(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の第一反射面と前記複数の第二反射面との各々について、前記単一ガラス板における同じ深さ位置に形成された複数の反射面が等間隔で並んでいることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の光学結像部材。
前記複数の第一反射面と前記複数の第二反射面との各々について、前記単一ガラス板における深さ位置が相互にずれた第一深さ領域と第二深さ領域との各々に反射面を備え、
前記第一深さ領域に形成された反射面と、前記第二深さ領域に形成された反射面とが交互に並んでいることを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の光学結像部材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の光学結像部材の製造方法では、以下のような解決すべき問題が生じている。
【0008】
すなわち、光学結像部材において高解像度の像を結像するためには第一反射面同士、及び第二反射面同士の間隔を狭くする必要がある。そして、上記の製造方法で製造される光学結像部材では、第一反射面同士、及び第二反射面同士の間隔が、光学結像部材を構成する各ガラス板の厚みによって決定される。従って、各ガラス板の厚みは可及的に薄くすることが要求される。このことに起因して、上記の製造方法における第一の工程では、数百枚〜数千枚もの薄いガラス板を接着剤等で反射面同士が平行となるように貼り付けて重ね合わせるという煩雑な作業が必要となり、製造効率が著しく悪い上、製造コストの高騰が不可避となる問題がある。
【0009】
また、上記の製造方法では、第二の工程において積層体を厚み方向に沿って切断するが、このとき、積層体に形成される切断面の角度を、所望の角度に精密に形成することが必須となる。これは切断面の角度がずれると、完成品から光学結像部材としての機能が失われてしまうからである。このため、上記の製造方法では、精密な作業を要することに起因して、歩留まりが低下しやすいという難点もある。その結果、上述した製造効率の悪さ、及び製造コストの高騰にさらに拍車を掛ける事態を招いていた。
【0010】
このような事情に鑑みなされた本発明は、低コストで且つ効率よく製造することが可能な光学結像部材を提供すること、及び、この目的を達成するための光学結像部材の製造方法を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために創案された本発明に係る方法は、ガラス板を備え、ガラス板の内部に入射した光を内部に形成された反射面で反射させたのち外部に出射することで、空中に被写体の像を結ぶ光学結像部材を製造するための方法であって、ガラス板の元となるガラス元板と、ガラス元板の内部に集光させたパルスレーザーとを相対移動させることで、ガラス板における反射面を形成することに特徴付けられる。
【0012】
このような方法によれば、ガラス元板とパルスレーザーとを相対移動させるだけで、簡便にガラス板における反射面を形成することが可能である。このため、光学結像部材を製造するにあたって、煩雑な作業や精密な作業を行う必要性を好適に排除することができる。その結果、低コストで且つ効率よく光学結像部材を製造することが可能となる。
【0013】
上記の方法において、パルスレーザーによってガラス元板の内部に形成したフィラメント領域で、ガラス板における反射面を形成してもよい。ここで、「フィラメント領域」とは、パルスレーザーの自己集束作用によって生成される領域を意味する(以下において同じ)。
【0014】
このようにすれば、ガラス元板の内部において、パルスレーザーを集光させた部位にはフィラメント領域が形成される。そして、このフィラメント領域においては、ガラス元板がパルスレーザーを集光させる前とは異なる屈折率を有するようになる。この屈折率の変化を利用してガラス板における反射面を形成することができる。
【0015】
上記の方法において、ガラス元板が金属イオンを含む場合には、パルスレーザーによってガラス元板の内部に析出させた金属粒子で、ガラス板における反射面を形成してもよい。ここで、ガラス元板に含有させる金属イオンとしては、Agイオンが好ましい。その他、ガラス元板に含有させる金属イオンとしては、Au、Cu、Fe等のイオンであってもよい。
【0016】
