特許第6409795号(P6409795)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6409795紡機のドラフト装置におけるエプロンテンション装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6409795
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】紡機のドラフト装置におけるエプロンテンション装置
(51)【国際特許分類】
   D01H 5/86 20060101AFI20181015BHJP
【FI】
   D01H5/86 B
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-29861(P2016-29861)
(22)【出願日】2016年2月19日
(65)【公開番号】特開2017-145538(P2017-145538A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2017年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】林 久秋
(72)【発明者】
【氏名】三塚 尚之
【審査官】 ▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−207344(JP,A)
【文献】 特開2008−095233(JP,A)
【文献】 特開平08−041737(JP,A)
【文献】 実開昭56−011272(JP,U)
【文献】 米国特許第06332244(US,B1)
【文献】 特開平09−228164(JP,A)
【文献】 特開平02−269816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01H 1/00−17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボトムエプロンにテンションを付与するテンション付与部が先端に設けられたレバーが、ロッドに揺動可能に支持され、前記ボトムエプロンはミドルボトムローラ、エプロン案内部材及び前記テンション付与部に巻き掛けられ、前記レバーは、ねじりコイルばねにより前記ボトムエプロンにテンションを付与する方向に付勢された紡機のドラフト装置におけるエプロンテンション装置であって、
前記ロッドの長手方向に対する前記レバーの位置決めを行う位置決め係合部が、前記ロッドと前記ねじりコイルばねとの間及び前記ロッドと前記レバーとの間のいずれか一方のみに形成されていることを特徴とする紡機のドラフト装置におけるエプロンテンション装置。
【請求項2】
前記位置決め係合部は、前記ねじりコイルばねの圧入部の一部がはまり込むように、前記ロッドの外周面に設けられた凹部である請求項1に記載の紡機のドラフト装置におけるエプロンテンション装置。
【請求項3】
前記凹部は、前記ロッドの外周面に、周方向へ延びるように形成された溝である請求項2に記載の紡機のドラフト装置におけるエプロンテンション装置。
【請求項4】
前記凹部は、前記ロッドの外周面に形成された凹みであり、前記ねじりコイルばねは、前記圧入部の一部に直線部が存在し、ロッドの前記凹みの底面は、前記直線部と接触する平面に形成されている請求項2に記載の紡機のドラフト装置におけるエプロンテンション装置。
【請求項5】
前記位置決め係合部は、前記レバーに設けられ、前記ロッドに設けられた位置決め係合部としての溝や凹部を押圧する状態で設けられている請求項1に記載の紡機のドラフト装置におけるエプロンテンション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡機のドラフト装置におけるエプロンテンション装置に係り、詳しくはボトムエプロンのエプロンテンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リング精紡機においては、粗糸ボビンから供給される粗糸が、ドラフト装置でドラフトされてフロントローラから送出される。ドラフト装置として、ドラフト装置の一部であるミドルボトムローラに巻き掛けられたボトムエプロンにテンションを与えるエプロンテンション装置を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
