特許第6410130号(P6410130)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6410130農作物の収穫予測装置、収穫予測システム及び収穫予測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6410130
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】農作物の収穫予測装置、収穫予測システム及び収穫予測方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20120101AFI20181015BHJP
   G06Q 10/04 20120101ALI20181015BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
   G06Q50/02
   G06Q10/04
   A01G7/00 603
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-101641(P2014-101641)
(22)【出願日】2014年5月15日
(65)【公開番号】特開2015-219651(P2015-219651A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2017年5月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】507228172
【氏名又は名称】株式会社JSOL
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】江田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】西澤 啓
【審査官】 松野 広一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−212008(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/172834(WO,A1)
【文献】 特開2003−255055(JP,A)
【文献】 特表2008−508581(JP,A)
【文献】 特開2005−128808(JP,A)
【文献】 特開2013−172700(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0099776(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0200134(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
A01G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
農作物の収穫を予測するための複数の予測モデルを実行可能な収穫予測装置であって、
前記予測モデルの入力となる予測用データを蓄積するデータ蓄積データベースと、
前記データ蓄積データベースに蓄積された予測用データを分析した結果を受付けるデータ分析結果受付部と、
前記予測モデルごとに定められた、データの種類、データの蓄積期間、データの記録間隔、データの記録地点、及びデータの欠損度、に対して必要な量と質を定めた基準を格納する予測モデル設定ファイルと、
前記予測用データの分析結果と前記予測モデル設定ファイルの基準とに基づいて、前記複数の予測モデルをそれぞれ評価し、最適な予測モデルを選定する予測モデル評価部と、
前記予測モデル評価部の評価に基づいて選定された予測モデルに対応する予測プログラムを実行させる予測実行部と、
を備えることを特徴とする収穫予測装置。
【請求項2】
前記予測プログラムの実行によって得られた予測結果に対応する実績値の情報を受付け、前記予測結果と前記実績値を比較し、前記予測モデル設定ファイルの予測モデルの評価情報として記録する予測結果評価部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の収穫予測装置。
【請求項3】
前記予測モデル評価部の予測モデル別の評価結果及び前記予測用データの分析結果に基づいて、より予測精度の高い予測に向けてのアドバイスを生成するアドバイス生成部をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の収穫予測装置。
【請求項4】
前記データ蓄積データベースを読出し、前記予測用データの各データの収集状況を分析し、前記予測用データに欠損値がある場合には、当該欠損値を補完することが可能か否かを判断し、前記補完が可能な場合は、前記欠損値を補完した分析結果を前記データ分析結果受付部に受け渡す、データ分析/補完部をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の収穫予測装置。
【請求項5】
農作物の収穫を予測するための複数の予測モデルを実行可能な収穫予測システムであって、
