(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記パッド電極部の下面が、前記支持基板上面に設けられた凹部に入り込むようにして前記パッド電極部が前記支持基板上に積層されている、請求項2に記載の弾性波装置。
前記引き出し電極部が形成されている前記積層膜の前記側面が、上方に行くに連れて前記IDT電極側に近付くように、前記支持基板上面に対して傾斜している、請求項10に記載の弾性波装置。
前記IDT電極として、複数のIDT電極が備えられており、隣り合うIDT電極同士を電気的に接続しており、かつ前記積層膜の少なくとも一部の層上に設けられた接続配線をさらに備える、請求項1〜11のいずれか1項に記載の弾性波装置。
前記支持基板の下面側に請求項1〜17のいずれか1項に記載の弾性波装置がさらに構成されており、前記支持基板に、上面側の弾性波装置と、下面側の弾性波装置とを電気的に接続している接続電極が設けられている、弾性波装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のような圧電単結晶薄膜を用いた弾性波装置では、圧電単結晶薄膜が薄く、割れやすい。他方、パッド電極には、外部接続端子として、上方から金属バンプが直接または間接に接合される。この接合時に、パッド電極には大きな圧力が加わる。また、弾性波装置を回路基板に実装するに際しては、金属バンプ側から回路基板に押し当てられる。従って、上記バンプ接合時や回路基板への実装時に、パッド電極下方において圧電単結晶薄膜が割れたり、圧電単結晶薄膜を含む積層構造において剥がれが生じ易いという問題があった。
【0007】
また、特許文献2に記載のような構造にあって、特許文献1のような圧電単結晶薄膜構造を適用した場合、実装時の熱処理などにより支持層やカバー層が収縮し、パッド電極を通じて大きな応力が圧電単結晶薄膜にかかることになる。その結果、本構造においても、圧電単結晶薄膜が割れたり、圧電単結晶薄膜を含む積層構造において剥がれが生じ易いという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、圧電薄膜の剥がれや割れが生じ難い、弾性波装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る弾性波装置は、支持基板と、上記支持基板上に積層されており、圧電薄膜を含む複数の膜を積層してなる積層膜と、上記圧電薄膜の一方面に設けられたIDT電極と、上記積層膜上に形成されており、かつ上記IDT電極に電気的に接続されている引き出し電極部と、上記引き出し電極部に連ねられているパッド電極部とを有する配線電極と、上記配線電極の上記パッド電極部の上方に位置しており、該パッド電極部に接続されている外部接続端子とを備え、上記積層膜の内、少なくとも上記圧電薄膜が、上記パッド電極部の下方には存在しないように、上記支持基板上において上記パッド電極部上に上記外部接続端子が接合されている。
【0010】
本発明に係る弾性波装置のある特定の局面では、上記パッド電極部の下方において、上記パッド電極部と上記支持基板との間の上記積層膜が実質的に除去されている。
【0011】
本発明に係る弾性波装置の他の特定の局面では、上記パッド電極部の下面が、上記支持基板上面に設けられた凹部に入り込むようにして上記パッド電極部が上記支持基板上に積層されている。
【0012】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の特定の局面では、上記圧電薄膜は、圧電単結晶薄膜である。好ましくは、上記圧電薄膜には、Feが添加されていてもよい。
【0013】
本発明に係る弾性波装置の別の特定の局面では、上記積層膜が、上記圧電薄膜の下面に接するように設けられており、かつ前記圧電薄膜を伝搬するバルク波の音速よりも、伝搬するバルク波の音速が遅い低音速膜と、上記低音速膜の下面に積層されており、前記圧電薄膜を伝搬する弾性波の音速よりも、伝搬するバルク波の音速が高い高音速膜とを有する。
【0014】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の特定の局面では、上記パッド電極部と上記支持基板との間に、上記高音速膜と上記低音速膜との積層体の内の少なくとも一部の層がさらに設けられている。
【0015】
本発明に係る弾性波装置の他の特定の局面では、上記圧電薄膜の下面に接するように設けられており、かつ上記圧電薄膜を伝搬するバルク波の音速よりも、伝搬するバルク波の音速が遅い低音速膜を有し、上記支持基板は、上記低音速膜の下面に積層されており、上記圧電薄膜を伝搬する弾性波の音速よりも、伝搬するバルク波の音速が高い高音速支持基板である。