このようにすれば、ガラス元板の内部において、パルスレーザーを集光させた部位では還元反応によって金属粒子が析出される。そして、この析出された金属粒子によってガラス板における反射面を形成することが可能となる。なお、反射面を的確に形成するためには、ガラス元板中に質量%で0.1%〜10%の金属イオンを含有させることが好ましい。
【0017】
また、上記の課題を解決するために創案された本発明に係る光学結像部材は、単一ガラス板を一又は複数備え、一又は複数の単一ガラス板の内部に入射した光を反射面で反射させたのち外部に出射することで、空中に被写体の像を結ぶ光学結像部材であって、反射面が単一ガラス板の内部に形成されていることに特徴付けられる。
【0018】
このような構成の光学結像部材においては、例えば、上記の本発明に係る光学結像部材の製造方法により、簡便に反射面を形成することができる。そのため、この光学結像部材を低コストで且つ効率よく製造することが可能なものとすることができる。
【0019】
上記の構成において、反射面がフィラメント領域で形成されていてもよいし、金属粒子で形成されていてもよい。
【0020】
上記の構成において、反射面が複数形成され、複数の反射面には、相互に平行に延びた複数の第一反射面と、第一反射面と直交する方向において相互に平行に延びた複数の第二反射面とが含まれ、複数の第一反射面と複数の第二反射面との各々について、一又は複数の単一ガラス板における同じ深さ位置に形成された複数の反射面が等間隔で並んでいることが好ましい。
【0021】
このようにすれば、複数の第一反射面と複数の第二反射面との各々について、同じ深さ位置に形成された複数の反射面が等間隔で並んでいることから、空中に結ばれる被写体の像を安定して結像させることが可能となる。
【0022】
上記の構成において、複数の第一反射面と複数の第二反射面との各々について、一又は複数の単一ガラス板における深さ位置が相互にずれた第一深さ領域と第二深さ領域との各々に反射面を備え、第一深さ領域に形成された反射面と、第二深さ領域に形成された反射面とが交互に並んでいることが好ましい。
【0023】
このようにすれば、第一深さ領域に形成された反射面と、第二深さ領域に形成された反射面とが交互に並ぶことから、一又は複数の単一ガラス板の厚み方向において、光を反射させることが可能な範囲を延長することができる。つまり、第一深さ領域に形成された反射面と、第二深さ領域に形成された反射面とのうち、一方で反射されなかった光の一部を他方で反射させることが可能となる。また、隣り合って並んだ第一深さ領域に形成された反射面と、第二深さ領域に形成された反射面との間隔を、実質的な反射面同士の間隔とすることができる。これにより、実質的な反射面同士の間隔を狭くすることも可能となる。その結果、空中に結ばれる被写体の像の解像度を向上させることができる。
【0024】
上記の構成において、一又は複数の単一ガラス板は平面視で矩形の輪郭形状を有し、第一反射面が延びる方向、及び第二反射面が延びる方向が、一又は複数の単一ガラス板の矩形の輪郭形状を形作る辺部に対して平面視で傾斜していることが好ましい。
【0025】
このようにすれば、第一反射面が延びる方向、及び第二反射面が延びる方向が、一又は複数の単一ガラス板の矩形の輪郭形状を形作る辺部と平面視で平行となっている場合と比較して、結像される被写体の像を大きく写し出すことが可能となる(詳細は実施形態を参照)。
【0026】
上記の構成において、一又は複数の単一ガラス板について、平面視でその最小幅が200mm以上であることが好ましい。
【0027】
このようにすれば、光学結像部材を大型化し易くなる。結果として、結像される被写体の像を大きく写し出すことが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明によれば、低コストで且つ効率よく光学結像部材を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態に係る光学結像部材、及び光学結像部材の製造方法について、添付の図面を参照して説明する。
【0031】
<第一実施形態>
はじめに、本発明の第一実施形態に係る光学結像部材の製造方法について、添付の図面を参照して説明する。
【0032】
第一実施形態に係る光学結像部材の製造方法は、一枚のガラス板(単一ガラス板)を備え、このガラス板の内部に入射した光を、当該ガラス板の内部に形成された反射面で反射させたのち外部に出射させ、空中に被写体の像を結ぶ光学結像部材を製造するための方法である。そして、この方法においては、ガラス板の元となるガラス元板と、ガラス元板の内部に集光させたパルスレーザーとを相対移動させることで、ガラス板における反射面を形成する。
