(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係るエレベータの制御システムについて図面を参照して説明する。
【0013】
(発明の背景)
エレベータは、通常、エレベータシャフト内に、乗りかご、シーブ、釣合おもり、巻き上げ機(図示せず)を有する。乗りかごは、巻き上げ機のモータ軸に設けられたシーブに巻き掛けられたメインロープを介して釣合おもりに連結される。
【0014】
このような構成においては、メインロープに乗かごと釣合おもりの重量が掛かり、次第にメインロープが伸長する。これに伴い、昇降路(エレベータシャフト)下方のピットに設けられるオイルバッファと釣合おもりあるいは乗りかごとの隙間寸法などが小さくなるので、保守点検において、メインロープの伸びを確認し、隙間寸法を常に規定寸法に維持するようになっている。
【0015】
この保守点検においては、エレベータの運転モードを、呼びに応じた乗りかごの昇降を禁止するピット点検モード(所定点検モード)に設定して、乗りかごを最下階から最上階に上昇させて固定した後、最下階下方のピット内に作業員が入り、カウンタクリアランス測定を行うことにより、メインロープの伸びを確認する。カウンタクリアランス測定とは、オイルバッファと釣合おもり(カウンタウェイト)の隙間寸法(クリアランス)を測定することである。ここで、「呼び」には「乗場呼び」と「かご呼び」の両方が含まれる。
【0016】
カウンタクリアランス測定を終えた後は、乗りかごを最上階から最下階に下降させることになるが、作業手順を誤ると、従来の構成では、作業員がピットから最下階の乗場へと出てしまわないうちに、乗りかごが最上階から最下階に下降してしまう虞があった。
【0017】
そこで、本発明は、作業員の安全を確保可能なエレベータの制御システムを提供することを課題としている。以下、この課題を解決するための構成について説明する。
【0018】
(実施形態1)
1.構成
1−1.概要
図1は、実施形態1に係るエレベータシステムの構成を示す図である。
【0019】
本実施形態のエレベータシステムは、1台のエレベータ20を有する。エレベータ20は、エレベータシャフトES内に、乗りかご21、シーブ22、釣合おもり23、巻き上げ機(図示せず)を有する。乗りかご21は、巻き上げ機のモータ軸に設けられたシーブ22に巻き掛けられたメインロープ24を介して釣合おもり23に連結される。乗りかご21は、巻き上げ機が駆動されると、シーブ22が回転することにより、釣合おもり23とともに互いに上下反対方向に昇降する。
【0020】
また、エレベータシステムは、各階の乗場Sに乗場ドア38を有する。乗場ドア38は、乗りかご21に備えられたかごドアを開閉することにより、連動機構を介して連動して開閉されるように構成されている。
【0021】
また、エレベータシステムは、乗りかご21の昇降や乗場ドア38の開閉等を含むエレベータ20の動作を制御する制御システムを有する。
【0022】
1−2.エレベータの制御システムの構成
1−2−1.基本構成
制御システムは、制御装置10、各種のスイッチ、及びインジケータを有する。
【0023】
具体的に、乗りかご21内には、かご内インジケータ51、戸開ボタン52、行先階ボタン53、かご内非常停止スイッチ31、かご内点検スイッチ32、点検運転操作器54が設けられている。これらのスイッチ31、32、ボタン52、53、点検運転操作器54やかご内インジケータ51は、テールコード25を介して制御装置10と接続される。
【0024】
かご内インジケータ51は、乗りかご21が現在いる階や乗りかご21の移動方向を表示する表示器である。
【0025】
戸開ボタン52は、戸開を行うための操作ボタンである。
【0026】
行先階ボタン53は、行先階を指定するための操作ボタンである。
【0027】
かご内非常停止スイッチ31は、乗りかご21の昇降を強制的に停止させる際に作業員により操作されるスイッチである。
【0028】
かご内点検スイッチ32は、エレベータの点検の際に利用されるスイッチである。
【0029】
点検運転操作器54は、点検運転において乗りかご21の昇降等を指示するためのアップボタンやダウンボタンを含む。
【0030】
かご内非常停止スイッチ31、かご内点検スイッチ32、点検運転操作器54は、乗りかご21内に備えられた錠付きの運転手盤(図示せず)に収容され、一般利用者は操作できないようになっている。
【0031】
各階の乗場Sには、乗場ドア38の近傍に、乗場ボタン37、乗場インジケータ40が設けられている。
【0032】
乗場ボタン37は、乗りかご21を呼び寄せる場合に一般利用者(乗客)や作業員により押下される操作ボタンである。
【0033】
乗場インジケータ40は、制御装置10から出力される信号に基づいて乗りかご21の現在階を表示する表示器である。
【0034】
乗場ドア38の上部には、乗場ドア開閉検出スイッチ42が設けられている。乗場ドア開閉検出スイッチ42は、乗場ドア38の開閉状態を検出するスイッチである。
【0035】
エレベータシャフトES内において、最下階の乗場ドア38の近傍には、ピットスイッチ41が設けられている。ピットスイッチ41は、作業員が最下階下方のピットPで点検作業をする場合に操作されるスイッチである。
【0036】
1−2−2.各種スイッチによる給電経路の接続及び遮断
乗場ドア開閉検出スイッチ42やピットスイッチ41は、モータやブレーキへの給電経路を接続するか遮断するかに関係するスイッチである。給電経路は、乗場ドア38が閉状態(乗場ドア開閉検出スイッチ42がON状態)やピットスイッチ41がON状態のときに接続され(危険側)、乗場ドア38が開状態(乗場ドア開閉検出スイッチ42がOFF状態)やピットスイッチ41がOFF状態のときに遮断される(安全側)。また、給電回路は、この遮断を、制御装置10を介することなしに(故障時にも左右されることなしに)行うことが可能なように構成されている。危険側とは、給電経路が接続されることにより、モータが作動して乗りかご21が昇降する可能性がある側である。安全側とは、給電経路が接続されていないことにより、モータが作動して乗りかご21が昇降する可能性がない側である。
【0037】
また、かご内点検スイッチ32も、モータやブレーキへの給電経路を接続するか遮断するかに関係するスイッチである。給電経路は、かご内点検スイッチ32がON状態のときに接続され(危険側)、かご内点検スイッチ32がOFF状態のときに遮断される(安全側)。かご内点検スイッチ32がOFF状態のとき、給電経路は、点検運転操作器54が手動操作(具体的にはアップボタンやダウンボタンが押下)されている最中だけ、遮断状態から接続状態に切り替わる。