エプロンテンション装置は、ボトムエプロンにテンションを与えるテンション付与部を先端側に有するエプロンテンションレバーを備えている。以下、エプロンテンションレバーを単にレバーと記載する。ボトムエプロンはレバーにより適切な張力を与えられながら、テンション付与部を経てボトムローラを周回している。レバーは、基端がロッドに挿通され、ロッドに圧入、係合されたねじりコイルばねによりボトムエプロンにテンションを与える方向に付勢されている。
【0004】
エプロンテンション装置は、通常、ローラスタンドに固定されたロッドに6個又は8個のレバーが所定間隔をおいて揺動可能に支持されて、1ユニットを構成している。従来、各レバーのロッドあるいは機台に対する位置決め機構はなく、通常は、作業者が目視あるいは長手方向のゲージを用いて位置決めを行う。この位置決めは、ボトムエプロンとミドルボトムローラの筋目(ドラフトローラ表面に形成された溝)やトップエプロンとの相対的な長手方向位置が一致するように行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−207344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
作業者が目視と感覚あるいは長手方向のゲージを用いて短時間で、十分な精度でレバーの位置出しをすることは非常に困難である。そのため、レバーまたはボトムエプロンと、ボトムローラの筋目との相対的な長手方向位置の不一致や、レバーまたはボトムエプロンと、トップエプロン等のトップパートとの相対的な長手方向位置の不一致が発生しうる。
【0007】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、エプロンテンション装置を構成するレバー及びねじりコイルばねを、作業者が位置調整をせずに、適正な位置に位置決めされた状態で配置することができる紡機のドラフト装置におけるエプロンテンション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する紡機のドラフト装置におけるエプロンテンション装置は、ボトムエプロンにテンションを付与するテンション付与部が先端に設けられたレバーが、ロッドに揺動可能に支持されている。前記ボトムエプロンはミドルボトムローラ、エプロン案内部材及び前記テンション付与部に巻き掛けられ、前記レバーは、ねじりコイルばねにより前記ボトムエプロンにテンションを付与する方向に付勢されている。そして、前記ロッドの長手方向に対する前記レバーの位置決めを行う位置決め係合部が、前記ロッドと前記ねじりコイルばねとの間及び前記ロッドと前記レバーとの間のいずれか一方のみに形成されている。
【0009】
この構成によれば、ボトムエプロンはボトムローラ、エプロン案内部材及びレバー先端のテンション付与部に巻き掛けられた状態で周回し、レバーがねじりコイルばねによりボトムエプロンにテンションを付与する方向に付勢されることにより、適切なテンションが付与された状態で周回する。レバーはロッドに対して長手方向に一定間隔で揺動可能に支持され、かつボトムエプロン等の部品交換の際にロッドから取り外して、再び所定位置に取り付ける(配置する)必要がある。その際、ロッドの長手方向に対するレバーの位置決めを行う位置決め係合部が、ロッドとねじりコイルばねとの間及びロッドとレバーとの間のいずれか一方のみに形成されているため、レバー及びねじりコイルばねをロッドに沿って移動させることにより、作業者が位置調整をせずにレバー及びねじりコイルばねが、適正な位置に位置決めされた状態で支持される。したがって、エプロンテンション装置を構成するレバー及びねじりコイルばねを、作業者が位置調整をせずに、適正な位置に位置決めされた状態で配置することができる。
【0010】
前記位置決め係合部は、前記ねじりコイルばねの圧入部の一部がはまり込むように、前記ロッドの外周面に設けられた凹部であってもよい。一般に、ねじりコイルばねは、ロッドに対する圧入部を備えているため、その圧入部を利用してねじりコイルばね及びレバーが、ロッドの長手方向に対して位置決めされた状態でロッドに支持される。また、位置決め係合部として前記ロッドの外周面に凸部を設ける場合に比べて、ロッドの製造が簡単である。
【0011】
前記凹部は、前記ロッドの外周面に、周方向へ延びるように形成された溝であってもよい。この構成によれば、ねじりコイルばねをロッドの長手方向に沿って移動させることで簡単に圧入部が溝に係止された状態になって位置決めされる。
