【実施例】
【0017】
図1〜
図6に、実施例のスカラアーム4を示す。スカラアーム4は、ハンド2(支持部)により物品を位置決めすると共に支持し、棚受80,81等の移載相手との間で、アーム32,34の進退動作等により物品を移載(受け渡し)する。なお
図7,
図8は、スカラアーム4が物品を移載する棚受80,81を示す。
【0018】
物品は、450mmウェハー用のFOUP52(第1の物品)と、300mmウェハー用のFOUP64(第2の物品)の2種類であるが、物品の種類自体は任意である。第2の物品は、第1の物品よりもサイズが小さく、特に高さが第1の物品よりも低いものとする。各図において、鎖線はFOUP52,64を示し、FOUP52,64のサイドフランジのように、本発明とは関係がない部分は省略して示す。
図1,
図4,
図7,
図8では、ハンド2及び棚受80,81による位置決めを示すため、FOUP52,64の底部の構造を示す。
【0019】
図1,
図2は、450mmウェハー用のFOUP52を支持した状態での、スカラアーム4を示す。ハンド2はプレート6を備え、プレートの前後方向での先端と基部とに厚肉部8,9があり、中間に薄肉部10がある。基部の厚肉部9には軸40があり、軸40はハンド2を回動させる。この明細書では、ハンド2の軸40側を基端、その反対側の厚肉部8側を先端とし、先端と基端とを結ぶ方向を前後方向という。また前後方向に対し、水平面内で直角な方向を左右方向という。
【0020】
プレート6の左右方向の幅は、FOUP52,64の左右方向の幅よりも狭く、FOUP52,64を棚受80,81が支持できるようにしてある。先端側の厚肉部8の左右方向中央部に位置決めガイド12があり、基端側の厚肉部9には左右例えば一対の位置決めガイド16,16がある。位置決めガイド12,16は、左右方向の長さが異なるが、基本的構造は同じで、薄肉部10側が低くなるように傾斜したテーパー面13,17と、テーパー面13,17の下端から薄肉部10側へ延びる水平な支持面14,18とを備えている。またテーパー面13,17と支持面14,18との境界上で、かつ位置決めガイド12,16の左右方向外側の端部の点19は、FOUP52の回り止めとなる。
【0021】
厚肉部8の左右方向中央部で薄肉部10寄りに、例えば平面視で長方形状の位置決め突起20があり、位置決め突起20の左右方向の端部には、R部が設けられている。薄肉部10には、例えば3個のキネマチックカップリングピン22(以下ピン22という)が設けられ、ピン22の高さは支持面14,18の高さよりも低くしてある。薄肉部10の上面を、厚肉部8の上面よりもDだけ低い位置に配置し、このため、厚肉部8,9と薄肉部10との間には、肉厚差Dが有る。そして薄肉部10の上面が厚肉部8の上面よりも低い位置にあるため、位置決めガイド12,16の高さを小さくできる。
【0022】
スカラアーム4は、ベース30に設けた軸36を中心に回動するアーム32と、アーム32の先端側の軸38を中心に回動するアーム34とを備え、アーム34の先端側に前記の軸40を備えている。スカラアーム4は昇降と水平往復運動とが自在な移動体に搭載され、この移動体はFOUP52,64を一時保管するストッカ等に設置されて、棚に沿って往復運動し、アーム42によりスカラアーム4を支持して昇降させる。そしてスカラアーム4の伸縮とベース30の昇降とを組み合わせて、棚受80,81との間でFOUP52,64を移載する。
【0023】
44は第1の落下防止部材、46は第2の落下防止部材である。落下防止部材44,46は、アーム34から鉛直上向きに直立する支柱48に取り付けられ、高さは固定で、落下防止部材44は支柱48の上端付近に、落下防止部材46はその下部に取り付けられている。第2の落下防止部材46は支柱48への取り付け軸を中心に水平面内で回動自在で、先端には鉛直軸回りに回動するローラ50が取り付けられている。第1の落下防止部材44は450mmウェハー用のFOUP52の落下を防止し、第2の落下防止部材46は300mmウェハー用のFOUP64の落下を防止する。落下防止部材44はFOUP52のドア部58の上端を規制し、落下防止部材46はFOUP64のドア部68の上端を規制する。さらに落下防止部材46は、FOUP52に対して、ローラ50がドア部58の端面59に押されることにより後退する。落下防止部材44,46等から成る落下防止機構の構造は、
図6を参照して後で詳細に説明する。なお69はFOUP64のドア部68の端面で、端面59は端面69よりも支柱48に近い側にある。
【0024】
図1,
図2に示すように、450mmウェハー用のFOUP52は底部の4周に沿ってコンベヤ面54が設けられ、側面の下部でコンベヤ面54と交わる面はコンベヤガイド面55とされ、コンベヤ面54とコンベヤガイド面55は特定の位置にある平滑な面である。またFOUP52の底部には、キネマチックカップリング用に3個のV溝(断面が逆V字状の溝)が設けられ、ドア部58側のV溝をV溝56といい、反対側のV溝をV溝57という。ハンド2は、前後のコンベヤガイド面55と置決めガイド12,16とにより、前後方向の位置を位置決めし、コンベヤ面54を支持面124,18で支持する。またドア部58と反対側のV溝57を、位置決め突起20で位置決めすることにより、左右方向の位置決めを行う。位置決め突起20のみでは、FOUP52の鉛直軸回りの向きが変化する可能性があるので、FOUP52の回転を回り止め19により禁止する。
