特許第6409719号(P6409719)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6409719
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】パウチ
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20181015BHJP
   B65D 33/25 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
   B65D81/34 U
   B65D33/25 A
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-177340(P2015-177340)
(22)【出願日】2015年9月9日
(62)【分割の表示】特願2013-16167(P2013-16167)の分割
【原出願日】2013年1月30日
(65)【公開番号】特開2016-20239(P2016-20239A)
(43)【公開日】2016年2月4日
【審査請求日】2015年9月9日
(31)【優先権主張番号】特願2012-238963(P2012-238963)
(32)【優先日】2012年10月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 規行
【審査官】 長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−206457(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0213455(US,A1)
【文献】 特開2003−040356(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0122440(US,A1)
【文献】 英国特許出願公開第02458645(GB,A)
【文献】 特開平09−169349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/34
B65D 33/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容可能な内部空間を形成する袋本体部と、
前記内部空間を開放できるように前記袋本体部に設けられる開口部と、
前記開口部を開閉できるように前記袋本体部に設けられるファスナーとを備え、
前記ファスナーは、高嵌合強度部および低嵌合強度部を含み、
前記高嵌合強度部は、前記開口部を閉じるように嵌合可能な第1雄型および第1雌型を含み、
前記低嵌合強度部は、前記開口部を閉じるように、かつ、前記内部空間に収容された前記内容物から発生する水蒸気による前記内部空間の圧力の上昇にともない開くように、前記第1雄型および前記第1雌型よりも弱い嵌合強度で嵌合する第2雄型および第2雌型を含み、
前記内部空間の圧力の上昇にともない前記第2雄型および前記第2雌型が開いた場合に前記開口部から前記水蒸気が排出されるように構成され、
前記高嵌合強度部の嵌合強度に対する前記低嵌合強度部の嵌合強度の割合は、0%よりも大きく、かつ、90%以下である
パウチ。
【請求項2】
前記内部空間に収容された前記内容物を含む
請求項1に記載のパウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内容物を加熱するために用いられるパウチに関する。
発明は、内容物を加熱するために用いられるパウチに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、パウチおよび内容物封入パウチの一例を開示している。
特許文献1のパウチは、開口部を有する包装体と、開口部を開封および密封するファスナーとを有する。ファスナーが嵌合状態となることによりパウチは密封された状態となる。一方、ファスナーの嵌合状態が解除されたとき、パウチは開封された状態となる。特許文献1の内容物封入パウチは、パウチおよび内容物を有する。
【0003】
