特許第6410185号(P6410185)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6410185シラン含有ガス又はシラン含有廃液の燃焼方法及び燃焼装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6410185
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】シラン含有ガス又はシラン含有廃液の燃焼方法及び燃焼装置
(51)【国際特許分類】
   F23G 7/06 20060101AFI20181015BHJP
   F23G 7/04 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
   F23G7/06 NZAB
   F23G7/06 101C
   F23G7/04 601M
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-162201(P2015-162201)
(22)【出願日】2015年8月19日
(65)【公開番号】特開2017-40429(P2017-40429A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2017年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】391018592
【氏名又は名称】月島環境エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082647
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 義久
(72)【発明者】
【氏名】山口 展弘
(72)【発明者】
【氏名】田屋舘 利夫
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−276921(JP,A)
【文献】 特開昭62−134414(JP,A)
【文献】 特開2003−148714(JP,A)
【文献】 特開2006−329480(JP,A)
【文献】 特開平08−270922(JP,A)
【文献】 特開2006−194541(JP,A)
【文献】 特開平10−110926(JP,A)
【文献】 特開平02−126014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/14
F23G 5/16−5/18
F23G 7/06
F23G 7/07−7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シラン含有ガス又はシラン含有廃液を燃焼炉に供給して燃焼する方法において、
燃焼炉の上部に、下向きに燃料と燃焼空気による燃焼バーナーを設け、
それより下方の位置に、前記燃焼炉の周方向に複数配置された吹出しノズルを設け、これらの吹出しノズルは、その中心側から外方側に向けて、シラン含有ガス又はシラン含有廃液の流路、不活性ガス流路、燃焼空気流路を有しており、
前記燃焼バーナーによって生成される火炎の下端より下方位置に、前記吹出しノズルの各流路から各流体を吹出し、
前記燃焼バーナーによって生成される火炎の中心線と、前記吹出しノズルの吹出し指向線との交点より下方の温度を1000℃未満、850℃以上とする、
ことを特徴とするシラン含有ガス又はシラン含有廃液の燃焼方法。
【請求項2】
前記不活性ガス流路の出口での不活性ガスの流速を2〜10m/sec、またはシラン含有ガス又はシラン含有廃液1kgに対して0.3〜6.0Nm3の範囲とする請求項1記載のシラン含有ガス又はシラン含有廃液の燃焼方法。
【請求項3】
前記燃焼バーナーによって生成される火炎の中心線と、前記吹出しノズルの吹出し指向線との交点より下方に位置し、燃焼炉の垂直方向に異なる2点のうち、上方位置の炉内上部温度に対して下方位置において前記炉内上部温度より高い燃焼温度または炉内上部温度が、二酸化珪素(SiO2)が溶融または焼結する温度以下でシラン含有ガス又はシラン含有廃液を燃焼処理することを特徴とする請求項1または2記載のシラン含有ガス又はシラン含有廃液の燃焼方法。
【請求項4】
前記上方位置に設けた上部温度検出器による炉内上部温度に対して、前記下方位置に設けた炉内下部温度検出器による炉内下部温度が高くなる操作を行う請求項1記載のシラン含有ガス又はシラン含有廃液の燃焼方法。
【請求項5】
上記操作が、吹き出しノズルから供給される不活性ガス、燃焼空気、シラン含有ガス又はシラン含有廃液の各供給量のうち少なくとも1つを調整する操作であることを特徴とする請求項4記載のシラン含有ガス又はシラン含有廃液の燃焼方法。