【0016】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の特定の局面では、上記外部接続端子が、金属バンプからなる。
【0017】
本発明に係る弾性波装置のさらに別の特定の局面では、上記配線電極の上記引き出し電極部が、上記積層膜上面から上記積層膜の側面上を経て上記パッド電極部に連なっており、該引き出し電極部が形成されている上記積層膜の上記側面が、上方に行くに連れて上記IDT電極側に近付くように、上記支持基板上面に対して傾斜している。
【0018】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の特定の局面では、上記積層膜の上記引き出し電極部が設けられている上記側面に段差が設けられている。
【0019】
本発明に係る弾性波装置のさらに別の特定の局面では、上記IDT電極として、複数のIDT電極が備えられており、隣り合うIDT電極同士を電気的に接続しており、かつ上記積層膜の少なくとも一部の層上に設けられた接続配線がさらに備えられている。
【0020】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の特定の局面では、上記接続配線の下方に、上記積層膜のうち少なくとも上記圧電薄膜が存在しないように上記接続配線が設けられている。
【0021】
本発明に係る弾性波装置の別の特定の局面では、上記パッド電極部と上記支持基板との間の構造と、上記接続配線と上記支持基板との間の構造とが異なる。
【0022】
本発明に係る弾性波装置のさらに別の特定の局面では、上記IDT電極が設けられている領域を囲むように設けられており、上記支持基板上に直接または間接に積層されており、上方に開いた開口を有する支持枠と、上記支持枠の開口を閉成するように設けられた蓋材とを備え、上記外部接続端子が、上記パッド電極部の上面に接合されており、上記支持枠及び上記蓋材を貫通するように設けられたアンダーバンプメタル層と、該アンダーバンプメタル層上に接合された金属バンプとを有する。
【0023】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の特定の局面では、上記支持枠の下方に上記積層膜が存在しない。
【0024】
本発明に係る弾性波装置の他の特定の局面では、上記積層膜の少なくとも一部の層と上記蓋材とに当接するように設けられた仕切り壁がさらに備えられている。
【0025】
本発明に係る弾性波装置では、上記支持基板の下面側に、本発明に従って構成されている弾性波装置がさらに構成されており、上記支持基板に、上面側の弾性波装置と、下面側の弾性波装置とを電気的に接続している接続電極が設けられていてもよい。好ましくは、上記接続電極は、上記支持基板を貫通しているビアホール電極である。
【0026】
本発明に係る弾性波装置の製造方法は、以下の各工程を備える。
【0027】
支持基板上に圧電薄膜を含む積層膜を形成する工程。
【0028】
上記圧電薄膜の一方面にIDT電極を形成する工程。
【0029】
上記IDT電極に電気的に接続されている引き出し電極部と、パッド電極部とを有する配線電極を形成する工程。
【0030】
上記パッド電極部に電気的に接続されるように外部接続端子を形成する工程。
【0031】
上記積層膜を形成する工程において、上記圧電薄膜を形成するにあたり、圧電薄膜形成後に、該圧電薄膜のパターニングを行う。好ましくは、上記圧電薄膜のパターニングは、エッチングにより行われる。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る弾性波装置及びその製造方法によれば、パッド電極部の下方に圧電薄膜が存在しないため、外部接続端子接合時や実装時に圧電薄膜の剥がれや割れが生じ難い。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。なお、本明細書に記載の各実施形態は例示的なものであり、異なる実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることを指摘しておく。
【0035】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置の正面断面図であり、
図2はその電極構造を示す模式的平面図である。
【0036】
弾性波装置1は、支持基板2を有する。支持基板2は、本実施形態では、Siからなる。もっとも、支持基板2は、Siのような半導体に限らず、LiTaO
3のような圧電体であってもよく、あるいはSiO
2やAl
2O
3などの誘電体であってもよい。
【0037】
