(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軸線回りに回転するロータ、及び該ロータを回転可能に支持するカートリッジ本体を有するカートリッジを回転機械とし、回転数が可変とされた前記回転機械のバランス振動を計測するための高速回転機械の振動計測装置であって、
剛に固定された支持構造物と、
前記回転機械の振動を検出する振動検出部と、
前記カートリッジ本体を前記支持構造物に対して弾性支持するとともに、前記ロータの回転中において前記弾性支持によるばね定数が可変とされた弾性支持部と、
を備える高速回転機械の振動計測装置。
軸線回りに回転するロータ、及び該ロータを回転可能に支持するカートリッジ本体を有するカートリッジを回転機械とし、回転数が可変とされた前記回転機械のバランス振動を計測するための振動計測方法であって、
前記カートリッジ本体を、剛に固定された支持構造物に対して、ばね定数が可変とされた弾性支持部を介して弾性支持させる工程と、
前記回転機械の前記ロータに軸線回りの回転を付与する工程と、
前記ロータの回転中において前記弾性支持部のばね定数を変更する工程と、
前記回転機械の振動を検出する工程と、
を有する振動計測方法。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等のエンジンに搭載されるターボチャージャとして、例えば特許文献1に記載されるような、エンジンからの排気を動力源として回転する回転体を有し、この回転体のアンバランスを修正するためのアンバランス修正方法が知られている。
【0003】
ここで、
図8には、一般的なターボチャージャ100を示している。
ターボチャージャ100は、回転体101の回転(具体的には、回転体101に含まれるコンプレッサホイール102の回転)により、エンジンに供給される吸気を圧縮して過給することで、エンジンの出力を向上させ、タービン103の効率を向上させるものである。そして、前記回転体101は、過給に際して非常に高速で回転する。
このようなターボチャージャ100では、回転体101に存在するアンバランスが大きいと、回転体101の回転に伴う振動が過大となり、回転体101を支持する部分等の振動やそれに伴う騒音等の不具合が生じるおそれがある。そのため、ターボチャージャ100では、回転体101のバランスが非常に重要となっている。そこで、ターボチャージャ100については、その製造過程において、例えば、回転体101に回転力が付与される構成で、ターボチャージャ100を分解することなく、短時間で回転体のアンバランス状態を修正することが行われている。
【0004】
ここで、従来におけるターボチャージャのアンバランスの修正に際しては、エンジンからの排気に相当するエアが使用され、回転体が所定の回転数で回転されられる。回転体が回転している状態で、加速度ピックアップにより振動加速度が検出され、位相検出器により回転体の回転角が検出される。これらの検出された振動加速度及び回転角に基づいて、回転体のアンバランスの量及び位相に基づいて、回転体のバランスの調整(アンバランスの修正)が行われる。なお、バランスの調整は、回転体において、アンバランスに対応する部分が機械加工等によって切削されて除去されることにより行われる。
【0005】
例えば特許文献2には、高速回転機器を乗せた剛な架台をばねによって支持し、荷重計または振動計測計によって振動を計測する方法が記載されている。この場合、架台とばねによって固有値が1〜2つ設定されており、個々のワークのケーシングの個体差の影響を受けない画一的なバランス調整を可能としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の振動計測装置では、ワークの支持剛性が予め決定されており、アンバランス振動に対する応答感度を積極的に変更することができない。そのため、幅広い速度域に対して精度良くアンバランス振動を計測することが困難であった。