【0038】
1−2−3.本実施形態におけるピット点検の終了時における給電経路の接続及び遮断に関する基本思想
本願発明者は、エレベータシャフトES(ピットPを含む)での作業(出入りする行動を含む)の終了時に、ピットスイッチ41をOFF状態(安全側)からON状態(危険側)に切り替えるのは、乗場ドア38が開状態(安全側)のときに行なうべきだと考えている。これは、エレベータシャフトES(ピットPを含む)の作業中(出入りする行動を含む)においては、ピットスイッチ41のOFF状態(安全側)と乗場ドア38の開状態(安全側)との少なくとも一方が必ず成立しているよう注意すべきだという思想に基づく。
【0039】
1−3.制御装置の構成
制御装置10は、制御部と、記憶部と、入出力インタフェースとを有する。
【0040】
記憶部は、プログラム、及び種々のデータを格納している。プログラムは、本実施形態の各種機能を実現するためのプログラムを含む。記憶部は、例えばRAM、ROM、HDD,SSD等により構成される。
【0041】
制御部は、制御装置10全体の動作を制御する。制御部は、記憶部からプログラムを読み出し、読み出したプログラムに基づいて種々のデータ等に対して演算処理を行うことにより、制御装置10における後述する各種の機能を実現する。制御部は、例えばCPU、MPU、またはFPGAで構成される。制御装置10の機能は、上述のようにハードウェアとソフトウェアとの協働で実現されてもよいし、ハードウェア(電子回路)のみで実現されてもよい。
【0042】
入出力インタフェースは、各種のスイッチとの間で各種信号を入出力するためのインタフェースである。入出力インタフェースは、制御部から出力される信号を所定の形式の信号に変換して出力する。また、入出力インタフェースは、各種のスイッチから入力された信号を所定の形式の信号に変換して制御部に出力する。
【0043】
2.動作
エレベータの制御システムによるエレベータの運転制御動作について説明する。
【0044】
本実施形態では、エレベータの制御システムは、運転モードとして、通常モード、点検モード、ピット点検モード、及びピット点検中止モードを有する。通常モードは、登録された呼びに応じて乗りかご21を昇降させる運転モードである。点検モードは、登録された呼びに応じた乗りかご21の昇降を禁止するが、乗りかご21内の所定の操作部(例えば点検運転操作器54)の手動操作にしたがった乗りかご21の昇降は許可する運転モードである。ピット点検モードは、登録された呼びに応じた乗りかご21の昇降を禁止するが、所定の操作による最下階から最上階への直行や、所定の操作による最上階から最下階への直行は許可する運転モードである。ピット点検中止モードは、ピット点検モードに設定されているときに異常が発生した場合に設定される運転モードであり、作業員により所定の解除操作が実行されない限り、乗りかご21の移動が禁止される。
【0045】
本実施形態では、ピット点検モードは、例えば、ピットPでのカウンタクリアランス測定の際に作業員により設定される。カウンタクリアランス測定とは、前述のように、エレベータシャフトES下方のピットPに設けられるオイルバッファと釣合おもり(カウンタウェイト)の隙間寸法(クリアランス)を測定することである。
【0046】
なお、ピット点検モードから通常モードへの復帰動作は、作業員により所定の操作部に対して所定の通常モード復帰操作が行われたことを前提として行われる。所定の通常モード復帰操作の具体的内容については後述する。まず、作業員によるピットクリアランスの測定作業の流れについて説明する。
【0047】
2−1.作業員によるピット点検作業の流れ
図2Aは、実施形態1に係るエレベータの制御システムにおける作業員によるピット点検作業の流れを示すフローチャートである。なお、
図2Aにおいて、実線で示す枠は作業員の作業内容を示し、破線は制御装置による制御内容あるいは制御状態を示す。制御装置による制御については、
図2Aを参照して作業員の作業を説明した後、
図2Bのフローチャートにより詳しく説明する。
【0048】
まず、作業員は、運転モードが通常モードで、かつ最下階にエレベータ20が停止しているときに、停止中のエレベータ20の乗りかご21内のかご内点検スイッチ32をOFF状態にする(S101)。
【0049】
これにより、運転モードが点検モードに移行し、登録された呼びに応じた乗りかご21の昇降が禁止される。これにより、点検モードにおいては、一般客が乗場ボタンを押しても応答しなくなる。そのため、点検モードになった号機において、乗りかご21が作業員の意に反して動き出すことが防止される。なお、点検モードにおいて、乗りかご21内の点検運転操作器54の手動操作による乗りかご21の昇降は可能である。
【0050】
次に、作業員は、かご内インジケータ51を見ながら戸開ボタン52や行先階ボタン53に対して所定の操作を行う(S102)。
【0051】
次に、作業員は、かご内点検スイッチ32をON状態にする(S103)。
【0052】
これにより、運転モードがピット点検モードに移行する。そして、登録された呼びに応じた乗りかご21の昇降が禁止されている状態は維持される。
【0053】
ピット点検モードに移行すると、最下階の乗場ドア38が自動的に戸閉され、乗りかご21が自動的に最上階へ移動する。また、乗場インジケータ40が点灯する。
【0054】
次に、作業員は、乗場インジケータ40が、乗りかご21が最上階に停止したことを示す表示をしているか否かを確認する(S104)。
【0055】
次に、作業員は、乗場ドア38を手で引くことにより開く(以下、「手動で戸開する」という)(S105)。なお、最下階の乗場ドア38には、一般利用者による乗場ドア38の手動での戸開を防止するロック装置が設けられている。作業員は、乗場ドア38を手動で戸開する際には、ロック装置によるドアロックを解除するためのキーを使用して最下階の乗場ドア38の手動での戸開を可能とする。
【0056】
次に、作業員は、ピットスイッチ41をOFF状態にする(S106)。
【0057】
次に、作業員は、ピットP内に入り、乗場ドア38を手動で戸閉する(S107)。
【0058】
次に、作業員は、ピット点検作業を行う(S108)。ピット点検作業は、前述のカウンタクリアランス測定を含む。
【0059】
作業員はピット点検作業を終えると、乗場ドア38を手動で戸開する(S109)。
