特許第6409689号(P6409689)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マツダ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6409689-かしめ加工の検査方法 図000002
  • 特許6409689-かしめ加工の検査方法 図000003
  • 特許6409689-かしめ加工の検査方法 図000004
  • 特許6409689-かしめ加工の検査方法 図000005
  • 特許6409689-かしめ加工の検査方法 図000006
  • 特許6409689-かしめ加工の検査方法 図000007
  • 特許6409689-かしめ加工の検査方法 図000008
  • 特許6409689-かしめ加工の検査方法 図000009
  • 特許6409689-かしめ加工の検査方法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6409689
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】かしめ加工の検査方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 39/00 20060101AFI20181015BHJP
   B21D 39/04 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
   B21D39/00 A
   B21D39/04 F
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-118848(P2015-118848)
(22)【出願日】2015年6月12日
(65)【公開番号】特開2017-1067(P2017-1067A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2017年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100083013
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 正明
(72)【発明者】
【氏名】本室 武志
(72)【発明者】
【氏名】住村 純一
(72)【発明者】
【氏名】戸川 善太
【審査官】 豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−083826(JP,A)
【文献】 特開平04−083108(JP,A)
【文献】 特開2000−021464(JP,A)
【文献】 特開平10−277688(JP,A)
【文献】 特開2002−035864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 39/00
B21D 39/04
G01N 21/952
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸状に形成された被結合部材の外周面にかしめ加工用の溝部が形成された被結合部材に対し、筒状に形成された結合部材を前記被結合部材の前記溝部に対向するように嵌め合わせ、前記結合部材の一端面にかしめ工具を押圧させて押圧穴部を形成することにより前記結合部材における前記押圧穴部の内側部分を前記溝部内に倒れ込ませて前記被結合部材に対して前記結合部材をかしめ加工するかしめ加工の検査方法であって、
予め複数の事前測定用の結合部材について押圧穴部を形成し、該押圧穴部の深さとその内側部分の倒れ込み量とを測定して両者の関係を取得する事前測定ステップと、
検査対象の結合部材に押圧穴部を形成する押圧穴部形成ステップと、
前記押圧穴部形成ステップで形成した押圧穴部の深さを測定する押圧穴部深さ測定ステップと、
前記押圧穴部深さ測定ステップで測定された押圧穴部の深さと、前記事前測定ステップで取得した前記関係とに基づき、前記検査対象の結合部材における押圧穴部の内側部分の倒れ込み量を推定する倒れ込み量推定ステップと、
前記倒れ込み量推定ステップで推定された倒れ込み量に基づいて前記検査対象の結合部材のかしめ状態を判定するかしめ状態判定ステップと、
を備えていることを特徴とするかしめ加工の検査方法。
【請求項2】
前記事前測定ステップでは、前記被結合部材として溝部が形成される先端部を備えていないものを用い、該被結合部材に嵌め合わされた事前測定用の結合部材の一端面に押圧穴部を形成し、該押圧穴部の深さとその内側部分の倒れ込み量とを測定することを特徴とする請求項1に記載のかしめ加工の検査方法。
【請求項3】
前記かしめ状態判定ステップは、前記倒れ込み量推定ステップにおいて推定された前記検査対象の結合部材の倒れ込み量が所定範囲にあるときかしめ状態が正常であると判定し、前記検査対象の結合部材の倒れ込み量が所定範囲より大きいとき又は小さいときかしめ状態が異常であると判定する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のかしめ加工の検査方法。
【請求項4】
