(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記底部の前記内面の表面方向において、前記分離領域を介して互いに隣り合う前記送信用電極の内部電極と前記浮き電極との間の間隔は、前記分離領域を介して互いに隣り合う前記共通電極の内部電極と前記浮き電極との間の間隔よりも広い、
請求項2から7のいずれかに記載の超音波センサ。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】参考技術における超音波センサを備えたセンサ装置の機能ブロックを示す図である。
【
図2】参考技術における超音波センサを示す断面図である。
【
図3】参考技術における超音波センサに備えられる圧電素子およびFPCを示す平面図である。
【
図4】参考技術における超音波センサに備えられる圧電素子(FPCを取り外した状態)を示す平面図である。
【
図5】参考技術における超音波センサに備えられる圧電素子を示す斜視図である。
【
図6】参考技術における超音波センサに備えられる圧電素子およびその内部構造を示す斜視図である。
【
図7】参考技術における超音波センサの圧電素子に備えられる電極を示す斜視図である。
【
図8】
図4中のVIII−VIII線に沿った矢視断面図である。
【
図9】
図4中のIX−IX線に沿った矢視断面図である。
【
図10】
図4中のX−X線に沿った矢視断面図である。
【
図11】参考技術における超音波センサに備えられる圧電素子の製造方法を説明するための断面図である。
【
図12】参考技術における超音波センサに備えられる圧電素子を、圧着工程において圧着する際の様子を示す断面図である。
【
図13】実施の形態1における超音波センサに備えられる圧電素子を示す断面図である。
【
図14】実施の形態1における超音波センサに備えられる圧電素子のうち、浮き電極71,73,75,77が形成された層における断面構成を示す図である。
【
図15】実施の形態1における超音波センサに備えられる圧電素子のうち、浮き電極72,74,76が形成された層における断面構成を示す図である。
【
図16】実施の形態2における超音波センサに備えられる圧電素子を示す断面図である。
【
図17】実施の形態2における超音波センサに備えられる圧電素子のうち、電極20の中間部23が形成された層における断面構成を示す図である。
【
図18】実施の形態2における超音波センサに備えられる圧電素子のうち、浮き電極72,76が形成された層における断面構成を示す図である。
【
図19】実施の形態2における超音波センサに備えられる圧電素子のうち、浮き電極74が形成された層における断面構成を示す図である。
【
図20】実施の形態3における超音波センサに備えられる圧電素子を示す断面図である。
【
図21】実施の形態3における超音波センサに備えられる圧電素子のうち、電極20の中間部23が形成された層における断面構成を示す図である。
【
図22】実施の形態3における超音波センサに備えられる圧電素子のうち、浮き電極76が形成された層における断面構成を示す図である。
【
図23】実施の形態3における超音波センサに備えられる圧電素子のうち、浮き電極74が形成された層における断面構成を示す図である。
【
図24】実施の形態3における超音波センサに備えられる圧電素子のうち、浮き電極72が形成された層における断面構成を示す図である。
【
図25】参考技術(比較例)および実施の形態1〜3に関して行った実験例を説明するための図である。
【
図26】実施の形態4における超音波センサに備えられる圧電素子を示す断面図である。
【
図27】実施の形態5における超音波センサに備えられる圧電素子を示す断面図である。
【
図28】実施の形態6における超音波センサに備えられる圧電素子を示す断面図である。
【
図29】実施の形態7における超音波センサに備えられる圧電素子を示す断面図である。
【
図30】実施の形態8における超音波センサに備えられる圧電素子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[参考技術]
本発明に基づく実施の形態について説明する前に、以下、
図1〜
図10を参照しながら参考技術における超音波センサ100についてまず説明する。参考技術の説明において、同一の部品および相当部品には同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0020】