【0060】
次に、作業員は、ピットPから最下階の乗場Sに出て、ピットスイッチ41をON状態にする(S110)。
【0061】
次に、作業員は、乗場ドア38を手動で戸閉する(S111)。
【0062】
次に、作業員は、最下階の乗場ボタンを所定時間内に所定回数押下する(S112)。所定時間は例えば10秒、所定回数は例えば4回である。
【0063】
これにより、乗りかご21が自動的に最下階へ移動し、最下階に停止した後、最下階の乗場ドア38が自動的に戸開される。そして、乗りかご21が最下階に到着後に所定時間が経過すると、運転モードが通常モードに復帰する。なお、通常モードへの復帰は、所定時間の経過に代えて、乗りかご21内のボタンやスイッチに対して所定の操作がなされたときに行うようにしてもよい。所定の操作は、例えば、戸開ボタン52の押下やかご内点検スイッチ32のOFF操作である。
【0064】
2−2.エレベータの運転制御動作
エレベータの運転制御動作について説明する。
図2Bは、実施形態1に係るエレベータの制御システムにおけるエレベータの運転制御動作を示すフローチャートである。なお、初期状態として、通常モードでエレベータ20の運転制御が行われているものとする。
【0065】
制御装置10は、乗りかご21内のかご内点検スイッチ32がOFF状態になったか否かを判断する(S1)。
【0066】
かご内点検スイッチ32がOFF状態になった場合(S1でYES)、制御装置10は、運転モードを点検モードに設定する(S2)。すると、乗場ボタン37が利用者により押下されても、制御装置10はこれを無視するようになる。つまり、点検モードになった号機は、一般客が乗場ボタン37を押しても応答しなくなるので、乗りかご21が作業員の意に反して動き出すことが防止される。
【0067】
一方、かご内点検スイッチ32がOFF状態になっていない場合(S1でNO)、制御装置10は、運転モードの変更を行うことなく、通常モードで維持する。
【0068】
制御装置10は、最下階に停止中のエレベータ20の乗りかご21内の戸開ボタン52や行先階ボタンに対して所定の操作があったか否かを判断する(S3)。所定の操作とは、戸開ボタン52や行先階ボタン53に対して所定の順番で所定の態様で行われる操作である。
【0069】
乗りかご21内の戸開ボタン52や行先階ボタン53に対して所定の操作がない場合(S3でNO)、制御装置10は、乗りかご21内のかご内点検スイッチ32がON状態になったか否かを判断する(S4)。
【0070】
乗りかご21内のかご内点検スイッチ32がON状態になった場合(S4でYES)、制御装置10は、運転モードを通常モードに戻す(S13)。
【0071】
これに対し、乗りかご21内のかご内点検スイッチ32がON状態になっていない場合(S4でNO)、つまりかご内点検スイッチ32のOFF状態が継続している場合、制御装置10は、ステップS3に戻り、当該ステップS3の判断を再度実行する。
【0072】
ステップS3において、乗りかご21内の戸開ボタン52や行先階ボタン53に対して所定の操作があった場合(S3でYES)、制御装置10は、ステップS4と同様に、乗りかご21内のかご内点検スイッチ32がON状態になったか否かを判断する(S5)。
【0073】
乗りかご21内のかご内点検スイッチ32がON状態になっていない場合(S5でNO)、つまりかご内点検スイッチ32のOFF状態が継続している場合、制御装置10は、当該ステップS5の判断を再度実行する。
【0074】
乗りかご21内のかご内点検スイッチ32がON状態になった場合(S5でYES)、制御装置10は、運転モードをピット点検モードに設定する(S13)。
【0075】
制御装置10は、運転モードをピット点検モードに設定してから所定時間が経過すると、最下階の乗場ドア38の戸閉を開始し、戸閉が完了すると、乗りかご21を最上階まで上昇走行させるように、巻き上げ機を制御する(S7)。
【0076】
制御装置10は、乗りかご21を最上階にまで走行させ、最上階の乗場の高さ位置に停止させると、各階の乗場インジケータ40に最上階を示す表示を行わせる(S8)。乗場インジケータ40は、乗りかご21が現在存在している階の階番号を表示する箇所階表示部と、運転方向に応じて「↑」や「↓」を表示する方向表示部とを有する。制御装置10は、乗りかご21が最上階の乗場の高さ位置にかごが停止しているときだけ、方向表示部に例えば「T」「O」「P」という文字を順繰りに表示させる。これにより、作業員は、乗りかご21が最上階に停止したことを認識することができる。
【0077】
作業員は、最下階の乗場インジケータ40が最上階の表示を行ったことを確認すると、前述したステップS104〜S107の操作等を実行した後、カウンタクリアランスの測定等のピット点検作業を行う。カウンタクリアランスの測定等の点検作業が完了すると、作業員は、前述したステップS109〜S112の操作(所定の通常モード復帰操作)を行う。
【0078】
制御装置10は、所定の通常モード復帰操作が予め定められた手順通りに行われたか否かを判断(点検終了の判断)する(S9)。この判断の詳細については後述する。
【0079】
制御装置10は、所定の通常モード復帰操作が行われたと判断すると、乗りかご21を最下階まで下降させるように、巻き上げ機を制御する(S10)。
【0080】
制御装置10は、乗りかご21が最下階に到着すると、最下階の乗場ドア38を戸開させる(S11)。
【0081】
制御装置10は、乗りかご21が最下階に到着してから所定時間が経過したか否かを判断する(S12)。所定時間が経過すると(S12でYES)、制御装置10は、運転モードをピット点検モードから通常モードに切り替える(S13)。
【0082】
なお、通常モードへの復帰は、前述したように、所定時間の経過に代えて、乗りかご内のボタンやスイッチに対して所定の操作がなされたか否かに基づいて行ってもよい。所定の操作は、例えば、戸開ボタン52の押下やかご内点検スイッチ32のOFF操作である。
【0083】
2−3.異常発生時の動作
ピット点検モードにおいてなんらかの異常が発生した場合、たとえば、最上階や最下階への走行中になんらかの異常により乗りかご21の昇降が非常停止した場合、その後、その要因が復旧したときに自動的に乗りかご21の昇降が再開すると、作業者に危険がおよぶ可能性がある。この課題に対処するため、本実施形態ではさらに以下の構成を採用している。
【0084】
