(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記セレーションの形成領域において、前記軸流ファンの径方向中央位置よりも前記軸流ファンの内周側の部分を前記セレーションの内周側部分とし、前記軸流ファンの径方向中央位置よりも前記軸流ファンの外周側の部分を前記セレーションの外周側部分としたとき、
前記複数のリブは、前記セレーションの内周側部分よりも前記セレーションの外周側部分に多く設けられていることを特徴とする請求項3に記載の送風機。
前記セレーションの形成領域における前記軸流ファンの径方向中央位置よりも前記軸流ファンの内周側の部分を前記セレーションの内周側部分とし、前記軸流ファンの径方向中央位置よりも前記軸流ファンの外周側の部分を前記セレーションの外周側部分としたとき、
前記複数の第2リブは、前記セレーションの内周側部分よりも前記セレーションの外周側部分に多く設けられていることを特徴とする請求項10に記載の送風機。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。また、各実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。
【0016】
(第1実施形態)
本実施形態では、本発明の送風機を、軸方向に沿って空気を送風する軸流送風機1に適用した例について説明する。まず、
図1、2を用いて、本実施形態の軸流送風機1の全体構成について説明する。なお、
図1は、空気流れ上流側から見た軸流送風機1の正面図である。なお、
図1、2中の上下方向を示す矢印D1、左右方向を示す矢印D2、前後方向を示す矢印D3は、車両搭載状態での方向を示している。
【0017】
本実施形態の軸流送風機1は、車両用のラジエータ2に装着され、ラジエータ2に空気を供給する車両用の送風機である。ラジエータ2は、車両の走行用エンジンの冷却水と空気との熱交換により、冷却水を冷却する熱交換器である。
【0018】
図2に示すように、軸流送風機1は、ラジエータ2に対して、車両後方側であって、ラジエータ2を通過する空気流れの下流側に配置されている。軸流送風機1は、ラジエータ2を通過した空気を吸引して車両後方に向けて吹き出すものである。
【0019】
軸流送風機1は、軸流ファン10と、シュラウド20と、モータ30とを備えている。モータ30は、軸流ファン10を回転駆動する電動機である。モータ30は、回転軸31を有している。モータ30は、ステー32によってシュラウド20に固定されている。ステー32は、モータ30を支持する支持部材である。
【0020】
軸流ファン10は、モータ30によって軸流ファン10のファン軸心CL1を中心に回転する。
図1中の矢印DR1方向が軸流ファン10の回転方向である。軸流ファン10は、モータ取付部11と、複数の羽根12と、リング部13とを有して構成されている。
【0021】
モータ取付部11は、モータ30の回転軸31に取り付けられている円筒状の部材である。モータ取付部11は、その側壁の外側に複数の羽根12を支持している。なお、モータ取付部11は、ボス部とも呼ばれる。
【0022】
複数の羽根12は、モータ取付部11から放射状に延びている。複数の羽根12は、モータ取付部11の周囲に主に等間隔で配置されている。
【0023】
リング部13は、軸流ファン10の外周部に設けられた円環状の部材である。より具体的には、リング部13は、
図1に示すように、ファン軸心CL1を中心とした円環状であって、
図2に示すように、ファン軸心CL1方向に所定長さ延びた円筒状の部材である。
【0024】
リング部13は、円筒状の側壁131を有している。リング部13は、複数の羽根12のそれぞれの外周端部と連結している。換言すると、リング部13の側壁131には、複数の羽根12のそれぞれと連結する連結部132が形成されている。なお、ここでいう連結とは、別体として形成された羽根12とリング部13とが繋がっている状態だけでなく、一体として形成された羽根12とリング部13とが連続している状態も含む意味である。本実施形態では、モータ取付部11、複数の羽根12およびリング部13は、ポリプロピレンなどの樹脂にて一体に成形されている。
【0025】
リング部13は、側壁131の空気流れ上流側端部に、断面円弧状のベルマウス133が形成されている。
【0026】
シュラウド20は、ラジエータ2を通過した空気が軸流ファン10に向かって流れる空気流路20cを形成している。シュラウド20は、ポリプロピレンなどの樹脂で成形されている。シュラウド20は、ラジエータ2側に空気が流入する空気流入口20aが形成されており、その反対側に空気が流出する空気流出口20bが形成されている。シュラウド20の内部のうち空気流出口20b側の部分に、軸流ファン10が配置されている。
【0027】
より具体的には、シュラウド20は、空気流入部21と、空気流出部22と、中間部23とを有している。