図1は、参考技術における超音波センサ100を備えたセンサ装置1の機能ブロックを示す図である。センサ装置1は、超音波センサ100、マイコン101、メモリ102、検出回路103、信号生成回路104、電源105、および受信アンプ106を備える。超音波センサ100は、圧電素子50を備え、この圧電素子50は電極10,20,30からなる3端子構造を有している。
【0021】
マイコン101は、メモリ102に格納されているデータを読み出し、制御信号を信号生成回路104に出力する。信号生成回路104は、制御信号に基づいて直流電圧から交流電圧を生成する。交流電圧は、超音波センサ100に供給され、超音波センサ100から気中などに向けて超音波が送信(送波)される。超音波センサ100が物標からの反射波を受信した際、超音波センサ100にて発生した受波信号は電圧値として受信アンプ106に送られ、検出回路103を通してマイコン101に入力される。マイコン101により、物標の有無や移動に関する情報を把握することが可能となる。
【0022】
(超音波センサ100)
図2は、参考技術における超音波センサ100を示す断面図である。超音波センサ100は、圧電素子50、ケース60、吸音材63、接着剤64、接合剤65、シリコーン66,67、およびFPC80(Flexible Printed Circuits)を備える。ケース60は、有底筒状の形状を有する。ケース60は、たとえば、高い弾性を有し且つ軽量なアルミニウムからなる。ケース60は、このようなアルミニウムをたとえば鍛造または切削加工をすることによって作製される。
【0023】
ケース60は、円盤状の底部62と、底部62の周縁に沿って設けられた円筒状の筒状部61とを含む。底部62は、内面62Sおよび外面62Tを有する。圧電素子50は、たとえばチタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスからなる。圧電素子50は、底部62の内面62S上に配置され、接着剤64を用いて内面62Sに接合される。接着剤64は、たとえばエポキシ系接着剤である。超音波センサ100が駆動している際には、圧電素子50は、底部62とともにベンディング振動する。
【0024】
圧電素子50は、図示しない3つの電極(
図1における電極10〜30に相当する部位。詳細は後述する)を有している。
図3に示すように、FPC80の先端部80TはT字形状を有する。FPC80は、接合剤65を介してこれらの電極に電気的に接合される。接合剤65としては、たとえば金属が添加された樹脂材料が用いられる。FPC80のうちの圧電素子50に接合された部分とは反対側の部分は、ケース60の外に取り出され、信号生成回路104(
図1)および受信アンプ106(
図1)などに電気的に接続されている。
【0025】
(圧電素子50)
図3は、圧電素子50およびFPC80を示す平面図である。
図4は、圧電素子50(FPC80を取り外した状態)を示す平面図である。
図5は、圧電素子50を示す斜視図である。
図6は、圧電素子50およびその内部構造を示す斜視図である。
図7は、圧電素子50に備えられる電極10,20,30を示す斜視図である。
図8は、
図4中のVIII−VIII線に沿った矢視断面図である。
図9は、
図4中のIX−IX線に沿った矢視断面図である。
図10は、
図4中のX−X線に沿った矢視断面図である。
【0026】
図3〜
図10においては、説明上の便宜のため矢印X,Y,Zを示している。矢印X,Y,Zは、互いに直交する関係を有する。以下、圧電素子50の各構成について矢印X,Y,Zを参照しつつ説明する場合があるが、各構成の配置関係(直交および平行に関する特徴)は、必ずしも矢印X,Y,Zに示す配置関係に限定されるものではない。これらについては、後述する
図11〜
図24および
図26〜
図29においても同様である。
【0027】
図3〜
図10に示すように、圧電素子50は、圧電体層40(
図3〜
図6,
図8〜
図19)、電極10(
図7)、電極20(
図7)および電極30(
図7)を含む。圧電体層40の外形形状は略直方体であり(
図5,
図6参照)、圧電体層40は、上面41、側面42〜45、および下面46を有している。
【0028】
上面41は、圧電体層40のうちの矢印Z方向の側に位置する表面であり、下面46は、圧電体層40のうちの矢印Z方向とは反対方向の側に位置する表面である。側面42,44は、圧電体層40のうちの矢印X方向に対して直交する表面であり、互いに対向する位置関係を有している。側面43,45は、圧電体層40のうちの矢印Y方向に対して直交する表面であり、互いに対向する位置関係を有している。
【0029】
(電極10(受信用電極))
電極10は、円盤部11および延出部12を含む(
