(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、車両の走行支援装置の一実施形態を
図1〜
図13に従って説明する。
図1には、本実施形態の車両の走行支援装置である自動運転制御装置50を備える自動運転支援システム10が図示されている。この自動運転支援システム10では、車両の自動運転を支援するための各種の支援制御が実施される。この支援制御では、車両の走行する道路の状況(カーブの曲率など)、及び車両前方に障害物が存在するか否かなどに応じて目標走行経路RTを設定し、この目標走行経路RTに沿って車両を走行させることができる。なお、「支援制御」としては、例えば、アダプティブクルーズコントロール(以下、「ACC」という。)、プリクラッシュセーフティシステム(以下、「PCS」という。)、レーンキープアシスト(以下、「LKA」という。)を挙げることができる。
【0016】
図1に示すように、自動運転支援システム10には、外観認識センサ111及び位置取得センサ112が電気的に接続されている。外観認識センサ111は、自車両の前方に障害物(他の車両、歩行者及びガードレールなど)が存在するか否か、自車両と障害物との距離などを検出する検出系であって、カメラなどの撮像装置やミリ波レーダーなどを備えた構成となっている。位置取得センサ112は、自車両の位置を取得するセンサであって、例えばGPSセンサを挙げることができる。なお、「GPS」とは、「Global Positioning System」の略記である。
【0017】
また、
図1及び
図2に示すように、自動運転支援システム10には、自車両の状態を検出する検出系として、車速センサ113、ヨーレートセンサ114、前後加速度センサ115及び横加速度センサ116が電気的に接続されている。車速センサ113は、自車両の車体速度VSを検出する検出系であって、例えば車輪の回転速度を検出するセンサを挙げることができる。ヨーレートセンサ114は、自車両のヨーレートYrを検出する検出系である。前後加速度センサ115は自車両の前後方向の加速度である前後加速度Axを検出する検出系であり、横加速度センサ116は自車両の横方向の加速度である横加速度Ayを検出する検出系である。
【0018】
また、自動運転支援システム10には、自車両の動力源であるエンジンを制御するエンジンECU21、自車両の車輪の転舵角を制御するステアリングECU22、及び自車両の制動装置を制御するブレーキECU23が電気的に接続されている。そして、自動運転支援システム10は、これらECU21〜23に対し、PCSなどの支援制御の実施を伴う自動運転に必要な制御量を出力するようになっている。なお、
図1には、自車両の右輪と左輪との間に制動力差を発生させることで、その進行方向、すなわち車両の姿勢角θを制御する例が図示されている。ここでいう「車両の姿勢角θ」とは、車両のヨーイング運動によって変化する車両の回転角のことである。
【0019】
図1に示すように、自動運転支援システム10は、支援制御用のアプリケーションとして、ACC部31、PCS部32及びLKA部33を有している。ACC部31は、ACCの実施に必要な情報を作成し、同情報を自動運転制御装置50に出力する。PCS部32は、PCSの実施に必要な情報を作成し、同情報を自動運転制御装置50に出力する。LKA部33は、LKAの実施に必要な情報を作成し、同情報を自動運転制御装置50に出力する。
【0020】
図2には、支援制御用のアプリケーションの一例であるPCS部32の機能構成が図示されている。
図2に示すように、PCS部32は、目標位置設定部41と、制御終了開始判定部42とを有している。目標位置設定部41には、外観認識センサ111及び位置取得センサ112から情報が入力される。そして、目標位置設定部41は、目標位置(X2,Y2)及び経由位置(X1,Y1)のうち少なくとも目標位置(X2,Y2)と、到達予測時間Tendとを設定し、この設定内容を特定する情報を自動運転制御装置50に出力する。また、目標位置設定部41は、自車両の走行する道路の状況によっては最終姿勢角θendを設定し、この最終姿勢角θendを特定する情報を自動運転制御装置50に出力することもある。
【0021】
目標位置(X2,Y2)は、自車両の横方向において自車両の現在位置(X0,Y0)とは異なる位置のことであり、外観認識センサ111から入力された情報に基づいて現時点で設定可能な自動運転の最終目的地である。例えば、PCSで設定される目標位置(X2,Y2)は、回避対象となる障害物との衝突が回避できたと判断できる位置であり、例えば当該障害物と車両横方向で隣り合う位置(
図5に二点鎖線で示す位置)である。
【0022】
なお、「X0」は、自車両の現在位置における前後方向位置(
図5に示すX方向の位置)であり、「Y0」は、自車両の現在位置における横方向位置(
図5に示すY方向の位置)である。そして、「X2」は、現在位置の前後方向位置X0を基準とした目標位置の相対的な前後方向位置である。また、「Y2」は、現在位置の横方向位置Y0を基準とした目標位置の相対的な横方向位置である。
【0023】
経由位置(X1,Y1)は、自車両の現在位置(X0,Y0)と目標位置(X2,Y2)との間の位置である。すなわち、「X1」は、現在位置の前後方向位置X0を基準とした経由位置の相対的な前後方向位置であり、「Y1」は、現在位置の横方向位置Y0を基準とした経由位置の相対的な横方向位置である。そして、この経由位置(X1,Y1)を設定した場合、PCS部32は、経由位置(X1,Y1)を経由して目標位置(X2,Y2)に到達する態様の目標走行経路RTの設定を自動運転制御装置50に要求しているということができる。
