特許第6409659号(P6409659)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6409659
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】エレベータ装置およびその制御装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/02 20060101AFI20181015BHJP
   B66B 1/36 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
   B66B5/02 W
   B66B1/36 B
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-73396(P2015-73396)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-193768(P2016-193768A)
(43)【公開日】2016年11月17日
【審査請求日】2017年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】宮本 辰也
【審査官】 三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−020046(JP,A)
【文献】 特開2011−148632(JP,A)
【文献】 特開2011−042480(JP,A)
【文献】 特開2008−213967(JP,A)
【文献】 特開2008−001438(JP,A)
【文献】 特開2013−119461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00−5/28
B66B 1/00−1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
かごが乗降場で制動されているときの前記かごの床の位置であるかご位置と前記乗降場の床の位置とのずれに関する情報であるずれ情報を取得する入力部と、
前記かごに乗客が搭乗していないときの前記ずれ情報に基づいて、前記かごを制動するブレーキに異常が生じていることを判定し、前記ブレーキに異常が生じていると判定したことに基づき、エレベータ装置の運転を休止させる制御部とを備え
前記制御部は、前記かご位置が前記乗降場の床の位置を含む範囲である規定の着床範囲に含まれるか否かを前記ずれ情報に基づき判定し、前記かごに乗客が搭乗していないときの前記かご位置が前記規定の着床範囲に含まれないと判定した後、前記かご位置が前記規定の着床範囲に含まれるように位置調節制御を実施したにもかかわらず、前記かご位置が前記規定の着床範囲に含まれないと再度判定したことに基づき、前記ブレーキに異常が生じていると判定する
エレベータ装置の制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記かごの戸が閉まっている状態、かつ、前記かごを所定のフロアの前記乗降場に移動させる要求である呼び登録が途絶えている状態で所定の時間が経過したことに基づき、前記かごに乗客が搭乗していないと判定する
請求項1に記載のエレベータ装置の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記かごの戸が閉まっている状態、かつ、前記かごを所定のフロアの前記乗降場に移動させる要求である呼び登録が途絶えている状態、かつ、前記かご内の操作部が操作されない状態で所定の時間が経過したことに基づき、前記かごに乗客が搭乗していないと判定する
請求項1に記載のエレベータ装置の制御装置。
【請求項4】
前記入力部は、前記かごに搭乗している乗客の重量に関する情報である重量情報を取得し、前記制御部は、前記かごの戸が閉まっている状態、かつ、前記かごを所定のフロアの前記乗降場に移動させる要求である呼び登録が途絶えている状態、かつ、前記重量情報に基づいて得られる前記重量が0である状態で所定の時間が経過したことに基づき、前記かごに乗客が搭乗していないと判定する
