特許第6410071号(P6410071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6410071
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】固液分離装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 29/11 20060101AFI20181015BHJP
   B01D 19/00 20060101ALI20181015BHJP
   B30B 9/14 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
   B01D29/10 510C
   B01D29/10 530A
   B01D29/10 520Z
   B01D19/00 101
   B30B9/14 B
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-76861(P2018-76861)
(22)【出願日】2018年4月12日
【審査請求日】2018年4月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591060566
【氏名又は名称】丸井工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】井伊 勝彦
【審査官】 菊地 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−275749(JP,A)
【文献】 特開平08−103237(JP,A)
【文献】 国際公開第01/010243(WO,A1)
【文献】 特開2000−245380(JP,A)
【文献】 特開2000−189093(JP,A)
【文献】 特開昭53−138585(JP,A)
【文献】 特開平11−169123(JP,A)
【文献】 特開平09−047249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 29/11
B01D 19/00
B30B 9/14
A23L 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固液混在の処理対象物(4)に対して圧搾を行い、固形成分(5)と液体成分(6)とに分離する圧搾手段(1)と、圧搾手段(1)に処理対象物(4)を送り込む処理対象物供給手段(2)と、圧搾手段(1)から液体成分(6)を取り出す液搬出手段(3)とを備え、
圧搾手段(1)は、多孔板で円筒状に形成された圧搾スクリーン(10)と、圧搾スクリーン(10)の外周面を覆うジャケット(11)と、圧搾スクリーン(10)の内部に回転駆動可能に配された圧搾スクリュー(12)とを備え、圧搾スクリーン(10)とジャケット(11)との間が液室(14)とされ、圧搾スクリーン(10)の内部が圧搾室(15)とされており、
液室(14)内の圧搾スクリーン(10)の上面よりも上方に位置するジャケット(11)の周壁に、液体成分(6)を取り出すための取出口(21)が設けられており、液室(14)内で圧搾スクリーン(10)が浸漬する状態で処理対象物(4)に対する濾過が行われるようになっており、
取出口(21)に接続される液搬出手段(3)は減圧手段(34)を備えており、当該減圧手段(34)に由来する減圧吸引作用により、液室(14)内で圧搾スクリーン(10)が浸漬する液中濾過状態を維持しながら取出口(21)を介して液室(14)から液体成分(6)が取り出されるように構成されており、
液搬出手段(3)が、取出口(21)に接続された取出流路(30)と、取出流路(30)に接続された気液分離手段(31)と、気液分離手段(31)に接続された減圧流路(33)と、減圧流路(33)に接続された減圧手段(34)とを含み、
気液分離手段は真空タンク(31)であり、
真空タンク(31)に液体成分(6)の搬出流路(32)が接続されており、
減圧流路(33)に、搬出流路(32)の開操作時に真空タンク(31)に外部空気を取り込むための空気供給手段(47)が設けられていることを特徴とする固液分離装置。
【請求項2】
減圧手段(34)の減圧吸引作用により、処理対象物供給手段(2)から圧搾室(15)内に処理対象物(4)が送給される、請求項1記載の固液分離装置。