【0033】
まず、ガラス板の元となるガラス元板を準備する。ガラス元板は、ガラス組成として、質量%で、SiO
2:35%〜80%、Al
2O
3:0%〜20%、B
2O
3:0%〜17%、MgO:0%〜10%、CaO:0%〜15%、SrO:0%〜15%、BaO:0%〜30%を含有することが好ましい。なお、本実施形態においては、ガラス元板として平面視で正方形の輪郭形状を有するものを使用している。
【0034】
ここで、ガラス元板の幅寸法(正方形の一辺の長さ)は、200mm以上であり、さらに400mm以上、500mm以上、1000mm以上、1200mm以上、1500mm以上とより幅寸法を大きくすることが好ましく、最も好ましくは2000mm〜4000mmである。このようにすれば、光学結像部材を大型化し易くなる。また、ガラス元板の厚み寸法は100μm以上であることが好ましい。さらに、ガラス元板の表面粗さRaは10nm以下であることが好ましい。加えて、ガラス元板のうねりは1μm以下であることが好ましい。また、ガラス元板のヤング率は65GPa以上であることが好ましい。さらに、ガラス元板におけるレーザー光の吸収係数は0.01/cm以上であることが好ましい。
【0035】
次に、
図1に示すように、ガラス元板1を固定した状態において、レンズによってガラス元板1の内部に集光させたパルスレーザー2を直線的に移動させることで、ガラス元板1の内部にフィラメント領域3を形成していく。本実施形態においては、まず、
図1に矢印で示すように、ガラス元板1の正方形の輪郭形状を形作る辺部11のうち、縦に延びる辺部11a(以下、縦辺部11aと表記する)と平行にパルスレーザー2を移動させる。なお、パルスレーザー2は、その光軸21がガラス元板1の厚み方向と平行に延びるように、ガラス元板1の一方面1a側から照射する。また、パルスレーザー2は、当該パルスレーザー2の移動の開始から終了までの間、ガラス元板1における同じ深さ位置に集光させる。
【0036】
ここで、レーザーの種類としては、例えば、CO
2レーザー、He−Neレーザー、YAGレーザー等を使用することができる。また、パルスレーザー2のパルス幅としては、1fs〜800fsとすることが好ましく、より好ましくは10fs〜500fsとし、最も好ましくは30fs〜300fsとする。さらに、パルスレーザー2のエネルギーは0.01μJ〜80μJとすることが好ましく、より好ましくは0.1μJ〜50μJとし、さらに好ましくは0.5μJ〜30μJとし、最も好ましくは1μJ〜10μJとする。加えて、パルスレーザー2のスポット径としては、0.05μm〜0.5mm、好ましくは0.1μm〜0.1mm、より好ましくは0.5μm〜0.05mm、さらに好ましくは0.5μm〜0.01mmとする。また、パルスレーザー2の照射時間(パルスレーザー2の移動の開始から終了までの照射時間)は0.2s〜5minであることが好ましく、より好ましくは0.5s〜3minとし、最も好ましくは1s〜1minとする。
【0037】
これにより、パルスレーザー2の自己集束作用が働くことで、当該パルスレーザー2の焦点の軌跡に沿って帯状のフィラメント領域3が形成される。このフィラメント領域3は、ガラス元板1の一方面1a及び他方面1bに対して直立した姿勢で形成される。また、フィラメント領域3においては、ガラス元板1がパルスレーザー2を集光させる前とは異なる屈折率を有するようになる。なお、屈折率の変化の度合は、パルスレーザー2の出力の大小と、パルスレーザー2の照射時間の長短とのうち、少なくとも一方を調節することによって制御することができる。そして、出力を大きくするほど、また、照射時間を長くするほど、単位時間あたりの屈折率の変化が大きくなる。
【0038】
次に、上述の場合と同様の態様の下で、パルスレーザー2を繰り返し移動させることにより、
図2に示すように、ガラス元板1の内部に複数(本実施形態では四つ)のフィラメント領域3を相互に平行に形成する。このとき、パルスレーザー2の出力や照射時間を変更することにより、各フィラメント領域3の屈折率を調節することができる。複数のフィラメント領域3の屈折率の値は、同一であっても異なっていてもよいが、フィラメント領域3間の屈折率の値は、フィラメント領域3の屈折率と異なっている必要がある。また、複数のフィラメント領域3はガラス元板1における同じ深さ位置に形成する。ここで、複数のフィラメント領域3における相互間の間隔Lは、好ましくは0μmを超え2μm以下、より好ましくは0μmを超え1.5μm以下、さらに好ましくは0μmを超え1μm以下、最も好ましくは0μmを超え0.8μm以下である。