請求項1に記載のエレベータ装置の制御装置。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載の制御装置を備えるエレベータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ装置およびその制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、つるべ式のエレベータ装置の一例を開示している。このエレベータ装置は、乗客が搭乗するかご、ロープによりかごと繋げられるつり合い重り、ロープを巻き上げる電動巻上機、電動巻上機を制動する電磁ブレーキ、ならびに、電動巻上機および電磁ブレーキを制御する制御装置を備える。エレベータ装置はさらに、かごが任意のフロアの乗降場に着床したことを検出する位置検出部、乗降場で制動されているときのかごの床の位置であるかご位置と乗降場の床の位置とのずれを検出するずれ検出部、および、電磁ブレーキに異常が生じていることを報知する報知部を備える。
【0003】
制御装置は、かごが任意のフロアの乗降場に着床すると、電磁ブレーキの電磁コイルへの電力の供給を停止する。このため、電動巻上機の出力軸が電磁ブレーキにより制動される。そのときかご位置は、乗降場の床の位置を含む範囲である規定の着床範囲内に存在する。しかし、経年劣化等により電磁ブレーキの制動性能が低下している場合、かご位置が徐々にずれて規定の着床範囲外に出てしまうことにもなる。ずれ検出部はこのようなかご位置と乗降場の床の位置とのずれを検出し、制御装置に出力する。
【0004】
ずれ検出部により検出されるかご位置が、規定の着床範囲外の第1の基準範囲に含まれる場合、制御装置は、かご位置が乗降場の床の位置と一致するように電動巻上機を制御する。
【0005】
一方、ずれ検出部により検出されるかご位置が、第1の基準範囲外の第2の基準範囲に含まれる場合、制御装置は、電磁ブレーキの異常を検出し、報知部を駆動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−20046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のとおり、電磁ブレーキに生じている異常がかご位置と乗降場の床の位置との関係に反映されることがある。このため、電磁ブレーキに異常が生じていることを早期に検出するための方法として、かご位置が規定の着床範囲からずれていることを検出する方法が考えられる。
【0008】
一方、乗降場に着床しているかごから乗客が降りるとき、または、乗降場に着床しているかごに新たに乗客が搭乗するとき、または、その両方の状態が生じるとき、かご内の重量が変動することにより、ロープのうちの電動巻上機とかごとの間の部分が伸縮する。このため、かご位置が乗降場の床の位置、または、規定の着床範囲内の位置に存在している場合であっても、ロープの伸縮に起因して、かご位置が規定の着床範囲からずれることがある。
【0009】
このように、かご位置が規定の着床範囲からずれる現象が生じる原因は電磁ブレーキに異常が生じていることに限られない。このため、かご位置が規定の着床範囲からずれていることが検出された場合、電磁ブレーキに異常が生じている可能性が存在するとはいえ、その検出結果からは電磁ブレーキに異常が生じていることを正確に検出できないおそれがある。
【0010】
本発明の目的は、ブレーキの異常を精度よく早期に検出できるエレベータ装置、および、その制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
〔1〕本発明に従うエレベータ装置の制御装置の一形態は、かごが乗降場で制動されているときの前記かごの床の位置であるかご位置と前記乗降場の床の位置とのずれに関する情報であるずれ情報を取得する入力部と、前記かごに乗客が搭乗していないときの前記ずれ情報に基づいて、前記かごを制動するブレーキに異常が生じていることを判定し、前記ブレーキに異常が生じていると判定したことに基づき、エレベータ装置の運転を休止させる制御部とを備える。
【0012】
かごに乗客が搭乗していない状況ではかごの重量が変動しないため、かごに接続されているロープが伸縮しない。このため、かごに乗客が搭乗していない状況において、かご位置と乗降場の床の位置との間にずれが検出される場合、ブレーキに異常が生じていることが示唆される。このため、上記制御装置のように、かごに乗客が搭乗していないときのずれ情報に基づき、かごを制動するブレーキに異常が生じていることを判定することにより、ブレーキの異常を精度よく早期に検出できる。
【0013】
〔2〕前記制御装置の一例によれば、前記制御部は、前記かご位置が前記乗降場の床の位置を含む範囲である規定の着床範囲に含まれるか否かを前記ずれ情報に基づき判定し、前記かごに乗客が搭乗していないときの前記かご位置が前記規定の着床範囲に含まれないことが複数回検出されたことに基づき、前記ブレーキに異常が生じていると判定する。