【請求項3】
搬出流路(32)に、真空タンク(31)内の液体成分(6)を圧送するとともに、減圧手段(34)と協同して減圧吸引作用を発揮する吸込ポンプ(60)が設けられている、請求項1又は2記載の固液分離装置。
【請求項4】
処理対象物供給手段(2)が、処理対象物(4)を圧搾手段(1)に向って圧送する移送ポンプ(28)を備える、請求項1乃至3のいずれかひとつに記載の固液分離装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液中濾過方式で圧搾を行うスクリュー型の圧搾機を備える固液分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の液中濾過方式で圧搾を行うスクリュー型の圧搾機を備える固液分離装置は、本出願人による特許文献1に公知である。特許文献1に記載の圧搾機は、豆腐製造用の圧搾機であり、多孔板で円筒状に形成された圧搾スクリーンと、この圧搾スクリーンの外周に所定間隔を置いて配置されたジャケットと、圧搾スクリーンの内部で回転駆動されるスクリューとを備える。ジャケットの内部が圧搾スクリーンにより圧搾室と豆乳室とに内外に区画されており、豆乳室内の圧搾スクリーンの上面を越える液位線を基準にして、この液位線より上方に位置するジャケットの周壁に、豆乳を排出する取出口が開口されている。ジャケットの出口側の上面中央には、先の取出口が設けられ、ジャケットの出口側の下面中央にはドレン口が設けられている。蒸煮釜で加熱した煮ごを圧搾機へ移送するために、蒸煮釜の排出口と圧搾機の軸受ケースとの間はステンレス管からなる移送通路が接続されており、移送通路の中途部に設けられた移送ポンプを駆動させることで、蒸煮釜中の煮ごを圧搾機に圧送することができる。
【0003】
圧搾機の軸受ケースに圧送された煮ごは、スクリューで下流側へ移送される間に圧搾され、圧搾スクリーンから豆乳が絞り出される。圧搾室内の圧搾かすであるおからは、圧搾機の下流端に設けられた排出口よりシュートを介して落下排出される。かかる圧搾時には下方側のドレン口は閉じられており、絞られた豆乳は豆乳室内に留まり、圧搾開始後まもなく圧搾スクリーンの全体が豆乳中に浸漬する状態で豆乳室内に充満する。豆乳の液位が上昇するのに伴って、豆乳室内にあった空気は取出口から排出される。圧搾処理の進行に伴って取出口から溢れ出た豆乳は、取出口に接続した豆乳通路を介して豆乳容器で受けられ、或いは次の処理装置へと送給される。
【0004】
以上のように特許文献1の圧搾機では、ジャケット内の豆乳室に豆乳を充満し、少なくとも圧搾スクリーンが豆乳中に浸漬する状態で圧搾を行っているため、圧搾時に圧搾スクリーンから噴出する豆乳がジャケットの内面壁と衝突して気泡を生じることを抑えて、気泡を含まない良質の豆乳を煮ごから圧搾することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−275749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように従来の圧搾機では、移送ポンプにより圧搾機の上流側に移送された煮ごは、スクリューの推進力により圧搾機の下流側に移送され、下流端へ到達するまでの間に圧搾・濾過されて液体分(豆乳)と、固形分(おから)とに分離される。しかしながら従来の圧搾機では、圧搾スクリーンの網目に固形分が付着して目詰まりを起こすと、スクリューの推進力によって固形分が網目から豆乳室側へ押し出されなければ、当該網目における目詰まりは解消されず、適切に煮ごを濾過することが困難となる。最悪の場合には、圧搾スクリーンの内面に固形分の堆積層が形成されると、当該圧搾スクリーンが機能喪失に陥るおそれもある。圧搾スクリーンに目詰まりが生じると、固形分であるおからに含まれる水分量が変動することも避けられない。以上より、従来の圧搾機においては、適切な濾過処理能力を維持しながら、煮ごに対する圧搾処理を長時間にわたって安定的に効率よく行うことは困難となっていた。
【0007】
加えて従来の圧搾機では、移送ポンプにより圧搾機に向けて煮ごを圧送しているため、大量の気泡を含む煮ごや高温の煮ごの場合にはキャビテーションが発生することが避けられず、煮ごをスムーズに圧搾機に移送させることができず、結果として圧搾機の濾過処理能力の低下を招いていた。また、移送ポンプの通過時に煮ごが加圧されて、その物性が変化するおそれもあった。