前記予測モデルの入力となる予測用データを蓄積するデータ蓄積データベースと、
前記データ蓄積データベースに蓄積された予測用データを分析した結果を受付けるデータ分析結果受付部と、
前記予測モデルごとに定められた、データの種類、データの蓄積期間、データの記録間隔、データの記録地点、及びデータの欠損度、に対して必要な量と質を定めた基準を格納する予測モデル設定ファイルと、
前記予測用データの分析結果と前記予測モデル設定ファイルの基準とに基づいて、前記複数の予測モデルをそれぞれ評価し、最適な予測モデルを選定する予測モデル評価部と、
前記予測モデル評価部の評価に基づいて選定された予測モデルに対応する予測プログラムを実行させる予測実行部と、
前記実行した予測モデルの予測結果を出力すると共に、前記実行した予測モデルとは別の予測モデルを実行した場合の予測結果を出力し比較させる予測結果評価部と、
を備えることを特徴とする収穫予測システム。
【請求項6】
農作物の収穫を予測するための複数の予測モデルを実行可能な収穫予測システムにより実行される収穫予測方法であって、
前記収穫予測システムが、
前記予測モデルの入力となる予測用データを蓄積するデータ蓄積データベースと、
前記予測モデルごとに定められた、データの種類、データの蓄積期間、データの記録間隔、データの記録地点、及びデータの欠損度、に対して必要な量と質を定めた基準を格納する予測モデル設定ファイルとを備え、
前記データ蓄積データベースに蓄積された予測用データを分析した結果を受付けるステップと、
前記予測用データの分析結果と前記予測モデル設定ファイルの基準とに基づいて、前記複数の予測モデルをそれぞれ評価するステップと、
前記評価するステップでの予測モデルの評価に基づいて選定された予測モデルに対応する予測プログラムを実行させるステップと、
を含むことを特徴とする収穫予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作物の収穫予測装置、収穫予測システム及び収穫予測方法に関し、特に、複数の予測モデルを用いる収穫予測装置、収穫予測システム及び収穫予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農作物の収穫時期、収穫量を予測する手法は、有効積算気温法をはじめとして様々な予測モデルがあり(非特許文献1参照)、システム化が試みられている。それらのシステムでは、その予測モデルによって、気温だけで行えるものから日照時間、土壌、害虫の発生状況から多岐にわたる入力データが必要となるものまで様々である。例えば、特許文献1には、農作物の生育が成功するか否かを判断する基準である管理範囲を算出し、気象予報と誤差分布とに基づいて気象条件を算出し、当該算出した気象条件、作業計画情報及び圃場条件を算出する数式とに基づいて圃場条件を算出し、当該算出した圃場条件から予測モデルを用いて、予測評価指標の評価値の予測結果を予測生育範囲として出力する農作物生育管理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−51887号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】田村良文、発育ステージの予測モデルとその実用化、農業技術 44(9)、p.397−400、1989年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般に農業経営者は、そうした予測モデルが必要とする入力データを収集していないことが多い。そのため、上記の文献に記載のような予測モデルを用いたシステムの導入に際しては、新たに多種多様なデータ収集が必要となり、その準備のために多くの労力とコストが必要となる。このことが農業経営者に重い負担となっており、農業のIT化が進まない一因となっている。また、仮にデータ収集がうまくいっても、作物の種類や、育成条件によって、適用可能な予測モデルが異なるので、農業経営者が最適な予測モデルを選定することは困難である。
【0006】
したがって、本発明では、上記のような課題に鑑み、収集されたデータに応じた最適な予測モデルを選定し、収穫予測を行う収穫予測装置、収穫予測システム、及び収穫予測方法、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の収穫予測装置、収穫予測システム、及び収穫予測方法は、以下のような解決手段を提供する。
【0008】
(1)本発明の第1の態様は、農作物の収穫を予測するための複数の予測モデルを実行可能な収穫予測装置であって、前記予測モデルの入力となる予測用データを蓄積するデータ蓄積データベースと、前記データ蓄積データベースに蓄積された予測用データを分析した結果を受付けるデータ分析結果受付部と、前記予測モデルごとに定められた、データの種類、データの蓄積期間、データの記録間隔、データの記録地点、及びデータの欠損度、に対して必要な量と質を定めた基準を格納する予測モデル設定ファイルと、前記予測用データの分析結果と前記予測モデル設定ファイルの基準とに基づいて、前記複数の予測モデルをそれぞれ評価し、最適な予測モデルを選定する予測モデル評価部と、前記予測モデル評価部の評価に基づいて選定された予測モデルに対応する予測プログラムを実行させる予測実行部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