【0028】
空気流入部21は、空気流入口20aが形成されている部分である。空気流入部21の空気流入側がラジエータ2に連結されている。空気流入口20aは、ラジエータ2に対向してファン軸心CL1方向に開口している。空気流入口20aの中心位置は、ファン軸心CL1に一致している。
【0029】
空気流入口20aは、ラジエータ2の形状に対応した形状である。すなわち、空気流入口20aは、
図1に示すように、ファン軸心CL1方向から見たとき、車両上下方向D1に延びる辺よりも、車幅方向D2に延びる辺の方が長い横長の長方形形状である。このため、車両左右方向D2における空気流入部21の内壁と軸流ファン10との距離L2は、車両上下方向D1における空気流入部21の内壁と軸流ファン10との距離L1よりも大きくなっている。
【0030】
空気流出部22は、空気流出口20bが形成されている部分であって、内部に軸流ファン10が配置されている部分である。軸流ファン10が回転するので、空気流出部22は、リング部13との間に隙間、すなわち、クリアランス部24を有するように形成されている。したがって、本実施形態では、空気流出部22が、リング部13の径方向外側でリング部13に対向する筒状の部分を構成している。
【0031】
空気流出口20bは、ファン軸方向CL1方向に開口している。空気流出口20bは、軸流ファン10に対応した形状である。すなわち、空気流出口20bは、ファン軸心CL1方向から見たとき、円形状である。空気流出口20bの中心位置は、ファン軸心CL1に一致している。
【0032】
また、本実施形態では、空気流出口20bの半径がリング部13の下流側端部の内径と同じとなるように、空気流出部22の空気流れ最下流部221は、リング部13と対向する部分222よりも内側に突出した形状となっている。空気流出部22の空気流れ最下流部221とリング部13との間に、クリアランス部24へ空気が流入する空気入口25が形成されている。
【0033】
中間部23は、空気流入部21から空気流出部22まで空気を導く空気流路を形成している。中間部23は、車両左右方向D2における空気流入部21の内壁と軸流ファン10との距離L2が、空気流入部21から空気流出部22に向かって徐々に小さくなっている。したがって、中間部23は、流路断面積(開口面積)が、空気流入部21から空気流出部22に向かって徐々に小さくなっている。
【0034】
本実施形態のシュラウド20は、空気流入部21と空気流出部22と間に中間部23が介在していることで、シュラウド20内部の空気流路20cの流路断面積が空気流入部21から空気流出部22に至る過程で縮小されている。
【0035】
このような構成の軸流送風機1では、モータ30の回転軸31が回転することによって、軸流ファン10が回転すると、
図2中の矢印F1のように、ラジエータ2を通過した空気が、軸流ファン10に吸い込まれ、軸流ファン10からファン軸心CL1に平行に吹き出される。
【0036】
このとき、軸流ファン10の回転により、空気流路20c内の空気を空気流出口20bに送るため、シュラウド20内における空気流出口20b側の位置A1での圧力は軸流ファン10の空気吸入側の位置A2での圧力よりも高い。このため、
図2中の矢印F2のように、軸流ファン10から流出した空気の一部が、空気入口25からクリアランス部24を通って、軸流ファン10の吸入側に逆流する。本実施形態では、軸流ファン10の外周にリング部13を設けているので、リング部13を設けない場合と比較して、この逆流F2が低減されている。さらに、リング部13の先端側にベルマウス133を設けているので、ベルマウス133を設けない場合と比較して、逆流F2が合流する軸流ファン10の空気流入側の乱流が抑制されている。
【0037】
次に、
図3、4、5を用いて、本実施形態の軸流送風機1の主な特徴部分について説明する。
【0038】
図5に示すように、複数の羽根12は、それぞれ、ファン軸心CL1方向における空気流れ上流側に配置される負圧面121と、負圧面121の反対側に配置される正圧面122とからなる翼面が形成されている。複数の羽根12は、それぞれ、回転方向DR1前方に位置する前縁部123および回転方向DR1後方に位置する後縁部124を有している。複数の羽根12は、それぞれ、所定の抑え角α、所定の翼弦長L12を有している。
【0039】
そして、
図3、4に示すように、複数の羽根12のそれぞれにおいて、羽根12の前縁部123に、前縁部123に沿って、山部41と谷部42がそれぞれ交互に複数並ぶセレーション40が設けられている。さらに、羽根12の負圧面121に、負圧面121の表面から突出した複数のリブ51が設けられている。
【0040】
セレーション40は、三角形状の突起部が複数並んだものである。突起部のうち突起部の先端を含む部分が山部41であり、隣り合う突起部の間の窪みが谷部42である。
【0041】