【0008】
本発明は、液中濾過方式で圧搾を行う圧搾機を備える固液分離装置において、適切な濾過処理能力を維持しながら、固液分離処理を長時間に亘って安定的に効率よく行うことができるようにすることを第1の目的とする。
加えて本発明は、液中濾過方式で圧搾を行う圧搾機を備える固液分離装置において、処理対象物が気泡を含むような場合や、処理対象物が高温である場合でもキャビテーションが発生せず、安定的に圧搾対象を圧搾機に供給することができるようにすることを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、固液混在の処理対象物4に対して圧搾を行い、固形成分5と液体成分6とに分離する圧搾手段1と、圧搾手段1に処理対象物4を送り込む処理対象物供給手段2と、圧搾手段1から液体成分6を取り出す液搬出手段3とを備える固液分離装置を対象とする。圧搾手段1は、多孔板で円筒状に形成された圧搾スクリーン10と、圧搾スクリーン10の外周面を覆うジャケット11と、圧搾スクリーン10の内部に回転駆動可能に配された圧搾スクリュー12とを備える。圧搾スクリーン10とジャケット11との間が液室14とされ、圧搾スクリーン10の内部が圧搾室15とされている。液室14内の圧搾スクリーン10の上面よりも上方に位置するジャケット11の周壁に、液体成分6を取り出すための取出口21が設けられており、液室14内で圧搾スクリーン10が浸漬する状態で処理対象物4に対する濾過が行われるようになっている。取出口21に接続される液搬出手段3が減圧手段34を備えており、当該減圧手段34に由来する減圧吸引作用により、液室14内で圧搾スクリーン10が浸漬する液中濾過状態を維持しながら取出口21を介して液室14から液体成分6が取り出されるように構成されている。液搬出手段3は、取出口21に接続された取出流路30と、取出流路30に接続された気液分離手段31と、気液分離手段31に接続された減圧流路33と、減圧流路33に接続された減圧手段34とを含む。気液分離手段は真空タンク31であり、この真空タンク31に液体成分の搬出流路32が接続されており、減圧流路33に、搬出流路32の開操作時に真空タンク31に外部空気を取り込むための空気供給手段47が設けられている。
【0010】
減圧手段34の減圧吸引作用により、処理対象物供給手段2から圧搾室15内に処理対象物4が送給されるように構成することができる。
【0013】
出流路32に、真空タンク31内の液体成分6を圧送するとともに、減圧手段34と協同して減圧吸引作用を発揮する吸込ポンプ60が設けられている構成を採ることができる。
【0014】
処理対象物供給手段2は、処理対象物4を圧搾手段1に向って圧送する移送ポンプ28を備えるものとすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の固液分離装置においては、液室14内の圧搾スクリーン10の上面よりも上方に位置するジャケット11の周壁に、液体成分6を取り出すための取出口21を設けて、液室14内で圧搾スクリーン10が浸漬する状態で処理対象物4に対して濾過(液中濾過)を行うようにしたので、濾過時に圧搾スクリーン10から噴出する液体成分6がジャケット11の内壁面に接触して気泡が生じることを解消でき、気泡を含まない良質の液体成分6を処理対象物4から得ることができる。加えて、減圧手段34に由来する減圧吸引作用により、圧搾スクリーン10の上面よりも上方に位置する取出口21から液体成分6を取り出すので、液体成分6の取出口21からの取出時に液中濾過状態が損なわれることはなく、この点でも濾過時に圧搾スクリーン10から噴出する液体成分6がジャケット11の内壁面に接触して気泡が生じることを抑えて、液体成分6の品質向上に貢献できる。特に本発明を豆乳製造用の圧搾装置に適用した場合には、気泡を含まない良質の豆乳を煮ごから得ることができる
【0018】