(2)上記(1)の収穫予測装置において、前記予測プログラムの実行によって得られた予測結果に対応する実績値の情報を受付け、前記予測結果と前記実績値を比較し、前記予測モデル設定ファイルの予測モデルの評価データとして記録する予測結果評価部をさらに備えることを特徴とする。
【0010】
(3)上記(1)又は(2)の収穫予測装置において、前記予測モデル評価部の予測モデル別の評価結果及び前記予測用データの分析結果に基づいて、より予測精度の高い予測に向けてのアドバイスを生成するアドバイス生成部をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
(4)上記(1)〜(3)の収穫予測装置において、前記データ蓄積データベースを読出し、前記予測用データの各データの収集状況を分析し、前記予測用データに欠損値がある場合には、当該欠損値を補完することが可能か否かを判断し、前記補完が可能な場合は、前記欠損値を補完した分析結果を前記データ分析結果受付部に受け渡す、データ分析/補完部をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
(5)本発明の第2の態様は、農作物の収穫を予測するための複数の予測モデルを実行可能な収穫予測システムであって、前記予測モデルの入力となる予測用データを蓄積するデータ蓄積データベースと、前記データ蓄積データベースに蓄積された予測用データを分析した結果を受付けるデータ分析結果受付部と、前記予測モデルごとに定められた、データの種類、データの蓄積期間、データの記録間隔、データの記録地点、及びデータの欠損度、に対して必要な量と質を定めた基準を格納する予測モデル設定ファイルと、前記予測用データの分析結果と前記予測モデル設定ファイルの基準とに基づいて、前記複数の予測モデルをそれぞれ評価し、最適な予測モデルを選定する予測モデル評価部と、前記予測モデル評価部の評価に基づいて選定された予測モデルに対応する予測プログラムを実行させる予測実行部と、前記実行した予測モデルの予測結果を出力すると共に、前記実行した予測モデルとは別の予測モデルを実行した場合の予測結果を出力し比較させる予測結果評価部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
(6)本発明の第3の態様は、農作物の収穫を予測するための複数の予測モデルを実行可能な収穫予測方法であって、前記予測モデルの入力となる予測用データを蓄積するデータ蓄積データベースと、前記予測モデルごとに定められた、データの種類、データの蓄積期間、データの記録間隔、データの記録地点、及びデータの欠損度、に対して必要な量と質を定めた基準を格納する予測モデル設定ファイルとを備え、前記データ蓄積データベースに蓄積された予測用データを分析した結果を受付けるステップと、前記予測用データの分析結果と前記予測モデル設定ファイルの基準とに基づいて、前記複数の予測モデルをそれぞれ評価するステップと、前記評価するステップでの予測モデルの評価に基づいて選定された予測モデルに対応する予測プログラムを実行させるステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、収集されたデータに応じて、収穫予測のための最適な予測モデルを選定することができる。また、当初は限られたデータで収穫予測を始めながら、その他のデータの収集が進むに従って、より複雑で高度な予測モデルを用いた予測へ進歩させていくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る収穫予測システム1の機能構成を示す図である。
図2】(a)予測モデル設定ファイル104の基準定義の例、(b)データ分析結果を一つの予測モデルの基準に照らして評価した例を示す図である。
図3】データ分析結果を複数の予測モデルの基準に照らして評価した具体例を示す図である。
図4】データ分析結果を複数の予測モデルの基準に照らして評価した別の具体例を示す図である。
図5】収穫予測装置10のアドバイス生成部109が生成したアドバイスの表示例を示す図である。
図6】収穫予測装置10のアドバイス生成部109が生成したアドバイスの別の表示例を示す図である。
図7】収穫予測装置10の全体的な処理のフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。以降の図においては、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号または符号を付している。
【0017】
(収穫予測システム1の構成)
図1は、本発明の実施形態に係る収穫予測システム1(以下、本システム)の機能構成の概念を示す図である。この図において、機能ブロック間の矢印は、データの流れ方向、又は処理の流れ方向を表す。