また、大量の製品を流す生産ライン上においては、加速度センサを直接製品に取り付けることが困難であり、計測装置上のスクロールに取り付けられている。この場合、加速度センサにスクロールのモーダルマスが影響する。そして、スクロールによるカートリッジ本体の支持が線状(インロー淵の円周)であり、接触面積が小さいため振動伝播が弱くなっているため、スクロールによるカートリッジ本体の支持が片当たりとなる可能性があった。さらに、スクロールの両サイドからバランスベンチによって圧力を加えるため、防振ゴムが過度に硬くなる可能性があり、柔支持が維持できない可能性があった。
しかも、カートリッジ本体の支持が実運転時(エンジンに取り付けられた状態)の境界条件と異なることから、軸受反力が実運転状態を模しておらず、弾性バランスができていない。
【0008】
また、特許文献2に示す振動計測方法では、実運転状態における支持条件よりも固有値を低く設定した場合において、剛体モードのバランスは計測することが可能であるが、一方で実機で現れる弾性モードのバランスは、十分に計測することができない可能性がある。また、前記支持条件を実運転状態に合わせた場合には、弾性モードのバランスは計測することが可能であるが上記のような剛体モードのバランスを計測できない。
【0009】
本発明は、バランス振動計測の精度を向上させることができ、回転機械のアンバランスを低減することができる高速回転機械の振動計測装置、及び振動計測方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、高速回転機械の振動計測装置は、軸線回りに回転するロータ、及び該ロータを回転可能に支持するカートリッジ本体を有するカートリッジを回転機械とし、回転数が可変とされた前記回転機械のバランス振動を計測するための高速回転機械の振動計測装置であって、剛に固定された支持構造物と、前記回転機械の振動を検出する振動検出部と、前記
カートリッジ本体を前記支持構造物に対して弾性支持するとともに、
前記ロータの回転中において前記弾性支持
によるばね定数が可変とされた弾性支持部と、を備えることを特徴としている。
【0011】
本発明の第5の態様によれば、振動計測方法は、軸線回りに回転するロータ、及び該ロータを回転可能に支持するカートリッジ本体を有するカートリッジを回転機械とし、回転数が可変とされた前記回転機械のバランス振動を計測するための振動計測方法であって、前記
カートリッジ本体を、剛に固定された支持構造物に対して、ばね定数が可変とされた弾性支持部を介して弾性支持させる工程と、前記回転機械
の前記ロータに軸線回りの回転を付与する工程と、
前記ロータの回転中において前記弾性支持部のばね定数を変更する工程と、前記回転機械の振動を検出する工程と、を有することを特徴としている。
【0012】
上記した高速回転機械の振動計測装置、及び振動計測方法によれば、剛に固定された支持構造物に対して回転機械を弾性支持部を介して弾性支持させた後、回転機械に軸線回りの回転を付与し、回転機械の振動を検出することで、回転数が可変とされた回転機械のバランス振動を計測することができる。
この場合には、回転機械が弾性支持部によって柔支持されており、その弾性支持部のばね定数が変更可能であるので、これによるS/N比を向上させることができ、ばね定数が機能しない低速回転時の剛体モードバランスの振動計測と、実機を想定した支持条件における高速回転時の弾性モードバランスの振動計測との両方を、同一の回転機械に対して同一の装置により連続して行うことができる。そのため、低速回転時及び高速回転時に応じたバランス調整が可能となり、バランス振動計測の精度を向上させることができ、回転機械のアンバランスを低減することができる。
これにより、剛体モードバランスのみで良い個体と、弾性モードバランスを考慮すべき個体の両方を同じ生産ライン上で計測することができるので、省設備となり生産性を高めることができる。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、高速回転機械の振動計測装置は、前記回転機械を前記支持構造物に対して減衰を与える減衰装置が設けられていてもよい。