【請求項6】
前記シラン含有ガス又はシラン含有廃液の高位発熱量が0kJ/kg以上46,000kJ/kg以下であって、前記炉内下方温度が850℃以上、1000℃未満となるよう、吹き出しノズルから供給される不活性ガス、燃焼空気、シラン含有ガス又はシラン含有廃液の各供給量のうち少なくとも1つを制御することを特徴とする請求項5記載のシラン含有ガス又はシラン含有廃液の燃焼方法。
【請求項7】
シラン含有ガス又はシラン含有廃液を燃焼炉に供給して燃焼する装置であって、
燃焼炉と、この燃焼炉の上部に、下向きに設けられた燃料と燃焼空気による燃焼バーナーと、燃焼バーナーの下方に設けられた吹出しノズルとを含み、
前記吹出しノズルは多重管構造を有し、その中心側から外方側に向けて、シラン含有ガス又はシラン含有廃液の流路、不活性ガス流路、燃焼空気流路とされ、
シラン含有ガス又はシラン含有廃液の流路の出口に対して、不活性ガス流路の出口が同一か前方に位置しており、並びに前記不活性ガス流路の出口に対して、燃焼空気流路の出口が後方に位置している、
ことを特徴とするシラン含有ガス又はシラン含有廃液の燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体工場等から排出されるシラン含有ガス又はシラン含有廃液の燃焼方法及び燃焼装置に関するものである。
ここに、シランとは、SiH4(モノシラン)、Si26(ジシラン)、Si(CH3O)4(テトラメトキシシラン)のようにSi、H、Oの化合物だけでなく、SiH2Cl2(ジクロロシラン)のようにClを含有した化合物も指称するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体工場等から排出されるシラン含有ガス又はシラン含有廃液は、有害物質を含有するためにそのまま系外に放出することができないので、無害化処理を行わなければならない。このような無害化処理の一手段として、シラン含有ガス又はシラン含有廃液を燃焼炉に噴霧して高温で燃焼させることによる高温酸化処理が多用されている。
【0003】
代表的には、特許文献1に提案されたものがある。この先行技術は、その第3図に示されているように、炉の頂部中央に設けられる主バーナーが、4重管構造をもち、中心から外方にかけて被処理ガスの流路、不活性ガスの流路、一次空気流路、二次空気流路が形成されたものである。
【0004】
また、側部にはパイロットバーナーが必要により設けられ、着火を容易にしている。この先行技術では、主バーナーの火炎が、パイロットバーナーからの吹き出し中心線より下方に設けて、安定した火炎を得ることを目的としている。
【0005】
他方、下部には水スプレー管を設け、水による冷却を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平5−48584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は先行技術を種々検討したが、適切なものを得ることができなかった。
特に、特許文献1のように、シラン含有ガスの吹き出し流路を主バーナーに組み込むと、優に1000℃を超える火炎中にシラン含有ガスを噴出することになるので、シラン中の珪素(Si)と酸素(O2)または水蒸気(H2O)と反応して生成した二酸化珪素(SiO2)が溶融または焼結して、炉内壁やノズルに付着し、ノズルの閉塞を招く、あるいは炉内壁への堆積によっては燃焼が安定しない、または炉内の閉塞などの問題を招くことを知見した。
【0008】
一方、シラン含有ガスやシラン含有廃液を燃焼処理する際に、二酸化珪素(SiO2)による炉内壁等への付着、閉塞が生じることは既に知られており、次の対策を採る技術もある。
(1)炉壁に複数の開孔を設け、炉壁全体から炉内に向けて空気を供給し炉壁表面温度を溶融及び焼結温度以下として付着、閉塞を防止する。
(2)炉壁に水冷ジャケットの設置、炉壁全体から炉内へ空気を供給することで炉壁表面温度(燃焼炉の内部を構成する鋼材の表面温度)を溶融及び焼結温度以下として付着、閉塞を防止する。
【0009】
しかし、(1)の方策では、炉壁の構造が複雑となりコスト高となる。また、(2)の方策を採用して、塩素(Cl)を含有するシラン含有ガスやシラン含有廃液を処理した場合、溶融焼結対策として冷却された炉壁表面によって炉内で生成した塩化水素(HCl)が露点以下(70〜80℃以下)となり腐食が発生する。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、ノズルや炉内壁への二酸化珪素(SiO2)の付着又は閉塞を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
本発明は、シラン含有ガスの場合とシラン含有廃液の場合がある。
