(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記封止基材が、アルマイト処理を施されたアルミニウム箔を構成要素として含んでいることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
前記封止工程により前記積層体に前記封止部材をラミネートした後に、当該積層体の少なくとも一部に紫外線を照射させて発光パターンを形成する工程を有していることを特徴とする請求項6に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも透明基板、第1透明電極、有機層及び第2透明電極をこの順に積層した積層体並びに封止部材を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記封止部材は、少なくとも一部が着色されており、かつ、少なくとも封止基材及び接着層を有し、前記積層体は、前記第2透明電極側の面に前記封止基材が前記接着層を介してラミネートされていることで、前記封止部材により封止されていることを特徴とする。この特徴は、
下記各実施形態に係る発明に共通する技術的特徴である。
これにより、本発明は、可撓性が高く、かつ、非発光時及び非発光領域の色を種々の色にできる有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法を提供することができる。
【0021】
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から第1透明電極及び前記第2透明電極が、金属薄膜であることが好ましい。これにより、非発光時及び非発光領域の色を封止部材が着色された色に近づけることができる。また、封止部材が黒に着色されている場合は、有機EL層に含まれる金属層(第1透明電極等)による外部入射光の反射を抑えることができる。
【0022】
さらに、本発明においては、封止基材が、アルマイト処理を施されたアルミニウム箔を構成要素として含んでいることが好ましい。これにより、高温高湿度の環境下での耐久性が向上し、かつ、封止基材が黒に着色されるため、有機EL層に含まれる金属層による外部入射光の反射を抑えることができる。
【0023】
また、本発明においては、接着層が、着色料を含有していることが好ましい。これにより、非発光時及び非発光領域に種々の色を持たせることができるという効果が得られる。
【0024】
また、本発明においては、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光パターンの形状は、第1透明電極及び第2透明電極の形状と異なることが好ましい。すなわち、第1透明電極及び第2透明電極は、発光パターンの形状に限定されず、様々な形状に形成されてもよい。これにより、例えば、第1透明電極及び第2透明電極を透明基板の形状と近い形状に、かつ、べたに形成することができ、ひいては、発光時及び非発光領域の有機エレクトロルミネッセンス素子の色を、発光パターンの形状によらず均一にすることができるため、見栄えを向上させることができるという効果が得られる。
【0025】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子を製造する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法としては、有機層として、少なくとも正孔注入層、正孔輸送層、発光層を形成する有機層形成工程と、第2透明電極側の面から積層体に、少なくとも一部が着色された封止部材をラミネートする封止工程とを有する態様の製造方法であることが可撓性が高く、かつ、非発光時及び非発光領域の色を種々の色にできる有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供することができ、好ましい。
【0026】
また、本発明においては、有機層形成工程が、正孔注入層、正孔輸送層及び発光層の少なくとも一層を第1透明電極及び第2透明電極と異なる形状に形成することが好ましい。すなわち、第1透明電極及び第2透明電極は、発光パターンの形状に限定されず、様々な形状に形成されてもよい。これにより、例えば、第1透明電極及び第2透明電極を透明基板の形状と同じ形状に、かつ、べたに形成することができ、ひいては、発光時及び非発光領域の有機エレクトロルミネッセンス素子の色を、発光パターンの形状によらず均一にすることができるため、見栄えを向上させることができるという効果が得られる。
【0027】
さらに、本発明においては、前記封止工程により前記積層体に前記封止部材をラミネートした後に、当該積層体の少なくとも一部に紫外線を照射させて発光パターンを形成する工程を有していることが好ましい。これにより、黒等の色の非発光領域(背景となる領域)に対して、発光領域が発光するため、形成される発光パターンが非発光領域に対して浮かび上がって見えるという視覚的効果を得ることができる。
【0028】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0029】
(本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の概要)
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも透明基板、第1透明電極、有機層及び第2透明電極をこの順に積層した積層体並びに封止部材を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記封止部材は、少なくとも一部が着色されており、かつ、少なくとも封止基材及び接着層を有し、前記積層体は、前記第2透明電極側の面に前記封止基材が前記接着層を介してラミネートされていることで、前記封止部材により封止されていることを特徴とし、かかる構成により、可撓性が高く、かつ、非発光時及び非発光領域の色を種々の色にできる有機エレクトロルミネッセンス素子を提供できる。なお、本発明において、発光領域における発光時の色は、有機層で調整される。
【0030】
≪有機EL素子の構成≫
本発明の有機EL素子の一例を
図1に示す。
図1に示すとおり、有機EL素子1は、透明基板2上に、第1透明電極4、有機層6、第2透明電極12が順次積層された積層体にさらに、封止部材105が積層して構成されている。
【0031】
(積層体)
本発明の有機EL素子1は、少なくとも透明基板2、第1透明電極4、有機層6及び第2透明電極12がこの順に積層した積層体13を有することを特徴とする。本発明において、積層体13は、後述のように、第2透明電極12側の面に封止基材105aが接着層105bを介してラミネートされていることで、封止部材105により封止されている。
【0032】
<有機層>
本発明の有機層6の層構成の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0033】
(i)正孔注入輸送層/発光層/電子注入輸送層
(ii)正孔注入輸送層/発光層/正孔阻止層/電子注入輸送層
(iii)正孔注入輸送層/電子阻止層/発光層/正孔阻止層/電子注入輸送層
(iv)正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層
(v)正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層
(vi)正孔注入層/正孔輸送層/電子阻止層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層
【0034】
有機層6を構成する各層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法(ラングミュア−ブロジェット法)、インクジェット法、スプレー法、印刷法及びスロット型コーター法等の公知の薄膜形成法により製膜して形成することができる。
【0035】
以下、本発明の有機EL素子1を構成する各層について説明する。
【0036】
<発光層>
発光層には、ホスト化合物及び発光ドーパントが含まれていることが好ましい。
発光層に含有される発光ドーパントは、発光層の層厚方向に対し、均一な濃度で含有されていてもよく、また濃度分布を有していてもよい。
発光層の層厚は、特に制限はないが、形成する膜の均質性や、発光時に不必要な高電圧を印加するのを防止し、かつ、駆動電流に対する発光色の安定性向上の観点から、5〜200nmの範囲内に調整することが好ましく、更に好ましくは10〜100nmの範囲内に調整される。
以下、発光層に含まれるホスト化合物及びリン光ドーパントについて説明する。
【0037】
(1)ホスト化合物
本発明に用いられるホスト化合物としては、構造的には特に制限はないが、代表的にはカルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体、芳香族ボラン誘導体、含窒素複素環化合物、チオフェン誘導体、フラン誘導体及びオリゴアリーレン化合物等の基本骨格を有するものや、カルボリン誘導体やジアザカルバゾール誘導体(ここで、ジアザカルバゾール誘導体とは、カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の少なくとも一つの炭素原子が窒素原子で置換されているものを表す。)等が挙げられる。
【0038】
ホスト化合物は、単独で用いてもよいし、複数種併用して用いてもよい。
【0039】
本発明に係る発光層に用いられるホスト化合物は、低分子化合物でも、繰り返し単位をもつ高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物(蒸着重合性発光ホスト)でもよい。
【0040】
ホスト化合物としては、正孔輸送能又は電子輸送能を有しつつ、かつ、発光の長波長化を防ぎ、高Tg(ガラス転移温度)である化合物が好ましい。本発明においては、ガラス転移点が90℃以上の化合物が好ましく、更には130℃以上の化合物が優れた特性を得られることから好ましい。
ここで、ガラス転移点(Tg)とは、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS K 7121に準拠した方法により求められる値である。
【0041】
また、本発明においては、従来公知のホスト化合物を用いることもできる。