【0024】
到達予測時間Tendは、自車両の現在位置(X0,Y0)から目標位置(X2,Y2)までの自車両の移動に要する時間の予測値である。到達予測時間Tendは、現時点の自車両の横加速度Ay、ヨーレートYr及び車体速度VSなどに基づいて演算することができる。例えば、PCSを実施する場合には、設定した到達予測時間Tendまでに自車両の横方向位置を目標位置の横方向位置Y2と等しくすることで、自車両と障害物との衝突を回避することができる。
【0025】
最終姿勢角θendは、目標走行経路RTに沿って走行した自車両が目標位置(X2,Y2)に達するときにおける同自車両の姿勢角の目標値である。この最終姿勢角θendは、目標走行経路RTを設定する際の自車両の姿勢角を基準とする相対的な回転角である。そのため、目標走行経路RTを設定する際の自車両の姿勢角と、目標位置(X2,Y2)に達するときにおける自車両の姿勢角とを同一とする場合、最終姿勢角θendには「0(零)」が設定される。
【0026】
制御終了開始判定部42は、PCSが実施されていないときには同PCSの実施が必要であるか否かを判定する。例えば、制御終了開始判定部42は、目標位置設定部41で設定される目標位置(X2,Y2)が変わったときに、PCSの開始要求を自動運転制御装置50に出力する。また、制御終了開始判定部42は、PCSが実施されているときには、各種のセンサ111〜116から入力される情報やブレーキECU23から入力される情報に基づき、PCSを終了してもよいか否かを判定する。例えば、制御終了開始判定部42は、自車両が目標位置(X2,Y2)に達した場合には、PCSを終了してもよいと判定し、PCSの終了要求を自動運転制御装置50に出力する。
【0027】
なお、ここでは、アプリケーションの機能構成の一例として、PCS部32の機能構成について
図2を参照して説明した。PCS部32以外の他のアプリケーション(ACC部31、LKA部33など)の機能構成についても、目標位置(X2,Y2)及び到達予測時間Tend(及び経由位置(X1,Y1)と最終姿勢角θend)を設定する点、及び、PCSなどの支援制御の開始要求や終了要求を出力する点はPCS部32とほぼ同様である。そのため、PCS部32以外の他のアプリケーションの機能構成の説明については割愛するものとする。
【0028】
図1に示すように、自動運転支援システム10の自動運転制御装置50には、ACC部31、PCS部32及びLKA部33などのアプリケーションから各種の情報が入力される。自動運転制御装置50では、例えば、自車両の横方向位置を変更するための自車両の目標走行経路RTが作成され、この目標走行経路RTに沿って自車両を走行させるために必要な制御量が演算される。そして、こうした制御量が自動運転制御装置50からブレーキECU23に出力される。
【0029】
自動運転制御装置50は、記憶部51、プロファイル作成部52、目標導出部53及び制御量指示部54を有している。
記憶部51には、
図3(a),(b)に示すマップが予め記憶されている。これら各マップは、横加速度の変化量の制限値AyLと時間との関係を示すマップである。すなわち、本実施形態では、横加速度の変化量の制限値AyLが、「車両の横加速度の変化量に関するパラメータ」に相当する。
【0030】
図3(a)に示すマップは、PCSなどの支援制御の開始時、及び、車両の横加速度Ayの変化方向を変えたときに用いられる。ここでいう「横加速度Ayの変化方向を変えたとき」とは、横加速度Ayを増大させる期間である増大期間から横加速度Ayを減少させる減少期間に移行するに際して減少期間に移行した直後のこと、及び、減少期間から増大期間に移行するに際して増大期間に移行した直後のことである。
【0031】
図3(a)に示すように、横加速度の変化量の制限値AyLは、時間が経過するにつれて次第に大きくなっている。このときの制限値AyLの変化勾配、すなわち単位時間あたりの制限値AyLの変化量は、車両の諸元によって設定されている。また、時間が制限解除時間TM1に達すると、制限値AyLは横加速度の上限値AyMaxと等しくなる。そして、これ以降では、制限値AyLは上限値AyMaxで保持される。なお、横加速度の上限値AyMaxは、自車両で発生させることのできる横加速度の実上限値と等しい値又は同実上限値よりも僅かに小さい値に設定されている。
【0032】
図3(b)に示すマップは、PCSなどの支援制御の終了時、及び、車両の横加速度Ayの変化方向を変えるときに用いられる。ここでいう「横加速度Ayの変化方向を変えるとき」とは、上記増大期間から上記減少期間に移行するに際して減少期間に移行する直前のこと、及び、減少期間から増大期間に移行するに際して増大期間に移行する直前のことである。
【0033】
図3(b)に示すように、横加速度の変化量の制限値AyLは、時間が制限開始時間TM2に達するまでは横加速度の上限値AyMaxで保持されている。そして、時間が制限開始時間TM2に達した以降では、制限値AyLは、時間が経過するにつれて次第に小さくなり、やがて「0(零)」と等しくなる。このときの制限値AyLの変化勾配、すなわち単位時間あたりの制限値AyLの変化量は、車両の諸元によって設定されている。
【0034】
