(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6410012
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】サスペンションフレームの構造
(51)【国際特許分類】
B62D 21/00 20060101AFI20181015BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
B62D21/00 A
B62D25/20 C
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-85544(P2014-85544)
(22)【出願日】2014年4月17日
(65)【公開番号】特開2015-205537(P2015-205537A)
(43)【公開日】2015年11月19日
【審査請求日】2017年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 康治
【審査官】
梶本 直樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−168791(JP,A)
【文献】
特開2012−232655(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0091599(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 21/00
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方側に車両幅方向へ延在するクロスメンバが配置されているサスペンションフレームの構造であって、前記クロスメンバは前側パネルと後側パネルとを接合した中空構造体に構成され、前記クロスメンバの車両幅方向の左右両端には、車両上方へ向かって延びる柱状の連結部が形成されているとともに、下部にはサスペンションアーム取付部を有し、前記連結部の先端上部には、車体取付部が形成されているサスペンションフレームの構造において、
前記連結部の先端側方には、車両幅方向へ向いた略垂直な開口部が形成され、
前記クロスメンバの車両幅方向の左右両端には、車両上方に平面部を有するL字型ブラケットが前記開口部を塞ぐように固定されており、前記L字型ブラケットは、車両側方視において前記サスペンションアーム取付部の車両前後方向の範囲内に位置していることを特徴とするサスペンションフレームの構造。
【請求項2】
前記中空構造体のクロスメンバを構成する前記前側パネル及び前記後側パネルの少なくとも一方は、前記L字型ブラケットの車両上方まで延長され、前記車体取付部として形成されており、前記L字型ブラケットと車体とによって前記延長されたパネル部分を挟み込んだ状態で、前記クロスメンバが車体に取付けられていることを特徴とする請求項1に記載のサスペンションフレームの構造。
【請求項3】
前記中空構造体のクロスメンバを構成する前記前側パネルは、前記L字型ブラケットの車両上方まで延長されており、前記前側パネルによって前記L字型ブラケットのクロスメンバ接続面の高さの上側から半分以上を覆うように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のサスペンションフレームの構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体骨格に取付けられる車両のサスペンションフレームの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、4輪自動車等の車両においては、車体骨格を構成する部品として、車両前後方向に沿って延在するフロントサイドメンバ、エプロンサイドメンバ及びフロアサイドメンバを含む左右一対のサイドメンバが車両幅方向に間隔を空けて配置されている。これら左右一対のサイドメンバの周辺箇所には、サスペンション機構を構成するロアアームが設けられており、車両走行時において、前輪タイヤなどからの荷重及び振動が当該ロアアームを経由して車体に入力されるようになっている。