特許第6409765号(P6409765)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6409765-表面実装インダクタ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6409765
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】表面実装インダクタ
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/29 20060101AFI20181015BHJP
   H01F 17/06 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
   H01F27/29 123
   H01F27/29 F
   H01F17/06 F
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-256010(P2015-256010)
(22)【出願日】2015年12月28日
(65)【公開番号】特開2017-120809(P2017-120809A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2016年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 公一
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 昌明
【審査官】 右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−211333(JP,A)
【文献】 特開2014−225590(JP,A)
【文献】 特開2011−003761(JP,A)
【文献】 特開2009−088420(JP,A)
【文献】 特開2014−116502(JP,A)
【文献】 特開2012−009556(JP,A)
【文献】 特開平09−007878(JP,A)
【文献】 特開2003−297646(JP,A)
【文献】 特開2003−100548(JP,A)
【文献】 特開2008−283170(JP,A)
【文献】 特開2001−155938(JP,A)
【文献】 米国特許第06452473(US,B1)
【文献】 特開平08−293402(JP,A)
【文献】 特開平07−070362(JP,A)
【文献】 特開2006−114543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/29
H01F 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導線を巻回して形成したコイルと、樹脂と磁性材料を含む封止材を用いて形成され、前記コイルを内蔵する成形体を備えた表面実装インダクタにおいて、
前記コイルの引き出し端末を構成する導線の表面を前記成形体の表面に露出させ、前記コイルの引き出し端末に接続される外部端子が、その粒径が100nmよりも小さな金属微粒子を含有する第1の導電性ペーストと、前記第1の導電性ペーストの成形体への密着強度よりも高い密着強度を有する金属粒子を熱硬化性樹脂に分散させた第2の導電性ペーストを有する導電ペーストで形成され、前記第1の導電性ペーストが、前記成形体の前記コイルの引き出し端末が露出している面に形成され、前記第2の導電性ペーストが、前記第1の導電性ペーストと接続され、かつ前記成形体の実装面に形成されたことを特徴とする表面実装インダクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導線を巻回して形成したコイルと、樹脂と磁性材料を含む封止材を用いて形成され、コイルを内蔵する成形体を備えた表面実装インダクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の表面実装インダクタに、図6に示す様に、導線を巻回してコイル61を形成し、このコイル61を樹脂と磁性粉末を含む封止材で形成された成形体62内に埋設し、コイル61を成形体62の表面に形成された外部端子64に接続したものがある(例えば、特許文献1を参照。)。この表面実装インダクタは、コイル61を内蔵する成形体62が形成され、この成形体に導電性ペーストをディップにより塗布して外部端子64が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−116708
【特許文献2】特開2013−211333