図1に戻り、プロファイル作成部52は、PCS部32などのアプリケーションから目標位置(X2,Y2)を特定する情報などが入力されたときに、車両の横加速度Ayと時間との関係を示す横加速度プロファイルPRAyを作成する。この横加速度プロファイルPRAyは、例えば
図6(a)に示すように、現時点から到達予測時間Tendが経過する時点までの横加速度Ayの変化の指標を表している。すなわち、プロファイル作成部52は、目標位置(X2,Y2)、到達予測時間Tend、記憶部51に記憶されているマップ(
図3(a),(b)参照)に基づき、横加速度プロファイルPRAyを作成する(
図6(a)参照)。また、経由位置(X1,Y1)を特定する情報がアプリケーションから入力されている場合、プロファイル作成部52は、経由位置(X1,Y1)も考慮して横加速度プロファイルPRAyを作成する。また、最終姿勢角θendを特定する情報がアプリケーションから入力されている場合、プロファイル作成部52は、最終姿勢角θendも考慮して横加速度プロファイルPRAyを作成する。そして、プロファイル作成部52は、作成した横加速度プロファイルPRAyを目標導出部53に出力する。
【0035】
目標導出部53は、第1の積分部531と第2の積分部532とを有する。第1の積分部531は、プロファイル作成部52から横加速度プロファイルPRAyが入力されると、この横加速度プロファイルPRAyに対して積分処理を行うことで、車両の横速度Vyと時間との関係を示す横速度プロファイルPRVyを作成する(
図6(b)参照)。この横速度プロファイルPRVyは、現時点から到達予測時間Tendが経過する時点までの横速度Vyの変化の指標を表している。なお、ここでいう横速度Vyとは、水平面に沿う方向であって、且つ現時点での車両前後方向に対して直交する車両横方向の速度であり、
図5に示すY方向の速度のことである。
【0036】
第2の積分部532は、第1の積分部531で作成された横速度プロファイルPRVyに対して積分処理を行うことで、自車両の現在位置(X0,Y0)を基準とする車両横方向への移動量である横距離Lyと時間との関係を示す横距離プロファイルPRLyを作成する(
図6(c)参照)。この横距離プロファイルPRLyは、現時点から到達予測時間Tendが経過する時点までの横距離Lyの変化の指標を表している。すなわち、この横距離プロファイルPRLyが、自車両の現在位置(X0,Y0)から目標位置(X2,Y2)までの目標走行経路RTに相当する。つまり、本実施形態では、横加速度プロファイルPRAyを2回積分することで、自車両の現在位置(X0,Y0)から目標位置(X2,Y2)までの目標走行経路RTを導出することができる。そして、第2の積分部532は、このように導出した目標走行経路RTを制御量指示部54に出力する。
【0037】
制御量指示部54は、入力された目標走行経路RTに沿って自車両を走行させるための制御量を演算する。具体的には、制御量指示部54は、目標走行経路RTに基づいてフィードフォワード制御量を演算し、目標走行経路から求まる要求制御量とこのフィードフォワード制御量との偏差に基づいてフィードバック制御量を演算する。そして、制御量指示部54は、こうした各制御量をブレーキECU23に出力する。
【0038】
次に、
図4に示すフローチャートを参照し、目標走行経路RTを設定するための処理ルーチンについて説明する。この処理ルーチンは、予め設定された制御サイクル毎に実行される。
【0039】
図4に示すように、ステップS11において、プロファイル作成部52が、目標位置(X2,Y2)、到達予測時間Tend、経由位置(X1,Y1)及び最終姿勢角θendを取得する。なお、PCS部32などのアプリケーションから経由位置(X1,Y1)を特定する情報が入力されていない場合、プロファイル作成部52は経由位置(X1,Y1)を取得できない。同様に、アプリケーションから最終姿勢角θendを特定する情報が入力されていない場合、プロファイル作成部52は最終姿勢角θendを取得できない。
【0040】
次のステップS12において、プロファイル作成部52が、開始判定フラグにオンがセットされているか否かを判定する。この開始判定フラグは、PCS部32などのアプリケーションから、PCSなどの支援制御の開始要求が入力されたときにオンにセットされ、同アプリケーションから支援制御の終了要求が入力されたときにオフにセットされる。そして、開始判定フラグにオンがセットされている場合(ステップS12:YES)、処理がステップS13に移行される。一方、開始判定フラグにオフがセットされている場合(ステップS12:NO)、目標走行経路RTを設定することなく、本処理ルーチンが終了される。
【0041】
ステップS13において、プロファイル作成部52が、自車両の情報、すなわち自車両の現在位置(X0,Y0)、車両の横速度Vy及び車両の横加速度Ayを取得する。そして、次のステップS14において、プロファイル作成部52が、横加速度プロファイルPRAyを作成する。
【0042】
ここで、
図5及び
図6を参照し、自車両C0の走行するレーンを変更する際、すなわちレーンチェンジ時の横加速度プロファイルPRAyの作成を例にして説明する。なお、
図5には、自車両C0が、前方の障害物C1(この場合には、先行車両)との衝突を回避すべくレーンチェンジを行う場合が図示されている。この場合、目標位置(X2,Y2)、経由位置(X1,Y1)及び到達予測時間Tendは取得できる一方で、最終姿勢角θendは取得できないものとする。また、経由位置(X1,Y1)は、