【0014】
かごに乗客が搭乗していないときに、かご位置が規定の着床範囲に含まれないことが複数回検出される場合、ずれ情報が誤検出されている可能性が低く、ブレーキに異常が生じている可能性が高いことが示唆される。このため、上記制御装置のように、かごに乗客が搭乗していないときのかご位置が規定の着床範囲に含まれないことが複数回検出されたことに基づき、ブレーキに異常が生じていると判定することにより、ブレーキの異常をより精度よく検出することができる。
【0015】
〔3〕前記制御装置の一例によれば、前記制御部は、前記かごの戸が閉まっている状態、かつ、前記かごを所定のフロアの前記乗降場に移動させる要求である呼び登録が途絶えている状態で所定の時間が経過したことに基づき、前記かごに乗客が搭乗していないと判定する。
【0016】
上記制御装置のように、かごの戸が閉まっている状態、かつ、かごを所定のフロアの乗降場に移動させる要求である呼び登録が途絶えている状態で所定の時間が経過したことに基づき、かごに乗客が搭乗していないと判定することにより、その判定精度がより高められる。
【0017】
〔4〕前記制御装置の一例によれば、前記制御部は、前記かごの戸が閉まっている状態、かつ、前記かごを所定のフロアの前記乗降場に移動させる要求である呼び登録が途絶えている状態、かつ、前記かご内の操作部が操作されない状態で所定の時間が経過したことに基づき、前記かごに乗客が搭乗していないと判定する。
【0018】
上記制御装置のように、かごの戸が閉まっている状態、かつ、かごを所定のフロアの乗降場に移動させる要求である呼び登録が途絶えている状態、かつ、かご内の操作部が操作されない状態で所定の時間が経過したことに基づき、かごに乗客が搭乗していないと判定することにより、その判定精度がより高められる。
【0019】
〔5〕前記制御装置の一例によれば、前記入力部は、前記かごに搭乗している乗客の重量に関する情報である重量情報を取得し、前記制御部は、前記かごの戸が閉まっている状態、かつ、前記かごを所定のフロアの前記乗降場に移動させる要求である呼び登録が途絶えている状態、かつ、前記重量情報に基づいて得られる前記重量が0である状態で所定の時間が経過したことに基づき、前記かごに乗客が搭乗していないと判定する。
【0020】
上記制御装置のように、かごの戸が閉まっている状態、かつ、かごを所定のフロアの乗降場に移動させる要求である呼び登録が途絶えている状態、かつ、重量情報に基づいて得られる重量が0である状態で所定の時間が経過したことに基づき、かごに乗客が搭乗していないと判定することにより、その判定精度がより高められる。
【0021】
〔6〕本発明に従うエレベータ装置の一形態は、前記〔1〕〜〔5〕のいずれか1つに記載の制御装置を備える。
このエレベータ装置によれば、ブレーキの異常を精度よく早期に検出できる。このため、エレベータ装置の保守者は、ブレーキの異常が生じているときに速やかにブレーキをメンテナンスできる。
【発明の効果】
【0022】
上記エレベータ装置およびその制御装置によれば、ブレーキの異常を精度よく早期に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】は実施形態のエレベータ装置の模式図である。
図2】は図1のエレベータ装置の電気的構成に関するブロック図である。
図3】は図2の制御部が実行するブレーキ異常判定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施形態)
図1に示されるとおり、エレベータ装置1は、乗客を任意のフロアの乗降場100に運ぶ搬送装置10、および、搬送装置10の動作を制御する制御装置60を備える。エレベータ装置1が設置される建物(図示略)は、エレベータ装置1のかご20が着床する乗降場100、および、乗降場100に形成される開口を開閉する乗降戸110をフロア毎に備える。
【0025】
搬送装置10は、乗客が搭乗するかご20、ロープ11によりかご20と繋げられているつり合い重り12、つり合い重り12の上方に配置されているそらせ車13、電気モータ31、電気モータ31を制動する電磁ブレーキ40、および、電気モータ31により駆動されることによりロープ11を巻き上げる綱車50を備える。ロープ11はそらせ車13および綱車50に巻き掛けられている。電気モータ31の出力軸31Aは綱車50と連結されている。制御装置60から電気モータ31に電力が供給されることにより電気モータ31が駆動し、それにともない綱車50が回転する。