【0014】
この場合には、減衰特性を変更することができ、高速回転時の弾性モードバランス計測における弾性モードに加えて減衰機能をもたせることができる。
【0015】
本発明の第3の態様によれば、高速回転機械の振動計測装置は、前記弾性支持部は、前記回転機械を機械的又は電気的に支持するクランプに設けられていてもよい。
【0016】
この場合には、回転機械がクランプによって機械的又は電気的に剛に支持されているので、回転機械と振動検出部との間の剛性を高めることができ、回転機械の振動をより良く振動検出部へ伝達させることが可能となる。
また、回転機械以外の振動ノイズを低減させ、計測値のS/N比を向上させることができ、実車に載せた場合の静粛性を省設備にて行うことができる。
【0017】
本発明の第4の態様によれば、前記した高速回転機械の振動計測装置において、前記振動検出部は、前記クランプに設けられていてもよい。
【0018】
この場合には、加速度センサ等の振動検出部が回転機械を剛に支持するクランプに取り付けられるので、回転機械がスクロールによって線状に支持される場合に比べて、回転機械の振動を精度よく測定することができる。
【発明の効果】
【0019】
上述した高速回転機械の振動計測装置、及び振動計測方法によれば、低速回転時と高速回転時のバランス振動計測を同一の振動計測装置により行うことができるうえ、振動計測の精度を向上させることができ、回転機械のアンバランスを低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態による高速回転機械の振動計測装置、及び振動計測方法について、図面に基づいて説明する。
【0022】
図1に示すように、本実施の形態の振動計測装置1は、ターボチャージャ等の高速回転機械の生産時において、ロータを備えた回転機械であるカートリッジ10を取り出してバランスを調整する装置である。
【0023】
カートリッジ10は、軸線O回りに回転するロータ11、12と、ロータ11、12を軸受(図示省略)を介して回転可能に支持するカートリッジ本体13と、を備えている。カートリッジ10のうちロータ11、12が回転部分であり、この回転部分の回転数が本実施の形態の振動計測装置1において可変となるように支持されている。このカートリッジ10は、ロータ11、12、及びカートリッジ本体13が組み立てられた状態で振動計測装置1に装着される。
【0024】
振動計測装置1は、剛に固定された支持構造物2と、カートリッジ10の振動を検出する加速度センサ3(振動検出部)と、カートリッジ10を支持構造物2に対して弾性支持するとともに、弾性支持のばね定数が可変とされた弾性支持部Kと、カートリッジ10を支持構造物2に対して減衰を与える減衰装置Dと、を備えている。また、弾性支持部Kには、ばね定数を可変可能とするばね定数可変機構6を備えている。
【0025】
ここで、
図1はカートリッジ10に対して弾性支持する弾性支持部Kと減衰を与える減衰装置Dを模式的に示したモデル図である。
【0026】
カートリッジ10は、カートリッジ本体13のインロー淵をなす周縁部13aにゴム材のスクロール7によって線状に、かつ絶縁状態で支持されるとともに、カートリッジ本体13の下端部13bがクランプ8によって機械的又は電気的に剛支持されている。クランプ8は、ウレタン等の材料からなり、カートリッジ本体13を下方から支持している。
【0027】
支持構造物2は、例えば生産ラインの床上に固定される基盤などである。支持構造物2には、ばね定数可変機構6を備えた弾性支持部Kが設けられ、この弾性支持部Kによってカートリッジ10のカートリッジ本体13が弾性的に支持されている。
【0028】
加速度センサ3は、回転時のカートリッジ10の振動の検出に使用され、コニカルモード、すなわち軸の平行移動以外の振動成分を計測するものである。
弾性支持部Kは、支持構造物2に対して、クランプ8を介してカートリッジ10を支持して微小な振動を許容する。
減衰装置Dは、支持構造物2と弾性支持部Kとの間に設けられている。
【0029】