【0018】
本システム1は、収穫予測装置10と、収穫予測装置10に接続されたユーザ端末20とから構成される。収穫予測装置10は、図示するように機能構成として、データ蓄積データベース(データ蓄積DB101)、データ分析/補完部102、データ分析結果受付部103、予測モデル設定ファイル104、予測モデル評価部105、パラメータファイル106、予測実行部107、予測結果評価部108、アドバイス生成部109を備えている。以下、順に各部の機能について説明する。
【0019】
データ蓄積DB101は、農作物の収穫を予測するための予測モデルの入力となる予測用データを蓄積したデータベースである。予測モデルとは、予測対象を計量可能なモデルとしてとして表現したものであり、農作物の収穫予測のモデルには、例えば、予測用データとして気温を用いたモデルとして、単純積算温度法、有効積算温度法等があり、また、予測用データとして、気温と日長(日照時間)を用いたモデルとして、発育速度(DVR:Developmental Rate)モデルによる方法、ノンパラメットリックDVR法等がある。本システムでは、上記のような予測モデル以外にも様々なモデルを取り扱うことができる。
【0020】
また、データ蓄積DB101には、気温や日照時間以外にも様々なデータを格納することができ、例えば、作付データ(作物・品種・播種日・定植日・株間・畝間・播種/定植数)、農地データ(面積、土質、水はけ、日当たり、傾斜度、土壌の化学的組成)、農法データ(施肥、施農薬、作型)、インシデントデータ(病害虫発生など)、日々の作業・生育データなどを含むことができる。
【0021】
データ分析/補完部102は、データ蓄積DB101にアクセスし、各データの収集状況を整理して分析し、その分析結果を後述のデータ分析結果受付部103に受け渡す。すなわち、データ分析/補完部102は、データ蓄積DB101に、各予測モデルが予測用データとして利用可能なデータの量と質が揃っているかをチェックし、各予測モデルに対応する予測プログラムが入力可能なフォーマットに変換する。もっともデータ蓄積DB101に格納されたデータが必ずしもすべて予測用データとして使用されるわけではない。例えば、干ばつなど特別なインシデントがあったような場合のデータは、予測用データとしては不適と判断し、そのデータは除外する。
【0022】
また、データ分析/補完部102は、予測用データに欠損値(欠損があることを示す情報)がある場合には、当該欠損値を補完することが可能か否かを判断し、補完が可能な場合は、欠損値を補完したデータをデータ分析結果に含めて、後述のデータ分析結果受付部103に受け渡す。例えば、ある日の日平均気温データが欠けている場合は、前後の日の平均をとること等でその欠損値をある程度正確に補完することが可能であるが、欠損値が連続した数日間に渡る場合は、正確に補完することは難しいので補完は行わないと判断する。欠損値の補完方法の詳細については、発明者らが既に出願した特願2014−52205に記載の方法を用いてもよい。
【0023】
なお、データ分析/補完部102は、必須の構成ではなく、データ蓄積DB101のデータを人間の手又は外部のシステムによって予め分析しておき、その分析済みのデータをユーザ端末20等からデータ分析結果受付部103に入力するようにしてもよい。
【0024】
データ分析結果受付部103は、前述したように、データ分析/補完部102又はユーザ端末20等の収穫予測装置10の外部から、分析済みのデータ(欠損値を補完済のデータを含む)を受付け、予測モデル評価部105の入力データとして受け渡す。
【0025】
予測モデル設定ファイル104は、予測モデルごとに、必要な設定情報を記憶したファイルである。この設定情報には、予測モデルごとに、必要とするデータの種類、データの量と質、モデルの利用優先度、モデルの評価のための基準等の情報を含む。モデルの利用優先度とは、予測結果の精度が高いと評価される順に予測モデルを順位付けしたものである。利用優先度や評価の基準は固定ではなく、各予測モデルを実行した予測結果と収穫の実績値を比較して、その結果によって、予め設定された利用優先度や評価基準を変更するようにしてもよい。予測モデル設定ファイル104に含まれる情報については、以降の図でさらに具体的に説明する。
【0026】
予測モデル評価部105は、予測モデル設定ファイル104に定義された各予測モデルの評価基準と、データ分析結果受付部103が受付けたデータ分析結果から、各モデルによる予測の有効性(予測精度)を評価判定する。そして予測モデルの評価判定結果に基づいて、最適な(最も評価値の高い)予測モデルのプログラムの起動を後述の予測実行部107に指令する。
【0027】
図2(a)は、予測モデル設定ファイル104に含まれる基準の定義の具体例を示したものである。この例では図示するように、3つの予測モデル1,2,3について、モデル利用優先度と、必要なデータの種類、必須のデータとオプションのデータ項目が示されている。例えば、予測モデル1〜3はすべて、気温(日平均気温)のデータだけでも予測を実行することが可能であるが、予測モデル3では、日照時間をオプションとして利用可能なことを示されている。