前記かしめ状態判定ステップにおいて前記検査対象の結合部材の倒れ込み量が所定範囲より小さくかしめ状態が異常であると判定される場合に、前記検査対象の結合部材の一端面に前記かしめ工具を前記押圧穴部とは異なる位置に押圧させて前記押圧穴部とは異なる他の押圧穴部を形成することにより他の押圧穴部の内側部分を前記溝部内に倒れ込ませて前記被結合部材に対して前記検査対象の結合部材を再びかしめ加工した後に、前記被結合部材に対する前記検査対象の結合部材のかしめ状態を再検査する再検査ステップを備え、
前記再検査ステップは、前記他の押圧穴部の形状を測定し、測定された前記他の押圧穴部の形状に基づいて前記検査対象の結合部材のかしめ状態を判定する、
ことを特徴とする請求項3に記載のかしめ加工の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かしめ加工の検査方法に関し、特にかしめ結合部を外部から視認できない場合の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの部材を結合する方法として、被結合部材の外周面に結合部材を嵌め合わせ、結合部材の一端面にかしめ工具を押圧させて結合部材の内側部分を被結合部材側に塑性変形させることにより被結合部材と結合部材とを結合するかしめ加工が知られている。
【0003】
例えば特許文献1の図7には、かしめ加工によって形成される動吸振器が開示されている。図8に示すように、前記動吸振器100は、自動車等の車両に搭載されるエンジンの騒音を抑制するためにピストン101とコンロッド102とを連結するピストンピン103の内部に配設されるものであり、ピストンピン103の内部に固定される固定部110と該固定部110に揺動可能に支持される可動部120とを備え、可動部120は、固定部110から延びる軸部111の外周面に筒状の質量調整部112をかしめ加工して形成されている。
【0004】
具体的には、図9に示すように、可動部120は、外周面にかしめ加工用の溝部111aが形成された軸部111に筒状の質量調整部112を嵌め合わせ、質量調整部112の一端面にかしめ工具を押圧させて押圧穴部112aを形成することにより質量調整部112における押圧穴部112aの内側部分を軸部111の溝部111a内に倒れ込ませることにより軸部111に対して質量調整部112をかしめ加工して形成されている。
【0005】
このようにして構成される前記動吸振器100では、軸部111に対して質量調整部112をかしめ加工する際にかしめ工具によって質量調整部112に加えられる荷重が大き過ぎると、動吸振器100の変形、特に固定部110と可動部120との間の小径部分の変形を引き起こし得ることから、かしめ加工する際に質量調整部112に加えられる荷重が制限される。
【0006】
また、前記動吸振器100では、軸部111に対して質量調整部112をかしめ加工する際に軸部111に対する質量調整部112のかしめ加工が不十分であると、軸部111から質量調整部112が抜けてしまうおそれがあることから、軸部111に対して質量調整部112をかしめ加工するかしめ加工のかしめ状態を精度良く検査することが求められる。
【0007】
これに対し、かしめ状態を検査するものとして、例えば特許文献2には、被結合部材の内部に、円筒状の先端部を被結合部材の端面から所定量突出するように結合部材を嵌め合わせ、その後に、円筒状の先端部をかしめ工具によって押圧してかしめ加工する際に、かしめ工具の変位速度を、予め設定した変位速度と比較することによりかしめ状態を検査するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015−83826号公報
【特許文献2】特開2007−319865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記特許文献2に記載されるように、かしめ工具の変位速度からかしめ状態を検査する場合、例えばかしめ工具の先端部が摩耗した場合には、かしめ工具の変位速度が予め設定した変位速度の許容範囲内にあっても、実際には適切にかしめ加工されていないおそれがある。
【0010】
これに対し、例えば特許文献2に記載されるように、かしめ加工によって被結合部材と結合部材とが結合されるかしめ結合部を外部から視認することができる場合は、例えばかしめ結合部を撮像するなどして、被結合部材に対する結合部材のかしめ状態を精度良く検出することができると考えられる。
【0011】
しかしながら、前記特許文献1の図7に記載される前記動吸振器のように、かしめ加工によって被結合部材と結合部材とが結合されるかしめ結合部を外部から視認することができない場合、如何に被結合部材に対する結合部材のかしめ状態を検査するかが問題となる。前記特許文献1に記載の前記動吸振器のように、かしめ状態の精度が要求される場合、被結合部材に対する結合部材のかしめ状態を精度良く検査することが望まれる。
【0012】