このような荷重及び振動は、車両の走行安定性を低減させ、かつ車室内に振動及び騒音を発生させる要因となる可能性を有しているため、左右一対のサイドメンバ及びロアアームの間には、サスペンションフレームが懸架されており、このサスペンションフレームによって、当該荷重及び振動を受けるとともに、車体の剛性を高めるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなサスペンションフレームは、一般的には車体骨格よりも車両下方に配置されるサスペンションのロアアームやステアリングギヤボックスを強固に車体骨格へ固定し、サスペンションに必要な支持剛性を与えている。サスペンションフレームの基本構造は、ロアアームを取付けた枠型あるいは箱型の骨格から柱型の構造が車両上方へ延びて、車体骨格と締結される構造である。すなわち、サスペンションフレームを車体に取付けるための車体取付部及び該車体取付部へ延びる柱型構造は、サスペンションの支持剛性に強く影響し、かつ当該支持剛性が車両の操縦安定性や乗り心地に影響を与えるものであるため、従来から様々な案の構造が提供されている。
【0004】
例えば、
図8及び
図9に示すようなサスペンションフレーム51の構造が提案されている。このサスペンションフレーム51の構造では、該サスペンションフレーム51を構成するクロスメンバ52の車両幅方向の左右両端に車両上方へ向かって延在すべく配置される2枚のメンバ53,54が設けられている。これらメンバ53,54は、断面コ字状にプレス加工され、上下部に車体取付孔53a,54aとロアアーム取付孔53b,54bが設けられており、2枚重ね合わせることによって車体取付構造として構成されている。このサスペンションフレーム51の構造では、メンバ53,54に設けられた車体取付孔53a,54aとロアアーム取付孔53b,54bとの間に溶接による継ぎ目が存在せず、溶接による強度低下を生じないという利点がある。
また、
図10及び
図11に示すような他のサスペンションフレーム61の構造が提案されている。このサスペンションフレーム61の構造では、該サスペンションフレーム61を構成するクロスメンバ62の車両幅方向の左右両端に車両上方へ向かって延在すべく配置される柱型の車体取付部63が設けられている。この車体取付部63は、2枚のブラケットの周辺部を重ねて合わせて接合した中空構造体として構成されており、ロアアーム取付部64の後壁面側に配置されている。このサスペンションフレーム61の構造では、ロアアーム取付部64を形成するブラケットの片面が中空閉断面の車体取付部63を兼ねているため、ロアアーム65を強固に締結できるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−112212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来のサスペンションフレーム51の構造では、車両幅方向の中間部分に位置するクロスメンバ52と、車両幅方向の左右両端に位置する車体取付構造部のメンバ53,54とが分割されており、クロスメンバ52から車体取付構造部への形状も急激に変化しているので、外部荷重などが加わった場合に、これらクロスメンバ52及び車体取付構造部の間が応力集中を起こしやすいという問題があった。しかも、車体取付構造部を構成するメンバ53,54が、開口断面となっているので、十分な剛性を確保することが難しいという問題があった。
また、上述した他の従来のサスペンションフレーム61の構造において、車体取付面の円筒型カラー63a及び柱型構造体の車体取付部63の間と、クロスメンバ62及び柱型構造体の車体取付部63の間が溶接によって接合され、クロスメンバ62から車体取付部63への形状も急激に変化しているので、上記従来技術と同様、外部荷重などが加わった場合に、これらクロスメンバ62及び車体取付部63の間が応力集中を起こしやすいという問題があった。それに加えて、柱型構造体の車体取付部63は、ロアアーム取付部64の後壁面までオフセットして配置されているので、車両前後方向のスペースが広く取られることになり、周辺部品とのレイアウトの自由度に制限が生じるという問題があった。
【0007】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、クロスメンバの車両幅方向の左右両端に固定されるL字型ブラケットのみの板厚を変えて厚くすることにより、車体取付部及び連結部の強度及び剛性を向上させ、クロスメンバの薄肉化により重量増加を抑えて軽量化を図り、周辺部品とのレイアウトの自由度を高めることが可能なサスペンションフレームの構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、車両前方側に車両幅方向へ延在するクロスメンバが配置されているサスペンションフレームの構造であって、前記クロスメンバは前側パネルと後側パネルとを接合した中空構造体に構成され、前記クロスメンバの車両幅方向の左右両端には、車両上方へ向かって延びる柱状の連結部が形成されているとともに、