また、本発明の固液分離装置によれば、減圧手段34の減圧吸引作用を受けて液室14側を圧搾室15側よりも負圧とすることができるので、圧搾スクリュー12による処理対象物4の推進力に由来する内方からの圧搾作用に加えて、外方からの負圧作用を圧搾スクリーン10に作用させることができる。従って、本発明によれば、従来の圧搾作用のみで濾過を行う形態に比べて、圧搾スクリーン10は目詰まりを起こし難く、圧搾手段1の濾過処理能力が急激に低下することを防ぐことができ、固液分離処理をより長時間に亘って安定的に実行することができる。実例を挙げると、従来の豆乳製造用の圧搾装置(固液分離装置)では、圧搾スクリーン10の目詰まりに由来する濾過処理能力の低下に鑑みると、約10時間の連続運転が可能であり、当該約10時間の運転毎に洗浄動作が必要となっていたのに対して、本発明の圧搾装置(固液分離装置)を用いれば、20時間を越える連続運転が可能となり、従来装置に比べて生産性の格段の向上を図ることができる。また、濾過処理能力が低下した結果、固形成分5に含まれる水分量が増加するような不都合が発生することも防ぐことができる。圧搾スクリーン10の全体で負圧作用による濾過処理を行うことができるので、換言すれば圧搾作用と負圧作用の両作用により濾過処理を行うことができるので、圧搾作用のみにより濾過処理を行う従来形態に比べて、より効率的に固液分離処理を実行できる。
【0019】
圧搾手段1から液体成分6を取り出す液搬出手段3に減圧手段34を設けて、換言すれば、圧搾手段1の下流側に減圧手段34を設けて、この減圧手段34の減圧吸引作用により圧搾手段1に向けて処理対象物4を供給するようにしたので、処理対象物4が気泡を含むような場合や、処理対象物4が高温である場合でも、減圧手段34がキャビテーションを起こすことはなく、安定的に処理対象物4を圧搾手段1に供給することができる。処理対象物4が粘度の高い場合でも、より安定的に処理対象物4を圧搾手段1に供給することができる。
【0020】
具体的には、液搬出手段3は、取出口21に接続された取出流路30と、取出流路30に接続された気液分離手段31と、気液分離手段31に接続された減圧流路33と、減圧流路33に接続された減圧手段である減圧ポンプ34とを含むものとすることができる。これにより、取出流路30および気液分離手段31を介して、減圧手段34の減圧吸引作用を圧搾手段1に作用させることができる。
【0021】
気液分離手段は真空タンク31であり、真空タンク31に液体成分6の搬出流路32が接続されており、減圧流路33に、搬出流路32の開操作時に真空タンク31に外部空気を取り込むための空気供給手段47が設けられている構成を採ることができる。これによれば、真空タンク31の液体成分6を搬出流路32から搬出するときに、空気供給手段47を介して真空タンク31内に外部空気を取り込むことでスムーズに液体成分6を真空タンク31から搬出することができる。
【0022】
処理対象物供給手段2が、処理対象物4を圧搾手段1に向って圧送する移送ポンプ28を備えるものとしていると、減圧手段(減圧ポンプ)34と移送ポンプ28の両者の移送力が相俟って、処理対象物4を圧搾手段1に向けてより安定的に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施例1に係る固液分離装置を示す概略構成図である。
図2】固液分離装置を構成する圧搾機の縦断正面図である。
図3】固液分離装置を構成する液搬出部を示す正面図である。
図4】固液分離方法を説明するための概略構成図である。
図5】固液分離方法を説明するための概略構成図である。
図6】本発明の実施例2に係る固液分離装置を示す概略構成図である
図7】本発明の実施例3に係る固液分離装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施例1) 図1ないし図5に本発明に係る固液分離装置を豆乳製造用の圧搾装置に適用した実施例1を示す。本実施例における左右、上下とは、図2に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した左右、上下の表示に従う。図1および図2に示すように、圧搾装置は、固液混在の処理対象物である煮ご4に対して圧搾を行い、固形成分であるおから5と、液体成分である豆乳6とに分離する圧搾機(圧搾手段)1と、圧搾機1の上流側に配されて、圧搾機1に煮ご4を送り込む処理対象物供給部(処理対象物供給手段)2と、圧搾機1から豆乳6を取り出す液搬出部(液搬出手段)3とを備える。
【0025】
図2に示すように、圧搾機1は、鋼合金製多孔板で円筒状に形成された圧搾スクリーン10と、圧搾スクリーン10の外周面を覆うジャケット11と、圧搾スクリーン10の内部に回転駆動可能に配された圧搾スクリュー12と、圧搾スクリーン10の右端の出口端に設けられた弁機構13などで構成されたスクリュープレス型の圧搾機である。圧搾スクリーン10とジャケット11は内外二重に配されており、液室14と圧搾室15とを内外に区画する。ここでは、圧搾スクリーン10とジャケット11との間が液室14とされ、圧搾スクリーン10の内部が圧搾室15とされている。