図7参照)。電極10は、「受信用電極」として機能する。延出部12は、円盤部11の外縁から外方に向かって延出する形状を有する。延出部12は、円盤部11が位置している側から圧電体層40の側面42が位置している側に向かって延びるように配置される。
図3に示すように、FPC80に設けられた配線パターン81と電極10の延出部12との間の部分(接続箇所10C)において、電極10とFPC80(配線パターン81)とは電気的に接続される(
図4,
図5も参照)。
【0030】
(電極20(送信用電極))
電極20は、側壁部21、上面部22、および中間部23,24を含む(
図7参照)。電極20は、「送信用電極」として機能する。側壁部21は、圧電体層40の側面42(
図5)に対向し、側面42に接する。上面部22は、側壁部21の矢印Z方向の側の端部に連設され、圧電体層40の上面41上に配置される。中間部23,24は、電極20のうちの圧電体層40の内部に配置される部位であり、圧電素子50が完成した状態ではこれらは視認されない(
図5参照)。中間部23と中間部24との間には、電極30の中間部33が配置される(
図8〜
図10等参照)。
【0031】
中間部23,24の内側には、くり抜き部23H,24H(
図7)と、切り欠き部23T,24Tとがそれぞれ設けられる。
図7および
図9に示すように、中間部23,24の矢印Xとは反対方向における端部は、側壁部21に接続している。一方で、中間部23,24の矢印X方向における端部は、後述する電極30の側壁部31に接続しておらず、側壁部31から離れている。
図3に示すように、FPC80に設けられた配線パターン82と電極20の上面部22との間の部分(接続箇所20C)において、電極20とFPC80(配線パターン82)とは電気的に接続される(
図4,
図5も参照)。
【0032】
(電極30(共通電極))
電極30は、側壁部31、上面部32、中間部33および下面部34を含む(
図7参照)。電極30は、「共通電極」として機能する。側壁部31は、圧電体層40の側面44(
図5)に対向し、側面44に接する。下面部34は、圧電体層40の下面46に対向し、下面46に接する。上面部32は、側壁部31の矢印Z方向の側の端部に連設され、圧電体層40の上面41上に配置される。中間部33は、電極30のうちの圧電体層40の内部に配置される部位であり、圧電素子50が完成した状態では中間部33は視認されない(
図5参照)。
【0033】
上面部32および中間部33の内側には、くり抜き部32H,33H(
図7)がそれぞれ設けられる。くり抜き部32Hの内側に、電極10の円盤部11が配置される(
図5参照)。上面部32および中間部33の内側には、切り欠き部32T,33Tもそれぞれ設けられる。切り欠き部32Tの内側に、電極10の延出部12が配置される(
図5参照)。上面部32のうちの矢印Yとは反対方向における部分には、後退部32Fが設けられる。後退部32Fは、電極20の上面部22の配置を許容するための部位である。
【0034】
図7および
図9に示すように、上面部32、中間部33および下面部34の矢印X方向における端部は、側壁部31に接続している。一方で、上面部32、中間部33および下面部34の矢印Xとは反対方向における端部は、電極20の側壁部21に接続しておらず、側壁部21から離れている。
図3に示すように、FPC80に設けられた配線パターン83と電極30の上面部32との間の部分(接続箇所30C)において、電極30とFPC80(配線パターン83)とは電気的に接続される(
図4,
図5も参照)。
【0035】
(送信用領域および受信用領域)
図8〜
図10を参照して、圧電体層40の内部には、送信用領域40Nおよび受信用領域40Mが形成される。送信用領域40Nは、第1単位圧電体層N1〜N4からなる4層構造を有している。第1単位圧電体層N1〜N4は、ケース60の底部62から遠ざかる方向に積層され、電極20および電極30によって電気的に並列接続される。
図8〜
図10中の白色矢印は、各圧電体層の分極方向を示している。一方で、受信用領域40Mは、第2単位圧電体層M1の1層構造を有している。
【0036】
電極30の下面部34は、送信用領域40Nおよび受信用領域40Mの双方に及んで広がる形状を有している。電極20の上面部22は、第1単位圧電体層N1〜N4を含む送信用領域40Nを間に挟んで電極30の下面部34に対向している。電極10の円盤部11は、第2単位圧電体層M1を含む受信用領域40Mを間に挟んで電極30の下面部34に対向している。
【0037】
