部は、第1設定部又は第2設定部で設定された規則に関する情報を周辺装置又は工作機械に送信しないので、システムの起動中において無暗に規則の設定が変更されてしまうのを防止することができる。また、特定条件は、システムが起動された後に規則に関する情報が少なくとも1度送信されたことである場合は、少なくとも1度は規則に関する情報を送信することができ、システムにおける全ての装置に対して規則の変更を1台の装置の設定変更で実現することができる。
【0016】
また、第2設定部は、自身の周辺装置についてだけ規則の設定を変更するので、工作機械における規則の設定を変更することなく、オペレータが操作する周辺装置についてだけ規則の設定を変更することができる。また、工作機械は、第1設定部で設定された規則に関する情報を記憶する第1記憶部を備え、周辺装置は、第2設定部で設定された規則に関する情報を記憶する第2記憶部を備え、第1設定部及び第2設定部は、システムが起動されるときに第1記憶部及び第2記憶部に記憶された規則に関する情報に基づいて規則を設定するので、オペレータが起動時において標準の言語から所望の言語に設定を変更する手間を省くことができる。
【0017】
また、第1設定部又は第2設定部は、システムが起動されるときに第1記憶部又は第2記憶部に記憶された規則に関する情報に基づいて規則を復元するか否かについて設定可能であるので、起動時に設定される規則の種類を増やすことができ、オペレータによる規則の設定変更の手間を極力減らすことができる。また、規則は、少なくとも言語、単位、文字の大きさのいずれかを含んでいる場合は、オペレータが表示部に表示される情報をより一層認識しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態における工作機械システムの構成を示すブロック図である。
図2】工作機械本体の構造を示す断面図である。
図3】実施形態における規則設定方法の一例を示すシーケンス図である。
図4】第2表示部における起動中の情報の表示例を示す図である。
図5】第2表示部におけるネットワーク接続中の情報の表示例を示す図である。
図6】第2表示部における補正値の情報の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。また、図面においては実施形態を説明するため、一部分を大きく又は強調して記載するなど適宜縮尺を変更して表現する場合がある。
【0020】
図1は、実施形態における工作機械システムSYSの構成を示すブロック図である。図1に示す工作機械システムSYSは、工作機械1と複数の周辺装置(図1に示す例では3つの周辺装置100A〜100C)とがネットワークで接続されたシステムである。本実施形態においては、工作機械1と複数の周辺装置100A〜100Cとが無線回線で接続されているが、有線回線で接続されてもよい。また、本実施形態においては、工作機械1の例として旋盤を用いて説明する。ただし、工作機械1は、旋盤以外のボール盤、スライス盤などであってもよい。
【0021】
工作機械1は、工作機械本体10と、工作機械制御部20と、第1表示部30と、第1演算処理部40と、第1通信部45と、第1記憶部50とを有する。なお、第1表示部30及び第1演算処理部40が、オペレータにより操作される工作機械1の操作装置(コントローラ)を構成する。工作機械本体(例えば旋盤本体)10は、ワークを回転させ、バイトと呼ばれる工具(ツール)でワークを削る機械である。
【0022】
工作機械本体10の構造の一例について簡単に説明する。図2は、工作機械本体10の構造を示す断面図である。図2に示すように、工作機械本体10は、モータ(図示せず)の回転力を伝達する主軸61と、ワーク200を保持(把持)するチャック62と、ワーク200を削る工具(ツール)63とを有している。
【0023】
主軸61は、モータの回転に伴って軸心Aを中心に回転する。チャック62は、軸心Aと同軸上に主軸61に固定されている。このチャック62は、図示しないチャック移動機構の動作に応じて、三方爪62aが径方向(図2に示す方向S)に移動することによりワーク200を保持する。すなわち、円筒形状のワーク200がチャック62の三方爪62aの間に挿入され、三方爪62aが径方向内側に移動することによりチャック62が閉まる。これにより、円筒形状のワーク200がチャック62に保持(把握)される。この状態で主軸61が回転すると、チャック62も回転し、チャック62に保持されたワーク200も回転する。
【0024】