従来公知のホスト化合物の具体例としては、以下の文献に記載されている化合物を好適に用いることができる。例えば、特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報、米国特許公開第2003/0175553号明細書、米国特許公開第2006/0280965号明細書、米国特許公開第2005/0112407号明細書、米国特許公開第2009/0017330号明細書、米国特許公開第2009/0030202号明細書、米国特許公開第2005/238919号明細書、国際公開第2001/039234号、国際公開第2009/021126号、国際公開第2008/056746号、国際公開第2004/093207号、国際公開第2005/089025号、国際公開第2007/063796号、国際公開第2007/063754号、国際公開第2004/107822号、国際公開第2005/030900号、国際公開第2006/114966号、国際公開第2009/086028号、国際公開第2009/003898号、国際公開第2012/023947号、特開2008−074939号公報、特開2007−254297号公報、欧州特許第2034538号明細書等が挙げられる。
【0042】
本発明の有機EL素子1が複数の発光層を有する場合、ホスト化合物は発光層ごとに異なっていてもよいが、同一の化合物であることが生産効率上、工程管理上好ましい。
【0043】
また、ホスト化合物は、その最低励起3重項エネルギー(T1)が、2.7eVより大きいことがより高い発光効率を得られることから好ましい。
本発明でいう最低励起3重項エネルギーとは、ホスト化合物を溶媒に溶解し、液体窒素温度において観測したリン光発光スペクトルの最低振動バンド間遷移に対応する発光バンドのピークエネルギーのことをいう。
【0044】
(2)リン光発光ドーパント
本発明に用いることができるリン光発光ドーパントは、公知のものの中から選ぶことができる。例えば、元素の周期表で8族〜10族の金属を含有する錯体系化合物、好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物、若しくは白金化合物(白金錯体系化合物)、又は希土類錯体から選ぶことができる。中でも、最も好ましいのはイリジウム化合物である。
白色発光を呈する有機EL素子1を作製する場合、少なくとも緑、黄及び赤領域の発光を担う発光体としては、リン光発光材料が好ましい。
【0045】
本発明に使用できる公知のリン光発光性化合物の具体例としては、以下の文献あるいは特許に記載されている化合物等が挙げられる。
【0046】
Nature 395,151(1998)、Appl.Phys.Lett.78,1622(2001)、Adv.Mater.19,739(2007)、Chem.Mater.17,3532(2005)、Adv.Mater.17,1059(2005)、国際公開第2009/100991号、国際公開第2008/101842号、国際公開第2003/040257号、米国特許公開第2006/835469号明細書、米国特許公開第2006/0202194号明細書、米国特許公開第2007/0087321号明細書、米国特許公開第2005/0244673号明細書等に記載の化合物を挙げることができる。
【0047】
また、Inorg.Chem.40,1704(2001)、Chem.Mater.16,2480(2004)、Adv.Mater.16,2003(2004)、Angew.Chem.lnt.Ed.2006,45,7800、Appl.Phys.Lett.86,153505(2005)、Chem.Lett.34,592(2005)、Chem.Commun.2906(2005)、Inorg.Chem.42,1248(2003)、国際公開第2009/050290号、国際公開第2002/015645号、国際公開第2009/000673号、米国特許公開第2002/0034656号明細書、米国特許第7332232号明細書、米国特許公開第2009/0108737号明細書、米国特許公開第2009/0039776号、米国特許第6921915号、米国特許第6687266号明細書、米国特許公開第2007/0190359号明細書、米国特許公開第2006/0008670号明細書、米国特許公開第2009/0165846号明細書、米国特許公開第2008/0015355号明細書、米国特許第7250226号明細書、米国特許第7396598号明細書、米国特許公開第2006/0263635号明細書、米国特許公開第2003/0138657号明細書、米国特許公開第2003/0152802号明細書、米国特許第7090928号明細書等に記載の化合物を挙げることができる。
【0048】
また、Angew.Chem.lnt.Ed.47,1(2008)、Chem.Mater.18,5119(2006)、Inorg.Chem.46,4308(2007)、Organometallics 23,3745(2004)、Appl.Phys.Lett.74,1361(1999)、国際公開第2002/002714号、国際公開第2006/009024号、国際公開第2006/056418号、国際公開第2005/019373号、国際公開第2005/123873号、国際公開第2005/123873号、国際公開第2007/004380号、国際公開第2006/082742号、米国特許公開第2006/0251923号明細書、米国特許公開第2005/0260441号明細書、米国特許第7393599号明細書、米国特許第7534505号明細書、米国特許第7445855号明細書、米国特許公開第2007/0190359号明細書、米国特許公開第2008/0297033号明細書、米国特許第7338722号明細書、米国特許公開第2002/0134984号明細書、米国特許第7279704号明細書、米国特許公開第2006/098120号明細書、米国特許公開第2006/103874号明細書等に記載の化合物も挙げることができる。
【0049】
さらには、国際公開第2005/076380号、国際公開第2010/032663号、国際公開第第2008/140115号、国際公開第2007/052431号、国際公開第2011/134013号、国際公開第2011/157339号、国際公開第2010/086089号、国際公開第2009/113646号、国際公開第2012/020327号、国際公開第2011/051404号、国際公開第2011/004639号、国際公開第2011/073149号、特開2012−069737号公報、特開2009−114086号公報、特開2003−81988号公報、特開2002−302671号公報、特開2002−363552号公報等である。
【0050】
(3)蛍光発光ドーパント
蛍光発光ドーパント(蛍光性ドーパント又は蛍光発光体等ともいう。)としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素及び希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。
【0051】
<注入層:正孔注入層、電子注入層>
注入層は、必要に応じて設けることができ、正孔注入層であれば、第1透明電極4(陽極、アノード)と発光層又は正孔輸送層の間、電子注入層であれば第2透明電極12(陰極、カソード)と発光層又は電子輸送層との間に存在させても良い。
【0052】
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と発光層の間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層と電子注入層とがある。
【0053】
正孔注入層(陽極バッファー層)としては、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報及び同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層及びポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。また、特表2003−519432号公報に記載されている材料を使用することも好ましい。
【0054】
正孔注入層は、複数の材料を混合して用いてもよいが、本発明においては、単一の有機化合物を製膜することによって形成されることが好ましい。理由として、複数の材料を混合して使用する場合、混合比の生産時における変動、例えば、製膜基板面内における濃度変動等による性能変動のリスクが高くなることが挙げられる。
【0055】
正孔注入層の層厚については特に制限はないが、通常は0.1〜100nm程度の範囲内、好ましくは1〜30nmの範囲内である。
【0056】
電子注入層に好適な材料としては、電子輸送層と陰極間に設ける電子注入層においては、仕事関数3eV以下のアルカリ金属、アルカリ土類金属、及びこれらの化合物が挙げられる。アルカリ金属化合物としては、具体的には、フッ化カリウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム、酸化リチウム、リチウムキノリン錯体及び炭酸セシウム等が挙げられ、フッ化リチウム及びフッ化セシウムが好ましい。
【0057】
電子注入層の層厚については特に制限はないが、通常は0.1〜10nm程度の範囲内、好ましくは0.1〜2nmの範囲内である。
【0058】
<阻止層:正孔阻止層、電子阻止層>
阻止層は、必要に応じて設けられるものである。例えば、特開平11−204258号公報、同11−204359号公報、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層がある。
【0059】
正孔阻止層とは、広い意味では電子輸送層の機能を有し、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなる。正孔阻止層によって、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで、電子と正孔との再結合確率を向上させることができる。また、後述する電子輸送層の構成を必要に応じて、正孔阻止層として用いることができる。
正孔阻止層は、発光層に隣接して設けられていることが好ましい。
【0060】
一方、電子阻止層とは、広い意味では正孔輸送層の機能を有し、正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなる。電子阻止層によって、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで、電子と正孔との再結合確率を向上させることができる。また、後述する正孔輸送層の構成を必要に応じて電子阻止層として用いることができる。
【0061】
本発明に係る正孔阻止層及び電子阻子層の厚さとしては、好ましくは3〜100nmの範囲内であり、更に好ましくは5〜30nmの範囲内である。