すなわち、圧電体層40のうち、電極20の上面部22と電極30の下面部34との間に位置する領域、電極20の中間部23と電極30の上面部32との間に位置する領域、および電極20の中間部23と電極30の下面部34との間に位置する領域が、送信用領域40Nとして機能する。一方で、圧電体層40のうち、電極10の円盤部11と電極30の下面部34との間に位置する領域が受信用領域40Mとして機能する。
図8および
図10に示すように、送信用領域40Nと受信用領域40Mとは、ケース60の底部62の内面62Sの表面方向(X−Y面方向)において互いに隣り合う位置に形成されている。具体的には、圧電体層40の中心部に受信用領域40Mが設けられており、受信用領域40Mを囲むように、受信用領域40Mよりも径方向の外側である周辺部に、送信用領域40Nが設けられている。
【0038】
図11を参照して、圧電素子50を作製する際には、下型91および上型92の間に、樹脂シート93,94を配置する。樹脂シート93,94の間に、短冊形状を有する薄肉の圧電セラミックよりなる4層の圧電体層(セラミックシート)を配置する。送信用領域40Nを構成する第1単位圧電体層N1〜N4の部分については、4層の圧電体層の間に、電極20の中間部23、電極30の中間部33、および電極20の中間部24を介在させてこれらを積層する。受信用領域40Mを構成する第2単位圧電体層M1の部分については、4層の圧電体層の間に、電極を介在させないでこれらを積層する。圧電素子50は、これらを上下から圧着する圧着工程、脱脂工程、および焼成工程を経ることにより作製される。
【0039】
図12は、圧着工程において圧電素子50を圧着する際の様子を示す断面図である。焼成前の圧電体層は、やわらかく、可撓性を有する。4層の圧電体層が加圧されている際、電極20(中間部23)、電極30(中間部33)および電極20(中間部24)の付近においては、これらの内部電極の厚みの分だけ、圧電体層が他の部分よりも大きな荷重で加圧される。焼成前の圧電体層は、やわらかいために、内部電極が存在していない方に向かって(矢印ARに示す方向に)押し出されるようにして移動する。その結果、受信用領域40M(
図8参照)を構成する部分およびその付近に、褶曲が発生することがある。褶曲によって圧電体層40に凹み95(
図12)が形成された場合、圧電素子50とケース60とが適切に接合されにくくなり、接着不良や、感度の低下を招いてしまうことがあり得る。
【0040】
[実施の形態]
本発明に基づいた実施の形態および実施例について、以下、図面を参照しながら説明する。個数および量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数および量などに限定されない。同一の部品および相当部品には同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。なお、以下の実施の形態の説明においては、実施の形態と上述の参考技術との相違点について主として説明し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0041】
[実施の形態1]
図13は、実施の形態1における圧電素子50Aを示す断面図である。
図13は、上述の参考技術における
図8に対応している。
図14は、圧電素子50Aのうち、浮き電極71が形成された層(高さ位置)における断面構成を示す図である。この断面図は、圧電素子50Aの浮き電極73,75,77が形成された層(高さ位置)における断面構成と同一に描かれる。したがって、
図14の中ではこれらを1つの図としてまとめて記載している。
【0042】
図15は、圧電素子50Aのうち、浮き電極72が形成された層(高さ位置)における断面構成を示す図である。この断面図は、圧電素子50Aの浮き電極74,76が形成された層(高さ位置)における断面構成と同一に描かれる。したがって、
図15の中ではこれら1つの図としてまとめて記載している。
図13は、
図14および
図15中のXIII−XIII線の位置における断面図に相当している。
【0043】
本実施例における圧電素子50Aは、上述の参考技術における圧電素子50と同様にして、ケース60(
図2参照)に組み込まれる。具体的には、本実施の形態における超音波センサは、底部62を有するケース60(
図2)と、底部62の内面62Sに接合され、底部62とともにベンディング振動する圧電素子50Aとを備える。
【0044】
(圧電素子50A)
図13〜
図15に示すように、圧電素子50Aは、圧電体層40、電極10〜30、および浮き電極70(浮き電極71〜77)を有している。圧電体層40は、上述の参考技術の場合と同様に、直方体状の形状を有する。