工具63は、回転しているワーク200の周面を削るためのチップ63aが取り付けられている。工具63は、図示しないツール移動機構の動作に応じて、図2に示すようなワーク200に向かう方向Tや、軸心Aと平行な方向Uに移動する。なお、工具63の方向Tを切り込み方向という。また、工具63の切り込み方向Tの移動量を切り込み量という。また、工具63の方向Uを送り方向という。また、工具63の送り方向Uの移動量を送り量という。この工具63が切り込み方向Tに移動することにより、チップ63aがワーク200の周面と接触する。これにより、円筒形状のワーク200の周面が削られる。また、この工具63が送り方向Uに移動することにより、ワーク200の周面が送り方向Uに向かって順に削られていく。
【0025】
ツール移動機構が、加工設定値に基づいて自動的にワークの加工を行う。加工設定値は、「ツールの軌跡」、「ツールの送り速度」、「送りの加減速」のデータを含んでいる。これらのデータは、工具63の移動を制御するためのデータである。ここで、「ツールの軌跡」は、工具63の刃先(すなわちチップ63aにおけるワーク200と接触する先端部)がどのような軌跡を描いて移動するかを示すデータである。つまり、「ツールの軌跡」は、工具63の刃先の切り込み量及び送り量がどのように変化するかを示すデータである。このデータは、例えば座標データ(x,y,z)で表される。「ツールの送り速度」は、工具63の送り方向Uの移動速度に関するデータである。「送りの加減速」は、工具63の送り方向Uの加速度・減速度に関するデータである。
【0026】
図1の説明に戻り、工作機械制御部20は、加工設定値(つまり、工具63の移動を制御するためのデータ)に基づいて工具63(すなわちツール移動機構)を制御する。第1表示部30は、例えば液晶画面(表示画面)に画像を表示する表示装置で構成される。この第1表示部30の表示画面上にタッチパネル31が配置されている。このタッチパネル31は、オペレータの表示画面のタッチ操作の位置又は領域を検出し、その位置又は領域に応じた検出信号を第1演算処理部40に出力する。このタッチパネル31が、オペレータによって操作される操作部を構成する。
【0027】
第1演算処理部40は、工作機械本体10の制御(つまり工作機械制御部20により行われる制御)以外の工作機械1全般の制御を司る処理部である。図1に示すように、第1演算処理部40は、第1制御部(第1設定部)41及び第1表示制御部42を備えている。第1制御部41は、オペレータの操作(例えば図示しないボタンの操作)に応じて工作機械1を起動させ、またシャットダウン(稼働を停止)させる。また、第1制御部41は、オペレータによるタッチパネル31のタッチ操作に応じて、複数種類の規則の中からいずれか1つの規則を設定する。ここで、情報の規則とは、第1表示部30の表示画面に情報を表示する際の規則(ルール)であって、例えば、「言語」、「単位」、「文字の大きさ」などを含む。「言語」の場合、情報を日本語、英語、中国語(繁体字)、中国語(簡体字)などの言語で表示することが情報の規則に相当する。「単位」の場合、ワークの寸法などの情報をμm、mm、cm、インチなどの単位で表示することが情報の規則に相当する。「文字の大きさ」の場合、文字の情報を予め決められているフォントサイズで表示することが情報の規則に相当する。
【0028】
第1表示制御部42は、第1制御部41で設定された規則に応じた情報を第1記憶部50から読み出し、読み出した情報を第1表示部30の表示画面に表示する制御を行う処理部である。第1通信部45は、ネットワークを通じて周辺装置100A〜100Cとの間でデータ通信を行う処理部である。本実施形態では、第1通信部45は、第1制御部41で設定された規則に関する情報(どのような規則が工作機械1において設定されたかを示す情報)をネットワークを介して周辺装置100A〜100Cに送信する。また、第1通信部45は、周辺装置100A〜100Cから送信される補正量データやリモートコントロールの情報をネットワークを介して受信する。
【0029】
なお、工作機械制御部20は、周辺装置から送信される補正量データに基づいて、ワーク200の加工部分における寸法の補正を行う。例えば、工作機械制御部20は、ワーク200の外径の寸法を現在の寸法よりも5μm小さくすることを示す補正量データ(「−5」)を受け取ると、ワーク200の外径の寸法が5μm小さくなるように、加工設定値における「ツールの軌跡」、「ツールの送り速度」、及び「送りの加減速」のデータを変更する。これにより、ワーク200の外径の寸法が補正される。
【0030】