【0062】
<正孔輸送層>
正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層及び電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。
正孔輸送層は、単層又は複数層設けることができる。
【0063】
正孔輸送材料としては、正孔を注入若しくは輸送する機能、又は電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物又は無機物のいずれであってもよい。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体や、導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、更には、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。
【0064】
芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル、N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD)、2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン、N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル、N,N,N−トリ(p−トリル)アミン、4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン、4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン、3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン及びN−フェニルカルバゾール、更には、米国特許第5061569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)及び特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3個スターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
【0065】
さらに、これらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、p型−Si及びp型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料及び正孔輸送材料として使用することができる。
また、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、特開2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.著文献(Applied Physics Letters 80(2002),p.139)及び特表2003−519432号公報に記載されているような、いわゆるp型半導体的性質を有するとされる正孔輸送材料を用いることもできる。本発明においては、より高効率の発光素子が得られることから、これらの材料を用いることが好ましい。
【0066】
正孔輸送層は、上記材料の1種又は2種以上からなる1層構造であってもよい。
【0067】
正孔輸送層の層厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度の範囲内、好ましくは5〜200nmの範囲内である。
【0068】
<電子輸送層>
電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する材料からなる。
電子輸送層は、単層又は複数層設けることができる。
【0069】
電子輸送層に用いられる電子輸送材料としては、第2透明電極12(陰極)を介して注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ビピリジル誘導体、フレオレニリデンメタン誘導体、カルボジイミド、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。また、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。さらに、これらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0070】
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホ基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、発光層の材料としても用いられるジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
【0071】
電子輸送層には、複数の材料を混合して用いてもよい。アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物のドーピングを行うこともできるが、本発明に係る電子輸送層は、単一の有機化合物を製膜することによって形成されることが好ましい。理由として、複数の材料を混合して使用する場合、混合比の生産時における変動、例えば、製膜基板面内における濃度変動等による性能変動のリスクが高くなることが挙げられる。
【0072】
電子輸送層に含まれる有機化合物のガラス転移温度は、110℃以上であることがより優れた高温保存性、高温プロセス安定性が得られることから好ましい。
【0073】
電子輸送層の層厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度の範囲内、好ましくは5〜200nmの範囲内である。
【0074】
<透明基板>
本発明の有機EL素子1に適用する透明基板2(基体、基板、基材、支持体ともいう。)としては、ガラス、プラスチック等の種類には特に限定はなく、また、透明であればよい。本発明の有機EL素子1は、透明基板2側から光が取り出される。好ましく用いられる透明な透明基板2としては、ガラス、石英、透明樹脂フィルムを挙げることができる。特に好ましい透明基板2は、有機EL素子1に可撓性を与えることが可能な樹脂フィルムである。本発明でいう「透明基材」とは、光波長550nmでの光透過率が50%以上である基材であり、好ましくは。70%以上であり、より好ましくは80%以上の基材である。
【0075】
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリルあるいはポリアリレート類、アートン(商品名、JSR社製)あるいはアペル(商品名、三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等が挙げられる。
【0076】
樹脂フィルムの表面には、無機物、有機物の被膜又はその両者のハイブリッド被膜が形成されていてもよく、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度が0.01g/(m
2・24h)以下のガスバリアー性フィルムであることが好ましく、更には、JIS K 7126−1992に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10
−3ml/(m
2・24h・atm)以下、及び水蒸気透過度が1×10
−3g/(m
2・24h)以下の高ガスバリアー性フィルムであることが好ましく、更には、酸素透過度が1×10
−5ml/(m
2・24h・atm)以下、及び水蒸気透過度が1×10
−5/(m
2・24h)であることが特に好ましい。
【0077】
ガスバリアー膜を形成する材料としては、水分や酸素など素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素などを用いることができる。さらに、ガスバリアー膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機材料からなる層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
【0078】
ガスバリアー膜の形成方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法及びコーティング法などを用いることができるが、特開2004−68143号公報に記載されているような大気圧プラズマ重合法によるものも好適に用いることができる。
【0079】
<第1透明電極>
第1透明電極4は、通常有機EL素子1に使用可能な全ての電極を使用することができる。具体的には、アルミニウム、銀、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/同混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属並びにITO、ZnO、TiO
2及びSnO
2等の酸化物半導体等が挙げられる。
【0080】
好ましくは、酸化物ではない金属が好ましく、中でも、銀を主成分とする金属が好ましい。その場合、
図2に示すように、第1透明電極4は、透明基板2側から、下地層4bと、この上部に成膜された電極層4aとを順に積層した2層構造であることが好ましい。このうち、電極層4aは、例えば、銀又は銀を主成分とする合金を用いて構成された層であり、下地層4bは、例えば、窒素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1種の原子を有する有機化合物を含有する層であることが好ましい。
【0081】
なお、第1透明電極4の透明とは、光波長550nmでの光透過率が50%以上であることをいう。また、電極層4aにおいて主成分とは、電極層4a中の含有量が98質量%以上であることをいう。
【0082】
(1)下地層
下地層4bは、電極層4aの透明基板2側に設けられる層である。下地層4bを構成する材料としては、特に限定されるものではなく、銀又は銀を主成分とする合金からなる電極層4aの成膜に際し、銀の凝集を抑制できるものであれば良く、例えば、窒素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1種の原子を有する有機化合物等が挙げられる。
【0083】
上記有機化合物は、1種でもよく、2種以上を混合してもよい。また、窒素原子及び硫黄原子を有していない化合物を、下地層4bの効果を阻害しない範囲で混合することも許される。