下部にはサスペンションアーム取付部を有し、前記連結部の先端上部には、車体取付部が形成されているサスペンションフレームの構造において、前記連結部の先端側方には、車両幅方向へ向いた略垂直な開口部が形成され、前記クロスメンバの車両幅方向の左右両端には、車両上方に平面部を有するL字型ブラケットが前記開口部を塞ぐように固定されて
おり、前記L字型ブラケットは、車両側方視において前記サスペンションアーム取付部の車両前後方向の範囲内に位置している。
【0009】
また、本発明において、前記中空構造体のクロスメンバを構成する前記前側パネル及び前記後側パネルの少なくとも一方は、前記L字型ブラケットの車両上方まで延長され、前記車体取付部として形成されており、前記L字型ブラケットと車体とによって前記延長されたパネル部分を挟み込んだ状態で、前記クロスメンバが車体に取付けられている。
【0010】
さらに、本発明において、前記中空構造体のクロスメンバを構成する前記前側パネルは、前記L字型ブラケットの車両上方まで延長されており、前記前側パネルによって前記L字型ブラケットのクロスメンバ接続面の高さの上側から半分以上を覆うように形成されている。
【発明の効果】
【0011】
上述の如く、本発明に係るサスペンションフレームの構造は、車両前方側に車両幅方向へ延在するクロスメンバが配置されているものであって、前記クロスメンバは前側パネルと後側パネルとを接合した中空構造体に構成され、前記クロスメンバの車両幅方向の左右両端には、車両上方へ向かって延びる柱状の連結部が形成されているとともに、
下部にはサスペンションアーム取付部を有し、前記連結部の先端上部には、車体取付部が形成されており、前記連結部の先端側方には、車両幅方向へ向いた略垂直な開口部が形成され、前記クロスメンバの車両幅方向の左右両端には、車両上方に平面部を有するL字型ブラケットが前記開口部を塞ぐように固定されて
おり、前記L字型ブラケットは、車両側方視において前記サスペンションアーム取付部の車両前後方向の範囲内に位置しているので、クロスメンバと別部材であるL字型ブラケットのみの板厚を変えることが可能となり、L字型ブラケットの板厚を厚くすることによって車体取付部及び連結部の強度及び剛性を向上させることができるとともに、クロスメンバの薄肉化によりクロスメンバ自体の重量を最低限に抑えて軽量化を図ることができる。そして、本発明のサスペンションフレームの構造では、連結部の先端側方の開口部が剛性を有するL字型ブラケットによって塞がれているので、連結部の左右両側の剛性を高めることができ、車体取付部の剛性を効果的に向上させることができる。しかも、剛性が高められた車体取付部にはボスを設ける必要がなくなるので、車体への固定用ボルトの長さを短くでき、より一層の軽量化を図ることができる。
また、本発明のサスペンションフレームの構造では、車体取付部及び柱状の連結部の直下にロアアーム取付部が位置しているので、これら車体取付部、連結部及びロアアーム取付部の車両前後方向のスペースが最小限となる。このため、車体取付部、連結部及びロアアーム取付部の車両前後には、ドライブシャフトとステアリングギヤが配置されていても、ドライブシャフトやタイロッドの揺動エリアを広く確保することができ、周辺部品とのレイアウトの自由度を増大させることができる。
【0012】
また、本発明において、前記中空構造体のクロスメンバを構成する前記前側パネル及び前記後側パネルの少なくとも一方は、前記L字型ブラケットの車両上方まで延長され、前記車体取付部として形成されており、前記L字型ブラケットと車体とによって前記延長されたパネル部分を挟み込んだ状態で、前記クロスメンバが車体に取付けられているので、サスペンションフレームと車体との左右取付部を一体のクロスメンバで連結することが可能となり、サスペンションアームからの車両上下方向及び車両幅方向の入力に対する剛性を効果的に確保することができ、サスペンションアームの脱落を防ぐことができる。
【0013】