支持基板2上に、積層膜3が積層されている。本実施形態では、積層膜3は、下から順に、高音速膜4、低音速膜5及び圧電薄膜6を有する。高音速膜4は、圧電薄膜6を伝搬する弾性波の音速よりも、伝搬するバルク波の音速が高い材料からなる。また、低音速膜5は、伝搬するバルク波の音速が、圧電薄膜6を伝搬するバルク波の音速よりも低い材料からなる。高音速膜4及び低音速膜5は、上記音速関係を満たす適宜の材料からなる。高音速膜4は、本実施形態では、窒化ケイ素(SiN)からなる。もっとも、高音速膜4は、窒化ケイ素に限らず、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸窒化ケイ素、炭化ケイ素、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、ダイヤモンドなどの適宜の材料により形成することができる。
【0038】
低音速膜5は、本実施形態では、酸化ケイ素(SiO
2)からなる。もっとも、低音速膜5は、ガラス、酸窒化シリコン、酸化タンタル、酸化シリコンにフッ素、炭素、ホウ素などを加えた化合物などの適宜の材料により形成することができる。
【0039】
圧電薄膜6の下方に上記低音速膜5及び高音速膜4が積層されているため、弾性表面波が下方に漏洩し難く、低音速膜5までの領域に閉じ込められる。従って、弾性表面波が効率よく伝搬する。
【0040】
圧電薄膜6は、本実施形態では、LiTaO
3またはLiNbO
3のような圧電単結晶薄膜からなる。もっとも、圧電薄膜6は、圧電単結晶以外の圧電材料により形成されていてもよい。圧電単結晶からなる場合、割れや剥がれが生じやすいため、本発明がより効果的である。なお、IDT電極周期から決定される弾性波の波長をλとした場合に、圧電薄膜は、厚みが1.5λ以下の膜である。また、圧電薄膜6として、FeがドープされたLiTaO
3を用いることもできる。この場合は、圧電薄膜6の分極反転が抑制できて好ましい。
【0041】
図1に示すように、圧電薄膜6は、低音速膜5の上面の一部の領域にのみ設けられている。
【0042】
圧電薄膜6の上面には、IDT電極11が積層されている。IDT電極11は、適宜の金属もしくは合金により形成することができる。このような金属もしくは合金としては、Al、Cu、Ag、Pt、W、Au、Ag−Pd、Al−Cu、Ti、Ni,NiCrなどを挙げることができる。IDT電極11は、複数の金属膜を積層してなる積層金属膜で形成されていてもよい。
【0043】
図2に示すように、本実施形態では、IDT電極11に配線電極12が電気的に接続されている。配線電極12は引き出し電極部13と、引き出し電極部13に連ねられたパッド電極部14とを有する。
【0044】
上記配線電極12についても、Al、Cuなどの適宜の金属もしくは合金により形成することができる。
【0045】
図1に戻り、上記パッド電極部14上に、外部接続端子7が接合されている。外部接続端子7は、本実施形態では、金属のスタッドバンプからなる。本実施形態では、Auからなるスタッドバンプが用いられているが、Au以外の金属材料を用いてもよい。
【0046】
本実施形態の弾性波装置1の製造に際しては、まず支持基板2を用意する。次に、支持基板2上に、上記積層膜3を形成する。より具体的には、高音速膜4、低音速膜5及び圧電薄膜6をこの順序で形成する。圧電薄膜6の形成に際しては、圧電薄膜を形成した後にパターニングし、所定の形状の圧電薄膜6を形成する。好ましくは、パターニングをエッチングで行うことが望ましい。次に、圧電薄膜6上にIDT電極11を形成する。さらに、上記IDT電極11に電気的に接続されるように、配線電極12を形成する。しかる後、パッド電極部14上に外部接続端子7を接合する。このようにして、弾性波装置1を得ることができる。
【0047】
本実施形態では、パッド電極部14は圧電薄膜6が設けられている領域の外側に位置している。従って、パッド電極部14の下方には、圧電薄膜6が存在しない。よって、外部接続端子7を接合する際に、パッド電極部14に下方に向かう力が作用したとしても、圧電薄膜6の割れや剥がれが生じ難い。
【0048】
弾性波装置1は、いわゆるチップサイズパッケージ(CSP)部品と称されている表面実装可能な部品である。実装に際しては、回路基板上に外部接続端子7側から実装される。この実装時にも、外部接続端子7からパッド電極部14側に向かって力が作用する。弾性波装置1では、このような力が作用したとしても、やはり、圧電薄膜6における割れや剥がれが生じ難い。
【0049】
さらに、弾性波装置1に温度変化が加わり、金属からなる外部接続端子7やパッド電極部14が伸縮したとしても、圧電薄膜6の剥離や割れが生じ難い。よって、歩留まりが高く、信頼性に優れた弾性波装置1を提供することができる。
【0050】
