【実施例】
【0032】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例を提示するが、下記の実施例は、本発明をより容易に理解させるために提供されるものに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0033】
[製造例1]無定形リン酸カルシウム触媒の製造(CP−10)
H
4P
2O
78.62gを脱イオン水に溶かして200mLのピロリン酸水溶液希釈液を製造し、NH
4OH28wt%水溶液37.60gを希釈されたリン酸水溶液に添加して30分間攪拌した(溶液A)。カルシウム前駆体水溶液を製造するために、Ca(OAc)
223.74gを脱イオン水に溶解して150mLの水溶液を製造し(溶液B)、製造された溶液Aに溶液Bを室温で3.5mL/minの速力で30分間ゆっくり加えながらリン酸カルシウムスラリー溶液を製造した(溶液C)。この際、混合スラリー溶液CのpHを約10.0に維持し、24時間十分に攪拌した。その後、脱イオン水2Lで濾過純化してケーキ状の固体生成物を製造した。その後、リン酸カルシウムケーキを80℃で6時間乾燥させ、粉砕選別の後、500℃で6時間熱処理してリン酸カルシウム触媒に製造した。
製造された触媒内のCaとPの含量をXRF分析を介して確認し、XRD分析を介して触媒の性状を確認した。製造例1のCP−10触媒のCa/Pモル比は1.23であった。XRDを介して無定形(Amorphous)構造のリン酸カルシウムが生成されることを確認することができた。
図1はCP−10触媒のXRD分析結果を示す図である。
【0034】
[製造例2]無定形リン酸カルシウム触媒の製造(CP−6)
混合スラリー溶液CのpHを約6に維持した以外は、製造例1と同様にして溶液A、溶液Bおよび溶液Cを製造した。
混合溶液CのpHを6に調節するために、カルシウム前駆体水溶液の添加後にH
4P
2O
7を加え、pH6.0を維持したまま、製造例1と同様に濾過、純化、焼成過程を経て触媒を製造し、これをCP−6と命名した。
【0035】
[製造例3]無定形リン酸カルシウム触媒の製造(CP−8)
混合スラリー溶液CのpHを約8に維持した以外は、製造例1と同様にして溶液A、溶液Bおよび溶液Cを製造した。
混合溶液CのpHを8に調節するために、カルシウム前駆体水溶液の添加後にH
4P
2O
7を加え、pH8.0を維持したまま、製造例1と同様に濾過、純化、焼成過程を経て触媒を製造し、これをCP−8と命名した。
図2は製造例2、製造例3および比較製造例3で製造されたCP触媒のXRD分析結果を示す図である。CP−5触媒を除いた触媒CP−6およびCP−8で無定形の特性ピークが現れることを確認することができた。
【0036】
[製造例4]無定形リン酸カルシウム触媒の製造(CP−10−600)
製造例1において、リン酸カルシウムケーキを80℃で6時間乾燥させ、粉砕選別の後、500℃で6時間熱処理する代わりに600℃で6時間熱処理する以外は、製造例1と同様にして触媒を製造し、これをCP−10−600触媒と命名した。CP−10−600の場合、無定形リン酸カルシウム触媒と確認された。
【0037】
[製造例5]無定形リン酸カルシウム触媒の製造(CPN−10)
製造例1において、溶液Bを製造するが、Ca(OAc)
223.74gを脱イオン水に溶解して150mLの水溶液を製造する代わりに、製造例5では、Ca(NO
3)
235.44gを脱イオン水に溶解して150mLの水溶液を製造(溶液B)する以外は製造例1と同様にしてリン酸カルシウム触媒に製造した。
【0038】
[製造例6]無定形リン酸カルシウム触媒の製造(CPC−10)
製造例1において、溶液Bを製造するが、Ca(OAc)
223.74gを脱イオン水に溶解して150mLの水溶液を製造する代わりに、製造例6では、Ca(Cl)
222.06gを脱イオン水に溶解して150mLの水溶液を製造(溶液B)する以外は製造例1と同様にしてカルシウム触媒に製造した。
【0039】
[比較製造例1]ヒドロキシアパタイト構造のリン酸カルシウム触媒の製造(CDP−10)