特許文献1の内容物封入パウチは、電子レンジ等によって加熱されることにより、内部空間に蒸気が発生する。このため、内容物封入パウチは、内部空間の圧力が上昇する。内部空間の圧力が上昇することにともない、内容物封入パウチには、互いに対向してパウチの内部空間を形成するシートを離間させようとする力が作用する。また、内部空間の圧力が上昇することにともない、内容物封入パウチには、ファスナーの嵌合状態を解除させようとする力が作用する。内部空間の圧力の上昇にともない、ファスナーの嵌合状態を解除させようとする力がファスナーの嵌合強度を上回ったときに、ファスナーの嵌合状態が解除される。これにより、内部空間で発生した蒸気が外部へ排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−166846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記パウチは、内圧が上昇することによりファスナーの嵌合状態を解除させようとする力が、ファスナーの嵌合強度の限界まで達したとき、一気にファスナーの嵌合状態が解除される。このため、パウチの開封時に大きな音が発生する。
【0006】
本発明は、以上の背景をもとに創作されたものであり、内圧の上昇にともなうパウチの開封時に発生する音の大きさを小さくできるパウチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)内容物を収容可能な内部空間を形成する袋本体部と、前記内部空間を開放できるように前記袋本体部に設けられる開口部と、前記開口部を開閉できるように前記袋本体部に設けられるファスナーとを備え、前記ファスナーは、高嵌合強度部および低嵌合強度部を含み、前記高嵌合強度部は前記開口部を閉じるように嵌合可能な第1雄型および第1雌型を含み、前記低嵌合強度部は、前記開口部を閉じるように、かつ、前記内部空間に収容された前記内容物から発生する水蒸気による前記内部空間の圧力の上昇にともない開くように嵌合可能な第2雄型および第2雌型を含み、前記高嵌合強度部の嵌合強度に対する前記低嵌合強度部の嵌合強度の割合は、0%よりも大きく、かつ、90%以下であるパウチ。
【0008】
(2)前記収容空間に収容された前記内容物を含む(1)に記載のパウチ。
【発明の効果】
【0009】
本パウチは、内圧の上昇にともなうパウチの開封時に発生する音の大きさを小さくすることに貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の内容物封入パウチの正面図。
図2】実施形態のパウチの正面図。
図3図2のD3−D3線において破断された高嵌合強度部の断面図。
図4図2のD4−D4線において破断された低嵌合強度部の断面図。
図5】実施形態の内容物封入パウチの製造工程に関する図であり、(a)は第2開口部が開封された状態のパウチの正面図、(b)は第2開口部に充填機のノズルが挿入された状態のパウチの正面図、(c)は内部空間に内容物が収容された状態のパウチの正面図。
図6】実施形態の内容物封入パウチの製造工程に関する図であり、(a)は第2開口部にシール加工が施される前のパウチの正面図、(b)は第2開口部にシール加工が施されている最中のパウチの正面図、(c)は第2開口部にシール加工が施された後のパウチの正面図。
図7】実施形態のパウチに関する図であり、袋の一部が切り取られている最中のパウチの正面図。
図8】実施形態のパウチに関する図であり、第1開口部が開口している状態を示しているパウチの正面図。
図9】実施形態のパウチに関する図であり、パウチの正面図。
図10】実施形態のパウチに関する図であり、低嵌合強度部が開封した状態を示しているパウチの正面図。
図11】低嵌合強度部の嵌合強度を変化させたときのファスナーの開封態様について検証した実験結果を示している図。
図12】低嵌合強度部長さを変化させたときのファスナーの開封態様について検証した実験結果を示している図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1を参照して、内容物封入パウチ1の構成について説明する。なお、図1図2、および図5図10に示されるドットは、パウチ10のシール部を示している。
内容物封入パウチ1は、パウチ10および内容物200を有する。パウチ10は、スタンディングパウチとしての形態を有する。パウチ10は、第2開口部61(図2参照)にシール加工が施されている。内容物200は、液体調味料である。
【0012】
図2を参照して、パウチ10の構成について説明する。
パウチ10は、袋20およびファスナー100を有する。パウチ10は、第2開口部61が形成された部分を除く縁の全部がシールされている。
【0013】