すなわち、本実施形態では、ピット点検モードにおいて異常が発生した場合、エレベータの運転モードを、エレベータの運転を禁止するピット点検中止モードとする。そして、ピット点検中止モードにおいて、所定の解除条件が満たされた場合、エレベータの運転モードを、通常モードに戻す。
図3は、実施形態1に係るエレベータの制御システムにおいてピット点検モードに設定されているときに異常が発生した場合の制御動作を示すフローチャートである。このフローチャートによる処理は、
図2に示す処理と並行して行われる。
【0085】
まず、制御装置10は、運転モードがピット点検モードであるか否かを判断する(S41)。
【0086】
運転モードがピット点検モードでない場合(S41でNO)、制御装置10は、本フローチャートによる処理を終了する。
【0087】
運転モードがピット点検モードである場合(S41でYES)、制御装置10は、異常が発生したか否かを判断する(S42)。
【0088】
異常が発生していない場合(S42でNO)、制御装置10は、本フローチャートによる処理を終了する。
【0089】
異常が発生したと判断した場合(S42でYES)、制御装置10は、ピット点検モードにおける乗りかご21の昇降を停止し、運転禁止状態(ピット点検中止モード)とする(S43)。
【0090】
制御装置10は、最下階の乗場インジケータ40に当該号機が運転禁止状態になったことを示す表示を行わせる(S44)。例えば、最下階の乗場インジケータ40の方向表示部に「N」、「G」という文字を順繰りに表示させる。これにより、作業員は、当該号機が運転禁止状態になったことを認識することができる。当該号機が運転禁止状態(ピット点検中止モード)になったことを認識すると、作業員は、異常の原因等の確認及び必要な処置を行う。異常が解消すると、作業員は、運転禁止状態(ピット点検中止モード)を解除するため、第2の所定の操作部(所定のスイッチやボタン)に対して所定の解除操作を行う。第2の所定の操作部は、予め設定されたスイッチやボタンであればどのようなものでもよい。例えば、乗場ボタン37等の操作部周辺の所定箇所に作業員が所定の特殊ツールを接続して操作(ユーザは操作不可)することである。
【0091】
制御装置10は、第2の所定の操作部に対して所定の解除操作が行われたか否かを判断する(S45)。
【0092】
所定の解除操作がなされていないと判断した場合(S45でYES)、制御装置10は、ステップS43に戻り、運転禁止状態(ピット点検中止モード)を維持する。
【0093】
所定の解除操作がなされたと判断した場合(S45でYES)、制御装置10は、運転禁止状態(ピット点検中止モード)を解除する(S46)。これにより、運転モードが、ピット点検中止モードから通常モードに復帰する。
【0094】
2−4.点検終了の判断動作
2−4−1.点検終了時の作業員の操作等
本実施形態のエレベータの制御システムは、点検終了時に、作業員により以下の操作がこの順序で行われ、その後、乗りかご21が最下階に到着してから所定時間が経過したときに、運転モードをピット点検モードから通常モードに復帰させる。
操作(1):最下階の乗場ドア38を開状態とする(上述のステップS109)。そして、乗場Sに出る。
操作(2):ピットスイッチ41をOFF状態からON状態に戻す(上述のステップS110)。
操作(3):最下階の乗場ドア38を閉状態とする(上述のステップS111)。
操作(4):最下階の乗場ボタン37を所定時間内に所定回数押す(上述のステップS112)。
【0095】
運転モードをピット点検モードから通常モードに復帰させる際、作業員は、本来、自分が乗場Sに出るまで乗りかご21が動かないように、乗場ドア38を開状態とし、その後、乗場Sに出てから、ピットスイッチ41をOFF状態からON状態に戻し、乗場ドア38を閉状態とするという手順を踏む必要がある。しかし、乗場ドア38を開状態とする前に、つまり乗場Sに出る前に、ピットスイッチ41をON状態に戻してしまう可能性がある。このような場合においても作業員の安全が図られるように、本実施形態では、ピットスイッチ41がOFF状態からON状態に戻ったときに乗場ドア38が閉まっている場合には、その後、乗場ドア38がいったん開状態とされ、さらにその後、閉状態とされない限り、乗りかご21の下降を開始させないようにした。
【0096】
また、本実施形態では、ピットスイッチ41がOFF状態からON状態に戻された後、乗場ボタン37の押下という操作を設定している。これは、最上階から最下階への走行開始タイミングを、作業員に意識的に決定させるためである。さらに、本実施形態では、一般利用者が間違ってあるいはいたずらで乗場ボタンを押下したことにより、乗りかご21が下降開始するのを防止するため、作業員に対して最下階の乗場ボタン37を所定時間内に所定回数押下させるようにしている。これにより、ピットスイッチ41がON状態に戻った後、最下階の乗場ボタン37が所定時間内に所定回数押されない限り、最下階への乗りかご21の下降が開始されない。よって、作業員の安全がより確実に図られることとなる。
【0097】
2−4−2.制御システムによる判断動作
制御システムは、上記(1)、(2)、(3)、(4)の操作が上記の順序で行われたか否かを判断する。上記(1)、(2)、(3)、(4)の操作が上記の順序で適切に行われない場合、運転モードをピット点検モードから通常モードに復帰させることは行わない。以下に、エレベータの制御システムにおける点検終了の判断動作(乗りかごの下降走行開始の判断動作)について詳しく説明する。
【0098】
制御システムの制御装置10は、
図2BのステップS9における点検終了の判断動作を以下の手順で行う。
図4Aは、実施形態1に係るエレベータの制御システムにおけるピット点検モードでの点検終了の判断動作の主要な流れを示す図である。点検終了の判断動作は、
図4Aに示すAモード、Bモード、Cモード、Dモード、Eモードの5種類の判断モードにより構成される。
【0099】
Aモードは、ピットスイッチ41がOFF状態であるか否かを確認するモードである。具体的に、Aモードは、ピット点検モードとなって、作業員がピットP内に入ったときにステップS105におけるピットスイッチ41のOFF操作を行ったか否かを確認するモードである。
【0100】
Bモードは、ピットスイッチ41がON状態となったか否かを確認するモードである。具体的に、Bモードは、作業員が、ピット点検作業の完了後に、ステップS110におけるピットスイッチ41のON操作を行ったか否かを確認するモードである。
【0101】