そこで、本発明は、かしめ結合部を外部から視認できない場合においても、結合部材のかしめ状態を精度良く検査することができるかしめ加工の検査方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【0014】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、軸状に形成された被結合部材の外周面にかしめ加工用の溝部が形成された被結合部材に対し、筒状に形成された結合部材を前記被結合部材の前記溝部に対向するように嵌め合わせ、前記結合部材の一端面にかしめ工具を押圧させて押圧穴部を形成することにより前記結合部材における前記押圧穴部の内側部分を前記溝部内に倒れ込ませて前記被結合部材に対して前記結合部材をかしめ加工するかしめ加工の検査方法であって、予め複数の事前測定用の結合部材について押圧穴部を形成し、該押圧穴部の深さとその内側部分の倒れ込み量とを測定して両者の関係を取得する事前測定ステップと、検査対象の結合部材に押圧穴部を形成する押圧穴部形成ステップと、前記押圧穴部形成ステップで形成した押圧穴部の深さを測定する押圧穴部深さ測定ステップと、前記押圧穴部深さ測定ステップで測定された押圧穴部の深さと、前記事前測定ステップで取得した前記関係とに基づき、前記検査対象の結合部材における押圧穴部の内側部分の倒れ込み量を推定する倒れ込み量推定ステップと、前記倒れ込み量推定ステップで推定された倒れ込み量に基づいて前記検査対象の結合部材のかしめ状態を判定するかしめ状態判定ステップと、を備えていることを特徴とする。
【0015】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載のかしめ加工の検査方法において、前記事前測定ステップでは、前記被結合部材として溝部が形成される先端部を備えていないものを用い、該被結合部材に嵌め合わされた事前測定用の結合部材の一端面に押圧穴部を形成し、該押圧穴部の深さとその内側部分の倒れ込み量とを測定することを特徴とする。
【0016】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項1又は請求項2に記載のかしめ加工の検査方法において、前記かしめ状態判定ステップは、前記倒れ込み量推定ステップにおいて推定された前記検査対象の結合部材の倒れ込み量が所定範囲にあるときかしめ状態が正常であると判定し、前記検査対象の結合部材の倒れ込み量が所定範囲より大きいとき又は小さいときかしめ状態が異常であると判定する、ことを特徴とする。
【0017】
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項3に記載のかしめ加工の検査方法において、前記かしめ状態判定ステップにおいて前記検査対象の結合部材の倒れ込み量が所定範囲より小さくかしめ状態が異常であると判定される場合に、前記検査対象の結合部材の一端面に前記かしめ工具を前記押圧穴部とは異なる位置に押圧させて前記押圧穴部とは異なる他の押圧穴部を形成することにより他の押圧穴部の内側部分を前記溝部内に倒れ込ませて前記被結合部材に対して前記検査対象の結合部材を再びかしめ加工した後に、前記被結合部材に対する前記検査対象の結合部材のかしめ状態を再検査する再検査ステップを備え、前記再検査ステップは、前記他の押圧穴部の形状を測定し、測定された前記他の押圧穴部の形状に基づいて前記検査対象の結合部材のかしめ状態を判定する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
上記の構成により、本願の請求項1に記載の発明によれば、軸状の被結合部材の外周面にかしめ加工用の溝部が形成された被結合部材に対し、筒状の結合部材を被結合部材の溝部に対向するように嵌め合わせ、結合部材の一端面に押圧穴部を形成することにより結合部材における押圧穴部の内側部分を溝部内に倒れ込ませて被結合部材に対して結合部材をかしめ加工した後に、押圧穴部の形状を測定し、測定された押圧穴部の形状に基づいて結合部材のかしめ状態を判定する。
【0019】
これにより、かしめ結合部が外部から視認できない場合においても、結合部材のかしめ状態と相関を有する結合部材の一端面に形成された押圧穴部の形状を測定することで、結合部材のかしめ状態を精度良く検査することができる。かしめ工具が摩耗した場合においても、結合部材の一端面に形成された押圧穴部の形状を測定することで、結合部材のかしめ状態を精度良く検査することができる。かしめ工具によって結合部材が押圧される際に結合部材に加えられる荷重が所定値以下に制限される場合においても、結合部材のかしめ状態を精度良く検査することができる。
また、結合部材の一端面に形成された押圧穴部の深さを測定し、測定された押圧穴部の深さに基づいて結合部材のかしめ状態を判定することにより、結合部材のかしめ状態と相関を有する結合部材の一端面に形成された押圧穴部の深さを測定することで、比較的容易に結合部材のかしめ状態を精度良く検査することができる。
【0020】
また、請求項2に記載の発明によれば、事前測定ステップでは、被結合部材として溝部が形成される先端部を備えていないものを用いるので、該被結合部材に嵌め合わされた事前測定用の結合部材の一端面に押圧穴部を形成し、該押圧穴部の深さとその内側部分の倒れ込み量とを測定することができる。
【0021】
また、請求項3に記載の発明によれば、結合部材の一端面に形成された押圧穴部の形状に基づいて結合部材の倒れ込み量を推定し、推定された結合部材の倒れ込み量が所定範囲にあるとき結合部材のかしめ状態が正常であると判定し、結合部材の倒れ込み量が所定範囲より大きいとき又は小さいとき結合部材のかしめ状態が異常であると判定することにより、結合部材の一端面に形成された押圧穴部の形状に基づいて推定した結合部材の倒れ込み量を用いて結合部材のかしめ状態の正常及び異常を判定することができる。