図5に示すX方向である車両前後方向において、自車両C0の現在位置(X0,Y0)と目標位置(X2,Y2)との中間に設定されているものとする。
【0043】
図6(a)に示すように、現時点から到達予測時間Tendまでの横加速度プロファイルの大まかなパターンが設定される。すなわち、レーンチェンジ時におけるプロファイルパターンは、横加速度Ayを増大させた後、横加速度Ayを減少させ、その後、横加速度Ayを増大させる形状である。そして、PCSなどの支援制御の実施期間MMが、設定されている経由位置(X1,Y1)の数に応じて複数の区間に区分される。
図5及び
図6に示す例では、経由位置(X1,Y1)が1つだけ設定されているため、当該実施期間MMが2つの区間MM1,MM2に区分される。なお、経由位置(X1,Y1)が2つ設定されている場合、当該実施期間MMは3つの区間に区分されることとなる。
【0044】
続いて、以下に示す関係式(式1)、(式2)及び(式3)を用い、上記実施期間MMの前半の区間である第1の区間MM1の時間的な長さT1、及び、実施期間MMの後半の区間である第2の区間MM2の時間的な長さT2が演算される。なお、第1の区間MM1の時間的な長さT1と、第2の区間MM2の時間的な長さT2との和は、上記実施期間MMの時間的な長さ、すなわち到達予測時間Tendと等しい。
【0045】
【数1】
経由位置(X1,Y1)が、車両前後方向において、自車両の現在位置(X0,Y0)と目標位置(X2,Y2)との中間に設定されている場合、関係式(式1)から明らかなように、「D」は「5」となる。一方、車両前後方向において、経由位置(X1,Y1)が自車両の現在位置(X0,Y0)よりも目標位置(X2,Y2)に近い場合、「D」は「5」よりも大きくなり、車両前後方向において、経由位置(X1,Y1)が目標位置(X2,Y2)よりも自車両の現在位置(X0,Y0)に近い場合、「D」は「5」よりも小さくなる。すなわち、到達予測時間Tendのうち、自車両が経由位置(X1,Y1)に達するまでに要する時間の予測値である予測時間(T1)の占める割合「D/10」は、車両前後方向で経由位置(X1,Y1)が現在位置(X0,Y0)に近いほど小さくなる。そして、「D」が「5」である場合、第1の区間MM1の時間的な長さT1は、第2の区間MM2の時間的な長さT2と等しくなる一方、「D」が「5」ではない場合、第1の区間MM1の時間的な長さT1と第2の区間MM2の時間的な長さT2とが互いに相異することとなる。
【0046】
第1の区間MM1における自車両の横加速度の平均値Aave1は、以下に示す関係式(式4)を用いることにより演算することができる。そして、第1の区間MM1において横加速度Ayの時間的な推移を示す実線で囲まれた部分の面積は、
図6(a)に破線で示すように、横加速度の平均値Aave1と、第1の区間MM1の時間的な長さT1との積と等しいと見なすことができる。そして、当該面積は、以下に示す関係式(式5)で表すことができる。なお、関係式(式5)において、「Ap1」は第1の区間MM1での自車両の横加速度の最大値であり、「A0」は第1の区間MM1の開始時点での自車両の横加速度であり、「Ac」は第1の区間MM1の終了時点での自車両の横加速度である。なお、
図5及び
図6に示す例では、第1の区間MM1の終了時点での自車両の横加速度Acは、第1の区間MM1の開始時点での車両の横加速度A0と等しい。
【0047】
【数2】
また、上記関係式(式4)は、以下に示す関係式(式6)に変換することができる。そして、自車両C0の現在位置の横方向位置Y0、経由位置の横方向位置Y1及び自車両の現時点の横速度Vy0は取得済みであり、第1の区間MM1の時間的な長さT1は、上記関係式(式1),(式2)を用いて演算することができる。そして、こうしたパラメータを関係式(式6)に代入することで、第1の区間MM1での自車両の横加速度の最大値Ap1、すなわち第2のタイミングt12での横加速度の要求値が求められる。
【0048】
【数3】
また、第2の区間MM2における自車両の横加速度の平均値Aave2は、以下に示す関係式(式7)を用いることにより演算することができる。そして、第2の区間MM2において横加速度Ayの時間的な推移を示す実線で囲まれた部分の面積は、
図6(a)に破線で示すように、横加速度の平均値Aave2と、第2の区間MM2の時間的な長さT2との積と等しいと見なすことができる。そして、当該面積は、以下に示す関係式(式8)で表すことができる。なお、関係式(式8)において、「Ap2」は第2の区間MM2での車両の横加速度の最小値の大きさであり、「Ac」は第2の区間MM2の開始時点での車両の横加速度であり、「Ae」は第2の区間MM2の終了時点での自車両の横加速度である。なお、
図5及び
図6に示す例では、第2の区間MM2の終了時点での自車両の横加速度Aeは、第2の区間MM2の開始時点での自車両の横加速度Ac(=A0)と等しい。
【0049】
【数4】
ちなみに、最終姿勢角θendを特定する情報が入力されていない場合、横加速度の平均値Aave2と第2の区間MM2の時間的な長さT2との積は、横加速度の平均値Aave1と第1の区間MM1の時間的な長さT1との積と等しい。一方、最終姿勢角θendを特定する情報が入力され、当該最終姿勢角θendが車両の現時点の姿勢角θとは異なる場合、横加速度の平均値Aave2と第2の区間MM2の時間的な長さT2との積が、横加速度の平均値Aave1と第1の区間MM1の時間的な長さT1との積と相異する。