Ca(NO
3)
24H
2O35.44gを脱イオン水200mLに溶解してNH
4OHをゆっくり加え、水溶液のpHを10.0に維持した(溶液A)。一方、リン酸水素二アンモニウム11.89gを脱イオン水200mLに溶解した後、リン酸塩水溶液を製造し、NH
4OHでpHを10.0に維持した(溶液B)。その後、溶液Aに溶液Bを加えながら混合溶液のpHを10.0に維持し、pH調節のためにHNO
3またはNH
4OHを加えた。スラリー混合溶液を24時間十分に攪拌し、脱イオン水2Lで濾過純化してケーキ状の固体生成物を製造した。その後、リン酸カルシウムケーキを80℃で24時間乾燥させ、粉砕選別の後、500℃で6時間熱処理してリン酸カルシウム触媒に製造した。
【0040】
[比較製造例2]ピロリン酸カルシウム構造を持つ触媒の製造(CDP−5)
Ca(NO
3)
24H
2O35.44gを脱イオン水200mLに溶解してHNO
3をゆっくり加え、水溶液のpHを5.0に維持した(溶液A)。一方、リン酸水素二アンモニウム11.89gを脱イオン水200mLに溶解した後、リン酸塩水溶液を製造し、HNO
3でpHを5.0に維持した(溶液B)。その後、溶液Aに溶液Bを加えながら混合溶液のpHを5.0に維持し、pH調節のためにHNO
3またはNH
4OHを加えた。スラリー混合溶液を24時間十分に攪拌し、脱イオン水2Lで濾過純化してケーキ状の固体生成物を製造した。その後、リン酸カルシウムケーキを80℃で24時間乾燥させ、粉砕選別の後、500℃で6時間熱処理してリン酸カルシウム触媒に製造した。
【0041】
[比較製造例3]ピロリン酸カルシウム構造を持つ触媒の製造(CP−5)
混合スラリー溶液CのpHを約5に維持した以外は、製造例1と同様にして溶液A、溶液Bおよび溶液Cを製造した。
混合溶液CのpHを5に調節するために、カルシウム前駆体水溶液の添加後にH
4P
2O
7を加え、pH5.0を維持したまま、製造例1と同様に濾過、純化、焼成過程を経て触媒を製造し、これをCP−5と命名した。
比較製造例3で製造されたCP−5触媒は、Ca/Pの比が1.0であり、CP−10触媒とは異なり、ピロリン酸カルシウム(Ca
2P
2O
7)構造が形成されることを確認することができた。
前述したように、
図2は比較製造例3で製造されたCP−5触媒のXRD分析結果を示している。
図2の結果より、CP−5触媒が結晶型であることを確認することができる。
【0042】
[実施例1〜6および比較例1〜6]
製造例1〜6および比較製造例1〜3で製造された触媒を用いて、本発明の実施態様に係る2,3−ブタンジオールからの1,3−ブタジエン転換反応を行った。
一方、比較例4は、比較製造例1〜3で製造された触媒の代わりに、試薬として販売されるピロリン酸カルシウムを購入して500℃で熱処理した後に使用した以外は、比較製造例1〜3と同様の反応条件で評価した。
比較例5は、比較製造例1〜3で製造された触媒の代わりに、代表的な酸触媒たるH−ZSM−5を使用した以外は、比較製造例1〜3と同様の反応条件で評価した。
比較例6は、比較製造例1〜3で製造された触媒の代わりに、試薬として販売される代表的な塩基触媒CaOを使用した以外は、比較製造例1〜3と同様の反応条件で評価した。
2,3−ブタンジオール脱水反応は、自体的に製作された触媒層が固定された連続流れ式反応器を用いて評価した。反応前のフィードは300℃の予熱区間を経る。反応時の条件は、反応圧力:常圧、N
2:10cc/min、反応温度:360℃、WHSV=0.5h
−1である。
製造された触媒評価結果は下記表1のとおりである。触媒反応後に得られた生成物は、全て気化してオンラインGCを介して分析される。主生成物が1,3−ブタジエン、メチルエチルケトン(MEK)およびH
2Oであり、微量の副産物がブテン、2−メチルプロパンアルデヒド、3−ブテン−2−オル、2−メチルプロパノールなどであることを確認した。2,3−ブタンジオール転換率と1,3−ブタジエン選択度およびメチルエチルケトン選択度はモルバランス(mole balance)を基準に計算された。質量%を基準に計算するときに2,3−ブタンジオールが100%の1,3−BDに転換されると仮定すると、理論上、約40wt%程度の水が生成され、評価された触媒ではH