【0026】
つり合い重り12の重量は、空のかご20の重量とかご20の最大重量に対する所定の割合の重量とを合わせた重量と等しい。所定の割合の重量は典型的には最大重量の半分の重量である。
【0027】
かご20は、人が出入りする開口21、開口21を開閉するかご戸22、および、内部に配置されている操作部25を備える。かご20が乗降場100に着床している場合、かご戸22と乗降戸110とが機械的に繋がる。このため、かご戸22が開くことにより乗降戸110も開き、かご戸22が閉じることにより乗降戸110も閉じる。操作部25は、例えば戸開ボタン、および、着床しているフロアの行先階ボタンである。
【0028】
電磁ブレーキ40は、電気モータ31の出力軸31Aと連結されるブレーキ車41、ブレーキ車41を制動する制輪子42、制輪子42をブレーキ車41に押し付けるばね(図示略)、および、電磁コイル(図示略)が収容されたコイルケース43を備える。制御装置60から電磁コイルに電力が供給されているとき、ばねの反力に抗して制輪子42が移動することにより、制輪子42がブレーキ車41から離れる。このため、制輪子42はブレーキ車41に制動力を与えない。このため、電気モータ31の出力軸31Aおよび綱車50が回転可能な状態に維持される。
【0029】
制御装置60から電磁コイルに電力が供給されていないとき、制輪子42がばねの反力によりブレーキ車41に押し付けられ、ブレーキ車41に規定の制動力が与えられる。規定の制動力は、かご20内に最大重量の物体が搭載されている場合であっても電気モータ31の出力軸31Aが回転しない状態を維持できる大きさ以上である。
【0030】
ブレーキ車41に規定の制動力が与えられている場合、電気モータ31の出力軸31Aおよび綱車50が回転しない。このため、かご20の重量が変動せず、かつ、ブレーキ車41に規定の制動力が与えられている場合、綱車50からかご20までのロープ11の長さ、および、綱車50からつり合い重り12までのロープ11の長さが維持され、かご20およびつり合い重り12の位置が維持される。このため、乗降場100で制動されているときのかご20の床24の位置(以下では「かご位置」)が、乗降場100の床120の位置を含む範囲である規定の着床範囲内に保持されることとなる。規定の着床範囲は、かご20の床24と乗降場100の床120とが実質的に同一の平面上に存在する位置を含み、人の使用上の観点から床24と床120との間に実質的にずれが生じていないとみなせるかご位置の範囲である。規定の着床範囲は、例えば、乗降場100の床120に対するかご20の床24の段差が、10mm以内の範囲である。
【0031】
なお、かご20に乗客が出入りすることにより、かご20の重量が変動しているとき、ロープ11のうちの綱車50とかご20との間の部分が伸縮する。このため、かご位置が乗降場100の床120の位置からずれることがある。
【0032】
一方、電磁ブレーキ40に異常が生じていることにより、ブレーキ車41に与えられる制動力が規定の制動力よりも小さい場合、電気モータ31の出力軸31Aおよび綱車50が回転することがある。このため、かご位置が乗降場100の床120の位置から徐々にずれることがある。さらに、かご20に乗客が出入りすることにより、かご20の重量が変動しているとき、ロープ11のうちの綱車50とかご20との間の部分が伸縮する。このため、かご位置が乗降場100の床120の位置から徐々にずれることがある。
【0033】
エレベータ装置1はさらに、かご20に関する情報を検出する複数の検出部を備える。複数の検出部の一例は、昇降路の壁200およびかご20の天井23に設置されるずれ検出部71、かご20の床24に設置される重量検出部72、綱車50に設置される回転検出部73、ならびに、かご20内に設置される乗客検出部74である。各検出部71〜74は制御装置60と電気的に接続されている。
【0034】
ずれ検出部71は、かご位置と乗降場100の床120の位置とのずれ(以下では「かご位置のずれ」)を検出する。
ずれ検出部71は、昇降路の壁200における各フロアの乗降場100と対応する位置に取り付けられた検出プレート71A、ならびに、かご20の天井23に取り付けられた第1検出部71Bおよび第2検出部71Cを備える。一例では、第2検出部71Cは第1検出部71Bよりも高い位置に取り付けられる。各検出部71B,71Cの一例は光電センサであり、検出プレート71Aと対向する場合に制御装置60に信号を出力する。