【0050】
上記関係式(式8)は、以下に示す関係式(式9)に変換することができる。また、自車両C0の現在位置の横方向位置Y0、経由位置の横方向位置Y1、自車両C0の現時点の横速度Vy0、及び第1の区間MM1の時間的な長さT1は既に把握できているため、上記関係式(式4)を用いることで、第1の区間MM1での横加速度の平均値Aave1を求めることができる。そして、自車両C0の現時点の横速度Vy0、第1の区間MM1の時間的な長さT1、及び第1の区間MM1での横加速度の平均値Aave1を以下に示す関係式(式10)に代入することで、自車両C0が経由位置(X1,Y1)に達する時点の横速度Vy1を求めることができる。そして、取得済みの経由位置の横方向位置Y1、目標位置の横方向位置Y2及び第2の区間MM2の時間的な長さT2と、経由位置(X1,Y1)での自車両の横速度Vy1とを、関係式(式9)に代入することで、第2の区間MM2での自車両の横加速度の最小値Ap2、すなわち第4のタイミングt14での横加速度の要求値が求められる。
【0051】
【数5】
このように上記実施期間MMにおける横加速度の最大値Ap1及び最小値Ap2を求めることにより、第1のタイミングt11から第2のタイミングt12までの横加速度Ayの増大態様、第2のタイミングt12から第4のタイミングt14までの横加速度Ayの減少態様、及び、第4のタイミングt14から第5のタイミングt15までの横加速度Ayの増大態様を求めることができる。このとき、
図3(a),(b)に示すマップが用いられる。
【0052】
すなわち、第1のタイミングt11からしばらくの間では、
図3(a)に示すマップを用いることにより、単位時間あたりの横加速度の増大量が次第に大きくなる。また、第2のタイミングt12の少し前からは、
図3(b)に示すマップを用いることにより、単位時間あたりの横加速度の増大量が次第に小さくなる。そして、第2のタイミングt12で、単位時間あたりの横加速度の増大量が「0(零)」と等しくなる。
【0053】
また、第2のタイミングt12からしばらくの間では、
図3(a)に示すマップを用いることにより、単位時間あたりの横加速度の減少量が次第に大きくなる。第3のタイミングt13を経過し、第4のタイミングt14の少し前からは、
図3(b)に示すマップを用いることにより、単位時間あたりの横加速度の減少量が次第に小さくなる。そして、第4のタイミングt14で、単位時間あたりの横加速度の減少量が「0(零)」と等しくなる。なお、第2のタイミングt12から第4のタイミングt14までの間では、第3のタイミングt13で、単位時間あたりの横加速度の減少量が最大となる。
【0054】
また、第4のタイミングt14からしばらくの間では、
図3(a)に示すマップを用いることにより、単位時間あたりの横加速度の増大量が次第に大きくなる。第5のタイミングt15の少し前からは、
図3(b)に示すマップを用いることにより、単位時間あたりの横加速度の増大量が次第に小さくなる。そして、第5のタイミングt15で、単位時間あたりの横加速度の増大量が「0(零)」と等しくなる。
【0055】
そして、このように横加速度プロファイルPRAyが作成されると、
図4に示すステップS14が終了され、処理がステップS15に移行される。
図4に戻り、ステップS15において、目標導出部53の第1の積分部531が、横加速度プロファイルPRAyを積分することで、
図6(b)に示すような横速度プロファイルPRVyを作成する。なお、
図6(b)における「Vy2」は、自車両C0が目標位置(X2,Y2)まで移動した時点の横速度の予測値である。次のステップS16において、目標導出部53の第2の積分部532が、横速度プロファイルPRVyを積分することで、
図6(c)に示すような目標走行経路RTを導出する。そして、本処理ルーチンが一旦終了される。
【0056】
すなわち、本実施形態では、アプリケーションに目標位置(X2,Y2)を設定させることにより、目標走行経路RTを設定することができる。しかも、このように目標走行経路RTを設定するに際し、複数の走行経路の候補を作成したり、当該各候補に対して複数の項目で評価したりする必要もない。したがって、目標走行経路RTの設定に際する自動運転制御装置50の演算負荷の増大を抑えることができる。
【0057】
また、目標走行経路RTを設定するための処理ルーチンは、所定の制御サイクル毎に実行されている。そのため、PCS部32などのアプリケーションから目標位置(X2,Y2)を変更する旨が入力されたときには、同時点の自車両C0の現在位置(X0,Y0)から新たな目標位置(X2,Y2)までの目標走行経路RTが新たに設定される。上述したように目標走行経路RTを設定するための演算負荷は低いため、新たな目標走行経路RTを早期に設定することができる。したがって、刻々と変化する状況に応じ、より適切な走行支援を実現することができる。
【0058】
また、本実施形態の車両の運転支援装置にあっては、目標位置(X2,Y2)は変更されなくても、経由位置(X1,Y1)や最終姿勢角θendが変更された場合でも、目標走行経路RTの再設定を行うことができる。したがって、経由位置(X1,Y1)や最終姿勢角θendが変化する場合であっても、より適切な走行支援を実現することができる。
【0059】
次に、