図13においては、上面41、側面43,45および下面46が描かれている。
【0045】
電極10(受信用電極)は、圧電体層40の上面41上に形成される。電極20(送信用電極)は、側壁部21、上面部22および複数の中間部23を含む。側壁部21は、圧電体層40の側面43に対向し、側面43に接している。上面部22は、側壁部21の矢印Z方向の側の端部に連設され、圧電体層40の上面41上に配置される。複数の中間部23は、電極20のうちの圧電体層40の内部に配置される部位(内部電極)であり、圧電素子50Aが完成した状態ではこれらは視認されない。複数の中間部23の間には、電極30の中間部33が配置される。
【0046】
電極30(共通電極)は、側壁部31、上面部32および複数の中間部33を含む。側壁部31は、圧電体層40の側面45に対向し、側面45に接している。上面部32は、側壁部31の矢印Z方向の側の端部に連設され、圧電体層40の上面41上に配置される。複数の中間部33は、電極30のうちの圧電体層40の内部に配置される部位(内部電極)であり、圧電素子50Aが完成した状態ではこれらは視認されない。複数の中間部33の間には、電極20の中間部23が配置される。
【0047】
(送信用領域および受信用領域)
圧電体層40の内部には、送信用領域40N、受信用領域40M、および分離領域40Vが形成される。送信用領域40Nを構成する1または複数の単位圧電体層と、受信用領域40Mを構成する1または複数の単位圧電体層とは、層数が互いに異なるように構成される。本実施の形態では、送信用領域40Nは、第1単位圧電体層N1〜N8からなる8層構造を有している。一方で、受信用領域40Mは、第2単位圧電体層M1の1層構造を有している。
【0048】
第1単位圧電体層N1〜N8は、ケース60(
図2)の底部62から遠ざかる方向に積層される。第1単位圧電体層N1〜N8は、電極20(送信用電極)の上面部22および中間部23、ならびに、電極30(共通電極)の上面部32および中間部33によって、電気的に並列接続される。
【0049】
電極30の下面部34は、分離領域40Vを隔てて隣り合う送信用領域40Nおよび受信用領域40Mの双方に及んで広がる形状を有している。電極20の上面部22は、第1単位圧電体層N1〜N8を含む送信用領域40Nを間に挟んで、電極30の下面部34に対向している。電極10は、第2単位圧電体層M1を含む受信用領域40Mを間に挟んで、電極30の下面部34に対向している。
【0050】
圧電体層40のうち、電極20の上面部22と電極30の下面部34との間に位置する領域、電極20の中間部23と電極30の上面部32との間に位置する領域、および電極20の中間部23と電極30の下面部34との間に位置する領域が、送信用領域40Nとして機能し、電極10と電極30の下面部34との間に位置する領域が受信用領域40Mとして機能する。送信用領域40Nと受信用領域40Mとは、ケース60の底部62の内面62Sの表面方向(X−Y面方向)において、分離領域40V(絶縁領域)を介して互いに隣り合う位置に形成されている。具体的には、圧電体層40の中心部に受信用領域40Mが設けられている。
図13では、送信用領域40Nが複数図示されているが、これらは連なっており、受信用領域40Mを囲むように、受信用領域40Mよりも径方向の外側である周辺部に、送信用領域40Nが設けられている。
【0051】
(浮き電極70)
浮き電極70は、送信用領域40Nおよび受信用領域40Mのうち、これらを構成する単位圧電体層の層数が少ない方の中に設けられる。本実施の形態においては、送信用領域40Nを構成する第1単位圧電体層の層数は8つであり、受信用領域40Mを構成する第2単位圧電体層の層数は1つであるため、第2単位圧電体層M1の中に、圧電素子50の積層方向に間隔を空けて並ぶ複数の浮き電極70(浮き電極71〜77)が設けられる。
【0052】
浮き電極70(ダミー電極ともいう)は、電極10〜30のいずれにも電気接続されておらず、周囲はすべて圧電体層40で囲まれている。複数の浮き電極70は、電極20の中間部23や、電極30の中間部33とともに、マスキング処理などを利用してこれらと同一の工程で印刷法などによって形成されることができる。
図14に示すように、浮き電極71,73,75,77は、4つの部位に分かれており、これらのうちの3つの断面形状が
図13の中に現れている。
図15に示すように、浮き電極72,74,76も、4つの部位に分かれており、これらの4つの断面形状が
図13内に現れている。
【0053】