ばね定数可変機構6は、支持構造物2に設けられ、弾性支持部Kのばね定数、及び支持剛性を変更するものである。
【0030】
次に、上述した構成の振動計測装置1の作用について、
図1に基づいて具体的に説明する。
本実施の形態では、剛に固定された支持構造物2に対してカートリッジ10を弾性支持部Kを介して弾性支持させた後、カートリッジ10に軸線回りの回転を付与し、カートリッジ10の振動を検出することで、回転数が可変とされたカートリッジ10のバランス振動を計測することができる。
この場合には、カートリッジ10が弾性支持部Kによって柔支持されており、ばね定数可変機構6によって、弾性特性、すなわちばね定数が変更可能である。この弾性特性を変えることでS/N比を向上させることができ、
図2に示すように、ばね定数が機能しない柔支持(ばね定数k0)により低速回転時の剛体モードバランスの振動計測と、実機を想定した環境条件(ばね定数k1)における高速回転時の弾性モードバランスの振動計測と、の両方のばね定数の異なるバランス振動計測を、同一のカートリッジ10に対して同一の振動計測装置1により連続して行うことができる。
【0031】
そのため、低速回転時及び高速回転時に応じたバランス調整が可能となり、バランス振動計測の精度を向上させることができ、カートリッジ10のアンバランスを低減することができる。
これにより、剛体モードバランスのみで良い個体(弾性モードの発生よりも低い回転数に定格がある場合)と、弾性モードバランスを考慮すべき個体(実車に載せた際の運転時に弾性モードが現れる仕様機種)の両方を同じ生産ライン上で計測することができるので、省設備となり生産性を高めることができる。
【0032】
また、本実施の形態では、カートリッジ10を支持構造物2に対して減衰を与える減衰装置Dが設けられているので、減衰特性を変更することができ、高速回転時の弾性モードバランス計測における弾性モードに加えて減衰機能をもたせることができる。これにより、実車搭載時の振動特性をより詳細に再現できる。
【0033】
また、本実施の形態では、カートリッジ10がクランプ8によって機械的又は電気的に剛に支持されているので、カートリッジ10と加速度センサ3との間の剛性を高めることができ、カートリッジ10の振動をより良く加速度センサ3へ伝達させることが可能となる。さらに、カートリッジ10以外の振動ノイズを低減させ、計測値のS/N比を向上させることができ、実車に載せた場合の静粛性を省設備にて行うことができる利点がある。
【0034】
上述した本実施の形態による高速回転機械の振動計測装置、及び振動計測方法では、低速回転時と高速回転時のバランス振動計測を同一の振動計測装置1により行うことができるうえ、振動計測の精度を向上させることができ、カートリッジ10のアンバランスを修正して低減することができる。
【0035】
次に、上述した実施の形態の高速回転機械の振動計測装置、及び振動計測方法による実施例について、添付図面に基づいて説明するが、上述の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、実施の形態と異なる構成について説明する。
【0036】
(第1実施例)
図3に示すように、第1実施例による振動計測装置1Aでは、カートリッジ10において、クランプ8は、ウレタン等の材料からなり、支持構造物2上に固定されている板ばね4(弾性支持部)の上部に位置する介挿部41を介してカートリッジ本体13を下方から支持している。
【0037】
板ばね4は、支持構造物2に対して、クランプ8を介してカートリッジ10を支持して微小な振動を許容するものであり、薄板状のばね本体40と、ばね本体40の平面中央部に立設される介挿部41と、が一体的に設けられている。ばね本体40のうち、介挿部41の基端部分から側方に向けて張り出した部分がばね要素部4Aとなる。
介挿部41は、軸部42と、軸部42の上端部分から水平方向Xに張り出した突出部43と、を有している。突出部43の突出端側の下面には、加速度センサ3が固定されている。