各リブ51は、前縁部123の谷部42の位置を起点51aとし、後縁部124に向かって延びた形状である。具体的には、各リブ51は、前縁部123の谷部42の位置を起点51aとし、後縁部124の位置を終点51bとして、連続して延びた形状である。換言すると、各リブ51は、前縁部123の谷部42から後縁部124にわたって、配置されている。各リブ51同士は、互いに平行に延びている。
【0042】
より詳細には、各リブ51の起点51aは、谷部42のうち最も底の部分に位置している。各リブ51は、軸流ファン10のファン軸心CL1を中心とする円の周方向に平行に延びた形状である。換言すると、各リブ51の中心軸は、軸流ファン10のファン軸心CL1の位置を中心とし、各リブ51が設置された起点を通る円弧状に延びた形状である。
【0043】
本実施形態では、複数の谷部42の全部に対して、リブ51が設けられている。したがって、セレーション40の谷部42の数とリブ51の数とが一致している。
【0044】
また、各リブ51の高さh1は、翼面上に形成される気流の境界層よりも高くなるように設定される。さらに、羽根12を基準とする羽根12周りの空気流れの相対速度は羽根12の内周側の方が外周側よりも遅いことから、後述する負圧面121上における下降流F5を伴った主流F4の流れは、羽根12の内周側ほど負圧面121から剥離し難い。このため、羽根12の内周側でのリブ51の高さh1は羽根12の外周側でのリブ51の高さh1よりも低くしても、後述するリブ51による効果が得られる。
【0045】
そこで、本実施形態では、軸流ファン10の外周側から内周側に向かうにつれて低くなるように、各リブ51の高さh1が設定されている。換言すれば、本実施形態の軸流ファン10は、各リブ51の高さh1が、ファンの径方向内側(内周側)から径方向外側(外周側)に向かうにつれて高くなるように設定されている。
【0046】
ここで、本実施形態の軸流送風機1と
図7に示す比較例1の軸流送風機J1とを比較する。比較例1の軸流送風機J1は、羽根12の負圧面121にリブ51が形成されていない点のみが、本実施形態の軸流送風機1と異なるものである。
【0047】
図1、2に示す本実施形態および比較例1の軸流送風機1、J1では、軸流ファン10に流入する空気流れは、軸流ファン10のファン軸心CL1に垂直な方向、すなわち、ファン軸心CL1に向かう方向の速度成分を有する。また、軸流ファン10を通過する空気流れの、羽根を基準とする相対速度は、軸流ファン10の外周側よりも内周側の方が速い。これらにより、軸流ファン10の外周側部分での空気流れは縮流となる。なお、縮流が発生する要因の1つとしては、シュラウド20内部の空気通路の流路断面積が空気流入部21から空気流出部22に至る過程で縮小されることが挙げられる。
【0048】
さらに、本実施形態および比較例1の軸流送風機1、J1では、車両左右方向D2における空気流入部21の内壁と軸流ファン10との距離L2が、車両上下方向D1における空気流入部21の内壁と軸流ファン10との距離L1よりも大きくなっているため、軸流ファン10を通過する空気流れは、車両左右方向において、縮流の傾向が強くなっている。すなわち、本実施形態の構成では、シュラウド20内部における空気通路の流路断面積の縮小度合いが車両上下方向よりも車両左右方向において大きいことから、車両左右方向において、縮流の傾向が強くなっている。
【0049】
また、本実施形態および比較例1の軸流送風機1、J1においては、リング部13の内周面近傍における連結部132の空気流れ下流側の領域A3(
図2参照)に、空気流れのよどみが発生する。このよどみの発生により、上記した軸流ファン10の外周側と内周側の流速差が拡大するため、軸流ファン10の外周側部分の縮流が助長される。このことから、本実施形態および比較例1の軸流送風機1、J1においては、1つの羽根12における翼面上の気流の向きは、翼面上のファン径方向での位置によって異なっている。具体的には、
図6、8に示すように、羽根12に流入する気流F3の向きが、羽根12の内周側と外周側で異なっている。羽根12の内周側に流入する気流F3aは、ファン軸心CL1を中心とする円の周方向を向いており、羽根12の外周側に流入する気流F3bは、羽根12の内周側に流入する気流F3aよりも、ファン軸心CL1側を向いている。
【0050】
このため、
図8に示すように、比較例1では、セレーション40によって生成した下降流F5を伴う主流F4が負圧面121上で衝突し、気流の乱れF6が生じる。この結果、セレーション40の効果、すなわち、負圧面121上での主流F4の剥離の抑制効果が十分に発揮されなくなってしまう。なお、
図8中の下降流F5は、羽根12の前縁部123に気流F3が流入する際に、山部41の斜辺部分から羽根12の負圧面121側に回り込み、負圧面121に向かって下降する空気流れである。また、
図8中の主流F4は、羽根12の負圧面121上を山部41の頂部から羽根12の後縁部124に向かう空気流れである。また、