【0084】
下地層4bが、低屈折率材料(屈折率1.7未満)からなる場合、その層厚の上限としては、50nm未満である必要があり、30nm未満であることが好ましく、10nm未満であることがさらに好ましく、5nm未満であることが特に好ましい。層厚を50nm未満とすることにより、光学的ロスを最小限に抑えられる。一方、層厚の下限としては、0.05nm以上が必要であり、0.1nm以上であることが好ましく、0.3nm以上であることが特に好ましい。層厚を0.05nm以上とすることにより、下地層4bの成膜を均一とし、下地層としての上記効果(銀の凝集抑制)を発現し、薄銀電極層を均一化することができる。
【0085】
下地層4bが、高屈折率材料(屈折率1.7以上)からなる場合、その層厚の上限には特に制限はなく、層厚の下限には上記低屈折率材料からなる場合と同様である。
【0086】
ただし、単なる下地層4bの機能としては、均一な成膜が得られる必要層厚で形成されれば十分である。
【0087】
下地層4bの成膜方法としては、塗布法、インクジェット法、コーティング法、ディップ法などのウェットプロセスを用いる方法や、蒸着法(抵抗加熱、EB法など)、スパッタ法、CVD法等のドライプロセスを用いる方法等が挙げられる。中でも、蒸着法が好ましく適用される。
【0088】
以下、下地層の形成に適用が可能な、窒素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1種の原子を有する有機化合物について説明する。
【0089】
(1−1)窒素原子を有する有機化合物
窒素原子を有する有機化合物とは、融点が80℃以上であり、分子量Mwが150〜1200の範囲内である化合物であることが好ましく、銀又は銀の合金との相互作用が大きい化合物であることが好ましく、例えば、含窒素複素環化合物及びフェニル基置換アミン化合物等が挙げられる。
【0090】
また、窒素原子を有する有機化合物は、有効非共有電子対含有率[n/M](窒素原子を有する有機化合物の分子量Mに対する有効非共有電子対の数nの割合)が、2.0×10
−3以上となるように選択された化合物であり、3.9×10
−3以上であることがより好ましい。
【0091】
ここで、有効非共有電子対とは、化合物を構成する窒素原子が有する非共有電子対のうち、芳香族性に関与していない非共有電子対であることとする。
【0092】
ここでの芳香族性とは、π電子を持つ原子が環状に配列された不飽和環状構造をいい、いわゆる「ヒュッケル則」に従う芳香族性であって、環上のπ電子系に含まれる電子の数が「4n+2」(nは0以上の整数)個であることを条件としている。
【0093】
以上のような有効非共有電子対は、その非共有電子対を備えた窒素原子自体が、芳香環を構成するヘテロ原子であるか否かに関わらず、窒素原子が有する非共有電子対が芳香族性と関与しているか否かによって選択される。例えば、ある窒素原子が芳香環を構成するヘテロ原子であっても、その窒素原子が芳香族性に関与しない非共有電子対を有していれば、その非共有電子対は有効非共有電子対の一つとしてカウントされる。
【0094】
これに対して、ある窒素原子が芳香環を構成するヘテロ原子でない場合であっても、その窒素原子の非共有電子対の全てが芳香族性に関与していれば、その窒素原子の非共有電子対は有効非共有電子対としてカウントされることはない。
【0095】
なお、各化合物において、有効非共有電子対の数nは、有効非共有電子対を有する窒素原子の数と一致する。
【0096】
下地層4bが、複数の窒素原子を有する有機化合物を用いて構成されている場合、有効非共有電子対含有率[n/M]は、各化合物の混合比に基づき、混合化合物の分子量Mと有効非共有電子対の数nを算出し、この分子量Mに対しての有効非共有電子対の数nの割合を有効非共有電子対含有率[n/M]とし、この値が上述した所定範囲であることが好ましい。
【0097】
以下に、下地層4bを構成する窒素原子を有する低分子有機化合物として、上述した有効非共有電子対含有率[n/M]が2.0×10
−3以上である例示化合物No.1〜45を示すが、特にこれに限定されるものではない。なお、例示化合物No.31の銅フタロシアニンにおいては、窒素原子が有する非共有電子対のうち、銅に配位していない窒素原子の非共有電子対が有効非共有電子対としてカウントされる。
【0104】
上記例示化合物No.1〜45について、有効非共有電子対の数n、分子量M及び有効非共有電子対含有率[n/M]を表1に示す。
【0106】
(1−2)窒素原子を有するポリマー
本発明においては、窒素原子を有する有機化合物として、ポリマーを用いることもできる。
【0107】
窒素原子を有するポリマーは、重量平均分子量が1000〜1000000の範囲内であることが好ましい。
【0108】
窒素原子を有するポリマーとしては、下記一般式(P1)で表される部分構造、又は下記一般式(P2)で表される部分構造を有するポリマーであることが好ましい。
【0110】
一般式(P1)中、A
1は、2価の窒素原子含有基を表す。Y
1は、2価の有機基又は結合手を表す。n1は、重量平均分子量が1000〜1000000の範囲内となる繰り返し数を表す。
【0112】
一般式(P2)中、A
2は、1価の窒素原子含有基を表す。n2は、1以上の整数を表す。n2は、銀との相互作用性の点から1〜3の範囲内の整数であることが好ましく、合成容易性の点から1又は2であることがより好ましい。n2が2以上である場合、複数のA
2は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。A
3及びA
4は、おのおの2価の窒素原子含有基を表す。A
3及びA
4は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。n3及びn4は、それぞれ独立に、0又は1を表す。Y
2は、(n2+2)価の有機基を表す。n1は、重量平均分子量が1000〜1000000の範囲内となる繰り返し数を表す。
【0113】
上記一般式(P1)又は(P2)で表される部分構造を有するポリマーは、上記一般式(P1)又は(P2)由来の単一の構成単位のみから構成される単独重合体(ホモポリマー)であってもよいし、上記一般式(P1)又は(P2)由来の2種以上の構成単位のみから構成される共重合体(コポリマー)であってもよい。
【0114】
また、上記一般式(P1)又は(P2)で示される構造単位に加えて、更に窒素原子含有基を有さない他の構造単位を有して共重合体を形成していてもよい。
【0115】
窒素原子を有するポリマーが窒素原子含有基を有していない他の構造単位を有する場合、当該他の構造単位由来の単量体の含有量は、本発明に係る窒素原子を有するポリマーによる効果を損なわない程度であれば特に制限されないが、全構造単位由来の単量体中、好ましくは10〜75モル%の範囲内、より好ましくは20〜50モル%の範囲内である。
【0116】
一般式(P1)又は(P2)で表される部分構造を有するポリマーの末端は、特に制限されず、使用される原料(単量体)の種類によって適宜規定されるが、通常、水素原子である。
【0117】
一般式(P2)において、A
2で表される1価の窒素原子含有基は、窒素原子を有する有機基であれば特に制限されない。そのような窒素原子含有基としては、例えば、アミノ基、ジチオカルバメート基、チオアミド基、シアノ基(−CN)、イソニトリル基(−N+≡C−)、イソシアナート基(−N=C=O)、チオイソシアナート基(−N=C=S)、又は置換若しくは無置換の含窒素芳香族環を含む基が挙げられる。
【0118】
以下に、本発明に好ましく用いられる窒素原子を有するポリマーを構成するモノマーの具体例(PN1〜41)を示すが、特にこれに限定されるものではない。なお、窒素原子を有するポリマーは、下記に示すモノマーを重量平均分子量が1000〜1000000の範囲内となる範囲の繰り返し数で構成されている。
【0124】
本発明に係る窒素原子を有する低分子有機化合物及びポリマーは、公知、周知の方法で合成することができる。
【0125】
(1−3)硫黄原子を有する有機化合物
本発明に係る硫黄原子を有する有機化合物は、分子内に、スルフィド結合、ジスルフィド結合、メルカプト基、スルホン基、チオカルボニル結合等を有している。これらの中でも、スルフィド結合又はメルカプト基を有していることが好ましい。これらの硫黄原子を有する有機化合物は、例えば、特開2009−163177号公報等に記載されている。
【0126】
本発明に用いられる硫黄原子を有する有機化合物及びポリマーは、公知、周知の方法で合成することができる。
【0127】
なお、本発明に用いられる窒素原子又は硫黄原子を有するポリマーの重量平均分子量は、室温(25℃)下、下記の測定条件にて測定を行った値である。
(測定条件)
装置:東ソー高速GPC装置 HLC−8220GPC
カラム:TOSOH TSKgel Super HM−M
検出器:RI及び/又はUV
溶出液流速:0.6ml/分
温度:30℃
試料濃度:0.1質量%
試料量:100μl
検量線:標準ポリスチレンにて作製(標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=500〜1000000の範囲内の13サンプルを用いて検量線(校正曲線ともいう。)を作成し、測定対象物の重量平均分子量の算出に使用した。ここで、サンプルに用いたポリスチレンの重量平均分子量は、ほぼ等間隔に設定した。)
【0128】
(2)電極層
電極層4aは、銀又は銀を主成分とした合金を用いて構成された層であって、下地層4b上に成膜された層であることが好ましい。
【0129】
このような電極層4aの成膜方法としては、塗布法、インクジェット法、コーティング法、ディップ法等のウェットプロセスを用いる方法や、蒸着法(抵抗加熱、EB法など)、スパッタ法、CVD法等のドライプロセスを用いる方法等が挙げられる。中でも、蒸着法が好ましく適用される。
【0130】
また、電極層4aは、下地層4b上に成膜されることにより、電極層4a成膜後の高温アニール処理等がなくても十分に導電性を有することを特徴とするが、必要に応じて、成膜後に高温アニール処理等を行ったものであっても良い。
【0131】
電極層4aを構成する銀(Ag)を主成分とする合金としては、例えば、銀マグネシウム(AgMg)、銀銅(AgCu)、銀パラジウム(AgPd)、銀パラジウム銅(AgPdCu)及び銀インジウム(AgIn)等が挙げられる。
【0132】
さらに、銀に対してアルミニウム(Al)や金(Au)を2原子数%程度添加して共蒸着することも好ましい。
【0133】