図3は本発明の第2の実施形態に係る弾性波装置の正面断面図である。弾性波装置21は、いわゆるウエハレベルパッケージ(WLP)構造の弾性波装置である。第2の実施形態の弾性波装置21は、パッケージ構造以外の点については、第1の実施形態と同様である。従って、同一番号については同一の参照番号を付することにより、詳細な説明は省略する。
【0051】
弾性波装置21では、支持基板2上に、高音速膜4、低音速膜5及び圧電薄膜6が積層されている。すなわち、高音速膜4、低音速膜5及び圧電薄膜6を有する積層膜3が設けられている。圧電薄膜6上にIDT電極11が形成されている。IDT電極11に連なるように、配線電極12が設けられている。なお、高音速膜4に代えて、
図10に示す高音速支持基板4Aを用いて、弾性波を圧電薄膜6及び低音速膜5が積層されている部分に閉じ込めてもよい。すなわち、高音速支持基板4Aの上に低音速膜5及び圧電薄膜6を積層する構造としても同様の効果が得られる。ここで、高音速支持基板の材料としてはガラスやシリコン、アルミナ、LiTaO
3またはLiNbO
3などの圧電単結晶などが用いられる。
【0052】
本実施形態では、支持基板2上に、支持枠22が設けられている。支持枠22は、合成樹脂からなる。このような合成樹脂としては、ポリイミド樹脂などの適宜の熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0053】
支持枠22は、IDT電極11が設けられている領域を囲むように配置されている。支持枠22は、パッド電極部14を覆うように設けられている。
【0054】
支持枠22の開口を閉成するように蓋材23が設けられている。蓋材23は、エポキシ樹脂などの適宜の合成樹脂からなる。もっとも、蓋材23は、絶縁性セラミックスなどの他の絶縁性材料により形成されてもよい。
【0055】
上記支持枠22及び蓋材23を貫通するように貫通孔が設けられている。この貫通孔にアンダーバンプメタル層24が充填されている。アンダーバンプメタル層24は、Al、Cu、Ag、Pt、Au,AlCu、Ni、Pd、Snなどの適宜の金属もしくは合金により形成することができる。
【0056】
アンダーバンプメタル層24の下端は、パッド電極部14に接合されている。そして、アンダーバンプメタル層24の上端に、外部接続端子8が接合されている。外部接続端子8は、本実施形態では、半田バンプからなる。もっとも、半田以外の他の金属からなる金属バンプを用いてもよい。
【0057】
本実施形態では、上記のように、支持枠22、蓋材23、アンダーバンプメタル層24及び外部接続端子8を有するため、ウエハレベルパッケージが構成されている。実装に際しては、弾性波装置21においても、外部接続端子8側から回路基板に表面実装することができる。
【0058】
外部接続端子8としての半田バンプ接合時や回路基板への弾性波装置21の実装時には、パッド電極部14に向かう力が作用する。もっとも、本実施形態においても、パッド電極部14の下方には、圧電薄膜6が位置していない。従って、圧電薄膜6の割れや剥がれを確実に抑制することができる。
【0059】
なお、パッド電極部14のアンダーバンプメタル層24が接合されている部分が支持枠22内に位置しておればよい。従って、パッド電極部14の全領域を支持枠22が覆う必要は必ずしもない。すなわち、支持枠22は、パッド電極部14の少なくとも一部であって、アンダーバンプメタル層24が接合される領域を含むように設けられておればよい。また、第1および第2の実施形態においては、圧電薄膜6は完全に除去されていなくてもよい。すなわち、実質的に除去されていれば、本発明の効果を得ることができる。
【0060】
また、本実施形態では、上記支持枠22の下方には積層膜3が存在しない。すなわち、積層膜3は、支持枠22で囲まれた領域内に位置している。
【0061】
第1及び第2の実施形態では、圧電薄膜6が、積層膜3において、低音速膜5上の一部の領域に形成されている。このような積層膜3の形成は、適宜の薄膜形成方法を用いて行うことができる。すなわち、支持基板2上に、高音速膜4、低音速膜5及び圧電薄膜6を順次形成する。しかる後、蒸着及びリフトオフ法などによりIDT電極11を形成する。次に、圧電薄膜6をパターニングする。圧電薄膜6のパターニングは、フォトリソグラフィ法を用いて除去する部分のみ開口したレジストパターンを形成し、エッチング技術を用いて圧電薄膜の除去を行う。エッチングにはウェットエッチングやドライエッチングを用いることが可能である。ドライエッチングの反応ガスはCF
4などのフッ化炭素、CCl
4などの塩化炭素やArなどが使用可能である。
【0062】