図8中の一点鎖線は、主流F5の流れ方向を負圧面121に投影したものである。
図6中の一点鎖線も、
図8中の一点鎖線と同様である。
【0051】
これに対して、
図6に示すように、本実施形態では、複数のリブ51によって、負圧面121上を流れる気流の向きを揃えることができるので、セレーション40によって生成した下降流F5を伴う主流F4の衝突を防止できる。このため、セレーション40によって生成した下降流F5による負圧面121上での主流F4の剥離の抑制効果を発揮させることができる。この結果、翼面近傍の気流の乱れを緩和できるので、騒音発生の要因である翼面圧力変動を抑えることが可能となり、低騒音化が可能となる。
【0052】
ここで、セレーション40の山部41は、羽根12の前縁部123に流入する気流が羽根12の負圧面121側に回り込む際に、羽根12の負圧面121側に下降する下降流(縦渦)を生成する部位である。
【0053】
これに対して、セレーション40の谷部42は、セレーション40において、羽根12の負圧面121側における下降流の生成に何ら寄与せず、却って、羽根12の負圧面121側の下降流を乱す気流を生成する部位となる。
【0054】
この点を鑑みて、本実施形態では、リブ51の起点51aをセレーション40における下降流の生成に寄与しない谷部42に設定している。これによれば、リブ51自体がセレーション40における下降流の生成を阻害する要因とならないので、セレーション40における主流の剥離の抑制効果を充分に発揮させることができる。
【0055】
また、本実施形態では、羽根12の負圧面121側にリブ51を設けることで、羽根12の翼面に沿った気流と、羽根12の外側における気流(例えば、クリアランス部24を流れる気流)との干渉を抑えることができる。これによれば、羽根12の翼面における気流の乱れによる乱流騒音(広帯域騒音)だけでなく、翼面に沿った気流と、羽根12の外側における気流との干渉による回転騒音の発生を抑えることが可能となる。
【0056】
特に、本実施形態では、軸流ファン10の径方向内側から径方向外側に向かうにつれてリブ51の突出方向の高さを高くしているので、翼面に沿った気流と、羽根12の外側における気流との干渉による回転騒音の発生をより効果的に抑えることができる。
【0057】
(第2実施形態)
本実施形態は、第1実施形態に対して、リブ51の数を減らしたものであり、その他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0058】
図9に示すように、本実施形態では、複数のリブ51を、セレーション40の複数の谷部42のうち1つおきに並ぶ谷部42のみに対して設けている。このように、本実施形態では、谷部42の数よりもリブ51の数が少なく、谷部42の数とリブ51の数が一致していない。
【0059】
本実施形態のように、リブ51の数が谷部42の数よりも少なくても、負圧面121にリブ51を設けていない場合と比較して、セレーション40によって生成した下降流F5による負圧面121上での主流F4の剥離の抑制効果を発揮させることができる。
【0060】
また、負圧面121に複数のリブ51を設けることは、負圧面121上を流れる気流の中に新たな固定壁面を生成することになり、リブ51そのものからの新たな渦発生を招いてしまう。このため、不必要にリブ51を設けることは好ましくなく、本実施形態のように、設置するリブ51の数をできるだけ少なく設定することが好ましい。したがって、本実施形態によれば、全部の谷部42に対してリブ51を設ける場合と比較して、リブ51からの新たな渦発生を抑制することができる。
【0061】
なお、本実施形態は、羽根12の外周側と内周側での気流の向きの相違が小さく、全部の谷部42に対してリブ51を設けなくても、複数の谷部42の一部のみに対してリブ51を設けることでも、負圧面121上での主流F4の剥離の抑制効果が十分に得られる場合に有効である。
【0062】
(第3実施形態)
本実施形態は、第2実施形態と同様に、第1実施形態に対して、リブ51の数を減らし、さらに、セレーション40のうち内周側部分よりも外周側部分にリブ51を多く設置したものである。その他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0063】
図10に示すように、本実施形態では、内周側から1番目と2番目に位置する谷部42を除き、外周側から1番目から5番目に位置する谷部42のそれぞれに対して、リブ51を設けている。
【0064】