Cモードは、乗場ドア38が開いたか否かを確認するモードである。具体的に、Cモードは、作業員が、ピット点検作業の完了後に、ステップS109における乗場ドア38を開く操作を行ったか否かを確認するモードである。なお、BモードとCモードの順番が作業者のステップS109の操作とS110の操作の順番と一致しないが、これは、作業員がステップS109の操作とS110の操作を逆に行うことがあるためであり、この操作の誤りを判断可能とするために、以後に説明する
図4B、
図4Cで示すBモードとCモードにおける判断動作を行う。
【0102】
Dモードは、乗場ドア38が閉じたか否かを確認するモードである。具体的に、Dモードは、作業員が、乗場ドア38を開いた後に、ステップS111における乗場ドア38を閉じる操作を行ったか否かを確認するモードである。
【0103】
Eモードは、作業員により、最下階の乗場ボタン37に対して所定時間内に所定回数の押下操作が行われたか否かを確認するモードである。具体的に、Eモードは、作業員が、ステップS111の操作を実行した後に、ステップS112における乗場ボタン37に対する操作を行ったか否かを確認するモードである。
【0104】
図4B、
図4Cは、実施形態1に係るエレベータの制御システムにおける点検終了の判断動作の各モードでなされる具体的な判断動作を示すフローチャートである。具体的に、
図4B(a)は、Aモードにおける判断動作を示すフローチャートである。
図4B(b)は、Bモードにおける判断動作を示すフローチャートである。
図4B(c)は、Cモードにおける判断動作を示すフローチャートである。
図4C(a)は、Dモードにおける判断動作を示すフローチャートである。
図4C(b)は、Eモードにおける判断動作を示すフローチャートである。
【0105】
−Aモード−
図4B(a)に示すように、Aモードにおいて、制御装置10は、ピットスイッチ41がOFF状態か否かを判断する(S21)。つまり、作業員が点検中か否かを判断する。
【0106】
ピットスイッチ41がOFF状態でない場合(S21でNO)、制御装置10は、再度ステップS21の判断を行う。
【0107】
ピットスイッチ41がOFF状態である場合(S21でYES)、Bモードに移行する。
【0108】
−Bモード−
図4B(b)に示すように、Bモードにおいて、制御装置10は、ピットスイッチ41がON状態か否かを判断する(S22)。つまり、作業員が点検を終了したか否かを判断する。
【0109】
ピットスイッチ41がON状態でない場合(S22でNO)、作業員がまだ点検作業中であると考えられる。そのため、制御装置10は、作業員が点検を終了したか否かを判断するため、再度ステップS22の判断を行う。
【0110】
ピットスイッチ41がON状態である場合(S22でYES)、Cモードに移行する。
【0111】
−Cモード−
図4B(c)に示すように、Cモードにおいて、制御装置10は、ピットスイッチ41がON状態か否かを判断する(S23)。
【0112】
ピットスイッチ41がON状態でない場合(S23でNO)、制御装置10は、Bモードに移行する。ピットスイッチ41がON状態でない場合、作業員がまだ点検作業中である可能性があるからである。
【0113】
ピットスイッチ41がON状態である場合(S23でYES)、ピットスイッチ41が作業員により意図的にON状態とされたものと考えられるので、制御装置10は乗場ドア38が開状態か否かを判断する(S24)。
【0114】
乗場ドア38が開状態でない場合(S24でNO)、制御装置10は再度ステップS23でピットスイッチ41がON状態か否かを判断する(S23)。
【0115】
乗場ドア38が開状態である場合(S24でYES)、制御装置10は、Dモードに移行する。
【0116】
−Dモード−
図4C(a)に示すように、Dモードにおいて、制御装置10はピットスイッチ41がON状態か否かを判断する(S25)。
【0117】
ピットスイッチ41がON状態でない場合(S25でNO)、制御装置10は、Bモードに移行する。
【0118】
ピットスイッチ41がON状態である場合(S25でYES)、制御装置10は乗場ドア38が閉状態か否かを判断する(S26)。
【0119】
乗場ドア38が閉状態でない場合(S26でNO)、制御装置10は再度ステップS25以後の判断を行う(S23)。
【0120】
乗場ドア38が閉状態である場合(S26でYES)、制御装置10は、Eモードに移行する。
【0121】
−Eモード−
図4C(b)に示すように、Eモードにおいて、制御装置10は最下階の乗場ボタン37の押下回数をクリアする(S27)。
【0122】
制御装置10はピットスイッチ41がON状態か否かを判断する(S28)。
【0123】
ピットスイッチ41がON状態でない場合(S28でNO)、制御装置10は、ステップS22の判断を再度行う。
【0124】
ピットスイッチ41がON状態である場合(S28でYES)、制御装置10は乗場ドア38が閉状態か否かを判断する(S29)。
【0125】
乗場ドア38が閉状態でない場合(S29でNO)、制御装置10は再度ステップS27で最下階の乗場ボタン37の押下回数をクリアする(S27)。
【0126】
乗場ドア38が閉状態である場合(S29でYES)、制御装置10は最下階の乗場ボタン37が所定回数押されたか否かを判断する(S30)。
【0127】
最下階の乗場ボタン37が所定回数押されていない場合(S30でNO)、乗場ボタン37の最初の押下から所定時間が経過したかどうかを判断する(S31)。経過したのであれば(S31でYES)、制御装置10は再度ステップS27以後の処理を行う。経過していないのであれば(S31でNO)、制御装置10は再度ステップS28以後の処理を行う。
【0128】
最下階の乗場ボタン37が所定回数押された場合(S30でYES)、制御装置10はピット点検モード終了のための操作が適切に行われたと判断する。
【0129】
3.本実施形態のエレベータの制御システムによる主な作用