以上のような電極層4aは、銀又は銀を主成分とした合金の層が、必要に応じて複数の層に分けて積層された構成であっても良い。
【0134】
さらに、この電極層4aは、厚さが5〜30nmの範囲内であることが好ましい。厚さが30nmより薄い場合には、層の吸収成分又は反射成分が少なく、第1透明電極4の透過率が大きくなる。また、厚さが5nmより厚い場合には、層の導電性を十分に確保することができる。好ましくは6〜20nmの範囲であり、さらに好ましくは6〜15nmの範囲である。
【0135】
なお、以上のような下地層4bと、この上部に成膜された電極層4aとからなる積層構造の第1透明電極4は、電極層4aの上部が保護膜で覆われていたり、別の電極層4aが積層されていたりしても良い。この場合、第1透明電極4の光透過性を損なうことのないように、保護膜及び別の電極層4aが光透過性を有することが好ましい。
【0136】
(3)第1透明電極の効果
以上のような構成の第1透明電極4は、例えば、窒素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1種の原子を有する有機化合物を用いて構成された下地層4b上に、銀又は銀を主成分とする合金からなる電極層4aを設けた構成である。これにより、下地層4bの上部に電極層4aを成膜する際には、電極層4aを構成する銀原子が下地層4bを構成する窒素原子又は硫黄原子を含んだ化合物と相互作用する。この結果、下地層4b表面において、銀原子が拡散する距離が減少し、ひいては、銀の凝集が抑えられる。
【0137】
ここで、一般的に銀を主成分とした電極層4aの成膜においては、核成長型(Volumer−Weber:VW型)で薄膜成長するため、銀粒子が島状に孤立しやすい。このため、当該電極層4aの厚さを薄くした場合、導電性を得ることが困難であり、ひいては、シート抵抗値が高くなる。従って、導電性を確保するには、電極層4aの厚さを厚くする必要があるが、厚さを厚くすると光透過率が下がるため、第1透明電極4としては不適であった。
【0138】
しかしながら、本発明に係る第1透明電極4によれば、上述したように、下地層4b上においては銀の凝集が抑えられる。このため、銀又は銀を主成分とする合金からなる電極層4aの成膜においては、単層成長型(Frank−van der Merwe:FM型)で薄膜成長するようになる。
【0139】
また、ここで、第1透明電極4の透明とは、光波長550nmでの光透過率が50%以上であることをいうが、下地層4bとして用いられる上述した各材料は、銀又は銀を主成分とする合金からなる電極層4aと比較して十分に光透過性の良好な膜である。一方、第1透明電極4の導電性は、主に、電極層4aによって確保される。従って、上述のように、銀又は銀を主成分とする合金からなる電極層4aが、より薄い厚さで導電性が確保されたものとなることにより、第1透明電極4の導電性の向上と光透過性の向上との両立を図ることが可能になるのである。また、下地層4bを設けることにより、非発光領域の有機EL素子1の色純度を向上させることができる。
【0140】
さらに、本発明に係る第1透明電極4は、銀電極での鏡面光反射が発生しない程度の範囲で、薄膜化に調整が可能であるため、発光輝度の向上に寄与することができる。
【0141】
<第2透明電極>
第2透明電極12は、有機発光層に電子を供給するカソードとして機能する電極膜であり、金属、合金、有機又は無機の導電性化合物、及びこれらの混合物が用いられる。
【0142】
第2透明電極12は、第1透明電極4と同様に、通常有機EL素子1に使用可能な全ての電極を使用することができる。具体的には、アルミニウム、銀、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/同混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物及び希土類金属並びにITO、ZnO、TiO
2及びSnO
2等の酸化物半導体等が挙げられる。
【0143】
中でも、第2透明電極12は、第1透明電極4と同様に、銀又は銀を主成分とした合金を用いて構成された層であることが好ましい。
【0144】
このような第2透明電極12の成膜方法としては、塗布法、インクジェット法、コーティング法、ディップ法等のウェットプロセスを用いる方法や、蒸着法(抵抗加熱、EB法など)、スパッタ法、CVD法等のドライプロセスを用いる方法等が挙げられる。中でも、蒸着法が好ましく適用される。
【0145】
第2透明電極12を構成する銀(Ag)を主成分とする合金としては、例えば、銀マグネシウム(AgMg)、銀銅(AgCu)、銀パラジウム(AgPd)、銀パラジウム銅(AgPdCu)及び銀インジウム(AgIn)等が挙げられる。
【0146】
さらに、銀に対してアルミニウム(Al)や金(Au)を2原子数%程度添加して共蒸着することも好ましい。
【0147】
以上のような第2透明電極12は、銀又は銀を主成分とした合金の層が、必要に応じて複数の層に分けて積層された構成であっても良い。
【0148】
さらに、この第2透明電極12は、層厚が5〜30nmの範囲内であることが好ましい。層厚が30nmより薄い場合には、層の吸収成分又は反射成分が少なく、第2透明電極12の透過率が大きくなる。また、層厚が5nmより厚い場合には、層の導電性を十分に確保することができる。好ましくは8〜20nmの範囲であり、さらに好ましくは10〜15nmの範囲である。
【0149】
なお、本発明においては、上記の第1透明電極4及び第2透明電極12が、金属薄膜であることが好ましい。これにより、非発光時及び非発光領域の色を、封止部材が着色された色に近づけることができる。また、封止部材105が黒に着色されている場合は有機EL層に含まれる金属層による外部入射光の反射を抑えることができる。
また、本発明においては、第1透明電極4及び第2透明電極12の形状は、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光パターンの形状とは異なることが好ましい。すなわち、第1透明電極4及び第2透明電極12は、発光パターンの形状に限定されず、様々な形状に形成されることができる。これにより、例えば、第1透明電極4及び第2透明電極12を透明基板の形状と近い形状に、かつ、べたに形成することができ、ひいては、発光時及び非発光領域の有機エレクトロルミネッセンス素子の色を、発光パターンの形状によらず均一にすることができるため、見栄えを向上させることができるという効果が得られる。
また、本発明においては、第1透明電極4及び第2透明電極12を銀(Ag)を用いて作製することで非発光時及び非発光領域の有機EL素子1を色純度の高い黒色とすることができるため、好ましい。
【0150】
<電極保護層>
本発明では、
図3に示すとおり、第2透明電極12に、有機又は無機の化合物を含有する電極保護層12aが積層されていることが、当該第2透明電極12の表面を平滑にし、かつ機械的な保護を十分にするため、好ましい。また、有機又は無機の化合物を含有することによって、封止部材105をラミネートする際に、固体封止されるために接着強度が高くなる。
【0151】
このような電極保護層12aは、可撓性を有することが好ましく、薄型のポリマーフィルム、又は薄型の金属フィルムを用いることができるが、前記下地層4b、又は有機発光層で用いた有機化合物を適宜選択して、前記塗布法又は蒸着法によって形成された層であることも好ましい。
【0152】
本発明に係る電極保護層12aは、金属酸化物を含有することが固体封止の観点から好ましく、当該金属酸化物の具体例としては、酸化モリブデンが挙げられる。
【0153】
本発明に係る電極保護層12aの好ましい層厚としては目的に応じて適切に設定され得るが、例えば、10nm〜10μm程度の範囲内であることが好ましく、15nm〜1μm程度の範囲内であることがより好ましく、20〜500nmの範囲であることがさらに好ましい。
【0154】
<取り出し電極>
取り出し電極は、第1透明電極4及び第2透明電極12と外部電源とを電気的に接続するものであって、その材料としては特に限定されるものではなく公知の素材を好適に使用できるが、例えば、3層構造からなるMAM電極(Mo/Al・Nd合金/Mo)等の金属膜を用いることができる。
【0155】
<補助電極>
補助電極は、第1透明電極4及び第2透明電極12の抵抗を下げる目的で設けるものであって、第1透明電極4の電極層4a及び第2透明電極12の電極層4aに接して設けられる。補助電極を形成する材料は、金、白金、銀、銅、アルミニウム等の抵抗が低い金属が好ましい。これらの金属は光透過性が低いため、光取り出し面からの発光光hの取り出しの影響のない範囲でパターン形成される。
【0156】
このような補助電極の形成方法としては、蒸着法、スパッタリング法、印刷法、インクジェット法、エアロゾルジェット法等が挙げられる。補助電極の線幅は、光を取り出す開口率の観点から50μm以下であることが好ましく、補助電極の厚さは、導電性の観点から1μm以上であることが好ましい。
【0157】
<封止部材>
本発明の有機EL素子1の封止部材105は、有機EL素子1の封止に用いられ、少なくとも一部が着色されており、かつ、少なくとも封止基材105a及び接着層105bを有する。本実施形態では、封止部材105は、封止基材105a及び接着層105bから構成される。また、封止部材105は、封止基材105aが接着層105bを介して、積層体13の第2透明電極12側の面にラミネートされる。
なお、封止部材105は、積層体13を密着して封止するようにラミネートされていれている。
【0158】
封止基材105aは、特に限定されず、公知のもので良い。具体的には、例えば、ガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・金属箔・フィルム等が挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。また、ポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。金属板としては、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブテン、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルからなる群から選ばれる1種以上の金属又は合金からなるものが挙げられる。
【0159】
また、他にも、有機EL素子1を薄膜化できるということからポリマーフィルム又は金属フィルムを好ましく使用することができる。さらには、ポリマーフィルムは、酸素透過度が1×10
−3ml/(m
2・24h・atm)以下、及び水蒸気透過度が1×10
−3g/(m