袋20は、主袋部30、副袋部70、シール部80、および切断補助部90を有する。袋20は、積層シートにより形成される。積層シートは、最外層、中間層、および最内層を有する。最外層は、ポリエチレンテレフタレート層により構成される。最内層は、無延伸ポリプロピレン層により構成される。中間層は、印刷層、第1接着層、延伸ナイロン層、および第2接着層により構成される。印刷層は、最外層の内側に形成される。第1接着層は、印刷層の内側に形成される。延伸ナイロン層は、第1接着層の内側に形成される。第2接着層は、延伸ナイロン層の内側に形成される。最内層は、第2接着層の内側に形成される。印刷層は、外面に絵柄および商品の説明等を有する。
【0014】
袋20は、第1角部21、第2角部22、第3角部23、第4角部24、第1側方縁25、第2側方縁26、上縁27、下縁28、および内部空間29を有する。
第1側方縁25は、袋20における第1角部21から第3角部23までの縁を形成している。第2側方縁26は、袋20における第2角部22から第4角部24までの縁を形成している。上縁27は、袋20において第1角部21から第2角部22までの縁を形成している。下縁28は、袋20において第3角部23から第4角部24までの縁を形成している。
【0015】
第1側方縁25および上縁27は、第1角部21において互いに連続している。第1側方縁25および下縁28は、第3角部23において互いに連続している。第2側方縁26および上縁27は、第2角部22において互いに連続している。第2側方縁26および下縁28は、第4角部24において互いに連続している。
【0016】
主袋部30は、袋本体部40、底ガゼット50、および突出部60を有する。
袋本体部40は、第1側方部41、第2側方部42、および第1開口部43を有する。
第1側方部41は、図中の二点鎖線で示している境界線XAよりも内部空間29側の部分を示している。第2側方部42は、第2側方縁26を含む部分を示している。
【0017】
第1開口部43は、ファスナー100を含む主袋部30の上縁に形成されている。第1開口部43は、袋20が主袋部30と副袋部70とに分離している状態において、内容物を内部空間29に収容する機能を有する。
【0018】
底ガゼット50は、袋本体部40を支持する。図中の二点鎖線XBは、底ガゼット50と袋本体部40との境界線を示している。
突出部60は、第1側方部41から幅方向の外方に突出する形状を有する。突出部60は、第2開口部61を含んで形成されている。
【0019】
第2開口部61は、第1側方部41から幅方向の外方に突出する形状を有する。第2開口部61は、内容物を内部空間29に収容する機能を有する。
副袋部70は、切断補助部90を介して主袋部30と連続して形成されている。
【0020】
シール部80は、熱溶着により形成される。シール部80は、第1側方シール部81、第2側方シール部82、上方シール部83、下方シール部84、および易開封シール部85を有する。
【0021】
第1側方シール部81は、袋20において第1側方縁25を含む所定範囲の部分をシールしている。第1側方シール部81は、側方シール上部81Aおよび側方シール下部81Bを有する。側方シール上部81Aおよび側方シール下部81Bは、第2開口部61により互いに分断されている。
【0022】
側方シール上部81Aは、袋20において第1角部21から第2開口部61までの範囲をシールしている。
側方シール下部81Bは、第2開口部61において、袋本体部40と底ガゼット50との境界部分をシールしている。
【0023】
第2側方シール部82は、袋20において第2側方縁26を含む所定範囲の部分をシールする。上方シール部83は、上縁27を含む所定範囲の部分をシールする。
上方シール部83は、上縁27に形成されている。上方シール部83は、ファスナー100を密封している。下方シール部84は、下縁28を含む底ガゼット50の所定範囲の部分をシールしている。易開封シール部85は、袋本体部40を形成する二枚のシートをシールしている。易開封シール部85は、イージーピール性を有する。易開封シール部85は、第1開口部43を密封する。易開封シール部85は、ファスナー100に対して内部空間29側に位置している。
【0024】
切断補助部90は、袋20を主袋部30と副袋部70とに互いに分離する部分として機能する。切断補助部90は、ノッチ91およびガイド線92を有する。ノッチ91は、袋20を主袋部30と副袋部70とに分離するためのきっかけの部分として機能する。ノッチ91は、第1側方縁25および第2側方縁26に形成されている。ガイド線92は、袋20を主袋部30と副袋部70とに互いに分離することを補助する機能を有する。ガイド線92は、袋20を構成するフィルムに対してレーザーによるハーフカット加工が施されることにより形成されている。
【0025】