本実施の形態では、電極20の上面部22と電極30の下面部34との間に、換言すると電極30の上面部32と電極30の下面部34との間に、計7層の内部電極(電極20の中間部23および電極30の中間部33)が設けられている。これに対して、第2単位圧電体層M1の中に、内部電極の層数と同じ数である計7層の浮き電極71〜77が設けられている。各内部電極(電極20の中間部23および電極30の中間部33)と、各浮き電極71〜77とは、同一高さに設けられている。
【0054】
電極10(受信電極)、電極20の上面部22、電極30の上面部32、および電極30の下面部34は、マスクを用いたスパッタや蒸着によって、内部電極(電極20の中間部23および電極30の中間部23)とは別の工程で形成される。
【0055】
(作用および効果)
冒頭で述べたとおり、従来の超音波センサにおいては、圧電素子の積層数が多ければ多いほど、送波の際の音圧が上がるが、受波の際の感度が下がるという特性が示される。これは、従来の積層型の圧電素子においては、圧電素子の送波に供される部分と受波に供される部分とが同一の部材でもって形成されているからである。
【0056】
本実施の形態においては、圧電素子50Aの送波に供される部分(送信用領域40N)と受波に供される部分(受信用領域40M)とが、分離して形成されている。送波の際の音圧を上げるために圧電素子50Aの送波に供される部分(送信用領域40N)の積層数を8層構造としているが、受波に供される部分(受信用領域40M)は1層構造のままである。本実施の形態の超音波センサにおいては、受波の際の感度が低下することが、従来の構成に比べて抑制されている。したがって、本実施の形態の超音波センサは、送信時における音圧および受信時における感度の双方をそれぞれ独立して調整することが可能な構造を備えていると言える。
【0057】
図12を参照して上述したとおり、複数の焼成前の圧電体層(セラミックシート)は、やわらかく、可撓性を有する。仮に浮き電極71〜77が存在していないとすると、8層の圧電体層が加圧されている際、電極20(中間部23)、電極30(中間部33)および電極20(中間部24)の付近は、これらの内部電極の厚みの分だけ、圧電体層が他の部分よりも大きな荷重で加圧されることになる。
【0058】
これに対して本実施の形態では、浮き電極71〜77が、内部電極の存在に起因した厚みの差(荷重の差)を減らすように作用する。圧電体層のうちの内部電極が設けられている部分に作用する荷重と、圧電体層のうちの浮き電極71〜77が設けられている部分に作用する荷重との差は、上述の参考技術の場合に比べて小さくなる。したがって、やわらかい圧電体層は、面内方向に広がろうと移動するが、その移動量は上述の参考技術の場合に比べて小さくなる。その結果、受信用領域40M(
図8参照)を構成する部分およびその付近に、褶曲が発生することは抑制される。圧電素子50Aは、ケース60(
図2)の底部62の内面62Sと適切に接合されることができ、接着性や感度の向上を期待することが可能となる。
【0059】
本実施の形態では、浮き電極70は、送信用領域40Nの中には設けられていない。換言すると、浮き電極71〜77は、電極20の上面部22および中間部23には対向しておらず、電極30の上面部22および中間部33にも対向していない。浮き電極71〜77を設けたことによる寄生容量の増加は抑制されており、感度低下につながることもほとんどない。
【0060】
本実施の形態では、浮き電極70の一部が、分離領域40Vの中にも及ぶように設けられている。浮き電極70は、第2単位圧電体層M1の中にのみ設けられていてもよいが、分離領域40Vの中にも設けられていた方が、褶曲抑制の観点からは望ましいと言える。一方で、浮き電極70の存在は、圧電素子50Aの剛性を上げることや、焼成後の圧電体層40の残留応力の増加にも繋がる。
【0061】
浮き電極70を必要以上に設けた場合には、上記のような寄生容量の増加を招いたり、圧電素子50Aがベンディング振動しにくくなったり、圧電定数が低下したりすることもある。したがって、褶曲の抑制、寄生容量の増加、圧電素子50Aの剛性の増加、圧電素子50Aの圧電定数の増加などに鑑みて、適切な箇所および量の浮き電極70を圧電体層40の内部に設けることが好ましい。本実施の形態のように、浮き電極71〜77を同一面内で複数個所に分割して設けることも、剛性の増加(振動の拘束)や圧電定数の低下を抑制するという観点から、好適に実施し得るものである。
【0062】
本実施の形態では、複数の浮き電極71〜77が、圧電素子50Aの積層方向における中心を通る面CSに対して、面対称となる位置に設けられている。当該構成によれば、焼成が完了した際に、面CSを中心として面対象となる収縮力(熱収縮に起因して発生する収縮力)が圧電体層40に発生することとなるため、焼成後の圧電素子50Aに反りが発生することを抑制できる。