【0026】
ジャケット11の内径寸法は、左右方向に亘って均一に設定されているのに対して、圧搾スクリーン10は、出口側(右側)に行くに従って漸次径寸法が小さくなるテーパー筒状に形成されている。圧搾スクリュー12は、回転自在に支持される軸12aと、軸12aの周面に固定された螺旋状の圧搾羽根12bとで構成される。圧搾羽根12bは出口側(右側)に向って先細りテーパー状に形成され、さらに羽根ピッチは出口側(右側)に近付くほど小さくされており、圧搾羽根12bの先端は、その全長に亘って圧搾スクリーン10に内接するように構成されている。
【0027】
図1に示すように、圧搾スクリュー12の駆動機構は、減速機付きのモータ17と、圧搾スクリュー12の基端を支持する軸受18とで構成されている。図1および図2において符号19は、ジャケット11の下流側に連結された搬入室を示しており、この搬入室19に設けられた流入口20を介して処理対象物供給部2より圧搾機1内に煮ご4が送り込まれるようになっている。
【0028】
液室14内の圧搾スクリーン10の上面より上方に位置するジャケット11の周壁に、豆乳を取り出す取出口21が開設されている。この実施例では、ジャケット11の上面に取出口21が設けられ、ジャケット11の下面に排水用のドレン口22が設けられている。このように圧搾スクリーン10の上面より上方に取出口21が設けられていると、液室14内で圧搾スクリーン10が浸漬する状態で圧搾スクリーン10により煮ご4に対する濾過を行うことができる。すなわち液中濾過を実行できる。また、液中濾過状態を維持しながら取出口21を介して液室14から豆乳6を搬出することができる。
【0029】
ジャケット11の出口側の端部(右端)には封止栓23が固定されている。封止栓23には絞り粕でありケーキ状に形成されたおから5の出口、すなわちケーキ出口24が開設され、このケーキ出口24に弁機構13が設けられている。弁機構13は、ケーキ出口24の開口縁に設けられたヒンジ軸を中心に揺動可能に装着されて、ケーキ出口24を開閉操作する弁体13aと、封止栓23から右方向に片持ち状に伸びるロッド13bと、ロッド13bに沿って左右方向にスライド移動可能に構成されて弁体13aの外側面を受け止める牽制アーム13cと、ロッド13bに装着されて牽制アーム13cの抜け止めを規制するロック体13dと、牽制アーム13cとロック体13dとの間に配置されて、牽制アーム13cを介して弁体13aを閉姿勢に付勢するばね13eとで構成される。圧搾スクリュー12の推進力により圧搾室15の右端に移動されたおから5は、ばね13eの付勢力に抗して弁体13aを開き、ケーキ出口24を介してジャケット11の外部に落下排出される。
【0030】
図1において、処理対象物供給部2は、図外の蒸煮釜により茹で上げられた煮ご4が収容される原料タンク26と、原料タンク26と流入口20とを連結するステンレス管からなる移送流路27と、移送流路27の流路途中に設けられた移送ポンプ28とを備える。原料タンク26は、下窄まりテーパー状の中空容器であり、底部に移送流路27が連結されている。
【0031】
液搬出部3は、取出口21に接続されて圧搾機1の液室14から豆乳を取り出すための取出流路30と、取出流路30に接続された真空タンク(気液分離手段)31と、真空タンク31に接続されて該真空タンク31内に収容された豆乳を搬出するための搬出流路32と、真空タンク31に接続されて該真空タンク31内の空気を排出して減圧するための減圧流路33と、減圧流路33の流路途中に設けられた減圧ポンプ(減圧手段)34と、ドレン口22に接続されたドレン流路35などで構成される。取出流路30、減圧流路33、およびドレン流路35のそれぞれには、各流路を開閉するための第1〜第3コック36〜38が設けられ、搬出流路32には、これを開閉する第1電磁弁39が設けられている。取出流路30の下流端はドレン流路35の下流端に接続されており、該ドレン流路35の下流端を介して取出流路30に取り出された豆乳は真空タンク31内に供給されるようになっている。
【0032】