ファスナー100は、第1開口部43を開封および密封する機能を有する。ファスナー100は、第1ファスナー端部101、第2ファスナー端部102、高嵌合強度部110、および低嵌合強度部120を有する。ファスナー100は、ファスナー長さLAを有する。ファスナー長さLAは、第1ファスナー端部101から第2ファスナー端部102までの長さを示している。
【0026】
第1ファスナー端部101は、側方シール上部81Aの内縁に位置している。第2ファスナー端部102は、第2側方シール部82の内縁に位置している。
高嵌合強度部110は、第1ファスナー端部101から低嵌合強度部120の第1低嵌合端部120Aまでの部分を示している。高嵌合強度部110は、第2ファスナー端部102から低嵌合強度部120の第2低嵌合端部120Bまでの部分を示している。
【0027】
高嵌合強度部110は、第1高嵌合強度部長さLBおよび第2高嵌合強度部長さLCを有する。第1高嵌合強度部長さLBは、第1ファスナー端部101から第1低嵌合端部120Aまでの長さを示している。第2高嵌合強度部長さLCは、第2ファスナー端部102から第2低嵌合端部120Bまでの長さを示している。第1高嵌合強度部長さLBと第2高嵌合強度部長さLCとは等しい。
【0028】
低嵌合強度部120は、低嵌合強度部長さLDを有する。低嵌合強度部長さLDは、第1低嵌合端部120Aから第2低嵌合端部120Bまでの長さを示している。低嵌合強度部長さLDは、ファスナー長さLAの20%の長さを有する。
【0029】
図3を参照して、高嵌合強度部110の構成について説明する。なお、図3においては、易開封シール部85の図示を省略している。
高嵌合強度部110は、雌型基材111、通常雌型112、雄型基材115、および通常雄型116を有する。
【0030】
雌型基材111は、袋20を形成するシートに熱溶着される。雌型基材111は、通常雌型112を支持する機能を有する。
通常雌型112は、椀型形状を有する。通常雌型112は、雌型基材111と一体的に形成されている。通常雌型112は、開封側通常爪113および内容物側通常爪114を有する。開封側通常爪113は、雌型基材111側に屈曲する形状を有する。開封側通常爪113は、内容物側通常爪114よりも袋20の開封側に位置している。
【0031】
内容物側通常爪114は、雌型基材111側に屈曲する形状を有する。内容物側通常爪114は、内容物側通常爪113よりも袋20の内部空間29側に位置している。内容物側通常爪114と開封側通常爪113とは、通常距離LEを有する。通常距離LEは、通常雌型112に対して通常雄型116が嵌合している状態における内容物側通常爪114と開封側通常爪113との距離を示している。
【0032】
雄型基材115は、袋20を形成するシートに熱溶着される。雄型基材115は、通常雄型116を支持する機能を有する。
通常雄型116は、矢尻型形状を有する。通常雄型116は、雄型基材115と一体的に形成されている。通常雄型116は、通常支持部117および通常先端部118を有する。通常支持部117は、雄型基材115と連続して形成される。通常支持部117は、雄型基材115から雌型基材111に向けて突出する形状を有する。通常支持部117は、基端境界部117Aおよび先端境界部117Bを有する。基端境界部117Aは、通常支持部117と雄型基材115との境界部分を示している。先端境界部117Bは、通常支持部117と通常先端部118との境界部分を示している。通常支持部117は、通常支持部長さLFを有する。通常支持部長さLFは、基端境界部117Aと先端境界部117Bとの距離を示している。
【0033】
通常先端部118は、通常支持部117と連続して形成されている。通常先端部118は、開封側通常爪118Aおよび内容物側通常爪118Bを有する。開封側通常爪118Aは、通常雌型112の開封側通常爪113と嵌合する形状を有する。内容物側通常爪118Bは、通常雌型112の内容物側通常爪114と嵌合する形状を有する。内容物側通常爪118Bと内容物側通常爪114との嵌合強度は、開封側通常爪118Aと開封側通常爪113との嵌合強度よりも大きい。このため、ファスナー100は、内部空間側よりも開封側のほうから開封しやすい構造を有する。
【0034】
図4を参照して、低嵌合強度部120の構成について説明する。なお、図4においては、易開封シール部85の図示を省略している。
低嵌合強度部120は、高嵌合強度部110の0%の嵌合強度を有する。低嵌合強度部120は、高嵌合強度部110と同様の構成のファスナー100を、所定の圧力、所定の時間、および所定の温度の条件の下、押しつぶすことにより形成されている。低嵌合強度部120は、雌型基材121、変形雌型122、雄型基材125、および変形雄型126を有する。