【0039】
これにより、複数のフィラメント領域3を相互に平行に並べると共に、これらのフィラメント領域3を一組としてなる第一反射面4をガラス元板1の内部に形成する。この第一反射面4は、ガラス元板1の内部に入射した光5を反射する機能を有している。
【0040】
次に、上述の場合と同様の態様の下で、さらにパルスレーザー2を繰り返し移動させていく。これにより、
図3に示すように、複数のフィラメント領域3を一組としてなる第一反射面4を等間隔で相互に平行に複数形成する。この複数の第一反射面4はガラス元板1における同じ深さ位置に形成する。なお、
図3においては、複数のフィラメント領域3を一組としてなる第一反射面4のみを図示し、フィラメント領域3の各々の図示を省略している(以降に参照する
図4〜
図9において同じ)。
【0041】
ここで、第一反射面4同士の間隔Sは、0mmを超え2mm以下とすることが好ましく、より好ましくは0.2mm〜0.5mmとする。なお、第一反射面4同士の間隔Sとは、隣り合った二つの第一反射面4の一方を構成する複数のフィラメント領域3と、他方を構成する複数のフィラメント領域3との間において、最も近接したフィラメント領域3同士の間隔を意味している。また、第一反射面4におけるガラス元板1の厚み方向に沿った幅Wは、その好ましい値が第一反射面4同士の間隔Sの値によって変化する。そして、幅Wは間隔Sに対して0.1倍〜5倍の値とすることが好ましく、2.5倍〜3.5倍とすることがより好ましく、最も好ましくは3倍程度の値とする。なお、幅Wの値の大小は、パルスレーザー2の焦点の形状を調節することによって制御することができる。
【0042】
次に、複数の第一反射面4の形成が完了すると、ガラス元板1を裏返しにして、当該ガラス元板1の表裏を入れ替える。
【0043】
最後に、上述の場合と同様の態様の下で、ガラス元板1の正方形の輪郭形状を形作る辺部11のうち、今度は横に延びる辺部11b(以下、横辺部11bと表記する)と平行にパルスレーザー2を移動させていく。この際、パルスレーザー2はガラス元板1の他方面1b側から照射する。これにより、横辺部11bと平行に複数のフィラメント領域3を形成していくと共に、複数のフィラメント領域3を一組としてなる第二反射面6を等間隔で相互に平行に複数形成していく。この複数の第二反射面6はガラス元板1における同じ深さ位置に形成すると共に、ガラス元板1の厚み方向において第一反射面4と近接させて形成する。このとき、第一反射面4と第二反射面6との厚み方向における間隔は、0.5mm以下、好ましくは0.3mm以下、より好ましくは0.1mm以下である。なお、複数の第二反射面6は、複数の第一反射面4と直交する方向に延びるように形成される。加えて、複数の第一反射面4、及び複数の第二反射面6は、いずれもガラス元板1の一方面1a及び他方面1bに対して直立した姿勢で形成される。ここで、複数のフィラメント領域3における相互間の間隔L、第二反射面6同士の間隔S、及び、第二反射面6におけるガラス元板1の厚み方向に沿った幅Wとして好ましい値については、第一反射面4の場合と同一である。
【0044】
なお、上述のように、本実施形態においては、複数の第一反射面4の形成が完了した後、複数の第二反射面6を形成するにあたって、ガラス元板1を裏返しにして、当該ガラス元板1の表裏を入れ替えている。しかしながら、この限りではなく、複数の第一反射面4の形成が完了した後、ガラス元板1を裏返すことなく、パルスレーザー2の焦点の位置を変更することで複数の第二反射面6を形成してもよい。
【0045】
以上のようにして、
図4に示すように、内部に反射面(第一反射面4、及び第二反射面6)が形成されたガラス板7が完成し、光学結像部材8の製造が完了する。
【0046】
以下、上記の第一実施形態に係る光学結像部材の製造方法による作用・効果について説明する。
【0047】
この第一実施形態に係る光学結像部材の製造方法によれば、ガラス元板1とパルスレーザー2とを相対移動させるだけで、簡便にガラス板7における第一反射面4、及び第二反射面6を形成することが可能である。このため、光学結像部材8を製造するにあたって、煩雑な作業や精密な作業を行う必要性を好適に排除することができる。その結果、低コストで且つ効率よく光学結像部材8を製造することが可能となる。