2・24h)以下のものであることが好ましい。また、酸素透過度が1×10
−5ml/(m
2・24h・atm)以下、及び水蒸気透過度が1×10
−5/(m
2・24h)であることがより好ましい。
【0160】
さらに、本発明においては、封止基材105aとして、特に、少なくとも一面(被アルマイト処理面)がアルマイト処理を施されたアルミニウム箔を構成要素として含んでいることが好ましい。
これにより、高温高湿度の環境下での耐久性が向上し、かつ、封止基材105aが黒に着色されるため、有機EL層に含まれる金属層による外部入射光の反射を抑えることができる。
【0161】
アルマイト処理は、通常、クロム酸、硫酸、シュウ酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸等の酸性浴中で行うことができるが、硫酸浴中で行うことが好ましい。硫酸浴中でのアルマイト処理は、硫酸濃度100〜200g/lの範囲内、アルミニウムイオン濃度1〜10g/lの範囲内、液温20℃、印加電圧約20Vの条件で行うことが好ましい。アルマイト処理被膜の平均膜厚は、通常、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。
【0162】
また、封止基材105aは、後述の公知の着色料によって着色されたものが用いられてもよく、例えば、カーボンブラックやピグメントブルーなどで表面が着色されたアルミニウム箔などを好適に用いることができる。これにより、非発光時及び非発光領域の色を種々の色にできる。
【0163】
接着層105b(接着剤)としては、具体的には、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型接着剤、2−シアノアクリル酸エステルなどの湿気硬化型等の接着剤を挙げることができる。また、エポキシ系などの熱及び化学硬化型(二液混合)を挙げることができる。また、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンを挙げることができる。また、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を挙げることができる。
【0164】
本発明では、特に、接着層105bが、着色料を含有していることが好ましい。着色料は、公知のものでよく、また、接着層105bに分散又は溶解可能なものであれば、顔料であっても、染料であってもよく、特に限定されない。
【0165】
本発明に係る封止部材(封止基材及び接着層)に適用可能な公知の着色料としては、具体的には、例えば、黒色の着色料として、カーボンブラック、磁性体、鉄・チタン複合酸化物ブラックなどを使用することができ、カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどが挙げられ、また磁性体としてはフェライト、マグネタイトなどが挙げられる。
また、イエローの着色料としては、染料としてC.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162など、また、顔料としてC.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185などを使用することができ、これらの混合物も使用することができる。
また、マゼンタの着色料としては、染料としてC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122など、顔料としてC.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222などを使用することができ、これらの混合物も使用することができる。
また、シアンの着色料としては、染料としてC.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95など、顔料としてC.I.ピグメントブルー1、同7、同15、同60、同62、同66、同76などを使用することができ、これらの混合物も使用することができる。
【0166】
着色料の含有割合は、接着層105b中0.5〜20質量%の範囲内であることが好ましい。
【0167】
なお、着色料としては、有機EL層に含まれる金属層による外部入射光の反射を抑える効果が得られることからカーボンブラック等の黒色の顔料が用いられることがより好ましい。
【0168】
また、有機EL素子1が熱処理により劣化する場合があるので、室温(25℃)から80℃までに接着硬化できるものが好ましい。また、接着剤中に乾燥剤を分散させておいてもよい。封止部分への接着剤の塗布は、市販のディスペンサーを使ってもよいし、スクリーン印刷のように印刷してもよい。
また、第2透明電極12あるいは電極保護層12aと、封止部材105の間に、バリアー層を設けてもよい。本発明において、バリアー層は封止部材105には含めない。
このバリアー層の材料としては、例えば水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの侵入を抑制する機能を有する無機材料であれば良く、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等を用いることができる。
バリアー層の特性として、水蒸気透過度が約0.01g/[m
2・day・atm]以下、好ましくは水蒸気透過度が約0.001g/[m
2・day・atm]以下、抵抗率が1×10
12Ω・cm以上と、ガスバリアー性と絶縁性を有するものであることが好ましい。
バリアー層の形成する方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、マグネトロンスパッタ法、分子線エピタキシー法、クラスタ−イオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法等の手法が用いられる。
なお、バリアー層の層厚は、条件に応じて適宜設定されるが、100〜1000nmが好ましい。
【0169】
≪有機EL素子の製造方法≫
本発明の、少なくとも透明基板、第1透明電極、有機層及び第2透明電極がこの順に積層した積層体並びに封止部材を有する有機EL素子1の製造方法は、有機層として、少なくとも正孔注入層、正孔輸送層、発光層を形成する有機層形成工程と、第2透明電極側の面から積層体に、少なくとも一部が着色された封止部材をラミネートする封止工程とを有する態様の製造方法であることを特徴とする。これにより、可撓性が高く、かつ、非発光時及び非発光領域の色を種々の色にできる有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供することができる。
【0170】
また、本発明の上記有機EL素子1の製造方法おいては、有機層形成工程が、正孔注入層、正孔輸送層及び発光層の少なくとも一層を第1透明電極又は第2透明電極と異なる形状に形成することが好ましい。すなわち、第1透明電極及び第2透明電極は、発光パターンの形状に限定されず、様々な形状に形成されてもよい。これにより、例えば、第1透明電極及び第2透明電極を透明基板の形状と近い形状に、かつ、べたに形成することができ、ひいては、発光時及び非発光領域の有機エレクトロルミネッセンス素子の色を、発光パターンの形状によらず均一にすることができるため、見栄えを向上させることができるという効果が得られる。
【0171】
さらに、本発明の上記有機EL素子1の製造方法おいては、前記封止工程により前記積層体に前記封止部材をラミネートした後に、当該積層体の少なくとも一部に紫外線を照射させて発光パターンを形成する工程(光照射工程)を有していることが好ましい。これにより、黒等の色の非発光領域に対して、発光領域が発光するため、形成される発光パターンが非発光領域に対して浮かび上がって見えるという視覚的効果を得ることができるという効果が得られる。
【0172】
なお、ここでいう「発光パターン」とは、有機EL素子1により表示される図案(図の柄や模様)、文字、画像等をいう。
【0173】
ここでは、一例として、
図1に示す有機EL素子1の製造方法を説明する。
【0174】
(1)積層工程
本実施形態の有機EL素子1の製造方法では、透明基板2上に、第1透明電極4、有機層6及び第2透明電極12を積層して本発明に係る積層体13を形成する工程(積層工程)を行う。
この積層工程は、有機層6として少なくとも正孔注入層、正孔輸送層、発光層を形成する有機層形成工程を有する。
【0175】
まず、透明基板2を準備し、該透明基板2上に、所望の電極物質、例えば、第1透明電極4用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは10〜200nmの範囲内の膜厚になるように、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、第1透明電極4を作製する。同時に、第1透明電極4端部に、外部電源と接続される取出し電極を蒸着法等の適宜の方法に形成する。
【0176】
(有機層形成工程)
本実施形態における有機層形成工程では、有機層6として、少なくとも正孔注入層、正孔輸送層、発光層をこの順に第1透明電極4の上に形成する。なお、本実施形態の有機層6は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層から構成されるものとする。
【0177】
これらの各層の形成は、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、蒸着法、印刷法等があるが、均質な層が得られやすく、かつ、ピンホールが生成しにくい等の点から、真空蒸着法又はスピンコート法が特に好ましい。さらに、層ごとに異なる形成法を適用してもよい。これらの各層の形成に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃の範囲内、真空度1×10
−6〜1×10
−2Paの範囲内、蒸着速度0.01〜50nm/秒の範囲内、基板温度−50〜300℃の範囲内、層厚0.1〜5μmの範囲内で、各条件を適宜選択することが望ましい。
【0178】
以上のようにして有機発光層を形成した後、この上部に第2透明電極12を、蒸着法やスパッタ法などの適宜の形成法によって形成する。この際、第2透明電極12は、有機層6によって第1透明電極4に対して絶縁状態を保ちつつ、有機層6の上方から透明基板2の周縁に端子部分を引き出した形状にパターン形成する。
【0179】
なお、積層体13を形成する際には、発光パターンが形成されるように、シャドーマスクを適宜選択して使用してもよい。