ここで、セレーション40の形成領域における軸流ファン10の径方向中央位置よりも軸流ファン10の内周側の部分を、セレーション40の内周側部分とする。また、セレーション40の形成領域における軸流ファン10の径方向中央位置よりも軸流ファン10の外周側の部分をセレーション40の外周側部分とする。このとき、本実施形態では、外周側から1、2、3番目の谷部42がセレーション40の外周側部分に位置し、内周側から1、2、3番目の谷部42がセレーション40の内周側部分に位置している。本実施形態では、セレーション40の外周側部分に3つのリブ51が設けられており、セレーション40の内周側部分に1つのリブ51が設けられている。したがって、本実施形態では、リブ51は、セレーション40の内周側部分よりも外周側部分の方に多く設けられている。
【0065】
以上の説明のように、本実施形態では、複数のリブ51を、セレーション40の複数の谷部42のうち一部の谷部42のみに対して設けているので、第2実施形態と同様の効果を奏する。
【0066】
さらに、本実施形態では、複数のリブ51を、セレーション40の内周側部分よりも外周側部分の方に多く設けている。これにより、下記の理由により、複数のリブ51を複数の谷部42のうち一部の谷部42のみに対して設ける場合において、負圧面121上での主流F4の剥離の抑制効果を十分に発揮させることができる。
【0067】
軸流ファン10の内周側は、リング部13近傍に生じるよどみの影響を受けにくいため、縮流の傾向が弱く、軸流ファン10の外周側は、リング部13近傍に生じるよどみの影響により、縮流の傾向が強い。このため、セレーション40の内周側部分のリブ51の数を少なくし、外周側部分のリブ51の数を多くすることで、負圧面121上を流れる気流の向きを揃えることができ、セレーション40によって生成した下降流を伴う主流の衝突を防止できる。
【0068】
なお、本実施形態では、セレーション40の外周側部分に3つのリブ51が設けられており、セレーション40の内周側部分に1つのリブ51が設けられていたが、セレーション40の内周側部分よりも外周側部分の方がリブ51の設置数が多いという関係を満たしていれば、セレーション40の外周側部分と内周側部分のそれぞれにおけるリブ51の設置数を変更してもよい。例えば、外周側から1、2、3番目に位置する谷部42のみに対してリブ51を設け、リブ51の数を、セレーション40の外周側部分は3とし、内周側部分は0としてもよい。
【0069】
(第4実施形態)
本実施形態は、第1実施形態に対して、羽根12の正圧面122へのリブ52の設置を追加したものであり、その他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0070】
図11に示すように、本実施形態では、第1実施形態と同様に、羽根12の負圧面121において、セレーション40の複数の谷部42の全部に対してリブ51が設けられている。さらに、羽根12の正圧面122においても、セレーション40の複数の谷部42の全部に対してリブ52が設けられている。以下では、負圧面121に設けられたリブ51を第1リブ51と呼び、正圧面122に設けられたリブ52を第2リブ52と呼ぶ。
【0071】
複数の第2リブ52は、それぞれ、第1実施形態で説明した複数の第1リブ51と同様に、前縁部123の谷部42の位置を起点52aとし、後縁部124の位置を終点52bとして、連続して延びた形状である。ただし、複数の第2リブ52のそれぞれの高さh2は、全て同じであり、最外周に位置する第1リブ51の高さh1と同じである。
【0072】
ところで、第1実施形態のように、羽根12の負圧面121と正圧面122のうち負圧面121のみにリブ51を設けた場合、羽根12の後縁部124から放出される気流は、負圧面121側ではリブ51に沿って放出され、正圧面122側では縮流に従って放出される。このため、羽根12の後縁部124から放出される気流の向きが、正圧面122側と負圧面121側とで異なってしまい、羽根12の後縁部124から放出される気流に乱れが生じてしまう。
【0073】
これに対して、本実施形態では、負圧面121に複数の第1リブ51を設け、さらに、正圧面122にも複数の第2リブ52を設けている。これにより、羽根12の後縁部124から放出される気流の向きを、負圧面121側と正圧面122側とで等しくでき、羽根12の後縁部124から放出される気流を安定させることができる。
【0074】
なお、本実施形態では、セレーション40の谷部42の数と第1リブ51の数と第2リブ52の数が一致しており、第1リブ51と第2リブ52とが1対1で対応して設けられている。このため、羽根の後縁部124から放出される気流を安定させるという効果が最も高くなる。
【0075】
また、羽根12の後縁部124から放出される気流の向きを負圧面121側と正圧面122側とで揃える観点では、本実施形態の如く、ファン軸心CL1方向において第1リブ51と重なり合うように第2リブ52を設けることが望ましい。
【0076】
(第5実施形態)
本実施形態は、第4実施形態に対して、第1リブ51の数と第2リブ52の数を減らしたものであり、その他の構成は、第4実施形態と同じである。
【0077】