【0035】
かご位置が規定の着床範囲に含まれるとき、第1検出部71Bおよび第2検出部71Cが検出プレート71Aと対向するため、第1検出部71Bおよび第2検出部71Cが信号を制御装置60に出力する。
【0036】
かご位置が規定の着床範囲の上限位置よりも高く、第1検出部71Bが検出プレート71Aと対向し、第2検出部71Cが検出プレート71Aと対向しない場合、制御装置60は第1検出部71Bだけから出力信号を受ける。また、かご位置が規定の着床範囲の下限位置よりも低く、第2検出部71Cが検出プレート71Aと対向し、第1検出部71Bが検出プレート71Aと対向しない場合、制御装置60は第2検出部71Cだけから出力信号を受ける。
【0037】
重量検出部72は、かご20に搭乗している乗客の重量(以下では「重量情報」)を検出する。一例によれば、床24の底面の四隅のそれぞれに重量検出部72が設置される。乗客の重量は、かご20に搭乗している乗客自身の重量、および、乗客が所持している荷物の重量を含む。
【0038】
回転検出部73は、綱車50の回転量を検出する。回転検出部73の一例はロータリーエンコーダである。ロータリーエンコーダの計測方法は例えばインクリメンタル方式であり、ロータリーエンコーダの角度の検出方式は光電方式である。
【0039】
乗客検出部74は、かご20内の乗客の存在の有無を検出する。乗客検出部74の一例は人感センサである。乗客検出部74はかご20内の乗客の存在の有無に応じて、制御装置60に信号を出力する。
【0040】
図2に示されるとおり、制御装置60は、各検出部71〜74の信号が入力される入力部61、および、電気モータ31と電磁ブレーキ40とを制御する制御部62を備える。
入力部61は、第1検出部71Bおよび第2検出部71Cの出力信号に含まれる情報であるずれ情報を取得し、そのずれ情報に基づいてかご位置のずれを検出する。入力部61はさらに、重量検出部72の出力信号に含まれる情報である重量情報を取得し、その重量情報に基づいて重量を算出する。入力部61はさらに、回転検出部73の出力信号に含まれる情報である回転情報を取得し、その回転情報に基づいて綱車50の回転量、綱車50の回転速度、および、昇降路の高さ方向におけるかご位置を算出する。なお、回転検出部73は、綱車50の軸に設置するのではなく、電気モータ31の軸に設置して、そこから回転情報を含む信号を入力部61に出力するということにしても構わない。
【0041】
かご位置のずれ、乗客の重量、綱車50の回転量、綱車50の回転速度、ならびに、昇降路の高さ方向におけるかご位置は、制御部62に入力される。制御部62は、入力部61から入力された各情報に基づいて、電気モータ31および電磁ブレーキ40の制御、ならびに、電磁ブレーキ40の異常に関する判定を実行する。
【0042】
制御部62は、かご20に搭載される操作部25(図1参照)、および、乗降場100に取り付けられている操作部(図示略)の操作により呼び登録されたフロア(以下では「指定フロア」)にかご20を移動させるかご搬送制御を実行する。なお、呼び登録は、かご20を指定フロアの乗降場100に移動させる要求である。かご20が、指定フロアの規定の着床範囲内に着床後、かご位置が規定の着床範囲外に出てしまうことがあった場合、制御部62は、位置調節制御を実行してかご位置が規定の着床範囲に含まれるようにする。また、制御部62は、かご搬送制御や位置調節制御とは別に、かご20に乗客が搭乗しているか否かを判定するかご内無人判定処理を実行する。
【0043】
かご内無人判定処理において、制御部62は、かご20のかご戸22が閉まっている状態、かつ、呼び登録が途絶えている状態で所定の時間TAが経過したことに基づき、かご20に乗客が搭乗していないと判定する。なお、呼び登録が途絶えている状態とは、かご20に搭載される操作部25、および、乗降場100に取り付けられている操作部が操作されることに基づく全ての呼び登録が途絶えている状態を示す。
【0044】
制御部62は、かご内無人判定処理の結果を用いて、ブレーキ異常判定処理を実行する。ブレーキ異常判定処理は、かご20が乗降場100にて制動されており、乗客がかご20に搭乗していないと判定されるにもかかわらず、かご位置が規定の着床範囲内に含まれないと検出された場合、電磁ブレーキ40に異常が生じていると判定する処理である。
【0045】
かご搬送制御、位置調節制御、かご内無人判定処理、および、ブレーキ異常判定処理を記述したプログラムは、制御装置60の記憶部(図示略)に予め記憶される。制御部62は、電源が投入されているときにこれらのプログラムを所定の制御周期毎に実行する。