【0035】
雌型基材121は、袋20を形成するシートに熱溶着される。雌型基材121は、変形雌型122を支持する機能を有する。
変形雌型122は、椀型形状を有する。変形雌型122は、雌型基材121と一体的に形成されている。変形雌型122は、開封側変形爪123および内容物側変形爪124を有する。開封側変形爪123は、雌型基材121側に屈曲する形状を有する。開封側変形爪123は、内容物側変形爪124よりも袋20の開封側に位置している。
【0036】
内容物側変形爪124は、雌型基材121側に屈曲する形状を有する。内容物側変形爪124は、内容物側変形爪124よりも袋20の内部空間29側に位置している。内容物側変形爪124と開封側変形爪123とは、変形距離LGを有する。変形距離LGは、内容物側変形爪124と開封側変形爪123との距離を示している。変形距離LGは、図3に示している通常距離LEよりも大きい。
【0037】
雄型基材125は、袋20を形成するシートに熱溶着される。雄型基材125は、変形雄型126を支持する機能を有する。
変形雄型126は、矢尻型形状を有する。変形雄型126は、雄型基材125と一体的に形成されている。変形雄型126は、変形支持部127および変形先端部128を有する。変形支持部127は、雄型基材125と連続して形成されている。変形支持部127は、雄型基材125から雌型基材121に向けて突出する形状を有する。変形支持部127は、基端境界部127Aおよび先端境界部127Bを有する。基端境界部127Aは、変形支持部127と雄型基材125との境界部分を示している。先端境界部127Bは、変形支持部127と変形先端部128との境界部分を示している。変形支持部127は、変形支持部長さLHを有する。変形支持部長さLHは、基端境界部127Aと先端境界部127Bとの距離を示している。変形支持部長さLHは、図3に示している通常支持部長さLFよりも短い。
【0038】
変形先端部128は、変形支持部127と連続して形成されている。変形先端部128は、開封側変形爪128Aおよび内容物側変形爪128Bを有する。開封側変形爪128Aは、変形雌型122の開封側変形爪123と嵌合する形状を有する。開封側変形爪128Aと開封側変形爪123とは、0%の嵌合強度を有する。内容物側変形爪128Bは、変形雌型122の内容物側変形爪124と嵌合する形状を有する。内容物側変形爪128Bと内容物側変形爪124とは、0%との嵌合強度を有する。
【0039】
図5および図6を参照して、内容物封入パウチ1の製造工程について説明する。
内容物封入パウチ1の製造工程は、第1工程、第2工程(図5(a))、第3工程(図5(b))、第4工程(図5(c))、第5工程(図6(a))、第6工程(図6(b))、および第7工程(図6(c))を含む。
【0040】
第1工程においては、パウチ10が製造される。
第2工程においては、パウチ10の第1角部21の周辺および第3角部23の周辺がそれぞれ充填機300のチャック310によりチャッキングされる。
【0041】
パウチ10は、図5(a)に示される状態で、充填ラインに搬送される。所定の充填ライン位置において、第2開口部61は吸盤(図示略)により開封される。
第3工程においては、図5(b)に示されるように、第2開口部61にノズル320が挿入される。ノズル320は、内部空間29に内容物200を充填する。
【0042】
第4工程においては、図5(c)に示されるように、内部空間29に所定量の内容物200が充填されることにより充填が終了する。内部空間29への内容物200の充填が終了した後、ノズル320は第2開口部61から抜かれる。
【0043】
第5工程においては、図6(a)に示されるように、パウチ10の第1角部21の周辺および第3角部23の周辺がそれぞれ充填機300のチャック310によりチャッキングされたままパウチ10がシール加工ラインに搬送される。
【0044】
第6工程においては、図6(b)に示されるように、所定のシール加工ライン位置において、シール装置400は、第2開口部61を挟みこむ。これにより、第2開口部61にシール加工が施される。
【0045】
第7工程においては、シール加工の終了後、図6(c)に示されるように、シール装置400は、第2開口部61を挟み込みこんだ状態を解除する。その後、シール装置400は、内容物封入パウチ1から離間する。
【0046】
図7図10を参照して、内容物封入パウチ1の使用方法について説明する。