図7を参照し、経由位置(X1,Y1)が、車両前後方向における自車両C0の現在位置(X0,Y0)と目標位置(X2,Y2)との中間とは異なる位置に設定されている場合について説明する。こうした場合としては、例えば、自車両C0の前方に複数の障害物が存在しており、各障害物を回避するような目標走行経路RTを導出する場合を挙げることができる。
【0060】
図7(a),(b),(c)に示すように、経由位置(X1,Y1)が、車両前後方向において目標位置(X2,Y2)よりも自車両C0の現在位置(X0,Y0)に近い場合、上記関係式(式1)を用いて求められる「D」は「5」よりも小さくなる。そのため、上記関係式(式2),(式3)を用いることにより、第1の区間MM1の時間的な長さT1は、第2の区間MM2の時間的な長さT2よりも短くなる。そして、上記関係式(式6)を用いることにより、第1の区間MM1での車両の横加速度の最大値Ap1が求められ、上記関係式(式9)を用いることにより、第2の区間MM2での車両の横加速度の最小値Ap2が求められる。この場合、第1の区間MM1での車両の横加速度の最大値Ap1の絶対値が、第2の区間MM2での車両の横加速度の最小値Ap2の絶対値よりも大きくなる。
【0061】
続いて、現時点から到達予測時間Tendまでの横加速度プロファイルの大まかなパターンが設定される。この場合のプロファイルパターンは、
図5及び
図6に示す例の場合と同じである。そして、当該プロファイルパターンに基づいた横加速度Ayの変化態様を、
図3(a),(b)に示すマップを用いて補正することにより、
図7(a)に示す横加速度プロファイルPRAyが作成される。続いて、この横加速度プロファイルPRAyを積分することで、
図7(b)に示す横速度プロファイルPRVyが作成され、この横速度プロファイルPRVyを積分することで、
図7(c)に示す横距離プロファイルPRLy、すなわち目標走行経路RTが導出される。このように経由位置(X1,Y1)を代えることにより、目標位置(X2,Y2)は同じであっても、異なる目標走行経路RTが導出されることとなる。したがって、アプリケーションで経由位置(X1,Y1)を適宜設定することにより、目標走行経路RTの設定の自由度を高めることができる。
【0062】
次に、
図8及び
図9を参照し、自車両C0の走行する道路が前方でカーブしているときの目標走行経路RTの設定について説明する。この場合、経由位置(X1,Y1)は設定されないものの、最終姿勢角θendはアプリケーションによって設定されるものとする。
【0063】
この場合、経由位置(X1,Y1)が目標位置(X2,Y2)と同じであると見なすため、上記関係式(式1)を用いることにより、「D」は「10」となる。そのため、上記関係式(式2)において「T1」は「Tend」となり、上記関係式(式3)において「T2」は「0(零)」と等しくなる。
【0064】
現時点から到達予測時間Tendまでの横加速度プロファイルの大まかなパターンとして採用されるプロファイルパターンは、
図6及び
図7に示す例の場合とは相異する。すなわち、この場合のプロファイルパターンは、横加速度Ayを増大させた後、横加速度Ayを維持させる形状である。そのため、上記関係式(式6)を用いて「Ap1」を演算する際、「Y1」には目標位置の横方向位置Y2が代入されるとともに、自車両が目標位置(X2,Y2)に達した時点の横加速度、すなわち
図9に示す横加速度Acは「Ap1」と等しいと見なすことができる。そして、このように求めた「Ap1」は、上記実施期間MMにおける横加速度Ayの最大値と見なすことができる。
【0065】
このように上記実施期間MMにおける横加速度Ayの最大値Ap1が求められると、当該プロファイルパターンに基づいた横加速度Ayの変化態様を、
図3(a),(b)に示すマップを用いて補正することにより、
図9(a)に示す横加速度プロファイルPRAyが作成される。すなわち、この横加速度プロファイルPRAyは、横加速度Ayを上記関係式(式6)を用いて演算した最大値Ap1まで増大させ、その後、横加速度Ayを最大値Ap1で保持する形状となる。
【0066】
そして、この横加速度プロファイルPRAyを積分することで、
図9(b)に示す横速度プロファイルPRVyが作成され、この横速度プロファイルPRVyを積分することで、
図9(c)に示す横距離プロファイルPRLy、すなわち目標走行経路RTが導出される。この場合、自車両C0が目標位置(X2,Y2)に達した時点である第1のタイミングt31では、自車両に横速度Vyが発生していることとなる。このときの横速度Vyは、アプリケーションによって設定された最終姿勢角θendに応じた速度となっている。
【0067】
したがって、最終姿勢角θendがアプリケーションによって設定された場合にあっては、目標位置(X2,Y2)に自車両C0が到達した時点の同自車両の姿勢角θを最終姿勢角θendとほぼ等しくなるような目標走行経路RTを設定することができる。すなわち、最終姿勢角θendをアプリケーションで設定することにより、目標走行経路RTの設定の自由度を高めることができる。
【0068】
次に、
図10〜
図13を参照し、自車両C0の現在位置(X0,Y0)と目標位置(X2,Y2)との間に複数(ここでは、2つ)の経由位置がアプリケーションによって設定された場合における目標走行経路RTの設定について説明する。なお、2つの経由位置のうち、現在位置(X0,Y0)に近い方の経由位置を第1の経由位置(X11,Y11)とし、現在位置(X0,Y0)から遠い方の経由位置を第2の経由位置(X12,Y12)というものとする。
【0069】