真空タンク31は、縦長に形成された金属製の中空円筒体であり、図1および図3に示すように、筒壁の下部に豆乳の供給口41が開設され、底壁に搬出口42が開設され、天壁に排気口43が開設されている。供給口41にはドレン流路35の下流端が接続され、供給口41には搬出流路32が接続され、排気口43には減圧流路33が接続されている。減圧流路33は、真空タンク31の排気口43から上方に伸びる第1流路33aと、第1流路33aの途中に接続されて水平方向に伸びる第2流路33bと、第2流路33bに連続して下方向に伸びて第2コック37に至る第3流路33cと、第2コック37から搬出流路32に至る第4流路33dと、第2コック37から減圧ポンプ34に至る第5流路33eとで構成される。第2コック37は三方コックであり、第3流路33cと第4流路33dとの間を連通状態とする待機姿勢と、第3流路33cと第5流路33eとを連通状態とする運転姿勢との間で切り替え可能に構成されている。
【0033】
第1流路33aの上端には静電容量形の液位センサ45が固定されており、真空タンク31内に伸びる検知プローブ46により、真空タンク31内の豆乳6の液位の変動に応じて液位信号を出力する。ここでは、液位が真空タンク31の所定位置まで上昇したときと、液位が所定位置まで下降したときに、液位信号が出力されるようになっている。第2流路33bには、第1電磁弁39により搬出流路32を開いたときに、真空タンク31に外部空気を取り込むための空気供給路47が接続されており、この空気供給路47は流路途中に設けられた第2電磁弁48により開閉可能に構成されている。符号49は空気供給路47の上端に設けられた塵埃除去用のフィルターを示す。なお、液位センサ45からの液位信号は、図外の圧搾装置の全体を制御する制御装置に送られる。
【0034】
第3流路33cの上端には、減圧ポンプ34の駆動時に冷却水を供給するための冷却水供給路50が接続されている。この冷却水供給路50は流路途中に設けられた第3電磁弁51により開閉可能に構成されている。
【0035】
図3に示すように、液搬出部3を構成する真空タンク31、減圧ポンプ34などは吸込ユニット52としてユニット化されている。図3において、符号53は吸込ユニット52の全体を支持するベース、符号54はベース53から上方に伸びて真空タンク31を支持する脚柱を示す。また図3において符号55は減圧ポンプ34を駆動するモータを示す。
【0036】
以上のような構成からなる圧搾装置の固液分離動作について、図4および図5を参照して説明する。まず原料タンク26内に煮ご4が収容されている状態で、移送ポンプ28、減圧ポンプ34および圧搾機1のモータ17を起動させる。このとき図4に示すように、圧搾装置のオペレータは、第1コック36を取出流路30が連通する開姿勢とし、第2コック37を第3流路33cと第5流路33eとが連通する運転姿勢とし、第3コック38をドレン流路35を閉じる閉姿勢に操作する。また制御装置からの制御信号により、第1電磁弁39は搬出流路32を閉じる閉姿勢とされ、第2電磁弁48は空気供給路47を閉じる閉姿勢とされ、第3電磁弁51は冷却水供給路50を開ける開姿勢とされる。冷却水供給路50から第3流路33cに供給された冷却水は、第5流路33eを介して減圧ポンプ34に供給される。以上より、原料タンク26内の煮ご4は、移送ポンプ28により吸い出されたのち、減圧ポンプ34に由来する減圧吸引作用により移送流路27と流入口20とを介して圧搾機1の搬入室19に送られる。搬入室19内に送られた煮ご4は、圧搾スクリュー12の推進力によりケーキ出口24の側に向って圧搾室15内を移送され、その間に圧搾室15内に残留するおから5と、圧搾スクリーン10の圧搾孔を介して液室14内に移行する豆乳6とに圧搾分離される。加えて、減圧ポンプ34の減圧吸引作用により液室14側は圧搾室15側より負圧となるため、高圧の圧搾室15内の煮ご4に含まれる豆乳6が低圧の液室14側に吸込まれることによっても、豆乳6を煮ご4から分離することができる。以上のように本実施例の圧搾装置では、圧搾スクリュー12による圧搾作用と、減圧ポンプ34による負圧作用の両作用により、濾過動作、すなわち固液分離動作を実行することができる。なお、圧搾作用による固液分離は圧搾スクリーン10の下流側の端部(右端部)でのみ行われるのに対して、負圧作用による固液分離は圧搾スクリーン10の全体で行われる。
【0037】