【0063】
[実施の形態2]
図16は、実施の形態2における圧電素子50Bを示す断面図である。
図16は、上述の参考技術における
図8に対応している。
図17は、圧電素子50Bのうち、電極20の中間部23が形成された層(高さ位置)における断面構成を示す図である。電極20の中間部23が形成された層は、いずれも同一に描かれる。したがって、
図17の中ではこれらを1つの図としてまとめて記載している。
【0064】
図18は、圧電素子50Bのうち、浮き電極72が形成された層(高さ位置)における断面構成を示す図である。この断面図は、圧電素子50Bの浮き電極76が形成された層(高さ位置)における断面構成と同一に描かれる。したがって、
図18の中ではこれら1つの図としてまとめて記載している。
図19は、圧電素子50Bのうち、浮き電極74が形成された層(高さ位置)における断面構成を示す図である。
図16は、
図17〜
図19中のXVI−XVI線の位置における断面図に相当している。
【0065】
上述のとおり、浮き電極70を必要以上に設けた場合には、寄生容量の増加を招いたり、圧電素子50Bがベンディング振動しにくくなったり、圧電定数が低下したりすることもある。本実施の形態では、浮き電極70の数を実施の形態1の場合に比べて少なくしている。褶曲の抑制という観点では実施の形態1に比べて不利であるが、寄生容量の増加、圧電素子50Bのベンディング振動のしやすさ、圧電定数の低下という観点では有利である。複数の浮き電極72,74,76が、圧電素子50Bの積層方向における中心を通る面CSに対して面対称となる位置に設けられていることによって、焼成後の圧電素子50Bに反りが発生することも抑制できる。
【0066】
[実施の形態3]
図20は、実施の形態3における圧電素子50Cを示す断面図である。
図20は、上述の参考技術における
図8に対応している。
図21は、圧電素子50Cのうち、電極20の中間部23が形成された層(高さ位置)における断面構成を示す図である。電極20の中間部23が形成された層は、いずれも同一に描かれる。したがって、
図21の中ではこれらを1つの図としてまとめて記載している。
【0067】
図22は、圧電素子50Cのうち、浮き電極76が形成された層(高さ位置)における断面構成を示す図である。
図23は、圧電素子50Cのうち、浮き電極74が形成された層(高さ位置)における断面構成を示す図である。
図24は、圧電素子50Cのうち、浮き電極72が形成された層(高さ位置)における断面構成を示す図である。
図20は、
図21〜
図24中のXX−XX線の位置における断面図に相当している。
【0068】
本実施の形態においては、圧電素子50Cの積層方向においてケース60(
図2)の底部62から最も遠くに位置する浮き電極76の両端部P1は、他の浮き電極72,74の両端部P2,P3の位置よりも内側に位置している。当該構成によれば、浮き電極76の両端部P1と、電極20の上面部22との間の距離DR1を、上述の実施の形態2の場合に比べて長くすることができる。浮き電極76の両端部P1と、電極30の上面部32との間の距離についても同様である。
【0069】
上述のとおり、電極10(受信電極)、電極20の上面部22、電極30の上面部32、および電極30の下面部34は、マスクを用いたスパッタや蒸着によって、内部電極(電極20の中間部23および電極30の中間部23)とは別の工程で形成される。浮き電極76の両端部P1と、電極20の上面部22との相対位置は、ずれる場合がある。仮に位置ずれが発生したとしても、距離DR1が長く確保されていることによって、電極20の上面部22と浮き電極76とが対向することはほとんどないため、寄生容量の増加(感度の低下)を抑制できる。これは、浮き電極76の両端部P1と、電極30の上面部32との相対位置についても同様である。
【0070】
また、本実施の形態では、浮き電極72の一部が「対向部」として機能している。浮き電極72は、圧電素子50Cの中心(面CSの位置)とケース60(
図2)の底部62との間に位置しており、浮き電極72の一部は、圧電素子50Cの積層方向において、電極30の中間部33に対向している(矢印DR2に示す箇所を参照)。浮き電極72と電極30の中間部33とが対向している場合、これらの間に寄生容量が発生するが、圧電素子50Cの中心(面CSの位置)よりも底部側(電極30の下面部34の側)であれば、大きな問題となることはほとんどない。
【0071】