【0022】
また、請求項4に記載の発明によれば、結合部材の倒れ込み量が所定範囲より小さく結合部材のかしめ状態が異常であると判定される場合に、結合部材の一端面にかしめ工具を押圧させて他の押圧穴部を形成することにより被結合部材に対して結合部材を再びかしめ加工した後に、他の押圧穴部の形状を測定し、測定された他の押圧穴部の形状に基づいて結合部材のかしめ状態を判定する。
【0023】
これにより、結合部材の倒れ込み量が所定範囲より小さくかしめ状態が異常であると判定される場合に、結合部材の一端面に他の押圧穴部を形成して再びかしめ加工した後に結合部材のかしめ状態を再び検査することができ、結合部材のかしめ状態を精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係るかしめ加工が施される動吸振器が配設されたピストンピンを有するピストン構造を示す図である。
図2図1におけるY2−Y2線に沿ったピストン構造の断面図である。
図3】ピストンピンに動吸振器を配設する際に用いるプレス装置を示す図である。
図4】ピストンピンへの動吸振器の配設工程を示す図である。
図5】動吸振器に施されるかしめ加工を説明するための説明図である。
図6】動吸振器のかしめ加工部を拡大して示す図である。
図7】押圧穴部の深さと倒れ込み量との関係を示すグラフである。
図8】動吸振器が配設されたピストンピンを有するピストン構造を示す図である。
図9図8におけるピストン構造の要部を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るかしめ加工が施される動吸振器が配設されたピストンピンを有するピストン構造を示す図であり、図2は、図1におけるY2−Y2線に沿ったピストン構造の断面図である。
【0026】
図1及び図2に示すピストン1は、自動車等の車両に搭載されるエンジンのシリンダブロックの気筒内に往復動自在に配置されるものであり、エンジンの燃焼室の一部を形成すると共に外周面にピストンリング2が嵌め込まれたヘッド部1aと、ヘッド部1aの外周から下方に延びるスカート部1bと、スカート部1bの内面に対向して突設して設けられたボス部1cとを有している。
【0027】
ピストン1には、スカート部1bの内面に対向して設けられた2つのボス部1cにそれぞれピストンピン3を支持するための貫通孔部1dが形成され、貫通孔部1dにピストンピン3がスナップリング4によって軸方向に抜け止めされた状態で回転可能に支持されている。
【0028】
ピストンピン3はまた、ピストン1の2つのボス部1cの間に配置されたコンロッド5の小端部5aに形成された小径孔部5bに挿通され、コンロッド5に回転可能に連結されている。コンロッド5はまた、コンロッド5の大端部5cに形成された大径孔部5dにクランクシャフトが挿通され、クランクシャフトに回転可能に連結されている。
【0029】
ピストンピン3とピストン1の貫通孔部1dとの間には潤滑油が供給されて潤滑油膜が形成され、ピストンピン3がピストン1の貫通孔部1dに対して滑らかに回転できるようになっている。また、ピストンピン3とコンロッド5の小径孔部5bとの間にも潤滑油が供給されて潤滑油膜が形成され、ピストンピン3がコンロッド5の小径孔部5bに対して滑らかに回転できるようになっている。
【0030】
このようにして構成されるピストン1、ピストンピン3及びコンロッド5を備えたピストン構造では、ピストン1は、前記シリンダブロックの気筒内において気筒中心軸方向に往復運動を繰り返し、ピストン1の往復運動がコンロッド5を介してクランクシャフトの回転運動に変換されるようになっている。
【0031】
前記ピストン構造では、ピストン1、ピストンピン3及びコンロッド5の小端部5aが全体として質量部に相当し、コンロッド5の小端部5aと大端部5cとを連結する連結部5eがバネ部に相当し、コンロッド5の大端部5cに対してピストン1、ピストンピン3及びコンロッド5の小端部5aが全体として所定の共振周波数で振動してエンジンの騒音を引き起こし得る。
【0032】
これに対し、前記ピストン構造では、ピストン1とコンロッド5とを連結する円筒状に形成されたピストンピン3の内部に、エンジンの騒音を抑制するために本発明の実施形態に係るかしめ加工が施される動吸振器10が取り付けられている。
【0033】
動吸振器10は、コンロッド5の大端部5cに対してピストン1、ピストンピン3及びコンロッド5の小端部5aが全体として共振する共振周波数に略一致するように共振周波数が設定され、コンロッド5の伸縮に起因する振動を低減してエンジンの騒音を抑制するように構成されている。
【0034】
動吸振器10は、エンジンの燃焼行程では、ピストンピン3とコンロッド5との間に形成される潤滑油膜がなくなることによってピストン1、ピストンピン3及びコンロッド5の小端部5aが一体となってコンロッド5の大端部5cに対して共振することを抑制し、エンジンの吸気行程、圧縮行程、排気行程では、ピストンピン3とコンロッド5との間に形成される潤滑油膜によって動吸振器10の振動がコンロッド5に伝達されないようになっている。
【0035】