例えば、経由位置が1つだけ設定された状態で、自車両C0を早めに横方向に移動させる態様の目標走行経路RTを設定する方法としては、上述したように車両前後方向において現在位置の近くに経由位置を設定する方法を挙げることができる。この場合、経由位置が現在位置に近いほど、同現在位置から経由位置までの間で自車両C0に対して急激な姿勢角θの変化、すなわち急激な進路変更を強いるような目標走行経路RTが設定されやすい。なお、
図10に示す破線は、第1の経由位置(X11,Y11)のみが設定されており、現在位置(X0,Y0)から第1の経由位置(X11,Y11)を経由して目標位置(X2,Y2)に至る態様の目標走行経路RTAを表している。
【0070】
そして、このように自車両C0に急激な進路変更を強いる可能性があるときには、
図10に示すように、第1の経由位置(X11,Y11)に加え、目標走行経路RTAよりも横方向外側(
図10における左側)に第2の経由位置(X12,Y12)がアプリケーションによって設定されることがある。
【0071】
この場合、自動運転制御装置50では、車両前後方向(図中上下方向)において、各経由位置のうち、現在位置(X0,Y0)から離されている第2の経由位置(X12,Y12)を仮の目標位置とする。そして、
図11に示すように、現在位置(X0,Y0)から第1の経由位置(X11,Y11)を経由して第2の経由位置(X12,Y12)に達する態様の目標走行経路RTが設定される。この場合、
図6及び
図7を用いて説明した場合と同様の方法で、
図11に実線で示すような目標走行経路RTを設定することができる。
【0072】
すなわち、現在位置(X0,Y0)から第2の経由位置(X12,Y12)までの自車両C0の移動に要する時間を、第2の経由位置(X12,Y12)と目標位置(X2,Y2)との位置関係から推定し、推定した時間を到達予測時間と見なすことができる。そして、この到達予測時間を上記各関係式に適宜代入することで、
図11に実線で示すような目標走行経路RTを設定することができる。
【0073】
このような目標走行経路RTが設定されると、この目標走行経路RTに沿って自車両C0が走行するように、自車両C0のヨーイング運動が制御される。
そして、
図12に示すように、自車両C0が第1の経由位置(X11,Y11)に達すると、自動運転制御装置50では、目標走行経路RTが再設定される。すなわち、自車両C0が第1の経由位置(X11,Y11)に達すると、この第1の経由位置(X11,Y11)を自車両C0の現在位置と見なすことができる。そして、
図12に実線で示すように、第1の経由位置(X11,Y11)から仮の目標位置である第2の経由位置(X12,Y12)までの目標走行経路RTが導出される。このとき、第1の経由位置(X11,Y11)に対する第2の経由位置(X12,Y12)及び目標位置(X2,Y2)の横方向の位置関係、及び、第1の経由位置(X11,Y11)での自車両C0の姿勢角θと、第2の経由位置(X12,Y12)での自車両C0の姿勢角の予測値とのずれに相当する最終姿勢角に基づき、目標走行経路RTを導出することができる。
【0074】
なお、この場合には、
図9を用いて説明した場合と同様の方法で、
図12に実線で示すような目標走行経路RTを設定することができる。すなわち、現在位置の横方向位置に第1の経由位置の横方向位置Y11を代入し、目標位置の横方向位置に第2の経由位置の横方向位置Y12を代入することで、
図12に実線で示すような目標走行経路RTを設定することができる。
【0075】
このような目標走行経路RTが設定されると、この目標走行経路RTに沿って自車両C0が走行するように、自車両C0のヨーイング運動が制御される。
そして、
図13に示すように、自車両C0が第2の経由位置(X12,Y12)に達すると、自動運転制御装置50では、目標走行経路RTが再設定される。すなわち、自車両C0が第2の経由位置(X12,Y12)に達すると、この第2の経由位置(X12,Y12)を自車両C0の現在位置と見なすことができる。そして、
図13に実線で示すように、第2の経由位置(X12,Y12)から目標位置(X2,Y2)までの目標走行経路RTが導出される。このとき、第2の経由位置(X12,Y12)に対する目標位置(X2,Y2)の横方向の位置関係、及び、第2の経由位置(X12,Y12)での自車両C0の姿勢角θと、目標位置(X2,Y2)での最終姿勢角θendとのずれに相当する最終姿勢角に基づき、目標走行経路RTを導出することができる。
【0076】
なお、この場合には、
図9を用いて説明した場合と同様の方法で、
図13に実線で示すような目標走行経路RTを設定することができる。すなわち、現在位置の横方向位置に第2の経由位置の横方向位置Y12を代入することで、
図13に実線で示すような目標走行経路RTを設定することができる。
【0077】
このような目標走行経路RTが設定されると、この目標走行経路RTに沿って自車両C0が走行するように、自車両C0のヨーイング運動が制御される。
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
【0078】
・上記実施形態では、PCS部32などのアプリケーションから到達予測時間Tendを特定する情報が入力される場合について説明している。しかし、アプリケーションから当該情報が入力されない場合には、自動運転制御装置50で、到達予測時間Tendを演算によって求め、この演算結果を利用して横加速度プロファイルPRAyを作成し、この横加速度プロファイルPRAyを2回積分することで目標走行経路RTを導出するようにしてもよい。