さらに、本発明において、前記中空構造体のクロスメンバを構成する前記前側パネルは、前記L字型ブラケットの車両上方まで延長されており、前記前側パネルによって前記L字型ブラケットのクロスメンバ接続面の高さの上側から半分以上を覆うように形成されているので、前側パネルのフランジ効果とクロスメンバの筋交い及び支柱の効果によって、L字型ブラケットと車体取付部の上下左右方向への変形とねじれ変形に対する強度及び剛性を高めることができる。しかも、L字型ブラケットの前面を覆うような形状に前側パネルを形成することによって、L字型ブラケットとクロスメンバとの接合部への車両走行時の被水や跳ね石の当たりを防ぐことができ、当該接合部の離脱などの不具合の発生を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係るサスペンションフレームの構造を車両前方の斜め上方から見た斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るサスペンションフレームのクロスメンバの右側端部付近を示す斜視図である。
【
図3】
図2におけるクロスメンバを分解して示す斜視図である。
【
図4】
図2におけるX部を車両外側から見た斜視図である。
【
図5】
図2におけるX部を車両後方から見た斜視図である。
【
図6】
図2におけるX部を車両前方から見た正面図である。
【
図7】
図2におけるクロスメンバを車両外側から見た側面図である。
【
図8】従来のサスペンションフレームの車体取付部付近を示す斜視図である。
【
図9】
図8におけるサスペンションフレームの車体取付部付近を別方向から見た斜視図である。
【
図10】他の従来のサスペンションフレームの車体取付部付近を示す斜視図である。
【
図11】
図10におけるサスペンションフレームの車体取付部付近を車両外側から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1〜
図7は本発明の実施形態に係るサスペンションフレームの構造を示すものである。なお、
図1〜
図3において、矢印Fr方向は車両前方を示し、矢印O方向は車両外側を示している。
【0016】
本発明の実施形態に係る車両は、4輪タイプの自動車であり、このタイプの車体前部には、車体骨格を構成する部品として、車両前後方向に沿って延在するフロントサイドメンバ、エプロンサイドメンバ及びフロアサイドメンバを含む左右一対のサイドメンバ(図示せず)が車両幅方向に間隔を空けて配置されている。また、車体前部には、
図1に示すように、サスペンション機構を構成する左右一対のロアアーム1が設けられている。これらロアアーム1は、サイドメンバの下方側において、エプロンサイドメンバを車両前後方向で跨ぐように配置されており、車両走行時において、前輪タイヤなどからの荷重及び振動が当該ロアアーム1を経由して車体に入力されるようになっている。また、車体前部において、車両前方側に位置する左右一対のサイドメンバ間には、これらサイドメンバを連結するサスペンションフレーム2が車両幅方向に沿って配置されている。
【0017】
本実施形態のサスペンションフレーム2は、
図1に示すように、車両前方側に配置され、車両幅方向へ延在するクロスメンバ3と、該クロスメンバ3の左右両側下部に車両後方側から連結され、平面視で略U字状に屈曲されたサスペンションフレームパイプ4とを備えており、これらクロスメンバ3とサスペンションフレームパイプ4とによって平面視で略四角形状の枠型に形成されている。そして、クロスメンバ3の車両幅方向の左右両端の上部には、サスペンションフレーム2を車体(図示せず)に取付ける前部車体取付部5が設けられており、クロスメンバ3の車両幅方向の左右両端の下部には、ロアアーム1の前部を取付ける前部アーム取付部6が設けられている。一方、サスペンションフレームパイプ4の車両幅方向の左右両端の上部には、ブラケット7aなどを介してサスペンションフレーム2を車体(図示せず)に取付ける後部車体取付部7が設けられており、サスペンションフレームパイプ4の車両幅方向の左右両端の下部には、ブラケット8aなどを介してロアアーム1の後部を取付ける後部アーム取付部8が設けられている。
【0018】
本実施形態のクロスメンバ3は、
図1〜