2つの加速度センサ3は、回転時のカートリッジ10の振動の検出に使用され、水平方向Xで軸部42から距離が確保された位置となるので、コニカルモード、すなわち軸の平行移動以外の振動成分を計測することが可能となる。
【0038】
支持構造物2には、第1ばね定数可変機構6Aを備えた板ばね4が設けられ、この板ばね4によってカートリッジ10のカートリッジ本体13が弾性支持されている。
【0039】
第1ばね定数可変機構6Aは、上端部で板ばね4の左右両側のばね要素部4Aを水平方向に摺動可能に支持する一対の支持柱61、61を備えている。支持柱61は、それぞれ支持構造物2に対して、適宜な移動手段により水平方向X(
図3で左右方向)に移動可能に設けられている。具体的には、支持構造物2上に案内レール2Aが設けられ、その案内レール2Aに一対の支持柱61が案内される構成であって、それら支持柱61を移動方向(水平方向X)の所定位置に設定可能な構成となっている。
【0040】
一対の支持柱61の上端には、板ばね4を上下から転動可能に挟持する把持ローラ62が設けられている。支持柱61を移動させることで、板ばね4における把持位置(支持点P1、P2)を水平方向Xに沿って変位させることができる。つまり、ばね要素部4Aにおいて、ばね弾性が機能する領域、すなわち左右の支持点P1、P2間のばねスパンLを支持柱61の移動により変更することが可能であり、これにより板ばね4のばね定数、及び支持剛性を変更することができる。ばねスパンLが長い場合には、ばねのたわみが大きくなり剛性が低下するのでばね定数が小さくなる。一方、ばねスパンLが短い場合には、ばねのたわみが小さくなり剛性が大きくなるのでばね定数が大きくなる。
【0041】
ダンパー5は、支持構造物2と板ばね4との間で、且つ一対の支持柱61、61同士の間に複数(2つ)設けられている。これら一対のダンパー5は、それぞれ板ばね4の下面4aにおけるばね要素部4Aを除いた部分であって、平面視でばね要素部4Aの介挿部41との境界位置4b、4cに固定されている。
【0042】
このように構成される第1実施例による振動計測装置1Aでは、剛に固定された支持構造物2に対してカートリッジ10を板ばね4を介して弾性支持させた後、カートリッジ10に軸線回りの回転を付与し、カートリッジ10の振動を検出することで、回転数が可変とされたカートリッジ10のバランス振動を計測することができる。
この場合には、カートリッジ10が板ばね4によって柔支持されており、第1ばね定数可変機構6Aの支持柱61の移動によって、ばね要素部4Aの支持点P1、P2を変えることにより、弾性特性、すなわち板ばね4のばね定数が変更可能である。この弾性特性を変えることで、上述の実施の形態と同様に、S/N比を向上させることができ、
図2に示すように、ばね定数が機能しない柔支持(ばね定数k0)により低速回転時の剛体モードバランスの振動計測と、実機を想定した環境条件(ばね定数k1)における高速回転時の弾性モードバランスの振動計測と、の両方のばね定数の異なるバランス振動計測を、同一のカートリッジ10に対して同一の振動計測装置1Aにより連続して行うことができる。
【0043】
そのため、低速回転時及び高速回転時に応じたバランス調整が可能となり、バランス振動計測の精度を向上させることができ、カートリッジ10のアンバランスを低減することができる。
これにより、剛体モードバランスのみで良い個体(弾性モードの発生よりも低い回転数に定格がある場合)と、弾性モードバランスを考慮すべき個体(実車に載せた際の運転時に弾性モードが現れる仕様機種)の両方を同じ生産ライン上で計測することができるので、省設備となり生産性を高めることができる。
したがって、第1実施例においても、低速回転時と高速回転時のバランス振動計測を同一の振動計測装置1Aにより行うことができるうえ、振動計測の精度を向上させることができ、カートリッジ10のアンバランスを低減することができる。
【0044】
なお、第1実施例では、減衰装置であるダンパー5を設けているが、このダンパーを省略してもよい。
【0045】
(第2実施例)