【0012】
前記凹部は、前記ロッドの外周面に形成された凹みであり、前記ねじりコイルばねは、前記圧入部の一部に直線部が存在し、ロッドの前記凹みの底面は、前記直線部と接触する平面に形成されていてもよい。この構成によれば、圧入部が円弧状に形成されている場合に比べて、直線部において凹みに係合し易くなる。
【0013】
前記位置決め係合部は、前記レバーに設けられ、前記ロッドに設けられた位置決め係合部としての溝や凹部を押圧する状態で設けられていてもよい。この構成によれば、位置決め係合部がロッドとねじりコイルばねとの間に設けられた場合に比べて、位置決めが正確に行われる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、エプロンテンション装置を構成するレバー及びねじりコイルばねを、作業者が位置調整をせずに、適正な位置に位置決めされた状態で配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)はドラフト装置の部分側面図、(b)はエプロンテンション装置の部分概略斜視図。
図2】(a)はロッドに1ユニット分のレバー及びねじりコイルばねが取り付けられた状態の一部省略模式図、(b)はロッド、レバー及びねじりコイルばねの関係を示す部分平面図。
図3】(a)はロッドの部分斜視図、(b)はねじりコイルばねの拡大正面図、(c)はロッドの部分正面図。
図4】ロッドとねじりコイルばねとの関係を示す拡大部分模式断面図。
図5】(a)は別の実施形態のロッドの端部を示す概略図、(b)は別の実施形態のロッド及びねじりコイルばねの部分模式図。
図6】(a)、(b)、(c)及び(d)は別の実施形態のロッドの部分概略図。
図7】(a)は別の実施形態のロッド、レバー及びねじりコイルばねの関係を示す一部破断概略図、(b)は(a)のB−B線における一部省略断面図。(c)は別の実施形態のレバーの部分断面図。
図8】別の実施形態のロッドの部分概略図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を精紡機のドラフト装置におけるエプロンテンション装置に具体化した一実施形態を図1図4にしたがって説明する。
図1(a)に示すように、ドラフト装置11は、フロントボトムローラ12、ミドルボトムローラ13及びバックボトムローラ14を備えた3線式の構成となっている。ボトムエプロン15は、エプロン案内部材としてのボトムテンサ16と、テンショナー17を構成するレバー18のテンション付与部19と、ミドルボトムローラ13とに巻き掛けられている。
【0017】
ウエイティングアーム20にはフロントトップローラ21、ミドルトップローラ22及びバックトップローラ23が、フロントボトムローラ12、ミドルボトムローラ13及びバックボトムローラ14と対応する位置にトップローラ支持部材24を介して支持されている。ミドルトップローラ22にはトップエプロン22aが巻き掛けられている。各トップローラ21〜23は2錘1組として支持されている。
【0018】
テンショナー17は、バックボトムローラ14の後方下部に、バックボトムローラ14と平行に設けられたロッド25と、基端においてロッド25に揺動可能に支持されるとともに、ボトムエプロン15にテンションを付与するテンション付与部19が先端に設けられたレバー18とを備えている。図1(b)に示すように、レバー18は、ねじりコイルばね26によりボトムエプロン15にテンションを付与する方向(図1(a)の反時計回り方向)に付勢されている。
【0019】
図2(a)に示すように、エプロンテンション装置30は、複数のテンショナー17が一定間隔で設けられ、ロッド25は1ユニット分の数、一般に6個又は8個のレバー18を、所定間隔をおいて支持可能な長さに形成されている。レバー18は、ロッド25に揺動可能に支持されている。レバー18は、ロッド25に挿通される略コ字状の基端部18aと、基端部18aの一方から延び、先端にテンション付与部19が設けられたアーム部18bとから構成されている。各レバー18に対応してねじりコイルばね26がロッド25に挿通された状態で設けられている。図2(b)に示すように、コイルばね26は、レバー18の基端部18a間に余裕を持った状態でロッド25に支持されている。
【0020】