【0012】
本発明のシラン含有ガス又はシラン含有廃液の燃焼方法は、シラン含有ガス又はシラン含有廃液を燃焼炉に供給して燃焼する方法において、
燃焼炉の上部に、下向きに燃料と燃焼空気による燃焼バーナーを設け、
それより下方の位置に、前記燃焼炉の周方向に複数配置された吹出しノズルを設け、これらの吹出しノズルは、その中心側から外方側に向けて、シラン含有ガス又はシラン含有廃液の流路、不活性ガス流路、燃焼空気流路を有しており、
前記燃焼バーナーによって生成される火炎の下端より下方位置に、前記吹出しノズルの各流路から各流体を吹出し、
前記燃焼バーナーによって生成される火炎の中心線と、前記吹出しノズルの吹出し指向線との交点より下方の温度を1000℃未満、850℃以上とする、ものである。
【0013】
本発明の形態では、燃焼バーナーの火炎の前方における高温酸化雰囲気中に向けて、吹出しノズルからのシラン含有ガス又はシラン含有廃液、不活性ガス、燃焼空気を噴出する。このとき、シラン含有ガス又はシラン含有廃液の流れは、不活性ガスの流れに包まれるようになる。したがって、シラン含有ガス又はシラン含有廃液の流れと燃焼空気の流れとの接触が遮られ、あるいは接触が阻害されるので、吹出しノズルでの二酸化珪素(SiO2)の付着や閉塞が防止される。
加えて、シラン含有ガス又はシラン含有廃液は燃焼バーナーの火炎に供給することなく、燃焼バーナーの火炎より下方に供給する。
【0014】
その結果、シラン中の珪素(Si)が酸素(O2)または水蒸気(H2O)と反応して生成した二酸化珪素(SiO2)が、溶融または焼結して炉内壁や供給ノズルに付着し、付着したものが成長して閉塞することを防止できる。
また、本発明によれば、燃焼炉の構造を複雑にすることなく燃焼状態を制御することにより、二酸化珪素(SiO2)の溶融または焼結によりノズルや炉内壁への付着、閉塞を防止することができる。
【0015】
吹出しノズルとしては、多重管構造を有するものが望ましい。その中心側から外方側に向けて、シラン含有ガス又はシラン含有廃液の流路、不活性ガス流路、燃焼空気流路とされるものが好適である。
かかる多重管構造の吹出しノズルは、前述のように、シラン含有ガス又はシラン含有廃液の流れを、不活性ガスの流れによって包むことができる。
【0016】
さらに、シラン含有ガス又はシラン含有廃液の流路の出口に対して、不活性ガス流路の出口が同一か前方に位置していると、シラン含有ガス又はシラン含有廃液の流れを、不活性ガスの流れによって包みながら、燃焼空気の流れとの接触を阻害できるようになる。
【0017】
この作用をより確実なものとするために、不活性ガス流路の出口に対して、燃焼空気流路の出口が後方に位置しているのがより望ましい。
【0018】
以上のようにして、シラン中の珪素(Si)が酸素(O2)または水蒸気(H2O)と反応して生成した二酸化珪素(SiO2)が溶融または焼結して炉内壁や供給ノズルに付着し、付着したものが成長して閉塞することを防止できる。
【0019】
不活性ガス流路の出口での不活性ガスの流速を2〜10m/sec、またはシラン含有ガス又はシラン含有廃液1kgに対して0.3〜6.0Nm3の範囲とすることができる。
【0020】
他方、燃焼バーナーによる火炎の中心線と、吹出しノズルの各流路からの各流体の指向線との交点より上方位置に設けた上部温度検出器による炉内上部温度に対して、前記上部温度検出器より下方位置に設けた炉内下部温度器による炉内下部温度が高くなる操作を行う。
この操作としては、吹き出しノズルから供給される不活性ガス、燃焼空気、シラン含有ガス又はシラン含有廃液の各供給量のうち少なくとも1つを調整する操作を挙げることができる。
炉内下部温度を1000℃未満、850℃以上とするのが好適である。
【0021】
このことの意味は次のとおりである。
不活性ガスである窒素および空気による冷却効果、並びに窒素による処理要素の阻害を原因とする燃焼遅延効果により、シラン含有ガス又はシラン含有廃液の燃焼領域を炉下方まで拡大させることができる。
したがって、燃焼バーナー火炎より前方の温度を二酸化珪素(SiO2)が焼結を起こす温度の約1000℃未満に抑制できる。その結果、炉内壁への二酸化珪素(SiO2)の付着を防止することができる。
さらにシラン含有ガス又はシラン含有廃液が高カロリーな場合は、窒素による燃焼遅延効果がより働きバーナー火炎前方の温度より炉下方の温度が高くなる。よって、炉内下部温度器による炉内下部温度に基づく、温度制御のみで二酸化珪素(SiO2)の溶融、焼結防止が行え、ノズル及び炉内壁において二酸化珪素(SiO2)が付着、閉塞することを防止することができる。
また塩素(Cl)を含有するシラン含有ガス又はシラン含有廃液を処理する場合においても、炉壁表面温度を抑制する従来技術ではなく、耐火物を適切な厚みとすることで表面温度を露点腐食温度以上(70〜80℃以上)の温度に維持することができ、鋼材の腐食を防止できる。