【0048】
また、ガラス元板1の表面粗さRaやうねりについて、上述の好ましい値の範囲内とすれば、ガラス元板1の内部にパルスレーザー2を集光させた際に、その焦点位置がずれたりすることを回避しやすくなる。このため、フィラメント領域3、ひいては、第一反射面4及び第二反射面6を高精度に形成することができる。
【0049】
さらに、この光学結像部材の製造方法では、パルスレーザー2によってガラス元板1の内部に第一反射面4、及び第二反射面6を形成することができる。このことから、下記の(1),(2)のような効果をも得ることが可能である。(1)第一反射面4同士の間隔S、及び第二反射面6同士の間隔Sの大小を簡便に調節することが可能である。そして、これらの間隔Sを可及的に狭くすれば、完成した光学結像部材8によって高解像度の像を結像させやすくなる。(2)大型のガラス板を貼り合せたり、切断したりする必要がないため、光学結像部材8の大型化を容易に図ることができる。
【0050】
以下、上記の第一実施形態に係る光学結像部材による作用・効果について説明する。
【0051】
この光学結像部材8においては、上記の第一実施形態に係る光学結像部材の製造方法により、簡便に反射面を形成することが可能である。そのため、この光学結像部材8を低コストで且つ効率よく製造することが可能なものとすることができる。
【0052】
また、この光学結像部材8では、複数の第一反射面4と複数の第二反射面6とが等しい間隔Sで並べられている。これにより、空中に結ばれる被写体の像を安定して結像させることが可能となる。なお、この効果は、上記の第一実施形態に係る光学結像部材の製造方法により、第一反射面4、及び第二反射面6が高精度に形成されていることに由来して、より高められる。
【0053】
さらに、この光学結像部材8においては、ガラス板7の元となるガラス元板1のヤング率について、上述したように65GPa以上とすれば、ガラス板7に反りが生じにくくなる。これにより、第一反射面4同士、及び第二反射面6同士の間隔にばらつきが発生することを回避しやすくなるため、さらに安定して像を結像させることが可能となる。
【0054】
<第二実施形態>
以下、本発明の第二実施形態に係る光学結像部材の製造方法について、添付の図面を参照して説明する。なお、この第二実施形態、及び、後述の第三実施形態の説明において、上記の第一実施形態で既に説明した要素については、第二実施形態、及び、後述の第三実施形態について説明するための図面に同一の符号を付すことによって重複する説明を省略している。また、第二実施形態、及び、後述の第三実施形態の説明においては、上記の第一実施形態との相違点についてのみ説明する。
【0055】
この第二実施形態においては、上記の第一実施形態とは異なり、
図5に示すような構成の光学結像部材8を製造する。そして、第二実施形態では、複数の第一反射面4、及び複数の第二反射面6の各々について、ガラス元板1における深さ位置が相互にずれた第一深さ領域と第二深さ領域との各々に反射面(第一反射面4、又は第二反射面6)を形成する。ここで、複数の第一反射面4を形成する態様と、複数の第二反射面6を形成する態様とは同じであるので、複数の第一反射面4を形成する態様についてのみ説明する。
【0056】
まず、相対的にガラス元板1の一方面1a側に位置する第一深さ領域に集光させたパルスレーザー2により、複数の第一反射面41を形成する。そして、これら第一反射面41の形成が完了すると、相対的にガラス元板1の他方面1b側に位置し、且つ第一深さ領域と隣接する第二深さ領域に集光させたパルスレーザー2により、複数の第一反射面42を形成する。このとき、個々の第一反射面42を、第一深さ領域に形成済の第一反射面41の相互間における中央に位置するように形成していく。つまり、第一反射面41と第一反射面42とが交互に並べられることになる。
【0057】
このようにして、内部に反射面(第一反射面41,42、及び第二反射面61,62)が形成されたガラス板7を作製し、光学結像部材8を製造する。
【0058】
以下、上記の第二実施形態に係る光学結像部材の製造方法による作用・効果について説明する。
【0059】
この第二実施形態に係る光学結像部材の製造方法においても、上記の第一実施形態に係る光学結像部材の製造方法と同一の作用・効果を得ることが可能である。
【0060】
以下、上記の第二実施形態に係る光学結像部材による作用・効果について説明する。
【0061】