上記のように固液分離動作時には、第3コック38は閉姿勢とされており、ドレン流路35は閉じられている。このため、圧搾スクリーン10により絞られた豆乳6は液室14内に溜まり、圧搾開始後まもなく圧搾スクリーン10の全体が豆乳6中に浸漬する状態で液室14内に充満する。液室14内の豆乳6の液位が上昇するのに伴って、液室14内にあった空気は取出口21から排出される。圧搾かすであるおから5は、ケーキ出口24を介して落下排出される。
【0038】
このように豆乳6が液室14内に充満する状態(液中濾過状態)で煮ご4の圧搾を行うと、圧搾スクリーン10から絞り出される豆乳6の噴出流は、液室14内に充満する豆乳6中を流動するだけで直ちに豆乳6内に溶け込むので、噴出流がジャケット11の内面に衝突して気泡が発生することはない。かかる液中濾過状態においても、減圧ポンプ34の減圧吸引作用を受けて液室14側は圧搾室15側よりも負圧となるため、先の負圧作用によっても、煮ご4から豆乳6は分離される。液室14内の豆乳6は、減圧ポンプ34の減圧吸引作用により取出口21を介して取出流路30に吸上げられるので、液中濾過状態を維持しながら、液室14から豆乳6を取り出すことができる。取出流路30に吸上げられた豆乳6は、供給口41から真空タンク31に送られて貯留される。
【0039】
圧搾の進行に伴って真空タンク31内の液位が所定位置にまで上昇したことが液位センサ45により検知されると、真空タンク31から搬出流路32を介して豆乳6を送り出す。具体的には、図5に示すように、オペレータは第1コック36を取出流路30を閉じる閉姿勢に操作する。制御装置からの制御信号により、第1電磁弁39は搬出流路32を開く開姿勢とされ、第2電磁弁48は空気供給路47を開く開姿勢とされ、第3電磁弁51は冷却水供給路50を閉じる閉姿勢とされる。減圧ポンプ34と圧搾機1のモータ17の駆動は停止される。以上より、空気供給路47を介して真空タンク31内に空気を供給しながら、真空タンク31内の豆乳6を搬出流路32からスムーズに送り出すことができる。真空タンク31内の液位が所定位置まで下がったことが液位センサ45により検知されると、再び図4の運転状態に復帰して、圧搾機1による固液分離動作を行う。以上のように、圧搾装置は、真空タンク31への豆乳6の貯留と、真空タンク31からの豆乳6の送出とを繰り返すバッチ方式により固液分離を実行する。
【0040】
洗浄動作時には、原料タンク26に洗浄液を充填させたうえで、移送ポンプ28、減圧ポンプ34を駆動させて圧搾機1に洗浄液を送り込むことで、圧搾スクリュー12や圧搾スクリーン10を洗浄することができる。このときに、第3コック38を開姿勢とすることで、ドレン流路35を介して洗浄液を圧搾機1から排出することができる。
【0041】
以上のように本実施例に係る圧搾装置においては、液室14内の圧搾スクリーン10の上面よりも上方に位置するジャケット11の周壁に、豆乳6を取り出すための取出口21を設けて、液室14内で圧搾スクリーン10が浸漬する状態で煮ご4に対して濾過(液中濾過)を行うようにしたので、濾過時に圧搾スクリーン10から噴出する豆乳6がジャケット11の内壁面に接触して気泡が生じることを解消でき、気泡を含まない良質の豆乳6を煮ご4から得ることができる。また、減圧ポンプ34に由来する減圧吸引作用により、圧搾スクリーン10の上面よりも上方に位置する取出口21から豆乳6を取り出すので、豆乳6の取出口21からの取出時に液中濾過状態が損なわれることはなく、この点でも濾過時に圧搾スクリーン10から噴出する豆乳6がジャケット11の内壁面に接触して気泡が生じることを抑えて、豆乳6の品質向上に貢献できる。
【0042】
圧搾スクリーン10の内方からの圧搾作用に加えて、圧搾スクリーン10の外方からの負圧作用を圧搾スクリーン10に作用させることができるので、従来の圧搾作用のみで濾過を行う形態に比べて、圧搾スクリーン10は目詰まりを起こし難く、当該圧搾スクリーン10の濾過処理能力が急激に低下することを防ぐことができる。従って本実施例に係る圧搾装置によれば、より長期に亘って適切な濾過処理能力を維持することができ、固液分離処理をより長時間に亘って安定的に実行できる。実例を挙げると、従来の豆乳製造用の圧搾装置では、圧搾スクリーン10の目詰まりに由来する濾過処理能力の低下に鑑みると、約10時間の連続運転が可能であり、当該約10時間の運転毎に洗浄動作が必要となっていたのに対して、本実施例の圧搾装置を用いれば、20時間を越える連続運転が可能となり、従来装置に比べて生産性の格段の向上を図ることができる。また、濾過処理能力が低下した結果、おから5に含まれる水分量が増加するような不都合の発生も防止できる。圧搾スクリーン10の全体で負圧作用による濾過処理を行うことができるので、圧搾作用のみにより濾過処理を行う従来形態に比べて、より効率的に固液分離処理を実行できる。