【0046】
図3はブレーキ異常判定処理の一例を示すフローチャートである。
ブレーキ異常判定処理は、指定フロアの乗降場100の床120をめざして制御部62が電気モータ31を回転させてきたことが終了し、電磁ブレーキ40の電磁コイルへの電力の供給が停止したことに基づき開始される。ブレーキ異常判定処理が開始されるときのかご位置は、規定の着床範囲内に含まれる。なお、上記の着床時に制御部62はかご戸22を開放制御し、それに連動して乗降戸110が開放する。かご戸22および乗降戸110の開放後、乗降に必要な時間として設定された時間が経過したことに基づき、制御部62はかご戸22を閉鎖制御し、それに連動して乗降戸110が閉鎖する。このようなかご戸22の開閉制御については、ブレーキ異常判定処理に絡め合わせて述べる必要もないので、以下では省略する。
【0047】
まず、ステップS10で、かご位置が規定の着床範囲に含まれるか否かが判定される。制御部62は、第1検出部71Bおよび第2検出部71Cの出力信号が入力されていることに基づいて、かご位置が規定の着床範囲に含まれると判定する。その場合、制御部62は呼び登録されている別の指定フロアへのかご20の移動を開始するまで、ステップS10の判定処理を継続して実行する。
【0048】
一方、第1検出部71Bおよび第2検出部71Cの一方または両方から出力信号が入力されない場合、制御部62はかご位置が規定の着床範囲に含まれないと判定し、ステップS20を実行する。
【0049】
ステップS20では、別フロー(図示略)のかご内無人判定処理の判定結果(かご20に乗客が搭乗していないと判定されたか否か)を受け取る。制御部62は、かご内無人判定処理において、かご20に乗客が搭乗していると判定されていたとき、ステップS30を実行する。
【0050】
なお、制御部62は、かご内無人判定処理において、かご戸22、および、かご戸22と連動して乗降戸110が閉まっている状態、かつ、呼び登録が途絶えている状態で所定の時間TAが経過したことに基づき、かご20に乗客が搭乗していないと判定する。
【0051】
ステップS30では、かご20に乗客が搭乗していないときにかご位置が規定の着床範囲に含まれないことが検出された回数である無人時位置ずれ回数をリセットし、ステップS40を実行する。
【0052】
ステップS40では、位置調節制御が実行される。位置調節制御によれば、電磁ブレーキ40の電磁コイルに電力が供給され、乗降場100の床120と同一の平面上にかご20の床24が存在するように電気モータ31が制御される。これにより、かご位置は、規定の着床範囲内に復帰することとなる。
【0053】
一方、制御部62は、かご内無人判定処理において、かご20に乗客が搭乗していないと判定されていたとき、ステップS50を実行する。
ステップS50では、無人時位置ずれ回数をカウントアップし、ステップS60を実行する。
【0054】
ステップS60では、カウントアップされた無人時位置ずれ回数が所定回数に達したか否かが判定される。この所定回数は複数回数とし、その一例は2回である。制御部62は無人時位置ずれ回数が所定回数に達していない場合は、ステップS40を実行する。一方、制御部62は無人時位置ずれ回数が所定回数に達した場合は、ステップS70を実行する。
【0055】
ステップS70では、制御部62によって、電磁ブレーキ40に異常が生じていることが判定され、その判定結果と判定した時刻とが関連付けて記憶部に記憶される。そして制御部62はエレベータ装置1の運転を休止させ、休止させたことを示す情報を、乗降場100に設置されている表示器(図示略)に表示させる。制御部62はさらに、エレベータ装置1の運転を休止させた後、その事実およびその原因が電磁ブレーキ40の異常であることを保守者に報知する。制御部62は一例として、電話回線等を通じて監視センターに報知する。
【0056】
エレベータ装置1の作用および効果について説明する。
かご20に乗客が搭乗していない状況ではかご20の重量が変動しないため、ロープ11のうちのかご20と綱車50との間の部分が伸縮しない。このため、かご20に乗客が搭乗していない状況において、かご位置と乗降場100の床120の位置との間にずれが検出される場合、電磁ブレーキ40に異常が生じていることが示唆される。このため、制御装置60のように、かご20に乗客が搭乗していないときのずれ情報に基づき、かご20を制動する電磁ブレーキ40に異常が生じていることを判定することにより、電磁ブレーキ40の異常を精度よく早期に検出できる。