第1記憶部50は、規則ごとの各種情報を記憶する。また、第1記憶部50は、工作機械制御部20による制御を実行させるためのプログラムや、第1演算処理部40に処理を実行させるためのプログラムなども記憶する。
【0031】
周辺装置100A〜100Cは、補正量入力装置やリモートコントローラなどの装置である。補正量入力装置は、ワークの寸法に対する補正量(補正値やオフセット値ともいう。)を工作機械1に入力するための装置である。リモートコントローラは、工作機械1を遠隔操作するための装置である。周辺装置100Aは、図1に示すように、第2表示部110と、第2演算処理部120と、第2記憶部130とを有する。図1では省略しているが、周辺装置100B,100Cも、周辺装置100Aと同じ構成(第2表示部110、第2演算処理部120、第2記憶部130)を備えている。
【0032】
第2表示部110は、例えば液晶画面(表示画面)に画像を表示する表示装置で構成される。この第2表示部110の表示画面上にタッチパネル111が配置されている。このタッチパネル111は、オペレータの表示画面のタッチ操作の位置又は領域を検出し、その位置又は領域に応じた検出信号を第2演算処理部120に出力する。このタッチパネル111が、オペレータによって操作される操作部を構成する。
【0033】
第2演算処理部120は、周辺装置全般の制御を司る処理部である。図1に示すように、第2演算処理部120は、第2制御部(第2設定部)121及び第2表示制御部122を備えている。第2制御部121は、オペレータの操作(例えば図示しないボタンの操作)に応じて周辺装置を起動させ、またシャットダウン(稼働を終了)させる。また、第2制御部121は、複数種類の規則の中からいずれか1つの規則を設定する。本実施形態では、第2制御部121は、工作機械1から送信される規則に関する情報で示された規則を設定する。また、第2制御部121は、オペレータによるタッチパネル111のタッチ操作に応じて、複数種類の規則の中からいずれか1つの規則を設定する。また、第2制御部121は、オペレータによるタッチパネル111のタッチ操作に応じて、起動時(又は再起動時)の規則を、シャットダウンさせた際に設定されていた規則に復元するか否かを設定する。
【0034】
第2表示制御部122は、第2制御部121で設定された規則に応じた情報を第2記憶部130から読み出し、読み出した情報を第2表示部110の表示画面に表示する制御を行う処理部である。第2通信部125は、ネットワークを通じて工作機械1との間でデータ通信を行う処理部である。本実施形態では、第2通信部125は、工作機械1から送信される規則に関する情報をネットワークを介して受信する。また、第2通信部125は、補正量データやリモートコントロールの情報をネットワークを介して工作機械1に送信する。
【0035】
第2記憶部130は、規則ごとの各種情報を記憶する。また、第2記憶部130は、周辺装置による制御を実行させるためのプログラムなども記憶する。
【0036】
次に、上記の工作機械システムSYSの動作について説明する。なお、本実施形態においては、情報の規則として言語を例にあげて説明する。
【0037】
図3は、実施形態における規則設定方法の一例を示すシーケンス図である。図3に示すように、工作機械1において、第1制御部41は、オペレータによる操作(例えば図示しないボタンの操作)に応じて工作機械1を起動させる(ステップS11)。工作機械1の起動に応じて、第1通信部45は、ネットワークに接続して周辺装置100A〜100Cと通信可能な状態となる(ステップS12)。
【0038】
また、周辺装置100A〜100Cにおいても、第2制御部121は、オペレータによる操作(例えば図示しないボタンの操作)に応じて周辺装置100A〜100Cを起動させる(ステップS21)。周辺装置100A〜100Cの起動に応じて、第2通信部125は、ネットワークに接続して工作機械1と通信可能な状態となる(ステップS22)。なお、工作機械1が起動したときに、第1制御部41が起動信号を周辺装置100A〜100Cに送信することにより、自動的に周辺装置100A〜100Cを起動させるようにしてもよい。また、周辺装置が起動したときに、第2制御部121が起動信号を工作機械1に送信することにより、自動的に工作機械1を起動させるようにしてもよい。
【0039】
図4は、第2表示部110(ここでは補正量入力装置)における起動中の情報の表示例を示す図である。図4(A)は起動中の情報が日本語で表示されている場合を示し、図4(B)は起動中の情報が英語で表示されている場合を示し、図4(C)は起動中の情報が中国語(繁体字)で表示されている場合は示し、図4(D)は起動中の情報が中国語(簡体字)で表示されている場合を示している。