図7に示されるように、袋20は、ノッチ91を始点として、ガイド線92に沿って切り取られることにより、主袋部30と副袋部70とに分離した状態(以下、「分離状態」)となる。袋20は、分離状態において、高嵌合強度部110の嵌合状態を解除することにより、ファスナー100が開封する。これにより、第1開口部43が開封する。また、このとき易開封シール部85も剥離する。
【0047】
図8に示されるように、使用者は、第1開口部43が開口した状態において、内部空間29に具材500を投入する。具材500としては、肉、野菜等が使用者により適宜選択される。
【0048】
図9に示されるように、パウチ10は、内部空間29に内容物200および具材500が投入された状態で、ファスナー100が再封される。パウチ10は、ファスナー100が再封された後、電子レンジで加熱される。内容物封入パウチ1は、加熱されることにより、内部空間29で蒸気が発生する。このため、内容物封入パウチ1は、内部空間29の圧力、すなわち内圧が上昇する。内容物封入パウチ1の内圧が上昇することにともない、内容物封入パウチ1には、互いに対向してパウチ10の内部空間29を形成するシートを離間させようとする力が作用する。また、内容物封入パウチ1の内圧が上昇することにともない、内容物封入パウチ1には、高嵌合強度部110の嵌合状態を解除させようとする力(以下、「嵌合解除力」)が作用する。
【0049】
なお、内容物封入パウチ1を電子レンジで加熱することにより、内部空間29で発生した蒸気は、僅かながら低嵌合強度部120を介して外部へと排出される。しかし、低嵌合強度部120を介して外部へと排出される蒸気の排出速度は、内部空間29で発生する蒸気の発生速度と比較して極めて小さい。このため、内部空間29の圧力が上昇する。
【0050】
図10に示されるように、内容物封入パウチ1は、嵌合解除力が高嵌合強度部110の嵌合強度を上回る前に、低嵌合強度部120が開封する。これにより、低嵌合強度部120を介して外部へと排出される蒸気の排出速度が、内部空間29で発生する蒸気の発生速度を上回る。このため、内容物封入パウチ1の内圧の上昇が穏やかになり、やがて内圧の上昇は停止する。なお、低嵌合強度部120の開封をきっかけとして、高嵌合強度部110の一部の嵌合状態が解除される。
【0051】
図11を参照して、高嵌合強度部の嵌合強度に対する低嵌合強度部の嵌合強度の比率(以下、「強度比率」)を変化させたときの、ファスナー100の開封態様について検証した実験結果について説明する。
【0052】
本実験は、ファスナー長さが150mmのファスナーの中央部分に低嵌合強度部を形成することにより行われた。本実験の高嵌合強度部は、38N/20mmの嵌合強度を有する。高嵌合強度部は、ファスナーのうちの低嵌合強度部が形成されていない部分を示している。低嵌合強度部は、ファスナーの中央部分が、所定の圧力、所定の時間、および所定の温度の条件の下、押しつぶされることにより形成されている。低嵌合強度部長さは、20mmを有する。
【0053】
強度比率が100%、すなわち、ファスナーに低嵌合強度部が形成されていないとき、加熱にともなう内容物封入パウチの内圧の上昇により、ファスナーは大きな音とともに開封した。
【0054】
強度比率が95%のとき、加熱にともなう内容物封入パウチの内圧の上昇により、ファスナーは大きな音とともに開封した。
強度比率が70%、80%、および90%のとき、加熱にともなう内容物封入パウチの内圧の上昇によるファスナーの開封時の音は、強度比率が95%および100%のときと比較して若干小さくなった。
【0055】
強度比率が0%、30%、および50%のとき、加熱にともなう内容物封入パウチの内圧の上昇によるファスナーの開封時の音は、強度比率が70%、80%、90%、95%、および100%のときと比較して小さくなった。
【0056】
以上の結果、強度比率を90%以下にすることにより、ファスナーの開封時の音の大きさの低減に関して効果が見出された。特に、強度比率を50%以下とすることにより、ファスナーの開封時の音の大きさの低減について顕著な効果が見出された。
【0057】
図12を参照して、ファスナー長さに対する低嵌合強度部長さの割合(以下、「強度部長さ割合」)を変化させたときの、ファスナー100の開封態様について検証した実験結果について説明する。
【0058】
本実験は、ファスナー長さが150mmのファスナーの中央部分に低嵌合強度部を形成することにより行われた。高嵌合強度部は、ファスナーのうちの低嵌合強度部が形成されていない部分を示している。低嵌合強度部は、ファスナーの中央部分が、所定の圧力、所定の時間、および所定の温度の条件の下、押しつぶされることにより形成されている。低嵌合強度部は、0N/20mmの嵌合強度を有する。
【0059】