図2に示すように、ピストンピン3は、ピストンピン3の内周面における軸方向中央部3aが両側の端部3bよりも内径が小さく形成されており、ピストンピン3の内周面における中央部3aに、動吸振器10が圧入によって結合されている。
【0036】
動吸振器10は、ピストンピン3の内周面における中央部3aに固定される固定部10aと、固定部10aにピストンピン3の径方向に揺動可能に支持されてピストンピン3の軸方向に延びる可動部10bと、可動部10bを固定部10aにピストンピン3の径方向に揺動可能に支持する支持部10cとを備えている。動吸振器10では、固定部10aに対してピストンピン3の軸方向両側にそれぞれ支持部10cを介して可動部10bが支持されている。
【0037】
固定部10a、可動部10b及び支持部10cはそれぞれ、円柱状に形成されている。固定部10aは、固定部10aの外径がピストンピン3の内周面における中央部3aの内径に略等しく形成され、ピストンピン3の内周面における中央部3aに圧入によって固定される。
【0038】
可動部10bは、固定部10aに対してピストンピン3の径方向に揺動することができるようにピストンピン3の内部に所定の間隙を有して配置されると共にピストンピン3から突出するように設けられる。
【0039】
支持部10cは、固定部10aの両側にそれぞれ設けられ、支持部10cの外径は、固定部10a及び可動部10bの外径より小さく形成されている。支持部10cはまた、ピストンピン3の軸方向において可動部10bよりも短く形成されている。
【0040】
本実施形態では、動吸振器10は、軸状に形成された被結合部材としての軸状部材11と筒状に形成された結合部材としての筒状部材12とから構成され、固定部10aと固定部10aの両側の支持部10cとピストンピン3の軸方向一方側の可動部10b(図2の左側の可動部10b)とが軸状部材11によって形成され、ピストンピン3の軸方向他方側の可動部10b(図2の右側の可動部10b)が軸状部材11と筒状部材12とによって形成されている。
【0041】
動吸振器10におけるピストンピン3の軸方向他方側の可動部10bは、後述する図5に示すように、軸状部材11の外周面に軸状部材11の一端面から離間して周方向全体に延びるかしめ加工用の溝部11aを形成し、軸状部材11の溝部11aに筒状部材12の一端面が対向するように軸状部材11に筒状部材12を嵌め合わせ、筒状部材12の一端面にかしめ工具45を押圧させて押圧穴部12aを形成することにより筒状部材12における押圧穴部12aの内側部分12bを溝部11a内に倒れ込ませて軸状部材11に対して筒状部材12をかしめ加工して形成されている。
【0042】
軸状部材11は、ピストンピン3の軸方向他方側の可動部10bを構成する部分に固定部側の基部11bと反固定部側の先端部11cとを有し、先端部11cは、基部11bよりも外径が小さく形成され、基部11bと先端部11cとの間に段差部11dが形成されている。
【0043】
一方、筒状部材12は、軸状部材11の基部11bに嵌め合わせられる第1部分12cと軸状部材11の先端部11cに嵌め合わせられる第2部分12dとを有し、第1部分12cは、第2部分12dよりも内径が大きく形成され、第1部分12cと第2部分12dとの間に段差部12eが形成されている。筒状部材12の第1部分12cはまた、その内径が軸状部材11の基部11bの外径に略等しく形成されており、軸状部材11の基部11bに圧入されるようになっている。
【0044】
筒状部材12は、筒状部材12の段差部12eが軸状部材11の段差部11dに係合するように軸状部材11に嵌め合わせられると、筒状部材12が軸状部材11の溝部11aに対向するように、具体的には筒状部材12の一端面が軸状部材11の溝部11aに対向する位置になるように形成されている。
【0045】
そして、筒状部材12の一端面にかしめ工具45を押圧させて押圧穴部12aを形成することで、筒状部材12における押圧穴部12aの内側部分12bを軸状部材11の溝部11a内に倒れ込ませ、軸状部材11に対して筒状部材12がかしめ加工されている。
【0046】
前述したように、前記可動部10bは、ピストンピン3から突出するように設けられており、前記可動部10bを形成する筒状部材12の端面がピストンピン3から突出するように設けられ、軸状部材11の端面が筒状部材12の端面から突出するように設けられている。
【0047】
次に、このようにして構成される動吸振器10をピストンピン3に配設する方法について説明する。
図3は、ピストンピンに動吸振器を配設する際に用いるプレス装置を示す図である。図3に示すプレス装置20は、ピストンピン3に軸状部材11を圧入すると共に軸状部材11に筒状部材12を圧入し、且つ軸状部材11に筒状部材12をかしめ加工するように構成されている。
【0048】
プレス装置20は、ダイプレート21の外周部に固定された第1ガイド部材22及び第2ガイド部材23の内部に配置されてピストンピン3を支持するピストンピン支持部材24と、ピストンピン支持部材24を上方側に付勢するスプリング25と、ダイプレート21の中央部に固定されて軸状部材11を支持するピン部材26と、ピストンピン支持部材24が下方側に移動されるときにピストンピン支持部材24を受け止めるストッパ部材27とを備えている。
【0049】