【0040】
図5は、第2表示部110におけるネットワーク接続中の情報の表示例を示す図である。図5(A)はネットワーク接続中の情報が日本語で表示されている場合を示し、図5(B)はネットワーク接続中の情報が英語で表示されている場合を示し、図5(C)はネットワーク接続中の情報が中国語(繁体字)で表示されている場合は示し、図5(D)はネットワーク接続中の情報が中国語(簡体字)で表示されている場合を示している。
【0041】
第1制御部41は、まず、予め設定されている標準の言語(例えば日本語)を第1表示部30に表示する情報の言語として設定する(ステップS13)。次に、第1制御部41は、オペレータによるタッチパネル31のタッチ操作によって規則としての言語が選択されたか否か判定する(ステップS14)。第1制御部41は、言語(例えば英語)が選択されたと判定した場合は(ステップS14のYES)、オペレータによって選択された言語を設定し、第1表示制御部42は、第1制御部41で設定された言語の情報を第1記憶部50から読み出して第1表示部30の表示画面に表示する(ステップS15)。
【0042】
次に、第1制御部41は、工作機械システムSYSが起動された後に、ステップS15において第1制御部41により設定された言語を示す言語特定情報(上記した規則に関する情報に対応する情報)が送信された回数が0回であるか否か判定する(ステップS16)。言語特定情報の送信回数は、言語特定情報を送信する度にカウントするカウンタの値に基づいて判断される。言語特定情報の送信回数が0回である場合は(ステップS16のYES)、第1通信部45は、言語特定情報をネットワークを介して周辺装置100A〜100Cに送信する(ステップS17)。このとき、第1制御部41はカウンタの値を1加算する。
【0043】
このように、言語特定情報は工作機械システムSYSの起動後の最初の1回目だけ送信され、その後は送信されない。しかし、言語特定情報の送信回数は1回に限らず、複数回(2回、3回、・・・)に制限されていてもよい。言語特定情報の送信回数に制限を設けない構成でもよい。
【0044】
その後、第1制御部41は、オペレータによる操作(例えば図示しないボタンの操作)に応じて工作機械1をシャットダウンさせる(ステップS18)。
【0045】
一方、第2制御部121は、予め設定されている標準の言語(例えば日本語)又は前回のシャットダウン時に設定されていた言語を設定する(ステップS23)。このとき、第2制御部121が標準の言語を設定するか、前回のシャットダウン時に設定されていた言語を設定するかについては、後述する起動時の言語の復元設定の設定状態に基づいて判断される(ステップS27参照)。
【0046】
次に、第2通信部125が工作機械1から送信される言語特定情報(規則に関する情報)を受信した場合は、第2制御部121は、その言語特定情報で示された言語を規則として設定する。また、第2表示制御部122は、第2制御部121で設定された言語(例えば英語)の情報を第2記憶部130から読み出して第2表示部110の表示画面に表示する(ステップS24)。このように、第2制御部121が工作機械1から送信される言語特定情報に基づいて言語を設定するので、全ての周辺装置100A〜100Cにおいて工作機械1と同じ言語を設定することが可能となる。
【0047】
次に、第2制御部121は、オペレータによるタッチパネル111のタッチ操作によって言語が選択されたか否か判定する(ステップS25)。第2制御部121は、言語が選択されたと判定した場合は(ステップS25のYES)、オペレータによって選択された言語を設定し、第2表示制御部122は、第2制御部121で設定された言語の情報を第2記憶部130から読み出して第2表示部110の表示画面に表示する(ステップS26)。
【0048】
図6は、第2表示部110における補正値の情報の表示例を示す図である。図6(A)は補正値の情報が日本語で表示されている場合を示し、図6(B)は補正値の情報が英語で表示されている場合を示し、図6(C)は補正値の情報が中国語(繁体字)で表示されている場合は示し、図6(D)は補正値の情報が中国語(簡体字)で表示されている場合を示している。例えば、図6(B)に示すように、第2表示部110において補正値の情報が英語で表示されている場合に、外国人であるオペレータは英語で表示されている補正値の情報を確認しつつ、タッチパネル111のタッチ操作を行うことで補正値を入力する。オペレータが日本人に交代した場合は、日本人であるオペレータは、タッチパネル111のタッチ操作を行うことで、言語として日本語を選択する。第2制御部121は、オペレータによって日本語が選択されたことを確認した場合に、第2表示部110の表示画面に表示される補正値の情報の言語を英語から日本語に切り替える。