【0079】
なお、自車両C0の前方に障害物がある場合の到達予測時間Tendは、自車両C0から障害物までの距離と、障害物を基準とする相対速度と、自車両C0の前後加速度(前後減速度)とを用いることで演算することができる。
【0080】
また、カーブしている道路(レーン)に沿って自車両C0を走行させるLKAの実施時における到達予測時間Tendは、自車両C0の進行方向前側に位置するレーンの境界部と自車両C0との直線距離と、同境界部を基準とする相対速度と、自車両C0の前後加速度(前後減速度)とを用いることで演算することができる。
【0081】
・上記実施形態では、支援制御用のアプリケーションから目標位置(X2,Y2)を特定する情報は入力されるものの、経由位置(X1,Y1)を特定する情報が入力されないときには、横加速度Ayを増大させてから横加速度Ayを減少させる横加速度プロファイルPRAy、又は横加速度Ayを減少させてから横加速度Ayを増大させる横加速度プロファイルPRAyが作成される。
【0082】
また、目標位置(X2,Y2)を特定する情報及び経由位置(X1,Y1)を特定する情報がアプリケーションから入力されるときには、以下に示す(A),(B)及び(C)が成立する態様の横加速度プロファイルPRAyが作成される。
(A)横加速度Ayを増大させる期間と、横加速度Ayを減少させる期間とを順番に得てから経由位置(X1,Y1)に自車両が到達すること。(又は、横加速度Ayを減少させる期間と、横加速度Ayを増大させる期間とを順番に得てから経由位置(X1,Y1)に自車両が到達すること。)
(B)自車両が経由位置(X1,Y1)に達した時点の横加速度Acを、現時点の横加速度A0と等しくすること。
(C)自車両C0が経由位置(X1,Y1)から目標位置(X2,Y2)に達するまでの間に、横加速度Ayを減少させる期間と、横加速度Ayを増大させる期間とを順番に得ること。(又は、自車両C0が経由位置(X1,Y1)から目標位置(X2,Y2)に達するまでの間に、横加速度Ayを増大させる期間と、横加速度Ayを減少させる期間とを順番に得ること。)
すなわち、経由位置(X1,Y1)が設定されているか否かによって、横加速度プロファイルの大まかなパターン(プロファイルパターン)を決めている。しかし、これに限らず、プロファイルパターンを他の方法で決めるようにしてもよい。例えば、目標位置(X2,Y2)を特定する情報を自動運転制御装置50に入力したアプリケーションの種類によって、プロファイルパターンを決めるようにしてもよい。この構成であっても、上記実施形態と同じように、目的に沿った適切な目標走行経路RTを設定することができる。
【0083】
・記憶部51に記憶されている車両の横加速度の変化量に関するパラメータは、横加速度プロファイルPRAyの作成に用いることのできるものであれば、横加速度の変化量の制限値AyL以外の他のパラメータであってもよい。
【0084】
・上記実施形態では、目標走行経路RTに沿った車両の姿勢制御を、車両の左輪と右輪との制動力差を制御し、車両のヨーイングモーメントを調整することで実現するようにしている。しかし、これに限らず、車両の姿勢角θを変更できるのであれば、上記の方法とは異なる方法で実現するようにしてもよい。例えば、他の方法としては、車両の前輪の舵角の制御によって車両のヨーイングモーメントを調整する方法、車両の後輪の舵角の制御によって車両のヨーイングモーメントを調整する方法を挙げることができる。さらには、左輪と右輪との制動力差の制御、車両の前輪の舵角の制御、及び車両の後輪の舵角の制御のうち少なくとも2つを行って車両のヨーイングモーメントを調整することで、車両の姿勢角を制御するようにしてもよい。
【0085】
・自車両C0が自動運転を行っていないときでも、アプリケーションから目標位置(X2,Y2)を特定する情報が自動運転制御装置50に入力されたときには、横加速度プロファイルPRAyを作成し、当該横加速度プロファイルPRAyを2回積分して目標走行経路RTを導出するようにしてもよい。そして、この目標走行経路RTを、自車両の運転者に案内するようにしてもよい。
【0086】
次に、上記実施形態及び別の実施形態から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ)車両の横加速度を増大させる期間を増大期間とし、横加速度を減少させる期間を減少期間とした場合、
前記プロファイル作成部は、
前記目標位置を特定する情報と前記経由位置を特定する情報とが入力されたときには、
前記増大期間及び前記減少期間の一方の期間を得てから他方の期間を得て車両が前記経由位置に達し、その後、前記他方の期間を得てから前記一方の期間を得て車両が前記目標位置に達する態様の横加速度プロファイルを作成することが好ましい。
【0087】
(ロ)前記プロファイル作成部は、
前記経由位置を特定する情報が入力されたときには、
車両が前記経由位置に達する時点の車両の横加速度が、現時点の車両の横加速度と等しくなる態様の横加速度プロファイルを作成することが好ましい。
【0088】
(ハ)前記プロファイル作成部は、
現時点の車両の姿勢角とは異なる前記最終姿勢角を特定する情報が入力されたときには、
車両が前記目標位置に達する時点での車両の横速度が、現時点の車両の横速度とは異なるように横加速度プロファイルを作成することが好ましい。