実施の形態1,2の場合には、層間に電極が全く存在していない領域が存在している。一方で、本実施の形態の構成によれば、層間に少なくとも1層の電極が存在している。換言すると、浮き電極72,74,76および電極30の中間部33を圧電素子50Cの積層方向に投影した場合に、その投影像には電極が形成されていない部分がなくなる(投影像同士が重なることで、電極が形成されていない部分がなくなる)。この構成は、内部電極の存在に起因した厚みの差(荷重の差)を減らすように作用するため、褶曲の発生を抑制できることになる。なおこの構成は、上述の実施の形態1,2と組み合わせて実施することも可能である。浮き電極72,74が電極20の中間部23に対向するように形成される場合にも、同様の効果が得られる。
【0072】
[実験例]
図25を参照して、上述の参考技術(比較例)および実施の形態1〜3に関して行った実験例について説明する。
図25中の実施例1〜3は、上述の実施の形態1〜3にそれぞれ対応している。圧着工程でのセラミックシートの数(圧電体層の数)を増加させた場合、参考技術(比較例)の構成は、実施例1〜3の構成に比べて大きな褶曲が発生することがわかる。実施例1〜3については、実施例1、2、3の順に、褶曲を抑制できることがわかる。
【0073】
[実施の形態4]
図26は、実施の形態4における圧電素子50Dを示す断面図である。圧電素子50Dにおいては、圧電素子50Dの積層方向においてケース60(
図2)の底部62から最も遠くに位置する浮き電極77の両端部は、他の浮き電極71〜76の両端部の位置よりも内側に位置している。
【0074】
[実施の形態5]
図27は、実施の形態5における圧電素子50Eを示す断面図である。圧電素子50Eにおいては、ケース60(
図2)の底部62の内面62Sの表面方向において(
図27の紙面左右方向において)、分離領域40Vを介して互いに隣り合う送信用電極(電極20)の内部電極(中間部23)と浮き電極71,73,75,77との間の間隔L1は、分離領域40Vを介して互いに隣り合う共通電極(電極30)の内部電極(中間部33)と浮き電極72,74,76との間の間隔L2よりも広い。
【0075】
[実施の形態6]
図28は、実施の形態6における圧電素子50Fを示す断面図である。上述の各実施の形態では、浮き電極70は複数の部位から構成されるが、浮き電極70は1つの部位のみから構成されていてもよい。
【0076】
[実施の形態7]
図29は、実施の形態7における圧電素子50Gを示す断面図である。上述の各実施の形態では、浮き電極70は第2単位圧電体層M1の中に設けられているが、浮き電極70は、分離領域40Vの中にのみ設けられていてもよい。
【0077】
[実施の形態8]
図30は、実施の形態8における圧電素子50Hを示す断面図である。圧電素子が複数の浮き電極を有している場合には、複数のうちの少なくとも1つの浮き電極は、送信用電極よりも厚い厚さを有していることが好ましい。本実施の形態の圧電素子50Hにおいては、浮き電極72H,74Hが、電極20(送信用電極)の中間部23,24よりも厚い厚さを有している。この構成によっても、圧電素子50Hの送波に供される部分(送信用領域40N)と受波に供される部分(受信用領域40M)とが分離して形成されているため、送信時における音圧および受信時における感度の双方をそれぞれ独立して調整することが可能な構造を備えていると言える。
【0078】
さらに、浮き電極72H,74Hは、電極20(送信用電極)の中間部23,24よりも厚い厚さを有している。この構成は、圧電素子の厚み方向で見た場合の内部電極(浮き電極を含む)の総和が、面内方向においてばらつくことをより一層低減するように作用するため、褶曲の発生をさらに抑制できることになる。
【0079】
[他の実施の形態]
上述の各実施の形態においては、圧電素子はチタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスからなっているが、これに限られるものではない。たとえば、圧電素子は、ニオブ酸カリウムナトリウム系やアルカリニオブ酸系セラミックス等の非鉛系圧電セラミックスの圧電材料などからなっていてもよい。上述の各実施の形態においては、シリコーン66,67、は、シリコーン樹脂からなっているが、これに限るものではない。樹脂からなるものであれば、例えば、ウレタン樹脂やシリコーン発泡樹脂からなっていてもよい。
【0080】
以上、本発明に基づいた各実施の形態について説明したが、上記の開示内容はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。