図3(a)に示すように、ロッド25には長手方向に延びる溝25aが全長にわたって形成されている。図3(b)に示すように、コイルばね26は、一端に圧入部26aを備え、圧入部26aの端部にはロッド25の溝25aに係合することによりねじりコイルばね26の周方向への移動を規制する係止部(爪部)26bが形成されている。コイルばね26の圧入部26aと反対側の端部にはレバー18に当接する当接部26cが形成されている。
【0021】
図3(a),(c)に示すように、ロッド25の外周面には、位置決め係合部としての凹部となる溝28が、一定間隔をおいてロッド25の周方向に延びるように形成されている。この実施形態では、溝28はロッド25のほぼ全周(溝25aを除く部分)に渡って延びるように形成されている。
【0022】
図4に示すように、溝28は、その両側面28aにおいてコイルばね26の圧入部26aと係合して、コイルばね26をロッド25の長手方向の所定位置に位置決めする。即ち、この実施形態では、圧入部26a及び溝28により位置決め係合部が構成されている。また、溝28は、紡機の稼働中の振動により圧入部26aが溝28から離脱することを規制し、作業者がコイルばね26をロッド25の長手方向へ移動させるために力を加えた際には、圧入部26aが容易に溝28から離脱可能な深さに形成されている。
【0023】
次に前記のように構成されたエプロンテンション装置30の作用を説明する。
ウエイティングアーム20が各トップローラをボトムローラ側に押圧する加圧位置(紡出位置)に配置されると、トップエプロン22aがボトムエプロン15と当接する。
【0024】
ミドルボトムローラ13の回転によりボトムエプロン15が回動される。そして、トップエプロン22aがボトムエプロン15との間の接圧によりボトムエプロン15と同期して回動され、ボトムエプロン15と共同して繊維束を移送する。
【0025】
ボトムエプロン15は、ボトムテンサ16と、レバー18のテンション付与部19と、ミドルボトムローラ13とに巻き掛けられた状態で周回し、レバー18がねじりコイルばね26によりボトムエプロン15にテンションを付与する方向に付勢されて、適切なテンションが付与された状態で周回する。
【0026】
ねじりコイルばね26は、ロッド25の長手方向に一定間隔で形成された位置決め係合部を構成する溝28に圧入部26aの一部がはまり込むことにより長手方向の位置決めがなされた状態で配置されている。レバー18はコイルばね26により長手方向の位置決めがなされた状態で、ロッド25に揺動可能に支持されている。圧入部26aが溝28から離脱するために必要な力が、精紡機の稼働時における振動によって圧入部26aに作用する力より大きくなるように溝28の深さが設定されているため、テンション付与部19を介してボトムエプロン15を案内するレバー18は、精紡機の稼動中も適正な位置に保持される。そのため、ボトムエプロン15は適正なテンションが付与された状態で、かつ、ミドルボトムローラ13の筋目との相対的な長手方向位置の不一致や、ボトムエプロン15と、トップエプロン22a等のトップパートとの相対的な長手方向位置の不一致が発生することが防止された適正な状態で周回する。
【0027】
レバー18は、ロッド25に対して長手方向に一定間隔で揺動可能に支持され、かつボトムエプロン15等の部品交換の際にロッド25から取り外して、再び所定位置に取り付ける(配置する)必要がある。そして、エプロンテンション装置30は、ロッド25に1ユニット分のテンショナー17が装備された状態で機台の所定位置に取り付けられる。そのため、作業者は、ロッド25に1ユニット分のテンショナー17を一定間隔で所定位置に取り付ける必要がある。その際、作業者は、コイルばね26に係止された状態のレバー18を、コイルばね26と共にロッド25に挿通させて、所定位置に配置する必要がある。
【0028】
作業者は、コイルばね26の係止部26bをロッド25の長手方向に延びる溝25aに係合させた状態で、レバー18をコイルばね26と共にロッド25に挿通させた後、レバー18及びねじりコイルばね26をロッド25に沿って移動させる。移動途中で、コイルばね26の圧入部26aがロッド25の周方向に延びる溝28と係合する状態になり、コイルばね26は所定位置に配置される。コイルばね26が所定位置に配置される、コ字状の基端部18a内にコイルばね26が収容されているためレバー18も所定位置に配置される。ロッド25には所定数のテンショナー17を組み付ける必要があるため、そのテンショナー17が最後のテンショナー17でない場合は、作業者は、圧入部26aが溝28から離脱するのに必要な力を加えて、レバー18及びねじりコイルばね26をロッド25に沿って再び移動させる。そして、同様の作業を繰り返してテンショナー17を所定位置に位置決めされた状態で配置する。そして、1ユニット分のテンショナー17を順次ロッド25の所定位置に位置決めされた状態で配置する。