また、この場合、シャドーマスクは、同一ものが積層体13の各層を形成する際に使用されてもよいし、いずれか一層を形成する際にのみ使用されても良い。なお、シャドーマスクは、正孔注入層及び電子注入層を形成する際に使用されることが発光パターンのコントラスト(発光時、非発光時とも)を上げることができるため好ましく、さらには、正孔注入層を形成する際にのみ使用されることがより好ましい。
また、発光パターンの形成は、このシャドーマスクを用いながら積層体13を形成する方法に限定されず、たとえば、発光パターンを形成したい層を形成した後に、公知のフォトリソグラフィー法などを用いるものであってもよい。
【0180】
(2)封止工程
積層工程の後には、有機EL素子1を封止する工程(封止工程)を行う。
本発明の封止工程は、第2透明電極12側の面から前記積層体13に、少なくとも一部が着色された前記封止部材105をラミネートして有機EL素子1を封止する。
すなわち、積層体13の第2透明電極12側の面を少なくとも一部が着色された封止部材105によって固体密着封止する。
【0181】
(3)光照射工程
本実施形態における光照射工程は、積層体13の少なくとも一部に紫外線を照射(光照射)することにより有機EL素子1の発光機能を変調させて、発光パターンを形成する工程である。
ここで、光照射により発光機能を変調させるとは、光照射により、有機EL素子1を構成する正孔輸送材料等の機能を変化させることにより、当該有機EL素子1の発光機能を変化させることをいう。
【0182】
本発明の上記有機EL素子1の製造方法おいては、光照射工程は、封止工程により前記積層体13に前記封止部材105をラミネートした後に、当該積層体13の少なくとも一部に紫外線を照射させて発光パターンを形成する工程であることが好ましい。これにより、黒等の色の非発光領域に対して、発光領域が発光するため、形成される発光パターンが非発光領域に対して浮かび上がって見えるという視覚的効果を得ることができるという効果が得られる。
【0183】
光照射工程において、その光照射方法は、有機層6の所定パターン領域に所定の光照射することで当該照射部分を輝度が変化した発光領域又は非発光領域とすることができれば、いずれの方法であってもよく、特定の方法に限定されるものではない。
光照射工程において照射される光は、紫外線、可視光線又は赤外線を更に含有していてもよいが、紫外線を含むことが好ましい。
ここで、本発明において、紫外線とは、その波長がX線よりも長く、可視光線の最短波長より短い電磁波をいい、具体的には波長が1〜400nmの範囲内のものである。
【0184】
紫外線の発生手段及び照射手段は、従来公知の装置等により紫外線を発生させ、かつ、照射すればよく、特に限定されない。具体的な光源としては、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、水素(重水素)ランプ、希ガス(キセノン、アルゴン、ヘリウム、ネオンなど)放電ランプ、窒素レーザー、エキシマレーザー(XeCl,XeF,KrF,KrClなど)、水素レーザー、ハロゲンレーザー、各種可視(LD)−赤外レーザーの高調波(YAGレーザーのTHG(Third HarmonicGeneration)光など)等が挙げられる。
【0185】
このような光照射工程は、封止工程の後に行われることが好ましい。
【0186】
また、光照射工程において、光強度又は照射時間等を調整して、光照射量を変化させることにより、当該光照射量に応じて光照射部分の発光輝度を変化させることが可能である。光照射量が多いほど発光輝度は減衰し、光照射量が少ないほど発光輝度の減衰率は小さい。従って、光照射量が0、すなわち、光未照射の場合には、発光輝度は最大である。また、光照射を十分に行うことで、発光輝度が0、すなわち非発光領域とすることができる。
【0187】
以上により、所望の発光パターンを有する有機EL素子1を製造することができる。このような有機EL素子1の製造においては、1回の真空引きで一貫して有機層6から第2透明電極12まで作製するのが好ましいが、途中で真空雰囲気から透明基板2を取り出して異なる形成法を施しても構わない。その際、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行う等の配慮が必要となる。
【0188】
また、このようにして得られた有機EL素子1に直流電圧を印加する場合には、第1透明電極4と第2透明電極12とに、2〜40V程度の範囲内の電圧を印加すると発光が観測できる。また、交流電圧を印加してもよく、印加する交流の波形は任意でよい。
この際、電流は、発光パターン部分にのみ流れるため、不必要な部分にまで光を導光するLEDと比較して、消費電力を低減させることができる。
【0189】
また、シャドーマスクを用いて発光パターンを形成した後、光照射を施すことによって、発光パターンをより精緻に形成することができる。
【0190】
≪有機EL素子の用途≫
本発明の有機EL素子は、面発光体であり、各種の発光光源として用いることができる。例えば、家庭用照明や車内照明等の照明装置、時計や液晶用のバックライト、看板広告用照明、信号機の光源、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等に使用することができる。
【0191】
特に、本発明の有機EL素子は、照明用や露光光源のような一種のランプとして使用してもよいし、画像を投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用してもよい。特に本発明の有機EL素子は、トップエミッション型であるため、表示装置に用いるとコントラストが高く、優れた表示性能を実現することができる。
【0192】
動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は、単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでもよい。また、異なる発光色を有する本発明の有機EL素子を2種以上使用することにより、カラー又はフルカラー表示装置を作製することが可能である。
【実施例】
【0193】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
なお、本実施例で作製された有機EL素子101〜109は全て、
図4A〜
図4Cに示す発光領域21によって形成される発光パターンを持つ。また、以下で特に言及がない限り、積層体及び封止部材は、
図4A〜
図4Cに示す透明基板2(実線)、第1透明電極4(点線)、有機層6(一点鎖線)、第2透明電極12(破線)、封止部材105(実線)で表される形状に形成されたものとする。なお、
図4Bにおける6aは、後述のように有機層6のいずれか一層を表す。
【0194】
≪有機EL素子101の作製≫
(透明基材の準備)
可撓性透明基材として、市販のポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)基材(厚さ125μm)を選択し、当該基材上に、特開2012−116101号公報の実施例1を参照にして、ガスバリアー層を形成した。
【0195】
具体的には、両面に易接着加工された幅500mm、厚さ125μmのポリエステルフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、極低熱収PET Q83)の片面に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材OPSTAR Z7535を、塗布・乾燥後の層厚が4μmになるように塗布した後、硬化条件;1.0J/cm
2、空気雰囲気下、高圧水銀ランプ使用、乾燥条件;80℃、3分で硬化を行い、ブリードアウト防止層を形成した。
【0196】
続けて、上記樹脂基材の反対面に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材OPSTAR Z7501を、塗布・乾燥後の層厚が4μmになるように塗布した後、乾燥条件;80℃、3分で乾燥後、空気雰囲気下、高圧水銀ランプ使用、硬化条件;1.0J/cm
2で硬化を行い、平坦層を形成した。
【0197】
得られた平坦層の最大断面高さRt(p)は、JIS B 0601で規定される表面粗さで、16nmであった。
【0198】
なお、表面粗さは、SII社製のAFM(原子間力顕微鏡)SPI3800N DFMを用いて測定した。1回の測定範囲は10μm×10μmとし、測定箇所を変えて3回の測定を行い、それぞれの測定で得られたRtの値を平均したものを測定値とした。
【0199】
上記のように作製した樹脂基材の厚さは、133μmであった。
【0200】
次いで、樹脂基材の平坦層表面に、無機前駆体化合物を含有する塗布液を、減圧押し出し方式のコーターを用いて、乾燥層厚が150nmとなるように、1層目のガスバリアー層を塗布した。
【0201】
無機前駆体化合物を含有する塗布液は、無触媒のパーヒドロポリシラザン20質量%ジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製アクアミカ NN120−20)とアミン触媒を固形分の5質量%含有するパーヒドロポリシラザン20質量%ジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製アクアミカ NAX120−20)とを混合して用い、アミン触媒を固形分の1質量%に調整した後、さらに、ジブチルエーテルで希釈することにより5質量%ジブチルエーテル溶液として作製した。
【0202】
塗布後、乾燥温度80℃、乾燥時間300秒、乾燥雰囲気の露点5℃の条件下で乾燥させた。
【0203】
乾燥後、樹脂基材を25℃まで徐冷し、真空紫外線照射装置内で、塗布面に真空紫外線照射による改質処理を行った。真空紫外線照射装置の光源としては、172nmの真空紫外線を照射する二重管構造を有するXeエキシマーランプを用いた。
【0204】
〈改質処理装置〉
株式会社エム・ディ・コム製エキシマー照射装置MODEL:MECL−M−1−200、波長172nm、ランプ封入ガス Xe
〈改質処理条件〉
エキシマー光強度 3J/cm
2(172nm)
ステージ加熱温度 100℃
照射装置内の酸素濃度 1000ppm
改質処理後、ガスバリアー層を形成した基材を、上記と同様にして乾燥させ、さらに、同条件にて2回目の改質処理を行い、乾燥層厚150nmのガスバリアー層を形成した。
【0205】
次いで、1層目のガスバリアー層と同様にして、1層目のガスバリアー層上に2層目のガスバリアー層を形成し、ガスバリアー層を有するPETフィルムを作製した。
【0206】