プレス装置20はまた、ダイプレート21に対して上下方向に移動可能に構成されたパンチプレート31と、パンチプレート31に取り付けられたパンチ工具35とを備えている。プレス装置20では、図示しない制御ユニットによってパンチプレート31の移動が制御されるようになっている。
【0050】
図4は、ピストンピンへの動吸振器の配設工程を示す図である。ピストンピン3に動吸振器10を配設する際には先ず、所定形状にそれぞれ形成されたピストンピン3、軸状部材11及び筒状部材12を準備し、図3に示すように、ピストンピン支持部材24の中央部に設けられた挿通孔24aに軸状部材11を挿通させて軸状部材11をピン部材26に支持させ、その後に、ピストンピン3を軸状部材11に嵌め合わせると共にピストンピン支持部材24の上面に設けられたピストンピン支持部24bに支持させる。
【0051】
そして、図4(a)に示すように、パンチプレート31を下降させてパンチ工具35の下面によってピストンピン3を下方へ押圧する。ピストンピン支持部材24がストッパ部材27に当接するまでピストンピン3を下方へ押圧すると、ピン部材26に支持された軸状部材11に対してピストンピン3が下方へ移動され、ピストンピン3と軸状部材11とが所定位置で圧入によって結合される。
【0052】
パンチ工具35には、軸状部材11の先端部11cの外径よりも大きく筒状部材12の第2部分12dの外径より小さい内径を有する貫通孔35aが形成されており、パンチ工具35は、軸状部材11を下方へ押圧することなくピストンピン3のみを下方へ押圧するように形成されている。
【0053】
ピストンピン3と軸状部材11とを圧入によって結合させた後に、図4(b)に示すように、パンチプレート31を上昇させ、ピストンピン支持部材24に支持されたピストンピン3を上方へ移動させると共にピストンピン3に結合された軸状部材11も上方へ移動させる。そして、軸状部材11に筒状部材12を嵌め合わせる。
【0054】
次に、図4(c)に示すように、パンチプレート31を下降させてパンチ工具35の下面によってピストンピン3から突出する筒状部材12を下方へ押圧する。筒状部材12が下方へ押圧されると、筒状部材12の第1部分12cが軸状部材11の基部11bに圧入されて筒状部材12の段差部12eと軸状部材11の段差部11dとが係合し、筒状部材12が軸状部材11の溝部11aに対向するように軸状部材11に嵌め合わせられる。なお、パンチ工具35は、筒状部材12を下方へ押圧して筒状部材12を軸状部材11に嵌め合わせるときに軸状部材11がピストンピン3に対して相対移動しないように下方へ移動される。
【0055】
このようにしてピストンピン3と軸状部材11とが圧入によって結合され、軸状部材11に筒状部材12が嵌め合わせられた後に、パンチプレート31にパンチ工具35に代えてかしめ工具45が取り付けられ、図4(d)に示すように、パンチプレート31を下降させてかしめ工具45を筒状部材12の一端面に押圧して軸状部材11と筒状部材12とをかしめ加工によって結合する。
【0056】
図5は、動吸振器に施されるかしめ加工を説明するための説明図であり、図4(d)に示すプレス装置20の一部を拡大して示している。パンチプレート31に取り付けられるかしめ工具45は、図5に示すように、下方側の先端部に断面三角状に下方に突出する2つの突起部45aを備え、2つの突起部45aは、対向するように配置されている。
【0057】
かしめ工具45の突起部45aはそれぞれ、かしめ工具45の周方向に所定長さを有し、例えば中心角が30度となる周方向に所定長さを有して円弧状に形成されている。なお、突起部45aの形状は、これに限定されるものでなく、円錐状などのその他の種々の形状を用いることができる。
【0058】
かしめ工具45にはまた、軸状部材11の先端部11cの外径よりも大きく筒状部材12の第2部分12dの外径より小さい内径を有する貫通孔45bが形成されており、かしめ工具45は、軸状部材11を押圧することなく筒状部材12を押圧するように形成されている。
【0059】
図5に示すように、筒状部材12が軸状部材11の溝部11aに対向するように軸状部材11に嵌め合わせられた状態で、パンチプレート31を下降させることによりかしめ工具45を下方へ移動させて筒状部材12の一端面に押圧させると、筒状部材12の一端面にかしめ工具45の突起部45aによって押圧穴部12aが形成され、これに伴って筒状部材12における押圧穴部12aの内側部分12bが軸状部材11の溝部11a内に倒れ込み、軸状部材11に対して筒状部材12がかしめ加工される。
【0060】
図6は、動吸振器のかしめ結合部を拡大して示す図である。図4(d)及び図5に示すように、かしめ工具45を筒状部材12の一端面に押圧させて軸状部材11に対して筒状部材12をかしめ加工した後に、パンチプレート31を上昇ささせると、図6に示すように、軸状部材11の溝部11a内に倒れ込んだ筒状部材12における押圧穴部12aの内側部分12bによって軸状部材11と筒状部材12とが結合されるかしめ結合部13が形成される。
【0061】
前記動吸振器10では、筒状部材12の第1部分12cを軸状部材11の基部11bに圧入して筒状部材12を軸状部材11に嵌め合わせると共に、軸状部材11に対して筒状部材12をかしめ加工することにより筒状部材12を軸状部材11に組み付けて、筒状部材12が軸状部材11から抜けることが防止されている。
【0062】
