【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は先行技術を種々検討したが、適切なものを得ることができなかった。
特に、特許文献1のように、シラン含有ガスの吹き出し流路を主バーナーに組み込むと、優に1000℃を超える火炎中にシラン含有ガスを噴出することになるので、シラン中の珪素(Si)と酸素(O
2)または水蒸気(H
2O)と反応して生成した二酸化珪素(SiO
2)が溶融または焼結して、炉内壁やノズルに付着し、ノズルの閉塞を招く、あるいは炉内壁への堆積によっては燃焼が安定しない、または炉内の閉塞などの問題を招くことを知見した。
【0008】
一方、シラン含有ガスやシラン含有廃液を燃焼処理する際に、二酸化珪素(SiO
2)による炉内壁等への付着、閉塞が生じることは既に知られており、次の対策を採る技術もある。
(1)炉壁に複数の開孔を設け、炉壁全体から炉内に向けて空気を供給し炉壁表面温度を溶融及び焼結温度以下として付着、閉塞を防止する。
(2)炉壁に水冷ジャケットの設置、炉壁全体から炉内へ空気を供給することで炉壁表面温度(燃焼炉の内部を構成する鋼材の表面温度)を溶融及び焼結温度以下として付着、閉塞を防止する。
【0009】
しかし、(1)の方策では、炉壁の構造が複雑となりコスト高となる。また、(2)の方策を採用して、塩素(Cl)を含有するシラン含有ガスやシラン含有廃液を処理した場合、溶融焼結対策として冷却された炉壁表面によって炉内で生成した塩化水素(HCl)が露点以下(70〜80℃以下)となり腐食が発生する。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、ノズルや炉内壁への二酸化珪素(SiO
2)の付着又は閉塞を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
本発明は、シラン含有ガスの場合とシラン含有廃液の場合がある。
【0012】
本発明のシラン含有ガス又はシラン含有廃液の燃焼方法は、シラン含有ガス又はシラン含有廃液を燃焼炉に供給して燃焼する方法において、
燃焼炉の上部に、下向きに燃料と燃焼空気による燃焼バーナーを設け、
それより下方の位置に
、前記燃焼炉の周方向に複数配置された吹出しノズルを設け、
これらの吹出しノズルは、その中心側から外方側に向けて、シラン含有ガス又はシラン含有廃液の流路、不活性ガス流路、燃焼空気流路を有しており、
前記燃焼バーナーによって生成される火炎の下端より下方位置に、前記吹出しノズルの各流路から各流体を吹出
し、
前記燃焼バーナーによって生成される火炎の中心線と、前記吹出しノズルの吹出し指向線との交点より下方の温度を1000℃未満、850℃以上とする、ものである。
【0013】
本発明の形態では、燃焼バーナーの火炎の前方における高温酸化雰囲気中に向けて、吹出しノズルからのシラン含有ガス又はシラン含有廃液、不活性ガス、燃焼空気を噴出する。このとき、シラン含有ガス又はシラン含有廃液の流れは、不活性ガスの流れに包まれるようになる。したがって、シラン含有ガス又はシラン含有廃液の流れと燃焼空気の流れとの接触が遮られ、あるいは接触が阻害されるので、吹出しノズルでの二酸化珪素(SiO
2)の付着や閉塞が防止される。
加えて、シラン含有ガス又はシラン含有廃液は燃焼バーナーの火炎に供給することなく、燃焼バーナーの火炎より下方に供給する。
【0014】
その結果、シラン中の珪素(Si)が酸素(O
2)または水蒸気(H
2O)と反応して生成した二酸化珪素(SiO
2)が、溶融または焼結して炉内壁や供給ノズルに付着し、付着したものが成長して閉塞することを防止できる。
また、本発明によれば、燃焼炉の構造を複雑にすることなく燃焼状態を制御することにより、二酸化珪素(SiO
2)の溶融または焼結によりノズルや炉内壁への付着、閉塞を防止することができる。
【0015】