このようにして、パッド電極部14が設けられている領域の圧電薄膜6を除去する。次に、パッド電極部14を含む配線電極12を形成する。しかる後、パッド電極部14上に外部接続端子7を形成する。第2の実施形態では、パッド電極部14を含む配線電極12を形成した後に、支持枠22及び蓋材23を形成する。しかる後、アンダーバンプメタル層24及び外部接続端子8を形成する。ここではIDT電極11を形成したのちに圧電薄膜6をパターニングしたが、この順序は逆であってもよい。
【0063】
図4は、本実施形態の第3の実施形態に係る弾性波装置31の正面断面図である。第3の実施形態の弾性波装置31では、パッド電極部14の下方に積層膜3全体が位置していない。その他の点は第1の実施形態と同様であるため、同一の参照番号を付することにより、その説明を省略する。
【0064】
図4に示すように、本実施形態では、圧電薄膜6だけでなく、高音速膜4及び低音速膜5もパッド電極部14の下方に位置していない。また、特に限定されないが、圧電薄膜6と、高音速膜4及び低音速膜5とが同じ平面形状を有している。
【0065】
本実施形態においても、パッド電極部14の下方には、圧電薄膜6が位置していないため、第1の実施形態と同様に外部接続端子7の接合時や、実装時に、圧電薄膜6の割れや剥がれが生じ難い。
【0066】
本実施形態の製造に際しては、圧電薄膜6をエッチングするに際し高音速膜4及び低音速膜5を同様にエッチングにより除去すればよい。
【0067】
本実施形態のように、積層膜3の全てが、パッド電極部14の下方に存在しないように構成されてもよい。また、少なくとも圧電薄膜6がパッド電極部14の下方に存在しなければよいため、圧電薄膜6と、高音速膜4または低音速膜5の内の一方のみとがパッド電極部14の下方に存在しない構造であってもよい。
【0068】
本実施形態のように、積層膜3全体がパッド電極部14の下方に位置しない構造では、パッド電極部14が設けられている領域の外側において、支持基板2上に積層膜3が存在しない領域が設けられていることが望ましい。その場合には、ダイシング領域においても支持基板2の上面が露出されることになるため、ダイシングが容易となる。従って、ダイシング時間の短縮及びダイシングに際しての層間剥離等が生じ難い。
【0069】
図5は、本発明の第4の実施形態に係る弾性波装置41を示す正面断面図である。弾性波装置41は、第2の実施形態と同様に、支持枠22、蓋材23、アンダーバンプメタル層24及び外部接続端子8を有するWLP構造とされていること以外は、弾性波装置31と同様である。従って、同一部分について同一の参照番号を付することにより、その説明を省略する。本実施形態においても、積層膜3全体が、パッド電極部14の下方に位置していない。従って、第3の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。なお、第3および第4の実施形態においては、積層膜3は完全に除去されていなくてもよい。すなわち、実質的に除去されていれば、本発明の効果を得ることができる。
【0070】
第1から第4の実施形態においては、多層膜構造が上から圧電薄膜/低音速膜/高音速膜という構成になっているが、
図12に示すように、高音速膜4と支持基板2の間に誘電体などからなる接合材層9があってもよい。
【0071】
図6は、本発明の第5の実施形態に係る弾性波装置の正面断面図である。弾性波装置51は、支持基板52を有する。支持基板52の上面に、第3の実施形態と同様にして、積層膜3、IDT電極11、配線電極12及び外部接続端子7が形成されている。すなわち、支持基板52と支持基板52の上面のこれらの構造により、第3の実施形態と同様の弾性波装置が形成されている。
【0072】
本実施形態では、支持基板52の下面52bにも、弾性波装置が構成されている。すなわち、支持基板52の下面52b上に、積層膜3、IDT電極11、配線電極12が設けられている。もっとも、外部接続端子7は、支持基板52の下面52b側においては設けられていない。しかしながら、支持基板52の下面52bにおいても、外部接続端子7が設けられていてもよい。支持基板52には、上面52aから、下面52bに向かって貫通しているビアホール電極53,53が設けられている。ビアホール電極53,53により、上面側のパッド電極部14と下面側のパッド電極部14とが電気的に接続されている。ビアホール電極53は、適宜の金属もしくは合金により形成することができる。
【0073】
本実施形態のように、支持基板52の下面52b側に、さらに第3の実施形態と同様の弾性波装置が構成されていてもよい。
【0074】
図7は、本発明の第6の実施形態に係る弾性波装置の正面断面図である。弾性波装置61は、第5の実施形態と同様に支持基板52及びビアホール電極53,53を有する。弾性波装置61では、支持基板52の上面52aに、第4の実施形態の弾性波装置41と同様の構造が設けられている。従って、第4の実施形態と同一部分については同一の参照番号を付することにより、その説明を省略する。