強度部長さ割合が0%、すなわち、ファスナーに低嵌合強度部が形成されていないとき、加熱にともなう内容物封入パウチの内圧の上昇により、ファスナーは大きな音とともに開封した。
【0060】
強度部長さ割合が5%のとき、加熱にともなう内容物封入パウチの内圧の上昇によるファスナーの開封時の音は、強度部長さ割合が0%のときと比較して若干小さくなった。
強度部長さ割合が10%、20%、および50%のとき、加熱にともなう内容物封入パウチの内圧の上昇によるファスナーの開封時の音は、強度部長さ割合が0%および5%のときと比較して小さくなった。
【0061】
強度部長さ割合が70%のとき、加熱にともなう内容物封入パウチの内圧の上昇によるファスナーの開封時の音は、強度部長さ割合が0%、5%、10%、20%、および50%のときと比較して小さくなった。しかし、強度部長さ割合が70%のとき、ファスナーによるパウチの密封性が低下した。
【0062】
強度部長さ割合が80%のとき、加熱にともなう内容物封入パウチの内圧の上昇によるファスナーの開封時の音は、強度部長さ割合が0%、5%、10%、20%、50%、および70%のときと比較して小さくなった。しかし、強度部長さ割合が80%のとき、ファスナーによるパウチの密封性が強度部長さ70%のときと比較してさらに低下した。
【0063】
以上の結果、強度部長さ割合を5%以上にすることにより、ファスナーの開封時の音の大きさの低減に関して効果が見出された。特に、強度部長さ割合を5%以上〜70%以下とすることにより、ファスナーによるパウチの密封性の低下を抑制し、かつファスナーの開封時の音の大きさの低減について効果が見出された。
【0064】
パウチ10は以下の効果を奏する。
(1)パウチ10は、ファスナー100を有する。ファスナー100は、高嵌合強度部110および低嵌合強度部120を有する。このため、パウチ10を用いた内容物封入パウチ1を加熱したとき、内圧の上昇にともない上昇する嵌合解除力が、高嵌合強度部110の嵌合強度よりも先に低嵌合強度部120の嵌合強度に達する。このため、低嵌合強度部120の嵌合状態が高嵌合強度部110の嵌合状態よりも先に解除される。これにより、嵌合解除力が、高嵌合強度部110の嵌合強度に達する前に、内部空間29で発生した蒸気を外部へと排出できる。このため、内圧の上昇にともなうパウチ10の開封時に発生する音を小さくできる。
【0065】
(2)パウチ10は、第1開口部43に加えて、第2開口部61を有する。このため、内容物封入パウチ1の製造過程において、第2開口部61からパウチ10の内部空間29に内容物200をいれることができる。このため、内容物封入パウチ1の製造過程においてファスナー100に内容物が付着するおそれが低減される。
【0066】
(3)パウチ10は、袋20を有する。袋20は、袋本体部40、底ガゼット50、および突出部60を有する。突出部60は、第2開口部61を有する。第2開口部61は、袋本体部40から袋20の外方に向けて突出した形状を有する。このため、内容物封入パウチ1の製造過程において第2開口部61をシールするとき、パウチ10をチャッキングするチャック310がシール装置400の移動軌跡上に位置しない状態を形成できる。このため、第2開口部61のシール加工が容易になる。
【0067】
(4)パウチ10は、易開封シール部85を有する。易開封シール部85は、第1開口部43を密封する。易開封シール部85は、ファスナー100に対して内部空間29側に位置している。このため、第2開口部61から袋20の内部空間29に内容物200をいれるときに、内容物200がファスナー100に付着するおそれが低減される。
【0068】
本パウチおよび本内容物封入パウチは、上記実施形態とは別の実施形態を含む。以下、その他の実施形態としての上記実施形態の変形例を示している。なお、以下の各変形例は、互いに組み合わせることもできる。
【0069】
・実施形態のファスナー100は、単一の低嵌合強度部120を有する。ただし、ファスナー100の構成は実施形態に例示された内容に限られない。例えば、変形例のファスナー100は、複数の低嵌合強度部120を有する。
【0070】
・実施形態のファスナー100の低嵌合強度部長さLDは、ファスナー長さLAの20%の長さを有する。ただし、低嵌合強度部長さLDは実施形態に例示された内容に限られない。例えば、変形例の低嵌合強度部長さLDは、ファスナー長さLAの5%以上〜70%以下の範囲から適宜選択される。
【0071】