図7に示すように、前側パネル31のフランジ部31aと後側パネル32のフランジ部32aとを互いに重ね合わせて、所謂モナカ合わせに接合した中空構造体に構成されている。クロスメンバ3の車両幅方向の左右両端には、前側パネル31及び後側パネル32の左右両側壁部を車両上方へ向かって斜めに折り曲げることにより、滑らかな円弧を描いて車両上方に延びる柱状の連結部33が一体に形成されており、該連結部33は、柱型構造体として構成される閉断面となっている。このように、クロスメンバ3の車両幅方向の左右両端に連結部33を一体に形成するのは、クロスメンバ3と前部車体取付部5との間に急激な形状変化が存在せず、かつ接合部を設ける必要がなくなり、クロスメンバ3の強度及び剛性に有利な形状が得られ、その結果、クロスメンバ3を構成する前側パネル31及び後側パネル32の全体の板厚を削減して軽量化が実現可能となるからである。
連結部33の先端上部には、前側パネル31によって略水平面状の前部車体取付部5が形成されており、前部車体取付部5には、図示しない車体側へ締結ボルト9の軸部を挿入する車体取付孔5aが設けられている。また、前側パネル31の左右両側の下部には、前部アーム取付部6を構成するアーム取付孔6aが設けられている。これにより、左右の前部車体取付部5及び前部アーム取付部6は、溶接を介さずに1つの部品の前側パネル31内に存在し、車輪を懸架するロアアーム1が溶接によることなく車体に連結されることになる。一般的に、溶接部は疲労強度が低下すること、腐食による溶接剥がれ、破断の可能性があることから、本実施形態のクロスメンバ3においては、溶接を介さずにロアアーム1を車体に連結することにより、このような懸念が取り除かれている。
【0019】
また、本実施形態のクロスメンバ3において、左右両端に位置する連結部33の車両幅方向の先端側方には、
図3及び
図7に示すように、車両幅方向へ向いた略垂直な開口部34が形成されており、該開口部34は、接合された前側パネル31及び後側パネル32によって画成され、車両側面視で略四角形に形成されている。しかも、クロスメンバ3の車両幅方向の左右両端には、クロスメンバ3と別部材であるL字型ブラケット35が開口部34を塞ぐように固定されている。このL字型ブラケット35は、車両上方に位置し、水平方向外側へ延びる平面部を有する上部ブラケット片35Aと、車両側方に位置し、垂直方向下側へ延びる平面部を有する側部ブラケット片35Bとを備えており、上部ブラケット片35Aを前部車体取付部5の下面に重ね合わせて溶接で接合し、側部ブラケット片35Bを連結部33の先端に重ね合わせて溶接で接合することによって、クロスメンバ3の連結部33の左右両端に固定されている。
上部ブラケット片35Aの平面部には、締結ボルト9の軸部を挿入するボルト孔35aが設けられており、前部車体取付部5及び上部ブラケット片35Aが締結ボルト9で車体に共締めされるようになっている。また、側部ブラケット片35Bの連結部33との溶接接合部Wは、接合強度を高めるため、開口部34の周囲を囲むように設けられている。
【0020】
さらに、本実施形態のクロスメンバ3において、車両幅方向の左右両端の裏面側下部には、
図2、
図3及び
図7に示すように、ロアアーム締結用の溶接ナット10を固着したサスペンションアームブラケット11が取付けられている。このサスペンションアームブラケット11は、断面略コ字状に形成されており、サスペンションフレームパイプ4の車両外側位置で、車両後方から後側パネル32及び前側パネル31の下部などに接合されている。この構成により、車両側方から見たときに、前部車体取付部5、柱状の連結部33及び前部アーム取付部6(サスペンションアームブラケット11を含む)の3部位が、
図7の軸線Cに示すように、車両上下方向でほぼ一直線に並び、車両前後方向のスペースが最小限となるレイアウトに配置されることになる。
【0021】
本実施形態のクロスメンバ3を構成する前側パネル31の車両幅方向の左右両端は、
図2、
図4及び
図5に示すように、開口部34を塞ぐL字型ブラケット35の車両上方に位置する上部ブラケット片35Aまで延長されている。この延長されたパネル部分は、前部車体取付部5として構成され、該前部車体取付部5は、前側パネル31に一体的に形成されていることになる。すなわち、L字型ブラケット35の上部ブラケット片35Aと車体(図示せず)とによって、延長されたパネル部分の前部車体取付部5が挟み込まれた状態で、クロスメンバ3が図示しない車体に取付けられるようになっている。これにより、サスペンションフレーム2と車体との左右取付部が一体型のクロスメンバ3で連結されることになり、サスペンションアームであるロアアーム1からの車両上下方向及び車両幅方向の荷重に対して、必要な剛性が確保された構造となっている。