【0057】
エレベータ装置1によれば、さらに以下の効果が得られる。
(1)無人時位置ずれ回数が複数回である場合、ずれ情報が誤検出されている可能性が低く、電磁ブレーキ40に異常が生じている可能性がより高いことが示唆される。このため、制御装置60のように、かご20に乗客が搭乗していないときのかご位置が規定の着床範囲に含まれないことが複数回検出されたこと、すなわち、無人時位置ずれ回数が複数回であることに基づき、電磁ブレーキ40に異常が生じていると判定することにより、電磁ブレーキ40の異常をより精度よく検出することができる。
【0058】
(2)制御装置60は電磁ブレーキ40に異常が生じていると判定した事実を時刻とともに記憶するため、エレベータ装置1の保守者は、例えば定期メンテナンスのときに記憶内容を点検することによって、記憶されている時刻に電磁ブレーキ40の異常判定があったことを知ることができる。このため、その時刻後に修理作業を行なったかどうかを振り返ることもでき、必要な修理が放置されるといったことを避けることができる。
【0059】
(3)かご戸22、および、指定フロアの乗降場100の乗降戸110が閉じられた状態でエレベータ装置1の運転が休止され、制御部62はエレベータ装置1の運転が休止されたことを示す情報を乗降場100に設置されている表示器(図示略)に表示させる。このため、新たな乗客は、例えば乗降場100の操作部を操作してもエレベータ装置1が反応しない、すなわち、乗降戸110が開かない理由が、エレベータ装置1の運転が休止されていることにより利用できない状態であることを認識できる。
【0060】
(変形例)
上記実施形態に関する説明は、本発明に従うエレベータ装置およびその制御装置が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従うエレベータ装置およびその制御装置は、例えば以下に示される実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。
【0061】
・変形例の制御装置60によれば、かご内無人判定処理において、制御部62は、かご戸22が閉まっている状態、かつ、呼び登録が途絶えている状態、かつ、かご20内の操作部25が操作されない状態で所定の時間TBが経過したことに基づき、かご20に乗客が搭乗していないと判定する。
【0062】
・変形例の制御装置60によれば、制御部62は、かご内無人判定処理において、かご戸22が閉まっている状態、かつ、呼び登録が途絶えている状態、かつ、重量情報に基づいて得られる重量が0である状態で所定の時間TCが経過したことに基づき、かご20に乗客が搭乗していないと判定する。
【0063】
・変形例の制御装置60によれば、制御部62は、かご内無人判定処理において、かご戸22が閉まっている状態、かつ、呼び登録が途絶えている状態、かつ、乗客検出部74によりかご20内の乗客の存在が検出されない状態で所定の時間TDが経過したことに基づき、かご20に乗客が搭乗していないと判定する。
【0064】
・変形例の制御装置60によれば、制御部62はブレーキ異常判定処理のステップS60において、無人時位置ずれ回数が3回以上である場合、ステップS70を実行する。この変形例の制御装置60の制御部62はかご搬送制御のステップS60において、無人時位置ずれ回数が1回または2回である場合、ステップS40を実行する。
【0065】
・変形例の制御装置60によれば、ブレーキ異常判定処理のステップS60が省略され、ステップS50の後にステップS70を実行する。すなわち、この変形例の制御装置60は無人時位置ずれ回数が1回であることに基づきステップS70を実行する。
【0066】
・変形例のエレベータ装置1によれば、重量検出部72および乗客検出部74の少なくとも一方を有さない。
・エレベータ装置1に搭載されるブレーキの種類は任意に選択可能である。変形例のエレベータ装置1は電磁ブレーキ40に代えて、例えば、ディスク式のブレーキを備える。
【0067】
・ずれ検出部71の種類は任意に選択可能である。変形例のエレベータ装置1は、光電センサに代えて、例えば、磁気式センサ、静電容量式センサ、渦電流式センサ、または、共振コイル式センサを備える。
【符号の説明】
【0068】
1 :エレベータ装置
20 :かご
22 :かご戸(かごの戸)
24 :床
25 :操作部
40 :電磁ブレーキ(ブレーキ)
60 :制御装置
61 :入力部
62 :制御部
100:乗降場
120:床
図1
図2
図3