この光学結像部材8においても、上記の第一実施形態に係る光学結像部材と同一の作用・効果を得ることができる。さらに、この光学結像部材8では、第一深さ領域に形成された第一反射面41(第二反射面61)と、第二深さ領域に形成された第一反射面42(第二反射面62)とが交互に並ぶことから、ガラス板7の厚み方向において、光を反射させることが可能な範囲を延長することができる。また、隣り合って並んだ第一深さ領域に形成された第一反射面41(第二反射面61)と、第二深さ領域に形成された第一反射面42(第二反射面62)との間隔を、実質的な第一反射面4同士(第二反射面6同士)の間隔とすることができる。これにより、実質的な第一反射面4同士(第二反射面6同士)の間隔を狭くすることも可能となる。その結果、空中に結ばれる被写体の像の解像度を向上させることが可能である。
【0062】
<第三実施形態>
以下、本発明の第三実施形態に係る光学結像部材の製造方法について、添付の図面を参照して説明する。
【0063】
この第三実施形態においては、上記の第一実施形態とは異なり、
図6に示すような構成の光学結像部材8を製造する。そして、第三実施形態では、複数の第一反射面4が延びる方向、及び複数の第二反射面6が延びる方向が、ガラス元板1の正方形の輪郭形状を形作る辺部11に対して平面視で傾斜するように、両反射面4,6を形成する。ここで、複数の第一反射面4を形成する態様と、複数の第二反射面6を形成する態様とは同じであるので、複数の第一反射面4を形成する態様についてのみ説明する。
【0064】
この第三実施形態では、ガラス元板1の辺部11に対して傾斜した方向に移動するパルスレーザー2により、複数の第一反射面4を形成する。ここで、辺部11のうち、縦辺部11aに対してパルスレーザー2が移動する方向が傾斜した角度は、20°〜70°とすることが好ましく、本実施形態では45°としている。
【0065】
このようにして、内部に反射面(第一反射面4、及び第二反射面6)が形成されたガラス板7を作製し、光学結像部材8を製造する。
【0066】
以下、上記の第三実施形態に係る光学結像部材の製造方法による作用・効果について説明する。
【0067】
この第三実施形態に係る光学結像部材の製造方法においても、上記の第一実施形態に係る光学結像部材の製造方法と同一の作用・効果を得ることが可能である。
【0068】
以下、上記の第三実施形態に係る光学結像部材による作用・効果について説明する。
【0069】
この光学結像部材8においても、上記の第一実施形態に係る光学結像部材8と同一の作用・効果を得ることができる。また、これに加えて、以下のような効果をも得ることが可能である。
図7に示すように、上記の第一実施形態に係る光学結像部材8では、ガラス板7の縦辺部11aと第二反射面6とがなす角、及び、横辺部11bと第一反射面4とがなす角の角度が90°となっている。これに対し、
図8に示すように、第三実施形態に係る光学結像部材8では、辺部11と両反射面4,6とがなす角の角度が45°となっている。これにより、同じ面積を有する光学結像部材8を使用した場合でも、第三実施形態に係る光学結像部材8の方が、より大きな像9を写し出すことが可能となる。
【0070】
ここで、本発明に係る光学結像部材、及び光学結像部材の製造方法は、上記の各実施形態で説明した構成や態様に限定されるものではない。
【0071】
上記の各実施形態では、光学結像部材が一枚のガラス板を備え、このガラス板の内部に複数の第一反射面と複数の第二反射面とが形成される構成となっている。しかしながら、この限りではなく、光学結像部材が複数枚のガラス板(単一ガラス板)を備え、これらのガラス板の各々における内部に第一反射面、又は第二反射面が形成される構成としてもよい。例えば、
図9に示すように、光学結像部材8が二枚のガラス板10a,10bを備え、ガラス板10aの内部に複数の第一反射面4が形成されると共に、ガラス板10bの内部に複数の第二反射面6が形成される構成であってもよい。なお、この光学結像部材8を製造する場合には、例えば、ガラス板10aとガラス板10bとの各々の元となる両ガラス元板について、内部に反射面(第一反射面4、又は第二反射面6)を形成した後、両反射面4,6が相互に直交する方向に延びるように、両ガラス板10a,10bを接着剤で貼り付けて重ね合わせることで製造することが可能である。
【0072】
また、上記の第二実施形態においては、複数の第一反射面、及び複数の第二反射面の各々について、ガラス元板における深さ位置が相互にずれた第一深さ領域と第二深さ領域との各々に反射面が形成されている。しかしながら、例えば、ガラス元板における深さ位置が、第一深さ領域、及び第二深さ領域とのいずれともずれた第三深さ領域を新たに設けて、この第三深さ領域にも反射面が形成される構成としてもよい。