図4に示すように、第2実施例による高速回転機械の振動計測装置1Bは、非線形ばね9を使用し、この非線形ばね9の圧縮によってばね定数を変更する第2ばね定数可変機構6Bを備えている。ここで、カートリッジ10、加速度センサ3、板ばね4、スクロール7、及びクランプ8は、上述した第1実施例と同じ構成であるので、ここでは詳しい説明を省略する。板ばね4に対する加速度センサ3の取り付け位置についても、第1実施例と同様の位置である。
【0046】
支持構造物2には、第2ばね定数可変機構6Bが設けられている。第2ばね定数可変機構6Bは、支持構造物2上に板ばね4の水平方向Xの外側に上下動可能に設けられた一対の支持柱63、63と、それら支持柱63、63間で上下動可能に設けられた台座21と、支持柱63と板ばね4との間、及び台座21と板ばね4との間に設けられる非線形ばね9(9A、9B)と、を備えている。なお、
図4では、水平方向の移動手段を省略している。
【0047】
支持柱63には、各上端から互いに対向する水平方向Xに向けて張り出す上側係止部63aが設けられている。上側係止部63aとばね要素部4Aの上面4dとの間には、それら両者を付勢する第1非線形ばね9Aが設けられている。
支持柱63は、例えばスライド機構やジャッキ等の不図示の上下移動機構を備え、支持柱63の上側係止部63aを所望の高さ位置に移動させて固定可能に構成されている。
【0048】
台座21は、上端外周縁に形成される段差部の底面に下側係止部21aを有している。この下側係止部21aとばね要素部4Aの下面4aとの間には、それら両者を付勢する一対の第2非線形ばね9B、9B、及びそれら第2非線形ばね9A、9Bよりも外側に一対のダンパー5、5(減衰装置)が設けられている。
台座21は、例えばスライド機構やジャッキ等を用いた不図示の上下移動機構を備え、台座21の下側係止部21aを所望の高さ位置に移動させて固定可能に構成されている。
なお、台座21の上端面21bは、ばね要素部4Aの下面4aに下側係止部21aの位置より上方に位置しており、第2非線形ばね9Bが完全に圧縮する前に、板ばね4の下面4aに当接し、板ばね4及びクランプ8を介してカートリッジ10を剛支持することも可能となっている。
【0049】
非線形ばね9A、9Bとしては、たわみに対して、ばね定数が変化する周知の非線形ばねであって、例えば円錐コイルばね、不等ピッチコイルばね、テーパコイルばね等を採用することができる。
【0050】
第2実施例による振動計測装置1Bでは、板ばね4のばね特性を非線形ばねの圧縮によって実現し、ばね定数を変更することができる。例えば、非線形ばね9A、9Bを圧縮することで、ばね板4の剛性を高くすることが可能である。
【0051】
なお、第2実施例では、減衰装置であるダンパー5を設けているが、このダンパーを省略してもよい。
【0052】
また、第2実施例では加速度センサ3を板ばね4に固定しているが、この位置に限定されることはなく、例えば加速度センサ3が回転機械を剛に支持するクランプ8に取り付けることも可能である。この場合には、回転機械がスクロールに線状に支持される場合に比べて、回転機械の振動を精度よく測定することができる。
【0053】
(第3実施例)
図5に示すように、第3実施例による高速回転機械の振動計測装置1Cは、電磁石23を使用し、電磁ばね44(弾性支持部)のばね特性(ばね定数)を電磁気的に変更する第3ばね定数可変機構6Cを備えた構成となっている。
電磁ばね44は、周面に適宜数の金属板44Cが貼着されたばね本体44Aと、ばね本体44Aの上端から水平方向の外側に向けて突出する張出し部44Bと、を備えている。この張出し部44Bの先端下面に加速度センサ3が設けられている。
【0054】
金属板44Cに対向する位置には、複数の電磁石23が配設されている。張出し部44Bの下面44aには、張出し部44Bの変位、速度、加速度を計測するための計測部24を備えている。なお、金属板44C、電磁石23、計測部24は、第3ばね定数可変機構6Cに相当する。
【0055】