本実施形態において、運転モードがピット点検モードに切り替えられると、乗場ドア38を閉状態とした後、乗りかご21が最下階から最上階まで上昇される。そして、作業員がカウンタクリアランスの点検を終了すると、ピット点検モードの終了操作を行うこととなる。つまり、まず、最下階の乗場ドア38を開状態とし、乗場Sに出た後、ピットスイッチ41をOFF状態からON状態に戻し、最下階の乗場ドア38を閉状態とする。しかし、作業員は、手順を間違える場合がある。例えば、乗場ドア38を閉状態から開状態とする前に、ピットスイッチ41をOFF状態からON状態に切り替えることが考えられる。つまり、作業員が最下階下方のピットPから乗場Sに出る前にピットスイッチ41をOFF状態からON状態に切り替えることがあり得る。このような場合、本実施形態では、上記の閉状態の検知後、乗場ドア38が開状態となり、さらにその後閉状態となったことが検知されない限り、乗りかご21を最上階から最下階に下降させないようにした。つまり、上記の閉状態の検知後、乗場ドア38が開状態となり、さらにその後閉状態となったことを条件として、乗りかご21を最上階から最下階に下降させるようにした。これにより、作業員の安全が図られる。
【0130】
また、本実施形態によれば、ピット点検モードにおいて、乗りかご21内に作業員が乗車していない状態で、乗りかご21を自動的に最上階に上昇させ、また、最下階に下降させることができる。そのため、本実施形態によれば、作業員の安全を確保しつつ、1人の作業員によりカウンタクリアランスの点検を効率的に行うことができる。
【0131】
また、本実施形態では、乗場ボタン37が所定時間内に所定回数押下されたことを、乗りかご21を最上階から最下階に下降させるための条件としている。これにより、乗場ボタン37が所定時間内に所定回数押下されない限り、乗りかご21は最上階から最下階に下降されない。よって、作業員の安全がより確実に図られる。
【0132】
作業員に乗場ボタン37を「所定時間内に所定回数」押下させる理由は以下の通りである。すなわち、点検中であっても一般利用者により乗場ボタン37が押される可能性は残る。1回押されただけでは一般利用者により押されたのか作業員により押されたのかを区別できない。そこで、作業員が乗場ボタン37を所定時間内に所定回数押下したことを判断条件とした。これにより、点検終了に伴って、乗場ボタン37が作業員により押されたことを制御装置10が的確に認識可能となる。よって、作業員の安全がより確実に図られる。
【0133】
また、本実施形態において、ピット点検モードにおける乗りかご21の最上階への上昇中または最下階への下降中に所定の異常を検知した場合、乗りかご21の昇降を停止し、その後、乗場ボタン37等の操作部(第2の所定の操作部)に対して所定の解除操作が行われない限り、乗りかご21の昇降を再開しない。これにより、上昇中または下降中に所定の異常が発生し、その後、当該異常が例えば自然復旧したような場合でも、乗場ボタン37等の操作部に対して所定の解除操作が行われない限り、乗りかご21の昇降が再開されない。そのため、作業員の安全がより確実に図られる。
【0134】
4.まとめ
本実施形態のエレベータの制御システムは、
エレベータ20の運転モードとして、呼びに応じた乗りかご21の昇降を禁止するピット点検モード(所定点検モード)を有するエレベータの制御システムである。
エレベータの制御システムは、
ON状態(第1状態)またはOFF状態(第2状態)に切り替え可能なピットスイッチ41(切替スイッチ)と、
最下階の乗場ドア38が開状態と閉状態とのうちのいずれの状態にあるかを検知する乗場ドア開閉検出スイッチ42(検知部)と、
乗りかご21の昇降を制御する制御装置10と、を備える。
制御装置10は、
運転モードをピット点検モードに設定すると、乗場ドア38を閉状態とした後、乗りかご21を最下階から最上階(所定階)まで上昇させ、
乗りかご21の最上階への上昇後、ピットスイッチ41の状態と乗場ドア38の状態とに基づいて乗りかご21の最上階から最下階への下降を制御するように構成されている。
制御装置10は、
乗りかご21の最上階への上昇後において、ピットスイッチ41がOFF状態からON状態に切り替えられたときに乗場ドア38が閉状態にあることが検知された場合、乗りかご21を最上階から最下階に下降させない。
【0135】
これにより、作業員の安全が図られる。
【0136】
本実施形態において、
制御装置10は、
乗りかご21の最上階への上昇後において、ピットスイッチ41がOFF状態からON状態に切り替えられたときに乗場ドア38が閉状態にあることが検知された場合、
当該閉状態の検知後、乗場ドア38が開状態となり、さらにその後閉状態になったことが検知されたことを条件として、乗りかご21を最上階から最下階に下降させる。
【0137】
これにより、作業員の安全がより確実に図られる。
【0138】
本実施形態において、
制御装置10は、
乗りかご21の最上階への上昇後において、ピットスイッチ41がOFF状態からON状態に切り替えられたときに乗場ドア38が開状態にあることが検知された場合、
当該開状態の検知後、乗場ドア38が閉状態になったことが検知されたことを条件として、乗りかご21を最上階から最下階に下降させる。
【0139】
これにより、作業員の安全がより確実に図られる。
【0140】
本実施形態において、
最下階の乗場Sに、利用者が呼びを登録するための乗場ボタン37が設けられ、
制御装置10は、ピット点検モードにおいてピットスイッチ41の状態と乗場ドア38の状態と乗場ボタン37に対する操作とに基づいて乗りかご21の最上階から最下階への下降を制御するように構成されている。
制御装置10は、
(a)乗りかご21の最上階への上昇後において、ピットスイッチ41がOFF状態からON状態に切り替えられたときに乗場ドア38が開状態にあることが検知され、その後、乗場ドア38が閉状態にとなったことが検知された場合、あるいは、
(b)乗りかご21の最上階への上昇後において、ピットスイッチ41がOFF状態からON状態に切り替えられたときに乗場ドア38が閉状態にあることが検知され、その後、乗場ドア38が開状態となり、さらにその後閉状態となったことが検知された場合、
直近の閉状態の検知後、乗場ボタン37が所定時間内に所定回数押下されると、乗りかご21を最上階から最下階に下降させる。
【0141】
これにより、作業員の安全がより確実に図られる。
【0142】
本実施形態において、
制御装置10は、
ピット点検モードにおける乗りかご21の最上階への上昇中または最下階への下降中に所定の異常を検知した場合、乗りかご21の昇降を停止し、その後、乗場ボタン37等の操作部(第2の所定の操作部)に対して所定の解除操作が行われない限り、乗りかご21の昇降を再開しない。
【0143】
これにより、作業員の安全がより確実に図られる。
【0144】
(実施形態2)