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この様な従来の面実装インダクタでは、導電性ペーストとしてAgなどの金属粒子をエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂に分散させたものが用いられる。この様な導電性ペーストは、熱硬化性樹脂の硬化による収縮応力を利用して、樹脂中に分散している金属粒子同士または金属粒子と導線とを接触させて導通させている。
従って、従来の面実装インダクタは、導線と外部端子の接合が弱いため、初期抵抗が高かった。また、従来の面実装インダクタは、熱負荷時や通電時の自己発熱により、直流抵抗が劣化するという問題があった。
【0005】
この様な問題を解決するために、導電性ペーストとして、その粒径が100nmよりも小さな金属微粒子を含有させたものを用いて外部端子を形成したものがある(例えば、特許文献2を参照。)。この様な従来の面実装インダクタでは、導電性ペーストを構成する金属微粒子が低温で焼結されるため、導線と外部端子の接合が良くなって、初期抵抗が改善され、熱負荷時や通電時の直流抵抗も改善することができた。しかしながら、この様な従来の面実装インダクタでは、樹脂を含有する成形体と外部端子の密着強度が弱く、この面実装インダクタが実装される電子機器の実装基板に取り付けた後の固着強度が劣化するという問題があった。
【0006】
本発明は、電気的特性と品質を向上させることができる表面実装インダクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、導線を巻回して形成したコイルと、樹脂と磁性材料を含む封止材を用いて形成され、該コイルを内蔵する成形体を備えた表面実装インダクタにおいて、該コイルの引き出し端末を構成する導線の表面を該成形体の表面に露出させ、該コイルの引き出し端末に接続される外部端子が、第1の導電性ペーストと、該第1の導電性ペーストの成形体への密着強度よりも高い密着強度を有する第2の導電性ペーストを有する導電ペーストで形成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、導線を巻回して形成したコイルと、樹脂と磁性材料を含む封止材を用いて形成され、該コイルを内蔵する成形体を備えた表面実装インダクタにおいて、該コイルの引き出し端末を構成する導線の表面を該成形体の表面に露出させ、該コイルの引き出し端末に接続される外部端子が、第1の導電性ペーストと、該第1の導電性ペーストの成形体への密着強度よりも高い密着強度を有する第2の導電性ペーストを有する導電ペーストで形成されるので、電気的特性と品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の表面実装インダクタの成形体の斜視図である。
図2】本発明の表面実装インダクタの第1の実施例を示す斜視図である。
図3】本発明の表面実装インダクタの第2の実施例を示す斜視図である。
図4】本発明の表面実装インダクタの第3の実施例を示す斜視図である。
図5】本発明の表面実装インダクタの第4の実施例を示す斜視図である。
図6】従来の表面実装インダクタの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の表面実装インダクタは、導線を巻回して形成したコイルと、樹脂と磁性材料を含む封止材を用いて形成され、コイルを内蔵する成形体を備える。コイルは、引き出し端末を構成する導線の表面を成形体の表面に露出させる。成形体の表面には外部端子が形成される。そして、この外部端子とコイルの引き出し端末が接続される。外部端子は、第1の導電性ペーストと、第1の導電性ペーストの成形体への密着強度よりも高い密着強度と、第1の導電性ペーストの抵抗率よりも低い抵抗率を有する第2の導電性ペーストを有する導電ペーストで形成される。
従って、本発明の表面実装インダクタは、電流密度が集中するコイルの引き出し端末と外部端子の接続部分の抵抗率を高くして外部端子に渦電流が発生するのを防止することができると共に、外部端子の成形体への密着強度を向上させることができる。
【実施例】
【0011】
以下、本発明の表面実装インダクタの実施例を図1乃至図5を参照して説明する。
図1は本発明の表面実装インダクタの成形体の斜視図、図2は本発明の表面実装インダクタの第1の実施例を示す斜視図である。
図1図2において、11はコイル、12は成形体である。
コイル11は、導線をその両端部が外周に位置するように渦巻き状に2段の外外巻きに巻回した巻回部11aと、巻回部11aから引き出された引き出し端部11bを備えた空芯コイルが形成される。導線は断面が平角状の平角線が用いられる。引き出し端部11bは、導線の両端部が巻回部11aから巻回部を挟んで対向する様に引き出される。
成形体12は、樹脂と磁性材料を含む封止材を用いてコイル11を内包する様に形成される。封止材としては、磁性材料として例えば鉄系の金属磁性粉末を、樹脂として例えばエポキシ樹脂をそれぞれ用い、これらを混合したものが用いられる。この成形体12の長さ方向の対向する側面には、コイル11の引き出し端部11bの表面が露出する。