【0043】
圧搾機1の下流側に配置された減圧ポンプ34の減圧吸引作用により、原料タンク26内から圧搾機1に向けて煮ご4を供給するようにしたので、煮ご4が気泡を含むような場合や、煮ご4が高温である場合でも、当該減圧ポンプ34がキャビテーションを起こすことはなく、安定的に煮ご4を圧搾機1に供給することができる。なお、本実施例では処理対象物供給部2の移送ポンプ28がキャビテーションを起こすおそれはあるが、その場合でも(キャビテーションを起こした場合でも)減圧ポンプ34の減圧吸引作用により圧搾機1に向けて煮ご4を供給することができるので、より安定的に煮ご4の供給を進めることができる。また、両ポンプ(減圧ポンプ34と移送ポンプ28)の移送力が相俟って、煮ご4を圧搾機1に向けて供給することができるので、減圧ポンプ34の減圧吸引作用だけで煮ご4を供給する形態に比べて、より安定的に煮ご4を圧搾機1に供給できる利点もある。
【0044】
(実施例2)図6に本発明の実施例2に係る固液分離装置(豆乳製造用の圧搾装置)を示す。この圧搾装置では、搬出流路32の流路途中に吸込ポンプ60を設けた点が、先の実施例1と相違する。それ以外の点は、先の実施例1と同様であるので、同一の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0045】
実施例2の圧搾装置によれば、固液分離動作時においては、減圧ポンプ34、移送ポンプ28、および吸込ポンプ60の3つのバランス制御により、連続的に固液分離動作を実行することが可能となる。従って、実施例1のような真空タンク31内への豆乳6の貯留と、真空タンク31からの豆乳6の送出を繰り返すバッチ式の圧搾装置に比べて、より迅速に固液分離処理を実行して、豆乳6を得ることができる。
【0046】
(実施例3)図7に本発明の実施例3に係る固液分離装置(豆乳製造用の圧搾装置)を示す。この圧搾装置では、圧搾機1が立直姿勢に配された縦型である点が、実施例1と相違する。それ以外の点は、先の実施例1と同様である。
【0047】
本発明の固液分離装置として、上記実施例では豆乳製造用の圧搾装置を例にして説明したが、本発明はこれに限られず、例えばりんご等の果実飲料製造用の圧搾装置にも本発明は適用できる。上記実施例においては、処理対象物供給部2に移送ポンプ28が設けられていたが、本発明はこれに限られず、移送ポンプ28を廃して、減圧ポンプ34の減圧吸引作用のみで原料タンク26から処理対象物を圧搾機1に送給されるように構成することができる。上記実施例においては、減圧手段としては真空ポンプである減圧ポンプを挙げたが、本発明はこれに限られず、エゼクタ等であっても良く、要は減圧吸引作用を発揮するものであればよい。
【0048】
1 圧搾手段(圧搾機)
2 処理対象物供給手段(処理対象物供給部)
3 液搬出手段(液搬出部)
4 処理対象物(煮ご)
5 固形成分(おから)
6 液体成分(豆乳)
10 圧搾スクリーン
11 ジャケット
12 圧搾スクリュー
14 液室
15 圧搾室
21 取出口
28 移送ポンプ
30 取出流路
31 気液分離手段(真空タンク)
32 搬出流路
33 減圧流路
34 減圧手段(減圧ポンプ)
47 空気供給手段(空気供給路)
60 吸込ポンプ
【要約】
【課題】液中濾過方式で圧搾を行う圧搾機を備える固液分離装置において、適切な濾過処理能力を維持しながら、固液分離処理を長時間に亘って安定的に効率良く行うことができるようにする。
【解決手段】取出口21に接続される液搬出手段3に減圧手段34を設け、減圧手段34に由来する減圧吸引作用により、液室14内で圧搾スクリーン10が浸漬する液中濾過状態を維持しながら取出口21を介して液室14から液体成分6を取り出す。これにより、圧搾スクリーン10の内方からの圧搾作用に加えて、圧搾スクリーン10の外方からの負圧作用を圧搾スクリーン10に作用させることができるので、従来の圧搾作用のみで濾過を行う形態に比べて、圧搾スクリーン10は目詰まりを起こし難く、当該圧搾スクリーン10の濾過処理能力が急激に低下することを防ぐことができる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7