【0022】
本発明装置は、シラン含有ガス又はシラン含有廃液を燃焼炉に供給して燃焼する装置であって、
燃焼炉と、この燃焼炉の上部に、下向きに設けられた燃料と燃焼空気による燃焼バーナーと、燃焼バーナーの下方に設けられた吹出しノズルとを含み、
前記吹出しノズルは、その中心側から外方側に向けて、シラン含有ガス又はシラン含有廃液の流路、不活性ガス流路、燃焼空気流路を有していることを特徴とするものである。
その燃焼装置によれば、前述の本発明の燃焼方法を達成できる。
【0023】
さらに、吹出しノズルは多重管構造を有し、その中心側から外方側に向けて、シラン含有ガス又はシラン含有廃液の流路、不活性ガス流路、燃焼空気流路とされ、
シラン含有ガス又はシラン含有廃液の流路の出口に対して、不活性ガス流路の出口が同一か前方に位置しており、並びに前記不活性ガス流路の出口に対して、燃焼空気流路の出口が後方に位置している燃焼装置構成であるのが、より望ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、吹出しノズルや炉内壁への二酸化珪素(SiO2)の付着を防止できる。
具体的には、シラン中の珪素(Si)が酸素(O2)または水蒸気(H2O)と反応して生成した二酸化珪素(SiO2)が溶融または焼結して炉内壁や吹出しノズルに付着し、付着したものが成長して閉塞することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】燃焼装置例の概要図である。
図2】炉内での燃焼例の説明用の縦断面図である。
図3】吹出しノズル例の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係るシラン含有ガス又はシラン含有廃液の燃焼方法及び燃焼装置の好適な実施例について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明文及び図面は、本発明の実施形態の一例を示したものにすぎず、本発明の内容をこの実施形態に限定して解釈すべきでない。
【0027】
(燃焼装置の基本的構成)
図1は、本発明のシラン含有ガス又はシラン含有廃液の燃焼方法に使用する燃焼装置の実施形態例を示すものである。
燃焼炉1は、縦型円筒状炉体5を有し、その頂部中央には燃焼バーナー(たとえばボルテックスバーナー)2が設けられていて、この燃焼バーナー2からはLPG、天然ガス、重油等の燃料Fが燃焼用空気(図示せず)によって下向きに燃焼炉1内に噴射されて燃焼させられるとともに、この燃焼バーナー2の周りの燃焼炉1の肩部には、処理要素(シラン含有ガス又はシラン含有廃液)Gを燃焼炉1内に噴霧する複数の吹出しノズル3が周方向に等間隔に、かつ円筒状をなす燃焼炉1の中心線に向けて斜め下向きに設けられている。
【0028】
図2に参照されるように、これらのノズル3から燃焼炉1内に噴霧されたシラン含有ガス又はシラン含有廃液Gが、望ましくは、上記燃焼バーナー2の燃料Fの燃焼の火炎の下端より下方に向けて吹き込まれる。また、燃焼炉1の炉壁5には、炉内温度検出器が設置される。炉内温度検出器は、燃焼炉の内部温度を検出し、その検出結果を制御部(図示せず)に伝送可能であることが好ましく、設置高さの異なる複数の炉内温度検出器を設置することが好ましい。制御部は、検出結果に基づいて、燃焼バーナーへ燃料供給量、燃焼空気量、ノズル3への燃焼空気供給量、不活性ガス供給量、シラン含有ガス又はシラン含有廃液の供給量の少なくとも一つを調整する機能を備える。ここで燃料供給量、燃焼空気量、ノズル3への燃焼空気供給量、不活性ガス供給量の調整は、各流体の配管やダクトに設けたバルブ、ダンパ等の流量調整手段を用いたり、各流体を供給するポンプやブロワから供給量を変更することで行うことができる。 本実施例では炉内温度検出器として、燃焼バーナー2による火炎Bの中心線C2と、吹出しノズル3の各流路からの各要素の指向線C3との交点Xより下方位置に設けた上部温度検出器Sdと、前記上部温度検出器Sdより下方位置に設けた炉内下部温度検出器Suを備えた。
他の実施形態として炉内下部温度検出器Suのみを備えるものでも良い。
【0029】
また、この燃焼によって生じた燃焼排ガスは、燃焼炉1の下部の出口からガス冷却器4に供給され、この燃焼排ガスに空気を供給して冷却が行われる。その後、ガス冷却器4からバグフィルタ−、除害塔などの装置へ供給され適宜の処理を受ける。
【0030】
図3において、吹出しノズル3は、多重管構造を有し、その中心側から外方側に向けて、シラン含有ガス又はシラン含有廃液Gの流路、不活性ガス流路、燃焼空気流路とされ、シラン含有ガス又はシラン含有廃液の流路の出口Egに対して、不活性ガス流路の出口Eiが同一か前方に位置しており、並びに前記不活性ガス流路の出口Eiに対して、燃焼空気流路の出口Ecが後方に位置している態様が好適である。