実施形態2に係るエレベータの制御システムについて説明する。実施形態1では1台のエレベータ20を有するエレベータシステムの制御システムについて説明したが、実施形態2では、複数台のエレベータ20を有するエレベータシステムの制御システムについて説明する。なお、実施形態1と同一あるいはほぼ同一の構成要素の説明は適宜省略し、相違点を中心として説明する。
【0145】
1.構成
本実施形態のエレベータシステムは、エレベータ20として、3台のエレベータ20A、20B、20Cを有する(
図5参照)。以下において、各エレベータ20A〜20Cを区別せず「エレベータ20」という場合がある。なお、本発明は、2台あるいは4台以上のエレベータ20を有するエレベータシステムに対しても適用可能である。
【0146】
各エレベータ20は、実施形態1同様に、エレベータシャフトES内に、乗りかご21、シーブ22、釣合おもり23、巻き上げ機(図示せず)を有する。
【0147】
また、エレベータシステムは、各エレベータ20(20A、20B、20C)に対応させて、各階の乗場Sに乗場ドア38を有する。
【0148】
各階の乗場Sには、乗場ドア38の近傍に、乗場ボタン37、ランタン39が設けられている。つまり、実施形態1の乗場インジケータ40に代えて、ランタン39が設けられている。
【0149】
ランタン39は、乗りかご21が、当該ランタン39が設置された階に到着するときに制御装置10により点灯されるランプである。
【0150】
また、エレベータシステムは、エレベータ20の乗りかご21の昇降等を制御する制御システムを有する。
【0151】
制御システムは、制御装置10を有する。
【0152】
制御システムは、各エレベータ20(20A、20B、20C)に対応させて、実施形態1同様の構成を有するかご内非常停止スイッチ31、かご内点検スイッチ32、かご内インジケータ51、戸開ボタン52、行先階ボタン53、乗場ドア開閉検出スイッチ42、ピットスイッチ41を有する。また、制御システムは、複数の乗場ボタン37を有する。なお、複数の乗場ボタン37は、3台のエレベータ20A〜20Cで共用される。
【0153】
制御装置10は、通常モードにおいて、複数台のエレベータ20A〜20Cの走行を統合的に制御する。
【0154】
また、制御装置10は、複数台のエレベータに対してそれぞれ、前述の
図2Bに示すフローチャートに沿った運転制御処理を並行して行い、各エレベータ20について個別に運転モードを設定する。制御装置10は、通常モードに設定されたエレベータ20について、乗場ボタン37で登録された呼びに応じて乗りかご21を昇降させる。例えば、制御装置10は、通常モードに設定されたエレベータ20について、乗場ボタン37が押下されると、エレベータ20A〜20Cの現在階、登録された呼び、各階までの予測待ち時間等に基づいて、呼びをいずれかのエレベータ20に割り当て、エレベータ20の走行を制御する。一方、ピット点検モードに設定されたエレベータ20について、制御装置10は、乗場ボタン37で登録された呼びに応じた乗りかご21の昇降を禁止し、かつ前述の
図3、
図4に示すフローチャートに沿った異常判定処理及びピット点検モードの終了判定処理を行う。
【0155】
なお、本実施形態では、乗場インジケータ40に代えてランタン39が設けられていることにより、制御装置10は、前述のステップS8において、乗りかご21を最上階にまで走行し、最上階の乗場の高さ位置に停止しているときだけ、最下階の乗場のランタン39を点灯させる。最下階のランタン39を点灯させることにより、乗りかご21が最上階の乗場の高さ位置に停止したことを作業員に報知することができる。
【0156】
また、制御装置10は、前述のステップS14において、ランタン39に運転禁止状態であることを示すため、点滅状態とする。
【0157】
本実施形態では、複数台のエレベータ20の中にピット点検モードに設定されているエレベータ20が存在する場合、実施形態1の制御に加え、以下の制御が行われる。
【0158】
すなわち、本実施形態では、複数台のエレベータ20の中にピット点検モードに設定されているエレベータ20が存在する場合、ピット点検モードに設定されているエレベータ20について
図3のフローチャートのステップS29までの処理が進行している段階で乗場ボタン37が所定時間内に所定回数押下されると、ステップS30の処理が行われる。つまり、ピット点検モード終了のための操作が完了したと判断され、当該ピット点検モードに設定されているエレベータ20が最上階から最下階に下降される。一方、ステップS29までの処理が進行している段階で乗場ボタン37が所定時間内に所定回数以下の回数だけ押下された場合、例えば、乗場ボタン37が1回だけ押下された場合、通常モードに設定されているエレベータ20に対して呼びを割り当てる。乗場ボタン37が例えば1回だけ押下されることは、一般利用者が呼びを登録するために乗場ボタン37を押下したと考えられるためである。このように乗場ボタン37の押下回数に基づく制御を行うことにより、複数台のエレベータ20の中に通常モードのエレベータ20とピット点検モードのエレベータ20が存在する場合に、通常モードのエレベータ20については、呼びの割り当てを行いつつ、ピット点検モードのエレベータ20については、ピット点検モード終了操作の完了判断を適切に行って、当該エレベータ20を最上階から最下階に作業員の安全を図りつつ下降させることができる。
【0159】
2.まとめ
実施形態2のエレベータの制御システムは、
複数台のエレベータ20を構成する各エレベータ20の運転モードとして、呼びに応じた乗りかご21の昇降を禁止するピット点検モード(所定点検モード)を有するエレベータの制御システムである。
エレベータの制御システムは、
各エレベータ20に対応させて設けられ、ON状態(第1状態)またはOFF状態(第2状態)に切り替え可能なピットスイッチ41(切替スイッチ)と、
各エレベータ20に対応させて設けられた最下階の乗場ドア38が開状態と閉状態とのうちのいずれの状態にあるかを検知する、各エレベータ20に対応させて設けられた乗場ドア開閉検出スイッチ42(検知部)と、
各エレベータ20の乗りかご21の昇降を制御する制御装置10と、を備える。
制御装置10は、
一のエレベータ20の運転モードをピット点検モードに設定すると、一のエレベータ20に対応する乗場ドア38が閉状態とした後、一のエレベータ20の乗りかご21を最下階から最上階(所定階)まで上昇させ、
一のエレベータ20の乗りかご21の最上階への上昇後、一のエレベータ20に対応するピットスイッチ41の状態と一のエレベータ20に対応する乗場ドア38の状態とに基づいて一のエレベータ20の乗りかご21の最上階から最下階への下降を制御するように構成されている。