・実施形態の第1高嵌合強度部長さLBと第2高嵌合強度部長さLCとは等しい。ただし、第1高嵌合強度部長さLBと第2高嵌合強度部長さLCとの関係は実施形態に例示された内容に限られない。例えば、変形例の第1高嵌合強度部長さは、第2高嵌合強度部長さと異なる。要するに、第1高嵌合強度部長さおよび第2高嵌合強度部長さは、適宜変更することができる。
【0072】
・実施形態の低嵌合強度部120は、高嵌合強度部110の嵌合強度の0%の嵌合強度を有する。ただし、低嵌合強度部120の嵌合強度は実施形態に例示された内容に限られない。例えば、変形例の低嵌合強度部120の嵌合強度は、高嵌合強度部110の嵌合強度の0%以上〜90%以下の範囲から適宜選択される。
【0073】
・実施形態の低嵌合強度部120は、高嵌合強度部110と同様の構成のファスナー100を、所定の圧力、所定の時間、および所定の温度の条件の下、押しつぶすことにより形成される。ただし、低嵌合強度部120の構成は実施形態に例示された内容に限られない。例えば、変形例の低嵌合強度部120は、高嵌合強度部110よりも嵌合強度の低いファスナーが別途挿入されることにより形成される。
【0074】
・実施形態の低嵌合強度部120は、変形雌型122を有する。変形雌型122は、開封側変形爪123および内容物側変形爪124を有する。ただし、変形雌型122の構成は実施形態に例示された内容に限定されない。例えば、変形例の変形雌型122は、開封側変形爪123および内容物側変形爪124の少なくとも一方を有さない。
【0075】
・実施形態の低嵌合強度部120は、変形雄型126を有する。変形雄型126は、開封側変形爪128Aおよび内容物側変形爪128Bを有する。ただし、変形雄型126の構成は実施形態に例示された内容に限定されない。例えば、変形例の変形雄型126は、開封側変形爪128Aおよび内容物側変形爪128Bの少なくとも一方を有さない。
【0076】
・実施形態のパウチ10は、上方シール部83、易開封シール部85、突出部60、および第2開口部61を有する。ただし、パウチ10の構成は実施形態に例示された内容に限定されない。例えば、変形例のパウチ10は、上方シール部83、易開封シール部85、突出部60、および第2開口部61の少なくとも一つを有さない。
【0077】
・実施形態のパウチ10は、スタンディングパウチとしての形態を有する。ただし、パパうち10の形態は実施形態に例示された内容に限られない。例えば、変形例のパウチ10は、平型パウチ等、パウチとしての様々な形態をとり得る。
【0078】
・実施形態の内容物封入パウチ1は、内容物200を有する。内容物200は、液体調味料が選択される。ただし、選択される内容物200の種類は実施形態に例示された内容に限定されない。例えば、変形例の内容物封入パウチ1が有する内容物200は、医療具や哺乳瓶等の殺菌消毒された物品が選択される。
【符号の説明】
【0079】
1…内容物封入パウチ、10…パウチ、20…袋、21…第1角部、22…第2角部、23…第3角部、24…第4角部、25…第1側方縁、26…第2側方縁、27…上縁、28…下縁、29…内部空間、30…主袋部、40…袋本体部、41…第1側方部、42…第2側方部、43…第1開口部、50…底ガゼット、60…突出部、61…第2開口部、70…副袋部、80…シール部、81…第1側方シール部、81A…側方シール上部、81B…側方シール下部、82…第2側方シール部、83…上方シール部、84…下方シール部、85…易開封シール部、90…切断補助部、91…ノッチ、92…ガイド線、100…ファスナー、101…第1ファスナー端部、102…第2ファスナー端部、110…高嵌合強度部、111…雌型基材、112…通常雌型、113…開封側通常爪、114…内容物側通常爪、115…雄型基材、116…通常雄型、117…通常支持部、117A…基端境界部、117B…先端境界部、118…通常先端部、118A…開封側通常爪、118B…内容物側通常爪、120…低嵌合強度部、120A…第1低嵌合端部、120B…第2低嵌合端部、121…雌型基材、122…変形雌型、123…開封側変形爪、124…内容物側変形爪、125…雄型基材、126…変形雄型、127…変形支持部、127A…基端境界部、127B…先端境界部、128…変形先端部、128A…開封側変形爪、128B…内容物側変形爪、200…内容物、300…充填機、310…チャック、320…ノズル、400…シール装置、500…具材、LA…ファスナー長さ、LB…第1高嵌合強度部長さ、LC…第2高嵌合強度部長さ、LD…低嵌合強度部長さ、LE…通常距離、LF…通常支持部長さ、LG…変形距離、LH…変形支持部長さ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12