【0049】
また、第2制御部121は、オペレータによるタッチパネル111のタッチ操作に応じて、次回の起動時(又は再起動時)の言語(規則)をシャットダウンさせた際に設定されていた言語(規則)に復元するか否かを設定する(ステップS27)。オペレータが、次回の起動時(又は再起動時)の言語をシャットダウンさせた際に設定されていた言語に復元することとする旨設定した場合は、第2制御部121は、シャットダウン時において現在設定されている言語特定情報(例えば言語の種類を示すフラグ)を第2記憶部130に記憶した後にシャットダウンさせる(ステップS28)。これにより、ステップS23において、第2制御部121は、第2記憶部130に記憶されている言語特定情報に基づいて、前回のシャットダウン時の言語を復元して設定することが可能となる。一方、オペレータが、次回の起動時(又は再起動時)の言語をシャットダウンさせた際に設定されていた言語に復元することとしない旨設定した場合は、言語特定情報は第2記憶部130に記憶されない。この場合、ステップS23において、第2制御部121は、予め設定されている標準の言語を設定する。
【0050】
図3においては、複数種類の規則の設定として、複数種類の言語のいずれかが設定される場合について説明した。しかし、複数種類の規則の設定として、複数種類の単位のいずれかや複数種類の文字の大きさのいずれかなどが設定される場合についても、図3に示した処理と同様の処理により実現することが可能である。この場合、図3の処理における「言語」を、「単位」や「文字の大きさ」に置き換える。
【0051】
以上に説明したように、本実施形態では、工作機械1の第1設定部41が規則を設定した場合、周辺装置100A〜100Cの第2制御部121も同じ規則に設定する。このような構成によれば、工作機械1及び周辺装置100A〜100Cの表示部30,110において情報が表示される際の規則をオペレータに負担をかけずに設定することができる。
【0052】
なお、周辺装置100A〜100Cの第2設定部121が規則を設定した場合、工作機械1の第1制御部41も同じ規則に設定する構成であってもよい。このような構成によっても、工作機械1及び周辺装置100A〜100Cの表示部30,110において情報が表示される際の規則をオペレータに応じて設定することができる。
【0053】
また、本実施形態では、第1設定部41が規則を設定した場合、第1通信部45は、第1設定部41で設定された規則に関する情報を周辺装置100A〜100Cに送信し、第2設定部121は、第2通信部125を介して受け取った規則に関する情報に基づいて、第1設定部41で設定した規則と同じ規則に設定する。このような構成によれば、オペレータは工作機械1の規則を設定するだけで周辺装置100A〜100Cの規則も自動的に設定されるため、複数の周辺装置100A〜100Cの規則を設定する手間が省け、作業効率が向上する。
【0054】
なお、第2設定部121が規則を設定した場合、第2通信部125は、第2設定部121で設定された規則に関する情報を工作機械1に送信し、第1設定部41は、第1通信部45を介して受け取った規則に関する情報に基づいて、第2設定部121で設定した規則と同じ規則に設定する構成であってもよい。このような構成によっても、オペレータは周辺装置100A〜100Cのいずれかの規則を設定するだけで工作機械1の規則も自動的に設定されるため、工作機械1の規則を設定する手間が省け、作業効率が向上する。
【0055】
また、本実施形態では、第1設定部41が特定条件下において規則を設定した場合、第1通信部45は、第1設定部41で設定された規則に関する情報を周辺装置100A〜100Cに送信しない。このような構成によれば、システムSYSの起動中において無暗に規則の設定が変更されてしまうのを防止することができる。
【0056】
なお、第2設定部121が特定条件下において規則を設定した場合、第2通信部125は、第2設定部121で設定された規則に関する情報を工作機械1に送信しない構成でもよい。このような構成によっても、システムSYSの起動中において無暗に規則の設定が変更されてしまうのを防止することができる。
【0057】
また、本実施形態では、特定条件は、システムSYSが起動された後に規則に関する情報が少なくとも1度送信されたことである場合は、少なくとも1度は規則に関する情報を送信することができ、システムSYSにおける全ての装置に対して規則の変更を1台の装置の設定変更で実現することができる。