【0028】
データの量と質に関しては、データの蓄積期間、記録間隔、記録地点、欠損度について、それぞれのモデルが最低限必要とする必須値と、予測精度をあげるために望ましい推奨値が示されている。例えば、予測モデル1〜3では、気温の必須の蓄積期間は1か月であるが、推奨蓄積期間は、予測モデル3では、3年としている。もちろん、収集されたデータが、推奨値に近いほど精度の高い結果が得られることが期待できる。また、予測モデル3では、予測用データとして気温だけでなく、日照時間も加えたほうがより精度の高い結果が期待できる。そのため、予測モデル3のモデル利用優先度は、日照時間を加えなかった場合と、加えた場合の2つに分けてもよい。
【0029】
欠損度とは、各データ項目に対して欠損値が全体に対して占める割合を示すが、少なくとも欠損値は、この予測モデル1〜3の場合では、10%〜25%以下である必要があるが、好ましくは1〜5%以下であることが推奨されている。なお、前述したように、欠損値が連続日に現れていない場合は、データ分析/補完部102によって欠損値を前後のデータから補完できる可能性が高くなる。
【0030】
図2(b)は、図示するようなデータ分析結果を、上記の予測モデル1の基準に照らして評価した例を示す図である。このとき、データ分析結果(補完済み)の各データ項目が必要十分に揃っている場合(データの量と質が推奨値以上の場合)は評価A、精度は落ちるが予測可能なデータがある場合(データの量と質が必要値以上で推奨値未満の場合)は評価B、データ不足の場合(データの量と質が必要値未満である場合)で、正確な予測が難しい場合は、評価Cなどと定義する。
【0031】
例えば、図2(b)で示すデータ分析結果の場合、データ項目ごとの評価は、予測モデル1の基準に照らし合わせると、気温の蓄積期間は評価B,記録間隔と記録地点は評価A、欠損度は評価Cとなる。もちろん評価の方法は、このような段階評価だけでなく、収集されたデータと、基準値である必要値、推奨値との差分を求め、その差分に基づいて評価値(評価点)を算出してもよい。
【0032】
図3は、データ分析結果を複数の予測モデルの基準に照らして評価した具体例を示す図である。例えば、データ分析の結果、データの種類は気温のみで、そのデータの蓄積期間は3か月、記録間隔は1日平均、記録地点は1か所、欠損度は15%であったとする。このデータを用いて、予測モデル1を使用した場合は、各項目の評価がB,A,A,Bで、総合評価B+、予測モデル2を使用した場合は、各項目の評価がB,C,A,Cで、総合評価B−、予測モデル3を使用した場合は、各項目の評価がB,A,A,Cで、総合評価Bとなったとすると、総合評価が最も高い予測モデル1がここでは最適のモデルとして選定されることになる。なお、総合評価は、各データ項目の評価値の単純平均又は加重平均等によって求めるものする。
【0033】
図4は、データ分析結果を複数の予測モデルの基準に照らして評価した別の具体例を示す図である。この例では、データ分析の結果、気温だけでなく、日照時間も予測用データとして利用可能であったとする。この場合、日照時間を必要としない予測モデル1と予測モデル2の評価値は図3の場合と変わらないが、日照時間をオプションとして利用可能な予測モデル3は、日照時間の各項目の評価値が高ければ、総合評価もBからA−と高くなり、結果として、予測モデル3が最適のモデルとして選定されることになる。
【0034】
図1に戻り、予測実行部107は、予測モデル評価部105からの指令により選定された予測モデルに対応する予測プログラムを起動する。予測プログラムは、公知のプログラム又は新たに作成したプログラムを複数、収穫予測装置10内に予め記憶済みかダウンロードを完了しているものとする。ここで、実行される予測プログラムは、複数であってもよい。例えば、最高評価のプログラムと、評価はそれほど高くないが利用優先度の高いプログラムを並行して実行させてもよい。あるいは、ユーザの設定等により、評価や優先度の高い予測モデルのプログラムだけを起動するのでなく、与えられたデータに対して実行可能なすべての予測プログラムを起動し、各予測実行結果を比較できるようにしてもよい。あるいは、評価に関わらず、ユーザの指定により、特定のプログラムを強制的に実行させるようにしてもよい。設定ファイルやパラメータを変更して再度実行したい場合等があるからである。
【0035】
パラメータファイル106は、予測プログラムを実行させる際の起動パラメータを記憶したファイルである。すなわち、各予測プログラムは、パラメータファイル106に格納された自身の起動パラメータを読み込んで起動する。起動パラメータとは、例えば、有効積算気温方法のモデルで用いられる有効積算温度(EAT:Effective Accumulated Temperature)は、EAT=Σ(T−D)で表され、発育速度(K)は、K=a(T−D)(ただし、Tは日平均気温、Dは生育零点(生育最低温度)、aは定数)で表されるが、この定数aがプログラムの起動パラメータである。なお、起動パラメータは、ユーザ端末20等から変更が可能とする。