【0025】
450mmウェハー用のFOUP52の支持を、
図1〜
図3に示す。
図3に示すように、コンベヤガイド面55を位置決めガイド12のテーパー面13によりガイドし、コンベヤ面54を支持面14により支持する。位置決めガイド16でも同様に、コンベヤガイド面55をテーパー面17によりガイドし、コンベヤ面54を支持面18により支持する。これによってFOUP52は前後方向に位置決めされ、鉛直軸回りの回転は回り止め19により防止される。このようにしてFOUP52は水平面内で位置決めされるので、残る運動の自由度は上下運動のみとなる。スカラアーム4の動作、あるいはスカラアーム4を搭載した移動体の動作により、FOUP52に大きな加速度が加わると、FOUP52が落下あるいは転倒する可能性がある。そこで第1の落下防止部材44により、FOUP52の高さを規制し、落下及び転倒を防止する。
【0026】
300mmウェハー用のFOUP64の支持を、
図4,
図5に示す。薄肉部10の前後方向の長さは、FOUP64の奥行きよりも長く、薄肉部10上にFOUP64を支持する。コンベヤ面65を位置決めには用いず、キネマチックカップリング用の3個のV溝66に、3本のピン22をキネマチックカップリングさせて、FOUP64の本来の仕様に従って位置決めする。これが可能なのは、FOUP64はFOUP52よりも小さいため、V溝66の位置にピン22を配置できるためである。またピン22は薄肉部10上にあるため、FOUP52の底部とは接触しない。さらに位置決め突起20は、FOUP64の底面から外れた位置にある。ピン22によりFOUP64は水平面内で位置決めされるので、第2の落下防止部材46によりFOUP64の高さを規制し、落下及び転倒を防止する。
【0027】
図6に示すように、支柱48はアーム34に設けられ、アーム32,34が
図1、
図4の状態から伸張しているときには、落下防止部材44,46はFOUP52,64の上部から離れている。このため、落下防止部材44,46はFOUP52,64と干渉しない。アーム32,34が
図1、
図4のように原点位置へ復帰すると、移動体は走行が可能となる。そしてアーム34が原点位置へ復帰すると、落下防止部材44,46はFOUP52,64の上部へ進出しようとし、落下防止部材44がドア部58の上部へ進出することにより、FOUP52の落下及び転倒を防止する。なお60は弾性片で、落下防止部材44,46の底部に設けられ、FOUP52,64が接触した際の衝撃を吸収する。弾性片60は設けなくても良い。
【0028】
落下防止部材46は鉛直な軸70回りに回動自在に支持され、かつFOUP52,64の上部へ進出する向きへ付勢部材により付勢されている。71,72はブラケット、73は軸受、74はトーションバネで付勢部材の例である。落下防止部材46の先端の底部に前記の弾性片60が設けられているが、設けなくても良い。また落下防止部材46の向きをストッパ76により規制し、FOUP52のドア部68の上部へ進出するようにしてある。ローラ50は、鉛直な軸77回りに回動自在に、軸受78により支持されている。そしてFOUP52に対しては、ローラ50がドア部の正面で押されることにより後退し、FOUP64に対しては
図6のように落下防止部材46がドア部68の上部に進出して、落下及び転倒を防止する。
【0029】
実施例では、落下防止部材46をFOUP52,64の種類に応じて進退させるために、付勢部材とストッパ76とを用いたが、これらに代えてソレノイド、あるいはモータ等の駆動部材により、落下防止部材46を進退させても良い。ただしこのようにすると、落下防止機構が大型化し、またメンテナンスが必要な箇所が増加する。
【0030】
図7は、棚受80,81による450mmウェハー用のFOUP52の支持を示す。棚受80,81は各々、前後方向の位置決めガイド82,左右方向の位置決めガイド86,及び前後左右兼用の位置決めガイド90を備え、FOUP52を前後左右に位置決めする。83,91は前後方向に傾斜するテーパー面で、87,92は左右方向に傾斜するテーパー面で、これらはコンベヤガイド面55をガイドする。84,88,93は水平な支持面で、これらはコンベヤ面54を支持する。
【0031】
図8は、棚受80,81による300mmウェハー用のFOUP64の支持を示す。位置決めピン94は、FOUP64のフォークリフトピン用の孔と係合して位置決めする。なお位置決めピン94は、450mmウェハー用のFOUP52でのV溝56に収まり、FOUP52とは接触しない。
【0032】
図9は、参考例の落下防止機構100を示し、FOUP52,64に対して共用である。適宜のセンサによりFOUP52,64の種類を判別し、あるいは上位のコントローラからFOUP52,64の種類を通知される。そしてアーム34に設けられた鉛直の支柱102に沿って、ボールネジ104とモータ106から成る直動機構により、FOUP52,64の種類に従って落下防止部材44を昇降させる。この参考例を実施例と比較すると、直動機構のためにスペースが必要で、直動機構のために発塵の可能性があり、かつメンテナンスの対象箇所が増加する。
【0033】
実施例ではスカラアームを用いたが、位置決めガイド12,16,位置決め突起20,ピン22等をスライドフォークのトッププレートに設け、支柱48と落下防止部材44,46をミドルプレートに設けても良い。