【0073】
また、上記の各実施形態とは異なり、第一反射面と第二反射面とがガラス元板における同じ深さ位置に形成される構成としてもよい。この場合、複数の第一反射面と複数の第二反射面とが格子状に並べられる構成となる。このような光学結像部材は、例えば、ガラス元板の内部に複数の第一反射面を形成した後、これら第一反射面と同じ深さ位置に集光させたパルスレーザーにより、複数の第二反射面を形成することによって製造することができる。なお、第二反射面の形成時において、移動中のパルスレーザーの焦点が形成済の第一反射面と交差する際には、パルスレーザーの出力を弱めることが好ましい。
【0074】
また、上記の各実施形態では、複数の第一反射面、及び複数の第二反射面を等間隔で相互に平行に形成しているが、第一反射面同士の間隔、及び第二反射面同士の間隔は、必ずしも等間隔でなくとも被写体の像を結像させることが可能である。さらに、上記の各実施形態では、複数の第一反射面、及び複数の第二反射面が、ガラス元板の一方面及び他方面に対して直立した姿勢で形成されている。しかしながら、この限りではなく、直立した姿勢から10°以下、好ましくは5°以下、より好ましくは1°以下、さらに好ましくは0.5°以下、最も好ましくは0.1°以下の範囲で傾斜した姿勢であれば、被写体の像を結像させることができる。このような姿勢の反射面は、例えば、パルスレーザーの光軸をガラス元板の一方面及び他方面に対して傾斜させた状態の下で、パルスレーザーを移動させることによって形成することが可能である。
【0075】
また、上記の各実施形態では、複数のフィラメント領域を相互に平行に並べることで、これらフィラメント領域を一組としてなる反射面をガラス元板の内部に形成する態様となっている。しかしながら、反射面を形成する態様はこの限りではなく、金属イオンを含んだガラス元板を準備し、このガラス元板の内部に集光させたパルスレーザーを移動させることによっても反射面を形成することができる。この場合、パルスレーザーの焦点の軌跡には、還元反応によって金属粒子が析出される。この析出された金属粒子で反射面を形成することが可能である。
【0076】
また、上記の各実施形態では、ガラス元板を固定した状態において、このガラス元板の内部に集光させたパルスレーザーを移動させることで、反射面を形成する態様となっていが、パルスレーザーを固定し、ガラス元板を移動させることによって反射面を形成する態様としても勿論よい。パルスレーザーとガラス元板とは、これらが相対移動してさえいれば、ガラス元板の内部に反射面を形成することができる。
【0077】
また、上記の各実施形態では、ガラス板(ガラス元板)が平面視で正方形の輪郭形状を有しているが、この限りではなく、ガラス板の輪郭形状は任意の形状であってよい。すなわち、ガラス板の輪郭形状が円形や楕円形、菱形、多角形等であっても構わない。
【実施例1】
【0078】
以下、本発明に係る光学結像部材に採用する上で好適なガラス板(上記の実施形態ではガラス元板に相当)について説明する。下記の表1はガラス板(試料No.1〜No.7)のガラス組成、及び特性を示すものである。
【0079】
【表1】
【0080】
以下、試料No.1〜No.7の製造方法について説明する。
【0081】
まず、表1に示すようなガラス組成となるように、ガラス原料を調合し、得られたガラス原料をガラス溶融炉に供給して1500℃〜1600℃で溶融した。次に、得られた溶融ガラスをオーバーフローダウンドロー法により、表1に掲載の厚み寸法、及び1500mmの幅寸法を有するように成形した。次に、成形直後のガラスを徐冷した。この際、粘度が10
12dPa・s〜10
14dPa・sにおける温度での冷却速度が20℃/分になるように、徐冷の温度とガラスの引き出し速度を調整した。
【0082】
以下、試料No.1〜No.7の特性について、その測定方法を説明する。
【0083】
密度は、アルキメデス法により測定した値である。歪点は、ASTM C336−71の方法に基づいて測定した値である。ガラス転移温度は、熱膨張曲線からJIS R3103−3の方法に基づいて測定した値である。軟化点は、ASTM C338−93の方法に基づいて測定した値である。10
4dPa・s、10
3dPa・s、10
2.5dPa・sの粘度における温度は、白金球引き上げ法で測定した値である。この温度が低い程、溶融性に優れていることになる。ヤング率は、共振法により測定した値である。