そして、この成形体12の長さ方向の対向する側面と、実装面を構成する底面に外部端子13が形成され、コイル11の引き出し端部11bと外部端子13が接続される。外部端子13は、第1の導電性ペーストと第2の導電性ペーストを用いて形成される。第1の導電性ペーストと第2の導電性ペーストは、それぞれ銀等の金属粒子と、エポキシ樹脂などの樹脂によって形成されるが、第2の導電性ペーストの方が、成形体への密着強度が高く、かつ、抵抗率が低くなるように、第1の導電性ペーストがその粒径が100nmよりも小さな金属微粒子を含有させて形成され、第2の導電性ペーストがAgなどの金属粒子をエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂に分散させて形成される。そして、第1の導電性ペースト13aは、成形体12のコイル11の引き出し端部11bが露出している側面において、ほぼその全幅に亘って、かつ、成形体12の実装面と反対側の面に露出しない様に形成される。また、第2の導電性ペースト13bは、成形体12の実装面に、それぞれ第1の導電性ペースト13aに接続されるように形成される。この第1の導電性ペースト13aと第2の導電性ペースト13bによって、成形体12の実装面と側面に跨って、かつ、成形体12の上面(実装面と反対側の面)に露出しない様に、外部端子13がL字状に形成される。
【0012】
図3は、本発明の表面実装インダクタの第2の実施例を示す斜視図である。
コイルは、断面が平角状の導線をその両端部が外周に位置するように渦巻き状に2段の外外巻きに巻回した巻回部と、巻回部から引き出された引き出し端部31bを備えた空芯コイルが形成される。引き出し端部31bは、導線の両端部が巻回部から巻回部を挟んで対向する様に引き出される。
成形体32は、樹脂と磁性材料を含む封止材を用いてコイルを内包する様に形成される。封止材としては、磁性材料として例えば鉄系の金属磁性粉末を、樹脂として例えばエポキシ樹脂をそれぞれ用い、これらを混合したものが用いられる。この成形体32の長さ方向の対向する側面には、コイルの引き出し端部31bの表面が露出する。
そして、この成形体32の長さ方向の対向する側面と底面に外部端子33が形成され、コイルの引き出し端部31bと外部端子33が接続される。外部端子33は、第1の導電性ペーストと、第1の導電性ペーストの成形体への密着強度よりも高い密着強度と、第1の導電性ペーストの抵抗率よりも低い抵抗率を有する第2の導電性ペーストを用いて形成される。第1の導電性ペースト33aは、成形体32のコイル31の引き出し端部31bが露出している側面に、その一端がコイルの引き出し端部31b上に配置され、他端が成形体32の実装面まで延在する様にパターン状に形成される。第2の導電性ペースト33bは、成形体32のコイルの引き出し端部31bが露出している側面の第1の導電性ペースト33aが形成されていない部分において、第1の導電性ペースト33aに接した状態で、成形体32の実装面と反対側の面に露出しない様に形成されると共に、成形体32の実装面にも延在する様に形成される。この第1の導電性ペースト33aと第2の導電性ペースト33bによって、成形体32の実装面と側面に跨って、かつ、成形体32の上面(実装面と反対側の面)に露出しない様に、外部端子33がL字状に形成される。
【0013】
以上、本発明の表面実装インダクタの実施例を述べたが、本発明はこの実施例に限られるものではない。例えば、実施例では、外部端子がL字状のものを示したが、図4に示す様に、外部端子43を成形体42の長さ方向の対向する側面と上下面に亘ってコ字状に形成したり、図5に示す様に、外部端子53を成形体52の長さ方向の対向する側面とその隣接する4つの面に亘って形成したりしても良い。また、コイルの引き出し端部を成形体の実装面に引き出し、実装面にのみ外部端子を形成しても良い。
また、第1の実施例において、成形体の長さ方向の対向する側面のコイルの引き出し端末上に第1の導電性ペーストを形成し、成形体の側面のそれ以外の部分と成形体の実装面に又は、成形体の実装面と側面に第1の導電性ペーストを覆う様に第2の導電性ペーストを形成しても良い。
さらに、第1の実施例において、成形体の実装面と側面に亘って第1の導電性ペーストを形成し、この第1の導電性ペーストを覆う様に第2の導電性ペーストを形成しても良い。
またさらに、第2の実施例において、成形体の実装面と成形体の側面に、第1の導電性ペーストを覆う様に第2の導電性ペーストを形成しても良い。
さらに、第1の実施例と第2の実施例において、第1の導電性ペーストと第2の導電性ペーストの接する部分に、第1の導電性ペーストの線膨張係数、結合メカニズムと第2の導電性ペーストの線膨張係数、結合メカニズムの中間の線膨張係数、結合メカニズムを有する導電性ペーストを配置しても良い。
【符号の説明】
【0014】
11 コイル
12 成形体
図1
図2
図3
図4
図5
図6