制御装置10は、
一のエレベータ20の乗りかご21の最上階への上昇後において、一のエレベータ20に対応するピットスイッチ41がOFF状態からON状態に切り替えられたときに一のエレベータ20に対応する乗場ドア38が閉状態にあることが検知された場合、一のエレベータ20の乗りかご21を最上階から最下階に下降させない。
【0160】
本実施形態によれば、複数台のエレベータ20を制御するエレベータの制御システムにおいて、実施形態1と同様、作業員の安全が図られる。
【0161】
本実施形態において、
制御装置10は、
一のエレベータ20の乗りかご21の最上階への上昇後において、一のエレベータ20に対応するピットスイッチ41がOFF状態からON状態に切り替えられたときに一のエレベータ20に対応する乗場ドア38が閉状態にあることが検知された場合、
当該閉状態の検知後、一のエレベータ20に対応する乗場ドア38が開状態になり、さらにその後閉状態になったことが検知されたことを条件として、一のエレベータ20の乗りかご21を最上階から最下階に下降させる。
【0162】
これにより、作業員の安全がより確実に図られる。
【0163】
本実施形態において、
制御装置10は、
一のエレベータ20の乗りかご21の最上階への上昇後において、一のエレベータ20に対応するピットスイッチ41がOFF状態からON状態に切り替えられたときに一のエレベータ20に対応する乗場ドア38が開状態にあることが検知された場合、
当該開状態の検知後、一のエレベータ20に対応する乗場ドア38が閉状態になったことが検知されたことを条件として、一のエレベータ20の乗りかご21を最上階から最下階に下降させる。
【0164】
これにより、作業員の安全が確実に図られる。
【0165】
本実施形態において、
最下階の乗場Sに、利用者が呼びを登録するための乗場ボタン37が設けられており、
制御装置10は、ピット点検モードにおいて一のエレベータ20に対応するピットスイッチ41の状態と一のエレベータ20に対応する乗場ドア38の状態と乗場ボタン37に対する操作とに基づいて一のエレベータ20の乗りかご21の最上階から最下階への下降を制御するように構成されている。
制御装置10は、
(a)一のエレベータ20の乗りかご21の最上階への上昇後において、一のエレベータ20に対応するピットスイッチ41がOFF状態からON状態に切り替えられたときに一のエレベータ20に対応する乗場ドア38が開状態にあることが検知され、その後、一のエレベータ20に対応する乗場ドア38が閉状態にとなったことが検知された場合、あるいは、
(b)一のエレベータ20の乗りかご21の最上階への上昇後において、一のエレベータ20に対応するピットスイッチ41がOFF状態からON状態に切り替えられたときに一のエレベータ20に対応する乗場ドア38が閉状態にあることが検知され、検知された後、一のエレベータ20に対応する乗場ドア38が開状態となり、さらにその後、一のエレベータ20に対応する乗場ドア38が閉状態となったことが検知された場合、
直近の閉状態の検知後、乗場ボタン37が所定時間内に所定回数押下されると、一のエレベータ20の乗りかご21を最上階から最下階に下降させる。
【0166】
これにより、作業員の安全がより確実に図られる。また、複数台のエレベータ20の中に通常モードのエレベータ20とピット点検モードのエレベータ20が存在する場合において、通常モードのエレベータ20に対して呼びの割り当てを行いつつ、ピット点検モードのエレベータ20については、ピット点検モード終了のための操作の完了判断を行い、当該エレベータ20を最上階から最下階に下降させることができる。
【0167】
本実施形態において、
制御装置10は、
ピット点検モードにおける一のエレベータ20の乗りかご21の最上階への上昇中または最下階への下降中に所定の異常を検知した場合、乗りかご21の昇降を停止し、その後、乗場ボタン37等の操作部(第2の所定の操作部)に対して所定の解除操作が行われない限り、一のエレベータ20の乗りかご21の昇降を再開しない。
【0168】
これにより、作業員の安全がより確実に図られる。
【0169】
(他の実施形態)
上記各実施形態では、ステップS24で乗場ドア38が開状態でない(ステップS24でNO)、つまり閉状態であると判断された場合、開状態であると判断されるまでステップS24の判断を繰り返し行い、以後種々の判断を行う。しかし、ステップS24で乗場ドア38が開状態でない(ステップS24でNO)と判断された時点で本フローチャートによる処理を終了し、乗りかご21を最上階から最下階に下降させず、ピット点検モードを維持するようにしてもよい。この場合でも、作業員が誤った操作を行ったにもかかわらず、作業員の安全は図られる。なお、乗りかご21の最上階から最下階への下降は、作業員が作業手順を確認した上で行えるようにすればよい。なお、ステップS24においては、閉状態が所定時間継続しているか否かを判断してもよい。
【0170】
また、本実施形態では、ステップS30で最下階の乗場ボタン37が所定回数押された(ステップS30でYES)という条件が満足されたことを条件として、乗りかご21の最上階から最下階への下降を行うが、最下階の乗場ボタン37が所定回数押されたか否かの判定(ステップS30)は省略し、ステップS26で乗場ドア38が閉状態である(ステップS2
6でYES)と判断された時点
でピット点検モード終了のための操作が完了したと判断し、乗りかご21を最上階から最下階へ下降させてもよい。この場合でも、作業員は、乗場ドア38を開状態にし、最下階下方のピットPから乗場Sに出る行動を行った後であると想定される。そのため、作業員の安全が図られる。
【0171】
上記各実施形態において、本発明の第1状態はON状態に対応し、第2状態はOFF状態に対応しているが、上記同様の動作が実現される限り、本発明の第1状態がOFF状態に対応し、第2状態がON状態に対応してもよい。
【0172】
上記各実施形態において、本発明の所定階は最上階である。しかし、所定階は、最下階よりも上方で、作業員がピットP内に入れる位置であれば、任意の階でよい。また、所定階は、2つの階床間の任意の位置でもよい。
【0173】
実施形態2において、制御装置10は一つの装置として構成されている。しかし、制御装置10は、例えば群管理制御を行う群管理制御装置と、各エレベータ20の駆動を制御するエレベータ制御装置とに分けて構成されてもよい。また、エレベータ制御装置は、エレベータ20毎に設けられてもよい。