吹出しノズルとしては、多重管構造を有するものが望ましい。その中心側から外方側に向けて、シラン含有ガス又はシラン含有廃液の流路、不活性ガス流路、燃焼空気流路とされるものが好適である。
かかる多重管構造の吹出しノズルは、前述のように、シラン含有ガス又はシラン含有廃液の流れを、不活性ガスの流れによって包むことができる。
【0016】
さらに、シラン含有ガス又はシラン含有廃液の流路の出口に対して、不活性ガス流路の出口が同一か前方に位置していると、シラン含有ガス又はシラン含有廃液の流れを、不活性ガスの流れによって包みながら、燃焼空気の流れとの接触を阻害できるようになる。
【0017】
この作用をより確実なものとするために、不活性ガス流路の出口に対して、燃焼空気流路の出口が後方に位置しているのがより望ましい。
【0018】
以上のようにして、シラン中の珪素(Si)が酸素(O
2)または水蒸気(H
2O)と反応して生成した二酸化珪素(SiO
2)が溶融または焼結して炉内壁や供給ノズルに付着し、付着したものが成長して閉塞することを防止できる。
【0019】
不活性ガス流路の出口での不活性ガスの流速を2〜10m/sec、またはシラン含有ガス又はシラン含有廃液1kgに対して0.3〜6.0Nm
3の範囲とすることができる。
【0020】
他方、燃焼バーナーによる火炎の中心線と、吹出しノズルの各流路からの各流体の指向線との交点より
上方位置に設けた上部温度検出器による炉内上部温度に対して、前記上部温度検出器より下方位置に設けた炉内下部温度器による炉内下部温度が高くなる操作を行う。
この操作としては、吹き出しノズルから供給される不活性ガス、燃焼空気、シラン含有ガス又はシラン含有廃液の各供給量のうち少なくとも1つを調整する操作を挙げることができる。
炉内下部温度を1000℃未満、850℃以上とするのが好適である。
【0021】
このことの意味は次のとおりである。
不活性ガスである窒素および空気による冷却効果、並びに窒素による処理要素の阻害を原因とする燃焼遅延効果により、シラン含有ガス又はシラン含有廃液の燃焼領域を炉下方まで拡大させることができる。
したがって、燃焼バーナー火炎より前方の温度を二酸化珪素(SiO
2)が焼結を起こす温度の約1000℃未満に抑制できる。その結果、炉内壁への二酸化珪素(SiO
2)の付着を防止することができる。
さらにシラン含有ガス又はシラン含有廃液が高カロリーな場合は、窒素による燃焼遅延効果がより働きバーナー火炎前方の温度より炉下方の温度が高くなる。よって、炉内下部温度器による炉内下部温度に基づく、温度制御のみで二酸化珪素(SiO
2)の溶融、焼結防止が行え、ノズル及び炉内壁において二酸化珪素(SiO
2)が付着、閉塞することを防止することができる。
また塩素(Cl)を含有するシラン含有ガス又はシラン含有廃液を処理する場合においても、炉壁表面温度を抑制する従来技術ではなく、耐火物を適切な厚みとすることで表面温度を露点腐食温度以上(70〜80℃以上)の温度に維持することができ、鋼材の腐食を防止できる。
【0022】
本発明装置は、シラン含有ガス又はシラン含有廃液を燃焼炉に供給して燃焼する装置であって、
燃焼炉と、この燃焼炉の上部に、下向きに設けられた燃料と燃焼空気による燃焼バーナーと、燃焼バーナーの下方に設けられた吹出しノズルとを含み、
前記
吹出しノズルは、その中心側から外方側に向けて、シラン含有ガス又はシラン含有廃液の流路、不活性ガス流路、燃焼空気流路を有していることを特徴とするものである。
その燃焼装置によれば、前述の本発明の燃焼方法を達成できる。
【0023】
さらに、吹出しノズルは多重管構造を有し、その中心側から外方側に向けて、シラン含有ガス又はシラン含有廃液の流路、不活性ガス流路、燃焼空気流路とされ、
シラン含有ガス又はシラン含有廃液の流路の出口に対して、不活性ガス流路の出口が同一か前方に位置しており、並びに前記不活性ガス流路の出口に対して、燃焼空気流路の出口が後方に位置している燃焼装置構成であるのが、より望ましい。