図12に示すように、本実施形態では、複数の第1リブ51を、セレーション40の複数の谷部42のうち一部の谷部42のみに対して設けている。具体的には、第2実施形態と同様に、第1リブ51を、前縁部123に並ぶ複数の谷部42のうち1つおきの谷部42に対して、それぞれ、設けている。このため、本実施形態によれば、第2実施形態と同様の効果を奏する。
【0078】
また、本実施形態では、複数の第2リブ52を、セレーション40の複数の谷部42のうち一部の谷部42のみに対して設けている。具体的には、第2リブ52を、外周側から1、2、3番目の谷部42に対して、それぞれ、設けている。
【0079】
ここで、第2実施形態での説明の通り、羽根12の翼面に複数のリブを設けることは、翼面上を流れる気流の中に新たな固定壁面を生成することになり、リブそのものからの新たな渦発生を招いてしまう。本実施形態によれば、第2リブ52の数を谷部42の数よりも少なくしているので、全部の谷部42に対して第2リブ52を設ける場合と比較して、第2リブ52からの新たな渦発生を抑制することができる。
【0080】
また、本実施形態では、第2リブ52の数は、第1リブ51の数よりも少ない。さらに、第2リブ52は、セレーション40のうち内周側部分よりも外周側部分の方に多く設けられている。第3実施形態での説明の通り、軸流ファン10の内周側よりも外周側の方が縮流の傾向が強い。そこで、第2リブ52の数を少なくする場合、第2リブ52を、セレーション40のうち内周側部分よりも外周側部分の方に多く設けることが有効である。
【0081】
(第6実施形態)
本実施形態は、第5実施形態と同様に、第4実施形態に対して、第1リブ51の数と第2リブ52の数を減らしたものである。ただし、本実施形態は、第2リブ52の数が第1リブ51の数よりも多い点などが、第5実施形態と異なっている。
【0082】
図13に示すように、本実施形態では、複数の第1リブ51を、内周側から1、2、3番目に位置する谷部42に設けず、外周側から1、2、3、4番目に位置する谷部42のそれぞれに対して設けている。また、複数の第2リブ52を、最内周側に位置する谷部42に設けず、外周側から1、2、3、4、5、6番目の谷部42に対して第2リブ52を設けている。
【0083】
このように、本実施形態では、第1リブ51は、セレーション40の内周側部分よりも外周側部分の方に多く設けられており、第2リブ52も、セレーション40の内周側部分よりも外周側部分の方に多く設けられている。これにより、本実施形態においても、第3、第5実施形態と同様の効果を奏する。
【0084】
ところで、一の羽根12の負圧面121を通過した気流は、軸流ファン10の回転方向DR1における次の羽根12の正圧面122に到達する。このため、一の羽根12の正圧面122と負圧面121とでは、正圧面122の方が負圧面121よりも、縮流や乱れの影響が強い。
【0085】
そこで、複数の第2リブ52を、セレーション40の複数の谷部42のうち一部の谷部42に対して設ける場合では、本実施形態のように、第2リブ52の数を第1リブ51の数よりも多くすることが好ましい。これにより、正圧面122上を流れる気流の向きを揃えることができるので、羽根12の後縁部124から放出される気流の向きを、負圧面121側と正圧面122側とで等しくでき、羽根12の後縁部124から放出される気流を安定させることができる。
【0086】
ここで、
図14に、第1実施形態、第6実施形態および比較例1における軸流送風機の騒音レベルの測定結果を示す。なお、比較例1の軸流送風機J1は、第1実施形態の軸流送風機1において負圧面121に設けたリブ51をなくしたものである。また、セレーション40の谷部42の数をNとしたとき、第1実施形態の軸流送風機1は、第1リブ51の数を谷部42と同数のNとしたものであり、第6実施形態の軸流送風機1は、第1リブ51の数をN−3とし、第2リブ52の数をN−1としたものである。
【0087】
図14に示すように、比較例1と比較して、第1実施形態の軸流送風機は騒音が低減されており、第6実施形態の軸流送風機はさらに騒音が低減されていることが確認できた。この測定結果より、本実施形態が最も低騒音化が可能であることがわかる。
【0088】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態について、
図15、および
図16を用いて説明する。
図15は、本実施形態における羽根12の斜視図である。
図16は、
図15のXVI−XVI線断面図である。なお、
図15に示すXVI−XVI線は、羽根12の周方向(翼弦方向)の中央部を通る曲線である。従って、
図16は、羽根12を周方向(翼弦方向)の中央部で切断した際の羽根12の切断面を示している。
【0089】
本実施形態では、羽根12における正圧面122に対して、複数の凹部53を追加している点が第1実施形態と相違している。本実施形態では、第1実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0090】