【0084】
熱膨張係数は、ディラトメーターを用いて、30℃〜380℃における平均熱膨張係数を測定したものである。熱膨張係数の測定用試料として端面にR加工を施した直径5mm×高さ20mmの円柱状の試料を用いた。
【0085】
液相温度は、標準ふるい30メッシュ(500μm)を通過し、50メッシュ(300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れ、温度勾配炉中に24時間保持して、結晶の析出する温度を測定したものである。液相粘度は、液相温度におけるガラスの粘度を白金球引き上げ法で測定した値である。
【0086】
耐HCl性と耐BHF性については、以下のように評価した。まず、各試料の両表面を光学研磨した後、表面の一部をマスキングした。次に、所定の濃度に調合した薬液中で、所定の温度で所定の時間浸漬した。その後、マスクを外し、マスク部分と浸食部分の段差を表面粗さ計で測定し、その値を浸食量とした。また、各試料の両表面を光学研磨した後、所定の濃度に調合した薬液中で、所定の温度で所定の時間浸漬した。その後、試料の表面を目視で観察し、表面が白濁したり、荒れたり、クラックが入っているものを「×」、変化がないものを「○」として評価した。
【0087】
ここで、耐BHF性の浸食量は、130BHF溶液(NH
4HF:4.6質量%、NH
4F:36質量%)を用いて20℃、30分間の処理条件で測定した。外観評価は、63BHF溶液(HF:6質量%、NH
4F:30質量%)を用いて、20℃、30分間の処理条件で行った。また、耐HCl性の浸食量は、10質量%塩酸水溶液を用いて80℃、24時間の処理条件で測定した。外観評価は、10質量%塩酸水溶液を用いて80℃、3時間の処理条件で行った。
【0088】
クラック発生率は、湿度30%、温度25℃に保持された恒温恒湿槽内において、荷重1000gに設定したビッカース圧子を試料表面(光学研磨面)に15秒間打ち込み、その15秒後に圧痕の四隅から発生するクラックの数を数える(一つの圧痕につき最大4とする)。20回圧子を打ち込み、総クラック発生数/80×100として評価した。
【0089】
表面の表面粗さRa、及び端面の表面粗さRaは、JIS B0601:2001に準拠した方法で測定した値である。
【0090】
うねりは、触針式の表面形状測定装置を用いて、JIS B0601:2001に記載のWCA(ろ波中心線うねり)を測定した値である。この測定は、SEMI STD D15−1296「FPDガラス板の表面うねりの測定方法」に準拠した方法で測定した。測定時のカットオフは0.8mm〜8mm、ガラスの引き出し方向に対して垂直な方向に300mmの長さで測定した値である。
【0091】
最大厚みと最小厚みの差は、レーザー式厚み測定装置を用いて、ガラス板の任意の一辺に厚み方向からレーザーを走査することにより、ガラス板の最大厚みと最小厚みを測定した上で、最大厚みの値から最小厚みの値を減じた値である。
【0092】
屈折率ndは、精密屈折率計(島津製作所社製KPR−2000)を用いて測定した値である。
【0093】
上記の各試料を用いて、光学結像部材に採用する上で好適か否かの一つの指標として、透過率を測定した。以下、透過率の測定方法について説明する。
【0094】
試料No.1〜No.6のガラス材質について、表2に掲載の厚み、及び波長にて透過率を測定した。測定装置として、UV−3100PCを使用し、スリット幅:2.0nm、スキャン速度:中速、サンプリングピッチ:0.5nmの条件で測定した。測定結果を下記の表2に示す。
【0095】
【表2】
【0096】
表2から分かるように、試料No.1〜No.6は、いずれの厚み、波長においても透過率が良好であった。このため、これらのガラス板は、光学結像部材に好適に採用することが可能である。
【実施例2】
【0097】
上記の試料No.2を用いて光学結像部材を作製した。
【0098】
まず、上記の試料No.2のガラス材質のガラス板を用意した。ガラス板の厚みは0.5mmであり、ガラス板のサイズ(横×縦)は、550mm×650mmである。また、屈折率ndは1.52である。次に、波長800nm、パルス幅130fsのHe−Neレーザー(エネルギー1.9μJ)を用いて、ガラス板を1cm/sの速度で繰り返し走査することにより、ガラス板の内部に複数の第一反射面、及び複数の第二反射面を形成した。以上のようにして、光学結像部材を作製することが可能であった。