【0058】
また、本実施形態では、第2設定部121は、自身の周辺装置についてだけ規則の設定を変更する(ステップS25,S26参照)。このような構成によれば、工作機械1を操作するオペレータと周辺装置を操作するオペレータとが異なる場合、オペレータが所定の周辺装置についてだけ操作するような場合に、工作機械1における規則の設定を変更することなく、オペレータが操作する周辺装置についてだけ規則の設定を変更することができる。すなわち、仮に工作機械1(第1制御部41)だけが規則の設定を変更可能であれば、工作機械1を再起動(再度の電源投入)させなければならなくなる(ステップS13〜S15,S24参照)。また、所定の周辺装置についてだけ規則の設定を変更することができなくなってしまう、しかし、第2制御部121が上記した構成を備えたことにより、オペレータは工作機械1を再起動させることなく(つまり、システムSYSの稼働を妨げることなく)所定の周辺装置についてだけ規則の設定の変更することができる。なお、第1制御部41も、自身の工作機械1についてだけ規則の設定を変更する機能を備えていてもよい。
【0059】
また、本実施形態では、周辺装置100A〜100Cは、第2設定部121で設定された規則に関する情報を記憶する第2記憶部130を備え、第2設定部121は、システムSYSが起動されるときに第2記憶部130に記憶された規則に関する情報に基づいて規則を設定する。このような構成によれば、オペレータが周辺装置の起動時において標準の言語から所望の言語に設定を変更する手間を省くことができる。
【0060】
なお、工作機械1は、第1設定部41で設定された規則に関する情報を記憶する第1記憶部50を備え、第1設定部41は、システムSYSが起動されるときに第1記憶部50に記憶された規則に関する情報に基づいて規則を設定する構成であってもよい。
【0061】
また、本実施形態では、第2設定部121は、システムSYSが起動されるときに第2記憶部130に記憶された規則に関する情報に基づいて規則を復元するか否かについて設定可能である。このような構成によれば、周辺装置の起動時に設定される規則の種類を増やすことができ、オペレータによる規則の設定変更の手間を極力減らすことができる。なお、第1設定部41は、システムSYSが起動されるときに第1記憶部50に記憶された規則に関する情報に基づいて規則を復元するか否かについて設定可能であってもよい。
【0062】
また、本実施形態では、規則は、少なくとも言語、単位、文字の大きさのいずれかを含むので、オペレータが表示部30,110に表示される情報をより一層認識しやすくなる。
【0063】
以上の実施形態について説明したが、本発明は図示の構成等に限定されるものではなく、各構成の機能や用途などを逸脱しない範囲で変更は可能である。
【0064】
例えば、上記した実施形態では、規則は、言語、単位、文字の大きさとしていたが、表示部30,110における画面のレイアウト、文字の色、画面の背景の色、文字の書体などであってもよい。
【0065】
また、オペレータは、第1表示部30の表示画面上に配置されているタッチパネル31や、第2表示部110の表示画面上に配置されているタッチパネル111を操作することで規則の設定を行っていた。しかし、このような構成に限定されず、工作機械1や周辺装置100A〜100Cに設けられているボタンやスイッチなどの操作部を操作することで規則の設定を行ってもよい。また、図1に示す例では、周辺装置は3台であったが、2台であっても4台以上であってもよい。また、工作機械システムSYSは、複数台の工作機械1と1台又は複数台の周辺装置とで構成されていてもよい。
【0066】
また、工作機械システムSYSにおける各装置は同一の敷地内(例えば同じ工場内)に設置されていることを想定している。しかし、このような構成に限定されず、工作機械システムSYSにおける各装置は異なる敷地内に設置されてもよい。
【符号の説明】
【0067】
SYS…工作機械システム、1…工作機械、30…第1表示部、40…第1演算処理部、41…第1制御部(第1設定部)、42…第1表示制御部、45…第1通信部、50…第1記憶部、100A〜100C…周辺装置、110…第2表示部、120…第2演算処理部、121…第2制御部(第2設定部)、122…第2表示制御部、125…第2通信部、130…第2記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6