【0029】
従来と異なり、作業者は、レバー18及びねじりコイルばね26のロッド25の長手方向に対する位置調整を行うことなく、レバー18及びねじりコイルばね26をロッド25に沿って移動させると、移動途中に圧入部26aが溝28と係合して所定位置に配置される。圧入部26aが溝28と係合してロッド25の長手方向の位置決めがされた状態から、圧入部26aを溝28から離脱させるために必要な力は、精紡機の稼働時の振動によってねじりコイルばね26に加わる力より大きければよく、作業者は容易に圧入部26aを溝28から離脱させることができる。
【0030】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)エプロンテンション装置30は、ボトムエプロン15にテンションを付与するテンション付与部19が先端に設けられたレバー18が、ロッド25に揺動可能に支持されている。ボトムエプロン15は、ミドルボトムローラ13、エプロン案内部材(ボトムテンサ16)及びテンション付与部19に巻き掛けられ、レバー18は、ねじりコイルばね26によりボトムエプロン15にテンションを付与する方向に付勢されている。そして、ロッド25の長手方向に対するレバー18の位置決めを行う位置決め係合部(圧入部26a及び溝28)が、ロッド25とねじりコイルばね26との間に形成されている。
【0031】
レバー18はロッド25に対して長手方向に一定間隔で揺動可能に支持され、かつボトムエプロン15等の部品交換の際にロッド25から取り外して、再び所定位置に取り付ける必要がある。その際、ロッド25の長手方向に対するレバー18の位置決めを行う位置決め係合部を構成する凹部(溝28)が、ロッド25とねじりコイルばね26との間に形成されている。そのため、レバー18及びねじりコイルばね26をロッド25に沿って移動させることにより、作業者が位置調整をせずにレバー18及びねじりコイルばね26が適正な位置に位置決めされた状態で支持される。したがって、エプロンテンション装置30を構成するレバー18及びねじりコイルばね26を、作業者が位置調整をせずに、適正な位置に位置決めされた状態で配置することができる。
【0032】
(2)位置決め係合部は、ロッド25の外周面にねじりコイルばね26の圧入部26aが嵌合可能に設けられた凹部(溝28)である。一般に、ねじりコイルばね26は、ロッド25に対する圧入部26aを備えているため、その圧入部26aを利用してねじりコイルばね26及びレバー18が位置決めされた状態でロッド25に固定される。また、位置決め係合部を構成する凹部に代えて凸部を設ける場合に比べて、製造が簡単である。
【0033】
(3)凹部は、ロッド25の外周面に、周方向へ延びるように形成された溝28である。この構成によれば、ねじりコイルばね26をロッド25の長手方向に沿って移動させることで簡単に圧入部26aが溝28に係合した状態になって位置決めされる。
【0034】
(4)溝28は、ロッド25のほぼ全周に渡って延びるように形成されている。溝28は、ロッド25のほぼ全周に渡って延びるように形成されている必要はないが、全周に渡って延びるように形成されている方が、圧入部26aを係止状態で保持し易い。
【0035】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ ロッド25の長手方向に対するレバー18の位置決めを行う位置決め係合部は、ロッド25の外周面に形成され、周方向に延びる状態でほぼ全周に渡って延びるように形成された溝28に限らない。例えば、ロッド25の長手方向の所定位置において周方向に延びる仮想線上に断続的に延びる複数の溝を設けたり、全周の長さより短い溝を1本設けたりしてもよい。
【0036】
図5(a)に示すように、ロッド25の全長にわたって形成された溝25aの側面に、ねじりコイルばね26の係止部26bが係止可能な凹部31を設けてもよい。この場合、係止部26bと凹部31とが、ロッド25の長手方向に対するレバー18の位置決めを行う位置決め係合部を構成する。
【0037】