図15に示すように、本実施形態では、第1実施形態と同様に、セレーション40の各谷部42の全てに対応するように、羽根12の負圧面121側にリブ51が設けられている。
【0091】
ここで、第4実施形態で説明したように、羽根12の負圧面121側と正圧面122側とでは、気流の向きが異なる傾向がある。そして、羽根12の負圧面121側と正圧面122側とで気流の向きが異なると、羽根12の後縁部124にて負圧面121側における気流と正圧面122側における気流とが交差する際に、騒音の発生要因となる三次元的な渦が発生してしまう。
【0092】
そこで、
図16に示すように、羽根12の正圧面122には、羽根12の負圧面121側に設けた各リブ51に対応して、負圧面121側に窪む凹部53が複数設けられている。すなわち、本実施形態では、セレーション40における全て谷部42に対して凹部53が形成されている。従って、本実施形態では、セレーション40における谷部42の数と凹部53の数とが一致している。
【0093】
各凹部53は、羽根12の正圧面122側の気流を整流させる機能を果たしている。本実施形態の各凹部53は、羽根12の正圧面122側における前縁部123の谷部42の位置を起点52aとし、後縁部124の位置を終点52bとして、連続して延びた形状となっている。具体的には、本実施形態の各凹部53は、軸流ファン10のファン軸心CL1を中心とする円の周方向に沿って延びている。
【0094】
本実施形態では、各凹部53を断面がV字状の溝で構成している。また、羽根12の強度を確保する観点で、各凹部53の幅がリブ51の幅以下、且つ、各凹部53の深さが羽根12の板厚の半分以下となるように設定することが望ましい。
【0095】
その他の構成は、第1実施形態と同様である。本実施形態の構成によれば、複数のリブ51によって、セレーション40によって生成した下降流を伴う主流の衝突を抑制することができるので、セレーション40における主流の剥離の抑制効果を発揮させることができる。
【0096】
また、本実施形態では、羽根12における正圧面122に対して、複数の凹部53を設ける構成としている。これによれば、羽根12の正圧面122側における気流が、各凹部53に沿って、セレーション40の谷部42から羽根12の後縁部124へ向かって流れることで整流される。このため、羽根12の負圧面121側と正圧面122側とで気流の向きが揃い易くなり、羽根12の後縁部124にて負圧面121側における気流と正圧面122側における気流とが交差する際の三次元的な渦の発生を抑えることができる。
【0097】
この結果、羽根12の翼面における気流の乱れによる騒音の発生を充分に抑制することが可能となる。さらに、羽根12の翼面における気流の乱れが抑制されることで、モータ30の駆動トルクを抑えることができるので、軸流送風機1のファン効率の向上を図ることができる。
【0098】
さらに、本実施形態では、リブ51の数と凹部53の数が、セレーション40の谷部42の数と一致しており、リブ51と凹部53とが1対1で対応して設けられている。このため、羽根の後縁部124から放出される気流を安定させるという効果が最も高くなる。
【0099】
また、羽根12の後縁部124から放出される気流の向きを負圧面121側と正圧面122側とで揃える観点では、本実施形態の如く、ファン軸心CL1方向においてリブ51と重なり合うように凹部53を設けることが望ましい。このことは、凹部53の形成に伴う羽根12の強度低下を抑える観点でも有効である。
【0100】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、下記のように、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0101】
(1)上記各実施形態では、リブ(第1リブ)51および第2リブ52は、どちらも、谷部42を起点とし、後縁部124の位置を終点51b、52bとしていたが、
図17に示すように、羽根12の前縁部123と後縁部124との間の位置を終点51b、52bとしてもよい。すなわち、上記各実施形態では、第1リブ51および第2リブ52は、どちらも、翼弦長方向の全範囲に延びた形状であったが、谷部42から翼弦長方向の一部の範囲のみに延びた形状であってもよい。
【0102】
このようにしても、羽根12の翼面121、122にリブ51、52を設けない場合と比較して、翼面上の気流の向きを揃えることができるので、上記各実施形態と同様の効果が得られる。ただし、翼面上の気流の向きを揃える効果を高めるという観点では、第1リブ51および第2リブ52は、どちらも、後縁部124の位置を終点51b、52bとすることが好ましい。
【0103】