【0075】
また、本実施形態においても支持基板52の下面52b側において、上面52a側の弾性波装置と同様の弾性波装置が構成されている。もっとも、下面52b側においては、アンダーバンプメタル層24及び外部接続端子8は設けられていない。
【0076】
弾性波装置61のように、支持基板52の上面52a及び下面52bの双方においてウエハレベルパッケージ構造の弾性波装置を構成してもよい。
【0077】
なお、弾性波装置61においても、下面52b側にもアンダーバンプメタル層24及び外部接続端子8を設けてもよい。その場合には、弾性波装置61の上面及び下面のいずれ側も利用して実装することができる。
【0078】
なお、第5及び第6の実施形態の弾性波装置51,61ではビアホール電極53を用いたが、支持基板52の上面52a側と、下面52b側とを電気的に接続するには、ビアホール電極53以外の接続電極を用いてもよい。すなわち、支持基板52の側面を経由する接続電極などを用いてもよい。
【0079】
第5及び第6の実施形態の弾性波装置51,61においても、外部接続端子7,8の接合時や表面実装時に圧電薄膜6が剥がれ難く、割れ難い。また、弾性波装置51,61では、支持基板52の下面52b側にも弾性波装置を設けるため、高密度化を進めることができ、かつ電子機器の小型化を進めることが可能となる。
【0080】
弾性波装置51の製造に際しては、支持基板52の上面52a上に第3の実施形態と同様にして弾性波装置構成部分を形成した後に、支持基板52の下面52b側から貫通孔を形成し、ビアホール電極53を形成すればよい。しかる後、下面52b側において、上面52a側と同様に、弾性波装置構成部分を形成すればよい。弾性波装置61の製造に際しても、同様に、支持基板52の上面52a側を第4の実施形態と同様にして形成する。しかる後、ビアホール電極53,53を形成する。次に、支持基板52の下面52b側において、第4の実施形態と同様の方法により積層膜3、IDT電極11、配線電極12を順次形成し、支持枠22及び蓋材23を形成すればよい。
【0081】
なお、第3の実施形態の弾性波装置31では、ダイシング領域において支持基板2の上面が露出しているため、ダイシングが容易に行い得ることを説明した。このように、圧電薄膜6を含む積層膜3がダイシング領域に存在しない場合、ダイシングを容易に行うことができる。これを
図8及び
図9に示す参考例により詳細に説明する。
【0082】
図8に示す参考例の弾性波装置71では、支持基板2上に、積層膜3、IDT電極11が積層されている。支持基板2、積層膜3は第1の実施形態と同様に構成されている。すなわち、積層膜3は、高音速膜4、低音速膜5及び圧電薄膜6を有する。そして、IDT電極11が圧電薄膜6上に設けられている。IDT電極11に電気的に接続されるようにパッド電極部14が設けられている。パッド電極部14上に、外部接続端子72が設けられている。外部接続端子72は、金属バンプからなる。本参考例では、パッド電極部14の下方に圧電薄膜6は設けられているが、記号Aで示すダイシング領域には、圧電薄膜6が位置していない。すなわち、第3の実施形態の弾性波装置31と同様に、ダイシング領域Aにおいて支持基板2の上面が露出している。従って、ダイシングを容易に行うことができる。
【0083】
同様に、
図9に示す他の参考例の弾性波装置75においても、ダイシング領域Aにおいて支持基板2の上面が露出している。従って、ダイシングを容易に行い得る。なお、弾性波装置75は、WLP構造を有することを除いては、弾性波装置71と同様である。従って、支持基板2上に高音速膜4、低音速膜5及び圧電薄膜6を有する積層膜3が形成されている。積層膜3上にIDT電極11及びパッド電極部14が設けられている。このパッド電極部14を覆うように支持枠22及び蓋材23が配置されている。そして、支持枠22及び蓋材23を貫通する貫通孔にアンダーバンプメタル層24が設けられている。アンダーバンプメタル層24がパッド電極部14に接合されている。アンダーバンプメタル層24上に外部接続端子8が接合されている。
【0084】
上記参考例の弾性波装置71,75の説明から明らかなように、ダイシング領域Aにおいて、上方に圧電薄膜6が存在しない場合には、ダイシングに際しての圧電薄膜6の割れや剥がれを確実に抑制することができる。従って、積層膜3の内少なくとも圧電薄膜6がダイシング領域に存在しないことが望ましい。もっとも、より好ましくは、第3の実施形態や弾性波装置71,75のように、積層膜3の全体がダイシング領域Aに存在しないことがより一層好ましい。それによってダイシングをより一層容易に行うことができる。