【0022】
さらに、中空構造体のクロスメンバ3を構成する前側パネル31の左右両端は、
図2及び
図4〜
図7に示すように、L字型ブラケット35の車両上方に位置する上部ブラケット片35Aまで延長されているとともに、L字型ブラケット35の側部ブラケット片35Bの側部車両前方側で下方へ向かって延長されている。すなわち、前側パネル31の高さH1は、L字型ブラケット35のクロスメンバ接続面である上部ブラケット片35Aの高さHの上側から半分以上(H1≧1/2×H)を覆うように形成されている。これにより、前側パネル31のフランジ効果とクロスメンバ3の筋交い及び支柱の効果が得られ、L字型ブラケット35と前部車体取付部5の上下左右方向への変形やねじれ変形が抑えられるようになっている。また、L字型ブラケット35の前面を覆うような形状に前側パネル31が形成されているため、L字型ブラケット35とクロスメンバ3との溶接接合部Wに車両走行時の被水や跳ね石が当たり、損傷を与えるようなことが低減されるようになっている。
【0023】
このように、本発明の実施形態に係るサスペンションフレーム2の構造は、車両前方側に車両幅方向へ延在して配置されるクロスメンバ3が前側パネル31と後側パネル32とを接合した中空構造体に構成され、クロスメンバ3の車両幅方向の左右両端に、車両上方へ向かって延びる柱状の連結部33が形成され、連結部33の先端上部に前部車体取付部5が形成され、連結部33の先端側方に車両幅方向へ向いた略垂直な開口部34が形成されているとともに、クロスメンバ3の車両幅方向の左右両端に、車両上方に平面部の上部ブラケット片35Aを有するL字型ブラケット35が開口部34を塞ぐように固定されているので、クロスメンバ3と別部材であるL字型ブラケット35のみの板厚を変えることができる。したがって、本実施形態のサスペンションフレーム2の構造においては、L字型ブラケット35の板厚を前側パネル31及び後側パネル32の板厚よりも厚くすることによって、前部車体取付部5及び連結部33の強度及び剛性の向上を図り、薄肉のクロスメンバ3を用いてクロスメンバ3自体の重量を抑え、軽量化を実現することができる。
【0024】
また、本実施形態に係るサスペンションフレーム2の構造では、クロスメンバ3における連結部33の先端側方の開口部34が高剛性のL字型ブラケット35の側部ブラケット片35Bによって塞がれているので、連結部33の左右両側部分の剛性を確実に高めることができる。それに加えて、前部車体取付部5は、締結ボルト9でL字型ブラケット35の上部ブラケット片35Aと一緒に車体(図示せず)に共締めされているので、前部車体取付部5の剛性も効果的に向上させることができる。
さらに、本実施形態のサスペンションフレーム2の構造では、前部車体取付部5及び柱状の連結部33の直下にロアアーム1の前部アーム取付部6が位置し、車両側方から見たときに、前部車体取付部5、柱状の連結部33及び前部アーム取付部6(サスペンションアームブラケット11を含む)の3部位が、車両上下方向でほぼ一直線に並んでレイアウトされているので、これら前部車体取付部5、連結部33及び前部アーム取付部6の車両前後方向のスペースを最小限に設定することが可能となり、ドライブシャフトやタイロッドの揺動エリアを広く確保した状態で、ドライブシャフト、ステアリングギヤを配置することができ、周辺部品とのレイアウトの自由度を増大させることができる。
【0025】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
例えば、既述の実施の形態では、クロスメンバ3の前側パネル31をL字型ブラケット35の車両上方に位置する上部ブラケット片35Aまで延長しているが、適用車種などに対応して、後側パネル32のみ、あるいは前側パネル31及び後側パネル32をL字型ブラケット35の車両上方に位置する上部ブラケット片35Aまで延長しても良い。
【符号の説明】
【0026】
1 ロアアーム
2 サスペンションフレーム
3 クロスメンバ
4 サスペンションフレームパイプ
5 前部車体取付部
5a 車体取付孔
6 前部アーム取付部
6a アーム取付孔
7 後部車体取付部
8 後部アーム取付部
9 締結ボルト
10 溶接ナット
11 サスペンションアームブラケット
31 前側パネル
32 後側パネル
33 連結部
34 開口部
35 L字型ブラケット
35A 上部ブラケット片
35a ボルト孔
35B 側部ブラケット片
W 溶接接合部