図5(b)に示すように、ねじりコイルばね26は、圧入部26aの一部に直線部32が存在する形状に形成され、ロッド25の外周面には位置決め係合部として凹み33が形成されるとともに、凹み33の底面33aは、直線部32と接触する平面に形成されていてもよい。即ち、ねじりコイルばね26は、圧入部26aの一部が略D字状に形成され、ロッド25は、凹み33と対応する部分の断面形状が略D字状に形成されている。この場合、圧入部26aが円弧状に形成されている場合に比べて、圧入部26aが凹み33に係合し易くなる。この場合、直線部32及び凹み33は、ねじりコイルばね26の周方向への移動を規制する係止部と、ロッド25の長手方向に対するレバー18の位置決めを行う位置決め係合部と、ロッド25の周方向に対するレバー18の位置決めを行う位置決め係合部としての役割を果たすため、コイルばね26の係止部26b及びロッド25の長手方向全長にわたって延びる溝25aを省略してもよい。
【0038】
図6(a)に示すように、ロッド25の全長にわたって形成された溝25aの側面に、ねじりコイルばね26の係止部26bを挟むことが可能な間隔で、2個の凸部34を位置決め係合部として設けてもよい。凸部34は1個であってもよい。しかし、2個設けた方が、コイルばね26がロッド25の長手方向の何れへの位置ずれも規制することができる。
【0039】
図6(b)に示すように、ロッド25の外周面に位置決め係合部としての凸部35を、周方向に延びるように設けてもよい。凸部35は、周方向ほぼ全長に延びる状態に形成されても、複数に分割された状態に形成されてもよい。
【0040】
図6(c)に示すように、ロッド25の外周面に位置決め係合部としての凹み36を設けてもよい。また、図6(d)に示すように、ロッド25の外周面に位置決め係合部としての凸部(突起)37を設けてもよい。凹み36及び凸部37は、それぞれ周方向に複数設けてもよい。
【0041】
○ ロッド25の長手方向に対するレバー18の位置決めを行う位置決め係合部は、ロッド25とねじりコイルばね26との間に形成される代わりに、ロッド25とレバー18との間に形成されてもよい。例えば、図7(a),(b)に示すように、ロッド25の外面の所定位置に周方向に延びる溝28を設け、レバー18の基端部18aに、ロッド25が挿通される孔38に先端が突出し、かつ突出方向にばね39により付勢され、溝28と係合可能なピン40を設けてもよい。溝28及びピン40が位置決め係合部を構成する。位置決め係合部がロッド25とレバー18との間に設けられた場合は、位置決め係合部がロッド25とねじりコイルばね26との間に設けられた場合に比べて、位置決めが正確に行われる。
【0042】
図7(c)に示すように、ロッド25の長手方向に対するレバー18の位置決めを行う位置決め係合部として、ピン40に代えて孔38内に一部が突出する状態で板ばね41を設けてもよい。
【0043】
○ 位置決め係合部として、レバー18の孔38の内面に樹脂やゴムなどのエラストマーを設けてもよい。
図8に示すように、コイルばね26のレバー18に対する係止部26cと反対側に設けられた係止部26bと係合して位置決めを行う凹部42をロッド25の長手方向に沿って一定間隔で設けてもよい。コイルばね26は、圧入部26aを備えなくてもよいが、凹部42と係合する係止部26bの先端がロッド25の周面に押圧付勢された状態で、ロッド25が挿通されるように構成されている。この場合、係止部26b及び凹部42は、ロッド25の長手方向に対するレバー18の位置決めを行う位置決め係合部と、ロッド25の周方向に対するレバー18の位置決めを行う位置決め係合部としての役割を果たすため、ロッド25の長手方向全長にわたって延びる溝25aは不要となる。
【0044】
○ リング精紡機に限らず、例えば、結束紡績機等ドラフト装置を有する他の紡機に適用してもよい。
【符号の説明】
【0045】
13…ミドルボトムローラ、15…ボトムエプロン、16…エプロン案内部材としてのボトムテンサ、18…レバー、19…テンション付与部、25…ロッド、26…ねじりコイルばね、26a…圧入部、28…位置決め係合部としての凹部となる溝、30…エプロンテンション装置、31,42…位置決め係合部としての凹部、32…直線部、33,36…位置決め係合部としての凹部となる凹み、33a…底面、34,35,37…位置決め係合部としての凸部、40…位置決め係合部を構成するピン、41…位置決め係合部を構成する板ばね。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8