なお、かしめ工具45を筒状部材12の一端面に押圧させるとき、かしめ工具45によって筒状部材12に加えられる荷重は、動吸振器10の変形、特に支持部10cの変形を抑制するように所定値以下に設定されている。また、パンチ工具35によって筒状部材12を下方へ押圧して筒状部材12の第1部分12cを軸状部材11の基部11bに圧入させるときも、パンチ工具35によって筒状部材12に加えられる荷重は、動吸振器10の変形、特に支持部10cの変形を抑制するように所定値以下に設定されている。
【0063】
そして、筒状部材12の一端面にかしめ工具45を押圧させて押圧穴部12aを形成することにより筒状部材12における押圧穴部12aの内側部分12bを軸状部材11の溝部11a内に倒れ込ませて軸状部材11に対して筒状部材12をかしめ加工した後に、かしめ加工の検査が行われる。
【0064】
本実施形態に係るかしめ加工が施される動吸振器10では、かしめ加工によって軸状部材11と筒状部材12とが結合されるかしめ結合部13は、軸状部材11の溝部11a内に設けられて外部から視認できないことから、筒状部材12の一端面に形成された押圧穴部12aの形状を測定し、測定された押圧穴部12aの形状に基づいて軸状部材11に対する筒状部材12のかしめ状態を判定する。
【0065】
かしめ加工の検査に先立って、先ず、複数の筒状部材12について、筒状部材12の一端面にかしめ工具45を押圧させて押圧穴部12aを形成することにより筒状部材12における押圧穴部12aの内側部分12bを内方側へ倒れ込ませ、図6に示す押圧穴部12aの深さDと筒状部材12における押圧穴部12aの内側部分の倒れ込み量Wとを測定し、押圧穴部の深さと倒れ込み量との関係を調べた。
【0066】
押圧穴部の深さと倒れ込み量との関係を調べる際には、先端部11cを備えていない軸状部材11を用い、該軸状部材11をピストンピン3に圧入した後に軸状部材11に筒状部材12を嵌め合わせ、その後に、筒状部材12の一端面にかしめ工具45を押圧させて押圧穴部12aを形成したものについて、押圧穴部12aの深さDと筒状部材12における押圧穴部12aの内側部分の倒れ込み量Wとを測定した。
【0067】
図7は、押圧穴部の深さと倒れ込み量との関係を示すグラフであり、図7では、押圧穴部12aの深さDを横軸にとり、倒れ込み量Wを縦軸にとって表している。図7では、押圧穴部12aの深さDと倒れ込み量Wとの測定結果を黒四角として表している。
【0068】
そして、図7に示す測定結果から、押圧穴部の深さと倒れ込み量との関係を表した線形関数の近似式を既知の最小二乗法によって算出し、押圧穴部の深さと倒れ込み量との関係式L1を算出した。押圧穴部の深さと倒れ込み量との関係式L1は、押圧穴部の深さが大きくなるほど倒れ込み量が大きくなっており、押圧穴部の深さと倒れ込み量との関係式L1を用いて、軸状部材11に対する筒状部材12のかしめ状態を検査する。
【0069】
軸状部材11に対する筒状部材12のかしめ状態を検査する際には、図6に示すように、筒状部材12に形成された押圧穴部12aの上方に、押圧穴部12aの深さDを測定する形状測定器55が配置され、形状測定器55によって押圧穴部12aの深さDを測定する。なお、前記形状測定器として、レーザー式や接触式の形状測定器を用いることができる。
【0070】
次に、測定された押圧穴部12aの深さDから、図7に示す押圧穴部の深さと倒れ込み量との関係式L1を用いて、筒状部材12における押圧穴部12aの内側部分12bの倒れ込み量を推定する。そして、推定された倒れ込み量が、予め設定された所定範囲にあるか否かを判定する。
【0071】
推定された倒れ込み量が、予め設定された所定範囲にあるときはかしめ状態が正常であると判定し、予め設定された所定範囲より大きいとき又は小さいときはかしめ状態が異常であると判定する。なお、前記所定範囲として、例えば0.15mmから0.35mmの範囲が設定される。
【0072】
本実施形態ではまた、推定された倒れ込み量が所定範囲より小さくかしめ状態が異常であると判定される場合、筒状部材12の一端面にかしめ工具45を押圧穴部12aとは異なる位置に押圧させて押圧穴部12aとは異なる他の押圧穴部を形成し、筒状部材12における前記他の押圧穴部の内側部分を軸状部材11の溝部11a内に倒れ込ませて軸状部材11に対して筒状部材12を再びかしめ加工した後に、軸状部材11に対する筒状部材12のかしめ状態を再検査する。
【0073】
かしめ加工の検査によって、推定された倒れ込み量が所定範囲より小さくかしめ状態が異常であると判定された場合、推定された倒れ込み量が所定範囲より小さくかしめ状態が異常であると判定されたものについて、かしめ工具45を筒状部材12の一端面における押圧穴部12aとは異なる位置に押圧するように回転させて、例えば90度回転させて、図4(d)及び図5に示す押圧穴部12aの形成時と同様に、かしめ工具45を筒状部材12の一端面に押圧させて筒状部材12の一端面にかしめ工具45によって他の押圧穴部を形成し、筒状部材12における前記他の押圧穴部の内側部分を軸状部材11の溝部11a内に倒れ込ませて軸状部材11に対して筒状部材12をかしめ加工する。
【0074】
そして、筒状部材12の一端面に形成された前記他の押圧穴部の形状に基づいて、具体的には前記他の押圧穴部の深さに基づいて軸状部材11に対する筒状部材12のかしめ状態を再び判定する。
【0075】