【0036】
予測結果評価部108は、予測プログラムが出力した予測結果をユーザに提示し、また、その予測結果の評価に関わる情報(予実の差異、インシデントデータ等)の入力をユーザ端末20等から受け付ける。特に、予測結果に対して実際の収穫の実績値を入力させる手段を備え、予測結果と実績値を比較する機能を提供する。また、事前の評価が高くなかった予測モデルを収穫実績が得られた後に実行し、その予測結果と実績値を比較し、それを評価情報として記録し、以後の評価に役立てるようにしてもよい。すなわち、システム管理者等は、この評価情報を参照し、予測モデルの評価判定のための設定の変更(例えば、必要なデータの蓄積期間の設定変更)を行うことができる。
【0037】
また、同じ作物を、隣接する圃場に日付をずらして植えている場合などに、先行する圃場の結果をフィードバックすることで、より予測精度の高いプログラムが後続の圃場に提供できるよう調整できる。すなわち、先行する実績値とその予測結果を対比することで、以後の予測モデルの評価に対して、場合によっては、予測モデル設定ファイル104やパラメータファイル106の値が妥当であったかどうかも含めて、フィードバックをかけることができる。
【0038】
アドバイス生成部109は、予測モデル評価部105の評価結果に基づいて、予測精度を上げるために、あるいはより高度な予測モデルを利用するために、ユーザにとって必要なアクションを含んだアドバイスを生成する。生成されたアドバイスはユーザ端末20等に表示される。なお、アドバイスの生成は、予測モデルの評価時であってもよいし、予測モデルを実行した後であってもよい。また、予測結果に対してその実績値が得られた後であってもよい。
【0039】
図5図6は、アドバイス生成部109が生成したアドバイスの表示例を示す図である。ここでいうアドバイスとは、設定ファイルのデータと予測用に利用したデータを比較して、不足しているデータ、評価の低いデータ項目の評価を上げるための要件、総合評価を上げるための要件などを表示することである。
【0040】
図5の表示例では、(a)では、データ分析結果に対して、今回実行した予測モデル(図2で示した予測モデル1とする)の評価結果を表示し、(b)では、今回実行した予測モデルよりも高度な予測モデル(予測モデル2、予測モデル3とする)を実行するために必要な条件を表示している。例えば、予測モデル2を実行させるには、気温の記録間隔を現在の1日から6時間ごとに変更し、欠損度を現在の15%から1%以下にする必要があることが示されている。また、予測モデル3を実行させるためには、気温データの欠損度は5%以下でよいが、日照時間のデータを、欠損度5%以下で、日合計値を0.5月以上蓄積する必要があることを示されている。なおこの表示画面に、図2で示したような各モデルの基準定義を表示するようにしてもよい。
【0041】
図6の表示例では、テキスト形式でアドバイス文を画面に表示した場合を示している。アドバイス文の生成のためには、アドバイスの文例を多数格納したデータベースを用意しておき、分析結果の数字を最も適切なアドバイス文に埋め込んでアドバイス文を生成するようにしてもよい。図示するアドバイス表示例2aでは、予測モデルは必要な平均気温の蓄積期間が基準に満たなかったために不足分のデータを補うようにアドバイスが生成されている。また、アドバイス表示例2bでは、気温データの収集をあと1年続ければ、予測モデル3による予測が可能になることを示すアドバイスが生成されている。また、アドバイス表示例2Cでは、日照時間のデータの収集をすれば、オプション付の予測モデル3(気温と日照時間を使った予測モデル3;図2参照)による予測が可能になることを示すアドバイスが生成されている。
【0042】
このようにアドバイス生成部109は、実行した予測モデルについて、必要基準に満たないデータがあれば、そのデータの確実な収集を提案する。また、利用できなかった予測モデルについて、必要なデータを示し、何を収集・準備すべきかを提案する。このようにすることで、当初は、予備知識があまりなく、既にあるデータだけで予測を始めようとするユーザであっても、より高度の予測方法に段階的に導くことができる。
【0043】
以上説明した収穫予測装置10又は収穫予測システム1の機能構成は、あくまで一例であり、一つの機能ブロック(データベース及び機能処理部)を分割したり、複数の機能ブロックをまとめて一つの機能ブロックとして構成したりしてもよい。各機能処理部は、装置に内蔵されたCPU(Central Processing Unit)が、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、ハードディスク、CD(Compact Disc)、及びDVD(Digital Versatile Disc)等の記憶装置や記憶媒体に格納されたコンピュータ・プログラムを読み出し、CPUにより実行されたコンピュータ・プログラムによって実現される。すなわち、各機能処理部は、このコンピュータ・プログラムが、記憶装置に格納されたデータベース(DB;Data Base)やメモリ上の記憶領域からテーブル等の必要なデータを読み書きし、場合によっては、関連するハードウェア(例えば、入出力装置、表示装置、通信インターフェース装置)を制御することによって実現される。このコンピュータ・プログラムは、外部からネットワークを介してダウンロードすることで提供されてもよい。また、実施形態におけるデータベース(DB)は、商用データベースであってよいが、単なるテーブルやファイルの集合体をも意味し、データベースの内部構造自体は問わないものとする。