2Oの量が約20〜30wt%と測定される。
【0043】
【表1】
【0044】
実施例1の結果、CP−10触媒の場合、相対的に高い1,3−ブタジエン選択度を示し、触媒を構成する性状が1,3−ブタジエン選択度に影響を及ぼすものと判断された。
次いで、本発明者は、比較製造例1を介して別の相(phase)を有するリン酸カルシウム触媒を製造した。比較例1の場合、比較製造例1で製造された触媒をXRDを介して分析した結果、ヒドロキシアパタイト構造が生成されることを確認することができた。
【0045】
リン酸カルシウム構造による1,3−ブタジエン選択度を比較するために、比較製造例2では別の構造のリン酸カルシウム触媒を製造した。比較製造例1と同様のカルシウム前駆体を同一の量で使用し、溶液A、溶液Bおよび溶液Cの製造の際にpHをpH10の代わりにpH5の値に調節した。製造された触媒の相をXRDを介して分析した結果、ピロリン酸カルシウムの結晶構造を持つリン酸カルシウム触媒が製造されたことを確認することができた。
比較例2の場合、比較製造例2で製造された触媒が結晶型であって、本発明の無定形触媒に比べて1,3−ブタジエン選択度が低かった。
【0046】
比較製造例3では、製造例1とは異なりpHをpH5に調整した以外は製造例1と同様にして触媒を製造した。比較例3の場合、比較製造例3で製造された触媒のXRD分析の結果、ピロリン酸カルシウムが製造されたこと、およびCa/Pが1.0であることを確認することができた。
比較例3の場合、比較製造例3で製造された触媒がピロリン酸カルシウム触媒であって、1,3−ブタジエン選択度は無定形リン酸カルシウム触媒に比べて多少低いが、ヒドロキシアパタイトリン酸カルシウム触媒に比べて高い選択度を示した。
【0047】
比較例4の場合、商用性試薬としてピロリン酸カルシウム(Ca
2P
2O
7)を使用したところ、比較製造例2で製造したピロリン酸カルシウム触媒に比べて1,3−ブタジエン選択度が低いことを確認することができた。同一のピロリン酸カルシウム構造を持つにもかかわらず、1,3−ブタジエン選択度が低い理由は、構造的な影響の他に、触媒内に存在する酸、塩基の特性も選択度に影響を及ぼすものと判断される。
【0048】
一方、比較例5では、代表的な酸触媒H−ZSM−5を評価したが、相対的に低い2,3−ブタンジオール転換率と低い1,3−ブタジエン選択度を示した。比較例6では、商用性試薬としてCaOを使用したところ、代表的な塩基触媒CaOを用いて評価したが、2,3−ブタンジオールの転換率および1,3−ブタジエン選択度が著しく低いことを確認した。
前記結果より、本発明者は、1,3−ブタジエンへの転換において触媒の酸と塩基機能の両方が重要に作用することと、リン酸カルシウム構造の他に酸塩基特性の調節が重要であることを確認した。
【0049】
[比較例7〜16]
比較例7〜16では、アルコールからのオレフィンの製造に活用される酸触媒と塩基触媒などを2,3−ブタンジオールからの1,3−ブタジエン製造反応に活用した。
比較例7〜16の2,3−BDO転換反応に応用した酸触媒または塩基触媒は、商用化工程に応用される触媒であって、通常の酸または塩基特性を持つと知られている。
商用触媒の1,3−ブタジエン転換反応は、触媒層が固定された連続流れ式反応器に触媒をロードした後、350℃〜400℃の反応温度、WHSV=0.5h
−1、常圧の圧力条件で評価された。反応の前に、反応物に該当する2,3−BDOは300℃の予熱区間を経て触媒層に注入され、反応の際に、キャリアガスとしてN
2は10cc/minで注入される。
触媒反応結果は下記表2のとおりである。大部分の酸または塩基特性を持つ商用触媒は、メチルエチルケトン選択度が高いことが特徴であり、1,3−BD選択度が低かった。
【0050】
【表2】
【0051】
本発明の単純な変形ないし変更はいずれも本発明の領域に属するもので、本発明の具体的な保護範囲は添付した特許請求の範囲によって明確になるであろう。