第3実施例による振動計測装置1Cでは、計測部24で測定した加速度、速度、変位等の測定値に応じて、復元力の大きさを予め決定しておき、電磁石23で金属板44Cに対する磁界を変えることで、ばね定数を変化させることができる。具体的には、磁場を高くすることでばね定数を高くし、磁場を小さくすることでばね定数が低下させることができる。また、電気によるため、特性変更を機敏に行うことができ、ばね定数の変化精度を高めることができる。
【0056】
また、振動検出部として加速度センサ3に限定されることはなく、例えば変位センサ等であってもよい。
【0057】
次に、上述した第3実施例の変形例について、
図6に基づいて説明する。
図6に示す振動計測装置1Dの第4ばね定数可変機構6Dには、第1実施例の板ばね4(弾性支持部)において、そのばね本体40のばね要素部4Aの上方を覆う張出片64aを有する支持柱64を設けている。張出片64aの下面には、ばね要素部4Aに対向するコイル25が貼着されている。ばね要素部4Aの下方には、間隔をあけて電磁石26が設けられている。
【0058】
本変形例による振動計測装置1Dの場合も、コイル25に付与する電圧を変化させることで、ばね定数を変化させることができる。なお、
図5に示す振動計測装置1Cでは、計測部24を設けているが、本変形例ではこの計測部24を省略した制御が可能である。
【0059】
(第4実施例)
図7に示す第4実施例による振動計測装置1Eは、空気ばね65の流体圧を調整することでばね本体45(弾性支持部)の減衰特性(ばね定数)を変化させる第5ばね定数可変機構6Eを設けた構成となっている。
【0060】
第5ばね定数可変機構6Eは、ばね本体45の下端45a、及び左右両側面45b、45cのそれぞれに設けられた圧縮機能を有する空気ばね65と、空気ばね65のガス圧を調整可能に設けられたガス圧調整部66と、を備えている。
【0061】
各空気ばね65は、専用のガス圧調整部66の管路66Aに接続されている。なお、
図7では、ばね本体45の下端45aに接続されるガス圧調整部66のみが記載され、側面45b、45cに接続されるガス圧調整部66が省略されている。
【0062】
ガス圧調整部66は、コンプレッサやボンベ等の流体供給部(図示省略)からガス(流体)が供給される管路66Aと、管路66Aの途中に設けられる蓄圧部66Bと、蓄圧部66Bの上流側の管路66Aに配置される調整弁66Cと、蓄圧部66Bと空気ばね65間に設けられるオリフィス部66Dと、を備えている。
【0063】
供給されるガスが圧縮性流体の場合には、蓄圧部66Bとしてチャンバが用いられ、封入したガス圧を調整し、空気ばね65による支持剛性を変化させることが可能である。
また、供給されるガスが非圧縮性流体の場合には、蓄圧部66Bとしてアキュムレータを取り付けることで、空気ばね65にばね特性を付与することができる。すなわち、アキュムレータの設定によって、ばね特性、流路損失の設定によって減衰特性を変化させることが可能である。
オリフィス部66Dは、管路66A内での流路損失を変化させることにより、空気ばね65の減衰特性を変更するものである。
【0064】
使用する流体として、電場を与えることで見かけの粘性を変化させることが可能なER流体(電気粘性流体)や、磁場を与えることで見かけの粘性を変化させることが可能なMR流体(磁性粘性流体)を用いることで、電磁気的に減衰特性を変化させることも可能である。
【0065】
本第4実施例の高速回転機械の振動計測装置1Eでは、ガス圧調整部66によって空気ばね65のガス圧を調整することで、ばね本体45の減衰特性を変えることが可能であり、ばね定数を変化させることができる。また、ターボチャージャの加速には圧縮空気が用いられており、その空気源を使用することが可能となり、簡便な機構となる利点がある。
【0066】
また、第4実施例において、伸縮装置として空気ばね65を用いているが、これに代えて、例えば流体(エア、油)を封入したシリンダを採用してもよい。
【0067】
以上、本発明による高速回転機械の振動計測装置、及び振動計測方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。