なお、多重管構造であるのが、環状筒状のフローを形成するために好適であるが、特に、不活性ガス流路、燃焼空気流路については、環状位置において軸線方向に沿って多数の細管を配置したものでもよい。
【0031】
運転方法の一例として、上部温度検出器Sdで検出される炉内上部温度に対して、炉内下部温度検出器Suで検出される炉内下部温度が高くなる、若しくは、炉内上部温度が、二酸化珪素(SiO2)が溶融または焼結する温度以下となるよう、ノズル3への燃焼空気供給量または不活性ガスの供給量のうち少なくとも一方を調整する方法がある。
不活性ガス(窒素、アルゴンなど)の供給量は、不活性ガス流路の出口Eiでの流速2〜10m/sec、またはシラン含有ガス又はシラン含有廃液Gの1kgに対して0.3〜6.0Nm3の範囲(すなわち0.3〜6.0Nm3/kg)が望ましい。このように不活性ガスの供給量を所定の範囲とすることで、吹出しノズル3の出口近傍においてシラン含有ガス又はシラン含有廃液と燃焼空気が混合することを防止するとともに、シラン含有廃液と燃焼空気とが混合した場合であっても吹出しノズル3に二酸化珪素が付着することを防止することが可能となる。更に上記記載の供給量を採用することで、不活性ガスがシラン含有ガス又はシラン含有廃液の燃焼遅延要因の一つとなり、燃焼炉上方におけるシラン含有ガス又はシラン含有廃液の燃焼を抑制することになる。
【0032】
炉内下部温度器Suが示す炉内下部温度は1000℃未満、850℃以上とする、より望ましくは950℃〜900℃とするのが望ましい。
1000℃以上であると、二酸化珪素の焼結又は溶融を生じ、上述の閉塞などを招く。850℃未満であると、未燃成分が生じる可能性がある。
【0033】
ところで、燃焼バーナーとしては、短焔のものと長焔のものとがあるが、短焔燃焼バーナー、たとえばボルテックスバーナーを使用するのが、炉体の高さを短くできるなどの利点があり望ましい。
このボルテックスバーナーによる火炎Bの長さLは、燃焼バーナーの径Dに対して実質的に約1.5Dの関係にある。このことを基準に、交点Xを定めることができる。
【0034】
吹出しノズル3の設置角度θは、0度を越えて傾斜するのが望ましく、特に設置角度θは20度〜70度が望ましい。
【0035】
次に実施例及び比較例を示す。
実施例1及び実施例2は、図2及び図3に示す装置によるものである。
比較例1及び比較例2は、実施例1及び実施例2に対して、その不活性ガス流路に空気を流した空気を流した例である。結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
実施例1では、燃焼バ−ナ−にLPGを0.37Nm3/h、その燃焼空気として10Nm3/h供給した。吹き出しノズル中心からシラン含有ガス(高位発熱量として約23,860kJ/kg)を2.4kg/h、中心より外方側に窒素を2.6Nm3/h、その外方側へ炉内下部温度が約950℃となるように空気を供給した。その結果、炉内上部温度は炉内下部温度より低い933℃の結果となった。この時、COは0ppmでありこの燃焼温度で完全燃焼できていることが判った。比較例1は実施例1の吹き出しノズルへ供給している窒素を空気に置き換えた場合の例であり980〜1030℃の結果となり窒素による燃焼遅延効果があることが判った。
【0038】
次に実施例2では、燃焼バ−ナ−にLPGを0.4Nm3/h、その燃焼空気として10Nm3/h供給した。吹き出しノズル中心からシラン含有ガス(高位発熱量として約22,200kJ/kg)を2.86kg/h、中心より外方側に窒素を2.6Nm3/h、その外方側へ炉内下部温度が約910℃となるように空気を供給した。その結果、炉内上部温度は炉内下部温度より低い878℃の結果となった。この時、COは0ppmでありこの燃焼温度でも完全燃焼できていることが判った。比較例2は実施例2の吹き出しノズルへ供給している窒素を空気に置き換えた場合の例であり930〜980℃の結果となり窒素による燃焼遅延効果があることが判った。
【0039】
また参考例1、2では、シランを燃焼バ−ナ−と吹き出しノズルへ同時に供給した参考デ−タであるが、参考例1は炉内下部温度が845℃ではCOが5ppm、参考例2はCOが1ppm程度で微量ではあるが発生した。850℃以下ではさらにCOが発生することが予想され、完全燃焼の観点から炉内下部温度は850℃〜900℃以上が望ましいことが判った。
【符号の説明】
【0040】
1…燃焼炉、2…バーナー、3…吹出しノズル、4…ガス冷却器、5…炉体、G…シラン含有ガス又はシラン含有廃液、11…不活性ガス、12…燃焼空気、Su…上部温度検出器、Sd…上部温度検出器。
図1
図2
図3