図6に示す押圧穴部12aの形成時と同様に、筒状部材12の一端面に形成された前記他の押圧穴部の上方に形状測定器55を配置し、形状測定器55によって前記他の押圧穴部の深さを測定し、測定された前記他の押圧穴部の深さから、図7に示す押圧穴部の深さと倒れ込み量との関係式L1を用いて、筒状部材12における前記他の押圧穴部の内側部分の倒れ込み量を推定する。
【0076】
そして、推定された筒状部材12における前記他の押圧穴部の内側部分の倒れ込み量が、予め設定された倒れ込み量の所定範囲にあるか否かを判定し、予め設定された所定範囲にあるときはかしめ状態が正常であると判定し、予め設定された所定範囲より大きいとき又は小さいときはかしめ状態が異常であると判定する。
【0077】
本実施形態では、形状測定器55によって押圧穴部の形状として押圧穴部の深さを測定し、押圧穴部の深さに基づいてかしめ状態を判定しているが、例えば押圧穴部の形状として押圧穴部の面積を測定し、押圧穴部の面積に基づいてかしめ状態を判定するようにすることも可能である。
【0078】
また、本実施形態では、軸状部材11の外周面に形成されるかしめ加工用の溝部11aは、軸状部材11の周方向全体に亘って設けられているが、例えば、かしめ工具45によって筒状部材12の一端面に形成される押圧穴部12a及び前記他の押圧穴部の位置に対応して軸状部材11の周方向の一部に設けるようにすることも可能である。
【0079】
このように、本実施形態に係るかしめ加工の検査方法では、軸状の被結合部材11の外周面にかしめ加工用の溝部11aが形成された被結合部材11に対し、筒状の結合部材12を被結合部材11の溝部11aに対向するように嵌め合わせ、結合部材12の一端面に押圧穴部12aを形成することにより結合部材12における押圧穴部12aの内側部分12bを溝部11a内に倒れ込ませて被結合部材11に対して結合部材12をかしめ加工した後に、押圧穴部12aの形状を測定し、測定された押圧穴部12aの形状に基づいて結合部材12のかしめ状態を判定する。
【0080】
これにより、かしめ結合部13が外部から視認できない場合においても、結合部材12のかしめ状態と相関を有する結合部材12の一端面に形成された押圧穴部12aの形状を測定することで、結合部材12のかしめ状態を精度良く検査することができる。かしめ工具45が摩耗した場合においても、結合部材12の一端面に形成された押圧穴部12aの形状を測定することで、結合部材12のかしめ状態を精度良く検査することができる。かしめ工具45によって結合部材12が押圧される際に結合部材12に加えられる荷重が所定値以下に制限される場合においても、結合部材12のかしめ状態を精度良く検査することができる。
【0081】
本実施形態では、結合部材12の一端面に形成された押圧穴部12aの深さを測定し、測定された押圧穴部12aの深さDに基づいて結合部材12のかしめ状態を判定する。結合部材12のかしめ状態と相関を有する結合部材12の一端面に形成された押圧穴部12aの深さDを測定することで、比較的容易に結合部材12のかしめ状態を精度良く検査することができる。
【0082】
また、結合部材12の一端面に形成された押圧穴部12aの形状に基づいて結合部材12の倒れ込み量Wを推定し、推定された結合部材12の倒れ込み量Wが所定範囲にあるとき結合部材12のかしめ状態が正常であると判定し、結合部材12の倒れ込み量Wが所定範囲より大きいとき又は小さいとき結合部材12のかしめ状態が異常であると判定する。これにより、結合部材12の一端面に形成された押圧穴部12aの形状に基づいて推定した結合部材12の倒れ込み量Wを用いて結合部材12のかしめ状態の正常及び異常を判定することができる。
【0083】
また、結合部材12の倒れ込み量Wが所定範囲より小さく結合部材12のかしめ状態が異常であると判定される場合に、結合部材12の一端面にかしめ工具45を押圧させて他の押圧穴部を形成することにより被結合部材11に対して結合部材12を再びかしめ加工した後に、前記他の押圧穴部の形状を測定し、測定された前記他の押圧穴部の形状に基づいて結合部材12のかしめ状態を判定する。
【0084】
これにより、結合部材12の倒れ込み量が所定範囲より小さくかしめ状態が異常であると判定される場合に、結合部材12の一端面に他の押圧穴部を形成して再びかしめ加工した後に結合部材12のかしめ状態を再び検査することができ、結合部材12のかしめ状態を精度良く検出することができる。
【0085】
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0086】
以上のように、本発明によれば、かしめ結合部を外部から視認できない場合においても結合部材のかしめ状態を精度良く検出することが可能となるから、外部から視認できないかしめ結合部の精度が要求される場合に好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0087】
1 ピストン
3 ピストンピン
5 コンロッド
10 動吸振器
10a 固定部
10b 可動部
10c 支持部
11 軸状部材
11a 溝部
12 筒状部材
12a 押圧穴部
13 かしめ結合部
45 かしめ工具
55 形状測定器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9