【0044】
(処理フロー)
図7は、本発明の実施形態に係る収穫予測装置10、収穫予測システム1の全体的な処理の流れをまとめた図である。以下のフローチャートは、典型的な処理の流れを示すが、各ステップの入力と出力の関係を損なわない限り、各ステップの処理順序を入れ替えてもよい。
【0045】
収穫予測装置10のデータ分析/補完部102(以下、データ分析部と略す)は、まずステップS1において、データ蓄積DB101に格納されたデータを読出し、整理して分析し、各モデルの入力となる予測用データを抽出する。また、特殊事情により、予測に適さないデータを除外する。次にステップS2において、予測用データの中に欠損値がある場合は、その欠損値を補完可能かを判断する。補完可能な場合は、ステップS3において、欠損のある個所の前後のデータの平均をとるなどしてその欠損値を補完する。
【0046】
次に、ステップS4においては、収穫予測装置10の予測モデル評価部105が、データ分析部が分析、補完した予測用データと、各予測モデルが必要とするデータを比較し、与えられたデータから利用可能な予測モデルをそれぞれ評価する。このとき、予測モデル設定ファイル104に予測モデルごとに定義された基準を参照して予測モデルの評価を行う。
【0047】
続いて、ステップS5においては、収穫予測装置10のアドバイス生成部109が、必要に応じて、ユーザに対するアドバイスを生成し、ユーザ端末20等に表示する。
【0048】
収穫予測装置10の予測実行部107は、実行する予測モデルを決定し、実行させる。詳しくは、予測モデル評価部105が評価した予測モデルのうち最も評価値の高いと選定された予測モデル、及び/又は、ユーザや設定により指定された予測モデルから、最終的に実行すべき予測モデルを決定し(ステップS6)、予測モデルに対応した予測プログラムを1又は複数起動する(ステップS7。このプログラム起動時には、パラメータファイル106の起動パラメータを読み取り、予測プログラムに受け渡す。
【0049】
収穫予測装置10の予測結果評価部108は、予測プログラムの実行結果を受け取り、ユーザに表示する(ステップS8)。その後、予測結果に対する実績値が得られた場合は(ステップS9:Y)、ステップS10において、予測結果と実績値を比較し、その結果をユーザに示すなどして、予測モデルの評価のフィードバックに利用する。この時点で、使用した予測モデル以外の他の予測モデルを実行させ、各予測モデルの予測結果と実績値とを比較表示するようにしてもよい。このようにすることで、各予測モデルを評価するためのデータを常に更新し、予測モデル評価部105が行う評価の信頼性を高めていくことができる。
【0050】
(実施形態の効果)
本実施形態の収穫予測装置10によれば、蓄積された予測用データに応じて、最適な予測モデルを選定することができる。また、限られたデータで収穫予測を始めながら、その他のデータの収集が進むに従ってより複雑で高度な予測モデルを用いた予測へ進歩させていくことができる。
【0051】
また、収穫予測装置10に予測結果評価部108をさらに備えることで、選定した予測モデルの予測結果と実績値と比較データを集め、予測モデル設定ファイル104に記録することで、予測モデルの評価方法自体にフィードバックをかけることができる。
【0052】
また、収穫予測装置10にアドバイス生成部109をさらに備えることで、より予測精度の高い予測に向けて必要なデータ等を本装置のユーザに対してアドバイスすることができる。
【0053】
また、収穫予測装置10にデータ分析/補完部102をさらに備えることで、予測用データの各データの収集状況を単に分析するだけでなく、予測用データに欠損値がある場合には当該欠損値を補完することが可能か否かを判断し、補完が可能な場合は欠損値を補完した分析結作成することができる。
【0054】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。なお、上記の実施形態では、本発明を物の発明として収穫予測装置10又は収穫予測システム1で説明したが、本発明は、方法の発明(収穫予測方法)としても捉えることもできる。
【符号の説明】
【0055】
1 収穫予測システム
10 収穫予測装置
20 ユーザ端末
101 データ蓄積DB
102 データ分析/補完部
103 データ分析結果受付部
104 予測モデル設定ファイル
105 予測モデル評価部
106 パラメータファイル
107 予測実行部
108 予測結果評価部
109 アドバイス生成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7