また、上記各実施形態では、第1リブ51および第2リブ52は、どちらも、円弧状に延びた形状であったが、後縁部124に向かって延びた形状であれば、他の形状であってもよい。例えば、第1リブ51および第2リブ52は、ファン軸心CL1を中心とし、各リブ51、52の起点51a、52aを通る円に対する起点51a、52aを通る接線に平行に延びた形状であってもよい。このように、第1リブ51および第2リブ52は、直線状に延びた形状であってもよい。
【0104】
(2)上記各実施形態では、リブ51(第1リブ51)の起点51aは、谷部42の最も底の部分に位置していたが、セレーション40によって生成した下降流F5を伴う主流F4の衝突を防止できる範囲内であれば、谷部42の最も底の部分からずれていてもよい。このことは、第4〜第6実施形態における第2リブ52の起点52aについても同様である。
【0105】
(3)上記各実施形態では、1つの羽根12に対して設けるリブ(第1リブ)51の数を、複数としたが、1つに変更してもよい。同様に、1つの羽根12に対して設ける第2リブ52の数を1つに変更してもよい。なお、この場合、羽根12の内周側と外周側で翼面上を流れる気流の向きが異なることから、セレーション40の中央部に第1リブ51、第2リブ52を設けることが好ましい。このようにしても、羽根12の翼面121、122にリブ51、52を設けない場合と比較して、翼面上の気流の向きを揃えることができるので、上記各実施形態と同様の効果が得られる。
【0106】
(4)上記各実施形態では、複数の羽根12の全てにリブ(第1リブ)51を設けたが、複数の羽根12の一部のみに対して、第1リブ51を設けてもよい。同様に、複数の羽根12の一部のみに対して、第2リブ52を設けてもよい。このようにしても、羽根12の翼面121、122にリブ51、52を設けない場合と比較して、翼面上の気流の向きを揃えることができるので、上記各実施形態と同様の効果が得られる。
【0107】
(5)上記各実施形態では、セレーション40は、羽根12の前縁部123の一部に設けられていたが、前縁部123の全部に設けられていてもよい。また、セレーション40の山部41は、頂部が尖った三角形状であったが、頂部が丸みを有する形状であってもよい。同様に、セレーション40の谷部42は、底部が丸みを有する形状であってもよい。
【0108】
(6)上記各実施形態の羽根12は、直進翼や前進翼、後退翼などには因らない。いずれに対しても、羽根12の翼面上での気流の向きが一様でなく、羽根12の内周側と外周側で翼面上を流れる気流の向きが異なる場合において、本発明の適用が有効である。
【0109】
(7)上記各実施形態では、シュラウド20およびリング部13を有する軸流送風機1に対して、本発明を適用していたが、シュラウド20とリング部13の一方もしくは両方を有していない軸流送風機1に対しても、本発明の適用が可能である。すなわち、本発明は、1つの羽根における翼面上の気流の向きが、翼面上のファン径方向での位置によって異なる軸流送風機に対して適用が可能である。
【0110】
(8)上記第7実施形態では、凹部53を、羽根12の正圧面122側における前縁部123から後縁部124へ連続的に延びた形状としているが、これに限定されず、一部が不連続となる形状であってもよい。
【0111】
また、第7実施形態の如く、羽根12の負圧面121側に設けられたリブ51に対応して、正圧面122に凹部53を複数形成することが望ましいが、凹部53は1つ以上設けられていればよい。例えば、隣り合うリブ51の一方に対応して凹部53を形成して、凹部53の数をリブ51の数よりも少なくしてもよい。なお、凹部53は、後縁部124から放出される気流の向きが羽根12の負圧面121側と正圧面122側とで同様の方向になれば、その形状を円弧状に限らず、直線状の形状としてもよい。
【0112】
さらに、第7実施形態では、凹部53を断面がV字状の溝で構成する例について説明したが、これに限定されず、例えば、凹部53を断面がU字状の溝や、断面が四角形状の溝で構成してもよい。
【0113】
また、第7実施形態で説明した凹部53は、第4〜第6実施形態で説明した第2リブ52と同様に、羽根12の正圧面122側の気流を整流させるものである。このため、第4〜第6実施形態の第2リブ52を凹部53に置き換えてもよい。
【0114】
(9)上記各実施形態では、軸流ファン10を備える軸流送風機1に対して本発明の送風機を適用する例について説明したが、これに限定されず、例えば、遠心ファンや、貫流ファン等のファンを備える送風機に本発明の送風機を適用してもよい。
【0115】
(10)上述の各実施形態では、本発明に係る送風機を、エンジンを冷却するクーリングモジュールの送風機に対して適用する例について説明したが、これに限定されない。本発明に係る送風機は、車両用の空調装置で用いられる送風機に対して適用したり、車両用以外の家庭用や工業用に用いられる送風機に対して適用したりしてもよい。
【0116】
(11)上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。