上記のガスバリアー層付PETフィルムを50mm×50mmのサイズに断裁し、テフロン(登録商標)枠に固定(張力100N/m相当)し、以下の操作を行った。
【0207】
(内部光取出し層の作製)
有機EL素子101は内部光取り出し層は形成せず、下記第1透明電極、第2透明電極及び有機層を直接前記PET基材上に形成した。
【0208】
(第1透明電極の作製)
第1透明電極として、上記透明基板に対し、フォトリソグラフィー法によって、
図4Aに示す第1透明電極4の形状にパターニングを行った後、このITO透明電極を付けた透明基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った後、この透明基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
真空蒸着装置内の蒸着用るつぼの各々に、各層の構成材料を最適の量で充填した。蒸着用るつぼは、モリブデン製又はタングステン製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
【0209】
真空度1×10
−4Paまで減圧した後、
図4Aに示す有機層6の形状にパターニングできるシャドーマスクを用い、化合物M−4の入った蒸着用るつぼに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で透明基板に蒸着し、厚さ15nmの正孔注入層を設けた。
次いで、化合物M−2を同様にして蒸着し、厚さ40nmの正孔輸送層を設けた。
次いで、下記化合物BD−1及び化合物H−1を用い、化合物BD−1が5%の濃度、化合物H−1が95%の濃度になるように蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、厚さ15nmの青色発光を呈する蛍光発光層を設けた。
次いで、下記化合物GD−1、化合物RD−1及び化合物H−2を用い、化合物GD−1が17%の濃度、RD−1が0.8%の濃度、化合物H−2が82.2%の濃度となるように蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、厚さ15nmの黄色を呈するリン光発光層を設けた。
次いで、化合物E−1を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着して、厚さ30nmの電子輸送層を形成した。
【0210】
【化14】
【0211】
【化15】
【0212】
【化16】
【0213】
さらに、LiFからなる電子注入層を厚さ1.5nmで形成した後に、続けて、アルミニウムを1nm成膜した。さらに、5×10
−4Paの真空下で、第2透明電極を形成する材料として銀(Ag)を使用し、取り出し電極を有するように抵抗加熱蒸着にて、厚さ10nmの第2透明電極を形成した。
【0214】
(封止)
さらに、透明基板上に形成されている積層体に対し、特開2002−319485号公報の実施例に記載の方法(特開2002−319485号公報の段落0018〜0022までの本発明例1に関する記載を参照。)で缶封止を行い、有機EL素子101を作製した。
【0215】
≪有機EL素子102の作製≫
有機EL素子101の作製において、封止を、下記のように行った以外は、同様にして有機EL素子102の作製した。
【0216】
(封止)
<接着剤組成物の調製>
ポリイソブチレン系樹脂(A)として「オパノールB50(BASF製、Mw:34万)」100質量部、ポリブテン樹脂(B)として「日石ポリブテン グレードHV−1900(新日本石油社製、Mw:1900)」30質量部、ヒンダードアミン系光安定剤(C)として「TINUVIN765(BASF・ジャパン製、3級のヒンダードアミン基を有する)」0.5質量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)として「IRGANOX1010(BASF・ジャパン製、ヒンダードフェノール基のβ位が二つともターシャリーブチル基を有する)」0.5質量部、及び環状オレフィン系重合体(E)として「Eastotac H−100L Resin(イーストマンケミカル.Co.製)」50質量部を、トルエンに溶解し、固形分濃度約25質量%の接着剤組成物を調製した。
【0217】
<封止部材の作製>
まず、厚さ100μmのアルミニウム(Al)箔が張り合わされた厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの、アルミニウム箔側の面をカーボンブラックで着色し、封止基材を作製した。次に、調製した上記接着剤組成物の溶液を乾燥後に形成される接着層の厚さが20μmとなるように封止基材のアルミニウム側(ガスバリアー層側)に塗工し、120℃で2分間乾燥させて接着層を形成した。次に、形成した接着層面に対して、剥離シートとして、厚さ38μmの剥離処理をしたポリエチレンテレフタレートフィルムの剥離処理面を貼付して、封止部材を作製した。
【0218】
上述の方法で作製した封止部材を、40mm×50mmのサイズで準備し、窒素雰囲気下において、剥離シートを除去し、120℃に加熱したホットプレート上で10分間乾燥した後、室温まで低下するのを確認してから、有機発光素子の陰極を完全に覆う形でラミネートし、90℃で10分加熱し、封止した。
【0219】
≪有機EL素子103の作製≫
有機EL素子102の作製において、第1透明電極の作製を以下のようにして行った以外は、同様にして有機EL素子103を作製した。
【0220】
(第1透明電極の作製)
窒素原子を含有している化合物No.10をタンタル製の抵抗加熱ボートに入れた。これらの基板ホルダーと抵抗加熱ボートとを真空蒸着装置の第1真空槽に取り付けた。また、タングステン製の抵抗加熱ボートに銀(Ag)を入れ、真空蒸着装置の第2真空槽内に取り付けた。
【0221】
次いで、第1真空槽を4×10
−4Paまで減圧した後、化合物の入った加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒の範囲内で基板上に層厚25nmの化合物No.10で構成された下地層を設けた。
【0222】
次に、下地層まで形成した基板を真空のまま第2真空槽に移し、第2真空槽を4×10
−4Paまで減圧した後、銀の入った加熱ボートを通電して加熱した。これにより、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒の範囲内で層厚10nmの銀からなる電極層を形成した。これにより、下地層及び電極層とがこの順に積層された第1透明電極を得た。
なお、
図4Aに示す第1透明電極4の形状になるよう、蒸着時に、シャドーマスクを使用して、下地層及び電極層を形成した。
【0223】
≪有機EL素子104の作製≫
有機EL素子103の作製において、封止基材の作製を、アルミニウム箔側の面にカーボンブラックで着色する代わりに、黒アルマイト処理を施して行った以外は、同様にして有機EL素子104を作製した。
【0224】
≪有機EL素子105の作製≫
有機EL素子104の作製において、ラミネートさせる際に、粘着剤組成物の調製にカーボンブラック5.2質量部を加えた以外は、同様にして、有機EL素子105を作製した。
【0225】
≪有機EL素子106の作製≫
有機EL素子105の作製において、発光層をシャドーマスクを用いて
図4Bに示す有機層6aの形状に形成した。その他の有機層は、
図4Bに示す有機層6の形状に形成した。また、第1透明電極及び第2透明電極の形状を発光領域21の形状とせず、50mm×50mmのサイズとなるよう形成した。これら以外は、同様にして有機EL素子106を作製した。
【0226】
≪有機EL素子107の作製≫
有機EL素子106の作製において、発光層ではなく、正孔注入層をシャドーマスクを用いて
図4Bに示す有機層6aの形状に形成した以外は、同様にして有機EL素子107を作製した。
【0227】
≪有機EL素子108の作製≫
有機EL素子106の作製において、発光層ではなく、電子注入層をシャドーマスクを用いて
図4Bに示す有機層6aの形状に形成した以外は、同様にして有機EL素子108を作製した。
【0228】
≪有機EL素子109の作製≫
有機EL素子106の作製において、発光層の形成時にパターニングを行わず、下記のように封止後に、光照射によるパターニングによって
図4Cに示す発光領域21を形成をしたこと以外は同様にして有機EL素子109を作製した。
【0229】
(光照射によるパターニング)
透明基板の光取り出し側の面上に、パターンマスク及び紫外線吸収フィルター(五鈴精工硝子株式会社製)を配置した状態で減圧密着させ、UVテスター(岩崎電気株式会社製、SUV−W151:100mW/cm
2)を用いて、基板側から紫外線を3時間照射し、パターニングした。
なお、紫外線吸収フィルターは、320nm以下の波長成分の光透過率が50%以下のもの(カット波長:320nm)を用いた。
【0230】
≪評価≫
[可撓性(折り曲げ特性)]
直径5cmの円柱に100回巻き付けた後、発光画像を確認し、発光領域の面積を測定した。表2に示す数値は、ダークスポットになった発光領域の面積の割合(%)である。30%以下を合格とする。
【0231】
[高温高湿の環境下での耐性]
各有機EL素子を、85℃かつ85%RHの環境下で300時間保管した後、ダークスポットになってしまった発光領域の面積を測定した。表に示す数値は、ダークスポットになった発光領域の面積の割合(%)である。30%以下を合格とする。
【0232】
[色の測定]
色の測定:コニカミノルタ製CM−2600dにて、非発光時の発光領域と、非発光領域との色をL
*a
*b
*表色系で測定した。
なお、測定に使用した光源としてA光源(タングステン光源)を使用し、測定方法としてSCI(正反射光込み)方式を採用し、視野角は2°とした。
表2には、非発光時の発光領域の色として、L
*の値を示した。L
*は、明度を表し、その値が0であると黒色であり、100であると白色であることを意味する。なお、本実施例では、封止部材を黒に着色しており、L
*が小さいほど外部入射光の反射が少ないことを示すため、好ましい。25以下を合格とする。
色ずれは、下式のように計算されるΔE
*abによって評価を行った。ΔL
*、Δa
*及びΔb
*は、発光領域と非発光領域との色差を表す。
ΔE
*abは、20未満を合格とする。
ΔE
*ab=[(ΔL
*)
2+(Δa
*)
2+(Δb
*)
2]
1/2【0233】
【表2】
【0234】
表2に示した結果より、有機EL素子102から109は、有機EL素子101に比べて、可撓性、高温高湿の環境下での耐性、及び非発光時の色が良好なことが認められた。