【0085】
また、
図3を参照して説明したように、支持枠22の下に積層膜3や圧電薄膜6が
図3に示す実施形態では存在していなかった。
図5及び
図7に示したウエハレベルパッケージ構造の実施形態においても同様に支持枠の下方に積層膜3や圧電薄膜6が存在しない。
【0086】
図13は、本発明の第7の実施形態に係る弾性波装置の正面断面図であり、
図14は、第7の実施形態の弾性波装置における電極構造を説明するための模式的平面図である。
【0087】
第7の実施形態の弾性波装置81では、支持基板2上に積層膜3が積層されている。積層膜3は、下から順に、高音速膜4、低音速膜5及び圧電薄膜6を有する。この支持基板2及び積層膜3を構成する材料は、第1〜第6の実施形態と同様である。
【0088】
弾性波装置81が、弾性波装置21と異なるところは、圧電薄膜6上に複数のIDT電極11,11,11が設けられていることにある。
図14に模式的に示すように、圧電薄膜6上には、複数のIDT電極11,11,11が形成されている。
図14では、IDT電極が形成されている領域を矩形の枠で模式的に示している。
図14のA−A線に沿う断面に相当する図が、
図13である。
【0089】
この隣り合うIDT電極11,11同士は、接続配線82により電気的に接続されている。接続配線82は、配線電極12と同じ金属材料で構成されている。もっとも、接続配線82には、他の金属により形成されていてもよい。
【0090】
弾性波装置81のように、圧電薄膜6上に、複数のIDT電極11,11,11を形成し、それによって、フィルタ回路を形成してもよい。このように、本発明においては、圧電薄膜6上に形成されるIDT電極11の数は2以上であってもよい。
【0091】
接続配線82は、圧電薄膜6上に設けられている。弾性波装置81のその他の構成は、
図3に示した弾性波装置21と同様であるため、同一部分については同一の参照番号を付することにより、その説明を省略する。
【0092】
弾性波装置81においても、パッド電極部14の下方には、圧電薄膜6は存在しない。従って、外部接続端子8の接合時や弾性波装置81の実装時に圧電薄膜6の剥がれや割れが生じ難い。
【0093】
図15は、第7の実施形態の第1の変形例に係る弾性波装置81Aの部分切欠き正面断面図である。弾性波装置81では、パッド電極部14は、低音速膜5の上面に設けられていた。言い換えれば、パッド電極部14と支持基板2との間には、高音速膜4及び低音速膜5が存在していた。これに対して、弾性波装置81Aでは、
図15に示すように、パッド電極部14と支持基板2との間には、高音速膜4と、低音速膜5の一部の層とが存在する。言い換えれば、高音速膜4と低音速膜5の積層部分の少なくとも一部の層が、支持基板2と、パッド電極部14との間に存在する。このように、パッド電極部14と支持基板2との間には、圧電薄膜6を除いた積層膜3の少なくとも一部の層が存在していてもよい。このような構成は、パッド電極部14が形成される部分において、エッチングにより積層膜3をエッチングする際のエッチング条件を調整することにより容易に得ることができる。
【0094】
図16は、弾性波装置81の第2の変形例に係る弾性波装置81Bを示す部分切欠き正面断面図である。第2の変形例の弾性波装置81Bでは、パッド電極部14の下面と、支持基板2との間に、積層膜3のうち、高音速膜4の一部の層のみが存在している。このように、パッド電極部14と支持基板2との間には、高音速膜4の一部の層のみが存在していてもよい。
【0095】
さらに、
図17は、弾性波装置81の第3の変形例に係る弾性波装置81Cを説明するための部分切欠き正面断面図である。第3の変形例に係る弾性波装置81Cでは、支持基板2の上面に凹部2aが形成されている。パッド電極部14は、この凹部2aの内底面に当接するように設けられている。このような凹部2aは、例えば積層膜3の一部をエッチングにより除去するに際し、積層膜3を除去した後にさらにエッチングを続けることにより得ることができる。
【0096】
図15〜
図17に示したように、本発明においては、支持基板2とパッド電極部14との間に積層膜3の圧電薄膜6を除く残りの部分の少なくとも一部の層が設けられていてもよく、積層膜3全体が除去されていてもよく、さらに支持基板2の上面がオーバーエッチングなどにより凹部2aを有していてもよい。このような構成は、第7の実施形態だけでなく、第1〜第6の実施形態においても適用し得るものである。
【0097】
図18は、本発明の第8の実施形態に係る弾性波装置の正面断面図である。
【0098】
弾性波装置91は、弾性波装置81と同様に、複数のIDT電極11,11,11を有する。また、隣り合うIDT電極11,11同士が、接続配線92により接続されている。もっとも、弾性波装置91では、接続配線92の下面と、支持基板2との間に、高音速膜4及び低音速膜5の一部の層が存在する。すなわち、本実施形態では、積層膜3において、圧電薄膜6を除去するように、さらに低音速膜5の一部の層を除去するようにエッチングを行う。しかる後、接続配線92を形成する。
【0099】
また、弾性波装置91では、パッド電極部14が設けられている領域の外側においても、圧電薄膜6が除去されている。
【0100】
その他の構成は、弾性波装置91は、弾性波装置81と同様である。弾性波装置91のように、接続配線92の下方において、圧電薄膜6及び低音速膜5の一部の層を除去してもよい。
【0101】
図19は、本発明の第9の実施形態に係る弾性波装置の正面断面図である。弾性波装置101では、複数のIDT電極11,11,11が設けられているが、隣り合う1組のIDT電極11,11が接続配線82により電気的に接続されている。残りの隣り合うIDT電極11,11は、図示されていない手前側の部分で接続配線により電気的に接続されている。
図19に示す断面では、仕切り壁102が設けられている。仕切り壁102は、セラミックスまたは合成樹脂などの絶縁性材料からなる。この仕切り壁102の下端が圧電薄膜6上に接合されており、上端が蓋材23の下面に接合されている。仕切り壁102を設けることにより蓋材23の潰れを抑制することができる。
【0102】
図20は、第10の実施形態に係る弾性波装置の正面断面図である。弾性波装置111は、弾性波装置101とほぼ同様の構造を有する。もっとも、弾性波装置111では、隣り合うIDT電極11,11間を接続している接続配線92が弾性波装置91と同様に設けられている。すなわち、接続配線92は、圧電薄膜6及び低音速膜5の一部を除去するようにエッチングした後に設けられている。その他の構成は、弾性波装置111は弾性波装置101と同様である。
【0103】
図21は、第8の実施形態の第1の変形例に係る弾性波装置の部分切欠き正面断面図である。
図21に示す弾性波装置121では、引き出し電極部13及びパッド電極部14を有する配線電極12は、積層膜3の上面から支持基板2の上面に向かって延びている。言い換えれば、引き出し電極部13が積層膜3の上面から積層膜3の側面3aを経てパッド電極部14に連なっている。ここで、側面3aは、上方に行くにつれてIDT電極11側に近付くように支持基板2の上面に対して傾斜している傾斜面とされている。このように、側面3aが傾斜しているため、引き出し電極部13の側面3aへの密着性を高めることができる。加えて、引き出し電極部13において、矢印Cで示す上面部分の曲率を緩くすることができる。従って、引き出し電極部13における断線が生じ難い。好ましくは、上記傾斜面の角度Bは、85°以下、より好ましくは80°以下、さらに好ましくは60°以下である。
【0104】
弾性波装置121では、パッド電極部14は、支持基板2の上面に直接接触している。従って、パッド電極部14の下面と、引き出し電極部13の上面との間の高さ方向寸法が大きくなっている。この場合、傾斜面ではなく、積層膜3の側面が支持基板2に対して直交する方向に延びている場合には、引き出し電極部13の断線が生じ易くなるという問題がある。
【0105】
これに対して、本変形例では、矢印Cで示す部分の曲率が大きくなり、引き出し電極部13の断線を効果的に抑制することができる。
【0106】
図22は、第8の実施形態の第2の変形例を示す部分切欠き正面断面図である。本変形例の弾性波装置122では、積層膜3の側面3aに、略水平方向に延びている平坦面部を有する段差3bが設けられている。従って、引き出し電極部13が積層膜3の上面から段差3bを経て下方に至っているため、引き出し電極部13の矢印Cで示す部分の曲率を効果的に大きくすることができる。よって、引き出し電極部13の断線を効果的に抑制することができる。なお、このような積層膜3の側面の段差は2以上設けられていてもよい。
【0107】
なお、上記平坦面部は、略水平方向に延びる必要は必ずしもない。平坦面部は、側面3aの残りの部分よりも傾斜角度が小さければよい。
【0108】
なお、第1〜第6の実施形態や上記参考例では、積層膜3は、高音速膜4、低音速膜5及び圧電薄膜6を積層した構造を有していたが、本発明における積層膜3は圧電薄膜6を有する複数の膜が積層された形態である限り、積層構造は特に限定されるものではない。すなわち、圧電薄膜6に、保護膜や温度特性改善膜などの他の機能を果たす膜が積層されている積層膜であってもよい。
【0109】
例えば、
図11に示す第1の実施形態の変形例や
図12に示す第2の実施形態の変形例のように、積層膜3が、下方に誘電体膜からなる接合材層9を有していてもよい。